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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/089 20060101AFI20240827BHJP
   F16H 3/083 20060101ALI20240827BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F16H3/089
F16H3/083
F16D25/0638
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021055751
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152824
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】土井 孝之
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-042798(JP,A)
【文献】特開2013-228001(JP,A)
【文献】特開2017-186908(JP,A)
【文献】米国特許第3285088(US,A)
【文献】米国特許第4226319(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/089
F16H 3/083
F16D 25/0638
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのギヤを支持する第1軸部材と、
前記第1軸部材と平行に配置され、少なくとも1つのギヤを支持する第2軸部材と、
前記第2軸部材と同軸上に配置された摩擦係合装置と、
前記第1軸部材、前記第2軸部材、及び前記摩擦係合装置を収容するケースと、
前記ケースに対して前記第1軸部材を回転可能に支持する第1軸受と、
前記ケースに対して前記第2軸部材を回転可能に支持する第2軸受と、を備え、
前記摩擦係合装置は、第1支持部材、第2支持部材、第1摩擦材、第2摩擦材、第1押圧部材、第2押圧部材、及び押圧駆動部を備え、
前記第1支持部材は、回転可能に支持され、前記第1摩擦材を支持する第1摩擦材支持部を備え、
前記第2支持部材は、前記第1支持部材とは独立して回転可能に支持され、前記第2摩擦材を支持する第2摩擦材支持部を備え、
前記第2摩擦材支持部は、前記第1摩擦材支持部よりも径方向の外側に、前記第1摩擦材支持部と同軸に配置され、
前記第1摩擦材は、前記第1摩擦材支持部と一体的に回転するように連結され、
前記第2摩擦材は、前記第2摩擦材支持部と一体的に回転するように連結され、
前記第1軸部材及び前記第2軸部材と平行な方向を軸方向とするとともに、前記軸方向の一方側を軸方向第1側として、
前記第1摩擦材及び前記第2摩擦材は、前記第1摩擦材支持部と前記第2摩擦材支持部との前記径方向の間において、互いに前記軸方向に対向するように配置され、
前記第1押圧部材は、前記第1支持部材と一体的に回転するとともに当該第1支持部材に対して前記軸方向に移動自在に支持され、前記第1摩擦材と前記第2摩擦材とを互いに押し付けるように前記第1摩擦材及び前記第2摩擦材を前記軸方向第1側から押圧し、
前記第2押圧部材は、前記ケースに対して前記軸方向に移動自在に支持され、前記第1押圧部材と相対回転自在な状態で当該第1押圧部材を前記軸方向第1側から押圧し、
前記押圧駆動部は、前記第2押圧部材を前記軸方向に駆動し、
前記第2押圧部材は、前記第2軸受に対して前記径方向の外側であって、周方向における一部が前記第1軸受と前記第2軸受との間に配置され、
前記第2押圧部材の前記軸方向における配置領域が、前記第1軸受の前記軸方向における配置領域及び前記第2軸受の前記軸方向における配置領域の双方に重複している、変速機。
【請求項2】
前記ケースは、前記第2軸受を径方向外側から支持する筒状支持部を備え、
前記押圧駆動部は、前記第2押圧部材に油圧を作用させるための油圧室と、当該油圧室に油を供給する油供給部と、を備え、
前記油供給部が、前記ケースに形成され、
前記油圧室の内周面は、前記筒状支持部の外周面を用いて形成されている、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記第1軸受は、前記第1軸部材の前記軸方向第1側の端部を支持し、
前記第2軸受は、前記第2軸部材の前記軸方向第1側の端部を支持している、請求項1又は2に記載の変速機。
【請求項4】
前記第1軸部材に、第1ギヤと第2ギヤとが支持されており、
前記第2軸部材に、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤと前記第2ギヤに噛み合う第4ギヤとが支持されており、
前記第2ギヤ及び前記第4ギヤは、前記第1ギヤ及び前記第3ギヤに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記摩擦係合装置は、前記第4ギヤよりも前記軸方向第1側に配置され、
前記第1支持部材は、前記第2軸部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2支持部材は、前記第4ギヤと一体的に回転するように連結されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項5】
前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1軸受と前記第1摩擦材及び前記第2摩擦材とが重複するように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1つのギヤを支持する第1軸部材と、少なくとも1つのギヤを支持する第2軸部材と、噛み合い式係合装置と、摩擦係合装置とを備える変速機が利用されている。このような変速機の一例が、特表2016-516161号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の変速機では、噛み合い式係合装置(形状接合型シフト要素5)が第3ギヤ(遊び歯車7)及び第4ギヤ(遊び歯車8)のいずれか一方を第2軸部材(入力軸2)に対して選択的に連結することで、2段変速が可能となっている。変速段の切り替えに際しては、その切り替えを円滑に行うため、摩擦係合装置(摩擦接合型シフト要素6)を係合させることによって回転の同期制御を行っている。
【0004】
ところで、摩擦係合装置を構成する押圧部材(ピストン)は、回転体である第1支持部材(クラッチハブ)に支持される場合が多い。このような場合、回転に伴い、押圧部材を駆動するための作動油に遠心油圧が加わる結果、油圧のばらつきが大きくなってしまい、摩擦係合装置の制御性が悪くなるという問題があった。一方、摩擦係合装置の制御性を向上させるために装置全体が大型化してしまうことは極力避けたいという一般的な課題も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-516161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、摩擦係合装置を備えた変速機において、装置全体の大型化を抑えつつ摩擦係合装置の制御性を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る変速機は、
少なくとも1つのギヤを支持する第1軸部材と、
前記第1軸部材と平行に配置され、少なくとも1つのギヤを支持する第2軸部材と、
前記第2軸部材と同軸上に配置された摩擦係合装置と、
前記第1軸部材、前記第2軸部材、及び前記摩擦係合装置を収容するケースと、
前記ケースに対して前記第1軸部材を回転可能に支持する第1軸受と、
前記ケースに対して前記第2軸部材を回転可能に支持する第2軸受と、を備え、
前記摩擦係合装置は、第1支持部材、第2支持部材、第1摩擦材、第2摩擦材、第1押圧部材、第2押圧部材、及び押圧駆動部を備え、
前記第1支持部材は、回転可能に支持され、前記第1摩擦材を支持する第1摩擦材支持部を備え、
前記第2支持部材は、前記第1支持部材とは独立して回転可能に支持され、前記第2摩擦材を支持する第2摩擦材支持部を備え、
前記第2摩擦材支持部は、前記第1摩擦材支持部よりも径方向の外側に、前記第1摩擦材支持部と同軸に配置され、
前記第1摩擦材は、前記第1摩擦材支持部と一体的に回転するように連結され、
前記第2摩擦材は、前記第2摩擦材支持部と一体的に回転するように連結され、
前記第1軸部材及び前記第2軸部材と平行な方向を軸方向とするとともに、前記軸方向の一方側を軸方向第1側として、
前記第1摩擦材及び前記第2摩擦材は、前記第1摩擦材支持部と前記第2摩擦材支持部との前記径方向の間において、互いに前記軸方向に対向するように配置され、
前記第1押圧部材は、前記第1支持部材と一体的に回転するとともに当該第1支持部材に対して前記軸方向に移動自在に支持され、前記第1摩擦材と前記第2摩擦材とを互いに押し付けるように前記第1摩擦材及び前記第2摩擦材を前記軸方向第1側から押圧し、
前記第2押圧部材は、前記ケースに対して前記軸方向に移動自在に支持され、前記第1押圧部材と相対回転自在な状態で当該第1押圧部材を前記軸方向第1側から押圧し、
前記押圧駆動部は、前記第2押圧部材を前記軸方向に駆動し、
前記第2押圧部材は、前記第2軸受に対して前記径方向の外側であって、周方向における一部が前記第1軸受と前記第2軸受との間に配置され、
前記第2押圧部材の前記軸方向における配置領域が、前記第1軸受の前記軸方向における配置領域及び前記第2軸受の前記軸方向における配置領域の双方に重複している。
【0008】
この構成によれば、摩擦係合装置が、単一の押圧部材を備えるのではなく、互いに相対回転する第1押圧部材と第2押圧部材とを備え、押圧駆動部によって軸方向に駆動される方の第2押圧部材が非回転部材であるケースに対して軸方向に移動自在に支持される。これにより、第2押圧部材を駆動するための作動油は回転せず遠心油圧も加わらないため、摩擦係合装置の制御性を向上させることができる。このとき、第1軸部材や第2軸部材を回転可能に支持するための第1軸受及び第2軸受との関係で、第2押圧部材の軸方向の配置領域を第1軸受の軸方向の配置領域及び第2軸受の軸方向の配置領域の双方と重複させることで、変速機の軸方向寸法を小さく抑えやすい。制御性向上のために摩擦係合装置が第1押圧部材と第2押圧部材とを備えるように構成しながら、第1軸受と第2軸受との間のスペースを利用して第2押圧部材を配置して、装置全体の大型化を抑制することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
図2】車両用駆動装置の断面図
図3】車両用駆動装置の拡大断面図
図4】車両用駆動装置の拡大断面図
図5】車両用駆動装置を軸方向から見た模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
摩擦係合装置を含む変速機を備えた車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の車両用駆動装置100は、概略的には、変速機1と、回転電機2と、差動歯車機構3と、それぞれが車輪Wに駆動連結される一対の出力部材4とを備えている。また、変速機1は、第1ギヤ12及び第2ギヤ14を備えた第1軸部材10と、第3ギヤ22及び第4ギヤ24を支持するとともに出力ギヤ25を備えた第2軸部材20と、噛み合い式係合装置30と、摩擦係合装置40とを備えている。これらは、ケース(駆動装置ケース)6内に収容されている。なお、出力部材4の一部は、ケース6の外部に露出している。
【0012】
ここで、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0013】
また、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
【0014】
回転電機2及び第1軸部材10は、第1軸X1上に配置されている。第2軸部材20、噛み合い式係合装置30、及び摩擦係合装置40は、第2軸X2上に配置されている。差動歯車機構3及び出力部材4は、第3軸X3上に配置されている。第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3は、互いに異なる平行な軸であり、以下ではこれらに平行な方向を「軸方向L」と言う。また、軸方向Lの一方側(本例では図1における左側)を軸方向第1側L1と言い、その反対側である軸方向Lの他方側(本例では図1における右側)を軸方向第2側L2と言う。また、以下では、軸方向Lに沿って見た状態を「軸方向視」と言う。
【0015】
回転電機2は、ケース6に固定されたステータ2Aと、このステータ2Aの径方向内側に回転自在に支持されたロータ2Bとを備えている。回転電機2は、蓄電装置(図示せず)から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等によって発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。ロータ2Bは、ロータ軸2Cと一体的に回転するように連結されている。ロータ軸2Cは、軸方向Lの2箇所で、ロータ軸受91(図2を参照)によってケース6に対して回転自在に支持されている。ロータ軸2Cは、軸方向第1側L1の端部で、変速機1の第1軸部材10と一体的に回転するように連結されている。
【0016】
変速機1は、回転電機2側からの回転を変速して車輪W側に伝達する。本実施形態の変速機1は、第1ギヤ12及び第2ギヤ14を備えた第1軸部材10と、第3ギヤ22及び第4ギヤ24を支持するとともに出力ギヤ25を備えた第2軸部材20と、噛み合い式係合装置30と、摩擦係合装置40とを備えている。噛み合い式係合装置30が、第3ギヤ22及び第4ギヤ24のいずれか一方を第2軸部材20に対して選択的に連結することで、変速機1は、回転電機2側からの回転を2段階に変速して車輪W側に伝達することができる。摩擦係合装置40は、噛み合い式係合装置30が第4ギヤ24を第2軸部材20に対して連結する際に、係合状態となることで、第4ギヤ24と第2軸部材20との回転速度を同期させる。
【0017】
本実施形態では、噛み合い式係合装置30は、軸方向Lにおいて、第3ギヤ22と第4ギヤ24との間に配置されている。また、摩擦係合装置40は、第3ギヤ22及び第4ギヤ24に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、出力ギヤ25は、第3ギヤ22及び第4ギヤ24に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0018】
差動歯車機構3は、差動入力ギヤ3Aを備えており、この差動入力ギヤ3Aに入力される変速機1側からの回転及びトルクを、一対の出力部材4に分配して伝達する。一対の出力部材4は、それぞれが車輪Wに駆動連結されている。このように、回転電機2の側から伝達される回転が、変速機1を介して差動歯車機構3に伝達され、さらに差動歯車機構3により一対の出力部材4に分配され、さらに一対の車輪Wに伝達される。これにより、車両用駆動装置100は、回転電機2のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0019】
図2に示すように、ケース6は、第1ケース部6Aと第2ケース部6Bと第3ケース部6Cとを備えている。第1ケース部6Aは、第2ケース部6Bに対して軸方向第1側L1から接合されている。第1ケース部6Aは、変速機1及び差動歯車機構3を収容している。第1ケース部6Aは、変速機1及び差動歯車機構3の径方向外側を覆う第1周壁部6Aaと、変速機1及び差動歯車機構3の軸方向第1側L1を覆う第1支持壁部6Abとを備えている。第2ケース部6Bは回転電機2を収容している。第2ケース部6Bは、回転電機2の径方向外側を覆う第2周壁部6Baと、回転電機2の軸方向第1側L1を覆う第2支持壁部6Bbとを備えている。図示の例では、変速機1及び差動歯車機構3の一部も、第2ケース部6Bに収容されている。第3ケース部6Cは、第1ケース部6A及び第2ケース部6Bの内部で、変速機1及び差動歯車機構3の収容空間と回転電機2の収容空間とを区画している。
【0020】
図2及び図3に示すように、変速機1は、第1ギヤ12及び第2ギヤ14を備えた第1軸部材10と、第3ギヤ22及び第4ギヤ24を支持するとともに出力ギヤ25を備えた第2軸部材20と、噛み合い式係合装置30と、摩擦係合装置40とを備えている。
【0021】
第1軸部材10は、変速機1の入力部材(変速入力部材)として機能する。第1軸部材10は、ロータ軸2Cに対して軸方向第1側L1に配置されている。第1軸部材10は、その軸方向第2側L2の端部がロータ軸2Cに挿入された状態で、当該ロータ軸2Cと一体的に回転するように連結されている。また、第1軸部材10は、軸方向Lの2箇所で、第1軸受92によってケース6に対して回転自在に支持されている。第1軸部材10は、軸方向第1側L1において、第1ケース部6Aに対して回転自在に支持され、軸方向第2側L2において、第3ケース部6Cに対して回転自在に支持されている。
【0022】
本実施形態では、第1ケース部6Aの第1支持壁部6Abには、軸方向第2側L2に突出する筒状の第1筒状支持部61が形成されている(図3を参照)。この第1筒状支持部61に、一対の第1軸受92のうちの1つが内嵌されている。
【0023】
第1ギヤ12及び第2ギヤ14は、第1軸部材10と一体的に回転するように当該第1軸部材10に連結されている。本実施形態では、第1ギヤ12は、第1軸部材10の外周面に形成されている。第1ギヤ12は、第3ギヤ22に噛み合っている。また、第2ギヤ14は、第1軸部材10と一体的に回転するように当該第1軸部材10に連結された第2ギヤ形成部材13の外周面に形成されている。第2ギヤ14は、第4ギヤ24に噛み合っている。第2ギヤ14は、第1ギヤ12に対して、軸方向第1側L1に間隔を空けて配置されている。
【0024】
第2軸部材20は、第1軸部材10と平行に配置されている。第2軸部材20の軸方向Lの配置領域は、第1軸部材10の軸方向Lの配置領域に重複している。本実施形態では、第2軸部材20の軸方向Lの配置領域は、第1軸部材10の軸方向Lの配置領域に包含されている。また、第2軸部材20は、軸方向Lの2箇所で、第2軸受93によってケース6に対して回転自在に支持されている。第2軸部材20は、軸方向第1側L1において、第1ケース部6Aに対して回転自在に支持され、軸方向第2側L2において、第3ケース部6Cに対して回転自在に支持されている。
【0025】
本実施形態では、第1ケース部6Aの第1支持壁部6Abには、軸方向第2側L2に突出する筒状の第2筒状支持部62が形成されている(図3を参照)。この第2筒状支持部62に、一対の第2軸受93のうちの1つが内嵌されている。
【0026】
第3ギヤ22及び第4ギヤ24は、第2軸部材20と相対回転可能な状態で当該第2軸部材20に支持されている。本実施形態では、第3ギヤ22は、第2軸部材20に対して軸受を介して回転可能に支持された第3ギヤ形成部材21の外周面に形成されている。第3ギヤ22は、第1ギヤ12に噛み合っている。また、第4ギヤ24は、第2軸部材20に対して軸受を介して回転可能に支持された第4ギヤ形成部材23の外周面に形成されている。第4ギヤ24は、第2ギヤ14に噛み合っている。図示の例では、第3ギヤ形成部材21及び第4ギヤ形成部材23を支持する軸受には、針状ころ軸受が用いられている。
【0027】
なお、本実施形態では、第1ギヤ12は第2ギヤ14よりも小径であり、それに対応して、第3ギヤ22は第4ギヤ24よりも大径となっている。
【0028】
出力ギヤ25は、第2軸部材20と一体的に回転するように当該第2軸部材20に連結されている。本実施形態では、出力ギヤ25は、第2軸部材20の外周面に形成されている。出力ギヤ25は、第3ギヤ22が形成された第3ギヤ形成部材21に対して軸方向第2側L2に隣接する位置に形成されている。出力ギヤ25は、変速機1の出力部材(変速出力部材)として機能する。出力ギヤ25は、差動歯車機構3の差動入力ギヤ3Aに噛み合っている。
【0029】
図3に示すように、噛み合い式係合装置30は、第1係合部31と、第2係合部32と、第3係合部33と、切替部材35とを備えている。
【0030】
第1係合部31は、第2軸部材20と一体的に回転するように当該第2軸部材20に連結されている。本実施形態では、第1係合部31は、第2軸部材20と一体的に回転するように当該第2軸部材20に連結された連結部材31Aの外周面に形成されている。第1係合部31は、外歯の係合部となっている。
【0031】
第2係合部32は、第3ギヤ22と一体的に回転するように当該第3ギヤ22に連結されている。本実施形態では、第2係合部32は、外周面に第3ギヤ22が形成された第3ギヤ形成部材21に形成されている。第2係合部32は、第1係合部31に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第2係合部32は、第1係合部31と同径同ピッチの外歯の係合部となっている。
【0032】
第3係合部33は、第4ギヤ24と一体的に回転するように当該第4ギヤ24に連結されている。本実施形態では、第3係合部33は、外周面に第4ギヤ24が形成された第4ギヤ形成部材23に形成されている。第3係合部33は、第1係合部31に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。第3係合部33は、第1係合部31及び第2係合部32と同径同ピッチの外歯の係合部となっている。
【0033】
切替部材35は、連結部材31Aの径方向Rの外側を覆う筒状に形成されている。そして、切替部材35の内周面には、それぞれが外歯の第1係合部31、第2係合部32、及び第3係合部33に噛み合う内歯の係合部が形成されている。切替部材35の内歯と第1係合部31、第2係合部32、及び第3係合部33の外歯とは、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する。
【0034】
噛み合い式係合装置30は、切替部材35が第1係合部31及び第2係合部32の両方に係合した状態で、第3ギヤ22と第2軸部材20とを一体的に回転するように連結する。また、噛み合い式係合装置30は、切替部材35が第1係合部31及び第3係合部33の両方に係合した状態で、第4ギヤ24と第2軸部材20とを一体的に回転するように連結する。このようにして、噛み合い式係合装置30は、第3ギヤ22及び第4ギヤ24のいずれか一方を第2軸部材20に対して選択的に連結する。第3ギヤ22と第2軸部材20とが一体的に回転するように連結された状態で、回転電機2の駆動力は、互いに噛み合う第1ギヤ12と第3ギヤ22とを介して車輪W側に伝達される。一方、第4ギヤ24と第2軸部材20とが一体的に回転するように連結された状態で、回転電機2の駆動力は、互いに噛み合う第2ギヤ14と第4ギヤ24とを介して車輪W側に伝達される。
【0035】
なお、切替部材35が第1係合部31に係合しているが、第2係合部32及び第3係合部33の両方に係合していない状態では、噛み合い式係合装置30は非係合状態(解放状態)となる。そして、噛み合い式係合装置30が非係合状態で、かつ、摩擦係合装置40も非係合状態では、変速機1は駆動力を伝達しないニュートラル状態となる。
【0036】
図3及び図4に示すように、摩擦係合装置40は、第1支持部材41と、第2支持部材42と、第1摩擦材43と、第2摩擦材44と、第1押圧部材45と、第2押圧部材46と、押圧駆動部49とを備えている。
【0037】
第1支持部材41は、第1摩擦材43を支持するための部材であり、回転可能に支持されている。第1支持部材41は、第1摩擦材支持部41Aと第1径方向延在部41Bと軸連結部41Cとを備えている。これらは、一体的に形成されている。第1摩擦材支持部41Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成されており、第1摩擦材43を径方向Rの内側から支持している。第1摩擦材支持部41Aの外周面には、外歯が形成されている。第1径方向延在部41Bは、第1摩擦材支持部41Aから径方向Rの内側へ向けて延在している。本実施形態では、第1径方向延在部41Bは、第1摩擦材支持部41Aの軸方向第2側L2の端部から径方向Rの内側へ向けて延在している。
【0038】
軸連結部41Cは、第1径方向延在部41Bの下端部から軸方向Lに延在している。軸連結部41Cは、軸方向Lに沿う筒状に形成されており、第2軸部材20に外挿されている。軸連結部41Cは、第2軸部材20と一体的に回転するように連結されている。これにより、第1支持部材41の全体が、第2軸部材20と一体的に回転するように連結されている。第1支持部材41を構成する各部のうち、第1径方向延在部41Bは、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0039】
第2支持部材42は、第2摩擦材44を支持するための部材であり、第1支持部材41とは独立して回転可能に支持されている。第2支持部材42は、第2摩擦材支持部42Aと第2径方向延在部42Bとを備えている。これらは、一体的に形成されている。第2摩擦材支持部42Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成されており、第2摩擦材44を径方向Rの外側から支持している。第2摩擦材支持部42Aの内周面には、内歯が形成されている。第2摩擦材支持部42Aは、第1摩擦材支持部41Aよりも径方向Rの外側に、第1摩擦材支持部41Aと同軸に配置されている。
【0040】
第2径方向延在部42Bは、第2摩擦材支持部42Aから径方向Rの内側へ向けて延在している。本実施形態では、第2径方向延在部42Bは、第2摩擦材支持部42Aの軸方向第2側L2の端部から径方向Rの内側へ向けて延在している。第2径方向延在部42Bは、第1径方向延在部41Bに対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。また、第2径方向延在部42Bは、第4ギヤ形成部材23に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。第2径方向延在部42Bは、第4ギヤ24が形成された第4ギヤ形成部材23と一体的に回転するように連結されている。これにより、第2支持部材42の全体が、第4ギヤ24と一体的に回転するように連結されている。
【0041】
第1摩擦材43は、軸方向Lに複数枚並んで配置されている。それぞれの第1摩擦材43の内周面には、第1摩擦材支持部41Aの外歯に噛み合う内歯が形成されている。第1摩擦材43は、第1摩擦材支持部41Aの外周面に、当該第1摩擦材支持部41Aに対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に支持されている。
【0042】
第2摩擦材44は、軸方向Lに複数枚並んで配置されている。第1摩擦材43と第2摩擦材44とは、軸方向Lに交互に配置されており、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。それぞれの第2摩擦材44の外周面には、第2摩擦材支持部42Aの内歯に噛み合う外歯が形成されている。第2摩擦材44は、第2摩擦材支持部42Aの内周面に、当該第2摩擦材支持部42Aに対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に支持されている。
【0043】
第1押圧部材45は、第2押圧部材46と協働して、第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに押し付けるように押圧する。第1押圧部材45は、第1摩擦材43及び第2摩擦材44に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1押圧部材45は、第1摩擦材支持部41Aの外歯に噛み合う内歯を備えており、第1摩擦材支持部41Aに対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に支持されている。こうして、第1押圧部材45は、第1支持部材41と一体的に回転するとともに当該第1支持部材41に対して軸方向Lに移動自在に支持されている。第1押圧部材45は、第2押圧部材46を介して押圧駆動部49により軸方向Lに駆動された場合に、第1摩擦材43及び第2摩擦材44を軸方向第1側L1から押圧して第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに圧接する。
【0044】
第1押圧部材45は、摺動部45Aと押圧部45Bとを備えている。摺動部45Aは、第1摩擦材支持部41Aよりも径方向Rの内側に配置されており、当該第1摩擦材支持部41Aの内周面に沿って摺動する。本実施形態では、摺動部45Aにおける第1摩擦材支持部41Aの内周面に対向する面(摺動対向面)と第1摩擦材支持部41Aの内周面との間に、シール部材51が配置されている。摺動部45Aは、径方向Rに沿って延在するように形成されている。本例では、摺動部45Aは、第1摩擦材支持部41Aと第1支持部材41の軸連結部41Cとに亘るように径方向Rに沿って形成されている。また、摺動部45Aは、保持部材47によって保持された付勢部材48によって、軸方向第1側L1に向けて付勢されている。付勢部材48は、軸方向Lにおける、第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに押し付ける側とは反対側へ向けて第1押圧部材45を付勢する。このような付勢部材48として、本実施形態ではリターンスプリングが用いられている。
【0045】
押圧部45Bは、摺動部45Aから径方向Rの外側に延びている。押圧部45Bは、第1摩擦材支持部41Aよりも径方向Rの外側に配置されている。押圧部45Bは、第1摩擦材支持部41Aと第2摩擦材支持部42Aとの径方向Rの間に配置される部分を有するように形成されている。押圧部45Bは、摺動部45Aと一体的に軸方向Lに沿って移動して、第1摩擦材43及び第2摩擦材44を押圧する。
【0046】
第2押圧部材46は、第1押圧部材45と協働して、第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに押し付けるように押圧する。第2押圧部材46は、第1押圧部材45に対してさらに軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第2押圧部材46は、間にスラスト軸受95を介して、第1押圧部材45に隣接して配置されている。第2押圧部材46は、ケース6に対して軸方向Lに移動自在に支持されている。第1ケース部6Aの第1支持壁部6Abには、軸方向第2側L2に突出する筒状の第3筒状支持部63が形成されている。第3筒状支持部63は、第2筒状支持部62と同心に、当該第2筒状支持部62よりも大径に形成されている。第2押圧部材46は、径方向Rにおける第2筒状支持部62と第3筒状支持部63との間の環状空間に配置されている。
【0047】
第2押圧部材46は、第3筒状支持部63の内周面及び第2筒状支持部62の外周面に沿って摺動する。本実施形態では、第2押圧部材46における第3筒状支持部63の内周面に対向する面と第3筒状支持部63の内周面との間に、シール部材52が配置されている。また、第2押圧部材46における第2筒状支持部62の外周面に対向する面と第2筒状支持部62の外周面との間に、シール部材53が配置されている。第2押圧部材46は、非回転状態で軸方向Lに移動自在に支持されている。
【0048】
押圧駆動部49は、第2押圧部材46を軸方向Lに駆動する。本実施形態の押圧駆動部49は、油圧室49Aと作動油供給部49Bとを備えている。油圧室49Aは、第2押圧部材46に油圧を作用させるための空間である。本実施形態では、第2筒状支持部62と第3筒状支持部63と第1支持壁部6Abと第2押圧部材46とで囲まれた空間に、油圧室49Aが形成されている。作動油供給部49Bは、油圧室49Aに連通するように設けられており、当該油圧室49Aに油(作動油)を供給する。本実施形態では、作動油供給部49Bにより、「油圧室に油を供給する油供給部」が構成されている。油圧室49A及び作動油供給部49Bは、ケース6(本例では第1ケース部6A)に形成されている。
【0049】
作動油供給部49Bから所定油圧の油が油圧室49Aに供給されると、その油圧によって、第2押圧部材46が軸方向第2側L2に移動する。すると、第2押圧部材46は、スラスト軸受95を介して第1押圧部材45と相対回転自在な状態で、当該第1押圧部材45を軸方向第1側L1から押圧する。これにより、第2押圧部材46及び第1押圧部材45は、連動して第1摩擦材43及び第2摩擦材44を軸方向第2側L2に押圧し、第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに圧接する。
【0050】
このように、摩擦係合装置40は、第1摩擦材43を支持する第1摩擦材支持部41Aを備え、回転可能に支持された第1支持部材41と、第2摩擦材44を支持する第2摩擦材支持部42Aを備え、第1支持部材41とは独立して回転可能に支持された第2支持部材42と、第1支持部材41と一体的に回転するとともに当該第1支持部材41に対して軸方向Lに移動自在に支持され、第1摩擦材43と第2摩擦材44とを互いに押し付けるように第1摩擦材43及び第2摩擦材44を軸方向Lに押圧する第1押圧部材45と、ケース6に対して軸方向Lに移動自在に支持され、第1押圧部材45と相対回転自在な状態で当該第1押圧部材45を軸方向Lに押圧する第2押圧部材46と、第2押圧部材46を軸方向Lに駆動する押圧駆動部49とを備える。
【0051】
この構成によれば、摩擦係合装置40が、単一の押圧部材を備えるのではなく、互いに相対回転する第1押圧部材45と第2押圧部材46とを備え、押圧駆動部49によって軸方向Lに駆動される方の第2押圧部材46が非回転部材であるケース6に対して軸方向Lに移動自在に支持される。これにより、第2押圧部材46を駆動するための作動油は回転せず遠心油圧も加わらないため、摩擦係合装置40の制御性を向上させることができる。
【0052】
摩擦係合装置40が互いに相対回転する第1押圧部材45と第2押圧部材46とを備えることとの関係で、第1支持部材41の第1径方向延在部41Bは、第2押圧部材46よりも軸方向第2側L2で第2軸部材20と一体的に回転するように連結されている。また、第2支持部材42の第2径方向延在部42Bは、第1径方向延在部41Bよりもさらに軸方向第2側L2で第4ギヤ24と一体的に回転するように連結されている。
【0053】
このように、第1支持部材41は、第1摩擦材支持部41Aから径方向Rの内側へ向けて延在する第1径方向延在部41Bをさらに備え、第1摩擦材支持部41Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成され、第1径方向延在部41Bは、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2に配置され、第2支持部材42は、第2摩擦材支持部42Aから径方向Rの内側へ向けて延在する第2径方向延在部42Bをさらに備え、第2摩擦材支持部42Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成され、第2径方向延在部42Bは、第1径方向延在部41Bに対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0054】
この構成によれば、第1支持部材41と第2軸部材20との連結及び第2支持部材42と第4ギヤ24との連結の双方を、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2において行うことができる。よって、第1支持部材41及び第2支持部材42の双方を、第1押圧部材45及び第2押圧部材46の軸方向Lの押圧力の伝達経路と交差しないように配置することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0055】
第2押圧部材46は、第2軸部材20の軸方向第1側L1の端部を支持する第2軸受93と同心に、当該第2軸受93の径方向Rの外側に配置されている。また、第2押圧部材46は、第1軸部材10の軸方向第1側L1の端部を支持する第1軸受92と、外周部どうしを互いに対向させた状態で配置されている。こうして、第2押圧部材46は、第2軸受93に対して径方向Rの外側であって、周方向における一部が第1軸受92と第2軸受93との間に配置されている。そして、本実施形態では、第2押圧部材46の軸方向Lにおける配置領域D3が、第1軸受92の軸方向Lにおける配置領域D1及び第2軸受93の軸方向Lにおける配置領域D2の双方に重複している。なお、「重複」は、全体が重複する場合だけでなく、一部どうしが重複する場合も含む概念である。
【0056】
ここで、第1軸受92の軸方向Lにおける配置領域D1は、軸方向Lにおける当該第1軸受92の外輪及び内輪の最大占有範囲を表す。外輪と内輪とで配置範囲が一致する場合は、当該領域が配置領域D1となる。また、外輪と内輪とで配置範囲が異なる場合において、一方の配置領域が他方の配置領域を包含する場合には、他方を包含する方の配置領域が配置領域D1となる。また、外輪と内輪とで配置範囲が異なる場合において、一方の配置領域と他方の配置領域とが包含関係とはならない場合には、軸方向第1側L1に位置する方の軸方向第1側L1の端部から軸方向第2側L2に位置する方の軸方向第2側L2の端部までの領域が配置領域D1となる。第2軸受93の軸方向Lにおける配置領域D2に関しても同様である。
【0057】
このように、第2押圧部材46は、第2軸受93に対して径方向Rの外側であって、周方向における一部が第1軸受92と第2軸受93との間に配置され、第2押圧部材46の軸方向Lにおける配置領域D3が、第1軸受92の軸方向Lにおける配置領域D1及び第2軸受93の軸方向Lにおける配置領域D2の双方に重複している。
【0058】
この構成によれば、第2押圧部材46の軸方向Lの配置領域D3を第1軸受92の軸方向Lの配置領域D1及び第2軸受93の軸方向Lの配置領域D2の双方と重複させることで、変速機1の軸方向寸法を小さく抑えやすい。制御性向上のために摩擦係合装置40が第1押圧部材45と第2押圧部材46とを備えるように構成しながら、第1軸受92と第2軸受93との間のスペースを利用して第2押圧部材46を配置して、装置全体の大型化を抑制することができる。
【0059】
なお、第1軸受92及び第2軸受93はケース6に固定されているのに対して、第2押圧部材46は軸方向Lに移動可能である。このため、第2押圧部材46の軸方向Lにおける配置領域D3は、軸方向Lにおける第2押圧部材46の最大可動範囲を表すものとする。本実施形態では、第2押圧部材46の軸方向Lにおける配置領域D3は、その全体が第1軸受92の軸方向Lにおける配置領域D1と重複している。また、第2押圧部材46の軸方向Lにおける配置領域D3は、軸方向第1側L1の一部を除く部分が第2軸受93の軸方向Lにおける配置領域D2と重複している。
【0060】
第1軸受92は、その周方向の一部が第2摩擦材支持部42Aよりも径方向Rの内側に位置するように配置されている。そして、図5に示すように、軸方向視で、第1軸受92と第1摩擦材43及び第2摩擦材44とが重複するように配置されている。本実施形態ででは、第1軸受92と第1摩擦材43及び第2摩擦材44とは、それぞれの外周部どうしが部分的に重複するように配置されている。
【0061】
車両用駆動装置100は、第1摩擦材43及び第2摩擦材44を潤滑及び冷却するための構造(以下、単に「潤滑構造」と言う。)を備えている。この潤滑構造は、摩擦係合装置40を支持している第2軸部材20の内部に形成された油路を利用して構成されている。本実施形態では、第2軸部材20の内部に、軸方向油路20aと径方向油路20bとが形成されている。軸方向油路20aは、第2軸部材20の中心部に軸方向Lに沿って直線状に形成されている。径方向油路20bは、軸方向油路20aから径方向Rに沿って延びて第2軸部材20の外周面に開口するように形成されている。径方向油路20bは、軸方向Lの複数箇所に設けられている。本例では、それら複数の径方向油路20bのうち、摩擦係合装置40の軸方向Lにおける配置領域と重複する位置に設けられている径方向油路20bを通った油が、摩擦係合装置40に供給される。
【0062】
軸方向油路20aの軸方向第1側L1の開口部に連通するように、ケース6(本例では第1ケース部6A)に潤滑油供給部55が形成されている。潤滑油供給部55から供給される油(以下、「潤滑油」と言う。)は、第2軸部材20内の軸方向油路20aを通って摩擦係合装置40の径方向Rの内側に供給される。そして、潤滑油は、さらに特定の径方向油路20bを通って摩擦係合装置40に供給される。
【0063】
本実施形態では、第1支持部材41の軸連結部41Cに、その内周面と外周面とを連通する連通油路41dが形成されている。この連通油路41dは、径方向油路20bと連通するように設けられている。このため、径方向油路20bから供給された潤滑油は、さらに連通油路41dを通って、径方向Rの外側にある第1摩擦材支持部41A側の空間(油溜め部56)に供給される。ここで、油溜め部56は、第1摩擦材支持部41Aの内周面と第1径方向延在部41Bと摺動部45Aとに囲まれた領域に形成される、潤滑油が溜まる部位である。第1支持部材41は第2軸部材20と共に回転するため、遠心油圧によって、油溜め部56において、潤滑油は第1摩擦材支持部41Aの内周面側に溜まる。本実施形態では、潤滑油供給部55、軸方向油路20a、径方向油路20b、及び連通油路41dにより、「油溜め部に油を供給する油供給部」が構成されている。
【0064】
第1支持部材41の第1摩擦材支持部41Aに、第1油路81が設けられている。第1油路81は、第1摩擦材支持部41Aの内周面と外周面とを連通するように設けられており、油溜め部56と第1摩擦部材及び第2摩擦部材が配置された領域(摩擦材配置領域P)とを連通する。本実施形態では、第1油路81は、第1摩擦材支持部41Aを径方向Rに貫通するように形成されている。また、第1油路81は、軸方向L及び周方向に分散して複数設けられている。油溜め部56に溜まった潤滑油は、遠心油圧により、第1油路81を通って摩擦材配置領域Pに供給され、第1摩擦材43及び第2摩擦材44を潤滑及び冷却する。
【0065】
第1油路81を通って摩擦材配置領域Pに供給される油量に比べて軸方向油路20a側から油溜め部56に流入する油量が多ければ多いほど、油溜め部56にはより多くの潤滑油が溜まるようになる。特に本実施形態では、第1押圧部材45の摺動部45Aと第1摩擦材支持部41Aとの間にシール部材51が配置されており、これらの間の油密性が高くなっているので、油溜め部56には潤滑油が溜まりやすい。油溜め部56に溜まる潤滑油の量が多くなり過ぎると、溜まった潤滑油に遠心油圧が生じて、付勢部材48とは別に第1押圧部材45を押し戻すように作用する場合がある。このような遠心油圧はばらつきが大きいため、摩擦係合装置40の制御性が悪くなる可能性がある。
【0066】
そこで本実施形態では、第1支持部材41に、第1油路81とは別に、第2油路82がさらに設けられている。第2油路82は、油溜め部56と摩擦材配置領域P以外の空間とを連通するように設けられている。より具体的には、第2油路82は、第1支持部材41の第1径方向延在部41Bを軸方向Lに貫通するように形成されている。これにより、第2油路82は、油溜め部56と、第1支持部材41の第1径方向延在部41Bと第2支持部材42の第2径方向延在部42Bとの軸方向Lの間の空間とを連通している。第2油路82を通って油溜め部56から流出した潤滑油は、その後、第2摩擦材支持部42Aに形成された貫通穴42cから、第2支持部材42の外側に排出される。
【0067】
第2油路82における油溜め部56側に開口する開口部(第2開口部82a)は、第1油路81における油溜め部56側に開口する開口部(第1開口部81a)に対して径方向Rの内側に離間して配置されている。これにより、油溜め部56には第2開口部82aの位置に応じた一定量の潤滑油が溜まるようにして第1摩擦材43及び第2摩擦材44の潤滑及び冷却を適切に行えるようにしつつ、油溜め部56に溜まる油の量が多くなり過ぎないように規制することができる。よって、油溜め部56に溜まる油による遠心油圧によって第1押圧部材45が受ける影響を少なく抑えることができる。
【0068】
このように、第1摩擦材支持部41Aに、油溜め部56と第1摩擦部材及び第2摩擦部材が配置された摩擦材配置領域Pとを連通する第1油路81が設けられ、第1支持部材41及び第1押圧部材45の少なくとも一方に、油溜め部56と摩擦材配置領域P以外の空間とを連通する第2油路82が設けられ、第1油路81における油溜め部56側に開口する開口部を第1開口部81aとし、第2油路82における油溜め部56側に開口する開口部を第2開口部82aとして、第2開口部82aが第1開口部81aに対して径方向Rの内側に離間して配置されている。
【0069】
この構成によれば、潤滑油供給部55から供給されて油溜め部56に溜まった油を、第1油路81を介して摩擦材配置領域Pに供給することができる。よって、第1摩擦材43及び第2摩擦材44の潤滑を適切に行うことができる。また、油溜め部56に溜まった油のうち、第2開口部82aよりも径方向Rの内側にある油を、第2油路82を介して、油溜め部56の外に排出することができる。これにより、油溜め部56に溜まる油の量が多くなり過ぎないように規制することができる。よって、油溜め部56に溜まる油による遠心油圧によって第1押圧部材45が受ける影響を少なく抑えることができ、その結果、摩擦係合装置40の制御性を向上させることができる。
【0070】
本実施形態では、第2開口部82aは、シール部材51よりも径方向Rの内側に配置されている。これにより、油溜め部56に溜まる潤滑油の量を一定量以上確保することができる。また、第2開口部82aは、第1径方向延在部41Bの径方向Rの中央よりも径方向Rの外側に配置されている。さらに第2開口部82aは、付勢部材48よりも径方向Rの外側に配置されている。これにより、油溜め部56に溜まる潤滑油の量を適量に抑え、遠心油圧によって第1押圧部材45が受ける影響を極めて小さくすることができる。
【0071】
以上、本実施形態の車両用駆動装置100について説明してきたが、これまで述べた主な特徴及び効果以外に、以下の特徴及び効果を有する。
【0072】
押圧駆動部49は、第2押圧部材46に油圧を作用させるための油圧室49Aと、当該油圧室49Aに油を供給する作動油供給部49Bと、を備え、油圧室49A及び作動油供給部49Bが、ケース6に形成されている。
【0073】
この構成によれば、押圧駆動部49を構成する油圧室49A及び作動油供給部49Bがケース6に形成されるので、押圧駆動部49を回転体に配置する場合とは異なり、当該押圧駆動部49に遠心油圧が作用することがない。このため、遠心油圧を打ち消すための構造を設ける必要がなく、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0074】
第1支持部材41は、第1摩擦材支持部41Aから径方向Rの内側へ向けて延在する第1径方向延在部41Bをさらに備え、第1摩擦材支持部41Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成され、第1径方向延在部41Bは、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2に配置され、第2支持部材42は、第2摩擦材支持部42Aから径方向Rの内側へ向けて延在する第2径方向延在部42Bをさらに備え、第2摩擦材支持部42Aは、軸方向Lに沿う筒状に形成され、第2径方向延在部42Bは、第1径方向延在部41Bに対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0075】
この構成によれば、第1支持部材41と第2軸部材20との連結及び第2支持部材42と第4ギヤ24との連結の双方を、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2において行うことができる。よって、第1支持部材41及び第2支持部材42の双方を、第1押圧部材45及び第2押圧部材46の軸方向Lの押圧力の伝達経路と交差しないように配置することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0076】
車両用駆動装置100は、変速機1と、第1軸部材10と同軸上に配置されて第1軸部材10と駆動連結されたロータ2Bを備えた回転電機2と、それぞれが車輪Wに駆動連結される一対の出力部材4と、差動歯車機構3と、を備え、回転電機2の側から伝達される回転が、変速機1を介して差動歯車機構3に伝達され、さらに差動歯車機構3により一対の出力部材4に分配され、変速機1は、第2軸部材20と一体的に回転するように当該第2軸部材20に連結された出力ギヤ25をさらに備え、第1軸部材10及びロータ2Bが配置された軸を第1軸X1、第2軸部材20が配置された軸を第2軸X2として、差動歯車機構3は、第1軸X1及び第2軸X2に平行な第3軸X3上に配置されて、出力ギヤ25に噛み合う差動入力ギヤ3Aを備える。
【0077】
この構成によれば、回転電機2の駆動力を、変速機1及び差動歯車機構3を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両を駆動することができる。噛み合い式係合装置30と摩擦係合装置40とを併用した変速機1の採用により、エネルギー効率の向上と変速動作の円滑性の向上との双方を図ることができる。変速機1の装置構成の複雑化が抑えられているので、車両用駆動装置100全体としても、その大型化を抑制することができる。また、変速機1に備えられる摩擦係合装置40の制御性が向上されていることによっても、変速動作の円滑性のさらなる向上を図ることができる。
【0078】
第1摩擦材43は、第1摩擦材支持部41Aの外周面に支持されており、第1油路81は、第1摩擦材支持部41Aを径方向Rに貫通するように形成され、第2油路82は、第1支持部材41の第1径方向延在部41Bを軸方向Lに貫通するように形成されている。
【0079】
この構成によれば、第1摩擦材支持部41Aを径方向Rに貫通する第1油路81により、遠心油圧を利用して第1摩擦材43及び第2摩擦材44に油を供給し、これらの潤滑を適切に行うことができる。また、構造が複雑になりやすい第1押圧部材45ではなく、第1支持部材41に第2油路82を設けることで、第2油路82の配置自由度が高くなる。よって、油溜め部56に溜まる油を、第2油路82を介して適切に排出する構成を容易に実現できる。
【0080】
摺動部45Aに、第1押圧部材45を摩擦材配置領域Pから離間させるように軸方向Lに付勢する付勢部材48が取り付けられており、第2開口部82aは、付勢部材48よりも径方向Rの外側に配置されている。
【0081】
この構成によれば、第2開口部82aの位置を第1摩擦材支持部41A側に比較的寄せて配置することができ、油溜め部56に溜まる油を比較的少量に抑えることができる。よって、遠心油圧によって第1押圧部材45が受ける影響をさらに少なく抑えることができ、摩擦係合装置40の制御性をさらに向上させることができる。
【0082】
摺動部45Aは、第1摩擦材支持部41Aよりも径方向Rの内側に配置され、径方向Rに沿って延在するように形成され、摺動部45Aにおける第1摩擦材支持部41Aの内周面に対向する面である摺動対向面と、第1摩擦材支持部41Aの内周面との間にシール部材51が配置されている。
【0083】
この構成によれば、シール部材51を設けることにより、第1摩擦材支持部41Aの内周面に沿う領域に形成された油溜め部56に適切に油を溜めることができ、それによって第1摩擦材43及び第2摩擦材44の潤滑を適切に行うことができる。一方、そのようなシール部材51の存在によって、油溜め部56からの油の排出がほとんど行われない構造となるが、第2油路82を設けることで油の一部を油溜め部56の外に排出することができるので、油溜め部56に溜まる油を一定量以下に規制できる。
【0084】
車両用駆動装置100は、摩擦係合装置40と、第1軸X1上に配置されたロータ2Bを備え、車輪Wの駆動力源として機能する回転電機2と、それぞれが車輪Wに駆動連結される一対の出力部材4と、回転電機2の側から伝達される回転を変速する変速機1と、変速機1から伝達される回転を、一対の出力部材4に分配する差動歯車機構3と、回転電機2、変速機1、及び差動歯車機構3を収容する、ケース6としてのケース6と、を備え、変速機1は、第1軸X1上に配置された第1軸部材10と、第1軸部材10と一体的に回転するように連結された第1ギヤ12及び第2ギヤ14と、第1軸X1に平行な第2軸X2上に配置された第2軸部材20と、第2軸部材20に対して相対回転可能に支持された第3ギヤ22及び第4ギヤ24と、第2軸部材20と一体的に回転するように連結された出力ギヤ25と、を備え、第1ギヤ12と第3ギヤ22とが互いに噛み合うとともに、第2ギヤ14と第4ギヤ24とが互いに噛み合い、第3ギヤ22及び第4ギヤ24のいずれか一方を第2軸部材20に対して選択的に連結する噛み合い式係合装置30が、第2軸X2上であって、第3ギヤ22と第4ギヤ24との軸方向Lの間に配置され、差動歯車機構3は、第1軸X1及び第2軸X2に平行な第3軸X3上に配置されて、出力ギヤ25に噛み合う差動入力ギヤ3Aを備え、摩擦係合装置40が、第2軸X2上であって、第3ギヤ22及び第4ギヤ24に対して軸方向Lの一方側に配置されている。
【0085】
この構成によれば、回転電機2の駆動力を、変速機1及び差動歯車機構3を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両を駆動することができる。噛み合い式係合装置30と摩擦係合装置40とを併用した変速機1の採用により、エネルギー効率の向上と変速動作の円滑性の向上との双方を図ることができる。特に、変速機1に備えられる摩擦係合装置40の制御性が向上されていることにより、変速動作の円滑性のさらなる向上を図ることができる。
【0086】
ケース6は、第2軸受93を径方向R外側から支持する第3筒状支持部63を備え、押圧駆動部49は、第2押圧部材46に油圧を作用させるための油圧室49Aと、当該油圧室49Aに油を供給する作動油供給部49Bと、を備え、作動油供給部49Bが、ケース6に形成され、油圧室49Aの内周面は、第3筒状支持部63の外周面を用いて形成されている。
【0087】
この構成によれば、第2軸受93を支持するためのケース6の構造(第3筒状支持部63)を利用して油圧室49Aを形成することで、押圧駆動部49を小型化することが容易となる。
【0088】
第1軸受92は、第1軸部材10の軸方向第1側L1の端部を支持し、第2軸受93は、第2軸部材20の軸方向第1側L1の端部を支持している。
【0089】
この構成によれば、軸方向Lにおける配置領域が互いに重複する第1軸受92と第2軸受93とによって、第1軸部材10及び第2軸部材20の双方が軸方向第1側L1の端部を支持されるので、これら第1軸部材10及び第2軸部材20の軸方向第1側L1への突出量を小さく抑えることができる。よって、変速機1の軸方向L寸法を小さく抑えやすい。
【0090】
第1軸部材10に、第1ギヤ12と第2ギヤ14とが支持されており、第2軸部材20に、第1ギヤ12に噛み合う第3ギヤ22と第2ギヤ14に噛み合う第4ギヤ24とが支持されており、第2ギヤ14及び第4ギヤ24は、第1ギヤ12及び第3ギヤ22に対して軸方向第1側L1に配置され、摩擦係合装置40は、第4ギヤ24よりも軸方向第1側L1に配置され、第1支持部材41は、第2軸部材20と一体的に回転するように連結され、第2支持部材42は、第4ギヤ24と一体的に回転するように連結されている。
【0091】
この構成によれば、第1支持部材41と第2軸部材20との連結及び第2支持部材42と第4ギヤ24との連結の双方を、第1押圧部材45に対して軸方向第2側L2において行いやすい。その結果、第1支持部材41及び第2支持部材42の双方を、第1押圧部材45及び第2押圧部材46の軸方向Lの押圧力の伝達経路と交差しないように配置することができる。よって、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0092】
軸方向Lに沿う軸方向視で、第1軸受92と第1摩擦材43及び第2摩擦材44とが重複するように配置されている。
【0093】
この構成によれば、第1軸受92と第1摩擦材43及び第2摩擦材44とを径方向Rにずらして配置した構成に比べて、変速機1の径方向R寸法を小さく抑えることができる。よって、装置全体の大型化を効果的に抑制することができる。
【0094】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、回転電機2が第1軸部材10と駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、回転電機2が第2軸部材20と駆動連結され、回転電機2と噛み合い式係合装置30と摩擦係合装置40とが第2軸X2上において同軸に配置されても良い。この場合、第1軸部材10に出力ギヤ25が形成されると良い。
【0095】
(2)上記の実施形態では、第1支持部材41に、油溜め部56と摩擦材配置領域P以外の空間とを連通する第2油路82が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1押圧部材45に第2油路82が設けられても良い。或いは、第1支持部材41及び第1押圧部材45の両方に第2油路82が設けられても良い。
【0096】
(3)上記の実施形態では、第1油路81が第1摩擦材支持部41Aを径方向Rに貫通するように形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1油路81が径方向Rに対して傾斜した方向に沿うように形成されても良い。
【0097】
(4)上記の実施形態では、第2油路82が第1径方向延在部41Bを軸方向Lに貫通するように形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第2油路82が軸方向Lに対して傾斜した方向に沿うように形成されても良い。
【0098】
(5)上記の実施形態では、第2油路82の油溜め部56側に開口する第2開口部82aがシール部材51よりも径方向Rの内側であって付勢部材48よりも径方向Rの外側となる位置に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2開口部82aの位置は、第1開口部81aに対して径方向Rの内側に離間していれば任意の位置であって良い。例えば第2開口部82aは、軸方向視でシール部材51と重複する位置に配置されていても良いし、第1径方向延在部41Bにおける軸連結部41Cの近傍に配置されていても良い。
【0099】
(6)上記の実施形態では、押圧駆動部49が油圧室49Aと作動油供給部49Bとを備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば押圧駆動部49が電動アクチュエータ等を備えて構成されても良い。
【0100】
(7)上記の実施形態では、付勢部材48としてコイルバネを用いて構成されたリターンスプリングを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば付勢部材48として板バネ等を用いても良い。
【0101】
(8)上記の実施形態では、摺動部45Aと第1摩擦材支持部41Aとの間にシール部材51が配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、そのようなシール部材51が設けられていなくても良い。
【0102】
(9)上記の実施形態では、第2押圧部材46の軸方向Lの配置領域D3の全体が、第1軸受92の軸方向Lの配置領域D1に含まれているとともに、第2軸受93の軸方向Lの配置領域D2と部分的に重複する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第2押圧部材46の軸方向Lの配置領域D3の全体が、第1軸受92の軸方向Lの配置領域D1及び第2軸受93の軸方向Lの配置領域D2の両方に含まれていても良い。或いは、第2押圧部材46の軸方向Lの配置領域D3が、第1軸受92の軸方向Lの配置領域D1及び第2軸受93の軸方向Lの配置領域D2のそれぞれと部分的に重複していても良い。
【0103】
(10)上記の実施形態では、車両用駆動装置100を電動車両用の駆動装置に適用した構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本開示の技術は、例えば所謂エンジン車両や、エンジンと回転電機2とを併用するハイブリッド車両等、他のタイプの車両用駆動装置にも適用することが可能である。
【0104】
(11)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1:変速機、2:回転電機、2A:ステータ、2B:ロータ、2C:ロータ軸、3:差動歯車機構、3A:差動入力ギヤ、4:出力部材、6:ケース、6A:第1ケース部、6Aa:第1周壁部、6Ab:第1支持壁部、6B:第2ケース部、6Ba:第2周壁部、6Bb:第2支持壁部、6C:第3ケース部、10:第1軸部材、12:第1ギヤ、13:第2ギヤ形成部材、14:第2ギヤ、20:第2軸部材、20a:軸方向油路、20b:径方向油路、21:第3ギヤ形成部材、22:第3ギヤ、23:第4ギヤ形成部材、24:第4ギヤ、25:出力ギヤ、30:噛み合い式係合装置、31:第1係合部、31A:連結部材、32:第2係合部、33:第3係合部、35:切替部材、40:摩擦係合装置、41:第1支持部材、41A:第1摩擦材支持部、41B:第1径方向延在部、41C:軸連結部、41d:連通油路、42:第2支持部材、42A:第2摩擦材支持部、42B:第2径方向延在部、43:第1摩擦材、44:第2摩擦材、45:第1押圧部材、45A:摺動部、45B:押圧部、46:第2押圧部材、47:保持部材、48:付勢部材、49:押圧駆動部、49A:油圧室、49B:作動油供給部、51:シール部材、52:シール部材、53:シール部材、55:潤滑油供給部、56:油溜め部、61:第1筒状支持部、62:第2筒状支持部、63:第3筒状支持部、81:第1油路、81a:第1開口部、82:第2油路、82a:第2開口部、91:ロータ軸受、92:第1軸受、93:第2軸受、95:スラスト軸受、100:車両用駆動装置、D1:配置領域、D2:配置領域、D3:配置領域、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、P:摩擦材配置領域、R:径方向、W:車輪、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸
図1
図2
図3
図4
図5