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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/62 20060101AFI20240827BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
B60S1/62 120C
B60W60/00
B60S1/62 120B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021154531
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045912
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小西 將貴
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116607(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017626(WO,A1)
【文献】特開2019-098775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0391702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0177512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/62
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(12)を有し、車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射により前記センサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御する制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記センサ系及び前記洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、前記洗浄ノズルからの前記洗浄流体の噴射を制御することと、
前記制御周期内のフレーム(Fi)毎に前記センサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、前記制御周期における経過時間(Tc)と、前記センサ面上における前記洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与することとを実行するように構成される制御装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルからの噴射を制御することは、
噴射方向(Ni)が固定される前記洗浄ノズルから(50)の、噴射を制御することを含み、
前記優先度を付与することは、
前記フレームに対応する前記経過時間毎に洗浄に対する信頼度(R1)を表す第一信頼度分布(C1)と、前記画素領域に対応する前記相対位置毎に洗浄に対する信頼度(R2)を表す第二信頼度分布(C2)とに基づき、前記優先度を付与することを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記優先度を付与することは、
前記経過時間毎の前記第一信頼度分布を、前記車両周囲の走行環境における天候状態と、前記車両の走行状態と、前記洗浄ノズルからの噴射特性とのうち、少なくとも一種類に基づき可変設定することを含む請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記洗浄ノズルからの噴射を制御することは、
噴射方向(Ni)が変化する前記洗浄ノズル(3050)からの、噴射を制御することを含み、
前記優先度を付与することは、
前記経過時間毎の前記噴射方向に応じた前記相対位置毎での、洗浄に対する信頼度(R)を表す信頼度分布(C)に基づき、前記優先度を付与することを含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記洗浄ノズルからの噴射を制御することは、
前記洗浄流体である洗浄ガスの噴射が終了する噴射終了タイミングを、前記制御周期毎に制御することを含み、
前記優先度を付与することは、
前記噴射終了タイミングからの前記経過時間が増大するほど低くなる前記優先度であって、前記洗浄ノズルの噴射軸線(Li)を前記センサ面に投影した投影線(Lp)から前記相対位置が離間するほど低くなる前記優先度を、付与することを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記洗浄ノズルからの噴射を制御することは、
前記洗浄流体である洗浄液の噴射が終了する噴射終了タイミングを、前記制御周期毎に制御することを含み、
前記優先度を付与することは、
前記噴射終了タイミングからの前記経過時間が増大するほど高くなる前記優先度であって、前記洗浄ノズルの噴射軸線(Li)を前記センサ面に投影した投影線(Lp)から前記相対位置が離間するほど低くなる前記優先度を、付与することを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
付与された前記優先度が許容範囲内となる前記画素領域を、前記画像データにおいて選定することを、さらに実行するように構成される請求項1~6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
記憶媒体(10)を有し、
前記プロセッサは、
前記優先度の付与された前記画像データを、前記記憶媒体に記憶することを、さらに実行するように構成される請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記優先度の付与された前記画像データに基づき、前記車両の自動運転モードを制御することを、さらに実行するように構成される請求項1~8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射により前記センサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御するためにプロセッサ(12)により実行される制御方法であって、
前記センサ系及び前記洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、前記洗浄ノズルからの前記洗浄流体の噴射を制御することと、
前記制御周期内のフレーム(Fi)毎に前記センサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、前記制御周期における経過時間(Tc)と、前記センサ面上における前記洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与することとを含む制御方法。
【請求項11】
車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射により前記センサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
前記命令は、
前記センサ系及び前記洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、前記洗浄ノズルからの前記洗浄流体の噴射を制御させることと、
前記制御周期内のフレーム(Fi)毎に前記センサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、前記制御周期における経過時間(Tc)と、前記センサ面上における前記洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与させることとを含む制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両におけるセンサ系及び洗浄系の制御技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるセンサ系では、車両の外界に露出するセンサ面を通してセンシングエリアが設定されている。そこで、特許文献1に開示されるように車両には、洗浄ノズルからの洗浄流体の噴射によってセンサ面を洗浄する洗浄系が、搭載されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-171491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、センサ面となるガラス前面に汚れが付着するのに応じて洗浄ノズルから洗浄流体が噴射されることで、センサ面が洗浄されている。しかし、こうして洗浄されたセンサ面上であっても、位置及び時間経過に応じて清浄度に差異が生じてくる。その結果、センサ面を通して取得される画像データは、清浄度の差異に起因した信頼性の低下を内包する事態となるにも拘らず、正常データとして一律に利用されてしまう。特に近年、画像データの信頼性低下は、自動運転制御での信頼性低下にも繋がる懸念があるため、望ましくない。
【0005】
本開示の課題は、画像データの信頼性を確保する制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、画像データの信頼性を確保する制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、画像データの信頼性を確保する制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(12)を有し、車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射によりセンサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御する制御装置であって、
プロセッサは、
センサ系及び洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、洗浄ノズルからの洗浄流体の噴射を制御することと、
制御周期内のフレーム(Fi)毎にセンサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、制御周期における経過時間(Tc)と、センサ面上における洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与することとを実行するように構成される。
【0008】
本開示の第二態様は、
車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射によりセンサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御するためにプロセッサ(12)により実行される制御方法であって、
センサ系及び洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、洗浄ノズルからの洗浄流体の噴射を制御することと、
制御周期内のフレーム(Fi)毎にセンサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、制御周期における経過時間(Tc)と、センサ面上における洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与することとを含む。
【0009】
本開示の第三態様は、
車両(2)の外界に露出するセンサ面(33)を通してセンシングエリア(As)が設定されるセンサ系(4)と、洗浄ノズル(50,3050)からの洗浄流体の噴射によりセンサ面を洗浄する洗浄系(5,3005)とを、制御するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
命令は、
センサ系及び洗浄系を制御する制御周期(ωc)において、洗浄ノズルからの洗浄流体の噴射を制御させることと、
制御周期内のフレーム(Fi)毎にセンサ面を通して取得された画像データ(Di)において画素領域(Dp)毎の優先度(Pi)を、制御周期における経過時間(Tc)と、センサ面上における洗浄ノズルに対しての相対位置(Xp)とに基づき、付与させることとを含む。
【0010】
このように第一~第三態様では、センサ系及び洗浄系を制御する制御周期において、洗浄ノズルからの洗浄流体の噴射が制御される。そこで第一~第三態様によると、制御周期におけるフレーム毎にセンサ面を通して取得の画像データには、制御周期における経過時間と、センサ面上における洗浄ノズルに対しての相対位置とに基づくことで、画素領域毎の優先度が付与される。これによれば、経過時間と相対位置とに応じてセンサ面上に生じる清浄度の差異を、フレーム毎且つ画素領域毎となる画優先度に反映させることができるので、画像データの信頼性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの、車両への搭載状態を示す横断面図である。
図2】第一実施形態による画像データを説明するための模式図である。
図3】第一実施形態によるセンサ系を説明するための模式図である。
図4】第一実施形態による洗浄ノズルの構成を示す模式図である。
図5】第一実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの機能構成を示すブロック図である。
図6】第一実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの、図5とは異なる機能構成を示すブロック図である。
図7】第一実施形態による洗浄ノズルの、図4とは異なる構成を示す模式図である。
図8】第一実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの、図5,6とは異なる機能構成を示すブロック図である。
図9】第一実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの、図5,6,8とは異なる機能構成を示すブロック図である。
図10】第一実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
図11】第一実施形態による優先度付与処理を説明するためのグラフである。
図12】第一実施形態による優先度付与処理を説明するための模式図である。
図13】第一実施形態による優先度付与処理を説明するための模式図である。
図14】第二実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
図15】第三実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの機能構成を示すブロック図である。
図16】第三実施形態による制御装置を備えた自動運転ユニットの、図15とは異なる機能構成を示すブロック図である。
図17】第三実施形態による洗浄ノズルの構成を示す模式図である。
図18】第三実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
図19】第三実施形態による優先度付与処理を説明するための模式図である。
図20】第三実施形態による優先度付与処理を説明するための模式図である。
図21】第四実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
図22】第四実施形態による優先度付与処理を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態による制御装置1を備えた自動運転ユニットADUは、車両2に搭載される。車両2は、乗員の搭乗状態において走行路を走行可能な、例えば自動車等の移動体である。
【0014】
車両2は、自動運転モードにおいて定常的、又は一時的に自動走行可能となっている。ここで自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律運転制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部又は全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律運転制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0015】
自動運転ユニットADUは、制御装置1と共に車両2に搭載される構成要素として、ハウジング3、センサ系4、及び洗浄系5を備えている。以下、自動運転ユニットADUの方向に関する説明は、水平面上の車両2を基準に説明される。
【0016】
ハウジング3は、樹脂、金属、又はそれらの組み合わせにより、例えば中空扁平状の矩形箱形等に形成されている。ハウジング3は、車両2のルーフ20上に設置される。ハウジング3の外周壁部30において複数箇所を貫通している開口は、例えば透明ガラス等のセンサカバー32により、覆われている。各センサカバー32は、車両2の外界に露出して当該外界から光の入射するセンサ面33を、それぞれ形成している。
【0017】
センサ系4は、複数の外界センサ40を主体に構成されている。各外界センサ40は、それぞれ個別のセンサ面33と対応する位置において、ハウジング3の内部に収容されている。そこで以下では、外界センサ40に対応するセンサ面33を単に、外界センサ40のセンサ面33という。
【0018】
各外界センサ40は、車両2において自動運転モードに活用可能な外界情報を表すセンシングデータとして、図2に示すように画像データDiを所定周期のフレームFi毎に取得する。各外界センサ40は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、カメラ、及びイメージングレーダ等のうち、それぞれ個別の一種類により構成される。図3に示すように各外界センサ40には、それぞれ対応するセンサ面33を通してセンシングするセンシングエリアAsが、車両2の外界のうち配置位置に応じた範囲に設定されている。
【0019】
図1に示すように洗浄系5は、複数の洗浄ノズル50を含んで構成されている。図4,7に示すように各洗浄ノズル50は、それぞれ個別の外界センサ40及びセンサ面33と対応する位置において、ハウジング3の外部に保持されている。各洗浄ノズル50は、それぞれ対応するセンサ面33を、洗浄流体の噴射によって個別に洗浄する。
【0020】
第一実施形態の各洗浄ノズル50は、それぞれの配置位置からセンサ面33に向かって仮想される噴射軸線Liを中心に広がる範囲へ、洗浄流体を噴射する。特に第一実施形態の各洗浄ノズル50は、それぞれの配置位置からセンサ面33に向かう噴射軸線Liの仮想方向を、噴射方向Niとして固定されている。さらに第一実施形態の各洗浄ノズル50は、例えば空気等の洗浄ガスを、洗浄流体としてセンサ面33に噴射する。
【0021】
図1,4~6に示すように洗浄ノズル50は、各外界センサ40に一つずつ対応して設けられていてもよい。あるいは、図7~9に示すように洗浄ノズル50は、各外界センサ40に複数ずつ対応して設けられていてもよい。特に、各外界センサ40に複数ずつ対応する場合の洗浄ノズル50は、図7の如く噴射軸線Liを互いに離間させて並列配置されることで、それぞれのセンサ面33における洗浄範囲を互いにずらされているとよい。但し、この場合に、並列配置された洗浄ノズル50の洗浄範囲は、縁部同士では重畳した状態で、ずらされているとよい。
【0022】
図1,2に示す制御装置1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、及び内部バス等のうち少なくとも一種類を介して、図5,6,8,9の如くセンサ系4と洗浄系5とに接続されている。ここで、図5,8に示すように制御装置1は、外界センサ40及び洗浄ノズル50の組毎に個別に設けられていてもよい。あるいは、図6,9に示すように制御装置1は、外界センサ40及び洗浄ノズル50の複数組に共通に設けられていてもよい。
【0023】
図1に示すように制御装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両2内のECU(Electronic Control Unit)と共同して自動運転モードを制御する、運転制御ECUであってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、自己位置を含んだ車両2の状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。
【0024】
制御装置1は、こうした専用コンピュータを含んで構成されることで、メモリ10及びプロセッサ12を少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0025】
制御装置1においてプロセッサ12は、メモリ10に記憶された制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより制御装置1は、センサ系4と洗浄系5とを制御するための機能ブロックを、複数構築する。制御装置1により構築される複数の機能ブロックには、図5,6,8,9に示すように噴射制御ブロック100、優先度付与ブロック120、及び運転制御ブロック140が含まれている。
【0026】
これらブロック100,120,140の共同により、制御装置1がセンサ系4及び洗浄系5を制御する制御方法は、図10に示す制御フローに従って実行される。本制御フローは、車両2の起動中においてセンサ系4及び洗浄系5を制御する制御周期ωc毎に、繰り返し実行される。尚、制御フローにおける各「S」は、制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。また、制御フローに関する説明では、当該説明の理解を容易にするために、図1,4,5に示す構成例の場合を代表的に説明し、他構成例の場合の説明を省略している。
【0027】
図10に示す制御フローのS10において図5の噴射制御ブロック100は、外界センサ40のセンサ面33に対する洗浄を実行する洗浄条件が、成立したか否かを判定する。このとき洗浄条件とは、車両2周囲の走行環境における天候状態、センサ面33の汚れ状態、及び車両2の走行状態等のうち少なくとも一種類の注目状態に関して、センサ面33の洗浄が必要となる条件に定義される。ここで注目状態は、例えば外界センサ40を含む車両2のセンサ系4からの検出データ、及び車両2外部からの受信データ等のうち、少なくとも一種類に基づき認識されるとよい。こうしたS10において洗浄条件が成立した場合には、制御フローがS11へ移行する。
【0028】
S20において噴射制御ブロック100は、今回の制御周期ωcにおいて噴射方向Niの固定される洗浄ノズル50からの洗浄流体の噴射として、特に第一実施形態では洗浄ガスの噴射を制御する。このとき、洗浄ノズル50からの図5,11に示す噴射開始タイミングtsは、制御周期ωcの開始タイミング(0)から、S10の実行時間を含む設定時間が経過した後の所定タイミングに、設定される。また、洗浄ノズル50からの図5,11に示す噴射終了タイミングteは、噴射開始タイミングtsから、実際に洗浄が実行される洗浄期間ΔTの経過後となるタイミングに、設定される。ここで洗浄期間ΔTは、固定値に設定されてもよいし、例えばS10において成立判定された洗浄条件等に基づく可変値に設定されてもよい。さらに、洗浄ノズル50からの図5に示す噴射量Qiは、固定値に設定されてもよいし、例えばS10において成立判定された洗浄条件等に基づく可変値に設定されてもよい。
【0029】
図10に示す制御フローのS30において図5の優先度付与ブロック120は、優先度付与処理を実行する。具体的に、S30の優先度付与処理において優先度付与ブロック120は、今回の制御周期ωc内における各フレームFi毎に外界センサ40がセンサ面33を通して取得した画像データDiにおいて、図12に示す各画素領域Dp毎に優先度Piを付与する。ここで画素領域Dpとは、画像データDiを構築する、一つずつの個別画素又は複数ずつの画素群から、構成される。尚、図12では、一部の画素領域Dpのみに符号が付されている。
【0030】
S30の優先度付与処理において優先度Piは、図11に示すような制御周期ωcにおける経過時間Tcと、図12に示すようなセンサ面33上における洗浄ノズル50に対しての相対位置Xpとに基づき、付与される。特に、第一実施形態による優先度Piの付与は、各フレームFiに対応する経過時間Tc毎に洗浄に対する信頼度R1を図11の如く表した第一信頼度分布C1と、各画素領域Dpに対応する相対位置Xp毎に洗浄に対する信頼度R2を図12の如く表した第二信頼度分布C2とに、基づく。ここで洗浄に対する信頼度R1,R2とは、第一実施形態では洗浄によるセンサ面33の清浄度であるといえる。また信頼度R1,R2は、第一実施形態ではセンサ面33を通した、外界センサ40での視界の良好度であるともいえる。尚、洗浄に対する信頼度を以下では、洗浄信頼度という。
【0031】
図11に示すように第一信頼度分布C1は、フレームFiの切り替わりに対応する経過時間Tcの変化に応じた、洗浄信頼度R1の時間推移を与えるように、信頼度関数によって規定される。第一信頼度分布C1におけるωcは、今回の制御周期を信頼度関数において定義する、固定の変数パラメータである。第一信頼度分布C1におけるteは、今回の制御周期ωcに設定された噴射終了タイミングを信頼度関数において定義する、固定又は可変の変数パラメータである。
【0032】
第一信頼度分布C1におけるcuは、今回の制御周期ωcのうち、噴射開始タイミングtsから噴射終了タイミングteまでの間において図11のグラフ形状を定義する、信頼度関数の係数パラメータである。特に第一実施形態の係数パラメータcuは、噴射開始タイミングtsからの経過時間Tcが増大するほど、高い洗浄信頼度R1を与えるように規定される。この規定は、洗浄ガスの噴射中には時間Tcが経過するほど、センサ面33の清浄度が漸次上がっていくことに依拠する。
【0033】
第一信頼度分布C1におけるcdは、今回の制御周期ωcのうち、噴射終了タイミングteから今回の制御周期ωcの完了タイミングまでの間において図11のグラフ形状を定義する、信頼度関数の係数パラメータである。特に第一実施形態の係数パラメータcdは、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど、低い洗浄信頼度R1を与えるように規定される。この規定は、車両2の起動中には洗浄ガス噴射の完了から時間Tcが経過するほど、例えば雨、雪、又は粉塵等の付着に起因してセンサ面33の清浄度が落ち易くなることに依拠する。
【0034】
これら係数パラメータcu,cdのうち一方又は双方は、車両2周囲の走行環境における天候状態と、車両2の運転状態と、洗浄ノズル50からの噴射特性とのうち、少なくとも一種類に基づき可変設定されるとよい。ここで天候状態とは、例えば降雨の有無、降雨時の雨量、降雪の有無、降雪時の降雪量、風吹の有無、及び風吹時の風量等のうち、少なくとも一種類を含む。走行状態とは、例えば速度、加速度、及びヨーレート等のうち、少なくとも一種類を含む。噴射特性とは、例えば上述したタイミングts,te、洗浄期間ΔT、及び噴射量Qiのうち、少なくとも一種類を含む。具体例として、噴射終了タイミングteから制御周期ωcの完了タイミングまでの係数パラメータcdは、降雨時に雨量が多いほど、洗浄信頼度R1の時間当たりでの減衰率が大きくなるように、設定されるとよい。
【0035】
第一信頼度分布C1におけるrmax及びrminは、それぞれ洗浄信頼度R1の上限値及び下限値を信頼度関数において定義する、変数パラメータである。これら上限値rmax及び下限値rminのうち一方又は双方も、車両2周囲の走行環境における天候状態と、車両2の走行状態と、洗浄ノズル50からの噴射特性とのうち、少なくとも一種類に応じて可変設定されるとよい。具体例として洗浄信頼度R1の上限値rmaxは、降雨時に雨量が多いほど、小さくなるように設定されるとよい。また一方で洗浄信頼度R1の下限値rminは、降雨時に雨量が多いほど、大きくなるように設定されるとよい。
【0036】
図12に示すように第二信頼度分布C2は、センサ面33上において各画素領域Dpに対応した、洗浄ノズル50との相対位置Xp毎に、洗浄信頼度R2を与える。特に第一実施形態の第二信頼度分布C2は、洗浄ノズル50の噴射軸線Liをセンサ面33に投影した投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど、低い洗浄信頼度R2を与えるように規定される。この規定は、投影線Lpから離間するほど、洗浄流体である洗浄ガスの到達量が減少して洗浄性能が落ちることに、依拠する。ここで投影線Lpとは、洗浄ノズル50の噴射軸線Liを含んでセンサ面33に対しては直角に交差する仮想平面(即ち、図12の図示面に対する直交面)上において、センサ面33との当該交差線に定義される。尚、図12は、センサ面33上での相対位置Xpに対応する画素領域Dpを、模式的にセンサ面33上に重畳させた矩形メッシュ状に表している。そこで図12は、各画素領域Dp毎に濃淡の薄い相対位置Xpほど、低い洗浄信頼度R2を表すように描かれている。
【0037】
S30の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、こうして与えられる第一信頼度分布C1と第二信頼度分布C2とを図13に示すように合成することで、フレームFi毎且つ画素領域Dp毎となる優先度Piを画像データDiに対して付与する。このとき分布C1,C2同士の合成としては、フレームFi毎に第一信頼度分布C1の与える洗浄信頼度R1と、画素領域Dp毎に第二信頼度分布C2の与える洗浄信頼度R2とが、乗算されることで、数1を満たす優先度Piが取得される。その結果、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど低くなる優先度Piであって、センサ面33上では噴射軸線Liの投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど低くなる優先度Piが、付与されることになる。
【数1】
【0038】
S30の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、優先度Piの付与された画像データDiを、メモリ10に記憶してもよい。S30の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、優先度Piの付与された画像データDiを、車両2と通信可能な外部センタへ送信して、当該外部センタに蓄積させてもよい。
【0039】
図10に示す制御フローのS40において図5の運転制御ブロック140は、S30により優先度Piの付与された画像データDiに基づき、車両2の自動運転モードを制御する。このとき自動運転モードでは、車両2周囲の走行環境を認識するために、優先度Piが活用されてもよい。自動運転モードでは、車両2の経路及び軌道を含む走行パスを計画するために、優先度Piが活用されてもよい。自動運転モードでは、車両2の走行リスクを監視及び判断するために、優先度Piが活用されてもよい。自動運転モードでは、車両2の制御パラメータを設定するために、優先度Piが活用されてもよい。自動運転モードでは、制御パラメータに基づき車両2の走行アクチュエータを制御するために、優先度Piが活用されてもよい。尚、S40における運転制御ブロック140は、車両2内のECUと共同して自動運転モードの制御を実行してもよいし、単独で自動運転モードの制御を実行してもよい。
【0040】
こうしたS40の実行が完了すると、図10に示すように制御フローの今回実行が終了する。また、上述のS10において洗浄条件が不成立であった場合にも、制御フローの今回実行が終了する。尚、S10において洗浄条件が不成立であった場合には、制御フローの今回実行が終了する前に、例えば前回洗浄からの経過時間が監視されることで、当該経過時間が設定時間超過又は設定時間以上となる等の場合には、洗浄ノズル50からの流体噴射が制御されてもよい。この場合にもS20,S30,S40が実行されてもよいし、図10の如く実行されなくてもよい。
【0041】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0042】
このように第一実施形態では、センサ系4及び洗浄系5を制御する制御周期ωcにおいて、洗浄ノズル50からの洗浄流体の噴射が制御される。そこで第一実施形態によると、制御周期ωc内のフレームFi毎にセンサ面33を通して取得の画像データDiには、制御周期ωcにおける経過時間Tcと、センサ面33上における洗浄ノズル50に対しての相対位置Xpとに基づくことで、画素領域Dp毎の優先度Piが付与される。これによれば、経過時間Tcと相対位置Xpとに応じてセンサ面33上に生じる清浄度の差異を、フレームFi毎且つ画素領域Dp毎となる優先度Piに反映させることができるので、画像データDiの信頼性を確保することが可能となる。
【0043】
第一実施形態では、噴射方向Niの固定される洗浄ノズル50からの、噴射が制御される。そこで第一実施形態によると、フレームFiに対応する経過時間Tc毎に洗浄信頼度R1を表す第一信頼度分布C1と、画素領域Dpに対応する相対位置Xp毎に洗浄信頼度R2を表す第二信頼度分布C2とに基づき、優先度Piが付与される。これによれば、経過時間Tc毎での洗浄信頼度R1及び相対位置Xp毎での洗浄信頼度R2を、経過時間Tcに対応したフレームFi毎且つ相対位置Xpに対応した画素領域Dp毎の優先度Piに、正確に反映させることができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0044】
第一実施形態によると、経過時間Tc毎の第一信頼度分布C1は、車両2周囲の走行環境における天候状態と、車両2の走行状態と、洗浄ノズル50からの噴射特性とのうち、少なくとも一種類に基づき可変設定される。これによれば、センサ面33の清浄度を時間変化させる要因によって増減する洗浄信頼度R1を、経過時間Tcに対応したフレームFi毎に優先度Piへと反映させることができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0045】
第一実施形態では、洗浄流体である洗浄ガスの噴射が終了する噴射終了タイミングteは、制御周期ωc毎に制御される。そこで第一実施形態による画像データDiは、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど低くなる優先度Piであって、洗浄ノズル50の噴射軸線Liをセンサ面33に投影した投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど低くなる優先度Piを、付与される。これによれば、経過時間Tcに対応したフレームFi毎且つ相対位置Xpに対応した画素領域Dp毎の優先度Piを、洗浄ガスでの洗浄特性に合わせて正確に付与することができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0046】
第一実施形態によると、優先度Piの付与された画像データDiが、記憶媒体としてのメモリ10に記憶される。これによれば、メモリ10から読み出される画像データDiは、優先度Piの付与によって信頼性が確保されたデータとして、利用可能となる。
【0047】
第一実施形態によると、優先度Piの付与された画像データDiに基づき、車両2の自動運転モードが制御される。これよれば、フレームFi毎且つ画素領域Dp毎の優先度Piに応じた自動運転モードの制御を実現して、画像データDiの信頼性と共に当該制御の信頼性を高めることが可能となる。
【0048】
(第二実施形態)
第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0049】
図14に示すように第二実施形態の制御フローでは、S30とS40との間においてS250が実行される。このS250において優先度付与ブロック120は、S30により付与された優先度Piが許容範囲内となる画素領域Dpを、画像データDiにおける有効画素領域として選定する。このときの選定は、優先度Piが逆に許容範囲外となる画素領域Dpを、例えばマスキング等により画像データDiにおいて無効化することで、実現されるとよい。またこのとき、許容範囲外となる画素領域Dpのうち、例えば画像データDiの画像処理等によりセンサ面33上において検出された雨滴の、付着部分に対応する雨滴画素領域に限定して、より高精度な無効化が実現されてもよい。こうしたS250に続く第二実施形態のS40では、優先度Piの付与された画像データDiにおける有効画素領域の画素値に基づくことで、自動運転モードの制御信頼性を高めることが可能となる。
【0050】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0051】
図15~17に示す第三実施形態の洗浄系3005において洗浄ノズル3050は、各外界センサ40に一つずつ対応して設けられ、それぞれ個別の駆動ユニット3052によって駆動される。図17に示すように各洗浄ノズル3050は、それぞれ駆動ユニット3052による支持位置からセンサ面33へ向かう噴射軸線Liの延伸方向を、噴射方向Niとして定義されている。各駆動ユニット3052は、それぞれ個別の洗浄ノズル3050を駆動角度範囲θ(後述の図19参照)においてスイング駆動することで、当該個別の洗浄ノズル3050における噴射方向Niを時間毎に回転変化させる。尚、噴射方向Ni以外の点で洗浄系3005は、第一実施形態の洗浄系5に準じて構成される。
【0052】
こうした構成の第三実施形態において制御装置1は、図15に示すように外界センサ40、洗浄ノズル3050、及び駆動ユニット3052の組毎に個別に設けられていてもよい。あるいは、図16に示すように第三実施形態の制御装置1は、外界センサ40、洗浄ノズル3050、及び駆動ユニット3052の複数組に共通に設けられていてもよい。
【0053】
図18に示すように第三実施形態の制御フローでは、第一実施形態のS20,30に代わるS320,S330が実行される。尚、制御フローに関する説明では、当該説明の理解を容易にするために、図15,17に示す構成例の場合を代表的に説明し、他構成例の場合の説明を省略している。
【0054】
図18に示す制御フローのS320において図15の噴射制御ブロック100は、今回の制御周期ωcにおける洗浄期間ΔTに亘って洗浄ノズル3050の噴射方向Niを、駆動角度範囲θの片側へ漸次回転変化させる。このとき回転変化の角速度は、時間に対して一定に制御されてもよいし、例えばセンサ面33の清浄度等に応じて可変制御されてもよい。噴射方向Ni以外の点でS320は、S20に準じて実行される。但し、洗浄期間ΔTは、例えば第一実施形態よりも長い期間等に、設定されるとよい。
【0055】
図18に示す制御フローのS330において図15の優先度付与ブロック120は、噴射方向Niに関する違いに応じて、第一実施形態のS30とは異なる優先度付与処理を実行する。このS330の優先度処理において優先度付与ブロック120は、図19に示すように洗浄信頼度Rを表す信頼度分布Cに基づき、優先度Piを付与する。ここで信頼度分布Cの表す洗浄信頼度Rは、洗浄によるセンサ面33の清浄度であって、センサ面33を通した外界センサ40での視界の良好度であるといえる。
【0056】
第三実施形態の信頼度分布Cは、今回の制御周期ωcにおいて経過時間Tc毎の噴射方向Niに応じて図19,20に示すように変化する、センサ面33上での洗浄ノズル3050に対しての相対位置Xp毎に、洗浄信頼度Rを与える。このとき洗浄信頼度Rは、駆動角度範囲θにおいて噴射方向Niが所定のスイング角度ψずつ変化する毎に、当該変化方向とは反対側へ相対位置Xpが投影線Lpから離間するほど、低くなるように規定される。この規定においても第一実施形態に準じて投影線Lpは、洗浄ノズル3050の噴射軸線Liを含んでセンサ面33に対しては直角に交差する仮想平面(即ち、図19,20の図示面に対する直交面)上において、センサ面33との当該交差線に定義される。
【0057】
こうした第三実施形態では噴射方向Niがスイング角度ψずつ変化したタイミングに定義される各噴射終了タイミングから、経過時間Tcが増大するほど、当該変化方向の反対側では低くなる洗浄信頼度Rを、信頼度分布Cが与えることにもなる。さらに洗浄前となる変化方向の側では、前回洗浄におけるスイング角度ψ毎の各噴射終了タイミングから、経過時間Tcが増大するほど、低い洗浄信頼度Rを与えるように、信頼度分布Cは規定される。尚、図19,20は、センサ面33上での相対位置Xpに対応する画素領域Dpを、模式的にセンサ面33上に重畳させた矩形メッシュ状に表している。そこで図19,20は、各画素領域Dp毎に濃淡の薄い相対位置Xpほど、低い洗浄信頼度Rを示すように描かれている。
【0058】
S330の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、こうして信頼度分布Cが与える洗浄信頼度Rを、優先度Piに変換して画像データDiに付与する。このとき、信頼度分布Cが経過時間Tc毎且つ相対位置Xp毎に表す洗浄信頼度Rは、それら経過時間Tc及び相対位置Xpの各々に対応したフレームFi毎及び画素領域Dp毎での優先度Piへと、変換される。その結果、噴射方向Niがスイング角度ψずつ変化する毎の噴射終了タイミングから経過時間Tcが増大するほど低く、且つ特にセンサ面33上において当該変化方向の反対側では噴射軸線Liの投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど低くなるように、優先度Piが付与されることになる。尚、S330の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、第一実施形態のS30と同様に、優先度Piの付与された画像データDiを、メモリ10に記憶してもよいし、車両2と通信可能な外部センタへ送信して蓄積させてもよい。
【0059】
このように第三実施形態では、噴射方向Niが変化する洗浄ノズル3050からの、噴射が制御される。そこで第三実施形態によると、経過時間Tc毎の噴射方向Niに応じた相対位置Xp毎での洗浄信頼度Rを表す信頼度分布Cに基づき、優先度Piが付与される。これによれば、経過時間Tc毎且つ相対位置Xp毎となる洗浄信頼度Rを、経過時間Tcに対応したフレームFi毎且つ相対位置Xpに対応した画素領域Dp毎の優先度Piに、正確に反映させることができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0060】
さらに第三実施形態では、洗浄流体である洗浄ガスの噴射が噴射方向Niの所定変化毎に終了する噴射終了タイミングは、制御周期ωc毎に制御されることになる。そこで第三実施形態による画像データDiは、噴射方向Niの所定変化毎での噴射終了タイミングから経過時間Tcが増大するほど低くなる優先度Piであって、洗浄ノズル3050の噴射軸線Liをセンサ面33に投影した投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど低くなる優先度Piを、付与される。これによれば、経過時間Tcに対応したフレームFi毎且つ相対位置Xpに対応した画素領域Dp毎の優先度Piを、洗浄ガスでの洗浄特性に合わせて正確に付与することができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0061】
(第四実施形態)
第四実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0062】
図21に示すように第四実施形態の制御フローでは、第一実施形態のS20に代わるS420が実行される。このS420において噴射制御ブロック100は、今回の制御周期ωcにおける洗浄ノズル50からの洗浄流体の噴射として、例えば水又は界面活性剤等といった洗浄液の噴射を、噴射軸線Liを中心とした噴霧状に制御する。噴射する洗浄流体の種類以外の点でS420は、S20に準じて実行される。
【0063】
さらに第四実施形態の制御フローでは、第一実施形態のS30に代わるS430により優先度付与処理が実行される。このS430の優先度付与処理において優先度付与ブロック120は、第一信頼度分布C1を与える信頼度関数の図22に示す係数パラメータcuを、噴射開始タイミングtsからの経過時間Tcが増大するほど、低い洗浄信頼度R1を与えるように規定する。それと共に優先度付与ブロック120は、第一信頼度分布C1を与える信頼度関数の図22に示す係数パラメータcdを、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど、高い洗浄信頼度R1を与えるように規定する。これらの規定は、洗浄液の噴射中及び噴射直後には、センサ面33上に付着する洗浄液によって逆に、当該センサ面33を通した外界センサ40の視界が悪化することに依拠する。即ち、第四実施形態において洗浄信頼度R1は、センサ面33を通した視界の良好度であるといえる。
【0064】
第一信頼度分布C1を与える係数パラメータcu,cdの規定以外の点でS430は、S30に準じて実行される。ここで、S430の優先度付与処理においても優先度付与ブロック120は、洗浄ノズル50の噴射軸線Liをセンサ面33に投影した投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど、低い洗浄信頼度R2を与えるように、第二信頼度分布C2を規定する。この規定は、洗浄流体が洗浄液であっても、投影線Lpから離間するほど、到達量が減少して洗浄性能が落ちることに依拠する。即ち、第四実施形態において洗浄信頼度R2は、洗浄によるセンサ面33の清浄度であって、センサ面33を通した外界センサ40での視界の良好度であるといえる。
【0065】
こうした第四実施形態のS430による優先付与処理の結果は、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど高くなる優先度Piであって、相対位置Xpが投影線Lpから離間するほど低くなる優先度Piを、画像データDiに付与することになる。尚、S430の優先度付与処理における優先度付与ブロック120は、第一実施形態のS30と同様に、優先度Piの付与された画像データDiを、メモリ10に記憶してもよいし、車両2と通信可能な外部センタへ送信して蓄積させてもよい。
【0066】
このような第四実施形態では、洗浄流体である洗浄液の噴射が終了する噴射終了タイミングteは、制御周期ωc毎に制御されることになる。そこで第四実施形態による画像データDiは、噴射終了タイミングteからの経過時間Tcが増大するほど高くなる優先度Piであって、噴射軸線Liをセンサ面33に投影した投影線Lpから相対位置Xpが離間するほど低くなる優先度Piを、付与される。これによれば、経過時間Tcに対応したフレームFi毎且つ相対位置Xpに対応した画素領域Dp毎の優先度Piを、洗浄液での洗浄特性に合わせて正確に付与することができる。故に、画像データDiの信頼性を高めることが可能となる。
【0067】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0068】
変形例において制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両2との間で通信可能な外部センタ又はモバイル端末を構築する、車両2以外のコンピュータであってもよい。変形例において制御装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0069】
変形例において隣接する複数外界センサ40のセンサ面33は、共通のセンサカバー32により形成されていてもよい。変形例においてセンサ面33を形成するセンサカバー32は、外界センサ40自体に設けられていてもよい。変形例においてセンサ面33は、外界センサ40自体のうち、例えばレンズ等の光学部材により形成されていてもよい。
【0070】
変形例において第二実施形態で説明の特徴は、第三及び第四実施形態の各々に組み合わせて適用されてもよい。変形例において運転制御ブロック140によるS10は、省かれてもよい。変形例において運転制御ブロック140によるS40は、省かれてもよい。
【0071】
変形例において制御装置1の適用される車両は、例えば走行路での走行を外部センタからリモート制御可能なドローン等であってもよい。ここまでの説明形態の他、上述の実施形態及び変形例は、プロセッサ12及びメモリ10を少なくとも一つずつ有した半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:制御装置、2:車両、4:センサ系、5,3005:洗浄系、33:センサ面、50,3050:洗浄ノズル、10:メモリ、12:プロセッサ、As:センシングエリア、C:信頼度分布、C1:第一信頼度分布、C2:第二信頼度分布、Di:画像データ、Dp:画素領域、Fi:フレーム、Li:噴射軸線、Lp:投影線、Ni:噴射方向、Pi:優先度、R,R1,R2:信頼度、Tc:経過時間、Xp:相対位置、ωc:制御周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22