(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】自動車のサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 3/20 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B60G3/20
(21)【出願番号】P 2021058033
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】平松 大弥
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-186649(JP,A)
【文献】国際公開第2003/008212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、
車体側の連結部から車両後方側に延び、車軸より車両上方側で上記ホイールサポートに連結されるアッパアームと、
車体側の連結部から車両前方側に延び、車軸より車両上方側で上記ホイールサポートに連結されるリーディングアームと、
車体側の連結部から車両後方側に延び、車軸より車両下方側で上記ホイールサポートに連結されるトレーリングアームと、
車体側の連結部から車両前方側に延び、車軸より車両下方側で上記ホイールサポートに連結されるロアアームと、
車体側の連結部から車幅方向に延び、上記ロアアームより車両後方側で上記ホイールサポートに連結されるトーコントロールアームと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、
側面視において、上記リーディングアームのホイールサポートとの連結部および上記トレーリングアームのホイールサポートとの連結部が、上記ホイールサポートの上記開口部よりも車両前方側において、ほぼ鉛直線上に配置されている、ことを特徴とする自動車のサスペンション装置。
【請求項2】
上記ホイールサポートにおける上記開口部より車両前方側の部分には、車幅方向内方に突出する縦壁部が形成され、この縦壁部の上部に上記リーディングアームが連結され、上記縦壁部の下部に上記トレーリングアームが連結されている、請求項1に記載の自動車のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンション装置に関し、特に、5本のIリンクによって構成した後輪のマルチリンク式サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチリンク式サスペンションとして、5本のIリンク(以下、「アーム」という)を備え、その各アームの車体側の端部が車体に連結され、各アームの車輪側の端部が、車輪を支持するホイールサポート(ハブキャリア)に連結されたものが知られている。このような5本のアームを備えたマルチリンク式サスペンションは、後輪の上下ストロークを除く5つの運動の自由度に対してそれぞれの要求に合わせて最適に拘束するよう各アームを配設することが可能であるので、性能的に高いポテンシャルを有している。
【0003】
このようなマルチリンク式サスペンションにおいて、ホイールサポートと、ホイールサポートの上方部分に連結されるリーティングアームと、ホイールサポートの下方部分に連結されるトレーリングアームとでワッツリンク構成を形成し、これにより、ホイールの上下動を規定するようにしたサスペンションが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、このようなワッツリンク構成を形成する際、トレーリングアームおよびリーディングアームが連結されるホイールサポートは、剛体のリンク要素であること、すなわち、リンク要素として撓み変形が極力少なくなるように剛性が高いものであることが望まれる。しかしながら、ホイールサポートは、その中央部にハブを収容する開口部が形成されており、そのような開口部が形成されている分、撓みやすい。そのため、ワッツリンク構成(ワッツリンク機構)が想定通りに機能せず、車輪の上下動が滑らかにならないことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、トレーリングアームとリーディングアームが連結されるホイールサポートのリンク要素としての剛性を高めることができる自動車のサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、車体側の連結部から車両後方側に延び、車軸より車両上方側でホイールサポートに連結されるアッパアームと、車体側の連結部から車両前方側に延び、車軸より車両上方側でホイールサポートに連結されるリーディングアームと、車体側の連結部から車両後方側に延び、車軸より車両下方側でホイールサポートに連結されるトレーリングアームと、車体側の連結部から車両前方側に延び、車軸より車両下方側でホイールサポートに連結されるロアアームと、車体側の連結部から車幅方向に延び、ロアアームより車両後方側でホイールサポートに連結されるトーコントロールアームと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、側面視において、リーディングアームのホイールサポートとの連結部およびトレーリングアームのホイールサポートとの連結部が、ホイールサポートの開口部よりも車両前方側において、ほぼ鉛直線上に配置されている、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、車体側の連結部から車両前方側に延び、車軸より車両上方側でホイールサポートに連結されるリーディングアームと、車体側の連結部から車両後方側に延び、車軸より車両下方側でホイールサポートに連結されるトレーリングアームとを備え、トレーリングアームのホイールサポートとの連結部およびリーディングアームのホイールサポートとの連結部が、ホイールサポートの開口部よりも車両前方側において、ほぼ鉛直線上に配置されている。したがって、ホイールサポートの前方部分を、リーディングアームとトレーリングアームの間のワッツリンク要素として機能させることができ、特に、このホイールサポートの前方部分には開口部が形成されていないので、トレーリングアームとリーディングアームが連結されるホイールサポートのリンク要素としての剛性を高めることができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、ホイールサポートにおける開口部より車両前方側の部分には、車幅方向内方に突出する縦壁部が形成され、この縦壁部の上部にリーディングアームが連結され、縦壁部の下部にトレーリングアームが連結されている。
このように構成された本発明によれば、縦壁部により、より効果的に、リーディングアームおよびトレーリングアームが連結されるホイールサポートのリンク要素としての剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車のサスペンション装置によれば、トレーリングアームとリーディングアームが連結されるホイールサポートのリンク要素としての剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図である。
【
図2】
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図である。
【
図3】
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
【
図4】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図である。
【
図5】
図4のリアサスペンションの左側面図である。
【
図7】
図4のリアサスペンションを車幅方向内方から見た図である。
【
図8】
図4のリアサスペンションのリーディングアームとトレーリングアームとホイールサポートによるワッツリンク構成を説明するための上面図である。
【
図9】
図4のリアサスペンションのリーディングアームとトレーリングアームとホイールサポートによるワッツリンク構成を説明するための左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を説明する。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、
図1乃至
図3により、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置の全体構成を説明する。
図1乃至
図3は、本発明の実施形態による自動車の後輪サスペンション装置1(以下、単にリアサスペンションという)を自動車の左右両側の後輪にそれぞれ適用した実施形態を示し、
図1は、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図であり、
図2は、
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図であり、
図3は、
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
本実施形態の自動車(車両)は、図示しないが、車体前部のエンジンルームにエンジンを搭載し、車体後部にディファレンシャルを配設して車軸(図示せず)により後輪2を駆動するようにした後輪駆動車である。
図1乃至
図3に示すように、後輪サスペンション装置1のリアサスペンションアッセンブリは、左右一対のリアサスペンション1とサブフレーム3を備えている。
【0014】
まず、リアサスペンション1の概略構成を説明する。
本実施形態のリアサスペンション1は、独立した5本のIリンク4~8によって後輪2のホイールサポート(支持部材、ハブキャリア)10を車体に対しストローク可能に連結したマルチリンク式のものである。サスペンション装置1は、仮想的に上方のアームを構成する前側のアッパリンク(以下、「アッパアーム」という)4、および、後側のリーディングリンク(以下、「リーディングアーム」という)5と、仮想的に下方のアームを構成する前側のトレーリングリンク(以下、「トレーリングアーム」という)6、および、後側のロアリンク(以下、「ロアアーム」という)7と、後述する仮想キングピン軸IK(
図5参照)周りの後輪2の回動変位を規制するトーコントロールリンク(以下、「トーコントロールアーム」という)8とを備えている。アッパアーム4、リーディングアーム5、トレーリングアーム6およびロアアーム7は、それぞれ車体側の連結部(44、52、60、68)を中心に上下に揺動することによって、ホイールサポート10及び後輪2が所定の軌跡に沿って上下にストロークするようになっている。
【0015】
また、そのような後輪2のストロークを許容しながら、同時に所定の付勢力及び減衰力を付与するための、コイルバネ12およびダンパ14を備えた緩衝装置16が設けられている。この緩衝装置16は、コイルバネ12とダンパ14とがほぼ同軸に配置された上下方向に長い円筒形状を有し、その上端部が車体に取り付けられている。緩衝装置16の下端部(ダンパ14の下端部)は、ロアアーム7に枢着されている。
また、サスペンション装置1には、左右のロアアーム7を連結するように延びるスタビライザーバー18が回動可能に取り付けられている。
【0016】
次に、サブフレーム3の概略構成を説明する。
サブフレーム3は、主に4つの鋼板製部材を平面視で矩形枠状に組み合わせて形成されており、それぞれ車幅方向に延びるフロントクロスメンバ20およびリアクロスメンバ22と、それらの左右両側の端部同士を連結するように車体の左右両側において前後方向に延びる一対のサイドクロスメンバ24、26を備えている。
【0017】
フロントクロスメンバ20は、車両上方から見て、直線状に車幅方向に延び、その車幅方向の両端部20aがそれぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各前端側の箇所に接合されている。フロントクロスメンバ20は、車両前後方向で見ると、その長手方向の中央部分が左右両端部よりも上方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。また、フロントクロスメンバ20の左右両端側には、それぞれサイドクロスメンバ24、26との接合部20aに近接した位置、かつ、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、アッパアーム4の取付座28およびトレーリングアーム6の取付座30が設けられている(
図4乃至
図6参照)。左右両側の取付座28には、それぞれ、アッパアーム4の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座30には、それぞれ、トレーリングアーム6の車体側の端部が連結されており、このような構成により、車輪2から各アーム4、6を介して伝達される横力をフロントクロスメンバ20で受け止めるようになっている。
【0018】
リアクロスメンバ22は、車両上方から見ると直線状に車幅方向に延び、その車幅方向の両端部22aがそれぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各後端側の箇所に接合されている。リアクロスメンバ22は、
図3に示すように、車両前後方向に見るとその長手方向の中央部分が左右両端部よりも下方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。リアクロスメンバ22の左右両端側には、各々サイドクロスメンバ24、26との接合部22aに近接した位置、かつ、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、リーディングアーム5の取付座32およびロアアーム7の取付座34が設けられている(
図4、
図5参照)。左右両側の取付座32には、それぞれ、リーディングアーム5の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座34には、それぞれ、ロアアーム7の車体側の端部が連結されており、このような構成により、車輪2から各アーム5、7を介して伝達される横力をリアクロスメンバ22で受け止めるようになっている。
【0019】
また、リアクロスメンバ22には、上面視で、各サイドクロスメンバ24、26の車幅方向内方、かつ、リアクロスメンバ22の後面側に、トーコントロールアーム8の取付座36が設けられている。左右両側の取付座36には、それぞれ、トーコントロールアーム8の車体側の端部が連結されている。
【0020】
左右のサイドクロスメンバ24、26は、それぞれ、車両上方から見て、その長手方向の中央部分が両端部に比べて車幅方向内方に位置するよう湾曲するとともに、側面視では、後端部から前端部にわたって車両前方に斜め下方に延びている(
図5参照)。これらのサイドクロスメンバ24、26の前側の部分には、上述した取付座28、30が設けられ、その後側の部分には、上述した取付座32、34が設けられている。
【0021】
また、サイドクロスメンバ24、26には、サブフレーム3全体を車体に弾性支持させるための弾性マウント38、40が設けられている、これらの弾性マウント38、40は、各サイドクロスメンバ24、26の前端部および後端部の計4箇所に設けられている。各弾性マウント38、40は、上下方向に軸線を有する円筒形状を有し、各サイドクロスメンバ24、26に形成された凹部に取り付けられている。各サイドクロスメンバ24、26において、各弾性マウント38、40は、車両上方から見て、前端部の弾性マウント38と後端部の弾性マウント40とを結ぶ直線が、車体前後方向の中心線CL(
図2にのみ示す)とほぼ平行になるように配置される。
【0022】
各弾性マウント38、40には、「すぐり」と言われる所定の空隙が形成され、各弾性マウント38、40は、その軸線に対して、前後方向と左右方向とで硬さ(所定のたわみ量(mm)を生じさせる荷重(N)の大きさで示される特性)が異なるよう形成されている。
本実施形態では、各弾性マウント38、40は、いずれも、車両前後方向の硬さに対して車幅方向の硬さが大きくなるような向きとなるよう、サイドクロスメンバ24、26に取り付けられている。
また、本実施形態では、各弾性マウント38、40は、その硬さ自体が互いに異なるものを用いており、前端部の弾性マウント38の車両前後方向の硬さが、後端部の弾性マウント40の車両前後方向の硬さより小さく(柔らかく)なるよう設定されている。
【0023】
次に、
図4乃至
図7により、車両左側のリアサスペンション装置1について、各アーム4~8の配置構成を説明する。
図4は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図であり、
図5は、
図4のリアサスペンションの左側面図であり、
図6は、
図4のリアサスペンションの正面図であり、
図7は、
図4のリアサスペンションを車幅方向内方から見た図である。車両右側のリアサスペンション装置1は、車両左側のリアサスペンション1と同じ構成を有しているので、以下では、その説明を省略する。
【0024】
まず、
図4乃至
図6に示すように、アッパアーム4は、その車体側の端部が弾性ブッシュ(ゴム製のブッシュであり、以下、「ブッシュ」という)42を介して上述した取付座28に連結されている。アッパアーム4は、車両上方から見て、車体側の連結部44から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪2側の連結部46では、アッパアーム4の車輪2側の端部がブッシュ48を介してホイールサポート10に連結されている。
【0025】
次に、リーディングアーム5は、その車体側の端部がブッシュ50を介して上述した取付座32に連結されている。リーディングアーム5は、車両上方から見て、車体側の連結部52から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部54では、リーディングアーム5の車輪2側の端部がブッシュ56を介してホイールサポート10に連結されている。
【0026】
このように、2本の上方のアーム4、5は、車両上方から見て、車体外方側に向かって互いに接近するように配置されている。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ42、50および車輪2側の各ブッシュ48、56にピロボールジョイントを採用している。
【0027】
次に、トレーリングアーム6は、その車体側の端部がブッシュ58を介して上述した取付座30に連結されている。トレーリングアーム6は、車両上方から見て、車体側の連結部60から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪2側の連結部62では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ64を介してホイールサポート10に連結されている。
【0028】
次に、ロアアーム7は、その車体側の端部がブッシュ66を介して上述した取付座34に連結されている。ロアアーム7は、車両上方から見て、車体側の連結部68から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部70では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ72を介してホイールサポート10に連結されている。
【0029】
このように、2本の下方のアーム6、7は、車両上方から見て、車幅方向外方に向かって互いに接近するように配置されており、主にこの配置によって、後輪2にはその車両後方への変位に伴い幾何学的にトーインが付与されるようになる(前後力コンプライアンスステア)。すなわち、たとえば制動時などに路面からの制動力が後輪2に作用すると(車両後方に向く力が作用すると)、2本の下方のアーム6、7がそれぞれブッシュ56、64の撓みによって車体側の端部の周りにわずかに回動変位し、これにより、後輪2のアライメントはトーインの向きに変化する。
また、旋回時に車輪2に横力が加わると、主に下方のアーム6、7の各ブッシュ56、64が撓むことにより、車輪2がトーインの向きに変化するようになっている(横力コンプライアンスステア)。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ58、66および車輪2側の各ブッシュ64、72にピロボールジョイントを採用している。
【0030】
次に、トーコントロールアーム8は、その車体側の端部がブッシュ74を介して上述した取付座36に連結されている。トーコントロールアーム8は、車両上方から見て、車体側の連結部76から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部78では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ80を介してホイールサポート10に連結されている。
本実施形態では、車体側のブッシュ74および車輪2側のブッシュ80にピロボールジョイントを採用している。
【0031】
ここで、
図4乃至
図6に示すように、リアサスペンション1には、アッパアーム4の仮想延長線とリーディングアーム5の仮想延長線との交点P1と、トレーリングアーム6の仮想延長線とロアアーム7の仮想延長線との交点P2とを上下に結ぶ仮想キングピン軸IKが形成される。この仮想キングピン軸は、後輪2の操向方向(トー方向)への回動の瞬間回転中心である。
【0032】
次に、
図4乃至
図7により、ホイールサポート10の構成および各アームの取付構成を説明する。
まず、
図4乃至
図7に示すように、ホイールサポート10には、その中央部に、ハブ82が取り付けられると共に、車軸(図示せず)が貫通する開口部84が形成されている。
また、ホイールサポート10には、開口部84より車両前方側の部分(車軸より車両前方側の部分)に、車幅方向内方に突出する前方縦壁部(アーム取付補強部)86が形成され、この前方縦壁部86に、アッパアーム4、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6が連結されている。すなわち、上述したアッパアーム4、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6の車輪2側の各連結部44、54、62およびブッシュ48、56、64が、この前方縦壁部86に設けられている。
図6に示すように、この前方縦壁部86の外縁には補強リブ86aが形成されている。
【0033】
また、ホイールサポート10には、開口部84の下方部分に、車幅方向内方に突出する下方縦壁部(アーム取付補強部)88が形成され、この下方縦壁部88にロアアーム7が連結されている。すなわち、上述したロアアーム7の車輪2側の連結部70およびブッシュ72が、この下方縦壁部88に設けられている。
【0034】
また、ホイールサポート10には、開口部84より車両後方側の部分(車軸より車両後方側の部分)に、車幅方向内方に突出する後方縦壁部(アーム取付補強部)90が形成され、この後方縦壁部90にトーコントロールアーム8が連結されている。すなわち、上述したトーコントロールアーム8の車輪2側の連結部78およびブッシュ80が、この後方縦壁部90に設けられている。
【0035】
次に、
図8および
図9により、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6のホイールサポート10への連結構造をより詳細に説明する。
図8は、
図4のリアサスペンションのリーディングアーム5とトレーリングアーム6とホイールサポート10によるワッツリンク構成を説明するための上面図であり、
図9は、
図4のリアサスペンションのリーディングアーム5とトレーリングアーム6とホイールサポート10によるワッツリンク構成を説明するための左側面図である。
まず、
図8および
図9に示すように、車両上方および車両側方から見て、リーディングアーム5は、車体側の連結部52から車両前方側に延び、その車輪2側の端部が、連結部54においてホイールサポート10に連結され、また、トレーリングアーム6は、車体側の連結部60から車両後方側に延び、その車輪2側の端部が、連結部62(
図9参照)においてホイールサポート10に連結されている。
【0036】
図9に示すように、リーディングアーム5は、連結部54により、ホイールサポート10の前方縦壁部86の上方部分に連結されている。また、トレーリングアーム6は、連結部62により、ホイールサポート10の前方縦壁部86の下方部分に連結されている。このような配置により、本実施形態のリーディングアーム5およびトレーリングアーム6は、ホイールサポート10に対してワッツリンク構成(ワッツリンク機構)となるよう配置および連結されている。すなわち、ホイールサポート10により縦方向(上下方向)に連結されたリーディングアーム5およびトレーリングアーム6が上下に揺動するようになっている。
【0037】
このようなワッツリンク構成において、
図9に仮想線Aで示すように、リーディングアーム5の車輪2側の連結部54とトレーリングアーム6の車輪2側の連結部62とを結んだ線は、ホイールサポート10の開口部84より車両前方側で、ほぼ鉛直方向に延びている。本実施形態では、この
図9に示すように、ホイールサポート10において、連結部54と連結部62との間、特に仮想線A上には、開口部84が形成されないようにして、ワッツリンクのリンク要素としての剛性を確保している。さらに、連結部54と連結部62とを、剛性を高めた前方縦壁部86で連結することにより、ワッツリンクのリンク要素としての剛性を確保している。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されず、その他の種々の構成を包含するものである。たとえば、本実施形態では左右のリアサスペンション1をサブフレーム3により車体に取り付けるようにしているが、これに限らず、リアサスペンション1を直接、車体に取り付けるようにしてもよい。また、たとえば操安性を高めるために、リーディングアーム6やロアアーム7をボールジョイントを介してホイールサポート10に連結するようにしてもよい。また、ブッシュはゴム製のブッシュに限らず、所要の弾性を備える樹脂製のものであってもよい。
【0039】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態による自動車のサスペンション装置1は、車輪2を支持し、中央部に車軸(図示せず)を貫通させる開口部84が形成されたホイールサポート10と、車体側の連結部44から車両後方側に延び、車軸より車両上方側でホイールサポート10に連結されるアッパアーム4と、車体側の連結部52から車両前方側に延び、車軸より車両上方側でホイールサポートに連結されるリーディングアーム5と、車体側の連結部60から車両後方側に延び、車軸より車両下方側でホイールサポート10に連結されるトレーリングアーム6と、車体側の連結部68から車両前方側に延び、車軸より車両下方側でホイールサポート10に連結されるロアアーム7と、車体側の連結部76から車幅方向に延び、ロアアームより車両後方側でホイールサポート10に連結されるトーコントロールアーム8と、を備え、側面視において、リーディングアーム5のホイールサポート10との連結部54およびトレーリングアーム6のホイールサポート10との連結部62が、ホイールサポート10の開口部84よりも車両前方側において、ほぼ鉛直線上に配置されている。
このように構成された本実施形態によれば、ホイールサポート10の車両前方側の部分を、リーディングアーム5とトレーリングアーム6の間のワッツリンク要素として機能させることができ、特に、このホイールサポートの前方部分には開口部84が形成されていないので、トレーリングアーム5とリーディングアーム6が連結されるホイールサポート10のリンク要素としての剛性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、ホイールサポート10における開口部84より車両前方側の部分には、車幅方向内方に突出する前方縦壁部86が形成され、この前方縦壁部86の上部にリーディングアーム5が連結され、前方縦壁部86の下部にトレーリングアーム6が連結されているので、前方縦壁部86により、より効果的に、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6が連結されるホイールサポートのリンク要素としての剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 自動車のサスペンション装置/リアサスペンション
2 後輪
3 サブフレーム
4 アッパアーム(前方側上方リンク)
5 リーディングアーム(後方側上方リンク)
6 トレーリングアーム(前方側下方リンク)
7 ロアアーム(後方側下方リンク)
8 トーコントロールアーム(トーコントロールリンク)
10 ホイールサポート(支持部材、ハブキャリア)
16 緩衝装置(コイルバネおよびダンパ)
20 フロントクロスメンバ
22 リアクロスメンバ
24、26 サイドクロスメンバ
52 リーディングアーム5の車体側連結部
54 リーディングアーム5の車輪側連結部
60 トレーリングアーム6の車体側連結部
62 トレーリングアーム6の車輪側ブッシュ
84 ホイールサポートの開口部
86 ホイールサポートの前方縦壁部(アーム連結用部材)
92 アッパアーム4のブッシュハウジング(ピボット部)
94 リーディングアーム5のブッシュハウジング(ピボット部)
A リーディングアーム5とトレーリングアームの各車輪側連結部を結ぶ線
IK 仮想キングピン軸