(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】スイッチの駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240827BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20240827BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240827BHJP
H02M 1/38 20070101ALI20240827BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/695
H03K17/16 L
H02M1/38
(21)【出願番号】P 2021207491
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】徳舛 彰
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084970(JP,A)
【文献】特開2007-185024(JP,A)
【文献】特開2019-068691(JP,A)
【文献】特開2020-156141(JP,A)
【文献】特開2021-175326(JP,A)
【文献】特開2020-178418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/695
H03K 17/16
H02M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列接続された上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を駆動するスイッチの駆動装置(40)において、
上下アームの前記スイッチのうち一方のスイッチであるオフ側スイッチのゲートから電荷を放電することにより、前記オフ側スイッチをオフする放電部(70,74,75,80,84,85)と、
前記オフ側スイッチのオンオフを判定する判定部(70,80)と、
前記判定部により前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、前記オフ側スイッチのゲート電荷の放電速度を、前記オフ側スイッチのゲートから電荷が放電され始めてから、前記オフ側スイッチがオフしたと判定されるまでの前記放電速度よりも高くする急速放電部(70,76,80,86)と、
前記判定部により前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、上下アームの前記スイッチのうち前記オフ側スイッチとは対向アーム側のスイッチであるオン側スイッチのゲートに電荷を充電することにより、前記オン側スイッチをオンする充電部(70,72,73,80,82,83)と、
を備える、スイッチの駆動装置。
【請求項2】
前記放電部は、前記オフ側スイッチのスイッチング指令がオフ指令に切り替わったと判定した場合、前記オフ側スイッチのゲートから電荷の放電を開始し、
前記充電部は、
前記オン側スイッチのスイッチング指令がオン指令であると判定した場合であっても、前記判定部により前記オフ側スイッチがオンしていると判定された場合、前記オン側スイッチのゲートに電荷の充電を行わず、
前記オン側スイッチのスイッチング指令がオン指令であると判定して、かつ、前記判定部により前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、前記オン側スイッチのゲートに電荷を充電し始める、請求項1に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項3】
前記オフ側スイッチのゲート電圧を取得する取得部(70,80)を備え、
前記判定部は、取得された前記ゲート電圧が前記オフ側スイッチの閾値電圧以上
である場合、前記オフ側スイッチがオンし
ていると判定し、取得された前記ゲート電圧が前記閾値電圧未満になった場合、前記オフ側スイッチがオフしたと判定する、請求項
2に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項4】
前記急速放電部は、
オフすることにより前記オフ側スイッチのゲート及び前記オフ側スイッチの低電位側端子の間を遮断し、オンすることにより前記オフ側スイッチのゲート及び低電位側端子の間を短絡するオフ保持スイッチ(76,86)を有し、
前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、前記オフ保持スイッチをオンすることにより、前記放電速度を、前記オフ側スイッチのゲートから電荷が放電され始めてから、前記オフ側スイッチがオフしたと判定されるまでの前記放電速度よりも高くする、請求項
2又は3に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項5】
前記判定部は、高圧領域に設けられ、
前記放電部は、前記高圧領域に設けられ、上アームの前記スイッチのゲートから電荷を放電する上アーム放電部(70,74,75)と、下アームの前記スイッチのゲートから電荷を放電する下アーム放電部(80,84,85)とを有しており、
前記充電部は、前記高圧領域に設けられ、上アームの前記スイッチのゲートに電荷を充電する上アーム充電部(70,72,73)と、下アームの前記スイッチのゲートに電荷を充電する下アーム充電部(80,82,83)とを有しており、
前記高圧領域に設けられ、前記判定部により上アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたことを示す信号を、前記下アーム放電部及び前記下アーム充電部に伝達する第1伝達部(41)と、
前記高圧領域に設けられ、前記判定部により下アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたことを示す信号を、前記上アーム放電部及び前記上アーム充電部に伝達する第2伝達部(42)と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、上下アームの
前記スイッチのスイッチング指令を生成し、前記上アーム放電部、前記下アーム放電部、前記上アーム充電部及び前記下アーム充電部に前記スイッチング指令を送信する指令生成部(50)と、を備え、
前記上アーム放電部は、上アームの前記スイッチ
の前記スイッチング指令
としてオフ指令を受信した場合、前記オフ側スイッチとしての上アームの前記スイッチのゲートから電荷を放電し、
前記下アーム放電部は、下アームの前記スイッチ
の前記スイッチング指令
としてオフ指令を受信した場合、前記オフ側スイッチとしての下アームの前記スイッチから電荷を放電し、
前記上アーム充電部は、上アームの前記スイッチ
の前記スイッチング指令
としてオン指令を受信し、かつ、下アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第2伝達部から受信した場合、前記オン側スイッチとしての上アームの前記スイッチのゲートに電荷を充電し、
前記下アーム充電部は、下アームの前記スイッチ
の前記スイッチング指令
としてオン指令を受信し、かつ、上アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第1伝達部から受信した場合、前記オン側スイッチとしての下アームの前記スイッチのゲートに電荷を充電する、請求項
2~4のいずれか1項に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項6】
前記指令生成部は、前記スイッチング指令によって設定される期間であり、上下アームの前記スイッチの双方をオフ操作させる期間であるデッドタイム目標値を、前記オフ側スイッチのオフ指令を送信してから、前記オフ側スイッチのゲート電圧が前記オフ側スイッチの閾値電圧を下回るまでの期間よりも短く設定する、請求項
5に記載のスイッチの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、互いに直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動装置は、上下アームのスイッチのうち一方のオフ側スイッチがオフしたと判定された場合、上下アームのスイッチ双方がオフされる期間であるデッドタイムを挟みつつ、オフ側スイッチとは対向アームのオン側スイッチをオンさせる。デッドタイムは、上下アームのスイッチ双方がオンされてしまう上下アーム短絡の発生を抑制すべく設けられている。
【0005】
例えば各スイッチのスイッチング状態の切り替えに伴い発生する損失を低減すべく、デッドタイムが短縮されることが望ましい。しかし、デッドタイムが過度に短縮されることにより、上下アーム短絡が発生してしまう懸念がある。
【0006】
本発明は、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムを短縮することができるスイッチの駆動装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いに直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置において、上下アームの前記スイッチのうち一方のスイッチであるオフ側スイッチのゲートから電荷を放電することにより、前記オフ側スイッチをオフする放電部と、前記オフ側スイッチのオンオフを判定する判定部と、前記判定部により前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、前記オフ側スイッチのゲート電荷の放電速度を、前記オフ側スイッチのゲートから電荷が放電され始めてから、前記オフ側スイッチがオフしたと判定されるまでの前記放電速度よりも高くする急速放電部と、前記判定部により前記オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、上下アームの前記スイッチのうち前記オフ側スイッチとは対向アーム側のスイッチであるオン側スイッチのゲートに電荷を充電することにより、前記オン側スイッチをオンする充電部と、を備える。
【0008】
本発明によれば、オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、放電速度が、オフ側スイッチのゲートから電荷が放電され始めてから、オフ側スイッチがオフしたと判定されるまでの放電速度よりも高くされる。これにより、オフ側スイッチがオフしたと判定された後において、オフ側スイッチのゲート電圧が急速に低下する。その結果、オフ側スイッチがオフしたと判定された後、オフ側スイッチに流れる電流の流通が迅速に遮断される。
【0009】
また、オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、オン側スイッチのゲートに電荷が充電される。つまり、対向アーム側のオフ側スイッチのオフ判定の後にオン側スイッチがオンされるため、上下アーム短絡の発生が抑制される。
【0010】
オフ側スイッチがオフしたと判定されたことをトリガにして、オフ側スイッチの電流遮断とオン側スイッチのゲート充電とが実施されるため、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
【
図5】制御装置が実施する制御の一例を示すタイムチャート。
【
図6】第2実施形態に係る制御装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る駆動装置は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、インバータを備える制御システムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。
【0013】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ15を備えている。回転電機10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
【0014】
インバータ15は、スイッチングデバイス部20を備えている。スイッチングデバイス部20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、NチャネルMOSFETが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLは、ボディダイオードである上,下アームダイオードDH,DLを有している。
【0015】
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるドレインには、高電位側電気経路22Hを介して、直流電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるソースには、低電位側電気経路22Lを介して、直流電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、直流電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
【0016】
インバータ15は、コンデンサ23を備えている。コンデンサ23は、高電位側電気経路22Hと、低電位側電気経路22Lとを電気的に接続している。なお、コンデンサ23は、インバータ15の外部に設けられていてもよい。
【0017】
インバータ15は、制御装置40を備えている。以下では、
図2を用いて、制御装置40の構成について説明する。
【0018】
制御装置40は、マイコン50、上,下アームドライバ60,61及び上,下アーム絶縁素子MH,MLを備えている。制御装置40は、インバータ15に接続される高圧領域HVと、高圧領域HVとは電気的に絶縁された低圧領域LVとを有する。マイコン50は、低圧領域LVに設けられており、上,下アームドライバ60,61は高圧領域HVに設けられており、上,下アーム絶縁素子MH,MLは高圧領域HV及び低圧領域LVを跨いで設けられている。
【0019】
マイコン50は、CPUを備えている。マイコン50は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、上,下アームドライバ60,61に対する上,下アームスイッチング指令INH,INLを生成する指令生成部として機能する。制御量は、例えばトルクである。なお、マイコン50は、各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとが交互にオンされるように、上,下アームスイッチング指令INH,INLを生成する。本実施形態において、各スイッチング指令INH,INLは、論理Hによってオン指令であることを示し、論理Lによってオフ指令であることを示す。
【0020】
上アーム絶縁素子MHは、マイコン50と上アームドライバ60との間を絶縁しつつ、上アームスイッチング指令INHを上アームドライバ60へと伝達する。下アーム絶縁素子MLは、マイコン50と下アームドライバ61との間を絶縁しつつ、下アームスイッチング指令INLを下アームドライバ61へと伝達する。本実施形態において、各絶縁素子MH,MLは磁気カプラ又はフォトカプラである。
【0021】
上アームドライバ60は、上アーム駆動部70を備えている。上アーム駆動部70には、マイコン50により生成された上アームスイッチング指令INHが入力される。
【0022】
上アームドライバ60は、上アーム定電圧源71、上アーム充電スイッチ72及び上アーム充電抵抗体73を備えている。本実施形態において、上アーム充電スイッチ72は、PチャネルMOSFETである。上アーム充電スイッチ72のソースは、上アーム定電圧源71に接続されている。上アーム充電スイッチ72のドレインは、上アーム充電抵抗体73の第1端に接続されている。上アーム充電抵抗体73の第2端は、上アームスイッチSWHのゲートに接続されている。上アーム定電圧源71から出力される上アーム駆動電圧VdHは、上アームスイッチSWHのゲートに供給される電源電圧となる。本実施形態において、上アーム駆動部70,上アーム充電スイッチ72及び上アーム充電抵抗体73が「上アーム充電部」に相当する。
【0023】
上アームドライバ60は、上アーム放電抵抗体74及び上アーム放電スイッチ75を備えている。本実施形態において、上アーム放電スイッチ75は、NチャネルMOSFETである。上アーム放電抵抗体74の第1端は、上アームスイッチSWHのゲートに接続されており、上アーム放電抵抗体74の第2端は、上アーム放電スイッチ75のドレインに接続されている。上アーム放電スイッチ75のソースは、上アームスイッチSWHのソースに接続されている。本実施形態において、上アーム駆動部70,上アーム放電抵抗体74及び上アーム放電スイッチ75が「上アーム放電部」に相当する。
【0024】
下アームドライバ61は、下アーム駆動部80を備えている。下アーム駆動部80には、マイコン50により生成された下アームスイッチング指令INLが入力される。
【0025】
下アームドライバ61は、下アーム定電圧源81、下アーム充電スイッチ82及び下アーム充電抵抗体83を備えている。本実施形態において、下アーム充電スイッチ82は、PチャネルMOSFETである。下アーム充電スイッチ82のソースは、下アーム定電圧源81に接続されている。下アーム充電スイッチ82のドレインは、下アーム充電抵抗体83の第1端に接続されている。下アーム充電抵抗体83の第2端は、下アームスイッチSWLのゲートに接続されている。下アーム定電圧源81から出力される下アーム駆動電圧VdLは、下アームスイッチSWLのゲートに供給される電源電圧となる。本実施形態において、下アーム駆動部80,下アーム充電スイッチ82及び下アーム充電抵抗体83が「下アーム充電部」に相当する。
【0026】
下アームドライバ61は、下アーム放電抵抗体84及び下アーム放電スイッチ85を備えている。本実施形態において、下アーム放電スイッチ85は、NチャネルMOSFETである。下アーム放電抵抗体84の第1端は、下アームスイッチSWLのゲートに接続されており、下アーム放電抵抗体84の第2端は、下アーム放電スイッチ85のドレインに接続されている。下アーム放電スイッチ85のソースは、下アームスイッチSWLのソースに接続されている。本実施形態において、下アーム駆動部80,下アーム放電抵抗体84及び下アーム放電スイッチ85が「下アーム放電部」に相当する。
【0027】
制御装置40は、各スイッチSWH,SWL双方がオフされる期間であるデッドタイムDTを挟みつつ、各スイッチSWH,SWLを交互にオンさせる。デッドタイムDTは、各スイッチSWH,SWL双方がオフされる期間であり、各スイッチSWH,SWL双方がオンされてしまう上下アーム短絡の発生を抑制すべく設けられる。
【0028】
デッドタイムDTでは、ある相の上アームダイオードDHと、他の相の下アームダイオードDLとを含む閉回路に還流電流が流れる。各ダイオードDH,DLに電流が流れることに伴い発生する損失は、オン状態の各スイッチSWH,SWLに電流が流れることに伴い発生する損失よりも大きい。そのため、各スイッチSWH,SWLの切り替えに伴い発生する損失を低減すべく、デッドタイムDTを短縮することが望ましい。また、インバータ15の電圧利用率を向上する観点からも、デッドタイムDTを短縮することが望ましい。
【0029】
デッドタイムDTを短縮すべく、マイコン50によって設定されるデッドタイム目標値DT*を短く設定することが考えられる。デッドタイム目標値DT*は、各スイッチング指令INH,INL双方の論理がLとされる期間である。しかし、上下アーム短絡の発生を確実に抑制する観点から、デッドタイム目標値DT*の設定にはマージンをもたせる必要がある。詳しくは、論理Lの各スイッチング指令INH,INLが出力されてから、各スイッチSWH,SWLがオフされるまでのターンオフ期間は、各スイッチSWH,SWLに流れる電流、各スイッチSWH,SWLの温度及び各スイッチSWH,SWLの製造ばらつき等によって変化する。そのため、上下アーム短絡の発生を抑制するには、上述した要因によりターンオフ期間が変化することを考慮して、デッドタイム目標値DT*の設定にマージンをもたせる必要がある。デッドタイム目標値DT*の設定にマージンをもたせるほど、上下アーム短絡の発生する可能性が低減される一方、デッドタイムDTが過度に長くなる可能性がある。
【0030】
図3,4に、比較例の制御を示す。
図3は、デッドタイム目標値DT*が過度に長く設定された場合の比較例であり、
図4は、デッドタイム目標値DT*が過度に短く設定された場合の比較例である。
図3,4において、(a)は各スイッチング指令INH,INLの論理を示し、(b)は各スイッチSWH,SWLのゲート電圧VgH,VgLの推移を示し、(c)は各スイッチSWH,SWLに流れるドレイン電流IdH,IdLの推移を示す。
【0031】
時刻t1において、上アームスイッチング指令INHの論理がLに切り替えられる。これにより、上アーム駆動部70は、上アーム充電スイッチ72をオフにして、かつ、上アーム放電スイッチ75をオンにすることにより、上アームスイッチSWHのゲートから電荷を放電させ始める。そのため、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが低下し始める。
【0032】
時刻t2において、下アームスイッチング指令INLの論理がHに切り替えられる。これにより、下アーム駆動部80は、下アーム充電スイッチ82をオンにして、かつ、下アーム放電スイッチ85をオフにすることにより、下アームスイッチSWLのゲートに電荷を充電させ始める。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgL及びドレイン電流IdLが上昇し、下アームスイッチSWLがオンされる。
【0033】
図3の比較例では、デッドタイム目標値DT*が過度に長く設定されることにより上下アーム短絡の発生は抑制される一方、デッドタイムDTが長くなり、スイッチの切り替えに伴い発生する損失が増大してしまう懸念がある。
図4の比較例では、デッドタイム目標値DT*が過度に短く設定されることによりデッドタイムDTは短縮される一方、上下アーム短絡が発生し、スイッチの信頼性が低下してしまう懸念がある。
【0034】
そこで、制御装置40は、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムDTを短縮すべく、以下の構成を備える。
【0035】
先の
図2の説明に戻り、上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのオンオフを判定する。本実施形態では、上アーム駆動部70には、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが入力される。上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが上アームスイッチSWHの判定電圧未満か否かを判定する。本実施形態では、上アームスイッチSWHの判定電圧は、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthに設定される。上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthは、上アームスイッチSWHのスイッチング状態がオン及びオフのうち一方から他方へと切り替わるゲート電圧VgHである。
【0036】
詳しくは、上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが上アームスイッチSWHの判定電圧以上になったと判定した場合、上アームスイッチSWHがオンしたと判定し、論理Lの上アーム伝達信号SgHを出力する。一方、上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが上アームスイッチSWHの判定電圧未満になったと判定した場合、上アームスイッチSWHがオフしたと判定し、論理Hの上アーム伝達信号SgHを出力する。上アーム伝達信号SgHは、制御装置40の高圧領域HVに設けられている第1伝達部41を介して、下アーム駆動部80に入力される。本実施形態において、第1伝達部41は磁気カプラ又はフォトカプラである。
【0037】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのオンオフを判定する。本実施形態では、下アーム駆動部80には、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが入力される。下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが下アームスイッチSWLの判定電圧未満か否かを判定する。本実施形態では、下アームスイッチSWLの判定電圧は、下アームスイッチSWLの閾値電圧Vthに設定される。下アームスイッチSWLの閾値電圧Vthは、下アームスイッチSWLのスイッチング状態がオン及びオフのうち一方から他方へと切り替わるゲート電圧VgLである。
【0038】
詳しくは、下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが下アームスイッチSWLの判定電圧以上になったと判定した場合、下アームスイッチSWLがオンしたと判定し、論理Lの下アーム伝達信号SgLを出力する。一方、下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが下アームスイッチSWLの判定電圧未満になったと判定した場合、下アームスイッチSWLがオフしたと判定し、論理Hの下アーム伝達信号SgLを出力する。下アーム伝達信号SgLは、制御装置40の高圧領域HVに設けられている第2伝達部42を介して、上アーム駆動部70に入力される。本実施形態において、第2伝達部42は磁気カプラ又はフォトカプラである。本実施形態において、上,下アーム駆動部70,80が「取得部」及び「判定部」に相当する。
【0039】
各ドライバ60,61は、オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、オフ側スイッチのゲート電荷を放電させる放電速度を、オフ側スイッチのゲートから電荷が放電され始めてから、オフ側スイッチがオフしたと判定されるまでの放電速度よりも高くさせる急速放電部を備える。ここで、オフ側スイッチは、各スイッチSWH,SWLのうち論理Lのスイッチング指令が生成されているアームのスイッチであり、オン側スイッチは、各スイッチSWH,SWLのうち論理Hのスイッチング指令が生成されているアームのスイッチである。本実施形態では、急速放電部として、上アームドライバ60は上アームオフ保持スイッチ76を備え、下アームドライバ61は下アームオフ保持スイッチ86を備えている。
【0040】
上アームオフ保持スイッチ76は、NチャネルMOSFETである。上アームオフ保持スイッチ76のドレインは、上アームスイッチSWHのゲートに接続されており、上アームオフ保持スイッチ76のソースは、上アームスイッチSWHのソースに接続されている。上アームオフ保持スイッチ76のゲートは、上アーム駆動部70に接続されている。
【0041】
上アームオフ保持スイッチ76は、論理Hの上アーム伝達信号SgHによってオンされ、論理Lの上アーム伝達信号SgHによってオフされる。すなわち、上アームオフ保持スイッチ76は、上アームスイッチSWHがオフしたと判定された場合にオンされ、上アームスイッチSWHがオンしたと判定された場合にオフされる。上アームオフ保持スイッチ76がオンされることにより、上アームスイッチSWHのゲート及びソースが短絡される。これにより、上アームオフ保持スイッチ76を介して上アームスイッチSWHのゲート電荷を放電させる場合の放電速度は、上アーム放電抵抗体74及び上アーム放電スイッチ75を介して上アームスイッチSWHのゲート電荷を放電させる場合の放電速度よりも高くなる。
【0042】
下アームオフ保持スイッチ86は、NチャネルMOSFETである。下アームオフ保持スイッチ86のドレインは、下アームスイッチSWLのゲートに接続されており、下アームオフ保持スイッチ86のソースは、下アームスイッチSWLのソースに接続されている。下アームオフ保持スイッチ86のゲートは、下アーム駆動部80に接続されている。
【0043】
下アームオフ保持スイッチ86は、論理Hの下アーム伝達信号SgLによってオンされ、論理Lの下アーム伝達信号SgLによってオフされる。すなわち、下アームオフ保持スイッチ86は、下アームスイッチSWLがオフしたと判定された場合にオンされ、下アームスイッチSWLがオンしたと判定された場合にオフされる。下アームオフ保持スイッチ86がオンされることにより、下アームスイッチSWLのゲート及びソースが短絡される。これにより、下アームオフ保持スイッチ86を介して下アームスイッチSWLのゲート電荷を放電させる場合の放電速度は、下アーム放電抵抗体84及び下アーム放電スイッチ85を介して下アームスイッチSWLのゲート電荷を放電させる場合の放電速度よりも高くなる。
【0044】
なお、急速放電部としての各オフ保持スイッチ76,86は、セルフターンオンの発生を抑制するためのスイッチでもある。セルフターンオンについて補助的に説明すると、オン側スイッチがオンされることに起因して、例えばオフ側スイッチの寄生容量を介してオフ側スイッチのゲートに電荷が供給されることにより、オフ側スイッチのゲート電圧が閾値電圧Vth以上になり得る。この場合、オフ側スイッチをオフに維持したいにもかかわらず、オフ側スイッチが誤ってオンに切り替えられてしまう現象であるセルフターンオンが発生し得る。各オフ保持スイッチ76,86がオンされることにより、オフ側スイッチのゲート及びソースが短絡される。これにより、セルフターンオンの発生が抑制される。
【0045】
上アーム駆動部70は、上アームスイッチング指令INHの論理がHであり、かつ、下アーム伝達信号SgLの論理がHである場合、上アーム充電スイッチ72をオンにして、かつ、上アーム放電スイッチ75及び上アームオフ保持スイッチ76をオフにする。これにより、上アームスイッチSWHのゲートに電荷が充電される。その結果、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが閾値電圧Vth以上となり、上アームスイッチSWHがオンされる。
【0046】
上アーム駆動部70は、上アームスイッチング指令INH及び下アーム伝達信号SgLのうち少なくとも一方の論理がLである場合、上アーム充電スイッチ72及び上アームオフ保持スイッチ76をオフにして、かつ、上アーム放電スイッチ75をオンにする。これにより、上アームスイッチSWHのゲートから電荷が放電され始める。
【0047】
上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが上アームスイッチSWHの判定電圧未満になったと判定した場合、上アーム伝達信号SgHの論理をHに切り替える。上アーム伝達信号SgHの論理がHとされるため、上アームオフ保持スイッチ76がオンされる。
【0048】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチング指令INLの論理がHであり、かつ、上アーム伝達信号SgHの論理がHである場合、下アーム充電スイッチ82をオンにして、かつ、下アーム放電スイッチ85及び下アームオフ保持スイッチ86をオフにする。これにより、下アームスイッチSWLのゲートに電荷が充電される。その結果、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが判定電圧以上となり、下アームスイッチSWLがオンされる。
【0049】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチング指令INL及び上アーム伝達信号SgHのうち少なくとも一方の論理がLである場合、下アーム充電スイッチ82及び下アームオフ保持スイッチ86をオフにして、かつ、下アーム放電スイッチ85をオンにする。これにより、下アームスイッチSWLのゲートから電荷が放電され始める。
【0050】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが下アームスイッチSWLの判定電圧未満になったと判定した場合、下アーム伝達信号SgLの論理をHに切り替える。下アーム伝達信号SgLの論理がHとされるため、下アームオフ保持スイッチ86がオンされる。
【0051】
図5に、制御装置40の制御の一例を示す。
図5において、(a)~(c)は先の
図3,4(a)~(c)に対応しており、(d)は上アーム伝達信号SgHの論理を示し、(e)は上アーム放電スイッチ75のオンオフを示し、(f)は上アームオフ保持スイッチ76のオンオフを示し、(g)は下アーム充電スイッチ82のオンオフを示す。なお、
図5では、上アームスイッチSWHがオフ側スイッチであり、下アームスイッチSWLがオン側スイッチである場合の制御の一例を示す。
【0052】
時刻t1において、上アームスイッチング指令INHの論理がLとされるとともに、下アームスイッチング指令INLの論理がHとされる。すなわち、本実施形態では、デッドタイム目標値DT*が0に設定されている。これにより、デッドタイム目標値DT*がターンオフ期間toffよりも短くなる。ターンオフ期間toffは、オフ側スイッチのスイッチング指令の論理がLに切り替えられてから、オフ側スイッチのゲート電圧が閾値電圧を下回るまでの期間である。上アームスイッチング指令INHの論理がLとされることにより、上アーム放電スイッチ75がオンされる。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが低下し始める。なお、上アーム伝達信号SgHの論理がLであるため、上アームオフ保持スイッチ76及び下アーム充電スイッチ82はオフされる。
【0053】
時刻t2において、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが判定電圧を下回る。これにより、上アーム伝達信号SgHの論理がHに切り替えられる。上アーム伝達信号SgHの論理がHとされるため、上アームオフ保持スイッチ76がオンされる。これにより、上アームスイッチSWHのゲート及びソースが短絡される。この場合、上アームスイッチSWHのゲート電荷の放電速度が、ターンオフ期間toffにおける上アームスイッチSWHのゲート電荷の放電速度よりも高くなる。そのため、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgH及びドレイン電流IdHが急速に低下する。
【0054】
また、時刻t2において、下アームスイッチング指令INLの論理がHとされ、かつ、上アーム伝達信号SgHの論理がHとされるため、下アーム充電スイッチ82がオンされる。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが上昇し始める。
【0055】
この場合、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが急速に低下するとともに、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが上昇し始める。これにより、上アームスイッチSWHのドレイン電流IdHが0とされた後、速やかに下アームスイッチSWLのドレイン電流IdHが流れ始める。そのため、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムDTを短縮することができる。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0057】
オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、オフ側スイッチのゲート及びソースが短絡される。この場合、オフ側スイッチのゲート電荷の放電速度が、ターンオフ期間toffにおけるオフ側スイッチのゲート電荷の放電速度よりも高くなる。これにより、オフ側スイッチのゲート電圧が急速に低下する。その結果、オフ側スイッチがオフしたと判定された後、オフ側スイッチのドレイン電流の流通が迅速に遮断される。
【0058】
また、オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、オン側スイッチのゲートに電荷が充電される。つまり、対向アーム側のオフ側スイッチのオフ判定の後にオン側スイッチがオンされるため、上下アーム短絡の発生が抑制される。
【0059】
オフ側スイッチがオフしたと判定されたことをトリガにして、オフ側スイッチのドレイン電流遮断とオン側スイッチのゲート充電とが実施されるため、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムDTを短縮することができる。
【0060】
オフ側スイッチのゲート電圧が閾値電圧を下回ることにより、オフ側スイッチのスイッチング状態がオン状態からオフ状態へと切り替わる。そこで、本実施形態では、オフ側スイッチのオフ判定に用いられる判定電圧が、オフ側スイッチの閾値電圧に設定されている。これにより、オフ側スイッチがオフしたことを的確に判定することができる。
【0061】
オフ側スイッチがオフしたと判定された場合、オフ側スイッチと同じアームのオフ保持スイッチがオンされる。これにより、セルフターンオンの発生が抑制されるため、上下アーム短絡の発生を的確に抑制することができる。
【0062】
高圧領域HVに設けられた各伝達部41,42により、高圧領域HVに設けられた各駆動部70,80間で各伝達信号Sg1,Sg2の伝達が行われる。これにより、低圧領域LVに設けられたマイコン50が各スイッチSWH,SWLのオンオフを判定するよりも、各伝達信号Sg1,Sg2の伝達遅延を低減することができる。
【0063】
デッドタイム目標値DT*が、ターンオフ期間toffよりも短く設定される。これにより、オフ側スイッチがオフしたと判定されるよりも前に、予めオン側スイッチのスイッチング指令の論理がHとされる。そのため、オフ側スイッチがオフしたと判定されることにより、速やかにオン側スイッチのゲートに電荷を充電させ始めることができる。その結果、デッドタイムDTを的確に短縮することができる。
【0064】
オフ側スイッチのオフ判定条件として、オフ側スイッチのゲート電圧が閾値電圧を下回ることが用いられる。これにより、各スイッチSWH,SWLに流れる電流、各スイッチSWH,SWLの温度及び各スイッチSWH,SWLの製造ばらつき等の要因によりターンオフ期間toffが変化しても、オフ側スイッチのオフ判定を的確に行うことができる。そのため、オフ側スイッチのターンオフ期間toffが変化しても、オフ側スイッチのオフ判定をトリガにして、オフ側スイッチのドレイン電流遮断とオン側スイッチのゲート充電とを的確に行うことができる。
【0065】
上アーム伝達信号SgHの論理がHに切り替えられた後も上アーム放電スイッチ75のオンが継続される。これにより、上アーム放電スイッチ75及び上アームオフ保持スイッチ76の双方がオンされる期間が生じる。そのため、上アーム放電スイッチ75及び上アームオフ保持スイッチ76の双方がオフされる期間が一時的に発生して、上アームスイッチSWHのゲート電荷の放電が停止してしまうことを抑制することができる。
【0066】
下アーム伝達信号SgLの論理がHに切り替えられた後も下アーム放電スイッチ85のオンが継続される。これにより、下アーム放電スイッチ85及び下アームオフ保持スイッチ86の双方がオンされる期間が生じる。そのため、下アーム放電スイッチ85及び下アームオフ保持スイッチ86の双方がオフされる期間が一時的に発生して、下アームスイッチSWLのゲート電荷の放電が停止してしまうことを抑制することができる。
【0067】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、急速放電部の構成が変更される。
図6に、制御装置40の構成を示す。なお、
図6において、先の
図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0068】
上アームドライバ60は、上アーム放電抵抗体74に代えて、上アーム可変抵抗体77を備えている。上アーム可変抵抗体77の第1端は上アームスイッチSWHのゲートに接続されており、上アーム可変抵抗体77の第2端は上アーム放電スイッチ75のドレインに接続されている。上アーム可変抵抗体77は、論理Hの上アーム伝達信号SgHが入力された場合に、論理Lの上アーム伝達信号SgHが入力された場合よりも、上アーム可変抵抗体77の抵抗値を小さくする。上アーム可変抵抗体77は、例えば、抵抗値の異なる抵抗体を複数備えるものであり、上アームスイッチSWHのゲート及び上アーム放電スイッチ75のドレインに接続される抵抗体を切り替えることにより、抵抗値を変更する。上アーム可変抵抗体77の抵抗値が小さくされることにより、上アームスイッチSWHのゲート電荷の放電速度が高くされる。
【0069】
下アームドライバ61は、下アーム放電抵抗体84に代えて、下アーム可変抵抗体87を備えている。下アーム可変抵抗体87の第1端は下アームスイッチSWLのゲートに接続されており、下アーム可変抵抗体87の第2端は下アーム放電スイッチ85のドレインに接続されている。下アーム可変抵抗体87は、論理Hの下アーム伝達信号SgLが入力された場合に、論理Lの下アーム伝達信号SgLが入力された場合よりも、下アーム可変抵抗体87の抵抗値を小さくする。下アーム可変抵抗体87は、例えば、抵抗値の異なる抵抗体を複数備えるものであり、下アームスイッチSWLのゲート及び下アーム放電スイッチ85のドレインに接続される抵抗体を切り替えることにより、抵抗値を変更する。下アーム可変抵抗体87の抵抗値が小さくされることにより、下アームスイッチSWLのゲート電荷の放電速度が高くされる。
【0070】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0071】
上アームスイッチSWHの判定電圧は、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthに設定されることに限られない。上アームスイッチSWHの判定電圧は、制御装置40内の信号遅延を考慮して、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthよりも高く設定されてもよい。また、上アームスイッチSWHの判定電圧は、上下アーム短絡の発生する可能性を低減すべく、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthよりも低く設定されてもよい。なお、下アームスイッチSWLの判定電圧は、上アームスイッチSWHの判定電圧と同様に、下アームスイッチSWLの閾値電圧Vthよりも高く設定されてもよいし、下アームスイッチSWLの閾値電圧Vthよりも低く設定されてもよい。
【0072】
・上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHに基づいて、上アームスイッチSWHのオンオフ判定を行うことに限られない。例えば、上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのドレイン電流IdHを取得し、取得したドレイン電流IdHが所定の閾値以上の場合、上アームスイッチSWHがオンしたと判定し、取得したドレイン電流IdHが所定の閾値未満の場合、上アームスイッチSWHがオフしたと判定してもよい。また、上アーム駆動部70は、上アームスイッチSWHのドレイン電流IdHに代えて、上アームスイッチSWHのドレイン電圧に基づいて、上アームスイッチSWHのオンオフ判定を行ってもよい。
【0073】
下アーム駆動部80は、上アーム駆動部70と同様に、下アームスイッチSWLのドレイン電流IdL又はドレイン電圧に基づいて、下アームスイッチSWLのオンオフ判定を行ってもよい。
【0074】
また、例えば、上アーム駆動部70は、上アームスイッチング指令INHの論理がLに切り替えられてからの時間をカウントすることにより、上アームスイッチSWHのオンオフ判定を行ってもよい。この場合、上アーム駆動部70は、上アームスイッチング指令INHの論理がLに切り替えられてからの経過時間が所定期間以内の場合、上アームスイッチSWHがオンしていると判定し、経過時間が所定期間になった場合、上アームスイッチSWHがオフに切り替えられたと判定すればよい。なお、下アーム駆動部80は、上アーム駆動部70と同様に、下アームスイッチング指令INLの論理がLに切り替えられてからの経過時間に基づいて、下アームスイッチSWLのオンオフ判定を行ってもよい。
【0075】
・上アームオフ保持スイッチ76のドレインが上アームスイッチSWHのゲートに直接接続され、上アームオフ保持スイッチ76のソースが上アームスイッチSWHのソースに直接接続されることに限られない。上アームオフ保持スイッチ76のドレイン及びソースのうち少なくとも一方に、上アーム放電抵抗体74の抵抗値よりも小さい抵抗値の抵抗体が接続されてもよい。この場合、上アームオフ保持スイッチ76がオンされることにより、上アームオフ保持スイッチ76及び上アームオフ保持スイッチ76に接続された抵抗体を介して、上アームスイッチSWHのゲート電荷が放電される。また、下アームオフ保持スイッチ86は、上アームオフ保持スイッチ76と同様に、下アーム放電抵抗体84の抵抗値よりも小さい抵抗値の抵抗体に接続されていてもよい。
【0076】
・放電速度の変更態様としては、放電抵抗体の抵抗値を変更するものに限らない。例えば、上アーム駆動部70は、上アーム放電スイッチ75のソースに接続された放電先の電位を変更することにより、放電速度を変更してもよい。具体的には、放電先を負電圧源としてもよい。負電圧源の出力電圧は、上アームスイッチSWHのソース電圧よりも低い電圧にされるとよい。この場合、負電圧源の出力電圧が低くされるほど放電速度を高くすることができる。また、下アーム駆動部80は、上アーム駆動部70と同様に、下アーム放電スイッチ85のソースに接続された放電先の電位を変更することにより、放電速度を変更してもよい。
【0077】
また、例えば、上アーム駆動部70は、上アーム放電スイッチ75のゲート電圧を変更することにより、放電速度を変更してもよい。この場合、上アーム放電スイッチ75のゲート電圧が高くされるほど、上アーム放電スイッチ75のオン抵抗が低くなるため、放電速度を高くすることができる。なお、下アーム駆動部80は、上アーム駆動部70と同様に、下アーム放電スイッチ85のゲート電圧を変更することにより、放電速度を変更してもよい。
【0078】
・マイコン50は、オフ側スイッチのスイッチング指令を論理Lに切り替えると同時にオン側スイッチのスイッチング指令を論理Hに切り替えることに代えて、オフ側スイッチのスイッチング指令を論理Lに切り替えた後、オン側スイッチのスイッチング指令を論理Hに切り替えてもよい。この場合、デッドタイム目標値DT*がオフ側スイッチのターンオフ期間toffよりも短くなるように、各スイッチング指令INH,INLが設定されるとよい。なお、各スイッチング指令INH,INLは、デッドタイム目標値DT*がターンオフ期間toffより短くなるように設定されることに代えて、デッドタイム目標値DT*がターンオフ期間toffよりも長くなるように設定されてもよい。
【0079】
また、マイコン50は、オフ側スイッチのスイッチング指令を論理Lに切り替えるのに先立ち、オン側スイッチのスイッチング指令を論理Hに切り替えてもよい。
【0080】
・第1実施形態において、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgHが上アームスイッチSWHの判定電圧未満であると判定された場合の制御を変更してもよい。詳しくは、上アーム伝達信号SgHの論理がHに切り替えられた場合、上アーム放電スイッチ75がオフされてもよい。
【0081】
また、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgLが下アームスイッチSWLの判定電圧未満であると判定された場合の制御を変更してもよい。詳しくは、下アーム伝達信号SgLの論理がHに切り替えられた場合、下アーム放電スイッチ85がオフされてもよい。
【0082】
・インバータ15を構成する半導体スイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、IGBTであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。また、各スイッチには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されていればよい。
【0083】
・制御システムが搭載される移動体は車両に限らず、例えば航空機又は船舶であってもよい。また、制御システムの搭載先は移動体に限らない。
【符号の説明】
【0084】
40…制御装置、60,61…上,下アームドライバ、70,80…上,下アーム駆動部、72,82…上,下アーム充電スイッチ、73,83…上,下アーム充電抵抗体、74,84…上,下アーム放電抵抗体、75,85…上,下アーム放電スイッチ、76,86…上,下アームオフ保持スイッチ。