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特許7543982車両用投影装置、その動作方法、及び車両用灯具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両用投影装置、その動作方法、及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/26 20060101AFI20240827BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   F21V 11/08 20060101ALI20240827BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240827BHJP
   H05B 45/325 20200101ALI20240827BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20240827BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
B60Q1/00 G
F21V11/08
H05B45/10
H05B45/325
H05B47/105
H05B47/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021089595
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022182192
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鷲 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗本 英人
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-211404(JP,A)
【文献】特開2016-49891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/26
B60Q 1/00
F21V 11/08
H05B 45/10
H05B 45/325
H05B 47/105
H05B 47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともM(Mは2以上の自然数を示す)個の光源を有し、前記少なくともM個の光源の点灯に基づいて少なくともN(Nは2以上の自然数を示す)個の個別像を所定方向に沿って路面上に投影する投影部と、
少なくともP(Pは200以上の実数を示す)ミリ秒に亘る所定期間において、前記所定期間の開始時点から前記少なくともN個の個別像の前記路面への投影が所定の順番で開始され、前記所定期間の中間時点で前記少なくともN個の個別像の全てが前記路面に投影され、前記所定期間の終了時点で前記少なくともN個の個別像の前記路面への投影が終了するように前記少なくともM個の光源を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記少なくともN個の個別像において1番目に投影される像の投影開始時点からP/Nミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で前記少なくともN個の個別像において2番目に投影される像の投影が開始されるように前記少なくともM個の光源を制御するように構成されることを特徴とする車両用投影装置。
【請求項2】
前記Nは、3又は4又は5の自然数を示し、
前記Pは、250~500の範囲内の実数を示すことを特徴とする請求項1に記載の車両用投影装置。
【請求項3】
前記1番目に投影される像が単独で投影される期間は、前記Pミリ秒の35%~60%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用投影装置。
【請求項4】
前記第2時点は、前記第1時点から2×(P/N)ミリ秒の期間が経過する第3時点よりも前記第1時点に近い時点であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項5】
前記第2時点は、前記第1時点から5ミリ秒~70ミリ秒の範囲内の時点であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項6】
前記第2時点は、1.5×(P/(N+1))ミリ秒~2×(P/(N+1))ミリ秒の範囲内の時点であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項7】
前記所定期間の開始時点から前記中間時点までの時間間隔をQ(Qは実数を示す)ミリ秒とする時、(Q/P)≦0.8を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項8】
前記Mにより示される自然数は、前記Nにより示される自然数に等しく、前記N個の個別像の前記路面への投影開始時点が前記N個の個別像の全てに関して異なることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項9】
前記所定方向は、車両から前方又は後方に離間する方向であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項10】
前記制御部は、車両本体から伝達されるタイミング信号に応じて、前記少なくともN個の個別像の前記路面への投影のために前記少なくともM個の光源を制御する投影期間と、前記少なくともM個の光源の全てが消灯する非投影期間を繰り返すように前記少なくともM個の光源を制御するように構成され、前記所定期間が前記投影期間に等しいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項11】
前記投影期間及び前記非投影期間が時間の長さにおいて等しいことを特徴とする請求項10に記載の車両用投影装置。
【請求項12】
前記投影部は、前記少なくともM個の光源に対応して少なくともM個のレンズ部を有する第1レンズと、前記少なくともM個の光源の放射光を投影するための第2レンズと、前記第1レンズと前記第2レンズの間に設けられ、前記少なくともM個の光源に対応して少なくともM個の透光部が遮光部に設けられたパターン形成部材を備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の車両用投影装置。
【請求項13】
前記投影部は、前記第1レンズと前記パターン形成部材の間で光チャンネルを光学的に区画するように設けられた少なくとも一つの遮光部材を更に備えることを特徴とする請求項12に記載の車両用投影装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の車両用投影装置を備える車両用灯具。
【請求項15】
少なくともM(Mは2以上の自然数を示す)個の光源を有し、前記少なくともM個の光源の点灯に基づいて少なくともN(Nは2以上の自然数を示す)個の個別像を所定方向に沿って路面上に投影する投影部と、
少なくともP(Pは200以上の実数を示す)ミリ秒に亘る所定期間において、前記所定期間の開始時点から前記少なくともN個の個別像の前記路面への投影が所定の順番で開始され、前記所定期間の中間時点で前記少なくともN個の個別像の全てが前記路面に投影され、前記所定期間の終了時点で前記少なくともN個の個別像の前記路面への投影が終了するように前記少なくともM個の光源を制御する制御部を備える車両用投影装置の動作方法であって、
前記少なくともN個の個別像において1番目に投影される像の投影を開始し、
前記1番目の像の投影開始時点からP/Nミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で前記少なくともN個の個別像において2番目に投影される像の投影を開始する、車両用投影装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用投影装置、その動作方法、及び車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の進行方向を示す模様(例えば、矢印)を路面に投影して自車両周囲の歩行者や運転手に注意喚起する技術が開発されている。例えば、自車両の左折時又は左車線への車線変更時、自車両の前方左側の路面に左斜め前方に向いた矢印を投影し、これにより、自車両周囲の歩行者や運転手に注意喚起することができる。周囲の交通状況や工作物(道路沿いの壁等)によって自車両のターンランプの点滅が周囲の歩行者や運転手により視認し難い場合に特に有効である。
【0003】
特許文献1には、ターンシグナルランプのオン時に車両の進行方向を示すマーカの路面上への描画を開始し、ターンシグナルランプのオフ時にマーカの描画を終了する技術が開示されている。特許文献2には、矢印に対応して形状付けられた開口が設けられたシェードを用いて路面に像を投影する装置が開示されている(同文献の段落0044参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-193689号公報
【文献】特開2020-17488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自車両の進行方向等を示す像を路面に投影する場合、ある像を一時に投影するのではなく、その像を分割してシーケンシャルに投影すること(即ち、複数の個別像を異なる時点で順に投影開始すること)でより効果的に注意喚起することが期待される。しかしながら、その像全体の投影のために許容される路面面積が限られるために像の分割数(即ち、個別像の数)に制約があり、シーケンシャルに個別像を路面に投影しても意図した視覚効果(例えば、個別像が流れるように見える視覚効果)が得られにくいことが懸念される。このように、本願発明者らは、個別像の個数に制約がある場合においてもシーケンシャルな個別像の投影による視覚効果を得られやすくするという新たな課題を見出した。なお、像の分割数及び個別像の数は、投影装置のコスト及び/又はサイズといった観点からも制約を受ける。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両用投影装置は、少なくともM(Mは2以上の自然数を示す)個の光源を有し、少なくともM個の光源の点灯に基づいて少なくともN(Nは2以上の自然数を示す)個の個別像を所定方向に沿って路面上に投影する投影部と、
少なくともP(Pは200以上の実数を示す)ミリ秒に亘る所定期間において、所定期間の開始時点から少なくともN個の個別像の路面への投影が所定の順番で開始され、所定期間の中間時点で少なくともN個の個別像の全てが路面に投影され、所定期間の終了時点で少なくともN個の個別像の路面への投影が終了するように少なくともM個の光源を制御する制御部を含む。制御部は、少なくともN個の個別像において1番目に投影される像の投影開始時点からP/Nミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で少なくともN個の個別像において2番目に投影される像の投影が開始されるように少なくともM個の光源を制御するように構成される。
【0007】
幾つかの実施形態においては、Nは、3又は4又は5の自然数を示し、Pは、250~500の範囲内の実数を示す。1番目に投影される像が単独で投影される期間は、Pミリ秒の35%~60%の範囲内であると良い。追加又は代替として、第2時点は、第1時点から2×(P/N)ミリ秒の期間が経過する第3時点よりも第1時点に近い時点であると良い。追加又は代替として、第2時点は、第1時点から5ミリ秒~70ミリ秒の範囲内の時点であると良い。追加又は代替として、第2時点は、1.5×(P/(N+1))ミリ秒~2×(P/(N+1))ミリ秒の範囲内の時点であると良い。所定期間の開始時点から中間時点までの時間間隔をQ(Qは実数を示す)ミリ秒とする時、(Q/P)≦0.8を満足すると良い。
【0008】
幾つかの実施形態においては、Mにより示される自然数は、Nにより示される自然数に等しく、N個の個別像の路面への投影開始時点がN個の個別像の全てに関して異なる。
【0009】
幾つかの実施形態においては、制御部は、車両本体から伝達されるタイミング信号に応じて、少なくともN個の個別像の路面への投影のために少なくともM個の光源を制御する投影期間と、少なくともM個の光源の全てが消灯する非投影期間を繰り返すように少なくともM個の光源を制御するように構成され、所定期間が投影期間に等しい。
【0010】
幾つかの実施形態においては、投影部は、少なくともM個の光源に対応して少なくともM個のレンズ部を有する第1レンズと、少なくともM個の光源の放射光を投影するための第2レンズと、第1レンズと第2レンズの間に設けられ、少なくともM個の光源に対応して少なくともM個の透光部が遮光部に設けられたパターン形成部材を含む。
【0011】
本開示の別態様に係る車両用投影装置の動作方法は、少なくともM(Mは2以上の自然数を示す)個の光源を有し、少なくともM個の光源の点灯に基づいて少なくともN(Nは2以上の自然数を示す)個の個別像を所定方向に沿って路面上に投影する投影部と、少なくともP(Pは200以上の実数を示す)ミリ秒に亘る所定期間において、所定期間の開始時点から少なくともN個の個別像の路面への投影が所定の順番で開始され、所定期間の中間時点で少なくともN個の個別像の全てが路面に投影され、所定期間の終了時点で少なくともN個の個別像の路面への投影が終了するように少なくともM個の光源を制御する制御部を含む車両用投影装置の動作方法であって、
少なくともN個の個別像において1番目に投影される像の投影を開始し、
1番目の像の投影開始時点からP/Nミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で少なくともN個の個別像において2番目に投影される像の投影を開始する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、個別像の個数に制約がある場合においてもシーケンシャルな個別像の投影による視覚効果を得られやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一態様に係る車両のシステム構成を示す概略図である。
図2】本開示の一態様に係る前灯具の概略的な構成を示す模式図である。
図3】(a)~(c)の順でシーケンシャルに個別像が投影開始されて最終的に全ての個別像(全体像)が路面に投影される投影手順を示す模式図である。
図4】本開示の一態様に係る投影装置の投影部の概略的な構成を示す模式図である。
図5図4に示した投影装置の投影部における集光レンズ、パターン形成部材、及び投影レンズの配置関係を示す概略的な斜視図である。
図6】車両用灯具(車両用投影装置)の制御部の構成及び機能の説明のために参照される概略的なブロック図である。
図7】ターンランプと投影部の各光源の点灯制御に関する概略的なタイムチャートである。
図8】個別像の変形例を示す模式図であり、図3と同様、(a)~(c)の順でシーケンシャルに個別像が投影開始されて最終的に全ての個別像(全体像)が路面に投影される。
図9】(a)、(b)の順でシーケンシャルに個別像が投影開始されて最終的に全ての個別像(全体像)が路面に投影されることを示す模式図である。
図10図9の場合に関する概略的なタイムチャートである。
図11】各光源がPWM信号により点灯制御される場合に関するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された車両用投影装置にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な車両用投影装置にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0015】
本明細書において前後方向、左右方向、及び上下方向は車両1を基準として把握される。車両内方は、車両外から車両内に向かう任意の方向である。車両外方は、車両内から車両外に向かう任意の方向である。上下方向は、鉛直方向に一致し、又はこれに沿って延びる。車両内方及び外方は、上下方向に交差又は直交する任意の平面に含まれ得る。
【0016】
車両1は、二輪、三輪又は四輪の自走可能な移動体であり、内燃機関や電気モータで生じる動力で動く。車両1は、車両本体に車両用灯具が取り付けられて構成され、各々が、独立した車両及び灯具システム2,3を含む。車両システム2は、車両内ネットワークを介して個々の要素が接続されて構成される。図1では、説明の便宜上、車両システム2に含まれる一部の要素(車両ECU(Electronic Control Unit)71,方向指示器72,速度センサー73,ハザードスイッチ74,ブレーキセンサー75,アクセル開度センサー76,及びステアリングセンサー77)が示されている。
【0017】
車両ECU71は、1つ以上のサブECUから構成され得る。方向指示器72は、運転手の音声又は手又は足等により操作されてターン信号を生成する。ハザードスイッチ74は、運転手により操作されてハザード信号を生成する。これらのターン信号及びハザード信号が車両ECU71を介して又は介することなく灯具システム3に伝送される。なお、ターン信号及びハザード信号は、一定の周期でパルスが生成されるタイミング信号であり、両者を区別することなく包括的にタイミング信号と呼ぶ。
【0018】
灯具システム3には車両の進行方向の前方を照明するための左右の前灯具(車両用灯具)4が含まれる。各前灯具4は、例えば、図2に示すように、ロービームランプ4a,ハイビームランプ4b,ターンランプ4c,投影部4d,及び常時点灯ランプ4eを有し、これらが共通の灯室に設けられる。なお、常時点灯ランプ4eは、デイタイムランニングランプ及び/又はクリアランスランプである。また、灯室は、凹状ハウジングにアウターレンズが装着されて画定される。個別像5a~5cをシーケンシャルに路面に投影する投影装置は、前灯具4の投影部4dと制御部31により構成される。
【0019】
ターンランプ4cは、ターン信号及びハザード信号といった車両本体から供給されるタイミング信号に同期して点滅し、例えば、パルス信号の変化(例えば、立ち上がり)に応じて点灯を開始し、パルス信号の変化(例えば、立ち下がり)に応じて消灯する。ターンランプ4cは、光源として、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)といった1以上の半導体発光素子を含み得るが、これに限らず、ハロゲン電球、白熱電球等も採用可能である。ターンランプ4cは、シーケンシャルタイプのものであり得るが、これに限られない。
【0020】
投影部4dは、ターン信号及びハザード信号といった車両本体から供給されるタイミング信号の第1変化(例えば、立ち上がり)に同期して個別像の路面への投影を開始し、タイミング信号の第2変化(例えば、立ち下がり)に同期して所定像の路面への投影を停止する(この点については、図7を参照して後述する)。
【0021】
投影部4dは、少なくともM個の光源を有し、少なくともM個の光源の点灯に基づいて少なくともN個の個別像を所定方向に沿って路面上に投影する。なお、Mは2以上の自然数を示す。同様、Nは2以上の自然数を示す。幾つかの場合(例えば、図3乃至図5参照)、M=N=3であり、投影部4dは、3つの光源21a~21cを有し、3つの光源21a~21cの点灯に基づいて3つの個別像5a~5cを所定方向に沿って(例えば、上下方向に交差する車両外方に沿って)路面上に投影する(図3参照)。なお、光源21は、必ずしもこの限りではないが、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)といった1以上又は2以上の半導体発光素子を含む。光源21a~21cは、基板22に実装され、不図示のヒートシンクに熱的に接続され得る。
【0022】
図3乃至図5では、M=N=3であるが、これに限られるべきではない。M=N=4の場合、M=N=5の場合も同様に理解可能である。ターン信号及びハザード信号といった車両本体から供給されるタイミング信号のパルス持続期間(即ち、Hレベル期間)を考慮すると、M及びNは、5以下の自然数を示すものとすることが望ましいが、必ずしもこの限りではない。MとNが異なる自然数を示す形態も想定される(例えば、M=3であり、N=2の設定も可能である)。
【0023】
なお、前灯具4における投影部4dの位置は、図2に示すようにターンランプ4cに隣接して配置する必要はない。例えば、前灯具外(例えば、サイドミラー)に投影部4dを設けることも可能である。ロービームランプ4a,ハイビームランプ4b,常時点灯ランプ4eについては本分野において周知のものを採用可能であり、詳細な説明は省略する。
【0024】
図3に示すように、左側の前灯具の投影部4dから3つの個別像5a~5cがシーケンシャルに路面に投影されると、周囲の運転手や歩行者に車両1の運転手の左折又は左側への車線変更の意図が提示される。まず、図3(a)に示すように、個別像5aのみが投影され、続いて、図3(b)に示すように個別像5bの投影が開始され、最後に、図3(c)に示すように個別像5cの投影が開始され、最終的に全ての個別像5a~5cが路面に投影される。個別像の数が4,5個の場合についても同様に理解される。
【0025】
後述の説明からよく分かるように、3個の個別像5a~5cにおいて1番目に投影される個別像5aの投影開始時点から250/3ミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で2番目に投影される個別像5bの投影が開始される。これにより、第1時点で2番目の個別像の投影を開始する場合よりも、シーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。具体的には、個別像の数が少ないにも関わらず、個別像5a~5cが投影方向に沿って円滑に流れるように観察者(自車両の周囲の歩行者や運転手)に見せることができる。
【0026】
当業者であれば即時に理解するように、3個は、Mにより2以上の任意の自然数として表すことができ、250ミリ秒という所定期間は、Pミリ秒により200以上の任意の実数として表すことができる。250ミリ秒の所定期間は、タイミング信号に応じた投影部による一回の投影期間と理解することができ、タイミング信号のパルス持続期間(Hレベル期間)に等しい。なお、ある期間が別の期間に等しい場合、ある期間が別の期間の95%~105%の範囲内にあることを意味する。幾つかの場合、Pは、250~500の範囲内の実数を示す。
【0027】
個別像及び/又はこれらが集合した全体像は、周囲の運転手や歩行者に車両1の運転手の意図を提示する目的に適合したように形状付けられ、図示のものに限定されるべきではない。図3の場合、個別像5aは、所定の投影方向に沿って延び、かつこの方向に延びるに応じて幅広になる(即ち、略三角形状である)。個別像5b,5cは、所定の投影方向に交差するように湾曲して延びる(即ち、湾曲した四角形状である)。これらの個別像5a~5cの組み合わせによって所定の投影方向に沿って連続的に幅広になる分割コーン形の全体像が構築される。右側前灯具の投影部からも同様の個別像及び全体像を路面に投影しても良いが、異なる像を投影することもできる。後灯具についても同様の投影部を設けることができる。
【0028】
限定の意図なく投影部4dの構成について更に述べると、投影部4dは、上述の光源21a~21cに加えて、集光レンズ(第1レンズ)24、パターン形成部材25、遮光部材27、投影レンズ(第2レンズ)28、及びハウジング29を有し得る(図4及び図5参照)。
【0029】
集光レンズ24は、M個の光源21a~21cに対応してM個のレンズ部24a~24cを有する。各レンズ部24a~24cは、光源21a~21cの放射光を個別にパターン形成部材25の透光部26a,26b,26cに集光するように構成される。詳細には、レンズ部24aは、光源21aの放射光を透光部26aに集光する。レンズ部24bは、光源21bの放射光を透光部26bに集光する。レンズ部24cは、光源21cの放射光を透光部26cに集光する。各レンズ部24a~24cは、入射面24a1~24c1と出射面24a2~24c2を有し、入射面24a1~24c1が平坦面に形成され、出射面24a2~24c2が集光レンズ面として形成される。入射面24a1~24c1には反射防止膜といった光学的な機能層が付与され得る。ハウジング29への簡便な取り付けのため、レンズ部24a~24cが所定方向(例えば、上下方向)に積層される。各レンズ部24a~24cは、個別に製造(例えば、ガラス体の切削加工及び研磨、又は樹脂の射出成形)された後、接着剤によりお互いに固着したものであり得るが、必ずしもこの限りではない。
【0030】
パターン形成部材25は、M個の光源21a~21cに対応してM個の透光部26a~26cが遮光部26jに設けられた光学部品である。透光部26a~26cは、光学的な開口であり、典型的には中空の孔であるが、これに限らず、光源の放射光に対して実質的に透明な材料で充填された非中空の孔でも良い。光源21a~21cの放射光の一部が透光部26a~26cに入射し、その残部が透光部26a~26cに入射しない。このようにして、光源21a~21cの放射光は、パターン形成部材25によって透光部26a~26cの輪郭に応じた形状の光線に変換される。言うまでも無く、透光部26aは、個別像5aの投影のために個別像5aに対応する輪郭を有する。透光部26bは、個別像5bの投影のために個別像5bに対応する輪郭を有する。透光部26cは、個別像5cの投影のために個別像5cに対応する輪郭を有する。
【0031】
図5に示すように、パターン形成部材25は、第1部材25pと第2部材25qといった複数の部材の積層により構成され得る。パターン形成部材25のある部材(図5では、第2部材25q)の平板状の遮光部26jにM個の透光部26a~26cが設けられ、透光部26a~26cの輪郭を画定する壁面における光の散乱が抑制される。
【0032】
光源21a~21cと透光部26a~26cの間で光チャンネルCH1~CH3を光学的に区画するために遮光部材27を設けることができ、これにより、光チャンネルCH1~CH3間のクロストークが抑制される。例えば、光チャンネルCH1と光チャンネルCH2の光学的な区画のために第1遮光部材27mが設けられ、光チャンネルCH1と光チャンネルCH2の光学的な区画のために第2遮光部材27nが設けられる。M個の光チャンネルの数に対応して、M-1個の遮光部材27が設けられ得るが、必ずしもこれに限られない。全光チャンネルの個別の分離のために共通の一つの遮光部材を採用することもできる。
【0033】
投影レンズ28は、パターン形成部材25の透光部26a,26b,26cを透過した光(即ち、パターン形成部材25から放射される光線)を車両1の周囲(例えば、前方又は後方)の路面に投影する。投影レンズ28は、複数の透光部26a~26cに共通に設けられ、投影部4dの小型化とコストダウンが促進される。
【0034】
集光レンズ24、パターン形成部材25、及び投影レンズ28が共通の遮光性のハウジング29に固定される。ハウジング29は、下部ハウジングに対して上部ハウジングが組み合わされて構成され、これにより、投影部4dを容易に組み立てることができる。投影部4dは、投影レンズ28の光軸AXが、前方斜め下向きに延び、鉛直方向に直交する水平方向に斜めに交差するように車両に設けられ得るが、必ずしもこの限りではない。
【0035】
光の伝播の観点から補足的に説明すると、光源21aの放射光は、投影部4d(投影レンズ28)の光軸AXに沿って、集光レンズ24のレンズ部24a、透光部26a、及び投影レンズ28を介して伝播する。光源21aの放射光は、レンズ部24aの出射面24a2でレンズ作用を受けて透光部26aに集光される。レンズ部24aの出射面24a2から放射される光の一部(例えば、80%)が透光部26aを透過し、その残部が遮光部26j又は遮光部材27により吸収される。光源21b及び光源21cの放射光についても同様に理解可能であり、重複説明は省略する。透光部26a,26b,26cを透過した光は、投影レンズ28を介して車両1の周囲の路面に投影される。
【0036】
以下、図6及び図7を参照して更に説明する。なお、図6では、灯具の制御部が、ターンランプの光源と投影部の光源の両方の制御を兼務しているが、ターンランプの光源と投影部の光源の制御のために個別に制御部を設けても構わない。本開示に係る灯具には投影装置が含まれており、従って、灯具の制御部を投影装置の制御部として理解することもできる。
【0037】
制御部31は、タイミング信号に応じて、3個の個別像5a~5cの路面への投影のために3個の光源21a~21cを制御する投影期間と、3個の光源の全てが消灯する非投影期間を繰り返すように3個の光源21a~21cを制御するように構成される。投影期間は、タイミング信号のパルスがHレベルの期間に対応し、非投影期間は、タイミング信号のパルスがLレベルの期間に対応する。
【0038】
制御部31は、投影期間(少なくともP(Pは200以上の実数を示す)ミリ秒に亘る期間)において、投影期間の開始時点から3個の個別像5a~5cの路面への投影が所定の順番で開始され、投影期間の中間時点で3個の個別像5a~5cの全てが路面に投影され、投影期間の終了時点で3個の個別像5a~5cの路面への投影が終了するように3個の光源21a~21cを制御する。3個の個別像5a~5cの路面への投影の終了は、3個の光源21a~21cを同時又は略同時に消灯することで実現されるが、3個の光源21a~21cの消灯時点に(例えば、ヒトにより知覚できない程度の)僅かな差を設けても構わない。幾つかの場合、投影期間の終了時点は、全光源21a~21cの消灯が完了した時点に等しく、又は、投影期間の終了時点は、全光源21a~21cが同時に消灯する時点に等しい。
【0039】
本実施形態では、制御部31は、3個の個別像5a~5cにおいて1番目に投影される個別像5aの投影開始時点から250/3ミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で2番目に投影される個別像5bの投影が開始されるように3個の光源21a~21cを制御するように構成される。これにより、第1時点で2番目の個別像の投影を開始する場合よりもシーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。繰り返すが、3個は、M及びNにより2以上の任意の自然数として表すことができ、250ミリ秒は、Pミリ秒により200以上の任意の実数(例えば、250以上、かつ500以下の実数)として表すことができる。投影期間の開始時点から中間時点(即ち、3個の個別像5a~5cの路面投影が完了した時点)の時間間隔をQ(Qは実数を示す)ミリ秒とする時、(Q/P)≦0.8を満足し得る。場合によっては、0.5<(Q/P)≦0.8を満足する。この場合、投影期間において、必要十分な全点灯期間を確保することができる。
【0040】
制御部31は、上述のように光源21a~21cを制御するべく適切に構成される。例えば、制御部31は、アナログ回路、デジタル回路、アナデジ混在回路、PLD(Programmable Logic Device)、マイコン又はこれらから選択される任意の組み合わせにより構成され得る。幾つかの場合、図6に示すように、制御部31は、タイミング調整部31aと駆動部31bを含む。タイミング調整部31aは、アナログ回路、デジタル回路、アナデジ混在回路、PLD(Programmable Logic Device)、マイコン又はこれらから選択される任意の組み合わせにより構成され得る。駆動部31bは、アナログ回路、アナデジ混在回路等を含み得る。
【0041】
タイミング調整部31aは、ターン信号又はハザード信号といったタイミング信号の第1変化(例えば、LレベルからHレベルへの立ち上がり)に同期して点灯信号s1~s3,s8(例えば、電圧又は電流などのパルス信号)を所定の順番で出力し、タイミング信号の第2変化(例えば、HレベルからLレベルへの立ち下がり)に同期して点灯信号s1~s3,s8の出力を一斉に停止する。なお、タイミング信号を点灯信号s1,s8としても用いることもできる。
【0042】
様々な方法で点灯信号s1~s3の出力タイミングを調整することができる。例えば、タイミング調整部31aは、タイミング信号又は点灯信号s1に伝播遅延を与えて点灯信号s2を生成する第1遅延回路と、点灯信号s2に伝播遅延を与えて点灯信号s3を生成する第2遅延回路を含むことができる。遅延回路の遅延時間を適切に設定することにより点灯信号s2,s3を適切なタイミングで出力することができる。点灯信号s1については、タイミング信号をそのまま用いることもでき、又は、タイミング信号の入力に応じてタイミング調整部31aにより新たに生成することもできる。遅延回路としては、電源電位とグランド電位の間で2つのトランジスタ(例えば、FET)が直列接続されたものを信号伝搬可能なように並列に接続したものを採用できるが、必ずしもこの限りではない。
【0043】
別の場合、タイミング調整部31aは、タイミング信号の第1変化(例えば、LレベルからHレベルへの立ち上がり)に同期してカウントを開始し、タイミング信号の第2変化(例えば、HレベルからLレベルへの立ち下がり)に同期してカウント値を初期値に戻すカウンタ回路と、カウンタ回路のカウント値と閾値の比較に基づいて点灯信号s1~s3(又は点灯信号s2,s3)を生成する信号生成部を含むことができる。カウンタ回路は、発振回路の出力パルスをカウントし、又は、基準クロックのパルスをカウントする。信号生成部は、カウンタ回路のカウント値と予め設定された第1閾値を比較し、カウント値が第1閾値を超える時、点灯信号s2を生成する。同様、信号生成部は、カウンタ回路のカウント値と予め設定された第2閾値(第1閾値よりも大きい)を比較し、カウント値が第2閾値を超える時、点灯信号s3を生成する。
【0044】
ターンランプの光源41よりも投影部4dの光源21aを早く点灯させたい場合、タイミング信号の立ち上がりから瞬時に点灯信号s1を生成するか、タイミング信号を点灯信号s1として用いる。なお、タイミング信号を点灯信号s1として用いるに際して、電圧のレベル調整等の必要な信号処理を実施しても良い。
【0045】
駆動部31bは、タイミング調整部31aからの点灯信号s1~s3に応答して駆動信号s4~s6を生成し、光源21a~21cに出力する。同様、駆動部31bは、タイミング調整部31aからの点灯信号s8に応答して駆動信号s9を生成し、ターンランプの光源41に出力する。駆動信号s4~s6,s9は、例えば、電流信号であり、光源21a~21c,41の半導体発光素子(例えば、LED又はLD)に流される。駆動信号s4~s6,s9は、必ずしも一定値であるものに限らず、PWM制御に応答して調整された値を有し得る。
【0046】
図7を参照して更に説明する。なお、本明細書では、点灯信号の生成時点と光源の点灯開始時点の間の時間的な遅延は、無視可能なものとする。光源の点灯開始時点と個別像の投影開始時点の間の時間的な遅延も無視可能なものとする。即ち、点灯信号の生成時点と個別像の投影開始時点の間の時間的な遅延は無視可能である。従って、図7に示した光源21a~21cの光度は、点灯信号や駆動信号のレベル(例えば、Hレベル、Lレベル)、或いは路面に投影される個別像の照度に置き換えて理解することができる。
【0047】
運転手による方向指示器72の操作によってターン信号といったタイミング信号が、方向指示器72から制御部31に車両ECU71を介して又はこれを介さずに入力する。制御部31は、タイミング信号の入力(タイミング信号の立ち上がり又はHレベルのタイミング信号)に同期してターンランプ4cの光源41を点灯させ、同様、タイミング信号の入力に同期して投影部4dの光源21a,21b,21cをこの順で点灯させる。光源21a,21b,21cの点灯開始は、上述したように制御部31により制御される。投影部4dの光源21aは、ターンランプ4cの光源41よりも早く点灯するように制御されているが、必ずしもこの限りではない。
【0048】
より詳細には、時刻t1においてHレベルのタイミング信号が制御部31に入力する。これに応答して、タイミング調整部31aは、時刻t1とほぼ同時に(又は、極僅かに遅れて)点灯信号s1を駆動部31bに出力し、駆動部31bが駆動信号s4を光源21aに出力し、光源21aが点灯し、図3(a)に示すように個別像5aが路面に投影される。同様、タイミング調整部31aは、時刻t1とほぼ同時に(又は極僅かに遅れて)点灯信号s8を駆動部31bに出力し、駆動部31bが駆動信号s9を光源41に出力し、光源41が点灯する。なお、ターンランプをシーケンシャル点灯させるために光源41の周辺回路及び駆動信号s9が適切に構成され得る。光源41の点灯開始時点と光源21aの点灯開始時点は、同時であるが、これに限定されるべきではない。光源21aが、ターンランプの光源41よりも早く点灯開始する場合、ターンランプの点灯よりも長い時間に亘り路面に像が投影されるため、その投影像が周囲の運転手や歩行者に視認される可能性がより高められる。
【0049】
制御部31は、Hレベルのタイミング信号の入力時点から即時に(例えば、10ミリ秒以内、又は5ミリ秒以内、又は2.5ミリ秒以内、又は0.5ミリ秒以内)に光源21aを点灯させるように動作する。光源21aの早期の点灯により路面に個別像5aが単独で投影される期間を長くすることができる。念のため述べれば、点灯信号s1は、時刻t3よりも十分に前に生成される(時刻t3よりも時刻t1に極めて近い時点で生成される)。時刻t3は、路面に像が投影される投影期間(即ち、Pミリ秒)を個別像5a~5cの数(ここでは、光源21a~21cの数にも等しい)で除算して算出される時刻t1からの経過時間を示す。
【0050】
1番目に投影される個別像5aが単独で投影される期間は、投影期間のPミリ秒(例えば、P=250)の35%~60%又は40%~55%の範囲内であると良い。これにより他の個別像5b,5cが個別像5aに重ねて投影される期間との比較において個別像5aの単独の投影期間が相対的に長くなり、シーケンシャルな投影による視覚効果が得られやすくなる。
【0051】
タイミング調整部31aは、時刻t3よりも後の時点である時刻t4で点灯信号s2を駆動部31bに出力し、駆動部31bが駆動信号s5を光源21bに出力し、光源21bが点灯し、結果として、図3(b)に示すように個別像5bが路面に投影される。本実施形態では、3個の個別像5a~5cにおいて1番目に投影される個別像5aの投影開始時点から250/3ミリ秒の期間が経過した第1時点よりも後の第2時点で2番目に投影される個別像5bの投影が開始される。これにより、第1時点で2番目の個別像の投影を開始する場合よりもシーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。繰り返すが、3個は、M及びNにより2以上の任意の自然数として表すことができ、250ミリ秒は、Pミリ秒により200以上の任意の実数(例えば、250~500の範囲内の実数)として表すことができる。
【0052】
点灯信号s2は、時刻t6の前に(即ち、時刻t3と時刻t6の間に)生成され、好適には時刻t6よりも時刻t3に近い時点t4で生成される。時刻t6は、路面に投影される像の投影期間(即ち、Pミリ秒)を個別像5a~5cの数(ここでは、光源21a~21cの数にも等しい)で除算して算出される時刻t3からの経過時間を示す。時刻t1からの経過時間として時刻t6を算出する場合、2×(P/N)により算出可能である。光源21bが時刻t3から適度に遅延して点灯開始することにより、そうでない場合と比較して、個別像5aが単独で投影される期間が相対的に長くなり、シーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。
【0053】
好適には、時刻t4は、時刻t3から5ミリ秒以降、又は10ミリ秒以降、又は20ミリ秒以降、又は30ミリ秒以降、又は40ミリ秒以降、又は45ミリ秒以降である。追加的条件として、時刻t4は、時刻t3から70ミリ秒以前、又は65ミリ秒以前、60ミリ秒以前、55ミリ秒以前である。なお、本段落に列挙した数値の選択に基づいて任意の数値範囲を決定可能であるものとする。例えば、時刻t4は、時刻t3から5~70ミリ秒の範囲内であり得る。これにより、光源21bの十分な点灯期間を確保することができる。本段落に記載の時刻t4に関する数値又は数値範囲は、P=250~500(又はP=300±50)の時、特に有利である。
【0054】
幾つかの場合、時刻t4は、1.5×(P/(N+1))ミリ秒~2×(P/(N+1))ミリ秒の範囲内の時点である。P=250,N=3の場合、時刻t4は、1.5×(250/(3+1))ミリ秒~2×(250/(3+1))ミリ秒の範囲内の時点であり、93.75ミリ秒~125ミリ秒の範囲内の時点である。時刻t4が93.75ミリ秒の場合、250ミリ秒の投影期間において37.5%の時間が個別像5aの単独の投影のために割り当てられる。時刻t4が125ミリ秒の場合、250ミリ秒の投影期間において50%の時間が個別像5aの単独の投影のために割り当てられる。
【0055】
タイミング調整部31aは、時刻t6よりも後の時点である時刻t6.5(即ち、投影期間の中間時点)で点灯信号s3を駆動部31bに出力し、駆動部31bが駆動信号s6を光源21cに出力し、光源21cが点灯し、結果として、図3(c)に示すように個別像5cが路面に投影される。光源21cが時刻t6から適度に遅延して点灯開始することにより、そうでない場合と比較して、個別像5a,5bの二つの像の投影期間が相対的に長くなり、シーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。
【0056】
点灯信号s3は、時刻t9(即ち、投影期間の終了時点)の前に(即ち、時刻t6と時刻t9の間に)生成され、好適には時刻t9よりも時刻t6に近い時刻t6.5で生成される。時刻t9は、路面に投影される像の投影期間(即ち、Pミリ秒)を個別像5a~5cの数(ここでは、光源21a~21cの数にも等しい)で除算して算出される時刻t6からの経過時間を示す。時刻t1からの経過時間として時刻t9を算出する場合、3×(P/N)により算出可能である。図示の場合、N=3であるため、時刻t9=Pミリ秒である。即ち、時刻t9は、タイミング信号の第2変化(例えば、立ち下がり)に対応し、この時点でターンランプの光源41と投影装置の光源21a~21cが全て消灯する。時刻t6.5~時刻t9の間の期間は、光源21a~21cの全てが点灯する全点灯期間である。
【0057】
時刻t6.5は、時刻t4と時刻t9の間の時間期間を2で除算して算出されるが、必ずしもこれに限られない。光源21b,21cが時刻t4において同時に点灯するように制御することもできる。
【0058】
好適には、時刻t6.5は、時刻t6から5ミリ秒以降、又は10ミリ秒以降、又は20ミリ秒以降、又は30ミリ秒以降、又は40ミリ秒以降、又は45ミリ秒以降である。追加的条件として、時刻t6.5は、時刻t6から70ミリ秒以前、又は65ミリ秒以前、60ミリ秒以前、55ミリ秒以前である。なお、本段落に列挙した数値の選択に基づいて任意の数値範囲を決定可能であるものとする。例えば、時刻t6.5は、時刻t6から5~70ミリ秒の範囲内であり得る。これにより、光源21cの十分な点灯期間を確保することができる。本段落に記載の時刻t6.5に関する数値又は数値範囲は、P=250~500(又はP=300±50)の時、特に有利である。
【0059】
図7の時刻t10~t19及び時刻t20~t29についても時刻t1~t9と同様の制御が行われる。制御部31は、タイミング信号がLレベルの時、点灯信号を出力しないように構成され、従って、ターンランプの光源41と投影部4dの光源21a~21cのいずれも消灯する。なお、タイミング信号のHレベル期間とLレベル期間は実質的に等しく、即ち、投影期間と非投影期間も時間の長さにおいて実質的に等しい。
【0060】
繰り返すが、個別像及び/又はこれらが集合した全体像は、周囲の運転手や歩行者に車両1の運転手の意図を提示する目的に適合したように形状付けられ、図示のものに限定されるべきではない。図8に示す場合、個別像5a~5cが矢印の頭部を模式的に示す形状、端的には、逆V字形である。個別像5a~5cの集合から成る全体像は、逆V字形の個別像が間隔を空けて配置された多段逆V字模様を示す。パターン形成部材25の透光部の開口形状を調整することにより個別像及び全体像を様々な形状に変更可能である。
【0061】
個別像5a~5cのうち個別像5b,5cを同時に投影しても良い(図9及び図10参照)。投影開始時点が同時であるため、個別像5b,5cの二つが一つの個別像として把握される。個別像5aの投影開始時点である時刻t1からP/2だけ遅れた時点t4.5よりも後の時刻t5において個別像5b,5cの投影が開始する。個別像5b,5cの投影が時刻t4.5で開始する場合と比べて、個別像5aの単独の投影時間が相対的に長く確保されるため、シーケンシャルな個別像の投影による視覚効果が得られやすくなる。3個の個別像の路面への投影開始時点が3個の個別像の全てに関して異なることが好ましいが、必ずしもこの限りではない。
【0062】
図11は、駆動信号s4,s5,s6がPWM制御されて光源21a,21b,21cの光度が徐々に増加する形態を示す。このように光源の光度を制御することも可能であり、また、本開示の発明の範囲内である。
【0063】
上述の様々な形態又は特徴に関して、様々な設計変更が可能であり、これらも本開示の範囲内である。
【符号の説明】
【0064】
4d :投影部

5a :個別像
5b :個別像
5c :個別像

21 :光源
21a :光源
21b :光源
21c :光源

24 :集光レンズ
25 :パターン形成部材
27 :遮光部材

31 :制御部
31a :タイミング調整部
31b :駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11