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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/13 20190101AFI20240827BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240827BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240827BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240827BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240827BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240827BHJP
【FI】
B60L58/13
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/27
H02J7/10 L
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6571
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022003735
(22)【出願日】2022-01-13
(65)【公開番号】P2023102958
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 良輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 優
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099057(JP,A)
【文献】特開2019-037064(JP,A)
【文献】特開2016-092953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20-6/547
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
B60W 10/00-20/50
H01M 10/42-10/667
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の電源から供給される供給電力を用いて車載のバッテリを充電する外部充電が可能に構成された車両であって、
前記バッテリと、
前記バッテリの温度を検出する温度センサと、
前記バッテリを昇温するための昇温装置と、
前記外部充電および前記昇温装置を制御する制御装置とを備え、
前記外部充電の実行中において、前記制御装置は、前記バッテリの温度が基準温度未満である間、前記バッテリの蓄電量を所定範囲に保ちながら、前記昇温装置を駆動させて前記バッテリを昇温する蓄電量制御を実行し、
前記蓄電量制御において、前記制御装置は、前記供給電力が前記昇温装置の消費電力の取り得る最小値よりも小さい場合、前記供給電力を継続して受電しつつ、前記昇温装置を間欠動作させながら、前記バッテリの蓄電量を前記所定範囲に保つ、車両。
【請求項2】
前記蓄電量制御において、前記制御装置は、前記バッテリの蓄電量が前記所定範囲の下限値まで低下すると、前記昇温装置を停止させて、前記供給電力により前記バッテリを充電する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記蓄電量制御において、前記制御装置は、前記供給電力が前記消費電力の取り得る最大値よりも大きい場合、前記昇温装置を常時動作させつつ、前記バッテリの蓄電量が前記所定範囲となるように前記バッテリの充電を間欠実行する、請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記蓄電量制御において、前記制御装置は、前記供給電力が前記消費電力の取り得る最大値よりも小さく、かつ、前記供給電力が前記消費電力の取り得る最小値よりも大きい場合、前記供給電力による前記バッテリの充電と、前記供給電力を受電せずに前記バッテリの電力による前記昇温装置の動作とを、前記バッテリの蓄電量が前記所定範囲となるように排他的に実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記所定範囲の上限値は、前記供給電力と前記消費電力とに基づいて、前記蓄電量制御の実行中に前記昇温装置を停止させたことに伴なう前記バッテリの充電電力の増加によって前記バッテリが過充電にならない値に設定される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両外部から電力の供給を受けて車載のバッテリを充電する外部充電が可能に構成された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-99057号公報(特許文献1)に開示されるバッテリシステムは、外部電源から車両に供給される電力が基準電力未満である場合には、メインバッテリのSOC(State Of Charge)が充電基準値未満である状態での昇温機構の駆動を禁止する。バッテリシステムは、まずメインバッテリのSOCを充電基準値以上まで充電してから、昇温処理を実行する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-99057号公報
【文献】特開2012-191785号公報
【文献】特開2015-159633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部充電において、バッテリの温度が基準温度より低い場合には、昇温装置を動作させて、バッテリの温度を基準温度以上に昇温させることがある。この場合、外部電源から供給される供給電力は、バッテリを充電するための充電電力と、昇温装置を駆動させるための電力(昇温装置の消費電力)とに分けられる。
【0005】
供給電力が十分大きい場合には、バッテリの充電と昇温装置の駆動との両方を同時に実行することが可能であるが、バッテリの充電と昇温装置の駆動との両方を同時に実行することができない程度に供給電力が小さい場合もあり得る。このような場合、バッテリを充電するためには、昇温装置を停止させなければならない。特許文献1に開示されたバッテリシステムは、基準電力未満である場合に、充電の実行後に昇温処理を実行する構成を採用しているが、外部充電に要する時間(バッテリの充電に要する時間および昇温に要する時間)に着目すると、さらなる改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、外部充電時にバッテリの温度が基準温度より低い場合に、外部充電に要する時間の増加を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)この開示に係る車両は、車両外部の電源から供給される供給電力を用いて車載のバッテリを充電する外部充電が可能に構成された車両である。この車両は、バッテリと、バッテリの温度を検出する温度センサと、バッテリを昇温するための昇温装置と、外部充電および昇温装置を制御する制御装置とを備える。外部充電の実行中において、制御装置は、バッテリの温度が基準温度未満である間、バッテリの蓄電量を所定範囲に保ちながら、昇温装置を駆動させてバッテリを昇温する蓄電量制御を実行する。蓄電量制御において、制御装置は、供給電力が消費電力の取り得る最小値よりも小さい場合、供給電力を継続しつつ、昇温装置を間欠動作させながら、バッテリの蓄電量を所定範囲に保つ。
【0008】
上記構成によれば、車両は、供給電力を継続して受電する。受電した供給電力は、たとえば、昇温装置の駆動に用いられ、その不足分がバッテリから持ち出される。したがって、供給電力を受電しない場合に比べ、昇温装置を駆動するためにバッテリから持ち出される電力を小さくすることができる。よって、バッテリの蓄電量の低下を鈍化させることができる。あるいは、受電した供給電力は、たとえば、バッテリに充電され、バッテリから昇温装置を駆動するための電力が持ち出される。したがって、供給電力を受電しない場合に比べ、バッテリの蓄電量の低下を鈍化させることができる。バッテリの蓄電量の低下を鈍化させることができるので、昇温装置の駆動時間を長くすることができる。その結果、バッテリの温度を基準温度まで早期に昇温させることができる。したがって、外部充電に要する時間が増加することを抑制することができる。
【0009】
(2)ある実施の形態においては、蓄電量制御において、制御装置は、バッテリの蓄電量が所定範囲の下限値まで低下すると、昇温装置を停止させて、供給電力によりバッテリを充電する。
【0010】
上記構成によれば、バッテリの蓄電量を所定範囲に適切に保つことができる。
(3)ある実施の形態においては、蓄電量制御において、制御装置は、供給電力が消費電力の取り得る最大値よりも大きい場合、昇温装置を常時動作させつつ、バッテリの蓄電量が所定範囲となるようにバッテリの充電を間欠実行する。
【0011】
上記構成によれば、昇温装置を常時動作させるので、バッテリの温度を基準温度まで早期に昇温させることができる。
【0012】
(4)ある実施の形態においては、蓄電量制御において、制御装置は、供給電力が消費電力の取り得る最大値よりも小さく、かつ、供給電力が消費電力の取り得る最小値よりも大きい場合、供給電力によるバッテリの充電と、供給電力を受電せずにバッテリの電力による昇温装置の動作とを、バッテリの蓄電量が所定範囲となるように排他的に実行する。
【0013】
供給電力が消費電力の取り得る最大値よりも小さく、かつ、供給電力が消費電力の取り得る最小値よりも大きい場合は、換言すると、供給電力と消費電力とが同程度である場合である。たとえば、バッテリの蓄電量が電流積算法で算出される場合、バッテリへの入出力電流がセンサの検出誤差に紛れてしまい、蓄電量を精度よく算出できない可能性がある。上記構成によれば、バッテリの充電と昇温装置の動作とが排他的に実行されるので、蓄電量の算出精度を担保することができる。
【0014】
(5)ある実施の形態においては、所定範囲の上限値は、供給電力と昇温装置の消費電力とに基づいて、蓄電量制御の実行中に昇温装置を停止させたことに伴なうバッテリの充電電力の増加によってバッテリが過充電にならない値に設定される。
【0015】
外部充電中にバッテリを昇温させる場合、途中でバッテリの温度が基準温度に達すると、昇温装置が停止される。そうすると、昇温装置の消費電力の分、充電電力が増加する。バッテリの蓄電量が満充電に近いような場合には、充電電力の増加によってバッテリが過充電に至ってしまう可能性がある。上記構成によれば、所定範囲の上限値は、蓄電量制御の実行中に昇温装置を停止させたことに伴なうバッテリの充電電力の増加によってバッテリが過充電にならない値に設定される。そして、バッテリの蓄電量を所定範囲に保つことで、昇温装置の停止によって充電電力が増加したとしても、バッテリが過充電に至ることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、外部充電時にバッテリの温度が基準温度より低い場合に、外部充電に要する時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
図2】第1SOC一定制御を説明するための図である。
図3】第2SOC一定制御を説明するための図である。
図4】第3SOC一定制御を説明するための図である。
図5】AC充電時にECUで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
<全体構成図>
<<車両>>
図1は、本実施の形態に係る車両1の構成を示す図である。本実施の形態に係る車両1は、電気自動車である。なお、車両1は、車両1外部の電源から供給される電力を用いて車載のバッテリを充電する外部充電が可能であればよく、電気自動車に限られるものではない。たとえば、車両1は、プラグインハイブリッド車または燃料電池車であってもよい。
【0020】
図1を参照して、車両1は、バッテリ10と、電圧センサ15と、電流センサ16と、温度センサ17と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」とも称する)20と、モータジェネレータ25と、動力伝達ギヤ30と、駆動輪35と、インレット40と、充電器50と、電圧センサ55と、電流センサ57と、DC/DCコンバータ60と、ヒータ70と、補機バッテリ75と、ECU(Electronic Control Unit)80とを備える。本実施の形態に係る車両1は、車両外部のAC充電設備300から供給される交流電力を用いてバッテリ10を充電するAC充電が可能に構成されている。なお、本実施の形態におけるAC充電では、AC充電設備300から供給される交流電力をバッテリ10の充電に用いるだけでなく、AC充電設備300から供給される交流電力を車載機器の駆動に用いる場合もある。すなわち、本実施の形態において、AC充電を実行するとは、AC充電設備300から交流電力の供給を受けることを意味する。
【0021】
バッテリ10は、駆動電源(すなわち動力源)として車両1に搭載される。バッテリ10は、積層された複数の電池を含んで構成される。電池は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池である。また、電池は、正極と負極との間に液体電解質を有する電池であってもよいし、固体電解質を有する電池(全固体電池)であってもよい。
【0022】
電圧センサ15、電流センサ16および温度センサ17は、バッテリ10の監視ユニットとして機能する。電圧センサ15は、バッテリ10の電圧VBを検出し、その検出結果を示す信号をECU80に出力する。電流センサ16は、バッテリ10の入出力電流(バッテリ電流)IBを検出し、その検出結果を示す信号をECU80に出力する。温度センサ17は、バッテリ10の温度(バッテリ温度)TBを検出し、その検出結果を示す信号をECU80に出力する。
【0023】
PCU20は、電力線PL、NLによりバッテリ10と電気的に接続されている。PCU20は、ECU80からの制御信号に従って、バッテリ10に蓄えられた直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ25に供給する。また、PCU20は、モータジェネレータ25が発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ10に供給する。PCU20は、たとえば、インバータと、インバータに供給される直流電圧をバッテリ10の出力電圧以上に昇圧するコンバータとを含んで構成される。
【0024】
モータジェネレータ25は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ25のロータは、動力伝達ギヤ30を介して駆動輪35に機械的に接続される。モータジェネレータ25は、PCU20からの交流電力を受けることにより、車両1を走行させるための運動エネルギーを生成する。モータジェネレータ25によって生成された運動エネルギーは、動力伝達ギヤ30に伝達される。一方で、車両1を減速させるときや、車両1を停止させるときには、モータジェネレータ25は、車両1の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。モータジェネレータ25で生成された交流電力は、PCU20によって直流電力に変換されてバッテリ10に供給される。これにより、回生電力をバッテリ10に蓄えることができる。このように、モータジェネレータ25は、バッテリ10との間での電力の授受(すなわち、バッテリ10の充放電)を伴なって、車両1の駆動力または制動力を発生するように構成される。
【0025】
インレット40は、AC充電設備300のコネクタ340が接続可能に構成される。インレット40は、電力線CPL,CNLにより充電器50と電気的に接続されている。また、インレット40とECU80との間には信号線L1,L2が設けられる。信号線L1は、車両1とAC充電設備300との間で所定の情報をやり取りするためのパイロット信号(CPLT信号)を伝達するための信号線である。なお、CPLT信号の詳細については後述する。信号線L2は、インレット40とコネクタ340との接続状態を示すコネクタ接続信号PISWを伝達するための信号線である。コネクタ接続信号PISWは、インレット40とコネクタ340との接続状態により、その信号レベルが変化する。すなわち、コネクタ接続信号PISWは、インレット40とコネクタ340とが接続されている場合と、インレット40とコネクタ340とが接続されていない場合とで、異なる電位を有する。ECU80は、コネクタ接続信号PISWの電位を検出することによって、インレット40とコネクタ340との接続状態を検出することができる。
【0026】
充電器50は、バッテリ10とインレット40との間に電気的に接続されている。充電器50は、たとえば、AC/DC変換部、DC/AC変換部、および、絶縁トランス等を含む。充電器50は、インレット40を介してAC充電設備300から受けた電力を、ECU80からの制御信号に基づいてバッテリ10を充電するための電力に変換し、当該電力をバッテリ10に供給する。また、充電器50は、双方向に電力変換可能に構成されてもよい。この場合、充電器50は、バッテリ10から受ける電力を、ECU80からの制御信号に基づいて交流電力に変換して、当該電力をAC充電設備300に供給する。
【0027】
電圧センサ55は、インレット40と充電器50とを電気的に接続する電力線CPL,CNL間に設けられている。電圧センサ55は、電力線CPL,CNL間の電圧VINを検出し、その検出結果を示す信号をECU80に出力する。
【0028】
電流センサ57は、電力線CPL,CNLに流れる電流IINを検出し、その検出結果を示す信号をECU80に出力する。
【0029】
DC/DCコンバータ60は、電力線PL,NLと低電圧線ELとの間に電気的に接続されている。DC/DCコンバータ60は、電力線PL,NL間の電圧を降圧して低電圧線ELに供給する。DC/DCコンバータ60は、ECU80からの制御信号に従って動作する。
【0030】
低電圧線ELには、種々の補機装置が電気的に接続されている。図1では、補機装置としてヒータ70が例示されている。また、低電圧線ELには、補機バッテリ75が電気的に接続されている。なお、低電圧線ELには、ECU80も電気的に接続されている。
【0031】
ヒータ70は、バッテリ10を昇温可能に構成される。ヒータ70は、DC/DCコンバータ60から供給される電力を用いてジュール熱を発生することによってバッテリ10を加熱する電気抵抗を含んで構成される。ヒータ70の発熱量(通電量)は、ECU80によって制御される。本実施の形態では、AC充電の実行中には、ヒータ70の発熱量は、一定(たとえば、最大発熱量)となるようにECU80によって制御される。なお、ヒータ70は、本開示に係る「昇温装置」の一例に相当する。
【0032】
ECU80は、CPU(Central Processing Unit)81と、メモリ82と、入出力ポート(図示せず)とを含む。メモリ82は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含み、CPUに81より実行されるプログラム等を記憶する。CPU81は、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。CPU81は、入出力ポートから入力される各種信号、およびメモリ82に記憶された情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、演算結果に基づいてPCU20、充電器50、およびDC/DCコンバータ60等の各機器、ならびにAC充電設備300を制御する。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で構築して処理することも可能である。
【0033】
また、メモリ82は、ヒータ70の仕様情報を記憶している。ヒータ70の仕様情報は、たとえば、ヒータ70の制御ばらつき値α、および、ヒータ70の消費電力の情報を含む。制御ばらつき値αは、たとえば、ヒータ70の設計誤差等に起因するものである。
【0034】
さらに、メモリ82は、バッテリ10の出力電力制限値Woutを導くためのマップを記憶している。マップは、バッテリ10のSOC、バッテリ温度TB、および出力電力制限値Woutの関係を定めたものである。ECU80は、バッテリ10のSOCおよびバッテリ温度TBを引数として、マップを用いて出力電力制限値Woutを算出することができる。マップは、たとえば、車両1の仕様、シミュレーション結果、あるいは実験結果等から導くことができる。
【0035】
ECU80は、バッテリ10のSOCを算出する。SOCを算出する方法は、たとえば、電流積算法またはOCV推定法のような公知の手法を採用することができる。本実施の形態では、ECU80は、電流積算法によりSOCを算出する。
【0036】
ECU80は、AC充電を制御する。ECU80は、AC充電を開始すると、バッテリ10のSOCが目標SOCとなるように、充電器50を制御してバッテリ10を充電する。目標SOCは、たとえば、満充電である。なお、目標SOCは、たとえば車両1のユーザにより設定されたSOCであってもよい。車両1のユーザは、たとえば、車両1のナビゲーション装置(図示せず)への操作、または、AC充電設備300に対する操作により、目標SOCを設定することができる。本実施の形態では、目標SOCは満充電であることを想定する。なお、満充電は、バッテリ10の制御上の上限となるSOCである。
【0037】
さらに、ECU80は、AC充電時にバッテリ温度TBが基準温度Tth未満である場合には、バッテリ10を昇温させる処理を実行する。ECU80は、AC充電中にヒータ70を駆動させてバッテリ10を昇温させる場合には、バッテリ10の昇温が完了するまではバッテリ10を満充電にせず、SOCを所定の範囲に留めるSOC一定制御を実行する。SOC一定制御は、バッテリ10の過充電を抑制するために実行される。AC充電を実行しながらバッテリ10を昇温させる場合には、AC充電設備300から車両1に供給される電力(以下「供給電力Pc」とも称する)は、バッテリ10を充電する充電電力PBと、ヒータ70の駆動電力(消費電力)Phとに分けられる。バッテリ10が満充電直前まで充電されたときに、バッテリ10の昇温が完了してヒータ70が停止されると、ヒータ70の消費電力Ph分が充電電力PBに回され、ヒータ70の消費電力Ph分だけ充電電力PBが大きくなる。このとき、バッテリ10は満充電直前まで既に充電されているので、過充電に至ってしまう可能性がある。したがって、AC充電を実行しながらバッテリ10を昇温させる場合には、SOCを所定の範囲に留めておくことによって、バッテリ10の過充電を抑制することができる。
【0038】
所定範囲は、上限値および下限値により定められる。所定の範囲の上限値は、たとえば、供給電力Pcと、ヒータ70の消費電力Phと、バッテリ10の過充電に関する仕様とに基づいて定めることができる。バッテリ10の過充電に関する仕様は、たとえば、車両1の設計段階等において予め認識することができるので、供給電力Pcおよびヒータ70の消費電力Phから、ヒータ70が停止された際にバッテリ10が過充電に至らないための所定の範囲の上限値を定めることができる。所定の範囲の下限値は、たとえば、バッテリ10の蓄電量に関する仕様に基づいて、所定の範囲の上限値よりもSOC数%(たとえば1%)分小さな値等に設定される。SOC一定制御のさらなる詳細については後述する。なお、SOC一定制御は、本開示に係る「蓄電量制御」の一例に相当する。
【0039】
なお、ECU80は、機能毎に複数のECUに分割して構成することも可能である。たとえば、ECU80は、バッテリ10の充電を制御する機能を備えるECUと、ヒータ70を制御する機能を備えるECUとに分割して構成されてもよい。
【0040】
<<AC充電設備>>
AC充電設備300は、交流電源310と、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)320と、充電ケーブル330とを含む。充電ケーブル330の先端には、車両1のインレット40に接続可能に構成されたコネクタ340が設けられる。
【0041】
交流電源310は、たとえば商用系統電源によって構成されるが、これに限定されるものではなく、種々の電源を適用可能である。
【0042】
EVSE320は、交流電源310から充電ケーブル330を介した車両1への交流電力の供給および遮断を制御する。EVSE320は、CCID(Charging Circuit Interrupt Device)321と、CPLT制御回路322とを備える。CCID321は、交流電源310から車両1への給電経路に設けられるリレーである。
【0043】
CPLT制御回路322は、CPLT信号(パイロット信号)を生成し、生成したCPLT信号を充電ケーブル330に含まれる信号線を介して車両1のECU80に送信する。CPLT信号は、ECU80によって電位が操作される。CPLT制御回路322は、CPLT信号の電位に基づいてCCID321を制御する。すなわち、ECU80は、CPLT信号の電位を操作することによって、CCID321を遠隔操作することができる。なお、CPLT信号の電位を変化させる手法については、公知の手法を用いることができ、ここでは詳細に説明はしないが、たとえば特開2016-82801号公報に開示されている回路構成等を適用することができる。
【0044】
<AC充電時におけるバッテリの昇温>
AC充電において、バッテリの温度が基準温度より低い場合には、ヒータ70を動作させて、バッテリ10の温度を基準温度Tth以上に昇温させることが望ましい。基準温度Tthは、AC充電後に車両1を走行させるために要する電力に基づいて定められる。たとえば、車両1を走行させるために要する電力に所定のマージンを加えた値を出力電力制限値Woutとし、出力電力制限値WoutとAC充電完了時のSOCとをマップに照合させて導かれる温度を基準温度Tthとすることができる。AC充電完了時のSOCは、たとえば、満充電である。
【0045】
また、バッテリ10の昇温は早期に完了させ、AC充電に要する時間を短縮することが望ましい。AC充電設備300から車両1に供給される電力(供給電力Pc)がヒータ70の消費電力Phに対して十分大きい場合には、バッテリ10の充電とヒータ70の駆動との両方を同時に実行することが可能である。一方で、バッテリ10の充電とヒータ70の駆動との両方を同時に実行することができない程度に供給電力Pcが小さい場合もあり得る。さらに、供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとが同程度である場合に、バッテリ10の充電とヒータ70の駆動との両方を同時に実行すると、バッテリ電流IB(充放電電流)が小さくなって電流センサ16の検出誤差に紛れてしまい、電流積算法による正確なSOCの算出ができなくなってしまう。そこで、本実施の形態に係る車両1において、ECU80は、一律のSOC一定制御を行なうのではなく、供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとの関係に応じて、第1~第3SOC一定制御を選択的に実行する。
【0046】
具体的には、ECU80は、ヒータ70の制御ばらつき値αを考慮し、供給電力Pcを、ヒータ70の消費電力Phの取り得る最大値Ph+αおよびヒータ70の消費電力Phの取り得る最小値Ph-αと比較する。ECU80は、供給電力Pcが最大値Ph+αよりも大きい場合(Pc>Ph+α)には、第1SOC一定制御を実行する。ECU80は、供給電力Pcが最小値Ph-αより小さい場合(Pc<Ph-α)には、第2SOC一定制御を実行する。ECU80は、供給電力Pcが、最大値Ph+α以下、かつ、最小値Ph-α以上である場合(Ph-α≦Pc≦Ph+α)には、第3SOC一定制御を実行する。なお、本実施の形態では、上述のとおり、ヒータ70は、発熱量(消費電力)が一定(たとえば、最大発熱量)となるようにECU80によって制御されるが、発熱量が都度変更される場合には、ヒータ70の消費電力Phを毎回算出すればよい。
【0047】
(1)第1SOC一定制御:Pc>Ph+α
第1SOC一定制御は、AC充電の開始時からバッテリ10の充電と昇温とを同時に実行し、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値に達した後は、バッテリ温度TBが基準温度Tthに達するまでは昇温を常時継続しながら、間欠的に充電を実行する制御である。
【0048】
図2は、第1SOC一定制御を説明するための図である。図2および後述の図3,4の縦軸にはバッテリ10のSOCが示され、横軸には時間が示されている。縦軸のCP0は、AC充電開始時のバッテリ10のSOCを示し、CP1は所定範囲の下限値を示し、CP2は所定範囲の上限値を示し、CPmaxは満充電時のバッテリ10のSOCを示す。
【0049】
時刻t0において、ECU80は、AC充電を開始し、供給電力Pcの一部を利用してバッテリ10を充電しつつ、供給電力Pcの一部を利用してヒータ70を駆動させてバッテリ10の昇温を開始する。これにより、バッテリ10のSOCが上昇するとともに、バッテリ温度TBも上昇する。なお、図2および後述の図3,4では、バッテリ温度TBが基準温度Tth未満であることを想定している。
【0050】
時刻t1において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させ、バッテリ10の電力を用いてヒータ70を駆動させる。すなわち、バッテリ10の充電は停止されるが、バッテリ10の昇温は継続される。これにより、時刻t1から時刻t2にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。なお、AC充電中における供給電力Pcの供給の停止は、たとえば、CCID321を開放することにより実現される。CCID321は、たとえば、ECU80によるCPLT信号の電位の操作により、遠隔操作される。
【0051】
時刻t2において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を再開させて、供給電力Pcにより、バッテリ10の充電および昇温を行なう。これにより、バッテリ10のSOCは、時刻t2から時刻t3にかけて上昇する。
【0052】
時刻t3において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させ、バッテリ10の電力を用いてヒータ70を駆動させる。これにより、時刻t3から時刻t4にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。
【0053】
時刻t4において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を再開させて、供給電力Pcにより、バッテリ10の充電および昇温を行なう。
【0054】
このように、ECU80は、バッテリ10のSOCを所定範囲に保ちながら、バッテリ温度TBを基準温度Tth以上に昇温する。なお、ECU80は、バッテリ温度TBが基準温度Tth以上になると、第1SOC一定制御を終了させて、CPmax(満充電)までバッテリ10を充電する。バッテリ10のSOCがCPmaxに達すると、ECU80は、AC充電を終了させる。
【0055】
(2)第2SOC一定制御:Pc<Ph-α
第2SOC一定制御は、まずは、バッテリ10を昇温せずにバッテリ10を所定範囲の上限値CP2まで充電し、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値に達した後は、バッテリ温度TBが基準温度Tthに達するまでAC充電設備300からの供給電力Pcの供給を継続させながら、間欠的に昇温を実行する制御である。すなわち、第2SOC一定制御では、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給は常時継続される。
【0056】
図3は、第2SOC一定制御を説明するための図である。
時刻t10において、ECU80は、AC充電を開始し、供給電力Pcを用いたバッテリ10の充電を開始する。これにより、時刻t10から時刻t11にかけて、バッテリ10のSOCが上昇する。
【0057】
時刻t11において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、バッテリ10への充電を停止し(PB=0)、供給電力Pcをヒータ70の駆動に用いる。ヒータ70を駆動させるための電力の不足分は、バッテリ10から持ち出される。よって、時刻t11から時刻t12にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。
【0058】
時刻t12において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、ヒータ70を停止させて、バッテリ10の昇温を停止する。そして、ECU80は、供給電力Pcをバッテリ10の充電に利用し(PB=Pc)、バッテリ10の充電を行なう。これにより、バッテリ10のSOCは、時刻t12から時刻t13にかけて上昇する。バッテリ10の昇温に着目すると、時刻t11から時刻t12の間の時間(昇温時間TimeA)だけバッテリ10が昇温されている。
【0059】
ここで、図3に、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させる場合におけるSOCと時間との関係を破線U1で示している。AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させると、ヒータ70を駆動させるための電力はバッテリ10から持ち出されるため、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を継続させる場合に比べて早期にバッテリ10のSOCが下限値CP1まで低下する。そうすると、この時点でヒータ70が停止される。すなわち、この場合におけるバッテリ10の昇温時間TimeBは、時刻t11から時刻tx(t11<tx<t12)までの間の時間である。昇温時間TimeBは、昇温時間TimeAよりも短い。このように、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を継続させておくことにより、バッテリ10のSOCの低下を鈍化させることができる。その結果、バッテリ10の昇温時間を長くすることができるので、バッテリ10の昇温を早期に完了させることができる(バッテリ温度TBを早期に基準温度Tth以上にすることができる)。
【0060】
時刻t13において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、バッテリ10への充電を停止し(PB=0)、供給電力Pcをヒータ70の駆動に用いる。ヒータ70を駆動させるための電力の不足分は、バッテリ10から持ち出される。よって、時刻t13から時刻t14にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。
【0061】
時刻t14において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、ヒータ70を停止させて、供給電力Pcによりバッテリ10の充電を行なう。
【0062】
このように、ECU80は、バッテリ10のSOCを所定範囲に保ちながら、バッテリ温度TBを基準温度Tth以上に昇温する。第2SOC一定制御の実行中には、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を継続させることで、ヒータ駆動時のSOCの低下を鈍化させて昇温時間を長くすることができる。なお、ECU80は、バッテリ温度TBが基準温度Tth以上になると、第2SOC一定制御を終了させて、CPmax(満充電)までバッテリ10を充電する。バッテリ10のSOCがCPmaxに達すると、ECU80は、AC充電を終了させる。
【0063】
なお、上記では、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、バッテリ10への充電を停止し(PB=0)、供給電力Pcをヒータ70の駆動に用いる例について説明したが、供給電力Pcでバッテリ10を充電しながら(PB=Pc)、ヒータ70の駆動電力をバッテリ10から持ち出すようにすることも可能である。
【0064】
(3)第3SOC一定制御:Ph-α≦Pc≦Ph+α
第3SOC一定制御は、まずは、バッテリ10を昇温せずにバッテリ10を所定範囲の上限値CP2まで充電し、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値に達した後は、バッテリ温度TBが基準温度Tthに達するまでバッテリ10の充電と昇温とを排他的に実行する制御である。すなわち、第3SOC一定制御では、バッテリ10の充電と昇温とが交互に実行される。より詳細には、第3SOC一定制御では、AC充電設備300から受けた供給電力Pcによるバッテリ10の充電と、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させ、バッテリ10の電力を用いたヒータ70の駆動によるバッテリ10の昇温とが交互に実行される。
【0065】
図4は、第3SOC一定制御を説明するための図である。
時刻t20において、ECU80は、AC充電を開始し、供給電力Pcを用いたバッテリ10の充電を開始する。これにより、時刻t20から時刻t21にかけて、バッテリ10のSOCが上昇する。
【0066】
時刻t21において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させ、バッテリ10への充電を停止する。そして、ECU80は、バッテリ10の電力を利用してヒータ70を駆動させ、バッテリを昇温する。これにより、時刻t21から時刻t22にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。
【0067】
時刻t22において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、ヒータ70を停止させて、バッテリ10の昇温を停止する。そして、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を再開させて、バッテリ10を充電する。これにより、バッテリ10のSOCは、時刻t22から時刻t23にかけて上昇する。
【0068】
時刻t23において、バッテリ10のSOCが所定範囲の上限値CP2に達すると、ECU80は、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させ、バッテリ10への充電を停止する。そして、ECU80は、バッテリ10の電力を利用してヒータ70を駆動させ、バッテリを昇温する。これにより、時刻t23から時刻t24にかけて、バッテリ10のSOCは上限値CP2から低下する。
【0069】
時刻t24において、バッテリ10のSOCが所定範囲の下限値CP1まで低下すると、ECU80は、ヒータ70を停止させて、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を再開し、供給電力Pcによりバッテリ10の充電を行なう。
【0070】
このように、ECU80は、バッテリ10のSOCを所定範囲に保ちながら、バッテリ温度TBを基準温度Tth以上に昇温する。供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとが同程度である場合(Ph-α≦Pc≦Ph+α)には、バッテリ10の充電とヒータ70の駆動との両方を同時に実行すると、バッテリ電流IB(充放電電流)が小さくなって電流センサ16の検出誤差に紛れてしまい、電流積算法による正確なSOCの算出ができなくなってしまう。この場合には、バッテリ10の充電と昇温とを排他的に実行することで、SOCの算出精度を確保することができる。なお、ECU80は、バッテリ温度TBが基準温度Tth以上になると、第3SOC一定制御を終了させて、CPmax(満充電)までバッテリ10を充電する。バッテリ10のSOCがCPmaxに達すると、ECU80は、AC充電を終了させる。
【0071】
<ECUで実行される処理>
図5は、AC充電時にECUで実行される処理の手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示される処理は、AC充電を開始するための操作が行なわれた際にECU80により開始される。AC充電を開始するための操作とは、たとえば、AC充電設備300の充電開始ボタン(図示せず)に対する操作、車両1のナビゲーション装置(図示せず)の表示画面に表示された充電開始アイコンに対する操作、あるいは、インレット40にコネクタ340を接続する操作であってもよい。図5に示すフローチャートの各ステップ(以下ステップを「S」と略す)は、ECU80によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がECU80内に作製されたハードウェア(電子回路)によって実現されてもよい。
【0072】
S1において、ECU80は、温度センサ17からバッテリ温度TBを取得し、バッテリ温度TBが基準温度Tth未満であるか否かを判断する。ECU80は、バッテリ温度TBが基準温度Tth以上であると判断した場合(S1においてNO)、処理をS2に進める。ECU80は、バッテリ温度TBが基準温度Tth未満であると判断した場合(S1においてYES)、処理をS3に進める。
【0073】
S2において、ECU80は、通常の充電制御を実行する。通常の充電制御とは、AC充電によりAC充電設備300から供給される供給電力Pcによりバッテリ10を満充電(CPmax)まで充電する制御である。バッテリ温度TBが基準温度Tth以上である場合には、バッテリ10を昇温しなくてもよいので、SOC一定制御も実行せず、バッテリ10を満充電まで充電する。
【0074】
S3において、ECU80は、AC充電設備300から供給される供給電力Pcを算出する。具体的には、ECU80は、充電ケーブル330の定格電流と、AC充電設備300からインレット40に印加されている印加電圧とから供給電力Pcを算出する。充電ケーブル330の定格電流は、たとえば、CPLT信号のデューティーサイクルに基づいて認識することができる。また、ECU80がAC充電における電流を設定する場合には、その設定電流を定格電流としてもよい。なお、ECU80は、CPLT信号の電位を操作して、AC充電設備300のCCID321を閉成状態にし、AC充電設備300からインレット40に電圧を印加させる。
【0075】
S4において、ECU80は、メモリ82からヒータ70のヒータ70の仕様情報を読み出す。ヒータ70の仕様情報には、ヒータ70の消費電力Phの情報が含まれている。
【0076】
S5において、ECU80は、供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとを比較し、供給電力Pcが消費電力Phの取り得る最大値Ph+αよりも大きいか否かを判断する。ECU80は、供給電力Pcが最大値Ph+αよりも大きいと判断すると(S5においてYES)、処理をS6に進める。ECU80は、供給電力Pcが最大値Ph+α以下であると判断すると(S5においてNO)、処理をS7に進める。
【0077】
S6において、ECU80は、SOC一定制御のうちの、第1SOC一定制御を実行することを選択し、処理をS10に進める。
【0078】
S7において、ECU80は、供給電力Pcが消費電力Phの取り得る最小値Ph-αよりも小さいか否かを判断する。ECU80は、供給電力Pcが最小値Ph-αよりも小さいと判断すると(S7においてYES)、処理をS8に進める。ECU80は、供給電力Pcが最小値Ph-α以上であると判断すると(S7においてNO)、処理をS9に進める。
【0079】
S8において、ECU80は、SOC一定制御のうちの、第2SOC一定制御を実行することを選択し、処理をS10に進める。
【0080】
S9において、ECU80は、SOC一定制御のうちの、第3SOC一定制御を実行することを選択し、処理をS10に進める。
【0081】
S10において、ECU80は、S6,S8,S9のいずれかで選択されたSOC一定制御を実行する。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係る車両1は、AC充電時にバッテリ10を昇温する際に実行するSOC一定制御として、第1~第3SOC一定制御の3つを備える。ECU80は、供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとの関係に応じて、第1~第3SOC一定制御を選択的に実行する。
【0083】
供給電力Pcが消費電力Phの取り得る最大値Ph+αよりも大きい場合(Pc>Ph+α)には、ECU80は、第1SOC一定制御を実行する。これにより、ECU80は、ヒータ70の停止に伴なうバッテリ10の充電電力PBの増加に起因して、バッテリ10が過充電に至ることを抑制しながら、バッテリ10を早期に昇温させることができる。
【0084】
供給電力Pcが消費電力Phの取り得る最小値Ph-αよりも小さい場合(Pc<Ph-α)には、ECU80は、第2SOC一定制御を実行する。第2SOC一定制御によって、AC充電設備300からの供給電力Pcの供給を常時継続させることで、ヒータ70の駆動時(昇温実行時)のSOCの低下を鈍化させることができる。したがって、ヒータ70の駆動時にAC充電設備300からの供給電力Pcの供給を停止させる場合に比べ、昇温時間を長くすることができるので、早期にバッテリ温度を基準温度Th以上に昇温させることができる。よって、早期にAC充電を完了させることが可能となる。したがって、第2SOC一定制御の実行によって、AC充電時間が増加することを抑制することができる。
【0085】
供給電力Pcが最大値Ph+α以下、かつ、最小値Ph-α以上である場合(Ph-α≦Pc≦Ph+α)には、ECU80は、第3SOC一定制御を実行する。供給電力Pcとヒータ70の消費電力Phとが同程度である場合には、バッテリ10の充電とヒータ70の駆動との両方を同時に実行すると、バッテリ電流IB(充放電電流)が小さくなって電流センサ16の検出誤差に紛れてしまい、電流積算法による正確なSOCの算出ができなくなってしまう。この場合には、第3SOC一定制御によりバッテリ10の充電と昇温とを排他的に実行することで、SOCの算出精度を確保することができる。
【0086】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 車両、10 バッテリ、15 電圧センサ、16 電流センサ、17 温度センサ、20 PCU、25 モータジェネレータ、30 動力伝達ギヤ、35 駆動輪、40 インレット、50 充電器、55 電圧センサ、57 電流センサ、60 DC/DCコンバータ、70 ヒータ、75 補機バッテリ、80 ECU、81 CPU、82 メモリ、300 充電設備、310 交流電源、321 CCID、322 CPLT制御回路、330 充電ケーブル、340 コネクタ、CNL,CPL,NL,PL 電力線、EL 低電圧線、L1,L2 信号線。
図1
図2
図3
図4
図5