IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ボールねじ装置 図1
  • 特許-ボールねじ装置 図2
  • 特許-ボールねじ装置 図3
  • 特許-ボールねじ装置 図4
  • 特許-ボールねじ装置 図5
  • 特許-ボールねじ装置 図6
  • 特許-ボールねじ装置 図7
  • 特許-ボールねじ装置 図8
  • 特許-ボールねじ装置 図9
  • 特許-ボールねじ装置 図10
  • 特許-ボールねじ装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20240827BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F16H25/22 Z
F16H25/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021127932
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023022878
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270887(JP,A)
【文献】特開2020-46057(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に内周軌道面が設けられたナットと、
外周面に外周軌道面が設けられ、前記ナットを貫通するねじ軸と、
前記内周軌道面と前記外周軌道面との間に配置された複数のボールと、
前記ねじ軸に取り付けられる連結部品と、
を備え、
前記ねじ軸は、
前記外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、
前記ねじ軸本体に対し前記ねじ軸と平行な軸方向に連続して配置され、前記外周軌道面と連続する溝面が設けられた取付部と、
を備え、
前記取付部の外径は、前記溝面の谷径よりも大きく、かつ前記ねじ軸本体の外径よりも小さく、
前記ねじ軸本体と前記取付部の境界には、径方向及び周方向に延在する段差面が設けられ、
前記連結部品は、内部に前記取付部が挿入される環状の連結部本体を有し、
前記連結部本体の内周面には、前記溝面に螺合するねじ山が設けられ、
前記段差面は、前記軸方向のうち前記取付部から視て前記ねじ軸本体が配置される第1方向から、前記連結部本体に当接している
ボールねじ装置。
【請求項2】
前記取付部の外周面には、径方向内側に窪む環状の凹部が設けられ、
前記凹部には、前記軸方向から視てC字状の止め輪が嵌合し、
前記止め輪は、前記第1方向の反対方向である第2方向から、前記連結部本体に当接している
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記ねじ軸は、前記取付部に対し、前記第1方向の反対方向である第2方向に位置する雄ねじ部を有し、
前記雄ねじ部には、螺合する止めナットが設けられ、
前記止めナットは、前記第2方向から、前記連結部本体に当接している
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記ねじ軸は、前記取付部に対し、前記第1方向の反対方向である第2方向に位置するカシメ部を有し、
前記カシメ部は、前記第1方向の反対方向である第2方向から、前記連結部本体に当接している
請求項1に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、ナットと、ねじ軸と、ナットとねじ軸との間に配置された複数のボールと、を備える装置である。ボールねじ装置は、モータで生成された回転運動がナットに入力され、ねじ軸が軸方向に移動する、といったように用いられる場合がある。また、ねじ軸の端部には、アンチローテーションやストッパなどの部品が回転不能に取り付けられる場合がある。以下、アンチローテーションやストッパなど、ねじ軸に連結される部品を総称して連結部品を称する。また、ねじ軸の軸方向のうち、外周軌道面が設けられている部分をねじ軸本体と称し、連結部品が取り付けられる部分を取付部と称する。
【0003】
ねじ軸本体の外周面には、ボールが転動する外周軌道面が設けられている。下記特許文献によれば、取付部の外周面にも、外周軌道面に連続する螺旋状の溝面が設けられている。一方で、連結部品は、内部に取付部が挿入される環状部分を備えている。この環状部分の内周面には、ねじ山が設けられている。そして、ねじ山が溝面に螺合し、連結部品がねじ軸に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-270887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献の連結部品は、取付部の溝面に沿って螺旋方向に移動自在になっている。つまり、ねじ軸に対し、連結部品が軸方向に移動してしまう。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、軸方向のうち少なくとも一方に連結部品が移動することを規制できるボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るボールねじ装置は、内周面に内周軌道面が設けられたナットと、外周面に外周軌道面が設けられ、前記ナットを貫通するねじ軸と、前記内周軌道面と前記外周軌道面との間に配置された複数のボールと、前記ねじ軸に取り付けられる連結部品と、を備える。前記ねじ軸は、ねじ軸本体と、前記ねじ軸本体に対し前記ねじ軸と平行な軸方向に連続して配置された取付部と、を備える。ねじ軸本体には、前記外周軌道面が設けられている。取付部には、前記外周軌道面と連続する溝面が設けられている。前記取付部の外径は、前記溝面の谷径よりも大きく、かつ前記ねじ軸本体の外径よりも小さい。前記ねじ軸本体と前記取付部の境界には、径方向及び周方向に延在する段差面が設けられている。前記連結部品は、内部に前記取付部が挿入される環状の連結部本体を有している。前記連結部本体の内周面には、前記溝面に螺合するねじ山が設けられている。前記段差面は、前記軸方向のうち前記取付部から視て前記ねじ軸本体が配置される第1方向から、前記連結部本体に当接している。
【0008】
前記構成によれば、連結部品は螺合によりねじ軸に取り付けられる。連結部本体は、段差面に当接し、第1方向に移動しない。よって、連結部品は、第1方向(軸方向)への移動が規制される。
【0009】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記取付部の外周面には、径方向内側に窪む環状の凹部が設けられている。前記凹部には、前記軸方向から視てC字状の止め輪が嵌合している。前記止め輪は、前記第1方向の反対方向である第2方向から、前記連結部本体に当接している。
【0010】
前記構成によれば、連結部本体は、止め輪に当接し、第2方向に移動しない。これにより、連結部品は、軸方向の両側への移動が規制され、溝面に沿って螺旋方向に移動しない。この結果、連結部品は、ねじ軸に対し、相対回転しないように固定される。
【0011】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記ねじ軸は、前記取付部に対し、前記第1方向の反対方向である第2方向に位置する雄ねじ部を有している。前記雄ねじ部には、螺合する止めナットが設けられている。前記止めナットは、前記第2方向から、前記連結部本体に当接している。
【0012】
前記構成によれば、連結部本体は、止めナットに当接し、第2方向に移動しない。これにより、連結部品は、軸方向の両側への移動が規制され、溝面に沿って螺旋方向に移動しない。この結果、連結部品は、ねじ軸に対し、相対回転しないように固定される。
【0013】
上記のボールねじ装置の望ましい態様として、前記ねじ軸は、前記取付部に対し、前記第1方向の反対方向である第2方向に位置するカシメ部を有している。前記カシメ部は、前記第1方向の反対方向である第2方向から、前記連結部本体に当接している。
【0014】
前記構成によれば、連結部本体は、カシメ部に当接し、第2方向に移動しない。これにより、連結部品は、軸方向の両側への移動が規制され、溝面に沿って螺旋方向に移動しない。この結果、連結部品は、ねじ軸に対し、相対回転しないように固定される。
【発明の効果】
【0015】
本開示のボールねじ装置によれば、軸方向のうち少なくとも一方に連結部品が移動しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1の電動アクチュエータを軸方向に切った断面図である。
図2図2は、図1のII-II線矢視断面図である。
図3図3は、実施形態1のねじ軸の取付部及びねじ軸本体の一部を斜視した斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV線矢視断面図である。
図5図5は、実施形態1のねじ軸を軸心と直交する方向に切った場合の断面図である。
図6図6は、変形例1のねじ軸の断面図である。
図7図7は、変形例2のねじ軸の断面図である。
図8図8は、実施形態2のボールねじ装置を第2方向から視た側面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線矢視断面図である。
図10図10は、実施形態3のボールねじ装置を第2方向から視た側面図である。
図11図11は、図10のXI-XI線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動アクチュエータを軸方向に切った断面図である。図2は、図1のII-II線矢視断面図である。図3は、実施形態1のねじ軸の取付部及びねじ軸本体の一部を斜視した斜視図である。図4は、図2のIV-IV線矢視断面図である。図5は、実施形態1のねじ軸を軸心と直交する方向に切った場合の断面図である。図6は、変形例1のねじ軸の断面図である。図7は、変形例2のねじ軸の断面図である。
【0019】
図1に示すように、実施形態1の電動アクチュエータ100は、モータ101と、伝達装置102と、ハウジング103と、ボールねじ装置1と、を備える。電動アクチュエータ100は、モータ101で生成した回転運動を、ボールねじ装置1で直線運動に変換する装置である。電動アクチュエータ100は、例えばブレーキブースタに使用される。
【0020】
モータ101は、ステータ(不図示)と、ロータ(不図示)と、出力軸101aと、を備える。モータ101は、ハウジング103に支持されている。出力軸101aは、ボールねじ装置1のねじ軸5と平行となっている。以下、ねじ軸5と平行な方向を軸方向という。
【0021】
伝達装置102は、出力軸101aに嵌合する第1歯車102aと、第1歯車102aに歯合する第2歯車102bと、を備える。第2歯車102bは、ボールねじ装置1のナット4に嵌合している。第2歯車102bは、第1歯車102aよりも大径である。よって、モータ101で生成された回転運動は、伝達装置102で減速されてナット4に伝達する。
【0022】
ボールねじ装置1は、連結部品であるアンチローテーション2と、止め輪3と、ナット4と、ねじ軸5と、複数のボール6と、を備える。ナット4は、円筒状の部品である。ナット4の内周面には、内周軌道面4aが設けられている。ナット4は、軸方向に開口するように、ハウジング103の内部に配置されている。ハウジング103の内周面には、軸受装置7の外輪が嵌合している。ナット4は、軸受装置7の内輪に嵌合している。以上から、ナット4は、ねじ軸5の軸心Oを中心に回転可能に、ハウジング103に支持されている。
【0023】
ねじ軸5は、軸方向に延在する中実部品である。ねじ軸5は、ねじ軸本体10と、取付部11と、を備える。ねじ軸本体10と取付部11は、軸方向に連続して配置されている。なお、軸方向のうち、取付部11から視てねじ軸本体10が配置される方向を第1方向X1と称する。第1方向X1と反対方向を第2方向X2と称する。
【0024】
ねじ軸5は、第2方向X2を向く端面5aを有している。ねじ軸本体10の外周面には、外周軌道面13が設けられている。ねじ軸本体10は、ナット4を貫通するように配置されている。取付部11は、ナット4に対し、第2方向X2に位置するように配置されている。ねじ軸本体10の外周軌道面13は、ナット4の内周軌道面4aと対向している。外周軌道面13と内周軌道面4aとの間は、軌道となっている。
【0025】
複数のボール6は、軌道に配置されている。ナット4には、特に図示しないが、軌道の一端に配置されたボール6を軌道の他端に循環させる循環路が設けられている。よって、ナット4の回転により、ボール6は、軌道を転動して軌道の一端に移動すると、循環路によって軌道の他端に循環する。よって、ボール6は、無限に転動路を循環する。また、ナット4が回転すると、内周軌道面4a及び外周軌道面13により軸方向の運動に変換され、ねじ軸5が軸方向に移動する。
【0026】
取付部11には、アンチローテーション2及び止め輪3が取り付けられている。図2に示すように、アンチローテーション2は、環状の連結部本体20と、連結部本体20から径方向外側に延出する3つの腕部21と、を備える。連結部本体20は、取付部11に嵌合している。腕部21は、周方向に等間隔で配置されている。腕部21の径方向外側の端部は、ハウジング103のガイド溝103aに入り込んでいる。腕部21は、ガイド溝103aに沿って移動自在となっている。ガイド溝103aは、軸方向に延在している(図1参照)。以上から、アンチローテーション2は、軸方向に移動可能、かつ軸回りに回動不能にハウジング103に支持されている。
【0027】
なお、図2に示すように、ナット4は、第2方向X2を向く端面4bを有している。端面4bには、第2方向X2に突出する規制部4cが設けられている。ねじ軸5が第1方向X1移動し、アンチローテーション2がナット4に近接した場合、3つの腕部21のうち1つの腕部21に対し、規制部4cが周方向から当接する。これにより、電動アクチュエータ100の駆動開始時、ねじ軸5の軸方向の位置が一定となる。なお、本実施形態では、ナット4の規制部4cがアンチローテーション2の腕部21に当接(接触)するようになっているが、本開示は、これに限定されない。アンチローテーション2の端面に突起を設け、この突起にナット4の規制部4cが当接(接触)するようにしてもよい。
【0028】
止め輪3は、C状を成す部品である。止め輪3は、取付部11からアンチローテーション2が抜けることを規制するための部品である。止め輪3は、取付部11の外周面11aに嵌合している。止め輪3は、アンチローテーション2から視て第2方向X2に配置されている。
【0029】
次に、ねじ軸5と連結部本体20の詳細について説明する。図3に示すように、ねじ軸5の外周面には、ねじ溝12が形成されている。このねじ溝12は、ねじ軸本体10の外周面10aに、外周軌道面13を形成するための溝である。ねじ溝12は、第2方向X2から視て左回り(反時計回り。図3の矢印Aを参照)方向に向かうにつれて、第2方向X2に位置するようになっている。また、ねじ溝12は、等ピッチとなっている。ねじ軸5の第1方向X1の端部から第2方向X2の端部まで、ねじ溝12が形成されている。よって、取付部11の外周面11a(図3において格子状の模様が付されている領域を参照)にも、ねじ溝12が形成されている。以下、取付部11の外周面11aに設けられたねじ溝12の凹面を溝面14と称する。溝面14は、外周軌道面13と連続している。
【0030】
また、ねじ軸本体10においてねじ溝12の間の部分は、ねじ山16となっている。ねじ山16は、第2方向X2から視て左回り(図3の矢印Aを参照)方向に向かうにつれて、第2方向X2に位置するようになっている。
【0031】
図4に示すように、取付部11の外径r1は、ねじ軸本体10の外径r2よりも小さい。つまり、図3に示すように、取付部11の外周面11aは、ねじ軸本体10の外周面10aよりも小径となっている。このため、取付部11とねじ軸本体10の境界Lには、第2方向X2を向く段差面15(図3において斜線の模様が付されている領域を参照)が設けられている。
【0032】
外周面11aは、軸方向から視ると、軸心Oを中心に円形状を成している。また、ねじ山16の第2方向X2を向く側面16aの一部が削られ、段差面15が形成される。なお、本開示は、研磨以外の方法で、取付部11の外周面11aや段差面15を形成してもよい。
【0033】
図4に示すように、取付部11の外径r1は、溝面14の谷径r4よりも大きい。つまり、図3に示すように、取付部11の外周面11aを研磨により小径化したとしても、取付部11の外周面11aには溝面14が残っている。なお、溝面の谷径r4は、外周軌道面13の谷径r3と同一である。
【0034】
段差面15は、径方向及び周方向に延在している。つまり、段差面15は、軸心Oと直交する面であり、螺旋方向に延在していない。また、段差面15は、軸方向から視るとC字状となっており、環状となっていない。
【0035】
なお、図5において、段差面15と軸方向に重なる範囲を見易くするため、ドットを付している。段差面15の径方向内側の縁部15a(図3図5参照)は、取付部11の外周面11aに沿って周方向に延在している。段差面15の径方向外側の縁部のうち周方向の中央部15b(図3図5参照)は、ねじ軸本体10の外周面10aに沿って周方向に延在している。段差面15の径方向外側の縁部のうち周方向の両端部15c(図3図5参照)は、周方向の外側に向かうにつれて径方向内側に位置するように傾斜している。
【0036】
図4に示すように、取付部11の外周面11aには、径方向内側に窪む凹部17が設けられている。凹部17には、止め輪3の内周側が嵌合している。これにより、止め輪3は、軸方向に移動しないようにねじ軸5に固定される。凹部17は、取付部11の第2方向X2の端寄りに位置している。凹部17の径r5は、溝面14の谷径r4よりも小さい。また、凹部17は、周方向に延在し、環状を成している。よって、図3に示すように、径方向外側から視ると、凹部17(図3においてドットが付された領域を参照)の周方向の一部は、溝面14と重なっている。
【0037】
図4に示すように、アンチローテーション2の連結部本体20の内周面には、ねじ山22が設けられている。ねじ山22の断面形状は、溝面14に対応し、半円形状となっている。ねじ山22の谷径r6は、ねじ軸本体の外径r2よりも小さい。ねじ山22は、溝面14と同じリードである。ねじ山22が取付部11の溝面14に入り込み、連結部本体20が取付部11に螺合している。なお、本開示のねじ山22の断面形状は、半円形状に限定されない。ねじ山22の断面形状は、例えば台形形状など、溝面14に螺合できる形状であれば特に限定されない。
【0038】
連結部本体20は、第1方向X1を向く第1端面23と、第2方向X2を向く第2端面24と、を備える。第1方向X1を向く第1端面23は、段差面15に当接している。第2端面24は、止め輪3に当接している。以上から、アンチローテーション2は、ねじ軸5に対し軸方向に移動しないように固定されている。また、アンチローテーション2は、溝面14に沿って螺旋方向に移動しない。このため、アンチローテーション2は、ねじ軸5に対し相対回転不能に固定されている。以上から、ねじ軸5は、アンチローテーション2を介して、軸方向に移動可能かつ回転不能にハウジング103に支持されている。
【0039】
以上、実施形態1のボールねじ装置1は、連結部品(アンチローテーション2)と、ナット4と、ねじ軸5と、複数のボール6と、を備える。連結部品は、ねじ軸に取り付けられる。ナット4は、内周面に内周軌道面4aが設けられている。ねじ軸5は、外周面に外周軌道面13が設けられ、ナット4を貫通する。ボール6は、内周軌道面と外周軌道面との間に配置されている。ねじ軸5は、外周軌道面13が設けられたねじ軸本体10と、ねじ軸本体10に対しねじ軸5と平行な軸方向に連続して配置され、外周軌道面13と連続する溝面14が設けられた取付部11と、を備える。取付部11の外径r1は、溝面14の谷径r4よりも大きく、かつねじ軸本体10の外径r2よりも小さい。ねじ軸本体10と取付部11の境界Lには、径方向及び周方向に延在する段差面15が設けられている。連結部品は、内部に取付部11が挿入される環状の連結部本体20を有している。連結部本体20の内周面には、溝面14に螺合するねじ山22が設けられている。段差面15は、軸方向のうち取付部11から視てねじ軸本体10が配置される第1方向から、連結部本体20に当接している。
【0040】
連結部品(アンチローテーション2)は螺合によりねじ軸5に取り付けられる。連結部本体20は、段差面15に当接している。よって、連結部品は、第1方向X1への移動が規制される。
【0041】
また、実施形態1の取付部11の外周面11aには、径方向内側に窪む環状の凹部17が設けられている。凹部17には、軸方向から視てC字状の止め輪3が嵌合している。止め輪3は、第1方向X1の反対方向である第2方向X2から、連結部本体20に当接している。
【0042】
連結部本体20は、止め輪3に当接している。よって、第2方向X2への移動が規制される。これにより、連結部品は、溝面14に沿って螺旋方向に移動しない。つまり、連結部品は、ねじ軸5に対し相対回転しないように連結している。
【0043】
以上、実施形態1について説明したが、本開示は実施形態1で示したものに限定されない。例えば、ねじ軸5に連結する連結部品はアンチローテーション2に限定されない。本開示において、連結部品はナット4の規制部4cに接触するストッパであってもよい。又は、本開示は、ストッパ機能を有するアンチローテーション2がねじ軸5に連結される連結部品であってもよい。
【0044】
また、実施形態1のねじ溝12は等ピッチで形成されているが、本開示は、外周軌道面13のピッチと溝面14のピッチとが異なっていてもよい。言い換えると、本開示のねじ軸は、溝面14のピッチは、外周軌道面13のピッチよりも大きくなっていてもよい。以下、ねじ溝12のピッチと段差面15との関係を、変形例1(図6参照)と変形例2(図7参照)を挙げて説明する。
【0045】
図6に示すように、変形例1のねじ軸5Aのねじ溝12Aは、実施形態1のねじ軸5のねじ溝12よりもピッチが小さい。図7に示すように、変形例2のねじ軸5Bのねじ溝12Bは、変形例1のねじ軸5Aのねじ溝12Bよりもピッチが小さい。図5から図7に示すように、段差面15、15A、15Bの面積は、実施形態1、変形例1、変形例2の順で小さくなっている。このように、ねじ溝のピッチが大きいと、ねじ溝の側面に設けられる段差面15は周方向の長さが長くなり、面積が大きくなる。
【0046】
よって、上記したように溝面14のピッチが外周軌道面13のピッチよりも大きいねじ軸5であれば、段差面15の面積(連結部品との接触面積)が大きくなる。この結果、連結部品の第1方向X1への移動をより確実に規制することができる。
【0047】
次に、実施形態2と実施形態3について説明する。実施形態2と実施形態3は、止め輪3以外の方法で、連結部品が第2方向X2に移動することを規制した例である。
【0048】
(実施形態2)
図8は、実施形態2のボールねじ装置を第2方向から視た側面図である。図9は、図8のIX-IX線矢視断面図である。実施形態2のボールねじ装置1Dは、ねじ軸5に代えてねじ軸5Dを備えている点で、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。また、ボールねじ装置1Dは、止め輪3に代えて止めナット8を備えている点で、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。以下、相違点に絞って説明する。
【0049】
ねじ軸5Dは、第1方向X1から順に配置されたねじ軸本体10と、取付部11と、雄ねじ部18と、を備えている。雄ねじ部18の外径r7は、取付部11の溝面14の谷径r4よりも小さい。このため、雄ねじ部18には、溝面14(ねじ溝12)が残っていない。また、雄ねじ部18の外周面18aには、止めナット8が螺合するねじ溝が設けられている。止めナット8は、雄ねじ部18に螺合している。止めナット8は、連結部本体20の第2端面24と当接している。
【0050】
以上、実施形態2のボールねじ装置1Dのねじ軸5は、取付部11に対し、第1方向X1の反対方向である第2方向X2に位置する雄ねじ部18を有している。雄ねじ部18には、螺合する止めナット8が設けられている。止めナット8は、第2方向X2から、連結部本体20に当接している。
【0051】
このようなボールねじ装置1Dにおいても、実施形態1と同様に、アンチローテーション2は、溝面14に沿って螺旋方向に移動しない。つまり、アンチローテーション2は、ねじ軸5Dに対し相対回転不能に連結している。
【0052】
(実施形態3)
図10は、実施形態3のボールねじ装置を第2方向から視た側面図である。図11は、図10のXI-XI線矢視断面図である。実施形態3のボールねじ装置1Eは、ねじ軸5に代えてねじ軸5Eを備えている点で、実施形態1のボールねじ装置1と相違する。
【0053】
ねじ軸5Eは、第1方向X1から順に配置されたねじ軸本体10と、取付部11と、カシメ部19と、を備えている。カシメ部19は、取付部11の第2方向X2の端部を潰すことで生成されている。言い換えると、取付部11の外周側を切削等の加工をすることなく、カシメ部19を生成している。また、取付部を潰しやすくするため、ねじ軸5の端面5aの中央部には円形状の穴5bが設けられている。カシメ部19は、連結部本体20の第2端面24と当接している。
【0054】
以上、実施形態2のボールねじ装置1Dのねじ軸5Eは、取付部11に対し、第1方向X1の反対方向である第2方向X2に位置するカシメ部19を有している。カシメ部19は、第1方向X1の反対方向である第2方向X2から、連結部本体20に当接している。
【0055】
このようなボールねじ装置1Eにおいても、実施形態1と同様に、アンチローテーション2は、溝面14に沿って螺旋方向に移動しない。つまり、アンチローテーション2は、ねじ軸5Eに対し相対回転不能に連結している。
【符号の説明】
【0056】
1、1D ボールねじ装置
2 アンチローテーション(連結部品)
3 止め輪
4 ナット
5、5A、5B、5E ねじ軸
6 ボール
8 止めナット
10 ねじ軸本体
11 取付部
12 ねじ溝
13 外周軌道面
14 溝面
15、15A、15B 段差面
16 ねじ山
17 凹部
18 雄ねじ部
19 カシメ部
20 連結部本体
21 腕部
22 ねじ山
23 第1端面
24 第2端面
100 電動アクチュエータ
101 モータ
102 伝達装置
103 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11