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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車載温調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240827BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/08 621C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021084848
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178219
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】三好 悠司
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168950(JP,A)
【文献】特開2017-048783(JP,A)
【文献】特開2017-065635(JP,A)
【文献】特開2015-007491(JP,A)
【文献】特開2020-104841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0115048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒から熱媒体に放熱させて前記冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器と前記冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる蒸発器とを有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
車室内の暖房に用いられるヒータコアと、前記媒体間熱交換器と、機関熱回路とを有すると共に、これらを通って熱媒体を循環させ得る熱回路と、
前記熱回路における前記熱媒体の流通状態を制御する制御装置と、を有し、
前記機関熱回路は、前記ヒータコアと前記媒体間熱交換器を通らずに、内燃機関と熱交換する機関熱交換器を通って熱媒体を流通させ、
前記熱回路は、前記機関熱交換器の下流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の出口と前記ヒータコアの入口とに連通して前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器から前記ヒータコアへ前記熱媒体を流通させる第1連通路と、前記機関熱交換器の上流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の入口と前記ヒータコアの出口とに連通して前記ヒータコアから前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器へ前記熱媒体を流通させる第2連通路と、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記媒体間熱交換器から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量と前記機関熱回路から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量との割合を調整する調整弁とを有し、
前記制御装置は、前記冷凍サイクルによって得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第1暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記機関熱回路からは熱媒体が流入せずに前記媒体間熱交換器から熱媒体が流入する第1状態に前記調整弁を制御し、前記内燃機関から得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第2暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記媒体間熱交換器からは熱媒体が流入せずに前記機関熱回路から熱媒体が流入する第2状態に前記調整弁を制御し、
前記制御装置は、前記調整弁を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるときには、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記機関熱回路から流出した熱媒体の流量の前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体の流量に対する割合が段階的に又は連続的に大きくなるように前記調整弁を制御し、
前記第2連通路は、前記ヒータコアの出口に連通する第3通路と、該第3通路に連通すると共に前記媒体間熱交換器の入口及び前記機関熱回路にそれぞれ連通する第1通路及び第2通路とを備え、
前記調整弁は、前記第3通路が前記第1通路と前記第2通路とに分岐する分岐部に設けられ、前記第3通路から前記第1通路へ流入する熱媒体の流量と前記第3通路から前記第2通路へ流入する熱媒体の流量との割合を調整するように構成される、車載温調システム。
【請求項2】
冷媒から熱媒体に放熱させて前記冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器と前記冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる蒸発器とを有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
車室内の暖房に用いられるヒータコアと、前記媒体間熱交換器と、機関熱回路とを有すると共に、これらを通って熱媒体を循環させ得る熱回路と、
前記熱回路における前記熱媒体の流通状態を制御する制御装置と、を有し、
前記機関熱回路は、前記ヒータコアと前記媒体間熱交換器を通らずに、内燃機関と熱交換する機関熱交換器を通って熱媒体を流通させ、
前記熱回路は、前記機関熱交換器の下流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の出口と前記ヒータコアの入口とに連通して前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器から前記ヒータコアへ前記熱媒体を流通させる第1連通路と、前記機関熱交換器の上流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の入口と前記ヒータコアの出口とに連通して前記ヒータコアから前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器へ前記熱媒体を流通させる第2連通路と、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記媒体間熱交換器から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量と前記機関熱回路から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量との割合を調整する調整弁とを有し、
前記制御装置は、前記冷凍サイクルによって得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第1暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記機関熱回路からは熱媒体が流入せずに前記媒体間熱交換器から熱媒体が流入する第1状態に前記調整弁を制御し、前記内燃機関から得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第2暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記媒体間熱交換器からは熱媒体が流入せずに前記機関熱回路から熱媒体が流入する第2状態に前記調整弁を制御し、
前記制御装置は、前記調整弁を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるときには、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記機関熱回路から流出した熱媒体の流量の前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体の流量に対する割合が段階的に又は連続的に大きくなるように前記調整弁を制御し、
前記第1連通路は、前記媒体間熱交換器の出口に連通する第4通路と、前記機関熱回路に連通する第5通路と、前記第4通路及び前記第5通路に連通すると共に前記ヒータコアの入口に連通する第6通路とを備え、
前記調整弁は、前記第4通路と前記第5通路と第6通路との連通部に設けられ、前記前記第4通路から前記第6通路へ流入する熱媒体の流量と前記第5通路から前記第6通路へ流入する熱媒体の流量との割合を調整するように構成される、車載温調システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ヒータコアの入口における熱媒体の温度と前記機関熱回路内の熱媒体の温度との差が小さくなるにつれて、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記機関熱回路から流出した熱媒体の流量の前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体の流量に対する割合が大きくなるように前記調整弁を制御する、請求項1又は2に記載の車載温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排熱によりヒータコアに流入する冷却水を加熱することによって行う暖房(排熱暖房)と、ヒートポンプを利用して斯かる冷却水を加熱することによって行う暖房(HP暖房)との、二つの態様の暖房を行うことができる車載温調システムが知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特に、特許文献1に記載の車載温調システムは、ヒートポンプの冷媒と熱交換する媒体間熱交換器とヒータコアとを通って冷却水が循環するように構成された熱回路を有する。また、この車載温調システムでは、内燃機関と熱交換する機関熱交換器の出口が、ヒータコアの下流であって媒体間熱交換器上流の上記熱回路の流路と、媒体間熱交換器の下流であってヒータコアの上流の上記熱回路の流路とに連通すると共に、切換弁により機関熱交換器の出口がこれら二つの流路のいずれかに選択的に連通せしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-168950号公報
【文献】特開2016-130045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車載温調システムは、上述したように二つの態様の暖房を行うことはできるものの、機関熱交換器の出口がヒータコアの上流側及び下流側に選択的に連通することができるように構成されており、複雑な構成を有している。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、二つの態様の暖房を行うことができる簡単な構成の車載温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)冷媒から熱媒体に放熱させて前記冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器と前記冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる蒸発器とを有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
車室内の暖房に用いられるヒータコアと、前記媒体間熱交換器と、機関熱回路とを有すると共に、これらを通って熱媒体を循環させ得る熱回路と、
前記熱回路における前記熱媒体の流通状態を制御する制御装置と、を有し、
前記機関熱回路は、前記ヒータコアと前記媒体間熱交換器を通らずに、内燃機関と熱交換する機関熱交換器を通って熱媒体を流通させ、
前記熱回路は、前記機関熱交換器の下流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の出口と前記ヒータコアの入口とに連通して前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器から前記ヒータコアへ前記熱媒体を流通させる第1連通路と、前記機関熱交換器の上流側における前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器の入口と前記ヒータコアの出口とに連通して前記ヒータコアから前記機関熱回路及び前記媒体間熱交換器へ前記熱媒体を流通させる第2連通路と、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記媒体間熱交換器から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量と前記機関熱回路から流出して前記第1連通路を介して前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量との割合を調整する調整弁とを有し、
前記制御装置は、前記冷凍サイクルによって得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第1暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記機関熱回路からは熱媒体が流入せずに前記媒体間熱交換器から熱媒体が流入する第1状態に前記調整弁を制御し、前記内燃機関から得られた熱を用いて前記ヒータコアによる暖房を行う第2暖房条件が成立しているときには、前記ヒータコアに前記媒体間熱交換器からは熱媒体が流入せずに前記機関熱回路から熱媒体が流入する第2状態に前記調整弁を制御する、車載温調システム。
(2)前記制御装置は、前記調整弁を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるときには、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記機関熱回路から流出した熱媒体の流量の前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体の流量に対する割合が段階的に又は連続的に大きくなるように前記調整弁を制御する、上記(1)に記載の車載温調システム。
(3)前記制御装置は、前記ヒータコアの入口における熱媒体の温度と前記機関熱回路内の熱媒体の温度との差が小さくなるにつれて、前記ヒータコアに流入する熱媒体のうち前記機関熱回路から流出した熱媒体の流量の前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体の流量に対する割合が大きくなるように前記調整弁を制御する、上記(2)に記載の車載温調システム。
(4)前記第2連通路は、前記ヒータコアの出口に連通する第3通路と、該第3通路に連通すると共に前記媒体間熱交換器の入口及び前記機関熱回路にそれぞれ連通する第1通路及び第2通路とを備え、
前記調整弁は、前記第3通路から前記第1通路へ流入する熱媒体の流量と前記第3通路から前記第2通路へ流入する熱媒体の流量との割合を調整するように構成される、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(5)前記第1連通路は、前記媒体間熱交換器の出口に連通する第4通路と、前記機関熱回路に連通する第5通路と、前記第4通路及び前記第5通路に連通すると共に前記ヒータコアの入口に連通する第6通路とを備え、
前記調整弁は、前記第4通路から前記第6通路へ流入する熱媒体の流量と前記第5通路から前記第6通路へ流入する熱媒体の流量との割合を調整するように構成される、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、二つの態様の暖房を行うことができる簡単な構成の車載温調システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一つの実施形態に係る車載温調システムを搭載する車両の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、一つの実施形態に係る車載温調システムを概略的に示す構成図である。
図3図3は、第4三方弁の異なる作動状態を概略的に示す図である。
図4図4は、車載温調システムを搭載した車両の空調用の空気通路を概略的に示す構成図である。
図5図5は、暖房要求があり且つ内燃機関が停止している場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(第1暖房モード)を示している。
図6図6は、暖房要求があり且つ内燃機関が作動している場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(第2暖房モード)を示している。
図7図7は、第1遷移モードでの、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態を示している。
図8図8は、第2遷移モードでの、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態を示している。
図9図9は、ECUによる第4三方弁の切替処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、第1変形例に係る車載温調システムを概略的に示す構成図である。
図11図11は、第1変形例に係る第4三方弁の異なる作動状態を概略的に示す図である。
図12図12は、第2変形例に係る車載温調システムを概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
<車両の構成>
図1は、一つの実施形態に係る車載温調システム1を搭載する車両100の構成を概略的に示す図である。図1では、左側が車両100の前方、右側が車両100の後方をそれぞれ示している。図1に示したように、車両100は、内燃機関110と、モータジェネレータ(MG)112と、動力分割機構116と、を有する。加えて、車両100は、MG112に電気的に接続されたパワーコントロールユニット(PCU)118と、PCU118に電気的に接続されたバッテリ120と、を備える。
【0013】
内燃機関110は、燃料を機関の内部で燃焼させて、燃焼ガスの熱エネルギを機械的エネルギに変換する原動機である。内燃機関110は動力分割機構116に接続され、内燃機関110の出力は車両100を駆動したりMG112にて発電を行ったりするのに用いられる。
【0014】
MG112は、電動機及び発電機として機能する。MG112は、動力分割機構116に接続され、車両100を駆動したり、車両100を制動する際に回生を行ったりするのに用いられる。なお、本実施形態では、車両100を駆動するモータとして、発電機能を有するMG112が用いられているが、発電機能を有さないモータが用いられてもよい。
【0015】
PCU118は、バッテリ120とMG112との間に接続されて、MG112へ供給される電力を制御する。PCU118は、モータを駆動するインバータ、電圧を制御する昇圧コンバータ、高電圧を降圧するDCDCコンバータ等の発熱部品を有する。バッテリ120は、PCU118及びMG112に接続されて、車両100を駆動するための電力をMG112に供給する。
【0016】
本実施形態では、内燃機関110、MG112及びPCU118は車両100の前方、すなわち車室よりも前方に配置される。一方、バッテリ120は、車両100の中央、すなわち車室の下方に配置される。
【0017】
なお、車両100は、内燃機関110及びMG(又はモータ)112を備える車両であれば如何なる態様の車両であってもよい。したがって、例えば、車両100は、内燃機関が発電のみに用いられてモータのみが車両100の駆動を行うように構成されていてもよい。また、例えば、車両100は、主に車両100の駆動用に用いられるMGと、主に発電用に用いられるMGとの二つのMGを有するように構成されてもよい。
【0018】
<車載温調システムの構成>
図1図3を参照して、一つの実施形態に係る車載温調システム1の構成について説明する。図2は、車載温調システム1を概略的に示す構成図である。車載温調システム1は、冷凍回路2、低温回路3、高温回路4及び制御装置6を備える。冷凍回路2、低温回路3及び高温回路4は、回路の外部との間で熱の授受を行う熱回路として機能する。
【0019】
≪冷凍回路≫
まず、冷凍回路2について説明する。冷凍回路2は、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a、レシーバ23、第1膨張弁24、第2膨張弁25、エバポレータ26、チラー27の冷媒配管27a、第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29を備える。冷凍回路2は、これら構成部品を通って冷媒が循環することで冷凍サイクルを実現するように構成される。冷媒には、例えば、ハイドロフルオロカーボン(例えば、HFC-134a)等、一般的に冷凍サイクルで冷媒として用いられる任意の物質が用いられる。
【0020】
また、冷凍回路2は、冷凍基本流路2aと、エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとを有する。エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとは互いに並列に設けられ、それぞれ冷凍基本流路2aに接続されている。
【0021】
冷凍基本流路2aには、冷媒の循環方向において、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a及びレシーバ23がこの順番に設けられる。エバポレータ流路2bには、冷媒の循環方向において、第1電磁調整弁28、第1膨張弁24及びエバポレータ26がこの順番に設けられる。加えて、チラー流路2cには、第2電磁調整弁29、第2膨張弁25及びチラー27の冷媒配管27aがこの順番に設けられる。
【0022】
コンプレッサ21は、冷媒を圧縮する圧縮機として機能する。本実施形態では、コンプレッサ21は、電動式であり、コンプレッサ21への供給電力が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。コンプレッサ21では、エバポレータ26又はチラー27から流出した低温・低圧であって主にガス状である冷媒が、断熱的に圧縮されることにより、高温・高圧であって主にガス状である冷媒に変化せしめられる。
【0023】
コンデンサ22は、冷媒配管22aと冷却水配管22bとを有する。コンデンサ22は、冷媒から、後述する高温回路4の冷却水配管22bを流れる冷却水に放熱させて冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器として機能する。見方を変えると、コンデンサ22は、内燃機関110の排熱以外の熱を利用して高温回路4の冷却水を加熱する加熱部として機能する。コンデンサ22の冷媒配管22aは、冷凍サイクルにおいて冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、コンデンサ22の冷媒配管22aでは、コンプレッサ21から流出した高温・高圧であって主にガス状である冷媒が、等圧的に冷却されることにより、高温・高圧の主に液状の冷媒に変化せしめられる。
【0024】
レシーバ23は、コンデンサ22の冷媒配管22aによって凝縮された冷媒を貯留する。また、コンデンサ22では必ずしも全ての冷媒を液化することができないため、レシーバ23は気液の分離を行うように構成される。レシーバ23からはガス状の冷媒が分離された液状の冷媒のみが流出する。
【0025】
第1膨張弁24及び第2膨張弁25は、冷媒を膨張させる膨張器として機能する。これら膨張弁24、25は、細径の通路を備えると共に、この細径の通路から冷媒を噴霧することで冷媒の圧力を急激に低下させる。第1膨張弁24は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、エバポレータ26内に霧状に噴霧する。同様に、第2膨張弁25は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、チラー27の冷媒配管27a内に霧状に噴霧する。これら膨張弁24、25では、レシーバ23から流出した高温・高圧の液状の冷媒が、減圧されて部分的に気化することにより、低温・低圧の霧状の冷媒に変化せしめられる。
【0026】
エバポレータ26は、冷媒に吸熱させて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。具体的には、エバポレータ26は、エバポレータ26周りの空気から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる。したがって、エバポレータ26では、第1膨張弁24から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、エバポレータ26周りの空気は冷却せしめられ、車室内の冷房を行うことができる。
【0027】
チラー27は、冷媒配管27aと冷却水配管27bとを備える。チラー27は、後述する低温回路3の冷却水配管27bを流れる冷却水から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる媒体間熱交換器として機能する。チラー27の冷媒配管27aは、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。また、チラー27の冷媒配管27aでは、第2膨張弁25から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、低温回路3の冷却水は冷却せしめられる。
【0028】
第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29は、冷凍回路2内における冷媒の流通態様を変更するように用いられる。第1電磁調整弁28の開度が大きくなるほどエバポレータ流路2bに流入する冷媒が多くなり、よってエバポレータ26に流入する冷媒が多くなる。また、第2電磁調整弁29の開度が大きくなるほどチラー流路2cに流入する冷媒が多くなり、よってチラー27に流入する冷媒が多くなる。なお、冷凍基本流路2aからエバポレータ流路2b及びチラー流路2cへ流入する流量を調整することができれば、これら電磁調整弁28、29の代わりに如何なる弁が設けられてもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、冷凍回路2は、冷凍回路2内の冷媒から外部へ熱を放出する熱交換器として、コンデンサ22のみを有する。しかしながら、冷凍回路2は、冷媒から外部(例えば、外気)へ熱を放出する他の熱交換器を有していてもよい。
【0030】
≪低温回路≫
次に、低温回路3について説明する。低温回路3は、第1ポンプ31、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ32、第1三方弁33及び第2三方弁34を備える。加えて、低温回路3は、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を備える。低温回路3では、これら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、冷却水は第2熱媒体の一例であり、低温回路3内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0031】
低温回路3は、低温基本流路3aと、低温ラジエータ流路3bと、発熱機器流路3cとを有する。低温ラジエータ流路3bと発熱機器流路3cとは互いに並列に設けられ、それぞれ低温基本流路3aに接続されている。
【0032】
低温基本流路3aには、冷却水の循環方向において、第1ポンプ31、チラー27の冷却水配管27b、バッテリ熱交換器35がこの順番に設けられる。また、低温基本流路3aにはバッテリ熱交換器35をバイパスするように設けられたバッテリバイパス流路3dが接続される。低温基本流路3aとバッテリバイパス流路3dとの接続部には第1三方弁33が設けられる。
【0033】
また、低温ラジエータ流路3bには、低温ラジエータ32が設けられる。発熱機器流路3cには、冷却水の循環方向において、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37がこの順番に設けられる。発熱機器流路3cには、PCUやMG以外の発熱機器と熱交換する熱交換器が設けられてもよい。低温基本流路3aと低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cとの間には第2三方弁34が設けられる。
【0034】
第1ポンプ31は、低温回路3内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第1ポンプ31は、電動式のウォータポンプであり、第1ポンプ31への供給電力が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。
【0035】
低温ラジエータ32は、低温回路3内を循環する冷却水と車両100の外部の空気(外気)との間で熱交換を行う熱交換器である。低温ラジエータ32は、冷却水の温度が外気の温度よりも高いときには冷却水から外気への放熱を行い、冷却水の温度が外気の温度よりも低いときには外気から冷却水への吸熱を行うように構成される。
【0036】
第1三方弁33は、チラー27の冷却水配管27bから流出した冷却水をバッテリ熱交換器35とバッテリバイパス流路3dとの間で選択的に流通させるように構成される。第2三方弁34は、低温基本流路3aから流出した冷却水を、低温ラジエータ流路3bと発熱機器流路3cとの間で選択的に流通させるように構成される。
【0037】
バッテリ熱交換器35は、車両100のバッテリ120と熱交換するように構成される。PCU熱交換器36は、車両100のPCU118と熱交換するように構成される。また、MG熱交換器37は、車両100のMG112と熱交換するように構成される。
【0038】
なお、本実施形態では、冷凍回路2及び低温回路3にチラー27が設けられ、チラー27は低温回路3の冷却水から冷凍回路2の冷媒へ熱を移動させる媒体間熱交換器として機能する。しかしながら、冷凍回路2には、チラー27の代わりに、車外の大気中のガスと熱交換し、大気中のガスから冷凍回路2の冷媒へ熱を移動させる熱交換器が設けられてもよい。この場合、車載温調システム1には低温回路3は設けられず、よってバッテリ120、PCU118及びMG112の冷却は車載温調システム1以外の機構によって行われる。
【0039】
≪高温回路≫
次に、高温回路4について説明する。高温回路4は、第2ポンプ41、コンデンサ22の冷却水配管22b、高温ラジエータ42、ヒータコア43、第3三方弁44、第4三方弁45、及び機関熱回路5を備える。高温回路4でもこれら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、この冷却水は第1熱媒体の一例であり、高温回路4内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0040】
また、高温回路4は、第1連通路4aと第2連通路4bとを有する。
【0041】
第1連通路4aは、後述する機関熱交換器52の下流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の冷却水配管22bの出口に連通すると共に、ヒータコア43の入口及び高温ラジエータ42の入口に連通する。第1連通路4aは、具体的には、コンデンサ22の冷却水配管22bの出口に連通するコンデンサ流出通路(第4通路)4a1と、機関熱回路5に連通する機関流出通路(第5通路)4a2と、コンデンサ流出通路4a1及び機関流出通路4a2に連通すると共にヒータコア43の入口に連通するコア流入通路(第6通路)4a3と、コア流入通路4a3から分岐して高温ラジエータ42の入口に連通するラジエータ流入通路4a4とを有する。したがって、第1連通路4aは、機関熱回路5から流出した冷却水及びコンデンサ22から流出した冷却水を、ヒータコア43及び/又は高温ラジエータ42に流入させることができる。
【0042】
第2連通路4bは、ヒータコア43の出口及び高温ラジエータ42の出口に連通すると共に、機関熱交換器52の上流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の冷却水配管22bの入口に連通する。第2連通路4bは、具体的には、コンデンサ22の冷却水配管22bの入口に連通するコンデンサ流入通路(第1通路)4b1と、機関熱回路5に連通する機関流入通路(第2通路)4b2と、コンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2に連通すると共にヒータコア43の出口に連通するコア流出通路(第3通路)4b3と、高温ラジエータ42の出口及びコンデンサ流入通路4b1に連通するラジエータ流出通路4b4とを有する。したがって、第2連通路4bは、ヒータコア43から流出した冷却水及び高温ラジエータ42から流出した冷却水を機関熱回路5及び/又はコンデンサ22に流入させることができる。
【0043】
したがって、本実施形態では、高温回路4は、機関熱交換器52の下流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の出口とヒータコア43の入口とに連通して機関熱回路5及びコンデンサ22からヒータコア43へ冷却水を流通させる第1連通路4aと、機関熱交換器52の上流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の入口とヒータコア43の出口とに連通してヒータコア43から機関熱回路5及びコンデンサ22へ冷却水を流通させる第2連通路とを有する。
【0044】
第2ポンプ41は、高温回路4内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第2ポンプ41は、第1ポンプ31と同様な、電動式のウォータポンプである。特に、本実施形態では、第2ポンプ41はコンデンサ流入通路4b1に設けられる。また、高温ラジエータ42は、低温ラジエータ32と同様に、高温回路4内を循環する冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0045】
ヒータコア43は、高温回路4内の冷却水の熱を利用して車室内を暖房するのに用いられる。すなわち、ヒータコア43は、高温回路4内を循環する冷却水とヒータコア43周りの空気との間で熱交換を行ってヒータコア43周りの空気を暖め、その結果、車室内の暖房を行うように構成される。具体的には、ヒータコア43は、冷却水からヒータコア43周りの空気へ排熱するように構成される。したがって、ヒータコア43に高温の冷却水が流れると、冷却水の温度が低下すると共に、ヒータコア43周りの空気が暖められる。
【0046】
コア流入通路4a3からラジエータ流入通路4a4が分岐する分岐部には、第3三方弁44が設けられる。したがって、第3三方弁44には、コンデンサ22から第1連通路4aのコンデンサ流出通路4a1に流出した冷却水及び機関熱回路5から第1連通路4aの機関流出通路4a2に流出した冷却水が流入する。また、第3三方弁44は、コア流入通路4a3同士を連通させる第1連通状態と、コア流入通路4a3とラジエータ流入通路4a4とを連通させる第2連通状態との間で切り替えられる。第3三方弁44が第1状態にあるときには、第3三方弁44に流入した冷却水が全てヒータコア43に流入する。一方、第3三方弁44が第2状態にあるときには、第3三方弁44に流入した冷却水が全て高温ラジエータ42に流入する。
【0047】
なお、本実施形態では、第3三方弁44は、第1状態と第2状態との間で切り替えられるように構成されている。しかしながら、第3三方弁44は、これら第1状態と第2状態との間の中間状態にも切替可能であってもよい。この場合、第3三方弁は、第3三方弁44に流入した冷却水のうち、コア流入通路4a3を通ってヒータコア43に流入する冷却水の流量とラジエータ流入通路4a4を通って高温ラジエータ42に流入する流量との割合を調整する。
【0048】
コア流出通路4b3がコンデンサ流入通路4b1と機関流入通路4b2とに分岐する分岐部には、第4三方弁45が設けられる。したがって、第4三方弁45には、ヒータコア43からコア流出通路4b3に流出した冷却水が流入する。
【0049】
図3は、第4三方弁45の異なる作動状態を概略的に示す図である。図3に示したように、第4三方弁45は、ハウジング45aと、ハウジング45a内で回動する弁体45bとを有する。ハウジング45aは、コア流出通路4b3に連通する入口Xと、コンデンサ流入通路4b1に連通する第1出口Yと、機関流入通路4b2に連通する第2出口Zとを有する。弁体45bは、ハウジング45a内で回動することにより、入口Xと、第1出口Y、第2出口Zとの連通状態を変更する。
【0050】
第4三方弁45の弁体45bが図3(A)に示した第1状態にあるときには、入口Xと第1出口Yとが連通せしめられる。したがって、この場合、第4三方弁45に流入した冷却水(すなわち、ヒータコアから流出した冷却水)は全てコンデンサ流入通路4b1を通ってコンデンサ22に流入する。一方、第4三方弁45の弁体45bが図3(B)に示した第2状態にあるときには、入口Xと第2出口Zとが連通せしめられる。したがって、この場合、第4三方弁45に流入した冷却水は全て機関流入通路4b2を通って機関熱回路5に流入する。
【0051】
また、第4三方弁45が図3(C)に示した第3状態にあるときには、入口Xと、第1出口Y及び第2出口Zの両方とが連通せしめられる。したがって、この場合、第4三方弁45に流入した冷却水は、コンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2の両方に流入する。ただし、入口Xから第1出口Yへの開口面積が、入口Xから第2出口Zへの通路の開口面積よりも大きい。したがって、コンデンサ流入通路4b1への流入割合が、機関流入通路4b2への流入割合よりも大きい。
【0052】
さらに、第4三方弁45が図3(D)に示した第4状態にあるときには、入口Xと、第1出口Y及び第2出口Zの両方とが連通せしめられる。ただし、第4状態では、入口Xから第2出口Zへの開口面積が入口Xから第1出口Yへの通路の開口面積よりも大きい。したがって、この場合、第4三方弁45に流入した冷却水は、コンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2の両方に流入するが、機関流入通路4b2への流入割合は、コンデンサ流入通路4b1への流入割合よりも大きい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、第4三方弁45は、コア流出通路4b3からコンデンサ流入通路4b1へ流入する冷却水の流量とコア流出通路4b3から機関流入通路4b2へ流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。すなわち、第4三方弁45は、第4三方弁45に流入した冷却水のうち、コンデンサ流入通路4b1を通ってコンデンサ22に流入する流量と機関流入通路4b2を通って機関熱回路5に流入する流量との割合を段階的に調整する調整弁として機能する。換言すると、第4三方弁45は、ヒータコア43に流入する冷却水のうち、コンデンサ22から流出してコンデンサ流出通路4a1を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量と、機関熱回路5から流出して機関流出通路4a2を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。
【0054】
なお、第4三方弁45は、図3(A)~図3(D)に示した4段階よりも多い多段階で、コンデンサ22及び機関熱回路5に流入する冷却水の流量の割合を調整する調整弁であってもよいし、連続的に調整する調整弁であってもよい。また、第4三方弁45の代わりに、例えば、コンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2にそれぞれ設けられた二つの電磁調整弁が、コンデンサ22及び機関熱回路5に流入する冷却水の流量の割合を段階的に又は連続的に調整する調整弁として用いられてもよい。
【0055】
≪機関冷却回路≫
次に、機関熱回路5について説明する。機関熱回路5は、内燃機関110において生成された熱を放出するために用いられる熱回路である。機関熱回路5は、第3ポンプ51、機関熱交換器52、機関ラジエータ53及びサーモスタッド54を有する。機関熱回路5では、これら構成部品を通って高温回路4と同じ冷却水が循環する。したがって、機関熱回路5は、コンデンサ22の冷却水配管22b、高温ラジエータ42及びヒータコア43を通らずに、機関熱交換器52を通って冷却水を流通させる。
【0056】
また、機関熱回路5は、機関基本流路5aと、機関ラジエータ流路5bと、機関バイパス流路5cとに分けられる。機関ラジエータ流路5bと機関バイパス流路5cとは互いに並列に設けられ、それぞれ機関基本流路5aに接続されている。
【0057】
機関基本流路5aには、冷却水の循環方向において、第3ポンプ51、機関熱交換器52がこの順番に設けられる。機関ラジエータ流路5bには機関ラジエータ53が設けられる。また、機関バイパス流路5cには、機関流出通路4a2及び機関流入通路4b2が連通する。特に、機関流出通路4a2は機関バイパス流路5cの上流側部分に連通する。その結果、機関流出通路4a2は機関熱交換器52の出口近傍に連通する。一方、機関流入通路4b2は機関バイパス流路5cの下流側部分に連通する。その結果、機関流入通路4b2は機関熱交換器52の入口近傍に連通する。したがって、機関熱交換器52は、高温回路4に連通して高温回路4の冷却水が流通するように構成される。機関基本流路5aと機関ラジエータ流路5b及び機関バイパス流路5cとの間にはサーモスタッド54が設けられる。なお、図2に示した例では、機関流出通路4a2は機関バイパス流路5cに連通しているが、機関基本流路5a等に連通してもよい。
【0058】
第3ポンプ51は、機関熱回路5内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第3ポンプ51は、第1ポンプ31と同様な、電動式のウォータポンプである。また、機関ラジエータ53は、低温ラジエータ32と同様に、機関熱回路5内を循環する冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0059】
機関熱交換器52は、内燃機関110の排熱を利用して冷却水を加熱するのに用いられる。すなわち、機関熱交換器52は、内燃機関110から機関熱回路5内の冷却水に排熱して、冷却水を加熱する。機関熱交換器52は、内燃機関110内での燃料の燃焼に伴って生じた熱を冷却水に排出させることにより、内燃機関110が過剰に昇温することを抑制する。機関熱交換器52は、例えば、内燃機関110のシリンダブロックやシリンダヘッド内に設けられた冷却水通路から構成される。
【0060】
サーモスタッド54は、機関ラジエータ流路5bを通る冷却水の流れを遮断する閉弁状態と、機関ラジエータ流路5bを通って冷却水が流れることを許可する開弁状態との間で切り換えられる弁である。サーモスタッド54は、機関バイパス流路5cを通って循環する冷却水の温度が予め設定された温度以上であるときには、機関ラジエータ流路5bに冷却水が流れるように開かれる。一方、サーモスタッド54は、機関バイパス流路5cを通って循環する冷却水の温度が予め設定された温度未満であるときには、機関ラジエータ流路5bに冷却水が流れないように閉じられる。この結果、機関熱交換器52に流通する冷却水の温度がほぼ一定に保たれる。
【0061】
≪空気通路≫
図4は、車載温調システム1を搭載した車両100の空調用の空気通路7を概略的に示す構成図である。空気通路7では、図中に矢印で示した方向に空気が流れる。図3に示した空気通路7は、車両100の外部又は車室の空気吸い込み口に接続されており、空気通路7には制御装置6による制御状態に応じて外気又は車室内の空気が流入する。また、図3に示した空気通路7は、車室内へ空気を吹き出す複数の吹き出し口に接続されており、空気通路7からは制御装置6による制御状態に応じてこのうち任意の吹き出し口に空気が供給される。
【0062】
図4に示したように、本実施形態の空調用の空気通路7には、空気の流れ方向において、ブロワ71と、エバポレータ26と、エアミックスドア72と、ヒータコア43とがこの順番に設けられる。
【0063】
ブロワ71は、ブロワモータ71aとブロワファン71bとを備える。ブロワ71は、ブロワモータ71aによってブロワファン71bが駆動されると、外気又は車室内の空気が空気通路7に流入して、空気通路7を通って空気が流れるように構成される。車室の暖房や冷房が要求されている場合には、基本的にブロワファン71bが駆動される。
【0064】
エアミックスドア72は、空気通路7を通って流れる空気のうち、ヒータコア43を通って流れる空気の流量を調整する。エアミックスドア72は、空気通路7を流れる全ての空気がヒータコア43を流れる状態と、空気通路7を流れる全ての空気がヒータコア43を流れない状態と、その間の状態との間で調整できるように構成される。
【0065】
このように構成された空気通路7では、ブロワ71が駆動されているときに、エバポレータ26に冷媒が循環されている場合には、空気通路7を通って流れる空気が冷却される。また、ブロワ71が駆動されているときに、ヒータコア43に冷却水が循環されていて且つ空気がヒータコア43を流れるようにエアミックスドア72が制御されている場合には、空気通路7内を通って流れる空気が暖められる。
【0066】
また、図1に示したように、車両100のフロントグリルの内側に、低温ラジエータ32、高温ラジエータ42及び機関ラジエータ53が配置される。したがって、車両100が走行しているときにはこれらラジエータ32、42、53には走行風が当たる。また、これらラジエータ32、42、53に隣接してファン76が設けられる。ファン76は駆動されるとラジエータ32、42、53に風が当たるように構成される。したがって、車両100が走行していないときでも、ファン76を駆動することにより、ラジエータ32、42、53に風を当てることができる。
【0067】
≪制御装置≫
図2を参照すると、制御装置6は、電子制御ユニット(ECU)61を有する。ECU61は、各種演算を行うプロセッサと、プログラムや各種情報を記憶するメモリと、各種アクチュエータや各種センサと接続されるインタフェースとを備える。
【0068】
また、制御装置6は、機関基本流路5a又は機関バイパス流路5cに設けられて、機関熱回路5内の冷却水の温度、特に機関熱交換器52から流出した冷却水の温度を検出する第1水温センサ62を備える。加えて、制御装置6は、コア流入通路4a3に設けられて、ヒータコア43に流入する冷却水の温度を検出する第2水温センサ63を備える。ECU61はこれらセンサに接続され、ECU61にはこれらセンサからの出力信号が入力される。
【0069】
加えて、制御装置6は、車両100の室内の温度を検出する室内温度センサ66と、車両100の室外の温度を検出する外気温度センサ67と、ユーザによって操作される操作パネル68とを備える。ECU61はこれらセンサ及び操作パネル68に接続され、ECU61にはこれらセンサ及び操作パネル68からの出力信号が入力される。
【0070】
ECU61は、センサ66、67及び操作パネル68からの出力信号に基づいて冷房要求や暖房要求の有無を判断する。例えば、ユーザが操作パネル68の暖房スイッチをONにしている場合には、ECU61は暖房が要求されていると判断する。また、ユーザが操作パネル68のオートスイッチをONにしている場合には、例えば、ユーザによって設定されている室内温度が室内温度センサ66によって検出された温度よりも高いときにECU61は暖房が要求されている判断する。
【0071】
加えて、ECU61は、車載温調システム1の各種アクチュエータに接続されて、これらアクチュエータを制御する。具体的には、ECU61は、コンプレッサ21、電磁調整弁28、29、ポンプ31、41、51、三方弁33、34、44、45、ブロワモータ71a、エアミックスドア72及びファン76に接続されて、これらを制御する。したがって、ECU61は、冷凍回路2、低温回路3、高温回路4(機関熱回路5を含む)における熱媒体(冷媒及び冷却水)の流通状態を制御する制御装置として機能する。
【0072】
<車載温調システムの動作>
次に、図5図8を参照して、車載温調システム1に対して暖房が要求されている場合における、熱媒体(冷媒及び冷却水)の流通状態について説明する。図5図8では、冷媒や冷却水が流れている流路が実線で、冷媒や冷却水が流れていない流路が破線でそれぞれ示されている。また、図中の細い矢印は冷媒や冷却水が流れる方向を、図中の太い矢印は熱の移動方向をそれぞれ示している。
【0073】
≪第1暖房モード≫
図5は、暖房要求があり且つ内燃機関110が停止している場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第1暖房モード)。第1暖房モードでは、内燃機関110から得られた熱ではなく、冷凍回路2から得られた熱を用いてヒータコア43による暖房が行われる。
【0074】
図5に示したように、第1暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動せしめられると共に、第1電磁調整弁28が閉じられ且つ第2電磁調整弁29が開かれる。したがって、冷凍回路2では、エバポレータ26を通らずにチラー27を通って冷媒が循環する。なお、第1暖房モードでは、除湿も併せて行うために、第1電磁調整弁28を開いて、エバポレータ26にも冷媒を流通させてもよい。
【0075】
また、第1暖房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動せしめられる。また、第1暖房モードでは、第1三方弁33は冷却水がバッテリ熱交換器35に流通するように設定され、第2三方弁34は冷却水が低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cの両方に流通するように設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ32、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36、MG熱交換器37を通って循環する。なお、第1暖房モードでは、バッテリ120、PCU118及びMG112の冷却の必要性に応じて、第1三方弁33は冷却水がバッテリバイパス流路3dに流通するように設定されてもよいし、第2三方弁34は、冷却水が低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cのいずれか一方のみに流通するように設定されてもよい。
【0076】
さらに、第1暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41が作動せしめられる。また、第1暖房モードでは、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態に設定され、第4三方弁45は、冷却水がコンデンサ流入通路4b1に流入するように第1状態(図3(A))に設定される。この結果、高温回路4では、冷却水がヒータコア43とコンデンサ22の冷却水配管22bとを通って循環する。換言すると、高温回路4では、ヒータコア43には、冷却水が機関熱回路5からは流入せずにコンデンサ22から流入する。
【0077】
この結果、第1暖房モードでは、低温回路3において、低温ラジエータ32にて外気から冷却水に熱が吸収されると共に、場合によってはバッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37においてそれぞれバッテリ120、PCU118及びMG112から冷却水に熱が吸収される。そして、チラー27にて低温回路3の冷却水から冷媒へ熱が移動される。冷凍回路2では、チラー27にて冷媒に熱が吸収され、コンデンサ22にて冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動される。したがって、冷凍回路2は、チラー27等で吸収した熱をコンデンサ22で放出するヒートポンプとして機能する。
【0078】
そして、第1暖房モードでは、高温回路4において、コンデンサ22にて高温回路4の冷却水に熱が吸収され、ヒータコア43にてその熱が放出される。したがって、第1暖房モードでは、低温ラジエータ32にて外気から熱が吸収され、且つ場合によってはバッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37においてそれぞれバッテリ120、PCU118及びMG112から熱が吸収されると共、ヒータコア43にてその熱が放出される。換言すると、ヒータコア43は、冷凍サイクルによって得られた熱を用いて暖房を行う。
【0079】
≪第2暖房モード≫
図6は、暖房要求があり且つ内燃機関110が作動している場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第2暖房モード)。特に、第2暖房モードでは、冷凍回路2から得られた熱ではなく、内燃機関110から得られた熱を用いて、ヒータコア43による暖房が行われる。この場合、車両100の駆動は基本的に内燃機関110によって行われるため、MG112等の冷却は基本的に行わなくてもよい。
【0080】
図6に示したように、第2暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21及び第1ポンプ31は停止される。したがって、冷凍回路2内で冷媒は循環せず、また、低温回路3内で冷却水は循環しない。
【0081】
なお、第2暖房モードでは、第1ポンプ31を作動させてもよい。この場合、低温ラジエータ32及びバッテリ熱交換器35を通って冷却水が循環せしめられるか、又は低温ラジエータ32、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36、MG熱交換器37を通って冷却水が循環せしめられる。これにより、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37においてバッテリ120、PCU118、MG112から冷却水に熱が吸収されると共に、その熱が低温ラジエータ32において大気中に放出される。
【0082】
また、第2暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41は停止され、機関熱回路5の第3ポンプ51は作動せしめられる。また、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態に設定され、第4三方弁45は、冷却水が機関熱回路5に流入するように第2状態(図3(B))に設定される。この結果、高温回路4では、第3ポンプ51により、冷却水が機関熱回路5とヒータコア43とを通って循環する。換言すると、高温回路4では、ヒータコア43に、コンデンサ22からは熱媒体が流入せずに、機関熱回路5から熱媒体が流入する。なお、図6に示した例では、冷却水は機関ラジエータ流路5bを通って流れていないが、機関熱回路5内の冷却水の温度に応じてサーモスタッド54が開かれ、機関ラジエータ流路5bにも冷却水が流れるようになる。
【0083】
この結果、第2暖房モードでは、機関熱交換器52において内燃機関110から熱が吸収されると共に、ヒータコア43にてその熱が放出される。したがって、ヒータコア43は、内燃機関110から得られた熱を用いて暖房を行う。また、第2暖房モードでは、冷凍回路2において冷媒は循環しないため、コンデンサ22において冷媒から高温回路4の冷却水への放熱は行われず、よって冷凍回路2はヒートポンプとして機能しない。
【0084】
このように、本実施形態では、第4三方弁45を切り替えるだけで、ヒータコア43への冷却水の流入元をコンデンサ22と機関熱回路5との間で切り替えることができ、よって冷凍サイクル(ヒートポンプ)を利用した暖房と内燃機関110の排熱を利用した暖房とを簡単に切り替えることができる。したがって、本実施形態に係る車載温調システム1によれば、簡単な構成で、二つの態様の暖房を行うことができる。
【0085】
≪遷移モード≫
次に、車載温調システム1の熱媒体の流通状態が図5に示した第1暖房モードから図6に示した第2暖房モードに変化する間における、車載温調システム1における熱媒体の流通状態の変化について説明する。特に、本実施形態では、第1暖房モードから第2暖房モードから変化する間に、流通状態が第1遷移モード、第2遷移モード、第3遷移モードの順に変化する。
【0086】
図7は、第1遷移モードでの、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している。図7に示した第1遷移モードは、停止していた内燃機関110が冷間始動されたときに採用される流通状態である。
【0087】
図7からわかるように、車載温調システム1は、第1遷移モードにおいて、基本的に第1暖房モードと同様に作動せしめられる。したがって、高温回路4では、第2ポンプ41が作動され、第3三方弁44が第1状態に設定され、第4三方弁が第1状態(図3(A))に設定される。この結果、コンデンサ22にて冷却水に熱が吸収され、ヒータコア43にてその熱が放出される。
【0088】
加えて、第1遷移モードでは、内燃機関110の作動に伴って、機関熱回路5の第3ポンプ51が作動せしめられる。したがって、機関熱回路5内では冷却水が循環する。ただし、第4三方弁45が第1状態(図3(A))に設定されているため、機関流入通路4b2から機関熱回路5へは冷却水は流入せず、よって機関熱回路5から機関流出通路4a2へは冷却水は流出しない。
【0089】
このように内燃機関110の作動に伴って機関熱回路5内で冷却水が循環されると、機関熱交換器52において内燃機関110から熱を吸収する。このため、内燃機関110の作動前には低かった機関熱回路5内の冷却水の温度が徐々に上昇する。一方で、機関流出通路4a2や機関流入通路4b2には冷却水が流通しない。したがって、機関流出通路4a2及び機関流入通路4b2内の冷却水の温度は低いまま維持される。
【0090】
図8は、第2遷移モードでの、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している。第2遷移モードは、第1遷移モードによって機関熱回路5内の冷却水の温度が或る程度上昇した後に採用される流通状態である。
【0091】
第2遷移モードでは、冷凍回路2において、第1暖房モードと同様に冷媒が循環せしめられる。また、第2遷移モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動せしめられる。加えて、第2遷移モードでは、第1三方弁33は冷却水がバッテリバイパス流路3dに流通するように設定され、第2三方弁34は冷却水が低温ラジエータ流路3bに流通するように設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、チラー27の冷却水配管27b及び低温ラジエータ32を通って循環する。これは内燃機関110によって車両100が駆動されるため、MG112よって車両100を駆動する必要がなくなり、よってPCU118、MG112及びバッテリ120において基本的に発熱がなく、よってこれらを冷却する必要がないためである。
【0092】
また、第2遷移モードでは、高温回路4の第2ポンプ41が作動せしめられる。加えて、第2遷移モードでは、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態に設定され、第4三方弁45は、冷却水がコンデンサ流入通路4b1と機関流入通路4b2との両方に流入するように設定される。特に、第4三方弁45は、コンデンサ流入通路4b1への流入割合が、機関流入通路4b2への流入割合よりも大きくなるように第3状態に設定される。
【0093】
したがって、第2遷移モードでは、ヒータコア43から流出した冷却水の一部はコンデンサ流入通路4b1に流入し、残りの一部は機関流入通路4b2に流入する。このとき、コンデンサ流入通路4b1に流入する流量は、機関流入通路4b2に流入する流量よりも多い。この結果、第2遷移モードでは、ヒータコア43には、コンデンサ22からコンデンサ流出通路4a1を介して冷却水が流入すると共に、機関熱回路5から機関流出通路4a2を介して冷却水が流入する。このとき、コンデンサ22からヒータコア43に流入する冷却水の流量は、機関熱回路5からヒータコア43に流入する冷却水の流量よりも多い。
【0094】
この結果、ヒータコア43には、コンデンサ22にて加熱された多量の冷却水が流入する。加えて、ヒータコア43には、機関流出通路4a2内に滞留していた比較的温度の低い冷却水や、機関熱回路5において十分には加熱されていない冷却水が流入する。しかしながら、機関熱回路5から機関流出通路4a2を通って流入する冷却水は少量であるため、コンデンサ22にて加熱された冷却水は、機関流出通路4a2を通ってきた冷却水と合流しても、その温度はそれほど低下しない。したがって、第2遷移モードにおいても、ヒータコア43には比較的高温の冷却水が流入し、よって効果的に暖房を行うことができる。
【0095】
第3遷移モードは、基本的に第2遷移モードと同様な熱媒体の流通状態となる。ただし、第3遷移モードでは、高温回路4の第4三方弁45は、機関流入通路4b2への流入割合が、コンデンサ流入通路4b1への流入割合よりも大きくなるように第4状態に設定される。
【0096】
したがって、第3遷移モードでも、ヒータコア43から流出した冷却水の一部はコンデンサ流入通路4b1に流入し、残りの一部は機関流入通路4b2に流入する。このとき、機関流入通路4b2に流入する流量は、コンデンサ流入通路4b1に流入する流量よりも多い。この結果、第3遷移モードでは、ヒータコア43には、コンデンサ22からコンデンサ流出通路4a1を介して冷却水が流入すると共に、機関熱回路5から機関流出通路4a2を介して冷却水が流入する。このとき、機関熱回路5からヒータコア43に流入する冷却水の流量は、コンデンサ22からヒータコア43に流入する冷却水の流量よりも多い。
【0097】
この結果、ヒータコア43には、コンデンサ22にて加熱された高温の冷却水が少量流入する。加えて、ヒータコア43には、機関熱回路5内の冷却水が多量に流入する。このとき、機関熱回路5内の冷却水は機関熱交換器52を介して内燃機関110によって或る程度加熱されていると共に機関流出通路4a2にも比較的高い温度の冷却水が流れている。したがって、機関熱回路5から機関流出通路4a2を通ってヒータコア43に流入する冷却水の温度はそれほど低くはない。しかしながら、斯かる冷却水は、ヒータコア43において暖房を行うのに十分なほど高温でもない。第3遷移モードでは、このような冷却水がコンデンサ22によって加熱された冷却水と合流することにより、ヒータコア43には暖房を行うのに十分なほど高温の冷却水が流入することになる。
【0098】
したがって、本実施形態では、流通状態を第1暖房モードから第2暖房モードに切り換えるべく第4三方弁45を第1状態(図3(A))から第2状態(図3(B))に切り替えるときには、第4三方弁45は、ヒータコア43に流入する冷却水のうち機関熱回路5から流出した冷却水の流量のコンデンサ22から流出した冷却水の流量に対する割合が4段階(第1暖房モード、第2遷移モード、第3遷移モード、第2暖房モードの順)で大きくなるように制御される。この結果、上述したように、流通状態を切り換えるにあたって、ヒータコア43に流入する冷却水が機関流出通路4a2に滞留していた低温の冷却水によって過度に降温されることが抑制され、よってヒータコア43による暖房効果が一時的に低下することが抑制される。
【0099】
なお、本実施形態では、流通状態を第1暖房モードから第2暖房モードに切り換えるときに、冷却水の流量の割合を4段階で変化させている。しかしながら、上述したように、第4三方弁45の代わりに、冷却水の流量の割合を4段階よりも多い多段階又は連続的に調整することができる調整弁が設けられている場合には、流通状態を第1暖房モードから第2暖房モードに切り換えるときに、冷却水の流量の割合を4段階よりも多い多段階又は連続的に変化させてもよい。
【0100】
<三方弁の制御>
上述したように、第4三方弁45の制御は、ECU61によって行われる。ECU61は、基本的に、冷凍サイクルによって得られた熱を用いてヒータコア43による暖房を行う第1暖房条件が成立しているときには、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を上述した第1暖房モードに制御する。第1暖房条件は、例えば、内燃機関110が停止中であるとき、及び内燃機関110が作動中であっても機関熱回路5内の冷却水の温度が基準温度(例えば、50℃)未満であるときに成立する。
【0101】
また、ECU61は、内燃機関110によって得られた熱を用いてヒータコア43による暖房を行う第2暖房条件が成立しているときには、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を上述した第2暖房モードに制御する。第2暖房条件は、例えば、内燃機関110が作動中であって且つ機関熱回路5内の冷却水の温度が基準温度以上であるときに成立する。
【0102】
ただし、ECU61は、車載温調システム1の作動モードが第1暖房モードで作動しているときに第2暖房条件が成立しても、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を直ぐに第2暖房モードに切り替えずに、段階的に切替を行う。以下では、図9を参照して、ECU61による第4三方弁45の切替制御について説明する。図9は、ECU61による第4三方弁45の切替処理の流れを示すフローチャートである。図示した切替処理は、一定時間間隔毎に実行される。
【0103】
まず、ECU61は、切替許可フラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS11)。切替許可フラグは、暖房要求があって車載温調システム1における熱媒体の流通状態が第1暖房モードにある状態で、停止していた内燃機関110が始動して、機関熱回路5内の冷却水の温度が予め定められた切替開始温度(例えば、50℃)以上になったときにONに設定されるフラグである。したがって、切替許可フラグがOFFからONに切り替えられるときには、車載温調システム1における熱媒体の流通状態は第1遷移モードになっている。機関熱回路5内の冷却水の温度は、第1水温センサ62によって検出される。ステップS11において、切替許可フラグがONに設定されていないと判定された場合には、本切替処理による第4三方弁45の切替は行われない。
【0104】
ステップS11において切替許可フラグがONに設定されていると判定されたときには、ECU61は、切替完了フラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS12)。切替完了フラグは、第4三方弁45の切替が完了するとONに設定される。また、切替完了フラグは、例えば、内燃機関110が停止されて機関熱回路5内の冷却水の温度が低下することなどにより、第2暖房条件が成立しなくなると、OFFに設定される。
【0105】
ステップS12において切替完了フラグがOFFに設定されていると判定されたときには、ECU61は、機関熱回路5内の冷却水の温度からヒータコア43に流入する冷却水の温度を減算した温度差ΔTwが第1基準値Tref1以上であるか否かを判定する(ステップS13)。機関熱回路5内の冷却水の温度は第1水温センサ62によって検出され、ヒータコア43に流入する冷却水の温度は第2水温センサ63によって検出される。また、第1基準値Tref1は、例えば、それ以上温度差が大きくなると、ヒータコア43に低温の冷却水が流入して暖房効果が低下するような温度であり、例えば10℃である。なお、第1基準値Tref1は、暖房効果の観点からは小さい方が好ましいものの、小さくし過ぎると冷凍回路2のコンプレッサ21の停止時期が遅くなるため、これらを考慮して実験的に定められる。
【0106】
ステップS13において温度差ΔTwが第1基準値Tref1以上であると判定された場合、すなわちヒータコア43に流入する冷却水の温度が低いと判定された場合には、ECU61は、第4三方弁45の作動状態を第3状態に設定する(ステップS14)。したがって、第4三方弁45は、コンデンサ流入通路4b1への開度が機関流入通路4b2への開度よりも大きくなるように設定される。これにより、車載温調システム1における熱媒体の流通状態は第2遷移モードになる。
【0107】
一方、ステップS13において温度差ΔTwが第1基準値Tref1未満であると判定された場合には、ECU61は、温度差ΔTwが第2基準値Tref2以下であるか否かを判定する(ステップS15)。第2基準値Tref2は、第1基準値Tref1よりも低い温度であり、例えば5℃である。第2基準値Tref2も、暖房効果の観点からは小さい方が好ましいものの、小さくし過ぎると冷凍回路2のコンプレッサ21の停止時期が遅くなるため、これらを考慮して実験的に定められる。ステップS15において温度差ΔTwが第2基準値Tref2以上であると判定された場合、すなわちヒータコア43に流入する冷却水の温度が僅かに低いと判定された場合には、ECU61は、第4三方弁45の作動状態を第4状態に設定する(ステップS16)。したがって、第4三方弁45は、コンデンサ流入通路4b1への開度が機関流入通路4b2への開度よりも小さくなるように設定される。これにより、車載温調システム1における熱媒体の流通状態は第3遷移モードになる。一方、ステップS15において温度差ΔTwが第2基準値Tref2未満であると判定された場合には、ECU61は、切替完了フラグをONに設定する(ステップS17)。
【0108】
ステップS17において切替完了フラグがONに設定されると、次の切替処理においては、ステップS12において切替完了フラグがONに設定されていると判定され、ECU61は第4三方弁45の作動状態を第2状態に設定する(ステップS18)。したがって、第4三方弁45は、コンデンサ流入通路4b1への開度が全閉になり機関流入通路4b2への開度が全開になるように設定される。これにより、車載温調システム1における熱媒体の流通状態は第2暖房モードになる。そして、切替許可フラグ及び切替完了フラグがOFFに設定される(ステップS19)。その後、内燃機関110から得られた熱を用いてヒータコア43による暖房を行う第2暖房条件が成立している間は、第4三方弁45の作動状態は第2状態に設定され続ける。
【0109】
以上のように、本実施形態では、ヒータコア43の入口における冷却水の温度と機関熱回路5内の冷却水の温度との温度差ΔTwに応じて第4三方弁45の作動状態が段階的に切り替えられる。具体的には、温度差ΔTwが小さくなるにつれて、ヒータコア43に流入する冷却水のうち機関熱回路5から流出した冷却水の流量のコンデンサ22から流出した冷却水の流量に対する割合が段階的に大きくなるように第4三方弁45が制御される。このように、冷却水の温度に応じて第4三方弁45を制御することにより、ヒータコア43による暖房効果を適切に維持しながら暖房態様の切替を行うことができるようになる。なお、暖房効果の一時的な変動を小さくするためには、第1基準値Tref1及び第2基準値Tref2は小さい方がよいものの、第1基準値Tref1及び第2基準値Tref2を小さくし過ぎると冷凍回路2を停止させるのが遅れて電力の消費が大きくなることから、第1基準値Tref1及び第2基準値Tref2はこれらを考慮して実験的に定められる。
【0110】
なお、本実施形態では、ヒータコア43の入口における冷却水の温度と機関熱回路5内の冷却水の温度との温度差ΔTwに基づいて第4三方弁45が制御されている。しかしながら、ヒータコア43による暖房効果を適切に維持することができれば、この温度差ΔTwの代わりに、ヒータコア43に流入する冷却水の温度や、暖房態様の切替開始からの経過時間などに基づいて第4三方弁45を制御してもよい。
【0111】
<変形例>
次に、図10図12を参照して、車載温調システム1の変形例について説明する。図10は、第1変形例に係る車載温調システム1を概略的に示す構成図である。図10に示したように、第1変形例に係る車載温調システム1は、第4三方弁45’の配置を除いて、基本的に上記実施形態に係る車載温調システム1と同様な構成を有する。
【0112】
図10からわかるように、第1変形例では、第4三方弁45’は、コンデンサ流出通路4a1と機関流出通路4a2とコア流入通路4a3との連通部に設けられる。したがって、第4三方弁45’には、コンデンサ22及び機関熱回路5から流出した冷却水が流入すると共に、流入した冷却水はコア流入通路4a3へ流出される。
【0113】
図11は、本変形例に係る第4三方弁45’の異なる作動状態を概略的に示す図である。図11に示したように、本変形例に係る第4三方弁45’は、基本的に上記実施形態に係る第4三方弁と同様な構成を有する。ただし、本実施形態では、出口Xがヒータコア43に連通するコア流入通路(第6通路)4a3に連通すると共に、第1入口Yがコンデンサ22の出口に連通するコンデンサ流出通路(第4通路)4a1に、第2入口Zが機関流出通路(第5通路)4a2に連通する。
【0114】
したがって、第4三方弁45’が図11(A)に示した第1状態にあるときには、ヒータコア43にはコンデンサ22から流出した冷却水が流入することになる。また、第4三方弁45’が図11(B)に示した第2状態にあるときには、ヒータコア43には機関熱回路5から流出した冷却水が流入することになる。また、第4三方弁45’が図11(C)に示した第3状態にあるときには、ヒータコア43にはコンデンサ22及び機関熱回路5の両方から流出した冷却水が流入するが、コンデンサ22から流出した冷却水の方が多く流入する。さらに、第4三方弁45’が、図11(D)に示した第4状態にあるときにも、ヒータコア43にはコンデンサ22及び機関熱回路5の両方から流出した冷却水が流入するが、機関熱回路5から流出した冷却水の方が多く流入する。
【0115】
したがって、本変形例では、第4三方弁45’は、コンデンサ流出通路4a1からコア流入通路4a3に流入する冷却水の流量と、機関流出通路4a2からコア流入通路4a3に流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。したがって、本変形例でも、第4三方弁45’は、ヒータコア43に流入する冷却水のうち、コンデンサ22から流出してコンデンサ流出通路4a1を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量と、機関熱回路5から流出して機関流出通路4a2を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。
【0116】
このように構成された第1変形例に係る車載温調システム1においても、暖房態様を切り替えるときには、上記実施形態と同様に、第4三方弁45’は、第1状態、第3状態、第4状態、第2状態に順に切り替えられることになる。
【0117】
図12は、第2変形例に係る車載温調システム1を概略的に示す構成図である。図12に示したように、第2変形例に係る車載温調システム1は、ラジエータ流入通路4a4’及び第3三方弁44’の配置を除いて、基本的に上記実施形態に係る車載温調システム1と同様な構成を有する。
【0118】
図12からわかるように、ラジエータ流入通路4a4’は、コア流入通路4a3ではなく、コンデンサ流出通路4a1に連通する。また、第3三方弁44’は、コンデンサ流出通路4a1からコア流入通路4a3への分岐部に設けられる。
【0119】
このように構成された場合であっても、第4三方弁45により、ヒータコア43に流入する冷却水のうち、コンデンサ22から流出してコンデンサ流出通路4a1を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量と、機関熱回路5から流出して機関流出通路4a2を介してヒータコア43に流入する冷却水の流量との割合が調整される。
【0120】
以上、一つの実施形態及び変形例を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0121】
1 車載温調システム
2 冷凍回路
3 低温回路
4 高温回路
22 コンデンサ
41 第2ポンプ
43 ヒータコア
44 第3三方弁
45 第4三方弁
51 第3ポンプ
52 機関熱交換器
61 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12