(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/285 20180101AFI20240827BHJP
C03C 25/1065 20180101ALI20240827BHJP
C03C 25/25 20180101ALI20240827BHJP
C03C 25/47 20180101ALI20240827BHJP
C03C 25/6226 20180101ALI20240827BHJP
C08F 289/00 20060101ALI20240827BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240827BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240827BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240827BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C03C25/285
C03C25/1065
C03C25/25
C03C25/47
C03C25/6226
C08F289/00
C08F292/00
C08F2/44 Z
C08F290/06
G02B6/44 331
G02B6/44 301A
(21)【出願番号】P 2021525941
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2020018347
(87)【国際公開番号】W WO2020250594
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019110920
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浜窪 勝史
(72)【発明者】
【氏名】相馬 一之
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/065274(WO,A1)
【文献】特開2015-089865(JP,A)
【文献】特表2010-511770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0321265(US,A1)
【文献】特開平08-217495(JP,A)
【文献】特表2006-524737(JP,A)
【文献】特開2006-161030(JP,A)
【文献】特開2016-040216(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107163902(CN,A)
【文献】特表2004-536758(JP,A)
【文献】特開2015-108093(JP,A)
【文献】米国特許第06579914(US,B1)
【文献】SHIUE, J. et al.,Effects of silica nanoparticle addition to the secondary coating of dual-coated optical fibers,Acta Materialia,2006年03月30日,Volume 54,p.2631-2636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
C08F 289/00
C08F 292/00
C08F 2/44
C08F 290/06
G02B 6/44
C03C 27/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む樹脂組成物であり、
前記オリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートを含み、前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量に対する前記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量の質量比が、0.25以上であ
り、
前記無機酸化物粒子の含有量が、前記オリゴマー、前記モノマー及び前記無機酸化物粒子の総量を基準として10質量%以上60質量%以下である、光ファイバ被覆用の樹脂組成物。
【請求項2】
30mW/cm
2の照射強度で紫外線を300秒間照射した際の反応熱量が、100J/g以上275J/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記モノマーが、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを含む、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、
前記ガラスファイバに接して前記ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、
前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、
前記セカンダリ樹脂層が、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、光ファイバ。
【請求項6】
前記セカンダリ樹脂層のヤング率が、23℃で1200MPa以上3500MPa以下である、請求項
5に記載の光ファイバ。
【請求項7】
コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に紫外線を照射することにより前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、
を含む、光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法に関する。
本出願は、2019年6月14日出願の日本出願第2019-110920号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバは、光伝送体であるガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を有している。被覆樹脂層は、一般に、プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層を備えている。光ファイバに側圧が付与された際に発生する微小な曲げにより誘起される伝送損失の増加を小さくするために、光ファイバには、側圧特性に優れることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、セカンダリ樹脂層(第二コーティング)のヤング率を高くすることで、光ファイバの曲げ損失を低減することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含み、オリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートを含み、エポキシ(メタ)アクリレートの含有量に対するウレタン(メタ)アクリレートの含有量の質量比が、0.25以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
耐側圧特性を有する光ファイバの生産効率を上げるためには、光ファイバを線引きする速度(線速)を上昇させる必要がある。しかしながら、セカンダリ樹脂層を形成する際に用いられる樹脂組成物の反応熱が大きいと、プライマリ樹脂層に係る残留応力が大きくなり、光ファイバにボイドが発生し易くなる。また、線速を上昇させると、被覆樹脂層が高温の状態で光ファイバが巻き取られるため、セカンダリ樹脂層に変形が生じて歩留まりが低下する傾向にある。
【0008】
本開示は、耐側圧特性に優れる光ファイバを生産効率よく作製できる樹脂組成物、及び該樹脂組成物から形成されるセカンダリ樹脂層を備える光ファイバを提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、耐側圧特性に優れる光ファイバを生産効率よく作製できる樹脂組成物、及び該樹脂組成物から形成されるセカンダリ樹脂層を備える光ファイバを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含み、オリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートを含み、エポキシ(メタ)アクリレートの含有量に対するウレタン(メタ)アクリレートの含有量の質量比が、0.25以上である。
【0011】
このような樹脂組成物は、硬化する際の反応熱を低減することができる。上記樹脂組成物を光ファイバ被覆用の紫外線硬化型樹脂組成物として用いることで、耐側圧特性に優れる光ファイバを生産効率よく作製することができる。
【0012】
線速を上昇させて光ファイバを作製する際にボイドの発生を抑制することから、上記樹脂組成物に30mW/cm2の照射強度で紫外線を300秒間照射した際の反応熱量は、100J/g以上275J/g以下であってもよい。
【0013】
ヤング率の高いセカンダリ樹脂層を形成し易いことから、上記モノマーは、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを含んでもよい。
【0014】
樹脂組成物中での分散性に優れ、ヤング率を調整し易いことから、無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子であってもよい。反応熱とヤング率とをより調整し易いことから、無機酸化物粒子の含有量は、オリゴマー、モノマー及び無機酸化物粒子の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0015】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層とを備え、セカンダリ樹脂層が、上記樹脂組成物の硬化物を含む。これにより、光ファイバの側圧特性を向上することができる。光ファイバの側圧特性を向上し易くなることから、セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1200MPa以上3500MPa以下であってもよい。
【0016】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。これにより、耐側圧特性に優れる光ファイバを生産効率よく作製することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本実施形態に係る樹脂組成物及び光ファイバの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含む。
【0019】
(ベース樹脂)
本実施形態に係るオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートを含む。エポキシ(メタ)アクリレート(EA)の含有量に対するウレタン(メタ)アクリレート(UA)の含有量の質量比(UA/EA)は、0.25以上である。樹脂組成物の反応熱を低減する観点から、UA/EAは、0.45以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましい。UA/EAの上限値は、5.0以下、4.0以下、又は3.5以下であってもよい。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0021】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
樹脂層のヤング率を調整する観点から、ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、300以上3000以下が好ましく、400以上2500以下がより好ましく、500以上2000以下が更に好ましい。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成する際の触媒として、一般に有機スズ化合物が使用される。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)及びジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性又は触媒性能の点から、触媒としてジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレートの合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール及び2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0025】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、グリシジル基を2以上有するエポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0026】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、及び重合性基を2つ以上有する多官能モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジン)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有モノマー;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0028】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート等の重合性基を2つ有するモノマー;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート等の重合性基を3つ以上有するモノマーが挙げられる。
【0029】
樹脂層のヤング率を高める観点から、モノマーは、多官能モノマーを含むことが好ましく、重合性基を2つ有するモノマーを含むことがより好ましい。
【0030】
光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製)及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0031】
樹脂組成物の反応熱を抑制する観点から、光重合開始剤の含有量は、オリゴマー及びモノマーの総量を基準として、0.2質量%以上6.0質量%以下が好ましく、0.4質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.6質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
【0032】
樹脂組成物は、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、増感剤等を更に含有してもよい。
【0033】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド及びγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0034】
(無機酸化物粒子)
本実施形態に係る無機酸化物粒子は、その表面が疎水処理されている。本実施形態に係る疎水処理とは、無機酸化物粒子の表面に疎水性の基が導入されていることをいう。疎水性の基が導入された無機酸化物粒子は、樹脂組成物中の分散性に優れている。疎水性の基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の反応性基、又は、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基)等の非反応性基であってもよい。無機酸化物粒子が反応性基を有する場合、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。
【0035】
本実施形態に係る無機酸化物粒子は、分散媒に分散されている。分散媒に分散された無機酸化物粒子を用いることで、樹脂組成物中に無機酸化物粒子を均一に分散でき、樹脂組成物の保存安定性を向上することができる。分散媒としては、樹脂組成物の硬化を阻害しなければ、特に限定されない。分散媒は、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0036】
反応性の分散媒として、(メタ)アクリロイル化合物、エポキシ化合物等のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリロイル化合物として、上述するモノマーで例示する化合物を用いてもよい。
【0037】
非反応性の分散媒として、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、メタノール(MeOH)等のアルコール系溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒を用いてもよい。非反応性の分散媒の場合、ベース樹脂と分散媒に分散された無機酸化物粒子とを混合した後、分散媒の一部を除去して樹脂組成物を調製してもよい。無機酸化物粒子が含まれる分散媒を光学顕微鏡(倍率約100倍)で観察して、粒子が観察されない場合に、無機酸化物粒子が一次粒子で分散されたといえる。
【0038】
分散媒に分散された無機酸化物粒子は、樹脂組成物の硬化後も樹脂層中に分散した状態で存在する。反応性の分散媒を使用した場合、無機酸化物粒子は樹脂組成物に分散媒ごと混合され、分散状態が維持されたまま樹脂層中に取り込まれる。非反応性の分散媒を使用した場合、分散媒は少なくともその一部が樹脂組成物から揮発して無くなるが、無機酸化物粒子は分散状態のまま樹脂組成物中に残り、硬化後の樹脂層にも分散した状態で存在する。樹脂層中に存在する無機酸化物粒子は、電子顕微鏡で観察した場合に、一次粒子が分散した状態で観察される。
【0039】
樹脂組成物中での分散性に優れ、強靱な樹脂層を形成し易いことから、上記無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より少なくとも1種であることが好ましい。廉価性に優れる、表面処理がし易い、紫外線透過性を有する、樹脂層に適度な硬さを付与し易い等の観点から、本実施形態に係る無機酸化物粒子として、疎水性のシリカ粒子を用いることがより好ましい。
【0040】
セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与する観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、500nm以下であってもよく、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率を高くする観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡写真の画像解析、光散乱法、BET法等によって測定することができる。無機酸化物の一次粒子が分散された分散媒は、一次粒子の粒径が小さい場合は目視で透明に見える。一次粒子の粒径が比較的大きい(40nm以上)場合は、一次粒子が分散された分散媒は白濁して見えるが沈降物は観察されない。
【0041】
無機酸化物粒子の含有量は、オリゴマー、モノマー及び無機酸化物粒子の総量を基準として1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上55質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が更に好ましい。無機酸化物粒子の含有量が1質量%以上であると、樹脂層のヤング率を高め易くなる。無機酸化物粒子の含有量が60質量%以下であると、樹脂組成物の反応熱を低減し易くなる。
【0042】
線速を上昇させて光ファイバを作製する際にボイドの発生を抑制する観点から、本実施形態に係る樹脂組成物に30mW/cm2の強度で紫外線を300秒間照射した際の反応熱量は、100J/g以上275J/g以下であることが好ましく、110J/g以上265J/g以下であることがより好ましく、120J/g以上260J/g以下であることが更に好ましい。樹脂組成物の反応熱量は、紫外線照射装置を取り付けた示差走査熱量計(紫外線照射DSC)を用いて測定することができる。
【0043】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光ファイバのセカンダリ被覆材料として好適に用いることができる。本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に用いることで、線速を上昇させて光ファイバを作製する際にボイドの発生を抑制して、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0044】
<光ファイバ>
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11及びクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周に設けられたプライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15を含む被覆樹脂層16とを備えている。
【0045】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11及びクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英ガラス、又は、純石英ガラスを用いることができ、クラッド12には純石英ガラス、又は、フッ素が添加された石英ガラスを用いることができる。
【0046】
図1において、例えば、ガラスファイバ13の外径(D2)は100μmから125μm程度であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7μmから15μm程度である。被覆樹脂層16の厚さは、通常、22μmから70μm程度である。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5μmから50μm程度であってもよい。
【0047】
ガラスファイバ13の外径(D2)が125μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが60μm以上70μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10μmから50μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが35μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが25μmであってよい。光ファイバ10の外径は、245μmから265μm程度であってよい。
【0048】
ガラスファイバ13の外径(D2)が125μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが27μm以上48μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10μmから38μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、179μmから221μm程度であってよい。
【0049】
ガラスファイバ13の外径(D2)が100μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが22μm以上37μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5μmから32μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、144μmから174μm程度であってよい。
【0050】
本実施形態に係る樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層に適用することで、高いヤング率を有し、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0051】
本実施形態に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。
【0052】
セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1200MPa以上3500MPa以下であることが好ましく、1200MPa以上3300MPa以下であることがより好ましく、1300MPa以上3000MPa以下であることが更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率が1200MPa以上であると、光ファイバの側圧特性を向上し易く、3500MPa以下であると、セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与できるため、セカンダリ樹脂層に割れ等が発生し難くなる。
【0053】
プライマリ樹脂層14は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。プライマリ樹脂層用の樹脂組成物は、従来公知の技術を用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤としては、上記ベース樹脂で例示した化合物から適宜、選択してもよい。ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層を形成するベース樹脂と異なる組成を有している。
【0054】
光ファイバにボイドが発生することを抑制する観点から、プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃で0.04MPa以上1.0MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上0.9MPa以下であることがより好ましく、0.05MPa以上0.8MPa以下であることが更に好ましい。
【0055】
光ファイバを作製する際の線速は、500m/分以上であってよい。光ファイバの生産効率を上げる観点から、線速は、1000m/分以上が好ましく、1500m/分以上がより好ましく、2000m/分以上が更に好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0057】
[セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物]
(オリゴマー)
オリゴマーとして、分子量600のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより得られたウレタンアクリレートオリゴマー(UA)と、エポキシアクリレートオリゴマー(EA)とを準備した。
【0058】
(モノマー)
モノマーとして、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)(大阪有機化学工業株式会社の商品名「ビスコート310HP」)を準備した。
【0059】
(光重合開始剤)
光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184)及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO)を準備した。
【0060】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子として、メタクリロイル基を有し、平均一次粒径が10~15nmである疎水性シリカ粒子がMEKに分散されたシリカゾルを準備した。
【0061】
(樹脂組成物)
まず、上記オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を混合して、ベース樹脂を調製した。次いで、表1又は表2に示すシリカ粒子の含有量となるように、シリカゾルをベース樹脂と混合した後、分散媒であるMEKの大部分を減圧除去して、実施例及び比較例のセカンダリ樹脂層用の樹脂組成物をそれぞれ作製した。なお、樹脂組成物中に残存しているMEKの含有量は、5質量%以下であった。
【0062】
表1及び表2において、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤の数値は、オリゴマー及びモノマーの総量を基準とする含有量であり、シリカ粒子の数値は、モノマー、オリゴマー及びシリカ粒子の総量を基準とする含有量である。
【0063】
(反応熱)
セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物の反応熱を紫外線照射DSCにより測定した。測定は、φ5mmのアルミニウム製容器に樹脂組成物を約3mg入れて、下記条件で行った。
示差走査熱量計:Q100(TAインスツルメント社製)
データ処理:Universal Analysis 2000(TAインスツルメント社製)
雰囲気:窒素(50mL/分)
温度:25℃
紫外線照射装置:OmniCure S2000(ユーヴィックス社製)
光源:高圧水銀ランプ(全波長)
照射強度:30mW/cm2
照射時間:300秒間(測定開始から1分後に光照射を開始)
【0064】
[光ファイバの作製]
分子量4000のポリプロピレングリコール、イソホロンジイソシアネート、ヒドロキシエチルアクリレート及びメタノールを反応させることにより得られるウレタンアクリレートオリゴマーを準備した。このウレタンアクリレートオリゴマー75質量部、ノニルフェノールEO変性アクリレート12質量部、N-ビニルカプロラクタム6質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート2質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1質量部、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物を得た。
【0065】
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物と、実施例又は比較例の樹脂組成物をセカンダリ樹脂層用として塗布し、その後、紫外線を照射させることで樹脂組成物を硬化させ、厚さ35μmのプライマリ樹脂層とその外周に厚さ25μmのセカンダリ樹脂層を形成して光ファイバを作製した。光ファイバの作製は、線速を500m/分、1000m/分、2000m/分に変更してそれぞれ行った。
【0066】
(塗布性)
線速を変更して作製された光ファイバについて、断線の有無及び樹脂層の割れの有無を確認することで、樹脂組成物の塗布性を評価した。断線及び樹脂層の割れが無い場合を「A」、断線が有り、樹脂層に割れが無い場合を「B」、断線が有り、樹脂層に割れが生じた場合を「C」と評価した。
【0067】
2000m/分の線速で作製した光ファイバを用いて、以下の評価を行った。
【0068】
(プライマリ樹脂層のヤング率)
プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃でのPullout Modulus(POM)法により測定した。光ファイバの2箇所を2つのチャック装置で固定し、2つのチャック装置の間の被覆樹脂層(プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層)部分を除去し、次いで、一方のチャック装置を固定し、他方のチャック装置を固定したチャック装置の反対方向に緩やかに移動させた。光ファイバにおける移動させるチャック装置に挟まれている部分の長さをL、チャックの移動量をZ、プライマリ樹脂層の外径をDp、ガラスファイバの外径をDf、プライマリ樹脂層のポアソン比をn、チャック装置の移動時の荷重をWとした場合、下記式からプライマリ樹脂層のヤング率を求めた。プライマリ樹脂層のヤング率は、0.2MPaであった。
ヤング率(MPa)=((1+n)W/πLZ)×ln(Dp/Df)
【0069】
(セカンダリ樹脂層のヤング率)
セカンダリ樹脂層のヤング率は、光ファイバからガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の被覆樹脂層(長さ:50mm以上)を用いて、23±2℃、50±10%RHの環境下で引張試験(標線間距離:25mm)を行い、2.5%割線値から求めた。
【0070】
(ボイドの発生)
10mの光ファイバを85℃で湿度85%の条件下で120日間保管した後、-40℃に16時間置いて、直径10μm以上のボイドの有無を顕微鏡で観察した。光ファイバ1m当たりのボイドの数が1個未満の場合を「A」、ボイドの数が1~2個の場合を「B」、ボイドの数が2個を超える場合を「C」と評価した。
【0071】
(側圧特性)
サンドペーパーで表面を覆った280mm径のボビンに、光ファイバを単層状に巻き付けた時の1550nmの波長の光の伝送損失を、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法により測定した。また、サンドペーパーのない280mm径のボビンに、光ファイバを単層状に巻き付けた時の1550nmの波長の光の伝送損失を、OTDR法により測定した。測定した伝送損失の差を求め、伝送損失差が0.6dB/km以下の場合を側圧特性「A」、伝送損失差が0.6dB/km超の場合を側圧特性「B」と評価した。
【0072】
【0073】
【0074】
表1及び2より、疎水性のシリカ粒子を含み、かつ、UA/EAの比率が0.25以上である樹脂組成物は、反応発熱量が275J/g以下と小さく、樹脂組成物の塗布性が向上し、光ファイバにおけるボイドを低減できることが確認できる。すなわち、本開示に係る樹脂組成物を光ファイバ被覆用の紫外線硬化型樹脂組成物として用いることで、耐側圧特性に優れる光ファイバを生産効率よく作製することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 光ファイバ
11 コア
12 クラッド
13 ガラスファイバ
14 プライマリ樹脂層
15 セカンダリ樹脂層
16 被覆樹脂層