(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ドア開閉判定装置及びドア開閉判定方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20240827BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240827BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240827BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G08B21/02
G01B11/00 H
G08B25/00 510M
G08B21/00 R
(21)【出願番号】P 2021201457
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊津野 貴裕
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-137537(JP,A)
【文献】特開平05-340160(JP,A)
【文献】特開2018-011941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00
G08B 21/02
G08B 25/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア及び車室内の前記ドアの周辺が撮像範囲に含まれる撮像器と、
前記撮像器による撮像画像を解析する解析器と、
を備える、ドア開閉判定装置であって、
前記解析器は、
前記撮像画像に含まれる乗員の重心位置を算出する重心算出部と、
前記重心位置が前記ドアの周辺に定められた立入禁止領域に含まれるか否かを判定する判定部と、
を備え、
さらに前記重心位置が前記立入禁止領域に含まれると前記判定部に判定されると、前記車室内に警告を発報する警告器を備え
、
前記解析器は、前記撮像画像に含まれる乗員の各部位の相対位置を推定する姿勢推定を行う姿勢推定部を備え、
前記重心算出部は、前記撮像画像における画像平面上の原点から前記各部位までの距離に、前記部位ごとの重量比率を掛けた値の総和に基づいて、前記画像平面における前記重心位置を求め、
前記姿勢推定部は、前記撮像画像に含まれる乗員の身長情報を取得可能であって、
前記重心算出部は、身長が低いほど乗員の頭部の前記重量比率を増加させる、
ドア開閉判定装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の、ドア開閉判定装置であって、
前記原点は前記車室の床面上に視認可能に設けられ、
前記撮像器の視野及び倍率は固定される、
ドア開閉判定装置。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の、ドア開閉判定装置であって、
前記撮像器は、前記ドアが設けられた乗降口の上方に設けられる、
ドア開閉判定装置。
【請求項4】
車両のドア及び車室内の前記ドアの周辺を撮像器にて撮像する撮像ステップと、
前記撮像器による撮像画像を解析する解析ステップと、
を含む、ドア開閉判定方法であって、
前記解析ステップは、
前記撮像画像に含まれる乗員の重心位置を算出する重心算出ステップと、
前記重心位置が前記ドアの周辺に定められた立入禁止領域に含まれるか否かを判定する判定ステップと、
を含み、
さらに前記判定ステップにおいて前記重心位置が前記立入禁止領域に含まれると判定されると前記車室内に警告を発報する、警告ステップを含
み、
前記解析ステップには、前記撮像画像に含まれる乗員の各部位の相対位置を推定する姿勢推定を行う姿勢推定ステップが含まれ、
前記重心算出ステップでは、前記撮像画像における画像平面上の原点から前記各部位までの距離に、前記部位ごとの重量比率を掛けた値の総和に基づいて、前記画像平面における前記重心位置が求められ、
前記姿勢推定ステップでは、前記撮像画像に含まれる乗員の身長情報を取得可能であって、
前記重心算出ステップでは、身長が低いほど乗員の頭部の前記重量比率が増加される、
ドア開閉判定方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の、ドア開閉判定方法であって、
前記原点は前記車室の床面上に視認可能に設けられ、
前記撮像器の視野及び倍率は固定される、
ドア開閉判定方法。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載の、ドア開閉判定方法であって、
前記撮像器は、前記ドアが設けられた乗降口の上方に設けられる、
ドア開閉判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両ドアの開閉可否を判定する装置及び方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
車両の円滑な運行を図るために、車両には種々のセンサや機器が設けられる。例えば特許文献1では、バス等の乗り合い車両において、車室内のドア領域を撮像するカメラが設けられる。このカメラによる撮像画像により、ドア領域における物体の存否が判定される。ドア領域に物体があると判定されると、移動を促す警告(メッセージ等)が車内に発報される。ドア領域に物体が無いと判定されると、ドア開閉が可能となる。
【0003】
また特許文献2では、車室内の乗員を撮像してその着座姿勢を画像認識し、認識結果に基づいてエアバッグの展開制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-18578号公報
【文献】特開2007-198929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドア近傍に物体が有る場合にドア開閉を禁止するのは、ドア開放時であれば閉動作時の挟まれを防止するためであり、ドア閉止時であれば開動作時の戸袋への引き込まれ及び車外への飛び出しを防止するためである。ここで、ドア近傍の立入禁止領域に乗員がいた場合であっても、その姿勢や態様によっては上記のような挟まれ、引き込まれ、及び車外への飛び出しのおそれのない場合がある。その一方で、ドア近傍の立入禁止領域に乗員がいない場合であっても、その姿勢や態様によっては上記のような挟まれ、引き込まれ、及び車外への飛び出しのおそれがある場合がある。
【0006】
そこで本明細書では、ドア開閉に関する警告の発報を、従来よりも適正に行うことの可能な、ドア開閉判定装置及び方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるドア開閉判定装置は、撮像器及び解析器を備える。撮像器は、車両のドア及び車室内のドアの周辺が撮像範囲に含まれる。解析器は、撮像器による撮像画像を解析する。また解析器は、重心算出部及び判定部を備える。重心算出部は、撮像画像に含まれる乗員の重心位置を算出する。判定部は、重心位置がドアの周辺に定められた立入禁止領域に含まれるか否かを判定する。さらにドア開閉判定装置は警告器を備える。警告器は、重心位置が立入禁止領域に含まれると判定部に判定されると、車室内に警告を発報する。
【0008】
上記構成によれば、乗員の重心位置に基づいて、警告の発報有無が判定される。したがって例えば乗員の体の一部が立入禁止領域に含まれていても、その重心位置が立入禁止領域から外れていれば、警告の発報が免れる。その一方で、乗員が立入禁止領域から外れたところに居たとしても、その重心位置が立入禁止領域に含まれている場合、例えば乗降口側に傾いた不安定な姿勢を取る場合に、警告が発報される。
【0009】
また上記構成において、解析器は姿勢推定部を備えてもよい。姿勢推定部は、撮像画像に含まれる乗員の各部位の相対位置を推定する姿勢推定を行う。この場合において重心算出部は、撮像画像における画像平面上の原点から各部位までの距離に、部位ごとの重量比率を掛けた値の総和に基づいて、画像平面における重心位置を求める。
【0010】
上記構成によれば、乗員の重心位置を精度よく求めることが出来る。
【0011】
また上記構成において、原点は車室の床面上に視認可能に設けられてよい。さらに撮像器の視野及び倍率は固定されてよい。
【0012】
上記構成によれば、撮像器の視野及び倍率が固定されていることから、一度原点の位置を認識できれば、それ以降は例えば撮像画像において原点が乗員や荷物等で隠された場合であっても、原点位置を把握可能となる。
【0013】
また上記構成において撮像器は、ドアが設けられた乗降口の上方に設けられてよい。
【0014】
撮像器から見てドアと乗員が同じ側に配置されていると、撮像画像上では両者が重なり、撮像画像に基づいた乗員の重心が立入禁止領域に含まれ易くなる。撮像器が乗降口上方、つまりドアの直上に設けられることで、撮像器から見てドアと乗員が同じ側に配置されることが避けられる。
【0015】
また上記構成において、姿勢推定部は、撮像画像に含まれる乗員の身長情報を取得可能であってよい。この場合重心算出部は、身長が低いほど乗員の頭部の重量比率を増加させる。
【0016】
乗員の身長が低い程、身体に対する頭部の比率が高くなり、その分、重心は高い位置に置かれる。身長が低いほど乗員の頭部の重量比率を増加させる身長補正を行うことで、より正確に乗員の重心を算出可能となる。
【0017】
また、本明細書で開示されるドア開閉判定方法は、撮像ステップ及び解析ステップを含む。撮像ステップでは、車両のドア及び車室内のドアの周辺が撮像器にて撮像される。解析ステップでは、撮像器による撮像画像が解析される。また解析ステップは、重心算出ステップ及び判定ステップを含む。重心算出ステップでは、撮像画像に含まれる乗員の重心位置が算出される。判定ステップでは、重心位置がドアの周辺に定められた立入禁止領域に含まれるか否かが判定される。さらにドア開閉判定方法は警告ステップを含む。警告ステップでは、判定ステップにおいて重心位置が立入禁止領域に含まれると判定されると車室内に警告が発報される。
【0018】
また上記構成において、解析ステップには、撮像画像に含まれる乗員の各部位の相対位置を推定する姿勢推定を行う姿勢推定ステップが含まれてよい。この場合、重心算出ステップでは、撮像画像における画像平面上の原点から各部位までの距離に、部位ごとの重量比率を掛けた値の総和に基づいて、画像平面における重心位置が求められる。
【0019】
また上記構成において、原点は車室の床面上に視認可能に設けられてよい。また撮像器の視野及び倍率は固定されてよい。
【0020】
また上記構成において、撮像器は、ドアが設けられた乗降口の上方に設けられてよい。
【0021】
また上記構成において、姿勢推定ステップでは、撮像画像に含まれる乗員の身長情報が取得可能であってよい。この場合、重心算出ステップでは、身長が低いほど乗員の頭部の重量比率が増加される。
【発明の効果】
【0022】
本明細書で開示されるドア開閉判定装置及び方法によれば、ドア開閉に関する警告の発報を、従来よりも適正に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るドア開閉判定装置を備える車両を例示する斜視図である。
【
図2】車両のドアが開放されたときの様子を例示する斜視図である。
【
図4】乗降口カメラによる撮像画面(乗員無し)を例示する図である。
【
図5】乗降口カメラによる撮像画面(乗員有り)を例示する図である。
【
図6】天井中央カメラによる撮像画面(乗員有り)を例示する図である。
【
図7】本実施形態に係るドア開閉判定装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図8】本実施形態に係るドア開閉判定装置の機能ブロックを例示する図である。
【
図11】本実施形態に係るドア開閉判定フローを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<車両構成>
図1には、本実施形態に係るドア開閉判定装置を備える車両10が開示される。なお後述されるように、本実施形態に係るドア開閉判定装置は、
図7に例示されるように、乗降口カメラ24(撮像器)、スピーカ25(警告器)、車内監視ECU40(解析器)、及びドア開閉モータ49を含んで構成される。
【0025】
なお、
図1-
図3において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車両幅方向が記号RWで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。幅方向軸RWは右方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。これら3軸は互いに直交する。
【0026】
図1に例示される車両10は、例えば、定員が20名程度のいわゆるミニバスであり、乗合車両として利用される。例えば車両10は、定められた路線を走行し、当該路線沿いに設けられた停留所に停車する。
【0027】
車両10は、例えば図示しない回転電機を駆動源とする電気自動車(BEV、Battery electric Vehicle)であってよい。または、車両10は、内燃機関を駆動源としてもよい。また、車両10は手動運転及び自動運転が切替可能となっている。
【0028】
車両10の側面、つまりRW軸に垂直な面(UP-FR面)には、両開き式のドア12,12が設けられる。ドア12,12は例えば上吊り型のアウトスライドドアであって、ドア12,12の上方には、図示しないレール機構が設けられる。ドア12,12を上吊り型とすることで、ドア12,12の下方に設けられたスロープ板32(
図2参照)との干渉が避けられる。
【0029】
図2に例示されるように、開放時にドア12,12は車幅方向外側に張り出され、さらに車両前後方向に移動される。このようにしてドア12,12が閉止位置から開放位置に移動することで乗降口16が開放される。
【0030】
図3には、車室14内のレイアウトが例示される。車室14は、運転席エリア(図示せず)と乗客エリアとに大別される。
図3には乗客エリアが図示される。乗客エリアには、複数の座席21が設けられる。座席21は、ドア12,12から離隔された場所に設けられる。例えばドア12,12が設けられた側面とは対向する側面と、車室14の後端に座席21が設けられる。
【0031】
乗客エリアのうち、座席21が設けられていない領域は立ち乗り領域になる。当該立ち乗り領域において、車室14の側壁及び天井壁には手摺22が設けられ、また車室14の天井壁には吊り手23が設けられる。例えば手摺22は、ドア12,12の両脇に設けられた側柱26B,26Cと、側柱26B,26Cに車幅方向に対向する側柱26A,26Dに固定され、さらに天井面に沿って延設される。
【0032】
車室床20のドア12,12周辺には、立入禁止領域28が定められる。立入禁止領域28は例えば車室床面上に塗色された矩形状の領域である。立入禁止領域28の車幅方向寸法は、例えばドア12,12から20cm以上50cm以下の範囲に定められる。また立入禁止領域28の車両前後方向寸法は、例えば側柱26Bの前端から側柱26Cの後端までの範囲に定められる。
【0033】
立入禁止領域28は、ドア12,12開閉時の乗員保護の観点から設けられる。例えば上述のように、ドア開放時であれば閉動作時の挟まれを防止し、ドア閉止時であれば開動作時の戸袋への引き込まれ及び車外への飛び出しを防止するために、立入禁止領域28が車室14内のドア12,12の手前に区画される。
【0034】
後述されるように、本実施形態に係るドア開閉判定装置では、乗員の重心位置が立入禁止領域28に含まれるか否かによって、警告の発報可否が判定される。したがって乗員の体の一部が立入禁止領域28に含まれていても、警告が発報されない場合(重心が立入禁止領域28外にある場合)があり、また反対に乗員の体が立入禁止領域28に全く含まれていなくても、警告が発報される場合(重心が立入禁止領域28内にある場合)がある。このような観点から、立入禁止領域28は、乗員に対して立入を禁止するおおまかな目安を示す役割を有する。
【0035】
また後述される
図9のように、車室床20に設けられた立入禁止領域28には、乗員60Aの重心位置を求める際に利用される、撮像画像における画像平面上の原点Oが設けられる。原点Oは乗降口カメラ24に視認可能に設けられる。例えば立入禁止領域28の車両前方側の角部が原点Oに設定される。
【0036】
<撮像器>
図3を参照して、車室14には撮像器である乗降口カメラ24が設けられる。乗降口カメラ24はドア12,12が設けられた乗降口16の上方、言い換えると天井壁の車幅方向側端に設けられる。例えば乗降口カメラ24は、例えばその光軸が車室床面に対して垂直となるように位置決めされ、また立入禁止領域28と対向するように設置される。
【0037】
乗降口カメラ24は例えばCMOSやCCD等の撮像デバイスを含み、車室14内の静止画及び動画の少なくとも一方を撮像可能となっている。例えば乗降口カメラ24はドーム型の360度カメラ(全方位カメラ)であってよい。
【0038】
さらに、乗降口カメラ24は、奥行方向の測定が可能な赤外線計測機能を備えた、いわゆるRGB-Dカメラであってよい。後述されるように、乗降口カメラ24の奥行情報を用いて、撮像画面上の乗員の身長が求められる。求められた身長情報は、重心位置を算出する際の重量比率の調整に用いられる。
【0039】
乗降口カメラ24は、車両10のドア12,12及び車室14内のドア12,12周辺を撮像範囲に含む。
図4には、乗降口カメラ24による撮像画像が例示される。この撮像画像に示されるように、乗降口カメラ24の視野には立入禁止領域28の全体が含まれる。
【0040】
図3を参照して、乗降口カメラ24は乗降口16近傍に設置されており、乗降口カメラ24の光軸とドア12,12との車幅方向間隔は例えば15cm未満に近接される。このように、乗降口カメラ24がドア12,12に寄せられた形で配置されるので、乗降口カメラ24とドア12,12との間に乗員が立つ、言い換えると、乗降口カメラ24から見て、同じ側に乗員とドア12,12が配置されるといったことが起こりにくくなる。乗降口カメラ24の撮像画像は、例えば
図5のように、乗員60Aの左足は立入禁止領域28に踏み込んでいるが、乗降口カメラ24の光軸を挟んで、ドア12,12とは反対側に乗員60Aが立つような撮像画像となる。
【0041】
これに対して例えば
図6には、乗降口カメラ24の代わりに、天井の車幅方向中央に撮像器を置いたときの撮像画像が例示される。この撮像画面では、撮像器から見て乗員60Bとドア12,12とが同じ側に配置され、画面上では、乗員60Bの体の大部分が立入禁止領域28及びドア12,12と重複する。
【0042】
後述されるように、本実施形態に係る姿勢推定フローでは、乗員60Bの車室空間上の位置推定(3次元空間位置推定)は行われずに、専ら撮像画像平面上の座標点を用いて乗員60Bの重心位置が求められる。そのため、
図6のように乗員60Bの大部分が立入禁止領域28と画像上で重複する場合、乗員60Bは立入禁止領域28から外れた位置に立っているにも関わらず、乗員60Bの重心位置が立入禁止領域28内に含まれると判定される可能性が高くなる。
【0043】
このように、本実施形態に係るドア開閉判定装置の撮像器を、乗降口16に設置された乗降口カメラ24とすることで、乗員の重心位置が立入禁止領域28に含まれるか否かの判定を高い精度で行うことが出来る。
【0044】
また乗降口カメラ24は、視野及び倍率が固定されてよい。例えば乗降口カメラ24は、
図4に例示されるような、乗員がいない状態で立入禁止領域28及びその周辺を撮像したときの倍率及び視野が維持される。このように乗降口カメラ24の視野及び倍率が固定されることで、原点O及び立入禁止領域28の撮像画像平面上の位置が固定される。したがって例えば乗客や荷物によって、撮像画像中に原点Oが写っていなかったり、立入禁止領域28の一部が隠れる場合であっても、これらの位置を把握可能となる。
【0045】
<解析器>
図7には、本実施形態に係るドア開閉判定装置のハードウェア構成が例示される。当該装置は、乗降口カメラ24(撮像器)、スピーカ25(警告器)、車内監視ECU40(解析器)、及びドア開閉モータ49を備える。
【0046】
解析器である車内監視ECU40は、乗降口カメラ24による撮像画像を解析する。車内監視ECU40は、例えば車室14内の運転席エリアと乗客エリアの境界部分に設置される。車内監視ECU40は、例えばコンピュータから構成される。車内監視ECU40は、演算装置のCPU41と、記憶手段としてのシステムメモリ42及びストレージデバイス43を備える。ストレージデバイス43は例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等の非一過性の記憶装置であってよい。また車内監視ECU40は、乗降口カメラ24、スピーカ25、ドア開閉モータ49等の外部機器との情報の入出力を管理する入出力コントローラ44を備える。
【0047】
さらに車内監視ECU40は、乗降口カメラ24が撮像した撮像画像を処理する手段として、GPU45(Graphics Processing Unit)及びフレームメモリ46を備える。さらに、車内監視ECU40は、GPU45により処理済みの画像を表示する表示部を備えてもよい。
【0048】
GPU45は、画像処理用の演算装置であって、後述する乗客寄り掛かり判定や荷物寄り掛かり判定を行う際に主に稼働される。フレームメモリ46は、乗降口カメラ24により撮像されGPU45により演算処理された画像を記憶する記憶装置である。
【0049】
図8には、車内監視ECU40の機能ブロックが例示される。この機能ブロック図は、例えば車内監視ECU40のストレージデバイス43に記憶されるか、または、DVD等の、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されたプログラムを、CPU41が実行することで構成される。
【0050】
車内監視ECU40は、処理機能部として、キーポイント推定部51(姿勢推定部)、重心算出部52、判定部53、ドア制御部54、及びドアフラグ設定部57を備える。さらに車内監視ECU40は、記憶部として、学習済みモデル記憶部55及び重量比率記憶部56を備える。学習済みモデル記憶部55には、キーポイント推定部51による姿勢推定を行うための教師データが記憶される。重量比率記憶部56には、重心算出部52による重心算出を行うための重量比率が記憶される。
【0051】
キーポイント推定部51(姿勢推定部)は、乗降口カメラ24による撮像画像から乗員(人物)を認識し、さらにその乗員の姿勢を推定する。姿勢推定では乗員の腕や足等の各部位の相対位置が推定される。姿勢推定は既知の技術であることから、ここでは簡単に説明される。
【0052】
例えばキーポイント推定部51の一部として、ツェ カオ(Zhe Cao)らの作成した、姿勢推定用のソフトウェアであるOpenPoseが利用される。このソフトウェアでは、撮像画像内の頭や首といった部位を示す「キーポイント」の位置が推定される。例えば
図9に例示されるように、撮像画像中の乗員60Aの各部位に対応する、頭部P1、首部P2、右手P3、右肘P4、右肩P5、左手P6、左肘P7、左肩P8、右腰P9、右膝P10、右足首P11、左腰P12、左膝P13、及び左足首P14の合計14点のキーポイントが推定される。
【0053】
各キーポイントの推定に当たり、学習済みモデル記憶部55には、キーポイント別に画像認識用のニューラルネットワークが実装される。例えばこのニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)から構成される。
【0054】
さらに学習済みモデル記憶部55には、推定された各キーポイントを繋ぎ合わせるアルゴリズムが記憶される。
【0055】
キーポイント推定部51(姿勢推定部)は、乗降口カメラ24からドア12,12近傍の車内撮像画像を取得すると、
図9に例示されるように、学習済みモデル記憶部55から乗員60Aの各キーポイントP1~P14を認識する。さらにキーポイント推定部51は、これらのキーポイントを直線で結ぶ。さらに
図10に例示されるように、画像平面上の原点からキーポイントP1~P14までの距離を示す座標点情報が、キーポイント推定部51から重心算出部52に送られる。
【0056】
重心算出部52は、撮像画像に含まれキーポイントが推定された乗員の重心位置を求める。本実施形態に係る重心算出部52が求める重心とは、いわゆる質量中心とは異なり、撮像画面上の姿勢中心が求められる。
【0057】
重心算出部52は、重量比率記憶部56に記憶された、各キーポイントの重量比率と、
図10に例示される、乗員60Aの各キーポイント座標から、重心Gの座標を求める。重量比率wi(i=1~14)はキーポイントPiごと(体の部位ごと)に定められる。
【0058】
一例として、頭部のキーポイントP1に対して重量比率w1=0.15が定められる。また首のキーポイントP2に対して重量比率w2=0.05が定められる。手のキーポイントP3,P6に対して重量比率w3=0.01、w6=0.01が定められる。肘のキーポイントP4,P7に対して重量比率w4=0.05、w7=0.05が定められる。肩のキーポイントP5,P8に対して重量比率w5=0.03、w8=0.03が定められる。腰のキーポイントP9,P12に対して重量比率w9=0.25、w12=0.25が定められる。膝のキーポイントP10,P13に対して重量比率w10=0.05、w13=0.05が定められる。さらに足先のキーポイントP11,P14に対して重量比率w11=0.01、w14=0.01が定められる。これらの重量比率P1-P14の総和は1.0となるように定められる。
【0059】
図10を参照して、具体的には、座標平面上の横軸をx軸とし、縦軸をy軸とすると、重心Gの座標(x
g,y
g)は下記数式(1)に基づいて求められる。
【0060】
【0061】
例えば
図10の例では、数式(1)を用いて、重心算出部52は、乗員60Aの重心位置座標G(-8,62)を求める。求められた重心位置は判定部53に送られる。
【0062】
<ドア開閉判定フロー>
図11には、本実施形態に係る、ドア開閉判定装置により実行される、ドア開閉判定フローが例示される。例えばこのフローは、車両10が停留所に到着した時点から出発する時点まで、繰り返し実行される。また、
図11に例示される各ステップのうち、ステップS22を除くステップは、いずれも解析器である車内監視ECU40によって実行されることから、ステップS10-S20を総称して「解析ステップ」と呼んでもよい。
【0063】
乗降口カメラ24は例えば車両運行時、常時車室14内を撮像する(撮像ステップ)。この撮像画像はキーポイント推定部51(姿勢推定部)に送信される(S10)キーポイント推定部51は、上述したように、取得した撮像画像内のキーポイント推定を実行する(姿勢推定ステップ、S12)。推定された各キーポイントP1-P14の座標(画像平面座標)が重心算出部52に送信される。
【0064】
重心算出部52は、上述したような重心位置の算出を行う(重心算出ステップS14)。算出された重心位置座標は、判定部53に送信される。判定部53は、重心位置座標が、立入禁止領域28内に含まれるか否かを判定する(判定ステップ、S16)。例えば判定部53には、立入禁止領域28の、撮像画像平面上の位置情報が記憶される。この位置情報に照らし、判定部53は、重心位置座標が立入禁止領域28内に含まれるか否かを判定する。
【0065】
判定部53により、重心位置座標が立入禁止領域28内に含まれると判定された場合、ドアフラグ設定部57はドア開閉フラグを0に設定する(S20)。ドア開閉フラグは、ドア開閉モータ49の駆動可否を定める値であって、ドア開閉フラグが0に設定されると、ドア制御部54はドア開閉モータ49を停止状態とする。つまり乗降口16が閉止されているときには閉止状態が維持され、乗降口16が開放されているときには、開放状態が維持される。
【0066】
また、ドア制御部54は、ドア開閉フラグの設定値0を受けて、警告器であるスピーカ25に警告発報指令を送信する。当該指令を受けてスピーカ25は車室14内に警告を発報する(警告ステップ、S22)。例えばスピーカ25から、立入禁止領域から離れる旨のアナウンス音声が再生される。その後フローが起点まで戻る。
【0067】
一方、ステップS16において、重心位置座標が立入禁止領域28には含まれないと判定部53により判定されると、ドアフラグ設定部57はドア開閉フラグを1に設定する(S18)。ドア開閉フラグの設定値1を受けて、ドア制御部54は、ドア開閉モータ49を駆動可能とする。
【0068】
例えばドア開閉フラグが1に設定されている状態で、車両10の運転制御ECU(図示せず)から、または遠隔のコントロールセンターから、車両10が停留所前で停車した旨の信号を受信すると、ドア制御部54は、ドア開閉モータ49に開放指令を出力して、閉止状態のドア12,12を開放させる。またドア開閉フラグが1に設定されている状態で、車両10の運転制御ECU(図示せず)から、または遠隔のコントロールセンターから、停留所から車両10が出発する旨の信号を受信すると、ドア制御部54は、ドア開閉モータ49に閉止指令を出力して、開放状態のドア12,12を閉止させる。
【0069】
このように、本実施形態に係るドア開閉判定装置では、乗員が単に立入禁止領域28に進入したか否かを判定する代わりに、乗員の重心位置と立入禁止領域28との位置関係に基づいて、ドア12,12の開閉可否が判定される。
【0070】
<重量比率の調整>
上述した実施形態では、各キーポイントの重量率が固定値であったが、本実施形態に係るドア開閉判定装置及び方法は、この形態に限定されない。
【0071】
例えば撮像画像内の乗客の身長に応じて、重量比率が変更されてよい。一般的に、身長が低くなるほど頭部の重量比率が相対的に高くなり、重心は高くなる。例えば子供は大人よりも重心が高い。このことから、重心算出部52は、乗員の身長が低い程、頭部の重量比率を増加させるように、各重量比率を調整してもよい。
【0072】
上述のように、乗降口カメラ24が奥行情報も取得可能なGRB-Dカメラである場合に、乗員の身長を取得可能となる。すなわち、乗降口カメラ24の光軸は車室床20に対して垂直に向けられているので、乗降口カメラ24が取得した奥行情報は高さ情報として利用できる。例えば、乗降口カメラ24の車室床20からの取り付け高さHから奥行値Dを引くことで、車室床20からの高さ値を得ることが出来る。
【0073】
例えばキーポイント推定部51(姿勢推定部)によって乗員60A(
図9)の頭部のキーポイントP1が推定される。このキーポイントP1に対応する画素の高さ値が、乗員60Aの身長となる。
【0074】
この身長情報は重心算出部52に送信される。重心算出部52は、取得した身長情報に基づいて各重量比率を変更する。例えば重心算出部52は、総和1.0を維持した状態で、頭部の重量比率を増加させる。このような身長に対する重量比率の調整を行うことで、より正確に乗員の重心を求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
10 車両、12 ドア、14 車室、16 乗降口、20 車室床、24 乗降口カメラ(撮像器)、25 スピーカ(警告器)、28 立入禁止領域、40 車内監視ECU(解析器)、49 ドア開閉モータ、51 キーポイント推定部(姿勢推定部)、52 重心算出部、53 判定部、54 ドア制御部、55 学習済みモデル記憶部、56 重量比率記憶部、57 ドアフラグ設定部。