(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】液晶表示装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240827BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240827BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240827BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1337 515
G02F1/13 505
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2021533896
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025774
(87)【国際公開番号】W WO2021014907
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019133827
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020006346
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 利文
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 剛史
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151735(JP,A)
【文献】特開2015-219255(JP,A)
【文献】特開2018-185417(JP,A)
【文献】特開2014-187240(JP,A)
【文献】特開平11-202311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、
遮光領域と透過領域とを有する駆動基板と、
前記駆動基板上における前記透過領域に対応する位置に設けられた透過型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
回折作用によって、入射光を前記複数の画素電極に導くように、前記対向基板と前記液晶層との間において前記第1の層内における前記遮光領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える
液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の層の前記厚み方向の断面形状は、厚みに比べて幅の方が大きい
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶層と前記第1の層との間に設けられた共通電極、をさらに備える
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶層と前記第1の層との間に設けられ、前記第2の屈折率を有する材料で構成された平坦層、をさらに備える
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の層と前記対向基板との間において前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置に設けられた複数のマイクロレンズ、をさらに備える
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置において、前記第1の層における前記対向基板側の面がマイクロレンズ形状とされている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の層は、積層型Cプレートであり、
前記積層型Cプレートの平均屈折率が前記第1の屈折率とされている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2の層は、前記遮光領域のうち、少なくとも、前記複数の画素電極からなる画素平面内の対角方向に相当する領域に設けられている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記駆動基板は配線層を有し、
前記遮光領域は、前記配線層に対応する領域である
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記駆動基板は配線層を有し、
光軸方向において、前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置に設けられた3枚以上のマイクロレンズ、をさらに備え、
前記液晶層よりも光入射側と、前記配線層よりも光射出側とにそれぞれ、少なくとも前記3枚以上のマイクロレンズのうちの1つが設けられ、
前記3枚以上のマイクロレンズによって、入射光束が前記液晶層よりも前記光射出側で結像するようになされ、
前記3枚以上のマイクロレンズによる前記光入射側の結像位置と前記光射出側の結像位置との共役結像位置間の空気換算距離が、前記3枚以上のマイクロレンズのうち最も前記光入射側にあるマイクロレンズと最も前記光射出側にあるマイクロレンズとの間の空気換算距離よりも大きい
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記3枚以上のマイクロレンズによる共役結像の倍率は0.7倍以上、1.3倍以下である
請求項
10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
以下の条件式を満足する
請求項
10に記載の液晶表示装置。
0.8≦f
before/f
after≦1.2 ……(1)
ただし、
f
before:前記3枚以上のマイクロレンズのうち前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
f
after:前記3枚以上のマイクロレンズのうち前記配線層よりも前記光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
とする。
【請求項13】
以下の条件式を満足する
請求項
10に記載の液晶表示装置。
0.8≦t
Lbefore-Wire/t
Wire-Lafter≦1.2 ……(2)
ただし、
t
Lbefore-Wire:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も前記配線層に近い位置に設けられたマイクロレンズから、前記配線層までの空気換算長
t
Wire-Lafter:前記配線層から、前記配線層よりも前記光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も前記配線層に近い位置に設けられたマイクロレンズまでの空気換算長
とする。
【請求項14】
前記液晶層よりも前記光入射側に、前記3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、
以下の条件式を満足する
請求項
10に記載の液晶表示装置。
0.65≦f
before/t
Lbeforebetween≦1.35 ……(3)
ただし、
f
before:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
t
Lbeforebetween:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
【請求項15】
前記配線層よりも前記光射出側に、前記3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、
以下の条件式を満足する
請求項
10に記載の液晶表示装置。
0.65≦f
after/t
Lafterbetween≦1.35 ……(4)
ただし、
f
after:前記配線層よりも前記光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
t
Lafterbetween:前記配線層よりも前記光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
【請求項16】
以下の条件式を満足する
請求項
10に記載の液晶表示装置。
1.59/φ
Wire≦n
Wire・sinθ
Wire ……(5)
ただし、
n
Wire:前記配線層の屈折率
θ
Wire:前記配線層を通過する光線の角度
φ
Wire:1つの前記画素電極における透過領域の内接円直径[μm]
とする。
【請求項17】
液晶層と、
駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた反射型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
回折作用によって、入射光を前記複数の画素電極に導くように、前記対向基板と前記液晶層との間において前記第1の層内における前記複数の画素電極の間に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える
液晶表示装置。
【請求項18】
液晶層と、
遮光領域と透過領域とを有する駆動基板と、
前記駆動基板上における前記透過領域に対応する位置に設けられた透過型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
回折作用によって、入射光を前記複数の画素電極に導くように、前記対向基板と前記液晶層との間において前記第1の層内における前記遮光領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える液晶表示装置、を含む電子機器。
【請求項19】
液晶層と、
駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた反射型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
回折作用によって、入射光を前記複数の画素電極に導くように、前記対向基板と前記液晶層との間において前記第1の層内における前記複数の画素電極の間に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える液晶表示装置、を含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の画素電極を有する液晶表示装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタなどに用いられる透過型の液晶表示装置の透過率を向上させる技術として、TFT(Thin Film Transistor)基板の信号線やゲート線などの配線幅や、トランジスタのサイズを小さくすることにより開口率を高める方法がある。また、配線に照射される光線を画素ごとに設けたマイクロレンズで曲げることで光利用効率を高める方法がある(例えば特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-133203号公報
【文献】特開平11-64836号公報
【文献】特開2015-197577号公報
【文献】特開2018-100994号公報
【文献】特開2011-22311号公報
【発明の概要】
【0004】
上記した方法に対して、さらなる光利用効率の向上を図ることが可能な技術の開発が望まれている。
【0005】
光利用効率の向上を図ることが可能な液晶表示装置、および電子機器を提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る第1の液晶表示装置は、液晶層と、遮光領域と透過領域とを有する駆動基板と、駆動基板上における透過領域に対応する位置に設けられた透過型の複数の画素電極と、複数の画素電極および液晶層を介して駆動基板に対向配置された対向基板と、対向基板と液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、回折作用によって、入射光を複数の画素電極に導くように、対向基板と液晶層との間において第1の層内における遮光領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層とを備える。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る第2の液晶表示装置は、液晶層と、駆動基板と、駆動基板上に設けられた反射型の複数の画素電極と、複数の画素電極および液晶層を介して駆動基板に対向配置された対向基板と、対向基板と液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、回折作用によって、入射光を複数の画素電極に導くように、対向基板と液晶層との間において第1の層内における複数の画素電極の間に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層とを備える。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る第1の電子機器は、上記本開示の一実施の形態に係る第1の液晶表示装置を含む。
【0009】
本開示の一実施の形態に係る第2の電子機器は、上記本開示の一実施の形態に係る第2の液晶表示装置を含む。
【0010】
本開示の一実施の形態に係る第1もしくは第2の液晶表示装置、または第1もしくは第2の電子機器では、光利用効率が向上するように、対向基板と液晶層との間に、屈折率および形状が最適化された第1の層および第2の層が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る液晶表示装置の回路構成の一例を概略的に示す構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る液晶表示装置における1画素の回路構成の一例を概略的に示す回路図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図4】比較例1に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る液晶表示装置における入射光に対する作用の一例を示す説明図である。
【
図6】比較例1に係る液晶表示装置における入射光に対する作用の一例を示す説明図である。
【
図7】実施例1に係る液晶表示装置と比較例1に係る液晶表示装置とのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示す説明図である。
【
図8】第1の実施の形態の変形例1に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図9】第1の実施の形態の変形例2に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図11】比較例2に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図12】実施例2に係る液晶表示装置と比較例2に係る液晶表示装置とのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示す説明図である。
【
図13】第2の実施の形態の変形例1に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図14】第3の実施の形態に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図15】比較例3に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図16】実施例3に係る液晶表示装置と比較例3に係る液晶表示装置とのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示す説明図である。
【
図17】第4の実施の形態に係る液晶表示装置の要部の一構成例を概略的に示す平面図である。
【
図18】第5の実施の形態に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図19】
図18に示した液晶表示装置における対向基板の低屈折率領域付近の構成を拡大して示す断面図である。
【
図20】
図18に示した液晶表示装置における駆動基板の画素間領域付近の構成を拡大して示す断面図である。
【
図21】比較例4に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図22】比較例6-1に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図23】一般的な透過型のプロジェクタの一構成例を簡略化して示す構成図である。
【
図24】比較例6-2に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す断面図である。
【
図25】実施例6-1に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図26】実施例6-1に係る液晶表示装置における射出回折角の状態の一例を示す説明図である。
【
図27】比較例6-3に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図28】比較例6-3に係る液晶表示装置における射出回折角の状態の一例を示す説明図である。
【
図29】実施例6-1に係る液晶表示装置における配線層33の開口部および遮光領域の一例を示す平面図である。
【
図30】実施例6-2に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図31】実施例6-3に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図32】実施例6-4に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図33】実施例6-5に係る液晶表示装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図34】適用例に係る電子機器としての投射型表示装置の一例を概略的に示す構成図である。
【
図35】適用例に係る電子機器としてのテレビジョン装置の一構成例を概略的に示す外観図である。
【
図36】適用例に係る電子機器としてのデジタル一眼レフカメラの一構成例を概略的に示す正面図である。
【
図37】適用例に係る電子機器としてのデジタル一眼レフカメラの一構成例を概略的に示す背面図である。
【
図38】適用例に係る電子機器としてのヘッドマウントディスプレイの一構成例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.比較例
1.第1の実施の形態(透過型の液晶表示装置)(
図1~
図9)
1.1 液晶表示装置の回路構成
1.2 液晶表示装置の断面構成および作用
1.3 実施例(光利用効率のシミュレーション)
1.4 効果
1.5 変形例
2.第2の実施の形態(対向基板にマイクロレンズを有する構成例)(
図10~
図13)
2.1 構成
2.2 実施例(光利用効率のシミュレーション)
2.3 効果
2.4 変形例
3.第3の実施の形態(対向基板にCプレートを有する構成例)(
図14~
図16)
3.1 構成
3.2 実施例(光利用効率のシミュレーション)
3.3 効果
4.第4の実施の形態(画素コーナ部に相当する領域のみに矩形状の低屈折率層を設けた構成例)(
図17)
4.1 構成
4.2 効果
5.第5の実施の形態(反射型の液晶表示装置)(
図18~
図21)
6.第6の実施の形態(対向基板側と駆動基板側との双方にマイクロレンズを設けた構成例)(
図22~
図33)
6.1 概要
6.2 実施例
6.3 変形例
7.適用例(
図34~
図38)
8.その他の実施の形態
【0013】
<0.比較例>
マイクロレンズを用いた液晶表示装置の光利用効率の向上に類する技術として、例えば特許文献1(特開平10-133203号公報)、および特許文献2(特開平11-64836号公報)では、遮光領域に対応した箇所にプリズム状やシリンドリカル状のレンズを設けることで、入射光線が遮光領域に当たらないようにする方法が提案されている。特許文献1および特許文献2で提案されている構造では、発散角を持った光の入射時にはプリズム等により正反射してしまう角度成分が多く、光利用効率が上がらないばかりか、反射光によってフレア等の画質悪化が懸念される。また、プリズムやシリンドリカルレンズの構造体の作製についても、プリズム角度やシリンドリカルレンズの曲率等のバラつきなどの生産性の課題が大きい。さらに、液晶層に対して突起形状としてしまうと、液晶配向乱れが発生し、ザラつきやコントラスト比の悪化を招くなど、課題が多い。
【0014】
また別の方法として、特許文献3(特開2015-197577号公報)では、厚み方向に配置された複数のマイクロレンズアレイを備え、1つのマイクロレンズアレイにおける遮光領域に相当する位置にスリットを設けることによって、液晶表示装置の光利用効率を高める方法が提案されている。特許文献3で提案されている構造では、例えば、厚み方向の断面内において、スリットの高さ(縦方向の長さ)をh、横方向の幅をwとすると、h/wが1より十分に大きく、スリットのアスペクト比が高い構造となっている。この方法では、アスペクト比の高いスリット構造の加工が難しく生産性に課題がある。さらに、スリットの壁面による全反射を利用して光を開口部に導く、導波路の構成であるため、入射光の偏光乱れが発生しコントラスト比の悪化を招くなど、課題が多い。
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 液晶表示装置の回路構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の回路構成の一例を概略的に示している。
【0016】
液晶表示装置10は、後述するように、例えばプロジェクタなどの投射型表示装置に用いられるものであり、例えばHTPS(High Temperature Poly-Silicon)等の透過型の液晶表示装置である。この液晶表示装置10は、複数の画素Pを有する表示領域(有効画素領域)10aと、表示領域10aの周囲に配置された走査線駆動回路110および信号線駆動回路120と、複数の走査線GLおよび複数の信号線DLとを備えている。なお、この他にも、図示しないタイミングコントローラや各種信号処理を行う映像信号処理部が設けられていてもよい。
【0017】
信号線駆動回路120は、水平方向に沿って並列配置された複数の信号線DLを介して、複数の画素Pに対して水平方向に順次、映像信号に基づく映像信号を供給する。走査線駆動回路110は、垂直方向に沿って並列配置された複数の走査線GLを介して、複数の画素Pに対して垂直方向に順次、ゲート信号(走査信号)を供給する。
【0018】
複数の画素Pは、複数の信号線DLと複数の走査線GLとの各交点に対応する位置に配置され、全体として行列状(マトリクス状)に2次元配置されている。
【0019】
図2は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10における1画素の回路構成の一例を概略的に示している。
【0020】
画素Pは、例えば液晶素子LCと、補助容量素子Csと、TFT(Thin Film Transistor)12とを有している。液晶素子LCの一端(後述の画素電極31)は、TFT12のドレインと補助容量素子Csの一端とに接続され、他端(後述の共通電極41)は、例えば接地されている。補助容量素子Csは、液晶素子LCの蓄積電荷を安定化させるための容量素子である。この補助容量素子Csの一端は、液晶素子LCの一端およびTFT12のドレインに接続され、他端は補助容量線CLに接続されている。TFT12のゲートは走査線GLに、ソースは信号線DLにそれぞれ接続されると共に、ドレインは液晶素子LCの一端と補助容量素子Csの一端とに接続されている。
【0021】
液晶素子LCは、信号線DLからTFT12を介して一端に供給される映像電圧に応じて、光透過率が変化する。TFT12は、液晶素子LCおよび補助容量素子Csの各一端に対し、映像信号に基づく映像電圧を供給するためのスイッチング素子であり、例えばMOS-FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)により構成されている。
【0022】
この液晶表示装置10では、外部から入力された映像信号に基づいて、走査線駆動回路110により画素Pが線順次で選択されると共に、信号線駆動回路120により映像信号に応じた映像電圧が各画素Pに供給される。これにより、画素Pが表示駆動され、映像表示がなされる。
【0023】
[1.2 液晶表示装置の断面構成および作用]
(液晶表示装置の断面構成)
図3は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の断面構成例を概略的に示している。
図3では、概略2つの画素Pに相当する素子構造を表している。
【0024】
液晶表示装置10は、液晶層20と、駆動基板30と、駆動基板30上に設けられた透過型の複数の画素電極31と、複数の画素電極31および液晶層20を介して駆動基板30に対向配置された対向基板40とを備えている。
【0025】
また、液晶表示装置10において、液晶層20と対向基板40との間には、液晶層20側から順に、配向膜22と、共通電極41と、高屈折率層42とが設けられている。高屈折率層42内には低屈折率層43が設けられている。
【0026】
また、液晶表示装置10において、液晶層20と複数の画素電極31との間には配向膜21が設けられている。
【0027】
画素電極31および共通電極41は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜により構成されている。共通電極41は、液晶層20と高屈折率層42との間に設けられている。
【0028】
配向膜21,22は、例えば酸化シリコン(SiO2)などの絶縁膜により構成されている。また、配向膜21,22は、有機絶縁材料により構成されていてもよい。配向膜21,22は、例えば斜方蒸着により形成されたものであり、その厚みは、200nm程度である。
【0029】
液晶層20には、用途に応じて、種々のモードの液晶が用いられる。液晶層20には、例えば、垂直配向型(VA(Vertical Alignment)モード)が用いられている。VAモードの液晶は、印加電圧に対する応答特性を高めるために、液晶分子にいわゆるプレチルトが付与されている。このプレチルトの角度は、例えば、水平方向を0°とすると、85°である。液晶層16を構成する液晶材料の屈折率異方性(Δn)は、例えば、0.13であり、誘電率異方性は、例えば、-3.5である。液晶層16の厚み(セルギャップ)は、例えば、2.7μmである。その他、液晶層20には、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically controlledbirefringence)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、またはIPS(InPlane Switching)モード等の液晶を用いてもよい。
【0030】
駆動基板30および対向基板40は、光透過性を有する透明基板により構成されている。
【0031】
駆動基板30は、遮光領域(配線領域)51と透過領域(開口部)50とを有する。画素電極31は、駆動基板30上における透過領域50に対応する位置に設けられている。
【0032】
駆動基板30は、TFT基板であり、内部に、液晶層20側から順に、配線層33と、回路素子層34と、遮光膜35とが形成されている。駆動基板30における各層間には、層間絶縁膜32が形成されている。層間絶縁膜32は、例えば酸化シリコン(SiO)により構成されている。配線層33は、複数のAl(アルミニウム)配線33A,33B,33Cを有している。配線層33、回路素子層34および遮光膜35は、遮光領域51に対応する領域に形成されている。
【0033】
回路素子層34は、例えば、
図2に示したような画素Pごとに設けられた補助容量素子CsおよびTFT12(Thin Film Transistor)12等の回路素子を有している。
【0034】
画素電極31は、配線層33を介して回路素子層34の補助容量素子CsおよびTFT12に電気的に接続されている。
【0035】
高屈折率層42は、低屈折率層43および対向基板40の屈折率よりも高い第1の屈折率を有する材料で構成されている。低屈折率層43は、高屈折率層42内における遮光領域51に対応する領域の少なくとも一部に設けられている。低屈折率層43は、高屈折率層42の屈折率(第1の屈折率)よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成されている。低屈折率層43は、厚み方向の断面形状が矩形状となっている。低屈折率層43の厚み方向の断面形状は、厚みd1に比べて幅w1の方が大きいことが望ましい。低屈折率層43は、遮光領域51に対応する領域全てに形成されていてもよいし、遮光領域51に対応する領域に部分的に形成されていてもよい。低屈折率層43の幅w1は、駆動基板30の配線幅(遮光領域51の幅)に対し50%以上、好ましくは60%以上であるとよい。また、低屈折率層43の幅w1は、駆動基板30の配線幅よりも大きくてもよい。低屈折率層43は、後述するように、入射光に対し回折作用を生じさせる。
【0036】
第1の実施の形態において、高屈折率層42は、本開示の技術における「第1の層」の一具体例に相当する。第1の実施の形態において、低屈折率層43は、本開示の技術における「第2の層」の一具体例に相当する。
【0037】
対向基板40は、例えばガラス基板であり、例えば石英(屈折率1.46)、もしくはホウ珪酸ガラス(屈折率1.51)で構成される。対向基板40上に、例えば窒化シリコン(SiN)膜やシリコン酸窒化(SiON)膜などの高屈折率材料を高屈折率層42として成膜し、次に、酸化シリコン(SiO)などの低屈折率材料を埋め込むことで矩形状の低屈折率層43を形成することができる。
【0038】
(液晶表示装置の作用)
図4は、比較例1に係る液晶表示装置100の一構成例を概略的に示している。
図5は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10における入射光に対する作用の一例を示している。
図6は、比較例1に係る液晶表示装置100における入射光に対する作用の一例を示している。
【0039】
図4に示した比較例1に係る液晶表示装置100は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10における高屈折率層42および低屈折率層43に代えて、遮光膜44を備えている。遮光膜44は、対向基板40と共通電極41との間における遮光領域51に対応する領域に設けられている。
【0040】
比較例1に係る液晶表示装置100では、
図6に示したように、対向基板40への入射光が遮光膜44によって遮光される。このため、遮光膜44への入射光は、画素電極31および駆動基板30の透過領域50に到達することはない。このため、光利用効率が低下する。
【0041】
これに対して、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10では、対向基板40側に設けられた低屈折率層43が、
図5に示したように、回折作用によって、入射光を画素電極31および駆動基板30の透過領域50に導く。低屈折率層43は、プリズムやレンズとは異なり、幾何光学(光線光学)の考え方ではなく、回折現象(電磁波光学)の原理に基づいて光を曲げるため、断面形状は矩形状でよい。
【0042】
[1.3 実施例(光利用効率のシミュレーション)]
図7は、実施例1に係る液晶表示装置と比較例1に係る液晶表示装置100とのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示している。
【0043】
実施例1に係る液晶表示装置は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の各部を以下のようなシミュレーション条件の構成にしたものである。また、比較例1に係る液晶表示装置100のシミュレーション条件は、高屈折率層42および低屈折率層43の構成を除き、実施例1に係る液晶表示装置と同様である。なお、
図3にも、シミュレーション条件として設定した各部の寸法の値等を示す。ただし、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構成は、シミュレーション条件として設定した構成に限定されるものではなく、各部の寸法の値や材料等は他の値や他の材料であってもよい。
【0044】
・画素ピッチp1:6.3μm
・配線幅w2:1.4μm
・高屈折率層42の屈折率n1:1.67(SiON)
・低屈折率層43の屈折率n2:1.46(SiO)
・低屈折率層43の厚みd1:500nm
・低屈折率層43の幅w1:1μm
【0045】
図7には、液晶表示装置を用いたプロジェクタにおいて、投射レンズのFno(Fナンバー)が2.0であることを前提とした場合に、投射レンズによって取り込み可能な光利用効率のシミュレーション値を示す。
図7から分かるように、実施例1に係る液晶表示装置は、比較例1に係る液晶表示装置100に比べて、光利用効率が向上している。
【0046】
[1.4 効果]
以上説明したように、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10によれば、対向基板40と液晶層20との間に、屈折率および形状が最適化された高屈折率層42および低屈折率層43を設けるようにしたので、光利用効率が向上する。
【0047】
第1の実施の形態に係る液晶表示装置10によれば、対向基板40側において、遮光領域(配線領域)51に対応する領域の屈折率を、透過領域(開口部)50に対応する領域の屈折率よりも低くすることで、駆動基板30の配線層33に照射される光を低減させつつ、光利用効率を向上させることができる。これにより、明るい液晶表示装置10の提供が可能となる。これにより、明るいプロジェクタを提供できる。さらに、光利用効率が向上することにより液晶表示装置10の入射光による発熱を抑制することができ、冷却ファンの騒音を抑えたプロジェクタを提供できる。また、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構造は、対向基板40側にプリズムやレンズ、またはスリットのような構造物を設ける場合に比べて、簡便で生産性の高いプロセスにより実現可能であり、コストダウンが可能となる。
【0048】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。以降の他の実施の形態の効果についても同様である。
【0049】
[1.5 変形例]
第1の実施の形態に係る液晶表示装置10では、低屈折率層43が共通電極41上に形成されている構成例を示したが、低屈折率層43と共通電極41との間に、他の層が形成されていてもよい。
【0050】
(変形例1)
図8は、第1の実施の形態の変形例1に係る液晶表示装置10Aの断面構成例を概略的に示している。
【0051】
変形例1に係る液晶表示装置10Aは、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構成に対して、低屈折率層43が、段差部43A、平坦層43Bとを有している。段差部43A、平坦層43Bの屈折率は同一である。段差部43Aは、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10における低屈折率層43の構成と同様に、高屈折率層42内における遮光領域51に対応する領域の少なくとも一部に形成されている。段差部43Aは、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10における低屈折率層43の構成と同様に、厚み方向の断面形状が矩形状となっており、入射光に対し回折作用を生じさせる。
【0052】
平坦層43Bは、段差部43Aと共通電極41との間に形成されている。このように、低屈折率層43の矩形状の部分(段差部43A)と共通電極41との間に、他の層が形成されていてもよい。
【0053】
第1の実施の形態の変形例1において、段差部43Aは、本開示の技術における「第2の層」の一具体例に相当する。
【0054】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10と略同様であってもよい。
【0055】
(変形例2)
図9は、第1の実施の形態の変形例2に係る液晶表示装置10Bの断面構成例を概略的に示している。
【0056】
変形例2に係る液晶表示装置10Bは、第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構成に対して、低屈折率層43が、高屈折率層42内における厚み方向においてより対向基板40側の位置に設けられている。これにより、低屈折率層43と共通電極41との間にも高屈折率層42が存在している。すなわち、低屈折率層43は共通電極41に接していない構成となっている。
【0057】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10と略同様であってもよい。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、以下では、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
[2.1 構成]
図10は、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cの断面構成例を概略的に示している。
【0060】
第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cは、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構成に対して、複数のマイクロレンズ45をさらに備えている。
【0061】
マイクロレンズ45は、高屈折率層42と対向基板40との間において、複数の画素電極32のそれぞれに対応する位置に設けられている。マイクロレンズ45は、シリコン酸窒化(SiON)膜などの高屈折率材料で構成されている。マイクロレンズ45は例えば球面レンズ形状であり、対向基板40および高屈折率層42よりも高い屈折率を有する材料で構成されることで、正の屈折力を有する。これにより、マイクロレンズ45は、入射光を画素電極31および駆動基板30の透過領域50に向けて屈折させる効果を有する。
【0062】
なお、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cにおいて、低屈折率層43の構成を、上記第1の実施の形態の変形例と同様の構成にすることも可能である。
【0063】
[2.2 実施例(光利用効率のシミュレーション)]
図11は、比較例2に係る液晶表示装置100Cの断面構成例を概略的に示している。
【0064】
図11に示した比較例2に係る液晶表示装置100Cは、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cにおける高屈折率層42および低屈折率層43を省いた構成とされている。実施例2に係る液晶表示装置10Cでは、マイクロレンズ45は対向基板40内に形成されている。
【0065】
図12は、実施例2に係る液晶表示装置10Cと比較例2に係る液晶表示装置100Cとのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示している。
【0066】
実施例2に係る液晶表示装置は、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cの各部を以下のようなシミュレーション条件の構成にしたものである。また、比較例2に係る液晶表示装置100Cのシミュレーション条件は、高屈折率層42および低屈折率層43の構成を除き、実施例2に係る液晶表示装置と同様である。なお、
図10にも、シミュレーション条件として設定した各部の寸法の値等を示す。ただし、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cの構成は、シミュレーション条件として設定した構成に限定されるものではなく、各部の寸法の値や材料等は他の値や他の材料であってもよい。
【0067】
・画素ピッチp1:4.5μm
・配線幅w2:1.4μm
・高屈折率層42の屈折率n1:1.67(SiON)
・低屈折率層43の屈折率n2:=1.46(SiO)
・低屈折率層43の厚みd1:500nm
・低屈折率層43の幅w1:1μm
・マイクロレンズ45:曲率半径4.5μmの球面レンズ、n=1.76(SiON)
【0068】
図12には、液晶表示装置を用いたプロジェクタにおいて、投射レンズのFno(Fナンバー)が2.0であることを前提とした場合に、投射レンズによって取り込み可能な光利用効率のシミュレーション値を示す。
図12から分かるように、実施例2に係る液晶表示装置は、比較例2に係る液晶表示装置100Cに比べて、光利用効率が向上している。
【0069】
[2.3 効果]
第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cによれば、対向基板40と液晶層20との間に、屈折率および形状が最適化された高屈折率層42および低屈折率層43を設け、さらに高屈折率層42と対向基板40との間にマイクロレンズ45を設けるようにしたので、光利用効率がさらに向上する。
【0070】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10と略同様であってもよい。
【0071】
[2.4 変形例]
(変形例1)
図13は、第2の実施の形態の変形例1に係る液晶表示装置10Dの断面構成例を概略的に示している。
【0072】
変形例1に係る液晶表示装置10Dは、第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cの構成に対して、マイクロレンズ45の形成方法が異なっている。変形例1に係る液晶表示装置10Dでは、高屈折率層42とマイクロレンズ45とが別々の層ではなく、高屈折率層42における対向基板40側の面をレンズ形状にすることによりマイクロレンズ45が形成されている。
【0073】
なお、第2の実施の形態の変形例1において、低屈折率層43の構成を、上記第1の実施の形態の変形例と同様の構成にすることも可能である。
【0074】
その他の構成、作用および効果は、上記第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cと略同様であってもよい。
【0075】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、以下では、上記第1または第2の実施の形態に係る液晶表示装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0076】
[3.1 構成]
図14は、第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eの断面構成例を概略的に示している。
【0077】
第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eは、
図10に示した第2の実施の形態に係る液晶表示装置10Cの構成に対して、高屈折率層42に代えて、積層型Cプレート(C-Plate)42Cを備えている。低屈折率層43は、積層型Cプレート42C内に形成されている。
【0078】
第3の実施の形態において、積層型Cプレート42Cは、本開示の技術における「第1の層」の一具体例に相当する。
【0079】
積層型Cプレート42Cは、例えばネガティブCプレートである。積層型Cプレート42Cは、例えば窒化シリコン(SiN)膜と酸化シリコン(SiO)膜とを交互に多数、積層した構成とされている。積層型Cプレート42Cは、平均屈折率(実効的な屈折率)が、低屈折率層43および対向基板40の屈折率よりも高い第1の屈折率を有する材料で構成されている。積層型Cプレート42Cは、例えば、膜厚30nmの窒化シリコン(SiN)膜と酸化シリコン(SiO)膜とを交互に150層積層することにより構成されている。この場合、積層型Cプレート42Cの平均屈折率(実効的な屈折率)は、1.68となる。
【0080】
なお、第3の実施の形態において、低屈折率層43の構成を、上記第1の実施の形態の変形例と同様の構成にすることも可能である。
【0081】
[3.2 実施例(光利用効率のシミュレーション)]
図15は、比較例3に係る液晶表示装置100Eの断面構成例を概略的に示している。
【0082】
図15に示した比較例3に係る液晶表示装置100Eは、第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eにおける低屈折率層43を省いた構成とされている。
【0083】
図16は、実施例3に係る液晶表示装置と比較例3に係る液晶表示装置100Eとのそれぞれの光利用効率を電磁波光学的にシミュレーションした結果の一例を示している。
【0084】
実施例3に係る液晶表示装置は、第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eの各部を以下のようなシミュレーション条件の構成にしたものである。また、比較例3に係る液晶表示装置100Eのシミュレーション条件は、低屈折率層43の構成を除き、実施例3に係る液晶表示装置と同様である。なお、
図14にも、シミュレーション条件として設定した各部の寸法の値等を示す。ただし、第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eの構成は、シミュレーション条件として設定した構成に限定されるものではなく、各部の寸法の値や材料等は他の値や他の材料であってもよい。
【0085】
・画素ピッチp1:5.6μm
・配線幅w2:1.2μm
・積層型Cプレート42Cの構成:SiN/SiOの積層構造(150層、各30nm)・積層型Cプレート42Cの平均屈折率n1a:=1.68
・低屈折率層43の屈折率n2:=1.46(SiO)
・低屈折率層43の厚みd1:500nm
・低屈折率層43の幅w1:1μm
・マイクロレンズ45:曲率半径4.5μmの球面レンズ、n=1.76(SiON)
【0086】
図16には、液晶表示装置を用いたプロジェクタにおいて、投射レンズのFno(Fナンバー)が2.0であることを前提とした場合に、投射レンズによって取り込み可能な光利用効率のシミュレーション値を示す。
図16から分かるように、実施例3に係る液晶表示装置は、比較例3に係る液晶表示装置100Eに比べて、光利用効率が向上している。
【0087】
[3.3 効果]
第3の実施の形態に係る液晶表示装置10Eによれば、対向基板40側の高屈折率層42として積層型Cプレート42Cを用いるようにしたので、光利用効率がさらに向上する。
【0088】
その他の構成、作用および効果は、上記第1または第2の実施の形態に係る液晶表示装置と略同様であってもよい。
【0089】
<4.第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、以下では、上記第1ないし第3のいずれかの実施の形態に係る液晶表示装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0090】
[4.1 構成]
図17は、第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fの要部の平面構成例を概略的に示している。
【0091】
第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fは、例えば上記第2または第3の実施の形態に係る液晶表示装置の構成に対して、面内における低屈折率層43を設ける位置を限定したものである。
【0092】
図17には、駆動基板30における遮光領域51と透過領域50との面内構成の一例を示す。遮光領域51は配線領域に相当する。透過領域50は液晶表示装置10Fにおける画素Pの開口部に相当する。面内において、配線領域は対角方向に相当する領域(画素コーナ部52)が他の領域に比べて大きくなっている。第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fでは、低屈折率層43を、配線領域のうち画素平面内の画素コーナ部52に相当する領域にのみ設けている。なお、
図17には、面内において、画素コーナ部52の配線領域に対して低屈折率層43の大きさが小さい場合の構成例を示しているが、低屈折率層43の面内の大きさが配線領域と同じ、または配線領域よりも大きい構成であってもよい。
【0093】
第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fの各部の寸法は、例えば以下の値となっている。各部の寸法が以下の値の場合、画素Pの開口率は69%となる。ただし、第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fの各部の寸法は、以下に示す値に限定されるものではなく、他の値であってもよい。
【0094】
・画素ピッチp1:7.2μm
・低屈折率層43の平面形状:2.4μm角
・マイクロレンズ45の曲率半径:5.1μm
【0095】
その他の構成、作用および効果は、上記第2または第3の実施の形態に係る液晶表示装置10と略同様であってもよい。
【0096】
[4.2 効果]
第4の実施の形態に係る液晶表示装置10Fによれば、低屈折率層43を必要最小限の領域に設けた構成で、光利用効率を向上させることができる。
【0097】
<5.第5の実施の形態>
次に、本開示の第5の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、以下では、上記第1ないし第4のいずれかの実施の形態に係る液晶表示装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0098】
図18は、第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gの断面構成例を概略的に示している。
図19には、
図18に示した液晶表示装置10Gにおける対向基板40の低屈折率領域40A付近の断面構成を拡大して示す。
図20には、
図18に示した液晶表示装置10Gにおける駆動基板60の画素間領域60A付近の断面構成を拡大して示す。
【0099】
第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gは、反射型の液晶表示装置、例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)となっている。液晶表示装置10Gは、液晶層20と、駆動基板60と、駆動基板60上に設けられた反射型の複数の画素電極61と、複数の画素電極61および液晶層20を介して駆動基板60に対向配置された対向基板40とを備えている。
【0100】
液晶表示装置10Gにおいて、対向基板40側の構成は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10の構成と略同様であってもよい。なお、
図18には、対向基板40側の構成が第1の実施の形態の変形例1に係る液晶表示装置10A(
図8)に相当する例を示す。すなわち、低屈折率層43が、段差部43Aと平坦層43Bとを有する構成例を示す。液晶表示装置10Gでは、低屈折率層43の矩形状の部分(段差部43A)が、反射型の複数の画素電極61の間(画素間)に対応する領域の少なくとも一部に設けられている。
【0101】
駆動基板60は、例えばSi(シリコン)基板であり、内部に、液晶層20側から順に、配線層63と、回路素子層64とが形成されている。駆動基板60における各層間には、層間絶縁膜62が形成されている。配線層63は、例えば複数のAl(アルミニウム)配線を有している。回路素子層64は、例えば、Cu(銅)配線とTr(トランジスタ)素子等を有している。
【0102】
画素電極61は、配線層63を介して回路素子層64に電気的に接続されている。画素電極61は例えばAl(アルミニウム)からなる反射電極である。画素電極61と配向膜21との間には、増反射膜66と増反射膜67とが形成されている。増反射膜66と増反射膜67は、画素電極61の反射率を向上させるためのものである。増反射膜66は例えば酸化シリコン(SiO)膜、増反射膜67は例えば窒化シリコン(SiN)膜で構成されている。
【0103】
図21は、比較例4に係る液晶表示装置100Gの断面構成例を概略的に示している。比較例4に係る液晶表示装置100Gは、第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gの構成に対して、対向基板40側の高屈折率層42および低屈折率層43を省いた構成とされている。比較例4に係る液晶表示装置100Gでは、対向基板40側において複数の画素電極61の間(画素間)に相当する領域に入射した光が、そのまま画素間に入射する。これに対して、第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gでは、対向基板40側において画素間に相当する領域に入射した光を、低屈折率層43の矩形状の部分(段差部43A)の回折作用により、画素電極61に導くことが可能となる。これにより、比較例4に係る液晶表示装置100Gに比べて、光利用効率を向上させることができる。
【0104】
なお、
図18~
図20には、第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gの各部の寸法や材料の具体例を示す。ただし、第5の実施の形態に係る液晶表示装置10Gの構成は、
図18~
図20に示した具体例に限定されるものではなく、各部の寸法の値や材料等は他の値や他の材料であってもよい。なお、代表的な部分の寸法や材料は以下のとおりである。
【0105】
・画素ピッチp1:4.0μm
・画素間幅w3:250nm
・高屈折率層42の屈折率n1:1.67(SiON)
・低屈折率層43の屈折率n2:1.46(SiO)
・低屈折率層43の矩形状の部分(段差部43A)の厚みd1:200nm
・低屈折率層43の矩形状の部分(段差部43A)の幅w1:250nm
【0106】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置10と略同様であってもよい。
【0107】
<6.第6の実施の形態>
次に、本開示の第6の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、以下では、上記第1ないし第5のいずれかの実施の形態に係る液晶表示装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0108】
[6.1 概要]
上記第2の実施の形態では、対向基板40側(液晶層20よりも光入射側)にマイクロレンズ45を備えた構成例(
図10、
図13等)について説明したが、駆動基板30側(配線層33よりも光射出側)にもマイクロレンズを備えた構成であってもよい。また、光軸方向において、1画素に対して対向基板40側と駆動基板30側との少なくとも一方に、マイクロレンズが複数、設けられていてもよい。以下、第6の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する前に、光軸方向において、対向基板40側と駆動基板30側との双方に少なくとも1枚のマイクロレンズを配置する場合の課題について説明する。
【0109】
近年、透過型の液晶表示装置においては発熱が課題となりつつあるが、発熱に着目した文献は少ない。代わりに透過率について着目した文献として、例えば特許文献4(特開2018-100994号公報)および特許文献5(特開2011-22311号公報)の文献が挙げられる。しかしながら、特許文献4および特許文献5に記載の液晶表示装置ではいずれも、発熱に対する課題解決が不十分である。以下、具体的に特許文献4および特許文献5に記載の液晶表示装置の問題点について説明する。
を見ていく。
【0110】
図22は、比較例6-1に係る液晶表示装置100Hの要部を概略的に示している。
図22には、比較例6-1に係る液晶表示装置100Hとして、特許文献4の
図3に記載の液晶表示装置を簡略化して図示している。なお、
図22には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図22には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0111】
比較例6-1に係る液晶表示装置100Hは、透過型の液晶表示装置であり、液晶層200と、アクティブマトリクスの配線層330とを備えている。液晶層200と配線層330との間には、透過型の画素電極が設けられている。
【0112】
比較例6-1に係る液晶表示装置100Hは、光軸方向において、画素電極に対応する位置に第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3をさらに備えている。第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2は、液晶層200よりも光入射側に設けられている。第3マイクロレンズML3は、配線層330よりも光射出側に設けられている。第1マイクロレンズML1は光入射側に凸形状、第2マイクロレンズML2は光射出側に凸形状、第3マイクロレンズML3は光射出側に凸形状とされている。
【0113】
比較例6-1に係る液晶表示装置100Hは、比較的に厚い配線層330を有する。
図22の光線追跡結果を参照すると、比較例6-1に係る液晶表示装置100Hでは、入射面において軸上1点より射出した光線(軸上光束L10)は、第2マイクロレンズML2を射出後の位置P10では平行光とはなっていない。そして、射出面P20において平行光に近く射出する。これは共役像を作らないことを意味する。比較例6-1に係る液晶表示装置100Hの構成では、射出波面の状態が離散的になり、1画素の端端まで光線が存在しない。このため離散的な回折格子を通したように疑似的に見え、射出光が大きく回折する。
【0114】
図23は、一般的な透過型のプロジェクタの一構成例を簡略化して示している。
一般的な透過型のプロジェクタでは、
図23のように液晶表示装置101の後方に投射レンズ121を配置し、光を投影面122に投影している。従って、比較例6-1に係る液晶表示装置100Hのように射出光が大きく回折する構成の場合、射出光の回折によって、投射レンズ121への取り込み光量が減る。結果、ある明るさの投影を行うためには、液晶表示装置100Hへの入射光量を増大させなくてはならず、発熱量も増える。
【0115】
図24は、比較例6-2に係る液晶表示装置100Iの要部を概略的に示している。
図24には、比較例6-2に係る液晶表示装置100Hとして、特許文献5の
図1に記載の液晶表示装置を簡略化して図示している。
【0116】
比較例6-2に係る液晶表示装置100Iは、透過型の液晶表示装置であり、液晶層200と、配線層330とを備えている。配線層330には、画素開口331とブラックマトリクス332とが設けられている。
【0117】
比較例6-2に係る液晶表示装置100Iは、光軸方向において、画素開口331に対応する位置に第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3をさらに備えている。第1マイクロレンズML1は、液晶層200よりも光入射側に設けられている。第2マイクロレンズML2と第3マイクロレンズML3は、配線層330よりも光射出側に設けられている。第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3はそれぞれ、光入射側側に凸形とされている。
【0118】
比較例6-2に係る液晶表示装置100Iにおいて、液晶層200と配線層330は比較的薄い構成とされている。しかしながら、近年では一般に、配線層330の厚みは5マイクロメートル前後、画素ピッチは6マイクロメートル以下であり、配線層330の厚みと1画素のピッチとが似た寸法となっている。比較例6-2に係る液晶表示装置100Iにおいて、配線層330を画素ピッチと同等に厚くとると、特に、軸上光束L10のNAが大きくなりすぎ、多大な光線干渉を発生させる。これは液晶表示装置100Iの発熱を大きくしてしまうことを意味する。
【0119】
第6の実施の形態に係る液晶表示装置では、上記状況を鑑み、より発熱量の少ない液晶表示装置の構成を提案する。特に重視する点は3点である。
1.投射レンズ121の取り込み効率を改善する。この際に回折光学的振る舞いを重視し、射出光線の波面状態をなるべく連続的な切れ目のないものとすることで射出回折光の寄与を減らす。これには略1倍となる共役結像の維持が必要となる。
2.配線層33での透過率を改善させる。特に幾何光線に比べて回折的要素を加味して、より高めのNAで配線層33に光線を入射させ、これによって回折限界によるスポット径限界値を下げる。さらに軸上光線をほぼ平行に近く配線層33を通過させることで比較的厚い配線層33でのロスを減らす。
3.上記第1の実施の形態等に係る液晶表示装置と同様に、液晶層20よりも光入射側に屈折率差のある構造を設け、これによって回折光学的に光の電界を開口部(透過領域50)内へと集中し、配線層33での吸収率を下げる。
【0120】
以下、具体的な実施例に基づいて、第6の実施の形態に係る液晶表示装置の構成および作用を説明する。ただし、第6の実施の形態に係る液晶表示装置の構成は、以下の実施例に示した構成に限定されるものではなく、各部の寸法の値や材料等は他の値や他の材料であってもよい。
【0121】
以下の各実施例に係る液晶表示装置は透過型であり、光軸方向において、複数の画素電極31のそれぞれに対応する位置に設けられた3枚以上のマイクロレンズを備えている。各実施例に係る液晶表示装置は、液晶層20よりも光入射側と、配線層33よりも光射出側とにそれぞれ、少なくとも3枚以上のマイクロレンズのうちの1つが設けられている。各実施例に係る液晶表示装置は、3枚以上のマイクロレンズによって、入射光束が液晶層20よりも光射出側で結像するようになされている。また、3枚以上のマイクロレンズによる光入射側の結像位置と光射出側の結像位置との共役結像位置間の空気換算距離が、3枚以上のマイクロレンズのうち最も光入射側にあるマイクロレンズと最も光射出側にあるマイクロレンズとの間の空気換算距離よりも大きい構成とされている(共役結像間の距離が最外レンズ間の距離よりも長い)。
【0122】
第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、3枚以上のマイクロレンズによる共役結像の倍率が0.7倍以上、1.3倍以下であることが望ましい。
【0123】
また、第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.8≦fbefore/fafter≦1.2 ……(1)
ただし、
fbefore:3枚以上のマイクロレンズのうち液晶層20よりも光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
fafter:3枚以上のマイクロレンズのうち配線層33よりも光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
とする。
【0124】
また、第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.8≦tLbefore-Wire/tWire-Lafter≦1.2 ……(2)
ただし、
tLbefore-Wire:液晶層20よりも光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も配線層33に近い位置に設けられたマイクロレンズから、配線層33までの空気換算長
tWire-Lafter:配線層33から、配線層33よりも光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も配線層33に近い位置に設けられたマイクロレンズまでの空気換算長
とする。
【0125】
また、第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、後述する実施例6-1~6-3のように、液晶層20よりも光入射側に、3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.65≦fbefore/tLbeforebetween≦1.35 ……(3)
ただし、
fbefore:液晶層20よりも光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
tLbeforebetween:液晶層20よりも光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
【0126】
また、第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、後述する実施例6-4のように、配線層33よりも光射出側に、3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.65≦fafter/tLafterbetween≦1.35 ……(4)
ただし、
fafter:配線層33よりも光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
tLafterbetween:配線層33よりも光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
【0127】
また、第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、以下の条件式を満足することが望ましい。
1.59/φWire≦nWire・sinθWire ……(5)
ただし、
nWire:配線層33の屈折率
θWire:配線層33を通過する光線の角度
φWire:1つの画素電極31における透過領域50の内接円直径[μm]
とする。
【0128】
[6.2 実施例]
[実施例6-1]
図25は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の要部を概略的に示している。
図26は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1における射出回折角の状態の一例を示している。
図27は、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jの要部を概略的に示している。
図28は、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jにおける射出回折角の状態の一例を示している。
図29は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1における配線層33の開口部(透過領域50)および遮光領域(配線領域)51の平面構成例を概略的に示している。なお、
図25および
図27には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図25および
図27には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0129】
図25に示したように、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は、光軸方向において、1つの画素電極31に対応する位置に設けられた第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3を備えている。第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2は、液晶層20よりも光入射側に設けられている。第3マイクロレンズML3は、配線層33よりも光射出側に設けられている。第3マイクロレンズML3と配線層33との間には、Cプレート36が設けられている。
【0130】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3によって、入射光束が液晶層20よりも光射出側で結像するようになされている。例えば軸上光束L10が結像位置P30で結像する。また、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3による光入射側の結像位置と光射出側の結像位置P30との共役結像位置間の空気換算距離は、最も光入射側にある第1マイクロレンズML1と最も光射出側にある第3マイクロレンズML3との間の空気換算距離よりも大きい構成とされている。
【0131】
表1に、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の光学パラメータの一例を示す。表1において、「Type」は、光学素子の種別を示している。「Type」において「ITO」は共通電極41または画素電極31であることを示す。「Si」は、最も物体側から順次増加するようにして符号を付したi番目の面の番号を示している。「Ri」は、i番目の面の近軸の曲率半径の値(μm)を示す。「Di」はi番目の面とi+1番目の面との間の光軸上の間隔の値(μm)を示す。「Ni」はi番目の面を有する光学要素の材質の屈折率の値を示す。「Conic」は非球面形状を示すコーニック定数を示す。
【0132】
表2には、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の各種計算パラメータを示す。表2において、f1は第1マイクロレンズML1の空気換算焦点距離、f2は第2マイクロレンズML2の空気換算焦点距離、f3は第3マイクロレンズML3の空気換算焦点距離を示す。f12は第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との空気換算合成焦点距離を示す。tL2は、面S1~S3の合計の空気換算長を示す。tL2-Wireは、面S3~S6の合計の空気換算長を示す。tWire-L3は、面S8~S9の合計の空気換算長を示す。NAWireは、配線層33通過時のNAを示す。
【0133】
【0134】
【0135】
比較例6-3に係る液晶表示装置100Jは、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1に対して、2つのマイクロレンズのみを備えた構成とされている。すなわち、第1マイクロレンズML1が液晶層20よりも光入射側に設けられ、第2マイクロレンズML2が配線層33よりも光射出側に設けられた構成とされている。また、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jは、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1に対して、低屈折率層43を省いた構成とされている。
【0136】
図29に示したように、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の画素ピッチは5.6μmである。また配線層33における透過領域(開口部)50は内接円直径でφ4.3μm相当(=φ
Wire)、入射Fナンバー=2(NAin=0.25)としている。実施例6-1に係る液晶表示装置10H1を通過する幾何光線は
図25に示した通りである。
【0137】
図25を参照すると、面S1に入射した光線は射出時に結像状態となっており、第3マイクロレンズML3よりもかなり先の結像位置P30に結像している。この結像倍率は表2に示すように1.0倍となっている。従って収差を除けば、射出像高は、ほぼ面S1での入射像高と一致する。よって、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では、隣接する画素を並べていくと射出波面が綺麗に隙間なく連なり、あたかも射出側からは隙間ない平面波が射出するように観察される。このため射出回折が低減する。
図26および
図28に示した射出回折角の状態は、入射光の波長を550nm、入射角度を0degとし、RCWA(厳密結合波解析法)で計算したものである。実施例6-1と比較例6-3とで射出角を比較すると、比較例6-3に比べて実施例6-1は回折角が狭まっており、従って投射レンズ121への取り込み光量が増大する。
【0138】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では、第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との合成焦点距離f12はおおむね第3マイクロレンズML3の焦点距離f3と等しい。また、合成焦点距離f12は、第1マイクロレンズML1から第2マイクロレンズML2までの空気換算長tL12とほぼ等しい。これによって光軸上から射出された軸上光束L10は、ほぼ光軸に平行に配線層33を通過し、射出側に倍率1倍に近い共役像を作る。
【0139】
図25においては、最大像高(2.8μm×√2=4.0μm)の配線入射角も大きくなっており、これをNA換算するとNA
Wire=0.519に達する。このように高いNAとすることで、配線層33に結像するスポットサイズを十分に小さくすることができる。レイリー分解能を援用しスポットサイズを推定すれば、拡大スポットサイズ半径δは下記式(A)で表される。
δ=1.22λ/NA
Wire ……(A)
【0140】
R,G,Bいずれの色光でも使用する前提で最も長波長なλ=650nmを採用すれば、下記式(B)の通りになる。
δ=1.52[μm] …(B)
【0141】
式(B)に従ってスポットサイズは幾何光学追跡よりも広がるため、ロスが発生する。従ってなるべく大きいNAWireが望ましい。目安としてδが開口内接円φWire[μm]の50%以下であれば影響が比較的軽微である。すなわち下記式(C),(D)が成り立つ。
δ≦0.5φWire ……(C)
1.59/φWire≦NAWire ……(D)
【0142】
高いNAWireを実現するために、第2マイクロレンズML2と第3マイクロレンズML3の屈折率は1.7を超える高い屈折率で構成されることが望ましい。また実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では、液晶層20と同じ角度でCプレート36を光線が通過するため、コントラストの低減が図れる。
【0143】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では、上記第1の実施の形態等に係る液晶表示装置と同様に、液晶層20よりも光入射側に高屈折率層42と低屈折率43とからなる屈折率差のある段差構造を設けている。これにより、さらなる温度低減が図られる。
図25中に示すように、第2マイクロレンズML2内には屈折率1.46、厚み200nmの配線形状と等しいサイズの屈折率分布があり、電界分布はより配線層33の開口中心に集中する。
図29に、配線層33の透過領域(開口部)50と遮光領域(配線領域)51の上面構成図を示した。開口部と配線領域の構成は、以降の他の実施例でも同一としている。屈折率分布はこの配線領域の形状と等しい。すなわち屈折率分布の厚み200nmに対して横幅は大きい(周期構造を加味すると少なくとも800nmある)。
【0144】
表3に、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jと実施例6-1に係る液晶表示装置10H1とについて、投射レンズ121の取り込み効率と、液晶表示装置の吸収率とを示す。
【0145】
【0146】
表3において取り込み効率は、射出光がどの程度Fナンバー=1.75の投射レンズ121に取り込めるかを示す。この計算もRCWAによって行った。取り込み効率、吸収率ともに劇的な改善が見られる。実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jに比べ取り込み効率が19.7%優れ、かつ吸収率が1/2.52倍に改善している。総合改善率は両者の改善率の掛け合わせである。実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は比較例6-3に係る液晶表示装置100Jに比べ、各々の相対比率から合計吸収熱量は1/2.97倍となる。すなわち劇的な温度改善が図れ、常温からの温度上昇量ΔTが1/2.97倍となることを示す。換言すれば今まである光量でΔT=60℃だった透過型の液晶表示装置において、ΔT≒20℃となることを意味する。耐光性や寿命の観点を除けば、約3倍の明るさとした場合でも同等の発熱量を維持できる。このように、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は劇的な改善効果をもたらす。
【0147】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の構成は、特に画素ピッチが6μm以下で比較的厚い液晶層20(3~4μm)を有する透過型の液晶表示装置に対して効果的である。表2に示したような高いNAWireを維持し配線層33におけるスポット径を低減させつつ、射出回折光を低減させ、さらに屈折率差構造による回折効果で開口部に集中電界を形成し、組み合わせとして温度を低下させることができる。従来、特に射出倍率が1倍に近いことによる射出回折光低減効果に着目して全体設計を最適化した例は他になく、こうした劇的な温度低減効果を持つ他の例もない。特に厚めの配線層33を避けつつ略1倍結像とするための条件としての「共役結像間の距離が最外レンズ間の距離よりも長い」構成による効果が大きい。一般的な設計では特許文献5(特開2011-22311号公報)にみるように、射出結像位置での光線コントロールを重視する。換言すると射出結像位置へマイクロレンズを配置して光線方向を変化させた設計である。実施例6-1に係る液晶表示装置10H1ではこの構成を崩し、液晶層200よりも光入射側に2枚、配線層330よりも光射出側に1枚のマイクロレンズを配置した構成を用い、対称性を崩した構成を持って共役1倍を実現するところがポイントである。
【0148】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1は、副次的な効果として、配線領域を隠蔽する効果を持つ。1倍に近い結像で入射像を結像するため、射出共役像は1画素とほぼ同等サイズとなり、透過型でありながら配線領域をほとんど見えない状態にできる。配線領域は透過型の液晶表示装置にとって大きな欠点の一つであり、解消する効果が大きい。
【0149】
さらに、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の持つもう一つの副次的効果として、回折を別とすれば、「射出角分布は入射角分布の1/倍率(=角倍率)」となる。従って倍率を1倍近くとすると、射出角分布は入射角分布とほぼ同等とすることができ、投射レンズ121の取り込み効率は幾何光学的にも比較的高率に維持できる。この観点から共役倍率は1よりも少し大きい方が比較的優位となる。
【0150】
実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離が、おおむね配線層33よりも光射出側のレンズの空気換算合成焦点距離と等しい。すなわち第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との空気換算合成焦点距離f
12(=f
before)に対して、第3マイクロレンズML3の空気換算焦点距離f
3(=f
after)の比率、f
12/f
3は113%である(表2)。この比率は80%~120%内に収まるのが望ましい。85%~115%内に収めるのがより望ましい。なおこの比率は配線層33を通過時の光線が光軸に平行である場合(
図25では軸上光束L10の上光線と下光線)、共役倍率とほぼ等しくなる。
【0151】
また、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では第2マイクロレンズML2と第3マイクロレンズML3との間の中心近傍に配線層33を持つ構成とされている。表2によれば第2マイクロレンズML2から配線層33までの空気換算長tL2-Wire(=tLbefore-Wire)と配線層33から第3マイクロレンズML3までの空気換算長tWire-L3(=tWire-Lafter)の比は100%である。この数値も80%~120%が望ましく、さらに90%~110%がより望ましい。この部分が100%から離れるにつれて、配線層33の前後の対称性が崩れるため、配線層33での光線ケラレが大きくなり、光量ロスと吸収率の増大を招く。仮にマイクロレンズのパワーを増した場合には射出光線角が大きくなる。
【0152】
さらに、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1では第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との空気換算合成焦点距離f12(=fbefore)は、液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズ間の空気換算距離tL12(=tLbeforebetween)とほぼ等しい。この両者の比は実施例6-1では105%であり(表2)、この値は65%~135%の間が望ましく、さらに80%~120%の間がより望ましい。
【0153】
[実施例6-2]
図30は、実施例6-2に係る液晶表示装置10H2の要部を概略的に示している。なお、
図30には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図30には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0154】
図30に示したように、実施例6-2に係る液晶表示装置10H2は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、光軸方向において、1つの画素電極31に対応する位置に設けられた第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3を備えている。実施例6-2に係る液晶表示装置10H2において、第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、液晶層20よりも光入射側に設けられている。実施例6-2に係る液晶表示装置10H2において、第3マイクロレンズML3は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、配線層33よりも光射出側に設けられている。実施例6-2に係る液晶表示装置10H2において、第3マイクロレンズML3と配線層33との間には、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、Cプレート36が設けられている。
【0155】
実施例6-2に係る液晶表示装置10H2は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3によって、入射光束が液晶層20よりも光射出側で結像するようになされている。例えば軸上光束L10が結像位置P30で結像する。また、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3による光入射側の結像位置と光射出側の結像位置P30との共役結像位置間の空気換算距離は、最も光入射側にある第1マイクロレンズML1と最も光射出側にある第3マイクロレンズML3との間の空気換算距離よりも大きい構成とされている。
【0156】
実施例6-2に係る液晶表示装置10H2では、上記第1の実施の形態等に係る液晶表示装置と同様に、液晶層20よりも光入射側に高屈折率層42と低屈折率43とからなる屈折率差のある段差構造を設けている。これにより、さらなる温度低減が図られる。
図30中に示すように、第2マイクロレンズML2内には屈折率1.46、厚み200nmの配線形状と等しいサイズの屈折率分布があり、電界分布はより配線層33の開口中心に集中する。
【0157】
表4に、実施例6-2に係る液晶表示装置10H2の光学パラメータの一例を示す。表4に示した光学パラメータの意味は表1と同様である。また、表5には、実施例6-2に係る液晶表示装置10H2の各種計算パラメータを示す。表5に示した各種計算パラメータの意味は表2と同様である。また、表6には、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jと実施例6-2に係る液晶表示装置10H2とについて、投射レンズ121の取り込み効率と、液晶表示装置の吸収率とを示す。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
実施例6-2に係る液晶表示装置10H2では、第2マイクロレンズML2と第3マイクロレンズML3との間の距離が比較的短く、第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との空気換算合成焦点距離f12の74%ほどである。実施例6-2に係る液晶表示装置10H2においても、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1とほぼ同様の取り込み効率と吸収率とが得られた(表6)。従って若干、軸上光束L10が傾いた場合でも本開示の技術が成り立っている。おおむね30%前後の変動は問題ない範囲といえる。また、実施例6-2に係る液晶表示装置10H2では結像倍率も1.3倍程度で1倍よりも大きいが、高い取り込み効率を維持できる。従って結像倍率自体には0.3程度のマージンがあると考えられ、0.7倍~1.3倍程度であれば、所望の取り込み効率を維持できる。一方で前述した配線領域を見せなくするという効果のためには結像倍率はなるべく1に近い方がよく、0.9倍~1.1倍の間とするとよい。前述の角倍率の議論からするとより1.0倍~1.1倍程度が望ましい。
【0162】
実施例6-2に係る液晶表示装置10H2においても、f12/f3、tL2-Wire/tWire-L3、f12/tL12の値は表5から分かるように、上述の条件式(1)~(3)を満たす範囲内となっている。
【0163】
[実施例6-3]
図31は、実施例6-3に係る液晶表示装置10H3の要部を概略的に示している。なお、
図30には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図30には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0164】
図31に示したように、実施例6-3に係る液晶表示装置10H3は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の構成に対して、光軸方向において、1つの画素電極31に対応する位置に設けられた第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3に加えて、さらに第4マイクロレンズML4を備えている。実施例6-3に係る液晶表示装置10H3において、第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、液晶層20よりも光入射側に設けられている。実施例6-3に係る液晶表示装置10H3において、第3マイクロレンズML3と第4マイクロレンズML4は、配線層33よりも光射出側に設けられている。実施例6-3に係る液晶表示装置10H3において、第3マイクロレンズML3と配線層33との間には、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、Cプレート36が設けられている。
【0165】
実施例6-3に係る液晶表示装置10H3は、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、第3マイクロレンズML3、および第4マイクロレンズML4によって、入射光束が液晶層20よりも光射出側で結像するようになされている。例えば軸上光束L10が結像位置P30で結像する。また、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、第3マイクロレンズML3、および第4マイクロレンズML4による光入射側の結像位置と光射出側の結像位置P30との共役結像位置間の空気換算距離は、最も光入射側にある第1マイクロレンズML1と最も光射出側にある第4マイクロレンズML4との間の空気換算距離よりも大きい構成とされている。
【0166】
実施例6-3に係る液晶表示装置10H3では、上記第1の実施の形態等に係る液晶表示装置と同様に、液晶層20よりも光入射側に高屈折率層42と低屈折率43とからなる屈折率差のある段差構造を設けている。これにより、さらなる温度低減が図られる。
図31中に示すように、第2マイクロレンズML2内には屈折率1.46、厚み200nmの配線形状と等しいサイズの屈折率分布があり、電界分布はより配線層33の開口中心に集中する。
【0167】
表7に、実施例6-3に係る液晶表示装置10H3の光学パラメータの一例を示す。表7に示した光学パラメータの意味は表1と同様である。また、表8には、実施例6-3に係る液晶表示装置10H3の各種計算パラメータを示す。表8に示した各種計算パラメータの意味は基本的には、表2と同様である。ただし、f4は第4マイクロレンズML4の空気換算焦点距離を示す。f34は第3マイクロレンズML3と第4マイクロレンズML4との空気換算合成焦点距離を示す。また、表9には、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jと実施例6-3に係る液晶表示装置10H3とについて、投射レンズ121の取り込み効率と、液晶表示装置の吸収率とを示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
実施例6-3に係る液晶表示装置10H3ではマイクロレンズを4枚としているが、この場合にはおおむね第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2との合成焦点距離f12、第3マイクロレンズML3と第4マイクロレンズML4との合成焦点距離f34、第1マイクロレンズML1から第2マイクロレンズML2までの間隔tL12に対して、下記式(E)が成り立つ。実施例6-3に係る液晶表示装置10H3では、特に光射出側のマイクロレンズの曲率を緩めることが可能なため、製造性を向上できる。
f12=f34=tL12 ……(E)
【0172】
実施例6-3に係る液晶表示装置10H3においても、f12/f34、tL2-Wire/tWire-L3、f12/tL12の値は表8から分かるように、上述の条件式(1)~(3)を満たす範囲内となっている。
【0173】
[実施例6-4]
図32は、実施例6-4に係る液晶表示装置10H4の要部を概略的に示している。なお、
図32には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図32には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0174】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、光軸方向において、1つの画素電極31に対応する位置に設けられた第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3を備えている。実施例6-4に係る液晶表示装置10H4において、第1マイクロレンズML1は、液晶層20よりも光入射側に設けられている。実施例6-4に係る液晶表示装置10H4において、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3は、配線層33よりも光射出側に設けられている。実施例6-4に係る液晶表示装置10H4において、第2マイクロレンズML2と配線層33との間には、Cプレート36が設けられている。
【0175】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様に、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3によって、入射光束が液晶層20よりも光射出側で結像するようになされている。例えば軸上光束L10が結像位置P30で結像する。また、第1マイクロレンズML1、第2マイクロレンズML2、および第3マイクロレンズML3による光入射側の結像位置と光射出側の結像位置P30との共役結像位置間の空気換算距離は、最も光入射側にある第1マイクロレンズML1と最も光射出側にある第3マイクロレンズML3との間の空気換算距離よりも大きい構成とされている。
【0176】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4では、配線層33よりも光射出側に高屈折率層42と低屈折率43とからなる屈折率差のある段差構造を設けている。これにより、さらなる温度低減が図られる。
図32中に示すように、第2マイクロレンズML2内には屈折率1.46、厚み200nmの配線形状と等しいサイズの屈折率分布がある。なお、上記第1の実施の形態等に係る液晶表示装置と同様に、液晶層20よりも光入射側に高屈折率層42と低屈折率43とからなる屈折率差のある段差構造を設けてもよい。
【0177】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4は、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の構成を左右反転させたような構成とされている。光線は逆進性を持つため、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1を左右反転した場合でも実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様の効果を得ることができる。なお、実施例6-4に係る液晶表示装置10H4の光学パラメータや各種計算パラメータは、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1の構成を左右反転させた状態と同等なため省略する。
【0178】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4の場合、2枚のマイクロレンズが配置されているのは光射出側の方であり、光射出側において(2枚のマイクロレンズの合成焦点距離)≒(2枚のマイクロレンズのレンズ間隔)が成立する。さらに屈折率差構造も光射出側へと配置されている。従って配線層33よりも光射出側にマイクロレンズが2枚あり、2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離f23(=fafter)と、配線層33よりも光射出側の2枚のマイクロレンズ間の空気換算長tL23(=tLafterbetween)とに関し、上記条件式(4)を満たす。
【0179】
実施例6-4に係る液晶表示装置10H4は実施例6-1に係る液晶表示装置10H1を左右反転した構成であるため、f1/f23、tL1-Wire/tWire-L2、f23/tL23の値が上述の条件式(1),(2),(4)を満たす範囲内となっている。
【0180】
[実施例6-5]
図33は、実施例6-5に係る液晶表示装置10H5の要部を概略的に示している。なお、
図33には、1画素に相当する部分の構成のみを示す。また、
図33には、光線追跡ソフトウェアによって光線追跡した光線を示す。
【0181】
実施例6-5に係る液晶表示装置10H5の構成は、低屈折率層43の部分を除き、実施例6-1に係る液晶表示装置10H1と同様である。
【0182】
実施例6-5に係る液晶表示装置10H5では、低屈折率層43が空気によるテーパー形状となっている。このテーパーの高さは例えば8μmであり、テーパーの開口部形状(液晶層20に接する部分の形状)は配線領域と同等としている。すなわち
図29と同等である。
【0183】
表10には、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jと実施例6-5に係る液晶表示装置10H5とについて、投射レンズ121の取り込み効率と、液晶表示装置の吸収率とを示す。表10から分かるように、実施例6-5に係る液晶表示装置10H5は、比較例6-3に係る液晶表示装置100Jに対して取り込み効率と吸収率とが改善されている。
【0184】
【0185】
[6.3 変形例]
第6の実施の形態に係る液晶表示装置は、上記各実施例に示した構成に対して、種々の変形が可能である。例えばマイクロレンズの枚数は3枚や4枚よりもさらに多く、5枚や6枚としてもよい。ただしその場合でも、上記各実施例と同様の諸条件が成り立つことが好ましい。例えば「液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズの合成焦点距離がおおむね配線層33よりも光射出側のマイクロレンズの合成焦点距離と等しい」という条件が成り立つことが好ましい。また、「液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズの合成焦点距離が、液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズ間の空気換算長とほぼ等しい」という条件が成り立つことが好ましい。または、「配線層33よりも光射出側のマイクロレンズの合成焦点距離が、配線層33よりも光射出側のマイクロレンズ間の空気換算長とほぼ等しい」という条件が成り立つことが好ましい。マイクロレンズの枚数を多くした場合には、合成焦点距離の観点から必ずしも高い屈折率材を使わなくとも(例えばn=1.7等でも)所望の短い焦点距離が得られる利点がある。
【0186】
また低屈折率層43の高さは0.2μmに限らず、0.4μmや0.1μmでもよい。これは電磁界解析の結果や製造バラつきに応じて決定する。また低屈折率層43の形状は配線形状とまったく同様の形でもよいし、いくつかの倍率をかけた(例えば95%~110%等)相似形でもよい。また低屈折率層43が単純な矩形等でも効果があり、より製造が容易になるという利点もある。なお屈折率差構造自体には製造ロバスト性を向上させる効果もあるため、屈折率差構造を入れることで製造性を向上する効果も期待できる。
【0187】
上記各実施例ではCプレート36を入れた構成を示したが、Cプレート36を外した構成であってもよい。この場合、液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズと配線層33よりも光射出側のマイクロレンズとのレンズ間隔を詰め、各マイクロレンズの焦点距離をさらに下げ、さらに温度を低減することも可能である。しかしコントラストは低下する。またCプレート36と液晶層20とを入れ替えて設計することも可能である。しかしながら配線層33はその両側のマイクロレンズの中心に位置するのが最も効率がよい。これはおおむねの対称性がこの近傍で保たれているためである。
【0188】
また、上記各実施例ではいずれもマイクロレンズの形状を配線層33側に平坦な形状としたが、これも逆であってもかまわない(配線層33側に凸形状であってもよい)。マイクロレンズの形状は、収差やコントラスト、あるいは製造性の観点から自在に選択することができる。あるいは両凸形状とすることもできる。
【0189】
また入射角分布と配線開口には関連があり、入射角分布が大きいほどより大きな配線開口とするか、あるいは液晶層20よりも光入射側のマイクロレンズの合成焦点距離を短くする必要がある。従って入射角分布をより小さくすることで、これらの設計値を変化させることもできる。同様に投射レンズ121の取り込み効率は投射レンズ121のFナンバーに依存するため、よりFナンバーを小さくした設計とすることで熱量を低減することも可能である。
【0190】
また上記各実施例では、低屈折率層43とITO(共通電極41)とが接した構成としたが、わずかに離間させ、低屈折率層43とITOとの間にSiO2層が存在してもよい。あるいはITO上に屈折率の高低の繰り返し層をつけることも可能であり、その上に低屈折率層43を配置することもできる。
【0191】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る液晶表示装置と略同様であってもよい。
【0192】
<7.適用例>
上記各実施の形態に係る液晶表示装置は、投射型または直視型のあらゆるタイプの表示装置(電子機器)に用いることができる。
【0193】
(適用例1)
図34に、適用例1に係る電子機器として、透過型の投射型表示装置1の一構成例を概略的に示す。
【0194】
投射型表示装置1では、上記第1ないし第4、または第6の実施の形態に係る透過型の液晶表示装置のいずれかが、液晶表示ユニット(液晶表示ユニット10UR,10UG,10UB)内に組み込まれている。
【0195】
この投射型表示装置1は、透過型の液晶表示ユニット10UR,10UG,10UBを3枚用いてカラー映像表示を行ういわゆる3板方式の構成となっている。この投射型表示装置1は、光源211と、一対の第1マルチレンズアレイインテグレータ212および第2マルチレンズアレイインテグレータ213と、全反射ミラー214とを備えている。マルチレンズアレイインテグレータ212,213では、それぞれ複数のマイクロレンズ212M,213Mが2次元的に配列されている。マルチレンズアレイインテグレータ212,213は、光の照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有している。
【0196】
光源211は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光、青色光および緑色光を含んだ白色光を発する。この光源211は、例えば、白色光を発する発光体(図示せず)と、発光体から発せられた光を反射、集光する凹面鏡とを含んでいる。発光体としては、例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプ等が挙げられる。凹面鏡は、集光効率がよい形状であることが望ましく、例えば回転楕円面鏡や回転放物面鏡等の回転対称な面形状となっている。光源211は、レーザ光源、蛍光体光源またはLED(Light Emitting Diode)光源等により構成されていてもよい。
【0197】
この投射型表示装置1は、また、第2マルチレンズアレイインテグレータ213の光射出側に、PS合成素子215と、コンデンサレンズ216と、ダイクロイックミラー217とをこの順に備えている。ダイクロイックミラー217は、入射した光を、例えば赤色光LRと、その他の色光とに分離する機能を有している。
【0198】
PS合成素子215には、第2マルチレンズアレイインテグレータ213における隣り合うマイクロレンズ間に対応する位置に、複数の1/2波長板215Aが設けられている。PS合成素子215は、入射した光L0を2種類(P偏光成分およびS偏光成分)の偏光光L01,L02に分離する機能を有している。PS合成素子215は、また、分離された2つの偏光光L01,L02のうち、一方の偏光光L02を、その偏光方向(例えばP偏光)を保ったままPS合成素子215から射出し、他方の偏光光L01(例えばS偏光成分)を、1/2波長板215Aの作用により、他の偏光成分(例えばP偏光成分)に変換して射出する機能を有している。
【0199】
この投射型表示装置1は、また、ダイクロイックミラー217によって分離された赤色光LRの光路に沿って、全反射ミラー218と、フィールドレンズ224Rと、液晶表示ユニット10URとを順番に備えている。全反射ミラー218は、ダイクロイックミラー217によって分離された赤色光LRを、液晶表示ユニット10URに向けて反射するようになっている。液晶表示ユニット10URは、フィールドレンズ224Rを介して入射した赤色光LRを、画像信号に応じて空間的に変調する機能を有している。
【0200】
この投射型表示装置1は、さらに、ダイクロイックミラー217によって分離された他の色光の光路に沿って、ダイクロイックミラー219を備えている。ダイクロイックミラー219は、入射した光を、例えば緑色光と青色光とに分離する機能を有している。
【0201】
この投射型表示装置1は、また、ダイクロイックミラー219によって分離された緑色光LGの光路に沿って、フィールドレンズ224Gと、液晶表示ユニット10UGとを順
番に備えている。液晶表示ユニット10UGは、フィールドレンズ224Gを介して入射した緑色光LGを、画像信号に応じて空間的に変調する機能を有している。さらに、ダイクロイックミラー219によって分離された青色光LBの光路に沿って、リレーレンズ220と、全反射ミラー221と、リレーレンズ222と、全反射ミラー223と、フィールドレンズ224Bと、液晶表示ユニット10UBとを順番に備えている。全反射ミラー221は、リレーレンズ220を介して入射した青色光LBを、全反射ミラー223に向けて反射するようになっている。全反射ミラー223は、全反射ミラー221によって反射され、リレーレンズ222を介して入射した青色光LBを、液晶表示ユニット10UBに向けて反射するようになっている。液晶表示ユニット10UBは、全反射ミラー223によって反射され、フィールドレンズ224Bを介して入射した青色光LBを、画像信号に応じて空間的に変調する機能を有している。
【0202】
この投射型表示装置1は、また、赤色光LR、緑色光LGおよび青色光LBの光路が交わる位置に、3つの色光LR,LG,LBを合成する機能を有したクロスプリズム226を備えている。この投射型表示装置1は、また、クロスプリズム226から射出された合成光を、スクリーン228に向けて投射するための投射レンズ227を備えている。クロスプリズム226は、3つの入射面226R,226G,226Bと、一つの射出面226Tとを有している。入射面226Rには、液晶表示ユニット10URから射出された赤色光LRが、入射面226Gには、液晶表示ユニット10UGから射出された緑色光LGが、入射面226Bには、液晶表示ユニット10UBから射出された青色光LBが、それぞれ入射するようになっている。クロスプリズム226は、入射面226R,226G,226Gに入射した3つの色光を合成して射出面226Tから射出する。
【0203】
なお、本開示の技術は反射型の投射型表示装置にも適用可能である。この場合、上記第5の実施の形態に係る反射型の液晶表示装置を、反射型の投射型表示装置における反射型の液晶表示ユニットとして組み込むことが可能である。
【0204】
(適用例2)
上記各実施の形態に係る液晶表示装置は、投射型表示装置の他にも、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどの電子機器に適用することが可能である。
【0205】
図35に、適用例2に係る電子機器としてのテレビジョン装置の外観構成例を概略的に示す。
【0206】
このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有している。このテレビジョン装置において、映像表示画面部300を、例えば上記第1ないし第4、または第6の実施の形態に係る透過型の液晶表示装置のいずれかを用いて構成することが可能である。
【0207】
図36および
図37に、適用例2に係る電子機器としてのデジタル一眼レフカメラ410の外観構成例を概略的に示す。
図36には、デジタル一眼レフカメラ410の正面側の外観構成例、
図37にはデジタル一眼レフカメラの背面側の外観構成例を示す。
【0208】
このデジタル一眼レフカメラ410は、例えば本体部411,レンズ412,グリップ413,表示部414およびビューファインダー415などを有している。このデジタル一眼レフカメラ410において、表示部414またはビューファインダー415を、例えば上記第1ないし第4、または第6の実施の形態に係る透過型の液晶表示装置のいずれかを用いて構成することが可能である。
【0209】
図38に、適用例2に係る電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ420の斜視構成例を概略的に示す。
【0210】
ヘッドマウントディスプレイ420は、例えば眼鏡型の表示部421および支持部422を有している。このヘッドマウントディスプレイ420において、表示部421を、例えば上記第1ないし第6のいずれかの実施の形態に係る液晶表示装置を用いて構成することが可能である。
【0211】
<8.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0212】
例えば、本技術は以下のような構成を取ることもできる。
以下の構成の本技術によれば、対向基板と液晶層との間に、屈折率および形状が最適化された第1の層および第2の層を設けるようにしたので、光利用効率が向上する。
【0213】
(1)
液晶層と、
遮光領域と透過領域とを有する駆動基板と、
前記駆動基板上における前記透過領域に対応する位置に設けられた透過型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
前記第1の層内における前記遮光領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える
液晶表示装置。
(2)
前記第2の層の前記厚み方向の断面形状は、厚みに比べて幅の方が大きい
上記(1)に記載の液晶表示装置。
(3)
前記第2の層は、回折作用によって、入射光を前記複数の画素電極に導く
上記(1)または(2)に記載の液晶表示装置。
(4)
前記液晶層と前記第1の層との間に設けられた共通電極、をさらに備える
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(5)
前記液晶層と前記第1の層との間に設けられ、前記第2の屈折率を有する材料で構成された平坦層、をさらに備える
上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(6)
前記第1の層と前記対向基板との間において前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置に設けられた複数のマイクロレンズ、をさらに備える
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(7)
前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置において、前記第1の層における前記対向基板側の面がマイクロレンズ形状とされている
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(8)
前記第1の層は、積層型Cプレートであり、
前記積層型Cプレートの平均屈折率が前記第1の屈折率とされている
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(9)
前記第2の層は、前記遮光領域のうち、少なくとも、前記複数の画素電極からなる画素平面内の対角方向に相当する領域に設けられている
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(10)
前記駆動基板は配線層を有し、
前記遮光領域は、前記配線層に対応する領域である
上記(1)ないし(9)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(11)
前記駆動基板は配線層を有し、
光軸方向において、前記複数の画素電極のそれぞれに対応する位置に設けられた3枚以上のマイクロレンズ、をさらに備え、
前記液晶層よりも光入射側と、前記配線層よりも光射出側とにそれぞれ、少なくとも前記3枚以上のマイクロレンズのうちの1つが設けられ、
前記3枚以上のマイクロレンズによって、入射光束が前記液晶層よりも前記光射出側で結像するようになされ、
前記3枚以上のマイクロレンズによる前記光入射側の結像位置と前記光射出側の結像位置との共役結像位置間の空気換算距離が、前記3枚以上のマイクロレンズのうち最も前記光入射側にあるマイクロレンズと最も前記光射出側にあるマイクロレンズとの間の空気換算距離よりも大きい
上記(1)ないし(10)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
(12)
前記3枚以上のマイクロレンズによる共役結像の倍率は0.7倍以上、1.3倍以下である
上記(11)に記載の液晶表示装置。
(13)
以下の条件式を満足する
上記(11)または(12)に記載の液晶表示装置。
0.8≦fbefore/fafter≦1.2 ……(1)
ただし、
fbefore:前記3枚以上のマイクロレンズのうち前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
fafter:前記3枚以上のマイクロレンズのうち前記配線層よりも前記光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
とする。
(14)
以下の条件式を満足する
上記(11)ないし(13)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
0.8≦tLbefore-Wire/tWire-Lafter≦1.2 ……(2)
ただし、
tLbefore-Wire:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も前記配線層に近い位置に設けられたマイクロレンズから、前記配線層までの空気換算長
tWire-Lafter:前記配線層から、前記配線層よりも前記光射出側に設けられた少なくとも1枚のマイクロレンズのうち最も前記配線層に近い位置に設けられたマイクロレンズまでの空気換算長
とする。
(15)
前記液晶層よりも前記光入射側に、前記3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、
以下の条件式を満足する
上記(11)ないし(14)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
0.65≦fbefore/tLbeforebetween≦1.35 ……(3)
ただし、
fbefore:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
tLbeforebetween:前記液晶層よりも前記光入射側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
(16)
前記配線層よりも前記光射出側に、前記3枚以上のマイクロレンズのうちの2つが設けられ、
以下の条件式を満足する
上記(11)ないし(14)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
0.65≦f
after
/t
Lafterbetween
≦1.35 ……(4)
ただし、
fafter:前記配線層よりも前記光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズの空気換算合成焦点距離
tLafterbetween:前記配線層よりも前記光射出側に設けられた2枚のマイクロレンズ間の空気換算長
とする。
(17)
以下の条件式を満足する
上記(11)ないし(16)のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
1.59/φWire≦nWire・sinθWire ……(5)
ただし、
nWire:前記配線層の屈折率
θWire:前記配線層を通過する光線の角度
φWire:1つの前記画素電極における透過領域の内接円直径[μm]
とする。
(18)
液晶層と、
駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた反射型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
前記第1の層内における前記複数の画素電極の間に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える
液晶表示装置。
(19)
液晶層と、
遮光領域と透過領域とを有する駆動基板と、
前記駆動基板上における前記透過領域に対応する位置に設けられた透過型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
前記第1の層内における前記遮光領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える液晶表示装置、を含む電子機器。
(20)
液晶層と、
駆動基板と、
前記駆動基板上に設けられた反射型の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極および前記液晶層を介して前記駆動基板に対向配置された対向基板と、
前記対向基板と前記液晶層との間に設けられ、第1の屈折率を有する材料で構成された第1の層と、
前記第1の層内における前記複数の画素電極の間に対応する領域の少なくとも一部に設けられ、前記第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料で構成された、厚み方向の断面形状が矩形状の第2の層と
を備える液晶表示装置、を含む電子機器。
【0214】
本出願は、日本国特許庁において2019年7月13日に出願された日本特許出願番号第2019-133827号、および2020年1月17日に出願された日本特許出願番号第2020-6346号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0215】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。