IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置 図11
  • 特許-半導体装置 図12
  • 特許-半導体装置 図13
  • 特許-半導体装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240827BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021071519
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2020157444の分割
【原出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051499
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金田 達志
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167635(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097448(WO,A1)
【文献】特開2020-123638(JP,A)
【文献】特開2004-095670(JP,A)
【文献】特開2010-232576(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁基板と、
第2絶縁基板と、
前記第1絶縁基板に設けられた第1トランジスタと、
前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタに並列に接続された第1ダイオードと、
前記第2絶縁基板に設けられた第2トランジスタと、
前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタに並列に接続された第2ダイオードと、
を有し、
互いに並列に接続された前記第2トランジスタ及び前記第2ダイオードは、互いに並列に接続された前記第1トランジスタ及び前記第1ダイオードに対して直列に接続されている半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタの第1電極に接続された第1導体と、
前記第1絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタの第2電極に接続された第2導体と、
前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1ダイオードの第1カソード電極に接続された第3導体と、
前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1ダイオードの第1アノード電極に接続された第4導体と、
前記第1導体と前記第3導体とを接続する第1接続部材と、
前記第2導体と前記第4導体とを接続する第2接続部材と、
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1接続部材及び前記第2接続部材はワイヤである請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1接続部材及び前記第2接続部材は金属板である請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2電極と前記第2導体とを接続する第3接続部材と、
前記第1アノード電極と前記第4導体とを接続する第4接続部材と、
を有する請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタの第3電極に接続された第5導体と、
前記第2絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタの第4電極に接続された第6導体と、
前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2ダイオードの第2カソード電極に接続された第7導体と、
前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2ダイオードの第2アノード電極に接続された第8導体と、
前記第5導体と前記第7導体とを接続する第5接続部材と、
前記第6導体と前記第8導体とを接続する第6接続部材と、
を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第5接続部材及び前記第6接続部材はワイヤである請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第5接続部材及び前記第6接続部材は金属板である請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第4電極と前記第6導体とを接続する第7接続部材と、
前記第2アノード電極と前記第8導体とを接続する第8接続部材と、
を有する請求項から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1トランジスタの第1制御電極に接続された第1制御端子と、
前記第2トランジスタの第2制御電極に接続された第2制御端子と、
を有し、
平面視で、
前記第1制御端子と前記第2ダイオードとの間に前記第1トランジスタが配置され、
前記第2制御端子と前記第1ダイオードとの間に前記第2トランジスタが配置される請求項から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
複数の前記第1トランジスタを有し、
前記第1制御端子には、複数の前記第1トランジスタの前記第1制御電極が接続され、
複数の前記第2トランジスタを有し、
前記第2制御端子には、複数の前記第2トランジスタの前記第2制御電極が接続され、
前記第1制御端子と前記第2ダイオードとの間に複数の前記第1トランジスタが配置され、
前記第2制御端子と前記第1ダイオードとの間に複数の前記第1トランジスタが配置される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
複数の前記第2ダイオードを有し、
前記第1絶縁基板は、
複数の前記第1トランジスタのうちの一部と、複数の前記第2ダイオードのうちの一部とが配置された第3絶縁基板と、
複数の前記第1トランジスタのうちの他の一部と、複数の前記第2ダイオードのうちの他の一部とが配置された第4絶縁基板と、
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
複数の前記第1ダイオードを有し、
前記第2絶縁基板は、
複数の前記第2トランジスタのうちの一部と、複数の前記第1ダイオードのうちの一部とが配置された第5絶縁基板と、
複数の前記第2トランジスタのうちの他の一部と、複数の前記第1ダイオードのうちの他の一部とが配置された第6絶縁基板と、
を有する請求項1または請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2トランジスタは、炭化珪素を用いて構成された電界効果トランジスタであり、
前記第2ダイオードは、炭化珪素を用いて構成されたショットキーバリアダイオードである請求項から請求項1のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1トランジスタは、炭化珪素を用いて構成された電界効果トランジスタであり、
前記第1ダイオードは、炭化珪素を用いて構成されたショットキーバリアダイオードである請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを備えた放熱板を有し、
前記第1主面に前記第1絶縁基板及び前記第2絶縁基板が搭載され、
前記第2主面が凸状に湾曲している請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールに使用される半導体装置として、放熱板の上に2つの絶縁基板が設けられ、一方の絶縁基板に上アームのトランジスタ及びダイオードが配置され、他方の絶縁基板に下アームのトランジスタ及びダイオードが配置された半導体装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-154079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の2つの絶縁基板を備えた半導体装置では、絶縁基板同士を接続するワイヤ等の接続部材の発熱量が過大となるおそれがある。
【0005】
本開示は、絶縁基板間の接続部材の発熱量を低減できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、第1絶縁基板と、第2絶縁基板と、第1アームと、を有し、前記第1アームは、前記第1絶縁基板に設けられた第1トランジスタと、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタに並列に接続された第1ダイオードと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、絶縁基板間の接続部材の発熱量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る半導体装置における放熱板と、第1絶縁基板と、第2絶縁基板との関係を示す断面図である。
図4図4は、第1トランジスタを示す断面図である。
図5図5は、第1ダイオードを示す断面図である。
図6図6は、第2トランジスタを示す断面図である。
図7図7は、第2ダイオードを示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る半導体装置を示す回路図である。
図9図9は、第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式図(その1)である。
図10図10は、第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式図(その2)である。
図11図11は、第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式図(その3)である。
図12図12は、第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式図(その4)である。
図13図13は、放熱板の変形例を示す断面図である。
図14図14は、第2実施形態に係る半導体装置における第1絶縁基板及び第2絶縁基板の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、第1絶縁基板と、第2絶縁基板と、第1アームと、を有し、前記第1アームは、前記第1絶縁基板に設けられた第1トランジスタと、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタに並列に接続された第1ダイオードと、を有する。
【0012】
特許文献1に記載の半導体装置では、2つの絶縁基板の間にワイヤが設けられており、このワイヤを、DC電圧負荷端子素子からAC電圧負荷端子素子に流れる電流と、AC電圧負荷端子素子からDC電圧負荷端子素子に流れる電流とが経由する。つまり、絶縁基板間のワイヤを2方向の電流が流れる。このため、ワイヤを高頻度で電流が流れ、発熱量が過大となるおそれがあり、ワイヤが溶断に至るおそれもある。これに対し、本開示の一態様に係る半導体装置では、第1アームにおいて、第1トランジスタが第1絶縁基板に設けられ、第1ダイオードが第2絶縁基板に設けられているため、第1絶縁基板と第2絶縁基板との間を流れる電流の経路を異なる経路にすることができる。従って、第1絶縁基板と第2絶縁基板との間の接続部材の発熱量を低減できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記第1絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタの第1電極に接続された第1導体と、前記第1絶縁基板に設けられ、前記第1トランジスタの第2電極に接続された第2導体と、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1ダイオードの第1カソード電極に接続された第3導体と、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第1ダイオードの第1アノード電極に接続された第4導体と、前記第1導体と前記第3導体とを接続する第1接続部材と、前記第2導体と前記第4導体とを接続する第2接続部材と、を有してもよい。この場合、第1接続部材及び第2接続部材の発熱量を低減できる。
【0014】
〔3〕 〔2〕において、前記第1接続部材及び前記第2接続部材はワイヤであってもよい。この場合、第1導体と第3導体とを接続しやすく、第2導体と第4導体とを接続しやすい。
【0015】
〔4〕 〔2〕において、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は金属板であってもよい。この場合、第1導体と第3導体との間により大きな電流を流しやすく、第2導体と第4導体との間により大きな電流を流しやすい。
【0016】
〔5〕 〔2〕~〔4〕において、前記第2電極と前記第2導体とを接続する第3接続部材と、前記第1アノード電極と前記第4導体とを接続する第4接続部材と、を有してもよい。第3接続部材及び第4接続部材はワイヤであってもよい。この場合、第2電極と第2導体とを接続しやすく、第1アノード電極と第4導体とを接続しやすい。
【0017】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記第1アームに直列に接続された第2アームを有し、前記第2アームは、前記第2絶縁基板に設けられた第2トランジスタと、前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタに並列に接続された第2ダイオードと、を有してもよい。この場合、第2アームにおいて、第2トランジスタが第2絶縁基板に設けられ、第2ダイオードが第1絶縁基板に設けられているため、第1絶縁基板と第2絶縁基板との間を流れる電流の経路を異なる経路にすることができる。従って、第1絶縁基板と第2絶縁基板との間の接続部材の発熱量を低減できる。
【0018】
〔7〕 〔6〕において、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタの第3電極に接続された第5導体と、前記第2絶縁基板に設けられ、前記第2トランジスタの第4電極に接続された第6導体と、前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2ダイオードの第2カソード電極に接続された第7導体と、前記第1絶縁基板に設けられ、前記第2ダイオードの第2アノード電極に接続された第8導体と、前記第5導体と前記第7導体とを接続する第5接続部材と、前記第6導体と前記第8導体とを接続する第6接続部材と、を有してもよい。この場合、第5接続部材及び第6接続部材の発熱量を低減できる。
【0019】
〔8〕 〔7〕において、前記第5接続部材及び前記第6接続部材はワイヤであってもよい。この場合、第5導体と第7導体とを接続しやすく、第6導体と第8導体とを接続しやすい。
【0020】
〔9〕 〔7〕において、前記第5接続部材及び前記第6接続部材は金属板であってもよい。この場合、第5導体と第7導体との間により大きな電流を流しやすく、第6導体と第8導体との間により大きな電流を流しやすい。
【0021】
〔10〕 〔7〕~〔9〕において、前記第4電極と前記第6導体とを接続する第7接続部材と、前記第2アノード電極と前記第8導体とを接続する第8接続部材と、を有してもよい。また、第7接続部材及び第8接続部材はワイヤであってもよい。第4電極と第6導体とを接続しやすく、第2アノード電極と第8導体とを接続しやすい。
【0022】
〔11〕 〔6〕~〔10〕において、前記第1トランジスタの第1制御電極に接続された第1制御端子と、前記第2トランジスタの第2制御電極に接続された第2制御端子と、を有し、平面視で、前記第1制御端子と前記第2ダイオードとの間に前記第1トランジスタが配置され、前記第2制御端子と前記第1ダイオードとの間に前記第2トランジスタが配置されてもよい。この場合、制御端子からトランジスタのゲートに通ずる経路が短縮され、ゲートループのインダクタンスが低減できる。そのため、モジュールの誤動作の抑制につなげることができる。
【0023】
〔12〕 〔11〕において、複数の前記第1トランジスタを有し、前記第1制御端子には、複数の前記第1トランジスタの前記第1制御電極が接続され、複数の前記第2トランジスタを有し、前記第2制御端子には、複数の前記第2トランジスタの前記第2制御電極が接続され、前記第1制御端子と前記第2ダイオードとの間に複数の前記第1トランジスタが配置され、前記第2制御端子と前記第1ダイオードとの間に複数の前記第1トランジスタが配置されてもよい。この場合、複数の第1トランジスタを第1制御端子の近傍に集約することができ、複数の第2トランジスタを第2制御端子の近傍に集約することができる。従って、複数の第1トランジスタの間でのゲートループのインダクタンスの相違、及び複数の第2トランジスタの間でのゲートループのインダクタンスの相違を低減しやすい。そのため、モジュールの誤動作の抑制につなげることができる。
【0024】
〔13〕 〔12〕において、複数の前記第2ダイオードを有し、前記第1絶縁基板は、複数の前記第1トランジスタのうちの一部と、複数の前記第2ダイオードのうちの一部とが配置された第3絶縁基板と、複数の前記第1トランジスタのうちの他の一部と、複数の前記第2ダイオードのうちの他の一部とが配置された第4絶縁基板と、を有してもよい。この場合、第3絶縁基板及び第4絶縁基板を放熱板に密着させやすい。
【0025】
〔14〕 〔12〕又は〔13〕において、複数の前記第1ダイオードを有し、前記第2絶縁基板は、複数の前記第2トランジスタのうちの一部と、複数の前記第1ダイオードのうちの一部とが配置された第5絶縁基板と、複数の前記第2トランジスタのうちの他の一部と、複数の前記第1ダイオードのうちの他の一部とが配置された第6絶縁基板と、を有してもよい。この場合、第5絶縁基板及び第6絶縁基板を放熱板に密着させやすい。
【0026】
〔15〕 〔6〕~〔14〕において、前記第2トランジスタは、炭化珪素を用いて構成された電界効果トランジスタであり、前記第2ダイオードは、炭化珪素を用いて構成されたショットキーバリアダイオードであってもよい。この場合、第2トランジスタ及び第2ダイオードに優れた耐圧が得られる。
【0027】
〔16〕 〔1〕~〔15〕において、前記第1トランジスタは、炭化珪素を用いて構成された電界効果トランジスタであり、前記第1ダイオードは、炭化珪素を用いて構成されたショットキーバリアダイオードであってもよい。この場合、第1トランジスタ及び第1ダイオードに優れた耐圧が得られる。
【0028】
〔17〕 〔1〕~〔16〕において、第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを備えた放熱板を有し、前記第1主面に前記第1絶縁基板及び前記第2絶縁基板が搭載され、前記第2主面が凸状に湾曲していてもよい。この場合、熱界面材料等を用いて放熱板を冷却器等に密着させ、良好な伝熱効率を得やすい。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0030】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。ただし、図2では、ケースを透視している。図3は、第1実施形態に係る半導体装置における放熱板と、第1絶縁基板と、第2絶縁基板との関係を示す断面図である。図3は、図2中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0031】
第1実施形態に係る半導体装置1は、主として、放熱板2と、ケース9と、P端子3と、N端子4と、第1O端子5と、第2O端子6とを有する。P端子3は正極側の電源端子であり、N端子4は負極側の電源端子であり、第1O端子5及び第2O端子6は出力端子である。P端子3、N端子4、第1O端子5及び第2O端子6はケース9に組み付けられている。ケース9には、更に、第1ゲート端子131と、第1センスソース端子132と、センスドレイン端子133と、第2ゲート端子231と、第2センスソース端子232と、第1サーミスタ端子331と、第2サーミスタ端子332とが組み付けられている。
【0032】
本開示において、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面とし、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面とし、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面とする。便宜上、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。また、本開示において平面視とは、Z1側から対象物を視ることをいう。X1-X2方向は平面視で矩形状の放熱板2及びケース9の長辺に沿う方向であり、Y1-Y2方向は放熱板2及びケース9の短辺に沿う方向であり、Z1-Z2方向は放熱板2及びケース9の法線に沿う方向である。
【0033】
放熱板2は、例えば平面視で矩形状の厚さが一様の板状体である。放熱板2は、第1主面2Aと、第1主面2Aとは反対側の第2主面2Bとを備える。放熱板2の材料は、熱伝導率の高い素材である金属、例えば銅(Cu)、銅合金、アルミニウム(Al)等である。放熱板2は、熱界面材料(thermal interface material:TIM)等を用いて冷却器等に固定される。
【0034】
ケース9は、例えば平面視において枠状に形成されており、ケース9の外形は放熱板2の外形と同等である。ケース9の材料は樹脂等の絶縁体である。ケース9は、互いに対向する一対の側壁部91及び92と、側壁部91及び92の両端をつなぐ一対の端壁部93及び94とを有する。側壁部91及び92はZX平面に平行に配置され、端壁部93及び94はYZ平面に平行に配置されている。側壁部92は側壁部91のY2側に配置され、端壁部94は端壁部93のX2側に配置されている。ケース9は、端壁部93からX1方向に突出する端子台95と、端壁部94からX2方向に突出する端子台96とを有する。
【0035】
端子台95の上面(Z1側の表面)にP端子3及びN端子4が配置され、端子台96の上面(Z1側の表面)に第1O端子5及び第2O端子6が配置されている。例えば、N端子4がP端子3のY2側に配置され、第2O端子6が第1O端子5のY2側に配置されている。P端子3、N端子4、第1O端子5及び第2O端子6は金属板から構成されている。P端子3及びN端子4のそれぞれの一方の端部が端壁部93のX2側に露出し、それぞれの他方の端部が端子台95の上面に引き出されている。第1O端子5及び第2O端子6のそれぞれの一方の端部が端壁部94のX1側に露出し、それぞれの他方の端部が端子台96の上面に引き出されている。
【0036】
側壁部91に、第1ゲート端子131、第1センスソース端子132、センスドレイン端子133、第1サーミスタ端子331及び第2サーミスタ端子332が取り付けられている。第1ゲート端子131、第1センスソース端子132、センスドレイン端子133、第1サーミスタ端子331及び第2サーミスタ端子332のそれぞれの一方の端部が側壁部91のY2側に露出し、それぞれの他方の端部が側壁部91の上面(Z1側の表面)からケース9の外方(Z1側)に突出している。センスドレイン端子133は、側壁部91のX2側の端部近傍に配置されている。第1サーミスタ端子331及び第2サーミスタ端子332は、側壁部91のX1側の端部近傍に配置されている。例えば、第2サーミスタ端子332は第1サーミスタ端子331のX1側に配置されている。第1ゲート端子131及び第1センスソース端子132は、側壁部91のX1-X2方向の中心の近傍で、かつX1-X2方向の中心よりもX2側に配置されている。例えば、第1センスソース端子132は第1ゲート端子131のX2側に配置されている。
【0037】
側壁部92に、第2ゲート端子231及び第2センスソース端子232が取り付けられている。第2ゲート端子231及び第2センスソース端子232のそれぞれの一方の端部が側壁部92のY1側に露出し、それぞれの他方の端部が側壁部92の上面(Z1側の表面)からケース9の外方(Z1側)に突出している。第2ゲート端子231及び第2センスソース端子232は、側壁部92のX1-X2方向の中心の近傍で、かつX1-X2方向の中心よりもX1側に配置されている。例えば、第2センスソース端子232は第2ゲート端子231のX1側に配置されている。
【0038】
放熱板2のZ1側に、第1絶縁基板10と、第2絶縁基板20とが配置されている。つまり、放熱板2の第1主面2Aに第1絶縁基板10と、第2絶縁基板20とが配置されている。例えば、第2絶縁基板20は第1絶縁基板10のX1側に配置されている。
【0039】
第1絶縁基板10は、Z1側の面に導電層11、12、13、14及び18を有し、Z2側の面に導電層19を有する。導電層19が、はんだ等の接合材7により放熱板2に接合されている。導電層13の上に複数個、例えば4個の第1トランジスタ110が実装されている。4個の第1トランジスタ110はX1-X2方向に並んでいる。4個の第1トランジスタ110から第1トランジスタ群110Aが構成される。導電層12の上に複数個、例えば8個の第2ダイオード220が実装されている。8個の第2ダイオード220は、2列になってX1-X2方向に4個ずつ並んでいる。8個の第2ダイオード220から第2ダイオード群220Aが構成される。導電層13は第1導体の一例であり、導電層12は第2導体、第7導体の一例であり、導電層14は第8導体の一例である。本実施形態では、第2導体と第7導体とは、一体である導電層12から構成されている。なお、これの変形例として、第2導体の構成する導電層と、第7導体を構成する導電層とが別々の導電層から構成され、これらが接続されていてもよい。つまり、本開示は、第2導体と第7導体とが一体である導電層12から構成された形態に限定されるものではない。
【0040】
第2絶縁基板20は、Z1側の面に導電層21、22、23、24、25、26、27及び28を有し、Z2側の面に導電層29を有する。導電層29が、はんだ等の接合材8により放熱板2に接合されている。導電層23の上に複数個、例えば4個の第2トランジスタ210が実装されている。4個の第2トランジスタ210はX1-X2方向に並んでいる。4個の第2トランジスタ210から第2トランジスタ群210Aが構成される。導電層25の上に複数個、例えば8個の第1ダイオード120が実装されている。8個の第1ダイオード120は、2列になってX1-X2方向に4個ずつ並んでいる。8個の第1ダイオード120から第1ダイオード群120Aが構成される。導電層25は第3導体の一例であり、導電層24は第4導体の一例であり、導電層23は第5導体の一例であり、導電層22は第6導体の一例である。
【0041】
ここで、第1トランジスタ110、第1ダイオード120、第2トランジスタ210及び第2ダイオード220について説明する。図4は、第1トランジスタを示す断面図である。図5は、第1ダイオードを示す断面図である。図6は、第2トランジスタを示す断面図である。図7は、第2ダイオードを示す断面図である。
【0042】
図4に示すように、第1トランジスタ110は、第1ゲート電極111と、第1ソース電極112と、第1ドレイン電極113とを有する。第1ゲート電極111及び第1ソース電極112は第1トランジスタ110のZ1側の主面に配置され、第1ドレイン電極113は第1トランジスタ110のZ2側の主面に配置されている。第1ドレイン電極113がはんだ等の接合材(図示せず)により導電層13に接合されている。第1ドレイン電極113は第1電極の一例であり、第1ソース電極112は第2電極の一例である。
【0043】
図5に示すように、第1ダイオード120は、第1アノード電極121と、第1カソード電極122とを有する。第1アノード電極121は第1ダイオード120のZ1側の主面に配置され、第1カソード電極122は第1ダイオード120のZ2側の主面に配置されている。第1カソード電極122がはんだ等の接合材(図示せず)により導電層25に接合されている。
【0044】
図6に示すように、第2トランジスタ210は、第2ゲート電極211と、第2ソース電極212と、第2ドレイン電極213とを有する。第2ゲート電極211及び第2ソース電極212は第2トランジスタ210のZ1側の主面に配置され、第2ドレイン電極213は第2トランジスタ210のZ2側の主面に配置されている。第2ドレイン電極213がはんだ等の接合材(図示せず)により導電層23に接合されている。第2ドレイン電極213は第3電極の一例であり、第2ソース電極212は第4電極の一例である。
【0045】
図7に示すように、第2ダイオード220は、第2アノード電極221と、第2カソード電極222とを有する。第2アノード電極221は第2ダイオード220のZ1側の主面に配置され、第2カソード電極222は第2ダイオード220のZ2側の主面に配置されている。第2カソード電極222がはんだ等の接合材(図示せず)により導電層12に接合されている。
【0046】
半導体装置1は、複数本のワイヤ31と、複数本のワイヤ32と、複数本のワイヤ41と、複数本のワイヤ42とを有する。ワイヤ31は、第1絶縁基板10に設けられた導電層13と第2絶縁基板20に設けられた導電層25とを接続する。ワイヤ32は、第1絶縁基板10に設けられた導電層12と第2絶縁基板20に設けられた導電層24とを接続する。ワイヤ41は、第1絶縁基板10に設けられた導電層12と第2絶縁基板20に設けられた導電層23とを接続する。ワイヤ42は、第1絶縁基板10に設けられた導電層14と第2絶縁基板20に設けられた導電層22とを接続する。ワイヤ31は第1接続部材の一例であり、ワイヤ32は第2接続部材の一例であり、ワイヤ41は第5接続部材の一例であり、ワイヤ42は第6接続部材の一例である。
【0047】
半導体装置1は、複数本のワイヤ51と、複数本のワイヤ52と、複数本のワイヤ53と、複数本のワイヤ54と、複数本のワイヤ55とを有する。ワイヤ51は、4個の第1トランジスタ110にそれぞれ設けられた第1ゲート電極111と第1絶縁基板10に設けられた導電層11とを接続する。ワイヤ52は、4個の第1トランジスタ110にそれぞれ設けられた第1ソース電極112と第1絶縁基板10に設けられた導電層12とを接続する。ワイヤ53は、4個の第1トランジスタ110にそれぞれ設けられた第1センスソース電極(図示せず)と第1絶縁基板10に設けられた導電層18とを接続する。ワイヤ54は、8個の第2ダイオード220のうちY1側に配置された4個の第2ダイオード220にそれぞれ設けられた第2アノード電極221と第1絶縁基板10に設けられた導電層14とを接続する。ワイヤ55は、8個の第2ダイオード220のうちY1側に配置された4個の第2ダイオード220にそれぞれ設けられた第2アノード電極221とY2側に配置された4個の第2ダイオード220にそれぞれ設けられた第2アノード電極221とを接続する。ワイヤ52は第3接続部材の一例であり、ワイヤ54は第8接続部材の一例である。
【0048】
半導体装置1は、ワイヤ61と、複数本のワイヤ62と、複数本のワイヤ63と、ワイヤ64と、ワイヤ65とを有する。ワイヤ61は、第1絶縁基板10に設けられた導電層11と第1ゲート端子131とを接続する。ワイヤ62は、第1絶縁基板10に設けられた導電層12と第1O端子5とを接続する。ワイヤ63は、第1絶縁基板10に設けられた導電層12と第2O端子6とを接続する。ワイヤ64は、第1絶縁基板10に設けられた導電層13とセンスドレイン端子133とを接続する。ワイヤ65は、第1絶縁基板10に設けられた導電層18と第1センスソース端子132とを接続する。
【0049】
半導体装置1は、複数本のワイヤ71と、複数本のワイヤ72と、複数本のワイヤ73と、複数本のワイヤ74と、複数本のワイヤ75とを有する。ワイヤ71は、4個の第2トランジスタ210にそれぞれ設けられた第2ゲート電極211と第2絶縁基板20に設けられた導電層21とを接続する。ワイヤ72は、4個の第2トランジスタ210にそれぞれ設けられた第2ソース電極212と第2絶縁基板20に設けられた導電層22とを接続する。ワイヤ73は、4個の第2トランジスタ210にそれぞれ設けられた第2センスソース電極(図示せず)と第2絶縁基板20に設けられた導電層28とを接続する。ワイヤ74は、8個の第1ダイオード120のうちY2側に配置された4個の第1ダイオード120にそれぞれ設けられた第1アノード電極121と第2絶縁基板20に設けられた導電層24とを接続する。ワイヤ75は、8個の第1ダイオード120のうちY2側に配置された4個の第1ダイオード120にそれぞれ設けられた第1アノード電極121とY1側に配置された4個の第1ダイオード120にそれぞれ設けられた第1アノード電極121とを接続する。ワイヤ74は第4接続部材の一例であり、ワイヤ72は第7接続部材の一例である。
【0050】
半導体装置1は、ワイヤ81と、複数本のワイヤ82と、複数本のワイヤ83と、ワイヤ85と、ワイヤ86と、ワイヤ87とを有する。ワイヤ81は、第2絶縁基板20に設けられた導電層21と第2ゲート端子231とを接続する。ワイヤ82は、第2絶縁基板20に設けられた導電層22とN端子4とを接続する。ワイヤ83は、第2絶縁基板20に設けられた導電層25とP端子3とを接続する。ワイヤ85は、第2絶縁基板20に設けられた導電層28と第2センスソース端子232とを接続する。ワイヤ86は、第2絶縁基板20に設けられた導電層26と第1サーミスタ端子331とを接続する。ワイヤ87は、第2絶縁基板20に設けられた導電層27と第2サーミスタ端子332とを接続する。半導体装置1は、導電層26及び導電層27に接続されたサーミスタ330を有する。
【0051】
ここで、第1実施形態に係る半導体装置1の回路構成について説明する。図8は、第1実施形態に係る半導体装置を示す回路図である。
【0052】
P端子3に、ワイヤ83と、導電層25とを介して第1ダイオード120の第1カソード電極122が接続される。また、P端子3に、ワイヤ83と、導電層25と、ワイヤ31と、導電層13とを介して第1トランジスタ110の第1ドレイン電極113が接続される。導電層12が、ワイヤ62を介して第1O端子5に接続され、ワイヤ63を介して第2O端子6に接続される。導電層12に、ワイヤ52を介して第1トランジスタ110の第1ソース電極112が接続される。また、導電層12に、ワイヤ32と、導電層24と、ワイヤ74及び75とを介して第1ダイオードの第1アノード電極121が接続される。
【0053】
第1ゲート端子131に、ワイヤ61と、導電層11と、ワイヤ51とを介して第1トランジスタ110の第1ゲート電極111が接続される。第1センスソース端子132に、ワイヤ65と、導電層18と、ワイヤ53とを介して第1トランジスタ110の第1センスソース電極が接続される。センスドレイン端子133に、ワイヤ64と、導電層13とを介して第1トランジスタ110の第1ドレイン電極113が接続される。第1ゲート電極111は第1制御電極の一例であり、第1ゲート端子131は第1制御端子の一例である。
【0054】
N端子4に、ワイヤ82と、導電層22と、ワイヤ72とを介して第2トランジスタ210の第2ソース電極212が接続される。また、N端子4に、ワイヤ82と、導電層22と、ワイヤ42と、ワイヤ54及び55とを介して第2ダイオード220の第2アノード電極221が接続される。導電層12に第2トランジスタ210の第2カソード電極222が接続される。また、導電層12に、ワイヤ41と、導電層23とを介して第2トランジスタ210の第2ドレイン電極213が接続される。
【0055】
第2ゲート端子231に、ワイヤ81と、導電層21と、ワイヤ71とを介して第2トランジスタ210の第2ゲート電極211が接続される。第2センスソース端子232に、ワイヤ85と、導電層28と、ワイヤ73とを介して第2トランジスタ210の第2センスソース電極が接続される。第1サーミスタ端子331に、ワイヤ86と、導電層26とを介してサーミスタ330の一方の電極が接続される。第2サーミスタ端子332に、ワイヤ87と、導電層27とを介してサーミスタ330の他方の電極が接続される。第2ゲート電極211は第2制御電極の一例であり、第2ゲート端子231は第2制御端子の一例である。
【0056】
図8に示すように、第1トランジスタ110の第1ドレイン電極113と第1ダイオード120の第1カソード電極122とがP端子3に共通に接続され、第1ソース電極112と第1アノード電極121とが第1O端子5及び第2O端子6に共通に接続されている。つまり、第1トランジスタ110と第1ダイオード120とが、P端子3と、第1O端子5及び第2O端子6との間に並列に接続されている。また、第2トランジスタ210の第2ドレイン電極213と第2ダイオード220の第2カソード電極222とが第1O端子5及び第2O端子6に共通に接続され、第2ソース電極212と第2アノード電極221とがN端子4に共通に接続されている。つまり、第2トランジスタ210と第2ダイオード220とが、N端子4と、第1O端子5及び第2O端子6との間に並列に接続されている。上アーム100は、第1トランジスタ110(第1トランジスタ群110A)と、第1ダイオード120(第1ダイオード群120A)とを含む。下アーム200は、第2トランジスタ210(第2トランジスタ群210A)と、第2ダイオード220(第2ダイオード群220A)とを含む。P端子3とN端子4との間に上アーム100と下アーム200とが直列に接続されている。上アーム100は第1アームの一例であり、下アーム200は第2アームの一例である。
【0057】
上アーム100に含まれる複数の第1トランジスタ110が第1絶縁基板10のみに設けられ、上アーム100に含まれる複数の第1ダイオード120が第2絶縁基板20のみに設けられてもよい。また、下アーム200に含まれる複数の第2トランジスタ210が第2絶縁基板20のみに設けられ、下アーム200に含まれる複数の第2ダイオード220が第1絶縁基板10のみに設けられてもよい。
【0058】
次に、第1実施形態に係る半導体装置1の動作について説明する。図9図12は、第1実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式図である。
【0059】
図9は、P端子3から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I1の経路を示す。図9に示すように、電流I1は、P端子3から、ワイヤ83と、導電層25と、ワイヤ31と、導電層13と、第1トランジスタ群110Aと、ワイヤ52と、導電層12と、ワイヤ62及び63とを介して、第1O端子5及び第2O端子6に流れる。
【0060】
図10は、第1O端子5及び第2O端子6からP端子3に流れる電流I2の経路を示す。図10に示すように、電流I2は、第1O端子5及び第2O端子6から、ワイヤ62及び63と、導電層12と、ワイヤ32と、導電層24と、ワイヤ74及び75と、第1ダイオード群120Aと、導電層25と、ワイヤ83とを介して、P端子3に流れる。
【0061】
このように、P端子3から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I1は、ワイヤ31を流れるが、ワイヤ32を流れない。一方、第1O端子5及び第2O端子6からP端子3に流れる電流I2は、ワイヤ32を流れるが、ワイヤ31を流れない。
【0062】
図11は、N端子4から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I3の経路を示す。図11に示すように、電流I3は、N端子4から、ワイヤ82と、導電層22と、ワイヤ72と、第2トランジスタ群210Aと、導電層23と、ワイヤ41と、導電層12と、ワイヤ62及び63とを介して、第1O端子5及び第2O端子6に流れる。
【0063】
図12は、第1O端子5及び第2O端子6からN端子4に流れる電流I4の経路を示す。図12に示すように、電流I4は、第1O端子5及び第2O端子6から、ワイヤ62及び63と、導電層12と、第2ダイオード群220Aと、ワイヤ54及び55と、導電層14と、ワイヤ42と、導電層22と、ワイヤ82とを介して、N端子4に流れる。
【0064】
このように、N端子4から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I3は、ワイヤ41を流れるが、ワイヤ42を流れない。一方、第1O端子5及び第2O端子6からN端子4に流れる電流I4は、ワイヤ42を流れるが、ワイヤ41を流れない。
【0065】
第1実施形態に係る半導体装置1では、上アーム100に第1トランジスタ110及び第1ダイオード120が含まれ、第1トランジスタ110は第1絶縁基板10に設けられ、第1ダイオード120は第2絶縁基板20に設けられている。このため、P端子3から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I1と、第1O端子5及び第2O端子6からP端子3に流れる電流I2との間で、経由するワイヤ31、32が相違する。従って、第1絶縁基板10と第2絶縁基板20との間を流れる電流が同一の接続部材を経由する場合と比較して、ワイヤ31及び32における発熱量を低減できる。
【0066】
同様に、下アーム200に第2トランジスタ210及び第2ダイオード220が含まれ、第2トランジスタ210は第2絶縁基板20に設けられ、第2ダイオード220は第1絶縁基板10に設けられている。このため、N端子4から第1O端子5及び第2O端子6に流れる電流I3と、第1O端子5及び第2O端子6からN端子4に流れる電流I4との間で、経由するワイヤ41、42が相違する。従って、第1絶縁基板10と第2絶縁基板20との間を流れる電流が同一の接続部材を経由する場合と比較して、ワイヤ41及び42における発熱量を低減できる。
【0067】
このように発熱量を低減することによって、接続部材、ワイヤの発熱量が過大となるおそれを抑制し、ワイヤが溶断に至るおそれを低減することが可能となる。
【0068】
第1絶縁基板10と第2絶縁基板20との間の接続にワイヤ31、32、41及び42が用いられているため、第1絶縁基板10と第2絶縁基板20とを接続しやすい。すなわち、導電層13と導電層25とを接続しやすく、導電層12と導電層24とを接続しやすく、導電層14と導電層22とを接続しやすく、導電層12と導電層23とを接続しやすい。ワイヤ31、32、41及び42のそれぞれに代えて、バスバー等の金属板が用いられてもよい。この場合、より大きな電流を流しやすい。
【0069】
第1ソース電極112と導電層12との接続にワイヤ52が用いられ、第1アノード電極121と導電層24との接続にワイヤ74が用いられるため、第1ソース電極112と導電層12とを接続しやすく、第1アノード電極121と導電層24と接続しやすい。また、第2ソース電極212と導電層22との接続にワイヤ72が用いられ、第2アノード電極221と導電層14との接続にワイヤ54が用いられるため、第2ソース電極212と導電層22とを接続しやすく、第2アノード電極221と導電層14と接続しやすい。
【0070】
平面視で、第1ゲート端子131と第2ダイオード220との間に第1トランジスタ110が配置されている。すなわち、上アーム100の第1トランジスタ110は下アーム200の第2ダイオード220よりも第1ゲート端子131に近く配置されている。このため、第1トランジスタ110のゲートループのインダクタンスを低減しやすい。また、平面視で、第2ゲート端子231と第1ダイオード120との間に第2トランジスタ210が配置されている。すなわち、下アーム200の第2トランジスタ210は上アーム100の第1ダイオード120よりも第2ゲート端子231に近く配置されている。このため、第2トランジスタ210のゲートループのインダクタンスを低減しやすい。
【0071】
更に、第1ゲート端子131に複数の第1トランジスタ110の第1ゲート電極111が接続され、これら複数の第1トランジスタ110が第1ゲート端子131と第2ダイオード220との間に配置されている。このため、複数の第1トランジスタ110の間でのゲートループのインダクタンスの相違を低減しやすい。また、第2ゲート端子231に複数の第2トランジスタ210の第2ゲート電極211が接続され、これら複数の第2トランジスタ210が第2ゲート端子231と第1ダイオード120との間に配置されている。このため、複数の第2トランジスタ210の間でのゲートループのインダクタンスの相違を低減しやすい。
【0072】
第1トランジスタ110及び第2トランジスタ210は、炭化珪素を用いて構成されたMOS(metal-oxide-semiconductor)電界効果トランジスタ(field effect transistor)等の電界効果トランジスタであってもよい。第1ダイオード120及び第2ダイオード220は、炭化珪素を用いて構成されたショットキーバリアダイオードあってもよい。炭化珪素を用いることにより、優れた耐圧が得られる。
【0073】
なお、図13に示すように、放熱板2の第2主面2Bが凸状に湾曲していることが好ましい。TIM等を用いて放熱板2を冷却器等に密着させ、良好な伝熱効率を得やすいためである。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図14は、第2実施形態に係る半導体装置における第1絶縁基板及び第2絶縁基板の構成を示す模式図である。
【0075】
第2実施形態に係る半導体装置では、図14に示すように、第1絶縁基板10が、第3絶縁基板10Aと、第4絶縁基板10Bとを有し、第2絶縁基板20が、第5絶縁基板20Aと、第6絶縁基板20Bとを有する。第4絶縁基板10Bが第3絶縁基板10AのX1側に配置され、第6絶縁基板20Bが第5絶縁基板20AのX2側に配置されている。
【0076】
第3絶縁基板10Aは、Z1側の面に導電層11A、12A、13A、14A及び18Aを有し、Z2側の面に導電層(図示せず)を有する。Z2側の面に設けられた導電層が、導電層19と同様に、はんだ等の接合材7により放熱板2に接合されている。導電層13Aの上に複数個、例えば2個の第1トランジスタ110が実装されている。2個の第1トランジスタ110はX1-X2方向に並んでいる。導電層12Aの上に複数個、例えば4個の第2ダイオード220が実装されている。4個の第2ダイオード220は、2列になってX1-X2方向に2個ずつ並んでいる。
【0077】
第4絶縁基板10Bは、Z1側の面に導電層11B、12B、12C、13B、14B及び18Bを有し、Z2側の面に導電層(図示せず)を有する。Z2側の面に設けられた導電層が、導電層19と同様に、はんだ等の接合材7により放熱板2に接合されている。導電層13Bの上に複数個、例えば2個の第1トランジスタ110が実装されている。2個の第1トランジスタ110はX1-X2方向に並んでいる。導電層12Cの上に複数個、例えば4個の第2ダイオード220が実装されている。4個の第2ダイオード220は、2列になってX1-X2方向に2個ずつ並んでいる。
【0078】
ワイヤ411と、ワイヤ412と、ワイヤ413と、ワイヤ414と、ワイヤ415と、ワイヤ418とが設けられている。ワイヤ411は、導電層11Aと導電層11Bとを接続する。ワイヤ412は、導電層12Aと導電層12Bとを接続する。ワイヤ413は、導電層13Aと導電層13Bとを接続する。ワイヤ414は、導電層14Aと導電層14Bとを接続する。ワイヤ415は、導電層12Aと導電層12Cとを接続する。ワイヤ418は、導電層18Aと導電層18Bとを接続する。
【0079】
導電層11A及び11Bは導電層11の一部である。導電層12A、12B及び12Cは導電層12の一部である。導電層13A及び13Bは導電層13の一部である。導電層14A及び14Bは導電層14の一部である。導電層18A及び18Bは導電層18の一部である。
【0080】
第5絶縁基板20Aは、Z1側の面に導電層21A、22A、23A、24A、25A及び28Aを有し、Z2側の面に導電層(図示せず)を有する。Z2側の面に設けられた導電層が、導電層29と同様に、はんだ等の接合材8により放熱板2に接合されている。導電層23Aの上に複数個、例えば2個の第2トランジスタ210が実装されている。2個の第2トランジスタ210はX1-X2方向に並んでいる。導電層25Aの上に複数個、例えば4個の第1ダイオード120が実装されている。4個の第1ダイオード120は、2列になってX1-X2方向に2個ずつ並んでいる。
【0081】
第6絶縁基板20Bは、Z1側の面に導電層21B、22B、23B、24B、25B及び28Bを有し、Z2側の面に導電層(図示せず)を有する。Z2側の面に設けられた導電層が、導電層29と同様に、はんだ等の接合材8により放熱板2に接合されている。導電層23Bの上に複数個、例えば2個の第2トランジスタ210が実装されている。2個の第2トランジスタ210はX1-X2方向に並んでいる。導電層25Bの上に複数個、例えば4個の第1ダイオード120が実装されている。4個の第1ダイオード120は、2列になってX1-X2方向に2個ずつ並んでいる。
【0082】
ワイヤ421と、ワイヤ422と、ワイヤ423と、ワイヤ424と、ワイヤ425と、ワイヤ428とが設けられている。ワイヤ421は、導電層21Aと導電層21Bとを接続する。ワイヤ422は、導電層22Aと導電層22Bとを接続する。ワイヤ423は、導電層23Aと導電層23Bとを接続する。ワイヤ424は、導電層24Aと導電層24Bとを接続する。ワイヤ425は、導電層25Aと導電層25Bとを接続する。ワイヤ428は、導電層28Aと導電層28Bとを接続する。
【0083】
導電層21A及び21Bは導電層21の一部である。導電層22A及び22Bは導電層22の一部である。導電層23A及び23Bは導電層23の一部である。導電層24A及び24Bは導電層24の一部である。導電層25A及び25Bは導電層25の一部である。導電層18A及び18Bは導電層18の一部である。
【0084】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0085】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態では、第1絶縁基板10が第3絶縁基板10A及び第4絶縁基板10Bを含むため、第3絶縁基板10A及び第4絶縁基板10Bを放熱板2の第1主面2Aにより密着させやすい。同様に、第2絶縁基板20が第5絶縁基板20A及び第6絶縁基板20Bを含むため、第5絶縁基板20A及び第6絶縁基板20Bを放熱板2の第1主面2Aにより密着させやすい。
【0086】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:半導体装置
2:放熱板
2A:第1主面
2B:第2主面
3:P端子
4:N端子
5:第1O端子
6:第2O端子
7、8:接合材
9:ケース
10:第1絶縁基板
10A:第3絶縁基板
10B:第4絶縁基板
11、11A、11B、12A、12B、12C、13A、13B、14A、14B、18、18A、18B、19:導電層
12:第2導体、第7導体(導電層)
13:第1導体(導電層)
14:第8導体(導電層)
20:第2絶縁基板
20A:第5絶縁基板
20B:第6絶縁基板
21、21A、21B、22A、22B、23A、23B、24A、24B、25A、25B、26、27、28、28A、28B、29:導電層
22:第6導体(導電層)
23:第5導体(導電層)
24:第4導体(導電層)
25:第3導体(導電層)
31:第1接続部材(ワイヤ)
32:第2接続部材(ワイヤ)
41:第5接続部材(ワイヤ)
42:第6接続部材(ワイヤ)
51、53、55:ワイヤ
52:第3接続部材(ワイヤ)
54:第8接続部材(ワイヤ)
61、62、63、64、65:ワイヤ
71、73、75:ワイヤ
72:第7接続部材(ワイヤ)
74:第4接続部材(ワイヤ)
81、82、83、85、86、87:ワイヤ
91、92:側壁部
93、94:端壁部
95、96:端子台
100:上アーム
110:第1トランジスタ
110A:第1トランジスタ群
111:第1ゲート電極
112:第1ソース電極
113:第1ドレイン電極
120:第1ダイオード
120A:第1ダイオード群
121:第1アノード電極
122:第1カソード電極
131:第1ゲート端子
132:第1センスソース端子
133:センスドレイン端子
200:下アーム
210:第2トランジスタ
210A:第2トランジスタ群
211:第2ゲート電極
212:第2ソース電極
213:第2ドレイン電極
220:第2ダイオード
220A:第2ダイオード群
221:第2アノード電極
222:第2カソード電極
231:第2ゲート端子
232:第2センスソース端子
330:サーミスタ
331:第1サーミスタ端子
332:第2サーミスタ端子
411、412、413、414、415、418:ワイヤ
421、422、423、424、425、428:ワイヤ
I1、I2、I3、I4:電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14