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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240827BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240827BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240827BHJP
   B01D 53/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01J20/20 B
B01J20/34 B
B01D53/06 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021518805
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027691
(87)【国際公開番号】W WO2022014012
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
(72)【発明者】
【氏名】館山 佐夢
(72)【発明者】
【氏名】林 敏明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-308814(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101255(WO,A1)
【文献】特開2013-111552(JP,A)
【文献】特開2014-147863(JP,A)
【文献】特開2014-147865(JP,A)
【文献】特開2004-105806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが被処理ガスに含有された有機溶剤の吸脱着が可能な第1吸着材を含み、前記第1吸着材への前記有機溶剤の吸着と水蒸気による前記第1吸着材からの前記有機溶剤の脱着とを交互に行う少なくとも3つの処理槽と、複数の前記処理槽から選択された前記処理槽に前記水蒸気を導入する水蒸気供給部と、残りの複数の前記処理槽を直列多段接続する連結流路と、当該直列多段接続された複数の前記処理槽の上流に配置された前記処理槽から導入された前記被処理ガスを、当該直列多段接続された複数の前記処理槽の前記第1吸着材によって前記有機溶剤が吸着された第一処理ガスとして、当該直列多段接続された複数の前記処理槽の下流に配置された前記処理槽から排出する取出し流路と、前記連結流路に希釈ガスを供給する希釈ガス供給流路と、を有する有機溶剤回収装置と、
前記有機溶剤の吸着と脱着が可能な第2吸着材を含み、前記第2吸着材によって前記取出し流路からの前記第一処理ガスに含まれる前記有機溶剤を吸着し、第二処理ガスを排出する吸着部と、前記第2吸着材に吸着された前記有機溶剤を前記第2吸着材から脱着して濃縮ガスとして排出する脱着部と、を有する有機溶剤濃縮装置と、
前記濃縮ガスを前記有機溶剤回収装置に戻す戻し流路と、を備え、
前記第2吸着材は、活性炭素繊維不織布を含み、
前記活性炭素繊維不織布は、繊維径が11μm以上120μm以下、トルエン吸着率が25wt.%以上75wt.%以下、合計目付が1200g/m以上4000g/m以下であり、
前記希釈ガスの温度が前記連結流路を流れる前記被処理ガスの温度よりも高くなるように前記希釈ガスを加熱する加熱器をさらに備える、有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記有機溶剤濃縮装置は、前記第2吸着材が筒軸回りに回転する円盤状の吸着ロータに配置されている、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記有機溶剤濃縮装置は、前記第2吸着材が筒軸回りに回転する中空円柱状のロータの前記筒軸回りの周方向に複数配置されている、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤を含有するガスから有機溶剤を回収するシステムが知られている。例えば、特開2014-147863号公報(以下、「特許文献1」という。)には、3つの処理槽と、被処理ガス供給部と、連結流路と、水蒸気供給部と、希釈ガス供給流路と、を備えるガス処理装置が開示されている。
【0003】
被処理ガス供給部は、有機溶剤を含有する被処理ガス(原ガス)を各処理槽に供給する。各処理槽は、被処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着可能な吸着材(活性炭素繊維等)を有している。連結流路は、3つの処理槽の2つを直列に連結している。
【0004】
具体的に、第1吸着工程で用いられる処理槽で処理された被処理ガスは、連結流路を通じて第2吸着工程で用いられる処理槽へ導入され、そこでさらに被処理ガスから有機溶剤が回収される。第2吸着工程で処理された後のガスは、清浄空気として系外に取り出される。水蒸気供給部は、吸着材に吸着された有機溶剤を当該吸着材から脱着するための水蒸気を各処理槽に供給する。水蒸気供給部は、第1吸着工程及び第2吸着工程で用いられていない残りの処理槽に水蒸気を供給する。
【0005】
つまり、特許文献1に記載されるガス処理装置では、2つの処理槽において連続的に吸着工程が実施され、その間、残りの処理槽において、脱着工程が実施される。脱着工程が実施された処理槽は、次に、第2吸着工程で用いられ、その後、第1吸着工程で用いられる。希釈ガス供給流路は、連結流路に希釈ガス(外気や窒素ガス等)を供給するための流路である。希釈ガスは、脱着工程後の第2吸着工程で用いられる処理槽の吸着材を乾燥させるために当該処理槽に供給される。
【0006】
特開2014-240052号公報(以下、「特許文献2」という。)には、2つの処理槽を有する第1吸脱着装置と、第1吸脱着装置のいずれかの処理槽から排出された被処理ガスに含まれる有機溶剤を回収する第2吸脱着装置と、を備える有機溶剤回収システムが開示されている。
【0007】
各処理槽は、被処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着可能な第1吸脱着素子(活性炭素繊維等)を有している。各処理槽では、吸着工程と脱着工程とが交互に行われる。第2吸脱着装置は、処理槽から排出された被処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着可能な第2吸脱着素子を有している。
【0008】
第2吸脱着装置は、第2吸脱着素子によって被処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着する第1処理部と、第2吸脱着素子に吸着された有機溶剤を第2吸脱着素子から脱着する第2処理部と、を有している。第2処理部から排出された被処理ガスは、第1吸脱着装置の各処理槽に被処理ガス(原ガス)を供給する流路に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-147863号公報
【文献】特開2014-240052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のガス処理装置では、2つの処理槽において連続的に吸着工程が実施されることにより、有機溶剤の除去率が高められている。特許文献2に記載の有機溶剤回収システムでは、第1吸脱着装置のいずれかの処理槽と第2吸脱着装置の第1処理部とにおいて連続的に吸着工程が実施されることにより、有機溶剤の除去率が高められている。しかしながら、このような有機溶剤回収システムにおいて、さらに有機溶剤の除去率を高めたいというニーズがある。
【0011】
このようなニーズに対応させて、例えば、特許文献1に記載されるように2つの処理槽において連続的に吸着工程を実施した後、特許文献2に記載されるように第2吸着材によってさらに吸着工程を実施することが考えられる。この場合、第2吸着材から脱着された有機溶剤を含む被処理ガスは、処理槽に被処理ガス(原ガス)を供給する流路に戻される。
【0012】
しかしながら、その場合、第1吸着工程で用いられる処理槽には、原ガスと第2吸着材から脱着された有機溶剤を含む被処理ガスとの双方が供給され、第2吸着工程で用いられる処理槽には、さらに希釈ガスが追加的に供給されることになるため、各処理槽に供給される風量が増大する。この風量に合わせて各処理槽を大型化させて設計する必要があるため、設備全体としても大型化が不可避である。
【0013】
本開示の目的は、有機溶剤の除去率の向上の際の設備全体の大型化を抑制可能な有機溶剤回収システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の有機溶剤回収システムのある局面に従うと、それぞれが被処理ガスに含有された有機溶剤の吸脱着が可能な第1吸着材を含み、上記第1吸着材への上記有機溶剤の吸着と水蒸気による上記第1吸着材からの上記有機溶剤の脱着とを交互に行う2つの処理槽と、2つの上記処理槽から選択された一方の上記処理槽に上記水蒸気を導入する水蒸気供給部と、他方の上記処理槽から導入された上記被処理ガスを、当該他方の上記処理槽の上記第1吸着材によって上記有機溶剤が吸着された第一処理ガスとして、当該他方の上記処理槽から排出する取出し流路と、を有する有機溶剤回収装置と、上記有機溶剤の吸着と脱着が可能な第2吸着材を含み、上記第2吸着材によって上記取出し流路からの上記第一処理ガスに含まれる上記有機溶剤を吸着し、第二処理ガスを排出する吸着部と、上記第2吸着材に吸着された上記有機溶剤を上記第2吸着材から脱着して濃縮ガスとして排出する脱着部と、を有する有機溶剤濃縮装置と、上記濃縮ガスを上記有機溶剤回収装置に戻す戻し流路と、を備え、上記第2吸着材は、活性炭素繊維不織布を含み、上記活性炭素繊維不織布は、繊維径が11μm以上120μm以下、トルエン吸着率が25wt.%以上75wt.%以下、合計目付が200g/m以上6000g/m以下である。
【0015】
上記有機溶剤濃縮装置は、上記第2吸着材が筒軸回りに回転する円盤状の吸着ロータに配置されている。
【0016】
上記有機溶剤濃縮装置は、上記第2吸着材が筒軸回りに回転する中空円柱状のロータの上記筒軸回りの周方向に複数配置されている。
【0017】
上記有機溶剤回収装置は、少なくとも3つの上記処理槽を備え、上記水蒸気供給部は、複数の上記処理槽から選択された上記処理槽に上記水蒸気を導入し、残りの複数の上記処理槽を直列多段接続する連結流路をさらに備える。
【0018】
上記有機溶剤回収装置は、上記連結流路に希釈ガスを供給する希釈ガス供給流路をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
この開示によれば、有機溶剤の回収率の向上の際の設備全体の大型化を抑制可能な有機溶剤回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
図2】第1処理槽で第1吸着工程が行われ、第2処理槽で脱着工程が行われている状態におけるガスの流れを概略的に示す図である。
図3】実施の形態2の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
図4】実施の形態2の吸着体の縦断面図である。
図5図4に示すV-V線に沿う吸着体の断面図である。
図6図5に示す吸着ロータの要部の拡大断面図である。
図7】実施の形態3の有機溶剤回収システムにおけるガスの流れを概略的に示す図である。
図8】実施の形態4の有機溶剤回収システムにおけるガスの流れを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示に基づいた各実施の形態の有機溶剤回収システムについて、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、有機溶剤回収システム1は、有機溶剤回収装置100と、有機溶剤濃縮装置200と、送り流路300と、戻し流路400と、を備えている。有機溶剤回収システム1は、有機溶剤回収装置100において有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤の除去および回収を行う。その後、有機溶剤回収装置100から排出された第一処理ガスに対して有機溶剤濃縮装置200においてさらに有機溶剤の除去および濃縮を行うとともに、有機溶剤濃縮装置200から排出された濃縮ガスを戻し流路400を通じて再度有機溶剤回収装置100に戻すシステムである。
【0023】
有機溶剤とは、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、O-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、フロン-112、フロン-113、HCFC、HFC、臭化プロピル、ヨウ化ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、O-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アクリロニトリル、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシド等を指す。
【0024】
有機溶剤回収装置100は、被処理ガスから有機溶剤を除去および回収する設備である。被処理ガスは、有機溶剤回収装置100の系外に設けられた被処理ガス供給源(図示略)から有機溶剤回収装置100に供給される。有機溶剤回収装置100は、2つの処理槽101,102と、被処理ガス供給流路L10と、取出し流路L31,L32と、水蒸気供給流路L41,L42と、有機溶剤回収流路L51,L52と、セパレータ120と、再供給流路L60と、を有している。
【0025】
各処理槽101,102は、有機溶剤の吸着と有機溶剤の脱着とが可能な第1吸着材101A,102Aを有している。第1吸着材101A,102Aとして、粒状の活性炭、ハニカム状の活性炭、ゼオライト、活性炭素繊維があるが、活性炭素繊維からなるものが好ましく用いられる。各処理槽101,102は、被処理ガス供給口への被処理ガスの供給/非供給を切替える開閉ダンパーV101、V102、第1吸着材101A,102A通過後の処理ガス排出口の排出/非排出を切替える開閉ダンパーV201、V202を有している。
【0026】
各処理槽101,102では、第1吸着材101A,102Aによる有機溶剤の吸着と第1吸着材101A,102Aからの有機溶剤の脱着とが交互に行われる。詳細は、次のとおりである。2つの処理槽101,102のうちの一方の処理槽において、被処理ガス供給源から供給された被処理ガスから第1吸着材により有機溶剤を吸着する吸着工程が行われるとともに、他方の処理槽において、第1吸着材から有機溶剤を脱着する脱着工程が行われる。各処理槽101,102では、脱着工程と吸着工程とが順次繰り返し行われる。図1では、第1処理槽101において吸着工程が行われ、第2処理槽102において脱着工程が行われている状態が示されている。
【0027】
被処理ガス供給流路L10は、各処理槽101,102に被処理ガスを供給するための流路である。被処理ガス供給流路L10の上流側の端部は、被処理ガス供給源に接続されている。被処理ガス供給流路L10には、送風機F1が設けられている。被処理ガス供給流路L10のうち送風機F1の上流側の部位には、各処理槽101,102に流入する被処理ガスの温度および湿度を所望の範囲に調整するためのクーラC1及びヒータH1が設けられている。これらの装置機器は被処理ガスの押し圧、温度および湿度に応じて適宜設置すれば良い。
【0028】
被処理ガス供給流路L10は、各処理槽101,102に被処理ガスを供給する分岐流路L11,L12を有している。分岐流路L11には、開閉弁V11が設けられている。分岐流路L12には、開閉弁V12が設けられている。
【0029】
取出し流路L31,L32は、各処理槽101,102で吸着処理された後の被処理ガスである第一処理ガスを取り出すための流路である。取出し流路L31,L32は、各処理槽101,102における処理ガス排出口に接続されている。第1取出し流路L31には、開閉弁V31が設けられている。第2取出し流路L32には、開閉弁V32が設けられている。各取出し流路L31,L32は、互いに合流する合流流路L30を有している。
【0030】
水蒸気供給流路L41,L42は、第1吸着材101A,102Aに吸着された有機溶剤を第1吸着材101A,102Aから脱着するための水蒸気を各処理槽101,102に供給するための流路である。水蒸気は、水蒸気供給部110から供給される。水蒸気供給部110は、有機溶剤回収装置100内に設けられてもよいし、有機溶剤回収装置100の系外に設けられてもよい。
【0031】
第1水蒸気供給流路L41は、水蒸気供給部110と第1処理槽101とを接続している。第1水蒸気供給流路L41には、開閉弁V41が設けられている。第2水蒸気供給流路L42は、水蒸気供給部110と第2処理槽102とを接続している。第2水蒸気供給流路L42には、開閉弁V42が設けられている。
【0032】
有機溶剤回収流路L51,L52は、第1吸着材101A,102Aから脱着された有機溶剤を含む水蒸気(脱着ガス)を回収するための流路である。各有機溶剤回収流路L51,L52は、各処理槽101,102に接続されている。各有機溶剤回収流路L51,L52は、互いに合流する合流流路L50を有している。合流流路L50には、凝縮器122が設けられている。凝縮器122は、合流流路L50を流れる脱着ガスを冷却することによって当該脱着ガスを凝縮させ、凝縮液(脱着ガスの凝縮によって生成された水分と液相の有機溶剤との混合液)を排出させる。
【0033】
セパレータ120は、合流流路L50の下流側の端部に設けられている。セパレータ120には、凝縮液が流入する。その後、セパレータ120内において、凝縮液は、分離排水の液相(有機溶剤を若干含むこともある水蒸気の凝縮水)と回収溶剤の液相とに相分離し、回収溶剤が有機溶剤回収装置100の系外に取出される。セパレータ120の上部には、気相の有機溶剤が存在する空間(ベントガス)が形成される。
【0034】
再供給流路L60は、セパレータ120と被処理ガス供給流路L10とを接続する流路である。再供給流路L60の上流側の端部は、セパレータ120の上部(セパレータ120のうち気相の有機溶剤が存在する部位)に接続されている。再供給流路L60の下流側の端部は、被処理ガス供給流路L10のうちクーラC1の上流側の部位に接続されている。このため、セパレータ120内に存在する気相の有機溶剤は、再供給流路L60及び被処理ガス供給流路L10を通じて再び各処理槽101,102に供給されるのが好ましい。
【0035】
排水処理設備130は、分離排水に含まれる有機溶剤を除去する設備である。セパレータ120の分離排水の液相より供給され、分離排水から有機溶剤を除去して処理水を有機溶剤回収装置100の系外に排出する。具体的な排水処理設備130は分離排水を曝気処理することで分離排水中に含まれる有機溶剤を揮発させて、有機溶剤を含む曝気ガスと処理水とに分離する曝気設備などが挙げられる。曝気ガス曝気ガス供給流路L61を介して被処理ガス供給流路L10のうちクーラC1の上流側の部位に供給される。図示しないが、曝気ガス供給流路には曝気ガス中の水分を除去する目的で除湿手段を設けても良い。
【0036】
次に、有機溶剤濃縮装置200について説明する。有機溶剤濃縮装置200は、有機溶剤回収装置100から排出された第一処理ガスからさらに有機溶剤を除去する設備である。有機溶剤濃縮装置200は、吸着体201を有している。
【0037】
吸着体201は、合流流路L30を通じて排出された第一処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着可能な第2吸着材201Aを有している。吸着体201は、第2吸着材201Aによって第一処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着する吸着部202と、第2吸着材201Aに吸着された有機溶剤を第2吸着材201Aから脱着する脱着部203と、を有している。第一処理ガスを吸着部202に通過させる事でさらに有機溶剤が除去された清浄ガスである第二処理ガスを排出する事ができ、吸着完了後に脱着部203にて第一処理ガスよりも小風量の加熱ガスを通過させて第2吸着材201Aに吸着された有機溶剤を脱着させることで、有機溶剤が濃縮された濃縮ガスを排出させる。
【0038】
本実施の形態では、吸着体201は、円盤状(ディスク型)のロータである。吸着部202と脱着部203との間を吸着体201が回転することによって吸着と脱着を切替えている。この吸着体201の構造は、特許文献2の記載内容と同様である。
【0039】
送り流路300は、有機溶剤回収装置100から有機溶剤濃縮装置200に被処理ガスを送るための流路である。送り流路300の上流側の端部は、合流流路L30に接続されている。送り流路300の下流側の端部は、吸着体201の吸着部202に接続されている。すなわち、送り流路300は、第一処理ガスを、吸着部202に送るための流路である。
【0040】
送り流路300には、送風機F3が設けられている。送り流路300のうち送風機F3の上流側の部位には、吸着部202に流入する第一処理ガスの湿度を所望の範囲に調整するためのクーラC2及びヒータH2が設けられている。
【0041】
戻し流路400は、有機溶剤濃縮装置200から有機溶剤回収装置100に濃縮ガスを戻すための流路である。戻し流路400は、脱着部203と被処理ガス供給流路L10とを接続している。具体的に、戻し流路400の下流側の端部は、被処理ガス供給流路L10のうちクーラC1及びヒータHの上流側の部位に接続されている。
【0042】
戻し流路400には、送風機F5が設けられている。送風機F5の風量は、送風機F3の風量の例えば10分の1程度に設定される。
【0043】
本実施の形態では、有機溶剤濃縮装置200は、吸着部202から排出された第二処理ガス(清浄ガス)を清浄ガス排出流路L202から外部に送出する。有機溶剤濃縮装置200は、接続流路L80と、ヒータH3と、をさらに有している。
【0044】
接続流路L80は、清浄ガス排出流路L202と脱着部203とを接続しており、第二処理ガスの一部を脱着部203での脱着に利用するようにしている。接続流路L80には、送風機F4が設けられている。脱着部203での脱着に外気を利用する構成であってもよい。
【0045】
ヒータH3は、接続流路L80に設けられている。より詳細には、ヒータH3は、接続流路L80のうち送風機F4の下流側の部位に設けられている。例えば、ヒータH3は、接続流路L80を流れる第二処理ガスの温度が130℃~180℃程度になるように第二処理ガスを加熱する。この場合、脱着部203から排出された第二処理ガスの温度は、60℃~80℃程度となる。
【0046】
第2吸着材201Aには、活性炭素繊維不織布が用いられている。第一処理ガスは、活性炭素繊維不織布の内部を通過することにより、被処理物質との衝突効率が向上して吸着効率が向上する。一方、吸着された被処理物質を脱着させるために加熱された第二処理ガスを供給する時も、活性炭素繊維不織布と加熱された第二処理ガスとの接触効率が向上し、効率よく熱エネルギーが活性炭素繊維不織布に伝わるため、加熱された第二処理ガスの風量を小さくすることができる。すなわち第2吸着材201Aを活性炭素繊維不織布にすることにより、高い除去性能を発揮でき、さらに高濃縮化が可能になる。
【0047】
活性炭素繊維不織布を構成する活性炭素繊維の繊維径は、11μm以上120μm以下が好ましい。繊維径が11μm未満であると、圧力損失が高くなり、気体を十分に通風できなくなる。繊維径が120μmを超えると、被処理物質との衝突効率が低下して吸着効率が低下し、吸着性能に劣る。加熱された第二処理ガスとの接触効率が低下することで熱エネルギーが活性炭素繊維不織布に伝わりにくくなるため、加熱された第二処理ガスの風量が大きくなる。さらに活性炭素繊維不織布の柔軟性が低下し、加工が困難になる。圧力損失、吸着性能、加熱空気風量、および加工性のバランスから、繊維径は、15μm以上120μm以下がより好ましい。
【0048】
活性炭素繊維不織布のトルエン吸着率は、25wt.%以上75wt.%以下が好ましい。トルエン吸着率が25wt.%以下であると、吸着性能が低下する。トルエン吸着率が高い活性炭素繊維は全細孔容積が大きいため繊維の嵩密度が低くなる。そのためトルエン吸着率が75wt.%を超えると、単糸の引張強度が低下し、活性炭素繊維不織布の引張強度や圧縮弾性率が低下し、形状安定性が低下する。吸着性能および形状安定性のバランスから、トルエン吸着率は30wt.%以上70wt.%以下がより好ましい。
【0049】
活性炭素繊維不織布の合計目付は、200g/m以上6000g/m以下が好ましい。合計目付が200g/m未満であると、被処理物質との衝突効率が悪くなり、吸着性能に劣る。合計目付が6000g/mを超えると、圧力損失が高くなり、気体を十分に通風できなくなる。吸着性能および圧力損失のバランスから、合計目付は、1200g/m以上4000g/m以下がより好ましい。
【0050】
活性炭素繊維不織布の嵩密度は、50kg/m以上200kg/m以下が好ましい。嵩密度が50kg/m未満であると、不織布の圧縮率が高くなり、加工が困難になる。嵩密度が200kg/mを超えると、不織布の圧力損失が高くなり、気体を十分に通風できなくなる。加工性および圧力損失とのバランスから、嵩密度は60kg/m以上150kg/m以下がより好ましい。
【0051】
活性炭素繊維不織布の圧縮率は、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。圧縮率が30%を超えると、加工が困難になる。圧縮率の下限値は、通常5%以上である。
【0052】
活性炭素繊維不織布の圧縮弾性率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。圧縮弾性率が80%未満になると、通風の有無の繰り返し、または向流方向の交互の通風の繰り返しによって活性炭素繊維不織布が経時的にズレてしまい、気体のショートパスが生じ、被処理物質に対する吸着効率が早期に低下する。圧縮弾性率の上限値は、通常99%以下である。
【0053】
活性炭素繊維不織布の前駆体不織布の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜採用することができる。不織布の製造方法としては、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、スパンレース法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等をあげることができる。これらの中でもニードルパンチ法が好ましい。
【0054】
活性炭素繊維不織布は、前駆体不織布を公知の方法で炭素化した後に賦活することにより製造でき、具体的にはガス賦活法、および薬品賦活法などが挙げられるが、繊維強度および純度の向上の観点から、ガス賦活法が好ましい。
【0055】
または、活性炭素繊維をバインダーを用いた湿式抄紙法でシート状に加工したものを活性炭素繊維不織布として製造することもできる。
【0056】
活性炭素繊維の前駆体繊維は、フェノール樹脂、セルロース繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、ポリアクリロニトリル、ピッチ、リグニン、竹などがあげられるが、繊維強度、圧縮弾性率および純度の向上の観点から、フェノール樹脂、セルロース繊維、ポリフェニレンエーテル繊維が好ましい。
【0057】
活性炭素繊維不織布は、ハニカム状の活性炭、ゼオライト等と比較し、トルエン吸着率が大きく、吸脱着速度が速いという特徴がある。この特徴から、活性炭素繊維不織布を用いた有機溶剤濃縮装置200は、濃縮倍率(処理ガス風量を濃縮ガス風量で割った値)が高くなり、濃縮ガス風量を小さくすることができる。これにより、有機溶剤回収装置100へ戻る濃縮ガス風量は、小さくなる。したがって、有機溶剤回収装置100で処理する被処理ガス風量は、小さくなる。これらの作用から有機溶剤回収システム1は、システム全体を小型化し、運転エネルギーを抑えることができる。
【0058】
活性炭素繊維不織布は、外表面積が大きく取れるため、水分を含んだときの乾燥が早いという特徴がある。有機溶剤回収装置100から排出される第一処理ガスは、水蒸気由来の水分を含んでいる。しかしながら、有機溶剤濃縮装置200は、乾燥が早い活性炭素繊維不織布を用いているため水分による性能の影響を抑えることができる。
【0059】
ここで、図示しない制御部は、各処理槽101,102が上記のように吸着工程と脱着工程とを順次実行するように、各開閉弁及び開閉ダンパーの開閉を制御する。
【0060】
次に、有機溶剤回収システム1の動作について説明する。ここでは、図2を参照しながら、有機溶剤回収システム1の動作の一例を説明する。図2は、第1処理槽101で吸着工程が行われ、第2処理槽102で脱着工程が行われている状態におけるガスの流れを概略的に示す図である。図2では、第1処理槽101及び吸着体201において吸着処理されるガスの流れが、太い実線で示されており、第2処理槽102に供給される水蒸気及び第1吸着材102Aから脱着された有機溶剤を含むガスの流れが、斜線のハッチングが施された線で示されている。
【0061】
図2に示される状態では、開閉弁V11,V31,V42及び開閉ダンパーV101,V201が開かれており、開閉弁V12,V32,V41及び開閉ダンパーV102,V202が閉じられている。
【0062】
図2に示される状態では、被処理ガス供給源から被処理ガス供給流路L10及び分岐流路L11を通じて第1処理槽101に被処理ガスが供給され、第1処理槽101の第1吸着材101Aに被処理ガスに含まれる有機溶剤が吸着される(吸着工程)。その後、第1処理槽101から排出された被処理ガスである第一処理ガスは、第1取出し流路L31及び送り流路300を通じて有機溶剤濃縮装置200の吸着体201に送られ、吸着部202において第一処理ガスに含まれる有機溶剤が吸着される。
【0063】
次に、吸着部202から排出された第二処理ガスは、有機溶剤回収システム1の系外に取り出され、その一部は、接続流路L80を通じて脱着部203に送られる。このとき、脱着部203に送られる第二処理ガスは、ヒータH3で加熱される。脱着部203から排出された濃縮ガスは、戻し流路400を通じて、有機溶剤回収装置100の被処理ガス供給流路L10に戻される。
【0064】
一方、第2処理槽102には、水蒸気供給部110から第2水蒸気供給流路L42を通じて水蒸気が供給されることにより、第1吸着材102Aから有機溶剤が脱着される(脱着工程)。第1吸着材102Aから脱着された有機溶剤を含む水蒸気は、有機溶剤回収流路L52を通じて、凝縮器122で凝縮された後にセパレータ120に流入する。セパレータ120で相分離された回収溶剤は、有機溶剤回収装置100の系外に取り出され、セパレータ120に存在するベントガスは、再供給流路L60を通じて、被処理ガス供給流路L10に戻される。分離排水は排水処理設備130にて処理され、処理水は有機溶剤回収装置100の系外に取出され、曝気ガスは曝気ガス供給流路L61を通じて、被処理ガス供給流路L10に戻される。
【0065】
本実施の形態の有機溶剤回収システム1では、第2吸着材201Aに活性炭素繊維不織布が用いられるため高性能に処理ガスに含まれる有機溶剤を回収することが可能となる。よって、本有機溶剤回収システム1では、設備の大型化を回避しながら、有機溶剤の回収率を向上させることが可能となる。
【0066】
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。図3に示すように、実施の形態2では、図1の有機溶剤濃縮装置200に変えて、有機溶剤濃縮装置500が用いられる。有機溶剤濃縮装置500は、吸着体501を有している。吸着体501以外の構成は、図1の有機溶剤濃縮装置200の構成と同じである。吸着体501の詳細については、図4図6を用いて説明する。
【0067】
図4は、実施の形態2の吸着体の縦断面図である。図5は、図4に示すV-V線に沿う吸着体の断面図である。図6は、図5に示す吸着ロータの要部の拡大断面図である。
【0068】
図4から図6に示すように、吸着体501は、吸着ロータ90を備えている。吸着ロータ90は、処理室51内に設置されている。吸着ロータ90は、径方向に流体を流動できるように設けられている。吸着ロータ90は、モータ3の回転駆動力を受けて筒軸C周りに回転可能に設けられている。吸着ロータ90は、筒軸C方向が鉛直方向に向くようにして、支柱などの複数の支持部材6上で回転可能に支持されているが、筒軸C方向が水平方向に向くようにした形態でも構わない。図5図6中に示す曲線矢印は、吸着ロータ90の回転方向を示している。
【0069】
吸着ロータ90は、一対の中空円盤10、複数の仕切部20および複数の吸着ユニット30によって構成されている。
【0070】
一対の中空円盤10は、第1中空円盤11と第2中空円盤12とを含んでいる。第1中空円盤11と第2中空円盤12とは、円環板形状を有しており、各々の中心が筒軸C上にあるように配置されている。第1中空円盤11の中心部分には、開口部11aが形成されている。第1中空円盤11および第2中空円盤12は、これらの間に仕切部20および吸着ユニット30を配置できるように、距離を隔てて平行に配置されている。
【0071】
吸着ロータ90は、一対の中空円盤10間で、複数の仕切部20と複数の吸着ユニット30とを筒軸C回りの周方向に交互に配列することにより、円筒状に形成されている。吸着ロータ90は、全体として中空円柱状の形状を有しており、筒孔90a(中央空間部)が形成されている。筒孔90aは、第1中空円盤11の開口部11aと連通している。
【0072】
複数の仕切部20は、一対の中空円盤10間の空間を、筒軸C回りの周方向に互いに独立した複数の空間部S(図6参照)に仕切っている。仕切部20は、空気流路を有さず、気体が通過不能な部材である。仕切部20は、一対の中空円盤10間に、気密および/または液密となるように取り付けられている。
【0073】
各々の仕切部20は、本体部21とシール部22とを含んでいる。本体部21は、ステンレスまたは鉄などで形成されており、仕切部20の骨格部を構成している。本体部21は、三角筒形状を有している。本体部21は、吸着ロータ90の内周側に位置する頂縁部と、吸着ロータ90の外周側に位置する本体部21の底面部とを有している。複数の仕切部20は、本体部21を平面視した三角形の重心が筒軸C回りの周方向に等間隔に並ぶように、配置されている。
【0074】
シール部22は、本体部21の周囲に設けられている。シール部22は、本体部21と一体に構成されていてもよいし、本体部21とは別部材で構成されていてもよい。シール部22が本体部21と別部材で構成される場合には、シール部22は接着などにより本体部21に接合されていてもよいし、本体部21に対して取り付けおよび取り外し可能に構成されていてもよい。
【0075】
本実施の形態のシール部22は、内周側シール部23と外周側シール部24とを有している。内周側シール部23は、吸着ロータ90の径方向において、本体部21に対して内側(筒軸Cに近い側)に位置している。外周側シール部24は、吸着ロータ90の径方向において、本体部21に対して外側(筒軸Cから離れる側)に位置している。内周側シール部23は、本体部21の頂縁部から、吸着ロータ90の径方向内側に向けて突出するように設けられている。外周側シール部24は、本体部21の底面部から、吸着ロータ90の径方向外側に向けて突出するように設けられている。
【0076】
本実施の形態の内周側シール部23および外周側シール部24は、各々、吸着ロータ90の軸方向(筒軸Cの延びる方向)に延在し、かつ吸着ロータ90の径方向に延在する、リブ状の形状を有している。内周側シール部23は、シール面23aを有している。外周側シール部24は、シール面24aを有している。シール面23a,24aは、吸着ロータ90の回転方向に交差している。
【0077】
内周側シール部23および外周側シール部24には、シール部材40が設置されている。シール部材40は、たとえば、弾性を有するゴム素材などで形成されており、気密および/または液密性を有している。シール部材40は、被処理ガスを吸着ユニット30に吸着させる吸着処理が行なわれる吸着領域と被処理ガスを吸着ユニット30から脱着させる脱着処理が行なわれる脱着領域とを仕切る機能、および/または、吸着体501と処理室51との被処理ガスのリーク防止の機能を備えてもよい。
【0078】
シール部材40は、吸着ロータ90の内周側に位置する内側シール部材41と、吸着ロータ90の外周側に位置する外側シール部材42とを含んでいる。内側シール部材41は、内周側シール部23のシール面23aに設置されている。内側シール部材41は、吸着ロータ90の径方向内側に向けて仕切部20から突出している。
【0079】
外側シール部材42は、外周側シール部24のシール面24aに設置されている。外側シール部材42は、吸着ロータ90の径方向外側に向けて仕切部20から突出している。内側シール部材41および外側シール部材42は、一対の中空円盤10間を、一方の中空円盤(第1中空円盤11)から他方の中空円盤(第2中空円盤12)にまで亘って延在している。
【0080】
吸着ユニット30は、被処理ガス等の気体が交差するように通過可能な吸着素子が充填された部材である。実施の形態の吸着ユニット30は、吸着ロータ90の外周面から筒孔90aに向けて気体が通過可能である。各々の吸着ユニット30は、互いに独立した複数の空間部Sのいずれかに収容されている。複数の吸着ユニット30は、吸着ロータ90の周方向に間隔を空けて並んで配置されている。吸着ロータ90の周方向に隣り合う2つの吸着ユニット30の間に、仕切部20が配置されている。
【0081】
各々の吸着ユニット30は、直方体状の外形を有している。吸着ユニット30は、吸着ロータ90の軸方向に延びる4つの第一辺と、吸着ロータ90の径方向に延びる4つの第二辺と、第一辺および第二辺に直交して延びる4つの第三辺とを有している。実施の形態の吸着ユニット30では、第二辺および第三辺と比較して、第一辺が際立って長い。吸着ユニット30は、第一辺を長辺とする直方体形状を有している。筒軸Cに直交する吸着ユニット30の断面形状は正方形または長方形である。
【0082】
本実施の形態における吸着ユニット30は、吸着材として活性炭素繊維不織布が1層以上積層されるように充填されている。吸着材である活性炭素繊維不織布の物性値は、実施の形態1で示した第2吸着材201Aの活性炭素繊維不織布の物性値と同じである。
【0083】
吸着体501では、吸着ユニット30の一部が、吸着ユニット30の外側から内側に向けて供給された第一処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着する吸着部を構成するとともに、吸着ユニット30の残部が、吸着ユニット30の内側から外側に向けて加熱空気を供給することによって吸着ユニット30に吸着された有機溶剤を吸着ユニット30から脱着する脱着部を構成する。
【0084】
再び、図4図6を参照して、吸着体501は、第1流路形成部材2、内周側流路形成部材4、および、外周側流路形成部材5をさらに備えている。
【0085】
第1流路形成部材2の一端は、第1流路形成部材2の内部と吸着ロータ90の筒孔90aとを気密に維持するとともに、吸着ロータ90が筒軸C周りに回転することを許容するように構成されている。第1流路形成部材2の一端と開口部11aの周縁に位置する部分の第1中空円盤11とによって環状のシール部材が挟持されてもよい。第1流路形成部材2の他端は、処理室51外に引き出されている。
【0086】
内周側流路形成部材4は、吸着ロータ90の内周側である筒孔90aに配設されている。外周側流路形成部材5は、吸着ロータ90の外周側に配設されている。内周側流路形成部材4および外周側流路形成部材5は、周方向における吸着ロータ90の一部を挟み込むように、吸着ロータ90の内周側および外周側において互いに対向して配設されている。
【0087】
内周側流路形成部材4は、筒孔90aに沿って延在し、開口部11aから吸着ロータ90の外側に向けて延出するように設けられている。内周側流路形成部材4は、第1中空円盤11の開口部11aを通って筒軸C方向に沿って延在する部分を含んでいる。
【0088】
内周側流路形成部材4の一端には、吸着ロータ90の内周面に向かい合う内周側開口端部4aが設けられている。内周側開口端部4aにおける開口面は、吸着ロータ90の内周面の一部の領域に対して対向するように設けられている。内周側流路形成部材4の他端は、第1流路形成部材2に設けられた開口部2aから第1流路形成部材2の外部に突出している。
【0089】
吸着ロータ90の回転方向の下流側に位置する内周側開口端部4aの縁部には、内周側湾曲面4bが設けられている。吸着ロータ90の回転方向の上流側に位置する内周側開口端部4aの縁部には、内周側湾曲面4cが設けられている。内周側湾曲面4b,4cは、吸着ロータ90の回転方向に沿って湾曲している。
【0090】
外周側流路形成部材5の一端には、吸着ロータ90の外周側に向かい合う外周側開口端部5aが設けられている。外周側開口端部5aは、吸着ロータ90の外周面の一部の領域に対向するように設けられている。外周側流路形成部材5の他端は、処理室51の外部に突出している。
【0091】
吸着ロータ90の回転方向の下流側に位置する外周側開口端部5aの縁部には、外周側湾曲面5bが設けられている。吸着ロータ90の回転方向の上流側に位置する外周側開口端部5aの縁部には、外周側湾曲面5cが設けられている。外周側湾曲面5b,5cは、回転方向に沿って湾曲している。
【0092】
図5および図6に示すように、吸着ロータ90は、周方向に区画された脱着領域R1および吸着領域R2を含んでいる。複数の吸着ユニット30は、吸着ロータ90が筒軸C周りに回転することにより、脱着領域R1と吸着領域R2とを交互に移動する。
【0093】
図6に示すように、吸着ロータ90の回転に伴って回転する複数の空間部Sは、脱着領域R1において、内周側流路形成部材4および外周側流路形成部材5に連通する。吸着ロータ90の回転に伴って、内周側湾曲面4b,4cに対して内側シール部材41が摺動し、外周側湾曲面5b,5cに対して外側シール部材42が摺動することにより、複数の空間部Sのうちの一部の空間部Sが、内周側流路形成部材4および外周側流路形成部材5に気密に連通する。
【0094】
具体的には、内周側湾曲面4bおよび外周側湾曲面5bの間に位置する仕切部20と、内周側湾曲面4cおよび外周側湾曲面5cの間に位置する仕切部20と、の間に位置する空間部Sが、内周側流路形成部材4および外周側流路形成部材5に対して気密に連通する。
【0095】
吸着領域R2は、内周側流路形成部材4および外周側流路形成部材5には連通せず、脱着領域R1とは異なる流路を構成している。
【0096】
図4に示すように、脱着領域R1および吸着領域R2には、それぞれ流体が導入される。吸着領域R2には、吸着ロータ90の径方向外側から内側に向けて流体が導入される。吸着領域R2を通過した流体は、吸着ロータ90の筒孔90aを通過して、第1中空円盤11の開口部11aから、吸着ロータ90の外部に流出する。脱着領域R1には、一対の中空円盤10の一方の開口部11aを通過する内周側流路形成部材4の内部を経由した流体が、吸着ロータ90の径方向内側から外側に向けて導入される。
【0097】
吸着領域R2に導入される流体は、被処理流体としての第一処理ガスである。当該第一処理ガスには、被処理物質としての有機溶剤が含まれている。吸着領域R2において、被処理流体の清浄化が行なわれる。
【0098】
図4に示されるように、清浄化に際しては、処理室51内に送風機F3により供給された第一処理ガスを、吸着ロータ90の外周面から吸着領域R2に導入する。吸着領域R2に導入された第一処理ガスは、径方向に沿って外周面から内周面へ向けて吸着ロータ90を通過する際に、吸着領域R2に位置する複数の吸着ユニット30に有機溶剤を吸着させることにより、清浄化される。
【0099】
清浄化された被処理流体としての第二処理ガスは、清浄ガスとして、吸着領域R2から吸着ロータ90の筒孔90aに排出される。清浄ガスは、筒孔90a内を通過して、第1中空円盤11の開口部11aから流出する。開口部11aから流出された清浄ガスは、第1流路形成部材2を通って処理室51外の清浄ガス排出流路L202へ排出される。
【0100】
脱着領域R1には、送風機F4により第二処理ガスの一部が導入される。脱着領域R1において、吸着ユニット30に吸着された有機溶剤などの被処理物質を脱着することにより、吸着ユニット30の再生を行なうとともに、有機溶剤の濃度が高くなった濃縮ガスを生成する。
【0101】
有機溶剤の脱着を行なうためには、内周側流路形成部材4から脱着領域R1に第二処理ガスの一部を導入する。脱着領域R1に導入された第二処理ガスの一部は、吸着ロータ90を通過する際に、脱着領域R1に位置する複数の吸着ユニット30から、これらに吸着している有機溶剤を熱によって脱着させる。有機溶剤を含んだ第二処理ガスの一部は、濃縮ガスとして、脱着領域R1から外周側流路形成部材5に送風機F5を用いて排出される。濃縮ガスは、処理室51外に排出されて、戻し流路400に戻される。
【0102】
吸着体501においては、吸着領域R2に位置する吸着ユニット30に対して被処理物質の吸着処理が行なわれ、吸着処理後に脱着領域R1に位置する吸着ユニット30に対して被処理物質の脱着処理が行なわれる。吸着ロータ90が筒軸C周りに回転することにより、吸着ユニット30が脱着領域R1と吸着領域R2とを交互に移動して、被処理物質の吸着処理と脱着処理とが連続的に実施される。
【0103】
上述した実施の形態においては、仕切部20が略三角筒形状を有する場合を例示して説明したが、これに限定されず、一対の中空円盤10を支持できるような強度を有し、かつシール部材40を設置可能である限り、その形状は、板状形状などであってもよく、適宜変更することができる。
【0104】
上述した実施の形態においては、吸着ロータ90の筒孔90aが吸着ロータ90の軸方向(筒軸Cの延びる方向)の片方(図4においては上方)にのみ開口しており、吸着ロータ90で清浄化された清浄ガスが図4中の上方向に流れて第1流路形成部材2へ流れる、片面開口の吸着体501である例について説明した。実施の形態の吸着体501は、筒孔90aが吸着ロータ90の軸方向の両方に開口しており、清浄ガスが筒孔90aから図4中の上方向と下方向との両方に流出する、両面開口の構造を有していてもよい。
【0105】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3の有機溶剤回収システムにおけるガスの流れを概略的に示す図である。図7に示すように、実施の形態3では、図1の有機溶剤回収装置100に変えて、有機溶剤回収装置600が用いられる。有機溶剤回収装置600は、3つの処理槽101,102,103と、被処理ガス供給流路L10と、連結流路L21,L22,L23と、取出し流路L31,L32,L33と、水蒸気供給流路L41,L42,L43と、有機溶剤回収流路L51,L52,L53と、セパレータ120と、再供給流路L60と、制御部150と、を有している。
【0106】
各処理槽101,102,103は、有機溶剤の吸着と有機溶剤の脱着とが可能な第1吸着材101A,102A,103Aを有している。各処理槽101,102,103は、被処理ガス供給口への被処理ガスの供給/非供給を切替える開閉ダンパーV101,V102,V103、第1吸着材101A,102A,103A通過後の処理ガス排出口の排出/非排出を切替える開閉ダンパーV201,V202,V203を有している。
【0107】
各処理槽101,102,103では、第1吸着材101A,102A,103Aによる有機溶剤の吸着と第1吸着材101A,102A,103Aからの有機溶剤の脱着とが交互に行われる。詳細は、次のとおりである。
【0108】
3つの処理槽101,102,103のうちの一の処理槽において、被処理ガス供給源から供給された被処理ガスから第1吸着材により有機溶剤を吸着する第1吸着工程が行われる。同時に、3つの処理槽101,102,103のうちの他の処理槽において、第1吸着工程で用いられた処理槽において処理された後の被処理ガス(第1吸着工程ガス)から第1吸着材により有機溶剤を吸着して第一処理ガスを排出する第2吸着工程が行われる。その間、残りの1つの処理槽において、第1吸着材から有機溶剤を脱着する脱着工程が行われる。
【0109】
各処理槽101,102,103では、脱着工程、第2吸着工程、第1吸着工程及び脱着工程がこの順で繰り返し行われる。図7では、第1処理槽101において第1吸着工程が行われ、第2処理槽102において第2吸着工程が行われ、第3処理槽103において脱着工程が行われている状態が示されている。
【0110】
被処理ガス供給流路L10は、各処理槽101,102,103に被処理ガスを供給するための流路である。被処理ガス供給流路L10は、各処理槽101,102,103に被処理ガスを供給する分岐流路L11,L12,L13を有している。分岐流路L11には、開閉弁V11が設けられている。分岐流路L12には、開閉弁V12が設けられている。分岐流路L13には、開閉弁V13が設けられている。
【0111】
各連結流路L21,L22,L23は、3つの処理槽101,102,103のうち一の処理槽(第1吸着工程で用いられる処理槽)の第1吸着材において有機溶剤が吸着された後の被処理ガスが、3つの処理槽101,102,103のうち一の処理槽とは異なる他の処理槽(第2吸着工程で用いられる処理槽)における被処理ガス供給口に導入されるように、一の処理槽と他の処理槽とを連結している。
【0112】
具体的に、第1連結流路L21は、第1処理槽101における処理ガス排出口と第2処理槽102における被処理ガス供給口とを連結している。第2連結流路L22は、第2処理槽102における処理ガス排出口と第3処理槽103における被処理ガス供給口とを連結している。第3連結流路L23は、第3処理槽103における処理ガス排出口と第1処理槽101における被処理ガス供給口とを連結している。
【0113】
各連結流路L21,L22,L23は、互いに合流する合流流路L20を有している。合流流路L20には、送風機F2が設けられている。合流流路L20のうち送風機F2の上流側の部位には、被処理ガスの温度および湿度を所望の範囲に調整するためのクーラC及びヒータHが設けられている。第1連結流路L21のうち合流流路L20から再度分岐した部位には、開閉弁V21が設けられている。第2連結流路L22のうち合流流路L20から再度分岐した部位には、開閉弁V22が設けられている。第3連結流路L23のうち合流流路L20から再度分岐した部位には、開閉弁V23が設けられている。
【0114】
取出し流路L31,L32,L33は、各処理槽101,102,103で吸着処理された後の被処理ガスである第一処理ガスを取り出すための流路である。取出し流路L31,L32,L33は、各処理槽101,102,103における処理ガス排出口に接続されている。第1取出し流路L31には、開閉弁V31が設けられている。第2取出し流路L32には、開閉弁V32が設けられている。第3取出し流路L33には、開閉弁V33が設けられている。各取出し流路L31,L32,L33は、互いに合流する合流流路L30を有している。
【0115】
第1水蒸気供給流路L41は、水蒸気供給部110と第1処理槽101とを接続している。第1水蒸気供給流路L41には、開閉弁V41が設けられている。第2水蒸気供給流路L42は、水蒸気供給部110と第2処理槽102とを接続している。第2水蒸気供給流路L42には、開閉弁V42が設けられている。第3水蒸気供給流路L43は、水蒸気供給部110と第3処理槽103とを接続している。第3水蒸気供給流路L43には、開閉弁V43が設けられている。
【0116】
有機溶剤回収流路L51,L52,L53は、第1吸着材101A,102A,103Aから脱着された有機溶剤を含む水蒸気(脱着ガス)を回収するための流路である。各有機溶剤回収流路L51,L52,L53は、各処理槽101,102,103に接続されている。各有機溶剤回収流路L51,L52,L53は、互いに合流する合流流路L50を有している。
【0117】
制御部150は、被処理ガスの温度を制御する。具体的に、制御部150は、第2吸着工程で用いられる処理槽(連結流路L21,L22,L23で連結された3つの処理槽101,102,103のうち被処理ガスの流れにおける下流側に配置された処理槽)に流入する被処理ガスの温度が所定範囲(例えば、40℃~80℃)に維持されるようにクーラC3及びヒータH4の温度を制御する。
【0118】
被処理ガスの温度は、温度センサ152によって検出される。温度センサ152は、合流流路L20に設けられている。
【0119】
次に、有機溶剤回収システム1の動作について説明する。図7では、第1処理槽101で第1吸着工程が行われ、第2処理槽102で第2吸着工程が行われ、第3処理槽103で脱着工程が行われている状態におけるガスの流れを概略的に示されている。各処理槽では、第1吸着工程→脱着工程→第2吸着工程→第1吸着工程→…の順に処理が繰り返される。
【0120】
図7に示される状態では、開閉弁V11,V21,V32,V43及び開閉ダンパーV101,V102,V201,V202が開かれており、開閉弁V12,V13,V22,V23,V31,V33,V41,V42及び開閉ダンパーV103,V203が閉じられている。
【0121】
図7に示される状態では、被処理ガス供給源から被処理ガス供給流路L10及び分岐流路L11を通じて第1処理槽101に被処理ガスが供給され、第1処理槽101の第1吸着材101Aに被処理ガスに含まれる有機溶剤が吸着される(第1吸着工程)。その後、被処理ガスは、第2処理槽102に供給され、第2処理槽102の第1吸着材102Aに供給されたガスに含まれる有機溶剤がさらに吸着される(第2吸着工程)。
【0122】
第2処理槽102での第2吸着工程(の特に初めの段階)では、供給されたガスにより、第1吸着材102Aが乾燥される。第2吸着工程は水蒸気を用いた脱着工程の後に実施されるので、第1吸着材102Aは水分を含んでおり、吸着性能の向上のため、乾燥が必要である。この第2吸着工程で行われる乾燥が、乾燥工程として切り離されたシステム、つまり各処理槽が、第1吸着工程→脱着工程→乾燥工程→第2吸着工程→第1吸着工程→…の順に処理するシステムであっても、本システムにて対応できる。
【0123】
第2処理槽102から排出された第一処理ガスは、第2取出し流路L32及び送り流路300を通じて有機溶剤濃縮装置200の吸着体201に送られ、吸着部202において第一処理ガスに含まれる有機溶剤が吸着される。その後、吸着部202から排出された第二処理ガスは、有機溶剤回収システム1の系外に取り出され、その一部は、接続流路L80を通じて脱着部203に送られる。このとき、脱着部203に送られる第二処理ガスは、ヒータH3で加熱される。脱着部203から排出された濃縮ガスは、戻し流路400を通じて、有機溶剤回収装置100の被処理ガス供給流路L10に戻される。
【0124】
一方、第3処理槽103には、水蒸気供給部110から第3水蒸気供給流路L43を通じて水蒸気が供給されることにより、第1吸着材103Aから有機溶剤が脱着される(脱着工程)。第1吸着材103Aから脱着された有機溶剤を含む水蒸気は、有機溶剤回収流路L53を通じて、凝縮器122で凝縮された後にセパレータ120に流入する。セパレータ120で相分離された回収溶剤は、有機溶剤回収装置100の系外に取り出され、セパレータ120に存在するベントガスは、再供給流路L60を通じて、被処理ガス供給流路L10に戻される。分離排水は排水処理設備130にて処理され、処理水は有機溶剤回収装置100の系外に取出され、曝気ガスは曝気ガス供給流路L61を通じて、被処理ガス供給流路L10に戻される。
【0125】
本実施の形態の有機溶剤回収システム1では、上述した実施の形態と同様に第2吸着材201Aに活性炭素繊維不織布が用いられるため高性能に処理ガスに含まれる有機溶剤を回収することが可能となる。よって、本有機溶剤回収システム1では、設備の大型化を回避しながら、有機溶剤の回収率を向上させることが可能となる。
【0126】
本実施の形態の有機溶剤回収システム1では、上述した実施の形態と同様に有機溶剤濃縮装置200に変えて、有機溶剤濃縮装置500を用いてもよい。
【0127】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4の有機溶剤回収システムにおけるガスの流れを概略的に示す図である。図8に示すように、実施の形態4では、図7の有機溶剤回収装置100に変えて、有機溶剤回収装置700が用いられる。有機溶剤回収装置700は、3つの処理槽101,102,103と、被処理ガス供給流路L10と、連結流路L21,L22,L23と、取出し流路L31,L32,L33と、水蒸気供給流路L41,L42,L43と、有機溶剤回収流路L51,L52,L53と、セパレータ120と、再供給流路L60と、希釈ガス供給流路L70と、加熱器140と、開閉弁V70と、制御部150と、を有している。
【0128】
実施の形態4の有機溶剤回収装置700は、希釈ガス供給流路L70を有している点等において実施の形態3の有機溶剤回収装置600と異なっている。以下では、有機溶剤回収装置600との違いについて詳細に説明する。
【0129】
希釈ガス供給流路L70は、脱着工程後の第1吸着材101A,102A,103Aの乾燥を促進するための希釈ガスを連結流路L21,L22,L23に供給するための流路である。希釈ガスは、外気、計装用空気、窒素ガス、アルゴンガスの少なくとも1つを含むガスで構成される。なお、希釈ガスは、有機溶剤回収装置100の系外から供給される。
【0130】
加熱器140は、希釈ガス供給流路L70に設けられている。加熱器140は、希釈ガスの温度が連結流路L21,L22,L23を流れる被処理ガスの温度(40℃程度)よりも高くなるように希釈ガスを加熱する。
【0131】
開閉弁V70は、希釈ガス供給流路L70に設けられている。開閉弁V70は、開度の調整が可能である。
【0132】
制御部150は、被処理ガスの温度を制御する。具体的に、制御部150は、第2吸着工程で用いられる処理槽(連結流路L21,L22,L23で連結された3つの処理槽101,102,103のうち被処理ガスの流れにおける下流側に配置された処理槽)に流入する被処理ガスの温度が所定範囲(例えば、40℃~80℃)に維持されるように加熱器140の温度を制御する。
【0133】
本実施の形態の有機溶剤回収システム1では、上述した実施の形態と同様に第2吸着材201Aに活性炭素繊維不織布が用いられるため高性能に処理ガスに含まれる有機溶剤を回収することが可能となる。よって、本有機溶剤回収システム1では、設備の大型化を回避しながら、有機溶剤の回収率を向上させることが可能となる。
【0134】
本実施の形態の有機溶剤回収システム1では、上述した実施の形態と同様に有機溶剤濃縮装置200に変えて、有機溶剤濃縮装置500を用いてもよい。
【0135】
[他の実施の形態]
有機溶剤回収装置100は、4つ以上の処理槽を有していてもよい。その場合、一の処理槽において脱着工程が行われ、その間、互いに連結流路で直列となるように連結された残りの3つ以上の処理槽において多段階に吸着工程が行われる。
【0136】
有機溶剤濃縮装置200に変えて、国際公開第2013/187274号に開示される溶剤処理装置が用いられてもよい。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
1 有機溶剤回収システム、100 有機溶剤回収装置、101 第1処理槽、101A 第1吸着材、102 第2処理槽、102A 第1吸着材、103 第3処理槽、103A 第1吸着材、110 水蒸気供給部、120 セパレータ、130 排水処理設備、140 加熱器、150 制御部、152 温度センサ、200 有機溶剤濃縮装置、201 吸着体、201A 第2吸着材、202 吸着部、203 脱着部、300 送り流路、400 戻し流路、500 有機溶剤濃縮装置、501 吸着体、L10 被処理ガス供給流路、L21,L22,L23 連結流路、L31,L32,L33 取出し流路、L40 水蒸気供給流路、L51,L52,L53 有機溶剤回収流路、L60 再供給流路、L70 希釈ガス供給流路、L80 接続流路、V11,V12,V13,V21,V22,V23,V31,V32,V33,V41,V42,V43,V70 開閉弁、V101,V102,V103,V201,V202,V203 開閉ダンパー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8