(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/14 20160101AFI20240827BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240827BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240827BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20240827BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60W20/14
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/02 900
F02D45/00 362
(21)【出願番号】P 2022007707
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】城戸 栄一郎
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123939(JP,A)
【文献】特開2002-213273(JP,A)
【文献】特開2019-127195(JP,A)
【文献】特開2013-180695(JP,A)
【文献】特開2015-131534(JP,A)
【文献】米国特許第09096221(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/48
B60W 10/00 ― 20/50
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として、駆動輪に接続されているモータジェネレータと、エンジンと、を備え、前記モータジェネレータと前記エンジンとの間の駆動伝達をクラッチによって接続したり、遮断したりすることができるように構成されたハイブリッド車両に適用され、
前記エンジンの運転を停止させ、且つ前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を遮断した状態で前記モータジェネレータの駆動力によって走行している電動走行中は、前記モータジェネレータにおける発電による回生ブレーキによる制動を行うが、前記電動走行中にバッテリの充電割合が閾値以上になった場合には、前記エンジンを始動させて前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を接続してエンジンブレーキによる制動を行うバッテリ保護処理を行うハイブリッド車両の制御装置であり、
エンジン始動時は、前記エンジンにおける燃料カットの実行を許可する機関回転速度の下限値である燃料カット許可回転速度を第1回転速度に設定するが、前記バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には前記燃料カット許可回転速度を前記第1回転速度よりも低い第2回転速度に設定する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記第2回転速度は、燃料カットの継続が許容される機関回転速度の範囲の下限値である復帰回転速度に、第2加算量を加えた値であり、
前記第1回転速度は、前記復帰回転速度に前記第2加算量よりも大きい第1加算量を加えた値である
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記電動走行中に前記エンジンを始動させて前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を接続した状態に移行させる移行制御において、
前記クラッチの係合が完了したあと、前記エンジンのトルクを徐々に低減させて前記エンジンの運転を停止させるまでの間に前記モータジェネレータのトルクを徐々に増大させるトルクすり替え処理を実行する
請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、燃料カットの実行とともに前記トルクすり替え処理を終了して前記移行制御を終了させる
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンとモータジェネレータとの間にクラッチを備えたハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両は、クラッチを開放してエンジンとモータジェネレータとの間の駆動伝達を遮断した状態で、エンジンの駆動力を使わずに、モータジェネレータの駆動力で走行する電動走行を行うこともできる。
【0003】
また、このハイブリッド車両は、減速時にモータジェネレータで発電を行うことによって制動力を発生させる回生ブレーキによる制動を行うことができる。こうした回生ブレーキを利用することによって運動エネルギを電力に変換してバッテリに蓄えることができる。
【0004】
特許文献1には、電動走行中にバッテリの充電割合が閾値以上になった場合に、エンジンを始動させてクラッチを係合させることが開示されている。こうしてエンジンとモータジェネレータとの間の駆動伝達を接続した状態でエンジンブレーキを作用させる。これにより、バッテリの蓄電量が過剰になることを抑制しながら、回生ブレーキでまかなえない分の制動力をエンジンブレーキによってまかなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンを始動させてクラッチを係合させる際には、エンジンのトルクを制御してクラッチ係合時のショックを抑制する。上記のように、バッテリの充電割合が閾値以上になったときには、エンジンブレーキによる制動力を速やかに発生させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、駆動源として、駆動輪に接続されているモータジェネレータと、エンジンと、を備え、前記モータジェネレータと前記エンジンとの間の駆動伝達をクラッチによって接続したり、遮断したりすることができるように構成されたハイブリッド車両に適用される。この制御装置は、前記エンジンの運転を停止させ、且つ前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を遮断した状態で前記モータジェネレータの駆動力によって走行している電動走行中は、前記モータジェネレータにおける発電による回生ブレーキによる制動を行う。しかし、この制御装置は、前記電動走行中にバッテリの充電割合が閾値以上になった場合には、前記エンジンを始動させて前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を接続してエンジンブレーキによる制動を行うバッテリ保護処理を行う。
【0008】
また、この制御装置は、エンジン始動時は、前記エンジンにおける燃料カットの実行を許可する機関回転速度の下限値である燃料カット許可回転速度を第1回転速度に設定するが、前記バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には前記燃料カット許可回転速度を前記第1回転速度よりも低い第2回転速度に設定する。
【0009】
上記構成の制御装置は、バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、燃料カット許可回転速度を、第1回転速度よりも低い第2回転速度に設定する。そのため、制御装置は、燃料カット許可回転速度を第1回転速度に設定する場合と比較して、より低い機関回転速度において燃料カットを実行できる。これにより、エンジンとモータジェネレータとの間の駆動伝達が接続されたときに、燃料カットが実行されやすくなる。したがって、上記の制御装置は、バッテリの充電割合が閾値以上になったときに、エンジンブレーキによる制動力を速やかに発生させることができる。
【0010】
ハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記第2回転速度は、燃料カットの継続が許容される機関回転速度の範囲の下限値である復帰回転速度に、第2加算量を加えた値であり、前記第1回転速度は、前記復帰回転速度に前記第2加算量よりも大きい第1加算量を加えた値である。
【0011】
エンジン運転中は、機関回転速度が燃料カット許可回転速度以上であるときに燃料カットが実行される。そして、制御装置は、機関回転速度が復帰回転速度未満になると燃料カットを終了させ、燃料噴射を再開させる。
【0012】
燃料カット許可回転速度と復帰回転速度とが近すぎると、燃料カットの実行と停止とが繰り返されるハンチングが起こりやすくなる。そこで、復帰回転速度に加算量を加算した和を燃料カット許可回転速度にする。これにより、加算量の大きさの調整によってハンチングの発生を抑制することができる。
【0013】
エンジン始動時には、燃焼の状態が不安定であり、機関回転速度がオーバーシュートする可能性がある。このとき、燃料カット許可回転速度が小さい値に設定されていると、機関回転速度が容易に燃料カット許可回転速度を超えてしまう。その結果、燃料カットが実行されて始動が失敗しやすくなる。エンジン始動時に、燃料カット許可回転速度を大きな値に設定すれば、こうした事態を回避することができる。
【0014】
上記の制御装置は、エンジン始動時に、燃料カット許可回転速度を、復帰回転速度に第1加算量を加えた和である第1回転速度に設定する。第1加算量は第2加算量よりも大きな値である。そのため、制御装置は、復帰回転速度に第2加算量を加えた和である第2回転速度を燃料カット許可回転速度に設定する場合よりも、エンジンの始動の失敗を抑制できる。
【0015】
ハイブリッド車両の制御装置の一態様は、前記電動走行中に前記エンジンを始動させて前記クラッチによって前記エンジンと前記モータジェネレータとの間の駆動伝達を接続した状態に移行させる移行制御において、前記クラッチの係合が完了したあと、前記エンジンのトルクを徐々に低減させて前記エンジンの運転を停止させるまでの間に前記モータジェネレータのトルクを徐々に増大させるトルクすり替え処理を実行する。
【0016】
上記構成の制御装置は、エンジンの運転を停止させることによってエンジンとモータジェネレータとの間の動力伝達を接続した状態での電動走行への移行を完了させるにあたり、ハイブリッド車両の駆動力の変動を抑制することができる。
【0017】
ハイブリッド車両の制御装置の一態様は、前記バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、燃料カットの実行とともに前記トルクすり替え処理を終了して前記移行制御を終了させる。
【0018】
上記の制御装置は、速やかにエンジンブレーキによる制動力を発生させるとともに、速やかに移行制御を終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ハイブリッド車両の制御装置の一実施形態と、同制御装置が制御するハイブリッド車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、エンジン始動時の移行制御を説明するタイムチャートである。
図2(a)は回転同期の状態、
図2(b)は回転速度、
図2(c)はクラッチの係合率、
図2(d)はトルク、それぞれの推移を示している。
【
図3】
図3は、比較例の移行制御を説明するタイムチャートである。
図3(a)は回転同期の状態、
図3(b)は燃料カット信号の状態、
図3(c)は回転速度、
図3(d)はクラッチの係合率、
図3(e)はトルク、それぞれの推移を示している。
【
図4】
図4は、電動走行中の減速時に制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、電動走行中の減速時に制御装置が実行する移行制御を説明するタイムチャートである。
図5(a)は回転同期の状態、
図5(b)は燃料カット信号の状態、
図5(c)は回転速度、
図5(d)はクラッチの係合率、
図5(e)はトルク、それぞれの推移を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ハイブリッド車両の制御装置の一実施形態である制御装置23について、
図1~
図5を参照して説明する。
<ハイブリッド車両の構成>
本実施形態の制御装置23が制御するハイブリッド車両の駆動系の構成を説明する。
【0021】
図1に示すように、ハイブリッド車両には、走行用の駆動源としてのエンジン10が搭載されている。このハイブリッド車両におけるエンジン10から駆動輪13への動力伝達経路には、変速ユニット11が設けられている。変速ユニット11と左右の駆動輪13とは、ディファレンシャル12を介して駆動連結されている。
【0022】
変速ユニット11には、クラッチ14とモータジェネレータ15とが設けられている。変速ユニット11においてモータジェネレータ15は、エンジン10から駆動輪13への動力伝達経路上に位置するように設置されている。また、クラッチ14は、この動力伝達経路におけるエンジン10とモータジェネレータ15との間の部分に位置するように設置されている。クラッチ14は、油圧の供給を受けて係合された状態となって、エンジン10とモータジェネレータ15との動力伝達を接続する。また、クラッチ14は、油圧供給の停止に応じて開放された状態となって、エンジン10とモータジェネレータ15との動力伝達を遮断する。
【0023】
モータジェネレータ15は、インバータ17を介してバッテリ16に接続されている。そして、モータジェネレータ15は、バッテリ16からの給電に応じてハイブリッド車両の駆動力を発生するモータとして機能する。また、モータジェネレータ15は、エンジン10や駆動輪13からの動力伝達に応じてバッテリ16に充電する電力を発電する発電機としても機能する。モータジェネレータ15とバッテリ16との間で授受される電力は、インバータ17により調整されている。このように、このハイブリッド車両は、駆動源として、モータジェネレータ15と、エンジン10とを備えている。
【0024】
また、変速ユニット11は、トルクコンバータ18と、自動変速機19とを備えている。トルクコンバータ18は、トルク増幅機能を有する流体継ぎ手である。そして、自動変速機19は、変速段の切替えにより変速比を多段階に切り替える有段式の変速機である。変速ユニット11において、自動変速機19は、エンジン10から駆動輪13への動力伝達経路におけるモータジェネレータ15よりも駆動輪13側の部分に配置されている。そして、トルクコンバータ18を介して、モータジェネレータ15と自動変速機19とが連結されている。なお、トルクコンバータ18は、ロックアップクラッチ20を備えている。ロックアップクラッチ20は、油圧の供給を受けて係合してモータジェネレータ15と自動変速機19とを直結する。
【0025】
さらに、変速ユニット11は、オイルポンプ21と、油圧制御部22とを備えている。そして、オイルポンプ21が発生させた油圧が、油圧制御部22に供給される。油圧制御部22には、クラッチ14、トルクコンバータ18、自動変速機19、及びロックアップクラッチ20のそれぞれの油圧回路が設けられている。また、その油圧回路には、クラッチ14、トルクコンバータ18、自動変速機19、及びロックアップクラッチ20のそれぞれにおける作動油圧を制御するための各種の油圧制御弁が設けられている。
【0026】
図1に示すように、ハイブリッド車両は、制御装置23を備えている。制御装置23は、ハイブリッド車両の制御に係る各種演算処理を行う処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶された記憶装置と、を備える電子制御ユニットとして構成されている。
【0027】
制御装置23は、インバータ17を制御してモータジェネレータ15とバッテリ16との間での電力の授受を調整する。これにより、制御装置23は、モータジェネレータ15の制御を行っている。また、制御装置23は、油圧制御部22の制御を通じてクラッチ14、ロックアップクラッチ20及び自動変速機19の制御を行っている。また、制御装置23は、エンジン10を制御する。
【0028】
制御装置23には、エンジン10の運転状態を検出する各種センサの検出信号が入力される。制御装置23に検出信号を入力するセンサには、クランクポジションセンサ31と、アクセルポジションセンサ32と、車速センサ33と、が含まれている。クランクポジションセンサ31は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトの回転位相の変化に応じたクランク角信号を出力する。アクセルポジションセンサ32は、アクセルの操作量を検出する。車速センサ33は、ハイブリッド車両の車速を検出する。
【0029】
制御装置23には、これらのセンサの検出信号が入力される。制御装置23は、入力された検出信号に基づいてエンジン10の運転状態を把握する。例えば、制御装置23は、クランクポジションセンサ31から入力されるクランク角信号に基づいてクランクシャフトの回転速度である機関回転速度Nengを算出する。
【0030】
また、制御装置23には、バッテリ16の電流、電圧及び温度の情報も入力されている。制御装置23は、これらの電流、電圧及び温度の情報に基づいて、バッテリ16の充電状態の指標値である充電割合SOCを算出する。なお、充電割合SOCは、バッテリ16の充電容量に対する充電残量の比率である。また、制御装置23は、油圧制御部22の油圧制御弁の制御を通じて自動変速機19で選択されている変速段とギヤ比を把握している。また、制御装置23は、クラッチ14の係合状態と、ロックアップクラッチ20の係合状態も把握している。例えば、制御装置23は、係合状態としてクラッチ14が完全に開放した位置にある状態を0、クラッチ14が完全に係合した位置にある状態を1、とした係合率を把握している。
【0031】
制御装置23は、これらの情報に基づき、エンジン10を制御する。また、制御装置23は、インバータ17の制御を通じてモータジェネレータ15の回転速度Nmg及びトルクTRQmgを把握し、制御している。すなわち、制御装置23は、モータジェネレータ15の回転速度Nmg及びトルクTRQmgの制御と、バッテリ16の充放電制御を行う。
【0032】
<ハイブリッド車両の制御>
続いて、制御装置23が行うハイブリッド車両の制御について説明する。制御装置23は、アクセル操作量と車速とに基づき、ハイブリッド車両の駆動力の要求値である要求駆動力を演算する。そして、制御装置23は、要求駆動力及び充電割合SOCなどに応じて、エンジン10とモータジェネレータ15のトルク配分を決定する。また、制御装置23は、自動変速機19における変速段を決定する。そして、制御装置23は、エンジン10のトルクTRQengと、モータジェネレータ15のトルクTRQmgとを制御する。また、制御装置23は、クラッチ14及びロックアップクラッチ20を制御したり、自動変速機19の変速段を変更したりする。
【0033】
また、制御装置23は、モータジェネレータ15を発電機として機能させることによって発電した電力をバッテリ16に充電することがある。ハイブリッド車両では、こうした発電によって生じるモータジェネレータ15の抵抗をブレーキとして利用することもある。こうした発電に伴うモータジェネレータ15の抵抗によるブレーキを、回生ブレーキという。制御装置23は、インバータ17を制御することによって回生ブレーキを制御する。
【0034】
<電動走行とハイブリッド走行>
上記のように構成されたハイブリッド車両は、エンジン10とモータジェネレータ15とを利用して駆動輪13を駆動するハイブリッド走行を行うことができる。
【0035】
具体的には、制御装置23は、ハイブリッド走行の場合、クラッチ14を係合させることによってモータジェネレータ15とエンジン10との間の駆動伝達をクラッチ14によって接続した状態にする。そして、制御装置23は、この状態において、例えば、エンジン10の駆動力によってハイブリッド車両を走行させつつモータジェネレータ15で発電を行う。また、制御装置23は、ハイブリッド走行の場合、上述したように、要求駆動力を実現するように、エンジン10とモータジェネレータ15のトルク配分を決定する。そして、制御装置23は、決定したトルク配分に応じて、エンジン10のトルクTRQengとモータジェネレータ15のトルクTRQmgとを制御する。こうして、制御装置23は、ハイブリッド走行の場合にエンジン10の駆動力とモータジェネレータ15の駆動力とによってハイブリッド車両を走行させる。
【0036】
また、ハイブリッド車両は、バッテリ16に蓄えられている電力を利用してモータジェネレータ15を駆動することにより、モータジェネレータ15のみを利用して駆動輪13を駆動する電動走行を行うことができる。
【0037】
具体的には、制御装置23は、電動走行の場合、エンジン10の運転を停止させ、且つクラッチ14を開放してモータジェネレータ15とエンジン10との間の駆動伝達を遮断した状態にする。そして、制御装置23は、この状態において、モータジェネレータ15の駆動力によってハイブリッド車両を走行させる。
【0038】
なお、このハイブリッド車両では、電動走行中は、モータジェネレータ15における発電による回生ブレーキによる制動を行う。
<移行制御>
次に、
図2を参照して移行制御について説明する。
【0039】
移行制御は、エンジン10とモータジェネレータ15との間の駆動伝達を遮断した状態での電動走行から、クラッチ14を係合させて駆動伝達を接続した状態に移行させるときに制御装置23が実行する制御である。
【0040】
図2(b)に示すように、時刻T1では機関回転速度Nengが0になっている。また、
図2(d)に示すように、時刻T1ではエンジン10のトルクTRQengが0である。すなわち、時刻T1の時点では、エンジン10は停止している。
【0041】
また、
図2(c)に示すように、時刻T1ではクラッチ14の係合率も0になっている。すなわち、クラッチ14は開放されている。
一方で、
図2(b)に一点鎖線で示すように、時刻T1ではモータジェネレータ15の回転速度Nmgは正の値になっている。また、
図2(d)に一点鎖線で示すように、時刻T1ではモータジェネレータ15のトルクTRQmgも正の値になっている。すなわち、時刻T1では、ハイブリッド車両は、モータジェネレータ15の駆動力のみで走行する電動走行を行っている。
【0042】
時刻T1において、クラッチ14を係合させて駆動伝達を接続した状態に移行させる移行制御を開始すると、制御装置23は、エンジン10を始動させる。具体的には、制御装置23は、まず、クラッチ14を係合側に向かって操作し、
図2(c)に示すように係合率を徐々に高める。これにより、クラッチ14を介してモータジェネレータ15側からエンジン10に駆動力が伝達されるようになるため、
図2(b)に示すように機関回転速度Nengが上昇する。すなわち、エンジン10が、モータジェネレータ15のトルクTRQmgの一部を利用してクランキングされる。
【0043】
そして、エンジン10がクランキングされている時刻T2において、制御装置23は、エンジン10における燃料噴射及び点火を開始させる。これにより、
図2(d)に示すように、エンジン10のトルクTRQengが増大する。そのため、
図2(b)に示すように機関回転速度Nengがさらに上昇する。
【0044】
なお、エンジン10の制御においては、制御装置23は、燃料噴射を停止させる燃料カットを実行することがある。制御装置23は、燃料カットの実行を許可する燃料カット許可回転速度Nfcと、復帰回転速度Ncとを設定する。そして、制御装置23は、機関回転速度Nengが燃料カット許可回転速度Nfc以下であることを条件に燃料カットの実行を許可する。また、制御装置23は、燃料カットを実行しているときに、機関回転速度Nengが復帰回転速度Nc未満になると、燃料カットを終了させて、燃料噴射を再開させる。
【0045】
燃料カット許可回転速度Nfcと復帰回転速度Ncとが近すぎると、燃料カットの実行と停止とが繰り返されるハンチングが起こりやすくなる。そこで、制御装置23は、復帰回転速度Ncに加算量を加算することによって燃料カット許可回転速度Nfcを算出している。具体的には、復帰回転速度Ncに加算量を加算した和を燃料カット許可回転速度Nfcにしている。復帰回転速度Ncは、燃料噴射を再開することによってエンジン10の運転を継続させることができる機関回転速度Nengの下限値に基づいて設定されている。そして、加算量の大きさは、予め行う実験やシミュレーションの結果に基づいてハンチングの発生を抑制することができる大きさに設定されている。
【0046】
ところが、エンジン始動時には、燃焼の状態が不安定であり、機関回転速度Nengがオーバーシュートする可能性がある。このとき、燃料カット許可回転速度Nfcが小さい値に設定されていると、機関回転速度Nengが容易に燃料カット許可回転速度Nfcを超えてしまう。その結果、燃料カットが実行されて始動が失敗しやすくなる。そこで、制御装置23は、エンジン始動時に、一定期間、例えば数秒間、燃料カット許可回転速度Nfcを大きな値に設定する嵩上げ処理を実行するようにしている。
【0047】
具体的には、制御装置23は、嵩上げ処理において、復帰回転速度Ncに第1加算量を加算した和である第1回転速度N1を、燃料カット許可回転速度Nfcとして設定する。第1加算量は、エンジン10が運転されているときに復帰回転速度Ncに加算される第2加算量よりも大きい。なお、嵩上げ処理を実行していないときに設定される燃料カット許可回転速度Nfcは、復帰回転速度Ncに第2加算量を加算した和である第2回転速度N2である。
【0048】
このように、嵩上げ処理により設定される第1回転速度N1は、嵩上げ処理を実行していないときに設定される第2回転速度N2よりも高い回転速度になっている。制御装置23では、こうした嵩上げ処理を実行することにより、エンジン10の始動の失敗を抑制している。
【0049】
図2(b)に示すように、時刻T3において、機関回転速度Nengが判定値Nx以上になると、制御装置23は、回転同期処理を開始する。なお、判定値Nxは、エンジン10が燃焼による運転を継続させることができる自律運転の状態に移行したと判定するための閾値である。
【0050】
回転同期処理は、クラッチ14の係合率を徐々に高めることによって機関回転速度Nengとモータジェネレータ15の回転速度Nmgを滑らかに同期させる処理である。具体的には、回転同期処理において、制御装置23は、
図2(d)に示すようにエンジン10のトルクTRQengを一定に保持したまま、
図2(c)に示すようにクラッチ14の係合率を徐々に増大させる。これにより、
図2(b)に示すように機関回転速度Nengがモータジェネレータ15の回転速度Nmgに近づいていく。
【0051】
図2(b)に示すように、機関回転速度Nengとモータジェネレータ15の回転速度Nmgとの差が極めて小さくなると、
図2(a)に示すように、制御装置23は、時刻T4において回転同期が完了したと判定して、回転同期処理を終了させる。そして、制御装置23は、
図2(c)に示すようにクラッチ14を速やかに完全係合させる。なお、このとき、制御装置23は、点火時期を遅角させてエンジン10のトルクTRQengを低減させる。これにより、クラッチ14の係合率の急変による駆動力の急変が抑制される。
【0052】
図2(c)に示すように、時刻T5において、クラッチ14の係合率が1になる。時刻T5において、クラッチ14の係合が完了したと判定すると、制御装置23は、トルクすり替え処理を開始する。トルクすり替え処理は、
図2(d)に示すように、エンジン10のトルクTRQengを徐々に増大させながら、モータジェネレータ15のトルクTRQmgを徐々に減少させる処理である。こうして、駆動力源のトルクをトルクTRQmgからトルクTRQengに徐々にすり替えることによって駆動源をモータジェネレータ15からエンジン10に切り替える。
【0053】
こうしてトルクすり替え処理が終了すると、制御装置23は、移行制御を終了させる。
<バッテリ保護処理>
ところで、バッテリ16の充電割合SOCが100%に近い状態で回生ブレーキによる制動を行うと、バッテリ16の蓄電量が過剰になってしまう。これに対して、蓄電量が過剰になることを回避するために、モータジェネレータ15による発電を制限すると、回生ブレーキによる制動力が小さくなってしまう。
【0054】
そこで、制御装置23は、電動走行中にバッテリ16の充電割合SOCが閾値Xmax以上になった場合に、エンジン10を始動させてクラッチ14を係合させる。そして、制御装置23は、こうしてエンジン10とモータジェネレータ15との間の駆動伝達を接続した状態でエンジンブレーキを作用させるバッテリ保護処理を実行する。このバッテリ保護処理により、バッテリ16の蓄電量が過剰になることを抑制しながら、回生ブレーキでまかなえない分の制動力をエンジンブレーキによってまかなうことができる。なお、閾値Xmaxは、バッテリ保護処理を実行するか否かを判定するための閾値である。閾値Xmaxは、100%よりも低い値である。閾値Xmaxの大きさは、回生ブレーキの実行機会を十分に確保しつつ、蓄電量が過剰になることを抑制できるように、予め行う実験やシミュレーションの結果に基づいて設定されている。
【0055】
エンジン10を始動させてクラッチ14を係合させる際には、上述した移行制御によってエンジン10のトルクTRQengを制御してクラッチ14を係合させる際のショックを抑制する。エンジン10を始動させる際には、嵩上げ処理によって燃料カット許可回転速度Nfcを嵩上げして第1回転速度N1に設定する。しかし、燃料カット許可回転速度Nfcが嵩上げされていると、燃料カットが実行されにくくなる。そのため、バッテリ16の充電割合SOCが閾値Xmax以上になってエンジン保護処理を実行してもすぐにエンジンブレーキによる制動力を発生させることができないことがある。
【0056】
次に、
図3を参照して、この事象について詳しく説明する。
図3は、
図2を参照して説明した移行制御と同様に、嵩上げ処理を実行した場合の例を示すタイムチャートである。なお、
図3に示す例は、電動走行中の減速走行であり、回生ブレーキによる制動中に充電割合SOCが閾値Xmax以上になってバッテリ保護処理を実行するときの移行制御である。
【0057】
<比較例の移行制御>
図3(c)に示すように、時刻T1では機関回転速度Nengが0になっている。また、
図3(e)に示すように、時刻T1ではエンジン10のトルクTRQengが0である。すなわち、時刻T1の時点では、エンジン10は停止している。
【0058】
また、
図3(d)に示すように、時刻T1ではクラッチ14の係合率も0になっている。すなわち、クラッチ14は開放されている。
一方で、
図3(c)に一点鎖線で示すように、時刻T1ではモータジェネレータ15の回転速度Nmgは正の値になっている。また、
図3(e)に一点鎖線で示すように、時刻T1ではモータジェネレータ15のトルクTRQmgは負の値になっている。すなわち、時刻T1では、ハイブリッド車両は、電動走行中であり、回生ブレーキによる制動を行っている。
【0059】
時刻T1において、移行制御を開始すると、制御装置23は、まず、クラッチ14を係合側に向かって操作し、
図3(d)に示すように係合率を徐々に高める。これにより、エンジン10が、クランキングされる。こうしてエンジン10の始動を開始する。このとき、嵩上げ処理が実行され、
図3(c)に示すように、燃料カット許可回転速度Nfcは第1回転速度N1に設定される。
【0060】
そして、エンジン10がクランキングされている時刻T2において、制御装置23は、エンジン10における燃料噴射及び点火を開始させる。これにより、
図3(e)に示すように、エンジン10のトルクTRQengが増大する。そのため、
図3(c)に示すように機関回転速度Nengがさらに上昇する。
【0061】
図3(c)に示すように、時刻T3において、機関回転速度Nengが判定値Nx以上になると、制御装置23は、回転同期処理を開始する。回転同期処理において制御装置23は、
図3(e)に示すようにエンジン10のトルクTRQengを一定に保持したまま、
図3(d)に示すようにクラッチ14の係合率を徐々に増大させる。これにより、
図3(c)に示すように機関回転速度Nengがモータジェネレータ15の回転速度Nmgに近づいていく。
【0062】
図3(c)に示すように、時刻T4において機関回転速度Nengとモータジェネレータ15の回転速度Nmgとの差が極めて小さくなると、
図3(a)に示すように、制御装置23は、時刻T4において回転同期が完了したと判定して、回転同期処理を終了させる。そして、制御装置23は、
図3(d)に示すようにクラッチ14を速やかに完全係合させる。なお、このとき、制御装置23は、点火時期を遅角させてエンジン10のトルクTRQengを低減させる。これにより、クラッチ14の係合率の急変による駆動力の急変が抑制される。
【0063】
図3(d)に示すように、時刻T5において、クラッチ14の係合率が1になる。時刻T5において、クラッチ14の係合が完了したと判定すると、制御装置23は、トルクすり替え処理を開始する。
【0064】
時刻T6において、エンジン10のトルクTRQengは、燃焼運転における最小トルクに到達する。しかし、このときには、機関回転速度Nengが燃料カット許可回転速度Nfcよりも高いため、燃料カットの実行は許可されない。そのため、制御装置23は、エンジン10のトルクTRQengを最小トルクに維持したまま、燃料噴射を継続させる。
【0065】
時刻T7において、嵩上げ処理の実行期間が終了すると、燃料カット許可回転速度Nfcが第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定される。これにより、機関回転速度Nengが燃料カット許可回転速度Nfcを下回る状態になるため、制御装置23は、
図3(b)に示すように、燃料カット信号をONにして燃料カットを実行する。こうして移行制御が終了する。
【0066】
このように、嵩上げ処理によって燃料カット許可回転速度Nfcが高い値に設定されていると、エンジン始動後の機関回転速度Nengが燃料カット許可回転速度Nfcを上回り、燃料カットが実行されない。そのため、エンジンブレーキによる制動の開始が遅れてしまう。
図3に示す例の場合には、時刻T7まで最小トルクでエンジン10を運転させている。
【0067】
バッテリ保護処理により、エンジン10を始動させてエンジンブレーキによる制動を行う場合には、速やかにエンジンブレーキによる制動を発生させることが望まれる。そこで、この実施形態の制御装置23は、バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、嵩上げ処理を実行せず、燃料カット許可回転速度Nfcを第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定する。
【0068】
<制御装置23における燃料カット許可回転速度Nfcの設定>
以下、
図4を参照して、この実施形態の制御装置23が、電動走行中の減速時に実行する処理の流れを説明する。
【0069】
制御装置23は、電動走行中の減速時に
図4に示すルーチンを繰り返し実行する。このルーチンは、電動走行中の減速時に、回生ブレーキを実行するか、エンジンブレーキを実行するのかを選択するルーチンである。
【0070】
図4に示すように、このルーチンを開始すると、制御装置23は、まずステップS100の処理において、充電割合SOCが閾値Xmax以上であるかを判定する。ステップS100の処理において、充電割合SOCが閾値Xmax未満であると判定した場合(ステップS100:NO)には、制御装置23は、処理をステップS130へと進める。
【0071】
ステップS130の処理において、制御装置23は、回生ブレーキによる制動を行うことを選択してこのルーチンを一旦終了させる。
一方で、ステップS100の処理において、充電割合SOCが閾値Xmax以上であると判定した場合(ステップS100:YES)には、制御装置23は、処理をステップS110へと進める。
【0072】
ステップS110の処理において、制御装置23は、燃料カット許可回転速度Nfcを、第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定する。そして、ステップS120の処理において、制御装置23は、エンジン10を始動してクラッチ14を係合させ、エンジンブレーキによる制動を行うことを選択してこのルーチンを一旦終了させる。すなわち、この場合には、制御装置23は、嵩上げ処理を実行せずに、燃料カット許可回転速度Nfcを第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定する。
【0073】
なお、ステップS120の処理を実行したときに、すでに移行制御が完了していてクラッチ14が係合された状態になっているときには、制御装置23は、ステップS120においてエンジン10の始動を行わない。すなわち、この場合には、制御装置23は、ステップS120の処理において、エンジンブレーキによる制動を選択してこのルーチンを一旦終了する。
【0074】
<本実施形態の作用>
次に
図5を参照して上記のルーチンを実行する本実施形態の制御装置23による移行制御について説明する。なお、
図5に示すタイムチャートは、
図3を参照して説明した比較例と同様の状況における本実施形態の制御装置23の移行制御を示している。
【0075】
この状況の場合、充電割合SOCが閾値Xmax以上であるため(S100:YES)、制御装置23は、燃料カット許可回転速度Nfcを第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定する(S110)。
【0076】
図5(a)に示すように時刻T4において回転同期の完了が判定されて
図5(d)に示すように時刻T5までにクラッチ14が完全係合される。そして、時刻T5からトルクすり替え処理が実行される。ここまでは、
図3を参照して説明した比較例の場合と同様である。
【0077】
しかし、
図5(c)に示すように、燃料カット許可回転速度Nfcは第2回転速度N2になっている。
図5(e)に示すように、時刻T6において、エンジン10のトルクTRQengが燃焼運転における最小トルクに到達する。
図5(c)に示すように、このときには、機関回転速度Nengが燃料カット許可回転速度Nfcよりも低いため、燃料カットの実行は許可される。
図5(b)に示すように、制御装置23は、燃料カット信号をONにする。そして、制御装置23は、トルクすり替え処理を終了させるとともに燃料カットを実行する。こうして時刻T6において移行制御が終了する。
【0078】
このように本実施形態の制御装置23では、
図3を参照して説明した比較例の場合のように燃料カットの実行を保留してエンジン10を最小トルクで運転させる期間は存在しない。すなわち、本実施形態の制御装置23は、より速やかにフューエルカットを実行して、エンジンブレーキによる制動力を発生させることができる。
【0079】
<本実施形態の効果>
(1)制御装置23は、バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、燃料カット許可回転速度Nfcを、第1回転速度N1よりも低い第2回転速度N2に設定する。そのため、制御装置23は、燃料カット許可回転速度Nfcを第1回転速度N1に設定する場合と比較して、より低い機関回転速度Nengにおいて燃料カットを実行できる。これにより、エンジン10とモータジェネレータ15との間の駆動伝達が接続されたときに、燃料カットが実行されやすくなる。したがって、制御装置23は、バッテリ16の充電割合SOCが閾値Xmax以上になったときに、エンジンブレーキによる制動力を速やかに発生させることができる。
【0080】
(2)制御装置23は、エンジン始動時に、嵩上げ処理を実行し、燃料カット許可回転速度Nfcを、復帰回転速度Ncに第2加算量を加えた和である第2回転速度N2に設定する。そのため、制御装置23は、エンジン10の始動の失敗を抑制できる。
【0081】
(3)制御装置23は、トルクすり替え処理を実行する。そのため、制御装置23は、エンジン10とモータジェネレータ15との間の動力伝達を接続した状態での電動走行への移行を完了させるにあたり、駆動力の変動を抑制することができる。
【0082】
(4)制御装置23は、バッテリ保護処理によるエンジン始動の場合には、燃料カットの実行とともにトルクすり替え処理を終了して移行制御を終了させる。そのため、制御装置23は、速やかにエンジンブレーキによる制動力を発生させるとともに、速やかに移行制御を終了させることができる。
【0083】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
・上記の実施形態では、クラッチ14の係合が完了したあと、すり替え処理を実行してから移行制御を終了させる例を示した。これに対して、すり替え処理を省略してもよい。
・上記の実施形態では、スタータモータを備えておらず、モータジェネレータ15でエンジン10をクランキングするハイブリッド車両を例示した。これに対して、スタータモータを備え、エンジン10をスタータモータの駆動力でクランキングするハイブリッド車両に、上記の実施形態と同様の制御装置23を適用することもできる。
【0085】
・嵩上げ処理によらず、そもそも燃料カット許可回転速度Nfcが高い値に設定されている場合には、
図3を参照して説明した比較例の場合と同様に、燃料カットをすぐに実行できないことがある。上記の実施形態のように、電動走行中の減速時であり、充電割合SOCが閾値Xmax以上であるときに、燃料カット許可回転速度Nfcを低い値に設定する構成を採用すれば、燃料カットが実行されやすくなる。そのため、上記の実施形態と同様に、バッテリ16の充電割合SOCが閾値Xmax以上になったときに、エンジンブレーキによる制動力を速やかに発生させることができるようになる。
【0086】
・制御装置23としては、処理回路と記憶装置を備えてソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、制御装置23は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てをプログラムに従って実行する処理回路と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理回路及びプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理回路およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…エンジン
11…変速ユニット
12…ディファレンシャル
13…駆動輪
14…クラッチ
15…モータジェネレータ
16…バッテリ
17…インバータ
18…トルクコンバータ
19…自動変速機
20…ロックアップクラッチ
21…オイルポンプ
22…油圧制御部
23…制御装置
31…クランクポジションセンサ
32…アクセルポジションセンサ
33…車速センサ