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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】乗物用内装材の支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240827BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60J5/00 501A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021092198
(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公開番号】P2022184387
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 慎太郎
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-252156(JP,A)
【文献】特開平07-015416(JP,A)
【文献】特開2008-132940(JP,A)
【文献】特開2018-154279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0201112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材によって乗物用内装材を支持する支持構造であって、
前記乗物用内装材は、板状をなす基材と、前記基材から乗物室外側に向けて突出する突出部と、を備え、
前記支持部材は、前記乗物用内装材の乗物室外側に配されるとともに、
前記突出部に対向し、前記基材の乗物室外側を向く裏面に沿う第1の方向に向かうにつれて前記裏面から離れるように傾斜する第1傾斜面と、
前記第1傾斜面の前記第1の方向の端部に連続し、前記裏面に沿うように設けられる中間面と、
前記中間面の前記第1の方向の端部に連続し、前記第1の方向に向かうにつれて前記裏面から離れるように傾斜する第2傾斜面と、
を備え、
前記乗物用内装材が第1の寸法で乗物室外側に向けて撓んだとき、前記第1傾斜面は前記突出部が前記第1の方向に滑るように案内するとともに、前記中間面は前記突出部を支持し、
前記乗物用内装材が前記第1の寸法よりも大きい第2の寸法で乗物室外側に向けて撓んだとき、前記第1傾斜面、前記中間面、および前記第2傾斜面は、前記突出部が前記第1の方向に滑るように案内するとともに、前記突出部を前記基材に対して座屈させる構成を備えている、乗物用内装材の支持構造。
【請求項2】
前記突出部は板片状をなし、その板面が前記第1の方向に交わる第2の方向に延びるように配されている、請求項1に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項3】
前記突出部の前記第1の方向とは反対側において、前記基材と前記突出部とに接続されるリブをさらに備えている、請求項1または2に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項4】
前記突出部は、先端に端面を有し、前記端面は前記第1傾斜面に沿うように傾斜されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項5】
前記端面は、前記突出部の突出方向に対して20°以上70°以下の角度をなすように傾斜されている、請求項4に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項6】
前記突出部は、前記基材の裏面に対して80°以上110°以下の角度をなすように突出している、請求項1~5のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項7】
前記第1傾斜面は、前記突出部に対して、70°以下の角度をなすように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項8】
前記第1傾斜面は、前記突出部に対して、20°以上の角度をなすように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項9】
前記中間面の前記第1の方向に沿う寸法L1は、前記突出部の前記第1の方向に沿う寸法をL2としたとき、L2以上(L2+3mm)以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【請求項10】
前記突出部の先端と前記第1傾斜面とは、自然状態において離間距離が4mm以下となるように設計されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の乗物用内装材の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、乗物用内装材の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物室の側壁を装飾するドアトリム等の内装材は、ドアパネル等の高剛性の部材によって乗物室に面するよう支持されている。内装材は板状をなしており、車体の軽量化を目的として更なる薄板化が進められており、内装材自体に十分な剛性を備えることは難しい。そのため、例えば特許文献1に示すように、ドアトリム等の内装材の裏面には、当てボスと呼ばれる所定高さの円筒形の突起が一体的に形成されている。そしてドアトリムに乗員の身体が触れる等して室外側に向かう外力が作用したときには、この当てボスがドアパネルに当接することで、ドアトリムがさらに撓むことを抑制する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-237494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この当てボスは、ドアトリムとドアパネルとの間の支柱の役割を果たし、高い剛性を発揮し得る。しかしながら、例えば乗物が大きな衝撃を受けるなどして乗員の身体がドアトリムに激しく接触したとき、当てボスの位置においてドアトリムが破損するとともに、当てボスが乗員に大きな荷重を局所的に与えることが懸念される。また、円筒形の当てボスについては、大荷重が入力されたときの潰れモード(変形モード)を定めることが困難であり、当てボスを狙い通りに潰して内装材による衝突エネルギーの吸収効率の向上を図る上で課題があった。
【0005】
本技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内装材に加わる外力が小さいときは内装材の剛性を確保し、外力が大きいときは所定の変形を生じて乗物室内側への衝撃荷重の伝達を抑制することができる、新しい乗物用内装材の支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本技術は、支持部材によって乗物用内装材を支持する支持構造を提供する。この支持構造において、前記乗物用内装材は、板状をなす基材と、前記基材から乗物室外側に向けて突出する突出部と、を備え、前記支持部材は、前記乗物用内装材の乗物室外側に配されるとともに、前記突出部に対向し、前記基材の乗物室外側を向く裏面に沿う第1の方向に向かうにつれて前記裏面から離れるように傾斜する第1傾斜面と、前記第1傾斜面の前記第1の方向の端部に連続し、前記裏面に沿うように設けられる中間面と、前記中間面の前記第1の方向の端部に連続し、前記第1の方向に向かうにつれて前記裏面から離れるように傾斜する第2傾斜面と、を備え、前記乗物用内装材が第1の寸法で乗物室外側に向けて撓んだとき、前記第1傾斜面は前記突出部が前記第1の方向に滑るように案内するとともに、前記中間面は前記突出部を支持し、前記乗物用内装材が前記第1の寸法よりも大きい第2の寸法で乗物室外側に向けて撓んだとき、前記第1傾斜面、前記中間面、および前記第2傾斜面は、前記突出部が前記第1の方向に滑るように案内するとともに、前記突出部を前記基材に対して座屈させる構成を備えている。
【0007】
上記構成によると、支持部材は、乗物用内装材の乗物室外側への撓み量に応じ、撓み量が小さいときは突出部を係止し、撓み量が大きいときは突出部を第1の方向に座屈させる。また、突出部が座屈する方向とそのときの内装材の撓み量を定めることができる。これにより、突出部は、小さな撓み量に相当する相対的に小さな外力が乗物用内装材に負荷されたときは基材を支えて乗物用内装材の剛性を高めることができる。また、突出部は、大きな撓み量に相当する相対的に大きな外力が乗物用内装材に負荷されたときは、自身が座屈することで衝撃エネルギーを吸収し、乗物室内側に伝わる衝撃を低減させることができる。これにより、内装材に加わる外力の大きさに応じて、剛性の向上と衝撃吸収とが実現される。なお、突出部が座屈する方向は第1の方向に沿う構成が実現されており、突出部は安定した変形挙動を有するものとなる。その結果、突出部は、例えば衝突や二次衝突に対して、衝撃エネルギーを安定して吸収することができる。また、このような突出部は、狙い通りの潰れモードで規則正しく安定的に潰れることから、乗物用内装材の設計に際し、突出部を潰れ残りのないように配置し、効果的に乗物用内装材の平均耐力の向上を図ることができる。
【0008】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記突出部は板片状をなし、その板面が前記第1の方向に交わる第2の方向に延びるように配されている。上記構成によると、一つの突出部の突出方向(すなわち室内外方向)の剛性が高められ、内装材の剛性を効果的に高めることができる。
【0009】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記突出部の前記第1方向とは反対側において、前記基材と前記突出部とに接続されるリブをさらに備えている。上記構成によると、突出部の変形モードを変えることなく、一つの突出部の剛性を高めることができる。
【0010】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記突出部は、先端に端面を有し、前記端面は前記第1傾斜面に沿うように傾斜されている。上記構成によると、乗物用内装材が乗物室外側に向けて撓んだとき、突出部は第1傾斜面に当接した後、その先端が第1傾斜面をスムーズに第1の方向に向けて案内される。
【0011】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記端面は、前記突出部の突出方向に対して20°以上70°以下の角度をなすように傾斜されている。上記構成によると、端面の傾斜の成形性が良好となり、突出部の端面を安定して傾斜させることができる。
【0012】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記突出部は、前記基材の裏面に対して80°以上110°以下の角度をなすように突出している。上記構成によると、内装材に外力が作用して突出部が第1傾斜面に当接したとき、突出部はその板面に沿う方向で外力を受けることができ、高い剛性を発揮しうる。これにより内装材の剛性を効率よく高めることができる。
【0013】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記第1傾斜面は、前記突出部に対して、70°以下の角度をなすように構成されている。上記構成によると、内装材に外力が作用して第1傾斜面に当接した突出部について、第1傾斜面を第1の方向に向けて容易に滑らせることができ、第1傾斜面と中間面との接続部分に突出部を案内して係止することができる。これにより内装材の剛性を効率よく高めることができる。
【0014】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記第1傾斜面は、前記突出部に対して、20°以上の角度をなすように構成されている。上記構成によると、内装材に外力が作用して第1傾斜面に当接した突出部を、第1の方向に向けて撓ませた状態で中間面との接合部に案内することができる。これにより、更なる外力が作用したときに、突出部が中間面を第1の方向に向けて滑りやすくなり、所定の変形モードで突出部を変形させることができる。
【0015】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記中間面の前記第1の方向に沿う寸法L1は、前記突出部の前記第1の方向に沿う寸法をL2としたとき、L2以上(L2+3mm)以下である。上記構成によると、中間面の第1の方向に沿う寸法が、突出部の厚みと同じかやや大きい程度となる。これにより、内装材に作用する外力が小さいときは中間面と第1傾斜面との接合部において突出部を確実に係止しつつ、内装材に作用する外力が大きいときは突出部を速やかに第2傾斜面に案内することができる。外力に応じて突出部の機能を適切に切り替えることが可能となる。
【0016】
ここに開示される支持構造の好適な一態様において、前記突出部の先端と前記第1傾斜面とは、自然状態において離間距離が4mm以下となるように設計されている。上記構成によると、突出部の先端と第1傾斜面とは、内装材に外力が作用しない自然状態において、接しているか、離間していてもその距離が4mm以下となる。これにより、更なる外力が作用したときに、突出部が中間面を第1の方向に向けて滑りやすくなり、所定の変形モードで突出部を変形させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、乗物用内装材に加わる外力が小さいときは内装材の剛性を確保し、外力が大きいときは所定の変形を生じて乗物室内側への衝撃荷重の伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る支持構造を備える車両用ドアの分解斜視図である。
図2図1の支持構造を構成するドアトリムとサービスホールカバーとを室外側から視た平面図である。
図3図2の支持構造を構成するドアトリムとサービスホールカバーとを室内側から視た分解平面図である。
図4図2の支持構造を構成するドアトリムとサービスホールカバーとを室内側から視た分解斜視図である。
図5図2の支持構造を構成するドアトリムを室外側から視た平面図である。
図6図5のドアトリムの要部斜視図である。
図7図2の支持構造を構成するサービスホールカバーを室内側から視た平面図である。
図8図7のサービスホールカバーの要部斜視図である。
図9図1の支持構造を構成するドアトリムとサービスホールカバーの要部斜視図である。
図10】一実施形態に係る支持構造においてドアトリムとサービスホールカバーとが離間している状態(外力が作用していない状態)における断面図である。
図11】一実施形態に係る支持構造においてドアトリムとサービスホールカバーとが当接している状態における断面図である。
図12】一実施形態に係る支持構造においてドアトリムとサービスホールカバーとがより近接している状態(外力が作用している状態)における断面図である。
図13】一実施形態に係る支持構造においてドアトリムとサービスホールカバーとがさらに近接している状態(外力が作用している状態)における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一実施形態に係る乗物用内装材の支持構造1を図1ないし図13に基づいて説明する。図1は、乗物としての車両の側方に配される車両用ドア10の分解斜視図である。車両用ドア10は、ドアパネル11と、ドアパネル11に設けられたサービスホール15を覆うサービスホールカバー40(本技術における支持部材の一例)と、ドアパネル11を車両内側から覆うドアトリム20と、を備えている。また、各図に示した符号U,D,IN,OUT,D1,D2はそれぞれ、鉛直方向(上下方向)の上方,下方,車室(乗物室)の室内側,室外側,第1方向(本技術における第1の方向),第2方向(本技術における第1の方向の反対側)、を示す。また、本例における第1方向および第2方向はそれぞれ、ドアトリム20の後述する基材21Aの裏面に沿う方向であって、おおよそ前方斜め下向きおよび後方斜め上向きに対応している。ただし、上記方向は説明のために便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0020】
ドアパネル11は、ドアアウタパネル12とドアインナパネル13とを備えている。ドアトリム20は、ドアインナパネル13に対して車両内側から取り付けられている。ドアインナパネル13とドアアウタパネル12との間は、ウインドウガラス14が収納される収納空間になっており、ウインドウガラス14が下降した際には、ウインドウガラス14は収納空間に収納される。また、ドアアウタパネル12とドアインナパネル13との間には、このウインドウガラス14を昇降するための昇降機構、車両用ドア10をロックするためのロック機構等の機能部品が収容されている。ドアインナパネル13は、機能部品の組み付け作業や保守作業などを行うための開口であるサービスホール15を有している。
【0021】
ドアトリム20は、板状をなし、車室の壁面を構成するとともに、車室の見栄えや居住性を向上させるための内装材である。ドアトリム20は、ドアインナパネル13に対し室内側から組み付けられている。ドアトリム20には、インサイドハンドル(図示せず)、アームレスト20B、ドアプルハンドル20C、スピーカグリル20D、ドアポケット20E等の機能部品が備えられる。このドアトリム20は、1つのボード部材で構成されていてもよく、2以上のボード部材を適宜組み合わせて構成されていてもよい。本例のドアトリム20は、複数のボード部材を互いに組み付けて構成されており、大まかにはアッパートリム21(本技術における乗物用内装材の一例)とロアトリム22とから構成されている。アッパートリム21は、ドアトリム20の上方において、前後方向の中央付近から後方にわたって延びている。
【0022】
アッパートリム21の前方部分には、インサイドハンドル部材を取り付けるための開口20Aが設けられている。また、アッパートリム21は、図3図6に示すように、アッパートリム21の骨格をなす板状の基材21Aと、この基材21Aの室内側の表面を覆う表皮材21Bとにより構成されている。基材21Aは、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料等によって構成されており、意匠性を高めるためにその板面は緩やかな曲面をなしている。また、表皮材21Bは、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料等からなるシート材によって構成されている。表皮材21Bは、巻き代の分だけ基材21Aよりも大きく形成されており、表皮材21Bは中央部分において基材21Aの表面を覆うとともに、その周縁部分の巻き代が基材21Aの裏面(室外側)に巻きつけられ、接着材によって基材21Aに貼着されている。基材21Aの裏面には、アッパートリム21をドアインナパネル13やロアトリム22に組み付けるためのボス23が複数設けられており、アッパートリム21はこのボスや図示しないクリップを介してドアインナパネル13やロアトリム22に組み付けられている。また、基材21Aの裏面には、室外側に向けて突出する第1突出部30(本技術における突出部)が設けられている。この基材21Aは、近年、車両の軽量化のために薄板化が進められており、基材21Aは、通常想定される厚み方向(室内外方向)に作用する応力に対してはその形状を十分に維持しうる程度の剛性を備えているものの、それ以上の強い応力が作用すると、室内外方向に撓みうる。
【0023】
第1突出部30は、基材21Aの撓みを規制して基材21A(延いてはアッパートリム21)の剛性を高めるための要素であり、基材21Aの裏面から室外方向に向けて突出するように設けられている。第1突出部30は、後述するサービスホールカバー40の第2突出部43の表面に当接することができるものの、この第2突出部43には固定されていない。第1突出部30は、板片状をなし基材21Aに立設される壁部31と、板片状をなし壁部31と基材21Aとに接続されるリブ32と、により構成される。本例の壁部31は、平板状であって、略台形をなしている。また壁部31は、その台形の上底に対応する先端部分の先端面31Aが、図10に示すように、後述する第2突出部43の第1傾斜面44Bに沿うように、板面の法線方向に対して傾斜されている。具体的には、第1突出部30は、第1方向D1の板面の高さよりも、第2方向D2の板面の高さの方が、低くなるようにその先端面31Aが傾斜されている。
【0024】
本例の第1突出部30においては、一つの壁部31に対して、板片状をなす二つのリブ32が設けられている。本例の壁部31は平板状であることから、二つのリブ32はそれぞれ、壁部31に直交するように設けられている。ただし、第1突出部30の形態はこれに限定されない。より詳しくは、壁部31は、板面の法線方向が第1方向D1に沿うように配されていることから、その板面は、第1方向D1(および第2方向)に直交する第3方向(本技術における第2の方向の一例であり、以下、幅方向という場合がある。)に沿うようになっている。そして二つのリブ32はそれぞれ、その板面が第1方向D1に沿うように、かつ、法線が第3方向に沿うように、互いに離間して配されている。二つのリブ32は、略台形状をなす壁部31の上底の両端付近において、壁部31に接続されている。リブ32は、例えば図9等に示すように、壁部31から離れるにつれて基材21Aの表面からの高さ寸法が小さくなるように、略三角形状をなしている。このような第1突出部30を備える基材21Aは、典型的には、第1突出部30および基材21Aの外形に対応した金型を用いる射出成形法によって一体的に成形することで作製することができる。
【0025】
サービスホールカバー40は、例えば図1に示すように、ドアインナパネル13のサービスホール15を覆う部材であり、ドアインナパネル13に対して室内側から取り付けられている。なお、具体的には図示しないが、ドアインナパネル13におけるサービスホール15の孔縁部とサービスホールカバー40との間には、シール材が介在されていてもよい。サービスホールカバー40は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料からなる板状の部材であり、本例のサービスホールカバー40は、ドアトリム20との間に衝撃吸収部材(図示せず)を収容するために、室外側に向けて凸形状となるように成形されている。より詳細には、サービスホールカバー40は、概して、サービスホール15の孔縁部と重畳されてドアインナパネル13に固定される周縁部分41と、周縁部分41よりも内側の部分であって、室外側に向けて後退される凸状部分42と、を含んで構成されている。そして周縁部分41の一部には、図7図10に示すように、ドアインナパネル13に取り付けられたときに、ドアトリム20よりも室外側に配され、アッパートリム21の基材21Aに近接する位置にまで室内側に突出する第2突出部43を有している。このようなサービスホールカバー40は、典型的には、サービスホールカバー40の外形に対応した金型を用いる射出成形法によって作製することができる。
【0026】
第2突出部43は、より具体的には、アッパートリム21の第1突出部30に対向する位置に設けられている(図2等参照)。第2突出部43は、幅方向の寸法が第1突出部30の上底と同程であって、第1方向に沿うように設けられている。第2突出部43は、幅方向の寸法が上底と同程度であって第1突出部30の側を向く突出面44と、この突出面44の幅方向の両端において突出面44と周縁部分41とに連続する側面45と、を有している。突出面44は、立上り面44Aと、第1傾斜面44Bと、中間面44Cと、第2傾斜面44Dと、を含み、立上り面44A,第1傾斜面44B,中間面44C,および第2傾斜面44Dがこの順で連続することで構成されている。
【0027】
第1傾斜面44Bは、第1方向D1に向かうにつれて基材21Aの裏面から離れるように傾斜する面である。第1傾斜面44Bは、サービスホールカバー40およびアッパートリム21がドアインナパネル13に取り付けられた自然状態において、第1突出部30に対向する位置に配されている。中間面44Cは、第1傾斜面44Bの第1方向の端部に連続し、基材21Aの裏面に沿うように設けられる面である。第2傾斜面44Dは、中間面44Cの第1方向の端部に連続し、第1方向に向かうにつれて裏面から離れるように傾斜するとともに、周縁部分41に連続する面である。立上り面44Aは、第1傾斜面44Bの第2方向の端部に連続し、第2方向に向かうにつれて基材21Aの裏面から離れるように傾斜するとともに、周縁部分41に連続する面である。なお、立上り面44Aのうちの第1傾斜面44Bに連続する部分は、第2突出部43のうちで最も周縁部分41から突出した頂部となっている。側面45は、このような突出面44に連続することで、少なくとも立上り面44Aの頂部と中間面44Cとに接続する辺が段をなす階段形状となっている。
【0028】
以上説明したような支持構造1では、サービスホールカバー40(支持部材)によってアッパートリム21(乗物用内装材)を支持する。ここで、アッパートリム21は、板状をなす基材21Aと、基材21Aから室外側(乗物室外側)に向けて突出する第1突出部30としての壁部31(突出部)と、を備えている。サービスホールカバー40は、アッパートリム21の室外側に配されるとともに、壁部31に対向し、基材21Aの室外側を向く裏面に沿う第1方向(第1の方向)に向かうにつれて裏面から離れるように傾斜する第1傾斜面44Bと、第1傾斜面44Bの第1方向の端部に連続し、裏面に沿うように設けられる中間面44Cと、中間面44Cの第1方向の端部に連続し、第1方向に向かうにつれて裏面から離れるように傾斜する第2傾斜面44Dと、を備えている。
【0029】
アッパートリム21に対して室内側から室外側に向かう外力が作用すると、基材21Aは室外側に突出する形、すなわちサービスホールカバー40の側に向けて撓む(基材21Aの裏面が室外側に変位する)こととなる。このとき、例えば図10に示すように、最初に第1突出部30の壁部31が、第2突出部43の第1傾斜面44Bに対して離間していると、図11に示すように、まずは壁部31の先端が第1傾斜面44Bに当接する。そしてさらに基材21Aが撓むと、図12に示すように、壁部31の先端は第1傾斜面44Bと中間面44Cとの接合部まで滑り、中間面44Cに突き当たる。ここで、支持構造1に外力が作用していない状態から、壁部31の先端が中間面44Cに突き当たるまでの基材21Aの室外側に向かう変位を、第1の寸法X1とする。すると、上記支持構造1は、アッパートリム21が第1の寸法X1で室外側に向けて撓んだとき、第1傾斜面44Bは壁部31が第1方向に滑るように案内するとともに、中間面44Cは壁部31を支持する構成を備える。これにより、壁部31は中間面44Cに係止され、第1方向へのさらなる移動が規制される。同時に、基材21Aのさらなる撓み(室外側への変位)が抑制される。その結果、アッパートリム21の剛性が高められる。中間面44Cは、第1の寸法X1だけ変位した壁部31を係止できる構成であれば、必ずしも基材21Aに平行である必要はなく、多少の傾斜が付与されていてもよい。
【0030】
なお、アッパートリム21に対して、二次衝突等の、室内側から室外側に向かうさらに大きな外力が作用すると、基材21Aに加わる外力は第1突出部30に集中する。このとき第1突出部30の耐剛性を超える外力が作用すると、第1突出部30は変形される。具体的には、壁部31の第2方向の側には第1傾斜面44Bが存在することから、第1傾斜面44Bが抵抗となって、壁部31の第2方向に向かう移動は規制される。また、壁部31の第2方向には二つのリブ32が存在することから、リブ32が抵抗となって、壁部31が第2方向に向けて変形することも規制される。その結果、壁部31の先端は第1方向に向けて変位し、中間面44Cから第2傾斜面44Dに移動する。第2傾斜面44Dはその傾斜によって、室外側に向かう外力を、壁部31を第1方向に向けて移動させる力へと変換する。このことにより、図13に示すように、例えば壁部31とリブ32とはその接合部において破断され、壁部31は第2傾斜面44Dの表面を滑りながら座屈する。ここで、支持構造1に外力が作用していない状態から、壁部31の先端が第2傾斜面44Dに至って破損するまでの基材21Aの室外側に向かう変位、を第2の寸法X2とする。第2の寸法X2は、第1の寸法X1よりも大きい。このような支持構造1において、第1傾斜面44B、中間面44C、および第2傾斜面44Dは、壁部31が第1方向に滑るように案内するとともに、壁部31を基材21Aに対して座屈させる。このとき、第1突出部30の変形(変位)および座屈は、あらかじめ定められた第1方向に沿って生じる。また、第1突出部30は、変形および座屈に伴い、アッパートリム21に作用する外力を吸収する。このことにより、ここに開示される支持構造1は、第2の寸法X2で変位されたとき、外部からの衝撃等を好適に緩和することができる。
【0031】
また第1の寸法X1、第2の寸法X2、およびアッパートリム21とサービスホールカバー40との離間距離は、外力によって基材21Aが室外側に向けて変位され(撓められ)たときに、基材21Aが当該変位に対して十分耐えることができる範囲において定められる。そして基材21Aの室外側に向かう変位が第1の寸法X1に満たないときは、壁部31の先端は、第1傾斜面44Bからの離間距離によって、第1傾斜面44Bに当接したり離間したりする。また、壁部31の先端は、第1傾斜面44Bを第1方向に移動(摺動)したり第2方向に移動(摺動)したりする。加えて、基材21Aの室外側に向かう変位が第1の寸法X1以上であって第2の寸法X2に満たないときは、壁部31の先端は、中間面44Cを第1方向に移動(摺動)したり第2方向に移動(摺動)したりし得る。
【0032】
より具体的には、例えば壁部31の先端と第1傾斜面44Bとは、自然状態において離間距離が4mm以下となるように設計されているとよい。このような構成によると、壁部31の先端と第1傾斜面44Bとは、アッパートリム21に外力が作用していない自然状態において、互いに負荷を与えない程度に接しているか、離間したものとなる。離間している場合は、その距離は、アッパートリム21の厚みや大きさ、強度等によるが、おおよそ4mm以下であるとよい。これにより、アッパートリム21の厚みのばらつきを吸収しつつ、アッパートリム21に更なる外力が作用したときに、壁部31が中間面44Cを第1方向に向けて滑りやすくなり、所定の変形モードで壁部31を変形させることができる。
【0033】
なお、壁部31は、基材21Aの剛性を高めるとの観点からは、基材21Aの裏面に対して80°以上110°以下、例えば約90°の角度(図10のθ1参照)をなすように突出しているとよい。これにより、アッパートリム21に外力が作用して壁部31が第1傾斜面44Bに当接したとき、壁部31は概ねその板面に沿う方向で外力を受けることができ、高い剛性を発揮し得る点において好ましい。これによりアッパートリム21の剛性を効率よく高めることができる。
【0034】
また、第1傾斜面44Bは、厳密には壁部31との摩擦係数にもよるが、自然状態の壁部31と、壁部31の第2方向の側に配される第1傾斜面44Bとのなす角度(図10のθ2参照)がおおむね70°以下(典型的には60°以下、例えば50°以下)となるように、その傾斜が調整されているとよい。このような構成によると、アッパートリム21に外力が作用して第1傾斜面44Bに当接した壁部31について、第1傾斜面44Bを第1方向に向けて容易に滑らせることができ、第1傾斜面44Bと中間面44Cとの接続部分に壁部31を案内して係止させることができる。このような構成によっても、アッパートリム21の剛性を効率よく高めることができる。
【0035】
その一方で、第1傾斜面44Bは、自然状態の壁部31と、壁部31の第2方向の側に配される第1傾斜面44Bとのなす角度(図10のθ2参照)がおおむね20°以上(典型的には25°以上、例えば30°以上)となるように、その傾斜が調整されているとよい。このような構成によると、アッパートリム21に外力が作用して第1傾斜面44Bに当接した壁部31の先端を、第1方向に向けて撓ませた状態で中間面44Cとの接合部に案内することができる。これにより、更に大きな外力が作用したときに、壁部31が中間面44Cを第1の方向に向けて滑りやすくなり、所定の変形モードに従うように壁部31を変形させることができる。
【0036】
また、壁部31の先端面31Aについては、壁部31の突出方向に対して20°以上(典型的には25°以上、例えば30°以上)であって、70°以下(典型的には60°以下、例えば50°以下)の角度をなすように傾斜されているとよい。さらに好ましくは、壁部31の先端面31Aは、図10等に示す自然状態において、第1傾斜面44Bとほぼ平行となるように傾斜されているとよい。このような構成によると、先端面31Aの傾斜の成形性が良好なものになるとともに、壁部31が第1傾斜面44Bに当接したときに第1方向に向けてより滑らかに案内されるために好適である。
【0037】
また、中間面44Cの第1方向に沿う寸法L1は、壁部31をしっかりと係止しつつ、更なる大きな外力が加わったときに速やかに壁部31を第2傾斜面44Dに案内できるものであるとよい。すなわち、寸法L1は、壁部31の第1方向に沿う寸法をL2としたとき、L2以上であって(L2+3mm)以下であるとよい。このような構成によると、中間面44Cの第1方向に沿う寸法が、壁部31の厚みのばらつきを考慮して、壁部31の厚みと同程度かやや大きい程度となる。これにより、アッパートリム21に作用する外力が小さいときは中間面44Cと第1傾斜面44Bとの接合部において壁部31を確実に係止しつつ、アッパートリム21に作用する外力が大きいときは壁部31を速やかに第2傾斜面44Dに案内することができる。すなわち、外力に応じて壁部31の機能を適切に切り替えることが可能となる。なお、寸法L1は、図12において、中間面44Cの領域を召す矢印によって示される部分の寸法である。
【0038】
なお、上記実施形態において、第1突出部30における壁部31は板片状をなし、その板面が第1方向D1に交わる(本例では直交する)第3方向(第2の方向)に延びるように配されている。このような構成によると、一つの第1突出部30の突出方向(すなわち室内外方向)の剛性が高められ、アッパートリム21(乗物用内装材)の剛性を効果的に高めることができる。
【0039】
また上記実施形態において第1突出部30は、壁部31の第2方向(第1の方向とは反対側)において、基材21Aと壁部31とに接続されるリブ32をさらに備えている。このような構成によると、第1突出部30の変形モードを変えることなく、一つの第1突出部30の剛性を高めることができる。また、壁部31により大きな外力が加わったときに、壁部31を第1方向に確実に変位させることができる。
【0040】
上記実施形態において第1突出部30における壁部31は、先端に先端面31A(端面)を有し、先端面31Aは第1傾斜面44Bに沿うように傾斜されている。このような構成によると、アッパートリム21(乗物用内装材)が室外側(乗物室外側)に向けて撓んだとき、壁部31は第1傾斜面44Bに当接した後、その先端が第1傾斜面44Bをスムーズに第1の方向に向けて案内されるために好適である。
【0041】
<その他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0042】
(1)上記実施形態では、一つの内装材(アッパートリム21)に対して、一組の第1突出部30および第2突出部43を設けた例を示したが、第1突出部30および第2突出部43の組み合わせは一組に限定されず、例えば、二組、または三組以上が設けられていてもよい。
【0043】
(2)上記実施形態では、一つの壁部31に対して、二つのリブ32が設けられていたが、リブ32の数はこれに限定されない。リブ32は、必ずしも設けられていなくてもよいし、一つ、または三つ以上が設けられてもよい。なお、リブ32が備えられていないとき、更なる大きな外力が作用して壁部31が第2傾斜面44Dに案内されると、第2傾斜面44Dは典型的には基材21Aとの接合部分(根本)で破断する。したがって、支持構造1に外力が作用していない状態から、壁部31の先端が第2傾斜面44Dに至り壁部31(第1突出部30)が破断(破損)するまでの基材21Aの室外側に向かう変位が、第2の寸法X2となる。
【0044】
(3)上記実施形態では、内装材を支持ずる支持部材がサービスホールカバー40である例について示したが、支持部材はこれに限定されず、ドアインナパネル13などの金属材料からなる高剛性の構造材料や、その他の部材であってもよい。
【0045】
(4)上記実施形態では、乗物用内装材がアッパートリム21である例について示したが、乗物用内装材はこれに限定されず、アッパートリム21以外のドアトリムであってもよいし、ボディサイドトリム、リアサイドトリム、ルーフトリム、ラッゲージトリム、ピラートリム、インストルメントパネル等の板状をなす内装材のいずれであってもよい。
【0046】
(5)上記実施形態では、乗物が車両である例について示したが、乗物はこれに限定されず、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの種々の乗物における乗物用内装材の支持構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…支持構造、13…ドアインナパネル、20…ドアトリム、21…アッパートリム、21A…基材、30…第1突出部、31…壁部、31A…先端面、32…リブ、40…サービスホールカバー、43…第2突出部、44…突出面、44A…立上り面、44B…第1傾斜面、44C…中間面、44D…第2傾斜面、45…側面
図1
図2
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図6
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図8
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図13