(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240827BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240827BHJP
B61B 13/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B61B13/00 F
B65G1/00 501C
B61B13/00 M
B61B13/00 W
B61B13/06 D
(21)【出願番号】P 2022010159
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-80411(JP,A)
【文献】特開2012-240463(JP,A)
【文献】特開2021-167185(JP,A)
【文献】特開2022-12681(JP,A)
【文献】特開2018-62241(JP,A)
【文献】米国特許第5060575(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1561226(KR,B1)
【文献】特開2023-91614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B65G 1/00
B61B 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記走行経路が交差している区間及び前記走行経路が湾曲している区間の少なくともいずれかに配置されて前記搬送車の進路を案内する案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記搬送車は、一対の前記走行レールそれぞれの上面を転動する走行輪と、前記案内レールにおける前記幅方向第1側を向く第1側面又は前記幅方向第2側を向く第2側面を転動する案内輪と、前記第1側面を転動するための前記案内輪の位置を第1位置とし前記第2側面を転動するための前記案内輪の位置を第2位置として、前記案内輪を前記第1位置と前記第2位置とに前記幅方向に移動させる案内輪駆動部と、を備え、
前記走行経路には、前記案内レールが配置された案内区間が複数設けられていると共に、前記案内レールが配置されていない非案内区間が設けられており、
複数の前記案内区間のうちの1つを第1案内区間とし、前記第1案内区間に対して前記非案内区間を挟んで前記走行方向の下流側に位置する前記案内区間を第2案内区間として、
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記第1案内区間において前記案内輪を前記第1位置とし、前記第2案内区間において前記案内輪を前記第2位置とする場合に、事前付勢処理を実行し、
前記事前付勢処理は、前記第1案内区間において前記案内輪が前記案内レールの前記第1側面に対して前記幅方向第1側から接触している状態であって前記案内輪が前記非案内区間に進入する前に、前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる方向に付勢するように前記案内輪駆動部を制御する処理であり、
前記制御システムは、前記事前付勢処理を継続したまま前記案内輪に前記非案内区間を通過させることによって、前記非案内区間において前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させ、前記第2案内区間において前記案内輪を前記案内レールの前記第2側面に対して前記幅方向第2側から接触させる、物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記第1案内区間での前記案内輪の前記幅方向の位置と前記第2案内区間での前記案内輪の前記幅方向の位置とが同じである場合には、前記事前付勢処理を実行しない、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記走行方向における前記非案内区間の長さが予め定められたしきい値以上である場合には、前記事前付勢処理を実行しない、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記走行輪は、前記走行方向及び前記幅方向の少なくとも一方に離間して複数設けられ、
前記制御システムは、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する位置判定部を備え、
前記位置判定部は、前記走行方向又は前記幅方向に離間した2つ以上の前記走行輪を対象として、当該対象となる2つ以上の前記走行輪の回転速度の差である回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
一対の前記走行レールのうち、前記幅方向第1側に配置されたものを第1走行レールとし、前記幅方向第2側に配置されたものを第2走行レールとして、
複数の前記走行輪は、前記第1走行レールの上面を転動する第1前輪と、前記第1走行レールを転動すると共に前記第1前輪に対して進行方向の後ろ側に配置された第1後輪と、前記第2走行レールの上面を転動する第2前輪と、前記第2走行レールを転動すると共に前記第2前輪に対して進行方向の後ろ側に配置された第2後輪と、を含み、
前記回転速度差は、前記第1後輪及び前記第2後輪の少なくとも一方の回転速度と、前記第1前輪及び前記第2前輪の少なくとも一方の回転速度との差である、請求項4に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記制御システムは、前記位置判定部により前記案内輪が前記第1案内区間にあることが判定された時点から、前記走行方向における前記第1案内区間の長さに基づいて設定された設定距離を前記搬送車が走行するまでの間に、前記事前付勢処理を実行する、請求項4又は5に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記走行経路に沿って予め定められた位置に被検出体が設置され、
前記搬送車は、前記被検出体を検出する検出部を備え、
前記制御システムは、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する位置判定部を備え、
前記位置判定部は、前記検出部が前記被検出体を検出した時点から、前記搬送車が予め定められた距離を走行したことに基づいて、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項8】
前記搬送車は、前記走行輪としての前輪を備えた前側走行部と、前記走行輪としての後輪を備えた後側走行部と、前記前側走行部に設けられた前記案内輪としての前側案内輪と、前記後側走行部に設けられた前記案内輪としての後側案内輪とを備え、
前記制御システムは、前記第1案内区間への前記後側案内輪の進入後、前記前側案内輪が前記非案内区間に進入する前に、前記前側案内輪と前記後側案内輪との双方について同時期に前記事前付勢処理を実行する、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項9】
前記走行経路には、前記走行経路が分岐及び合流する分岐合流区間が設けられており、
前記分岐合流区間は、第1区間と、前記第1区間に対して並列に配置された第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを接続する接続区間と、を備え、
前記接続区間は、前記第1区間に対して前記幅方向第1側へ分岐すると共に、前記第2区間に対して前記幅方向第2側から合流するように構成され、
前記案内レールは、前記第1区間から前記接続区間の途中に亘って配置された分岐案内部と、前記接続区間の途中から前記第2区間に亘って配置された合流案内部と、前記分岐案内部と前記合流案内部との前記走行方向の間に設けられ、前記案内輪の前記幅方向の移動が許容される切替エリアと、を備え、
前記分岐案内部が設けられた区間が前記第1案内区間であり、
前記切替エリアが設けられた区間が前記非案内区間であり、
前記合流案内部が設けられた区間が前記第2案内区間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車の進路を案内する案内レールと、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備では、搬送車に備えられた案内輪が案内レールに沿って案内されることで、走行経路が交差している区間や走行経路が湾曲している区間において搬送車の進路が案内される。案内レールを用いて搬送車の進路を案内する物品搬送設備の一例が、特開2008-126743号公報に開示されている。以下、背景技術の説明の欄において括弧内に示される符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された物品搬送設備には、案内レールとして、進行方向の手前側に配置された方向制御ガイド(15)と、それよりも進行方向の奥側に配置された他の方向制御ガイド(17)と、が設けられている。同設備では、方向制御ガイド(15)と方向制御ガイド(17)との進行方向の間に形成された離隔領域において、走行ユニット(40)を幅方向一方側(
図2右方)にシフトさせることで、走行ユニット(40)に設けられた案内輪(41)の幅方向位置の切り替えを行っている。これにより、案内輪(41)は、方向制御ガイド(15)に案内されていた状態から、方向制御ガイド(17)によって案内される状態に切り替わる。案内輪(41)が方向制御ガイド(17)に案内されることによって、搬送車(30)の進行方向は、当該方向制御ガイド(17)の延在方向に沿って変更される。このように、案内レールを用いて搬送車の進路を案内する物品搬送設備では、案内輪を右にシフトさせることで搬送車の進路を右に案内し、案内輪を左にシフトさせることで搬送車の進路を左に案内するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行経路のレイアウトや、搬送車に指令された搬送経路によっては、案内輪の幅方向位置を短期間で切り替えなければならない状況があり得る。この状況下において、案内輪の切替動作が間に合いそうにない場合には、搬送車の走行速度を遅くすることで切替動作の時間を確保することが一般的である。しかし、搬送車の走行速度を遅くすると、設備全体の搬送効率の低下を招くことになる。
【0006】
上記実状に鑑みて、搬送車の走行速度の低下を抑制しつつ、案内輪の幅方向位置の切替動作を適切に行うことが可能な技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記走行経路が交差している区間及び前記走行経路が湾曲している区間の少なくともいずれかに配置されて前記搬送車の進路を案内する案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記搬送車は、一対の前記走行レールそれぞれの上面を転動する走行輪と、前記案内レールにおける前記幅方向第1側を向く第1側面又は前記幅方向第2側を向く第2側面を転動する案内輪と、前記第1側面を転動するための前記案内輪の位置を第1位置とし前記第2側面を転動するための前記案内輪の位置を第2位置として、前記案内輪を前記第1位置と前記第2位置とに前記幅方向に移動させる案内輪駆動部と、を備え、
前記走行経路には、前記案内レールが配置された案内区間が複数設けられていると共に、前記案内レールが配置されていない非案内区間が設けられており、
複数の前記案内区間のうちの1つを第1案内区間とし、前記第1案内区間に対して前記非案内区間を挟んで前記走行方向の下流側に位置する前記案内区間を第2案内区間として、
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記第1案内区間において前記案内輪を前記第1位置とし、前記第2案内区間において前記案内輪を前記第2位置とする場合に、事前付勢処理を実行し、
前記事前付勢処理は、前記第1案内区間において前記案内輪が前記案内レールの前記第1側面に対して前記幅方向第1側から接触している状態であって前記案内輪が前記非案内区間に進入する前に、前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる方向に付勢するように前記案内輪駆動部を制御する処理であり、
前記制御システムは、前記事前付勢処理を継続したまま前記案内輪に前記非案内区間を通過させることによって、前記非案内区間において前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させ、前記第2案内区間において前記案内輪を前記案内レールの前記第2側面に対して前記幅方向第2側から接触させる。
【0008】
本構成によれば、案内輪が第1案内区間に進入した後であって非案内区間に進入する前に、案内輪を第2位置へ移動させる方向に付勢する事前付勢処理を行う。そのため、案内輪が非案内区間に進入した際に、案内輪の幅方向位置を第1位置から第2位置に迅速に切り替えることができ、非案内区間において案内輪の切替動作に要する時間を短く抑えることができる。これにより、案内輪の切替動作を行うために搬送車の減速を行う必要性を、低くすることができる。このように、本構成によれば、搬送車の走行速度の低下を抑制しつつ、案内輪の幅方向位置の切替動作を適切に行うことが可能となる。また、搬送車の走行速度の低下を抑制することで、設備全体の搬送効率が低下することも抑制できる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】第1片輪走行状態の搬送車を示す走行方向視図
【
図5】第2片輪走行状態の搬送車を示す走行方向視図
【
図7】事前付勢処理により案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図8】事前付勢処理により案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図9】事前付勢処理により案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図10】事前付勢処理により案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図11】事前付勢処理により案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図12】分岐合流区間において案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図13】分岐合流区間において案内輪の切替動作を行う場合の説明図
【
図14】その他の実施形態に係る物品搬送設備の一部を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
物品搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1~
図3に示すように、物品搬送設備100は、走行経路Rに沿って配置された一対の走行レール90と、走行経路Rに沿って走行して物品Wを搬送する搬送車Vと、走行経路Rが交差している区間及び走行経路Rが湾曲している区間の少なくともいずれかに配置されて搬送車Vの進路を案内する案内レール80と、搬送車Vを制御する制御システムH(
図6参照)と、を備えている。
【0013】
以下の説明では、走行経路Rに沿う方向を「走行方向X」とし、上下方向視で走行方向Xに直交する方向を「幅方向Y」とする。また、幅方向Yの一方側を「幅方向第1側Y1」とし、幅方向Yの他方側を「幅方向第2側Y2」とする。例えば、幅方向第1側Y1は、搬送車Vの進行方向を基準として右側を指し、幅方向第2側Y2は、その反対の左側を指す。但し、幅方向第1側Y1及び幅方向第2側Y2は、左右の何れかの側を特定するものではない。幅方向第1側Y1が左側を指し、幅方向第2側Y2が右側を指すものであっても良い。
【0014】
図1に示すように、走行経路Rには、案内レール80が配置された案内区間SGが複数設けられていると共に、案内レール80が配置されていない非案内区間SNが設けられている。図示の例では、非案内区間SNも複数設けられている。
【0015】
案内区間SGと非案内区間SNとは、走行経路Rに沿って交互に設けられている。搬送車Vは、案内区間SGと非案内区間SNとを交互に走行する。
図1には、走行経路Rを走行方向Xに区画する複数の区間A~Iが示されている。区間B及び区間Dは、走行経路Rが交差している区間である。区間Fは、走行経路Rが湾曲している区間である。これら区間B、区間D、及び区間Fが、案内レール80が設けられた案内区間SGである。その他の区間A、区間C、区間E、区間G、区間H、及び区間Iが、案内レール80が設けられていない非案内区間SNである。
図1では、搬送車が、区間G、区間B、区間C、区間D、区間Eを順に走行する場合を例示している。
【0016】
複数の案内区間SGのうちの1つを「第1案内区間SG1」とし、第1案内区間SG1に対して非案内区間SNを挟んで走行方向Xの下流側に位置する案内区間SGを「第2案内区間SG2」とする。ここでは、第2案内区間SG2は、第1案内区間SG1に対して1つの非案内区間SNを挟んで走行方向Xの下流側に隣接する案内区間SGである。図示の例では、区間Bが第1案内区間SG1とされている。区間Bに対して区間Cを挟んで走行方向Xの下流側に位置する区間Dが、第2案内区間SG2とされている。ここでは、説明の便宜上、「第1案内区間SG1」、「第2案内区間SG2」を定義しているだけであり、それぞれが案内区間SGである区間B、区間D、及び区間Fが、第1案内区間SG1又は第2案内区間SG2となり得る。
【0017】
本実施形態では、走行経路Rに沿って予め定められた位置に被検出体70が設置されている。被検出体70は、搬送車Vに備えられた検出部4(
図6参照)によって検出される対象である。被検出体70は、当該被検出体70が配置された位置のアドレス情報(走行経路Rに沿った位置を示す情報)を保持している。搬送車Vは、被検出体70に保持されたアドレス情報を読み取ることで、自らの現在位置を検出することができる。例えば、被検出体70として、1次元コード又は2次元コードを用い、検出部4として、1次元コードリーダ又は2次元コードリーダを用いることができる。
【0018】
本実施形態では、被検出体70は、少なくとも、案内区間SGに対して走行方向Xの上流側に隣接する区間に設置されている。詳細には、複数の案内区間SGのそれぞれに対して走行方向Xの上流側に隣接する非案内区間SNに、被検出体70が設置されている。図示の例では、被検出体70は、案内区間SGには設置されていない。但し、被検出体70は、案内区間SGにも設置されていて良い。
【0019】
本実施形態では、走行経路Rが交差している区間及び走行経路Rが湾曲している区間では、一対の走行レール90のうち何れかが分断されている。本例では、走行経路Rが交差している案内区間SGである区間B及び区間Dにおいて、一対の走行レール90のうち何れかが分断されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、一対の走行レール90は、互いに幅方向Yに離間した位置において、走行経路Rに沿って配置されている。以下では、一対の走行レール90のうち、幅方向第1側Y1に配置されたものを第1走行レール91とし、幅方向第2側Y2に配置されたものを第2走行レール92とする。なお、以下では、第1走行レール91と第2走行レール92とを、単に走行レール90と総称する場合がある。
【0021】
本実施形態では、一対の走行レール90は、床面から上方に離間した位置に配置されている。一対の走行レール90は、例えば、天井から吊り下げ支持されている。
【0022】
案内レール80は、一対の走行レール90よりも上方に配置されている(
図4等参照)。すなわち、案内レール80は、一対の走行レール90と同様に、床面から上方に離間した位置に配置されている。案内レール80は、例えば、天井から吊り下げ支持されている。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、天井付近に設定された走行経路Rに沿って物品Wを搬送する天井搬送車として構成されている。物品Wは、搬送車Vによる搬送対象物とされ、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクルポッド等とされる。
【0024】
搬送車Vは、一対の走行レール90それぞれの上面を転動する走行輪10と、走行輪10を駆動する走行輪駆動部Mと、を備えている。走行輪10は、走行方向X及び幅方向Yの少なくとも一方に離間して複数設けられている。本例では、複数の走行輪10が、走行方向Xに離間して設けられていると共に、幅方向Yに離間して設けられている。走行輪駆動部Mは、例えば、サーボモータ等の電動モータを用いて構成されている。
【0025】
本実施形態では、複数の走行輪10は、前輪10fと後輪10rとを含んでいる。具体的には、複数の走行輪10は、第1走行レール91の上面を転動する第1前輪11fと、第1走行レール91を転動すると共に第1前輪11fに対して進行方向の後ろ側に配置された第1後輪11rと、第2走行レール92の上面を転動する第2前輪12fと、第2走行レール92を転動すると共に第2前輪12fに対して進行方向の後ろ側に配置された第2後輪12rと、を含んでいる。すなわち本例において、前輪10fは、第1前輪11fと第2前輪12fとを含んでいる。後輪10rは、第1後輪11rと第2後輪12rとを含んでいる。
【0026】
本実施形態では、搬送車Vは、走行部1と本体部2とを備えている。走行部1は、搬送車Vが走行するための部分であり、走行レール90に対して上方に配置されている。本体部2は、走行部1に連結されており、走行レール90に対して下方に配置されている。本例では、本体部2は、物品Wを支持するように構成されている。物品Wは、本体部2に支持された状態で搬送車Vにより搬送される。
【0027】
本実施形態では、走行部1は、前側走行部1Fと、前側走行部1Fに対して進行方向の後ろ側に配置された後側走行部1Rと、を備えている。本例では、前側走行部1Fには、第1前輪11fと第2前輪12fとが支持されている。後側走行部1Rには、第1後輪11rと第2後輪12rとが支持されている。すなわち本実施形態では、搬送車Vは、走行輪10としての前輪10f(第1前輪11f及び第2前輪12f)を備えた前側走行部1Fと、走行輪10としての後輪10r(第1後輪11r及び第2後輪12r)を備えた後側走行部1Rと、を備えている。
【0028】
図3~
図5に示すように、搬送車Vは、案内レール80における幅方向第1側Y1を向く第1側面81又は幅方向第2側Y2を向く第2側面82を転動する案内輪13と、第1側面81を転動するための案内輪13の位置を第1位置P1とし第2側面82を転動するための案内輪13の位置を第2位置P2として、案内輪13を第1位置P1と第2位置P2とに幅方向Yに移動させる案内輪駆動部5と、を備えている。
【0029】
案内輪13は、上下軸心まわりに回転可能に走行部1に支持されている。これにより、案内レール80の第1側面81及び第2側面82のそれぞれを転動可能となっている。なお、上述の走行輪10は、幅方向Yに沿う軸心まわりに回転可能に走行部1に支持されている。
【0030】
案内輪駆動部5は、案内輪13を幅方向Yに付勢して幅方向Yに沿って移動させるように構成されている。これにより、案内輪駆動部5は、案内輪13の幅方向Yの位置を、走行部1の幅方向Yの中心A(
図4及び
図5参照)よりも幅方向第1側Y1に設定された第1位置P1と、走行部1の幅方向Yの中心Aよりも幅方向第2側Y2に設定された第2位置P2と、に変更するように構成されている。案内輪駆動部5は、例えば、ロータリソレノイドを用いて構成され、通電状態に応じて、案内輪13の位置を第1位置P1と第2位置P2とに変化させる。
【0031】
図4に示すように、案内輪13は、第1位置P1に配置された状態で案内レール80が配置された領域を通過する場合に、案内レール80の第1側面81を転動して、案内レール80によって適切に案内されるようになっている。
【0032】
図5に示すように、案内輪13は、第2位置P2に配置された状態で案内レール80が配置された領域を通過する場合に、案内レール80の第2側面82を転動して、案内レール80によって適切に案内されるようになっている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、前側走行部1Fに設けられた案内輪13としての前側案内輪13fと、後側走行部1Rに設けられた案内輪13としての後側案内輪13rとを備えている。図示の例では、一対の前側案内輪13fが、幅方向Yの同じ位置において走行方向Xに並んだ状態で、前側走行部1Fに支持されている。また、一対の後側案内輪13rが、幅方向Yの同じ位置において走行方向Xに並んだ状態で、後側走行部1Rに支持されている。本例では、上述の案内輪駆動部5は、前側案内輪13f及び後側案内輪13rのそれぞれに対応して設けられている。前側案内輪13f(本例では一対の前側案内輪13f)と後側案内輪13r(本例では一対の後側案内輪13r)とは、独立して駆動される。以下では、前側案内輪13fと後側案内輪13rとを、単に案内輪13と総称する場合がある。
【0034】
上述のように、本実施形態では、走行経路Rが交差している区間及び走行経路Rが湾曲している区間では、一対の走行レール90のうち何れかが分断されている。搬送車Vは、一対の走行レール90のうち何れかが分断された区間において、幅方向Yに離間して配置された一対の走行輪10のうち一方が走行レール90上を転動すると共に他方が浮いた片輪走行状態となる。本例では、一対の走行レール90のうち何れかが分断された区間では、搬送車Vは、第1片輪走行状態A1又は第2片輪走行状態A2となる(
図2参照)。
【0035】
図2及び
図4に示すように、一対の走行レール90のうち第2走行レール92が分断された区間では、搬送車Vは、幅方向第1側Y1に配置された走行輪10(第1前輪11f及び第1後輪11r)が第1走行レール91の上面を転動し、幅方向第2側Y2に配置された走行輪10(第2前輪12f及び第2後輪12r)が浮いた第1片輪走行状態A1となる。搬送車Vの第1片輪走行状態A1では、第1前輪11f及び第1後輪11rが第1走行レール91の上面を転動すると共に、第1位置P1に配置された案内輪13が案内レール80の第1側面81を転動する。搬送車Vは、第1片輪走行状態A1において、少なくとも、第1前輪11f及び第1後輪11rと、案内輪13とによって、水平状態(水平姿勢)を維持しつつ走行経路Rを走行する。
【0036】
図2及び
図5に示すように、一対の走行レール90のうち第1走行レール91が分断された区間では、搬送車Vは、幅方向第2側Y2に配置された走行輪10(第2前輪12f及び第2後輪12r)が第2走行レール92の上面を転動し、幅方向第1側Y1に配置された走行輪10(第1前輪11f及び第1後輪11r)が浮いた第2片輪走行状態A2となる。搬送車Vの第2片輪走行状態A2では、第2前輪12f及び第2後輪12rが第2走行レール92の上面を転動すると共に、第2位置P2に配置された案内輪13が案内レール80の第2側面82を転動する。搬送車Vは、第2片輪走行状態A2において、少なくとも、第2前輪12f及び第2後輪12rと、案内輪13とによって、水平状態(水平姿勢)を維持しつつ走行経路Rを走行する。
【0037】
なお、詳細な図示は省略するが、一対の走行レール90の何れもが分断されていない区間では、搬送車Vは、幅方向第1側Y1の走行輪10及び幅方向第2側Y2の走行輪10の双方が走行レール90の上面を転動する両輪走行状態となる。搬送車Vは、少なくとも、案内レール80が設けられていない非案内区間SNにおいて、両輪走行状態となる。この場合、案内レール80は設けられていないため、案内輪13は、どこにも接触せずに、第1位置P1又は第2位置P2に配置されることになる。
【0038】
図6に示すように、物品搬送設備100は、搬送車Vに搭載されて当該搬送車Vの動作を制御する制御装置Hvと、搬送車Vとは別に設けられると共に設備の全体又は一部を管理する上位コントローラCtと、を備えている。本実施形態では、制御装置Hvが、制御システムHの一部又は全部を構成している。但し、制御システムHは、制御装置Hvに加えて上位コントローラCtを含んで構成されていても良い。制御システムHは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0039】
上位コントローラCtは、搬送車Vに対して、当該搬送車Vが走行すべき経路を指定した経路情報を送信するように構成されている。搬送車Vは、上位コントローラCtから送信された経路情報に基づいて、走行経路Rを走行する。
図1に示す例では、区間G、B、C、D、E、F、Iを順に搬送車Vが走行するように、経路が指定されている。また、上位コントローラCtは、経路情報と併せて、搬送対象の物品Wの種類、搬送元、及び搬送先などを指定した搬送情報を、搬送車Vに送信するように構成されている。搬送車Vは、上位コントローラCtから送信された搬送情報に基づいて、物品Wを搬送するように構成されている。
【0040】
本実施形態では、制御システムHは、走行輪駆動部Mを制御することにより、搬送車Vの走行を制御する。これにより、搬送車Vの加減速や停止などが実現される。また、制御システムHは、案内輪駆動部5を制御することにより、案内輪13に対して付勢される力の向きを制御する。具体的には、制御システムHは、案内輪駆動部5を制御することにより、案内輪13を幅方向第1側Y1に付勢し、又は、幅方向第2側Y2に付勢する。案内レール80に関与しない状態で幅方向第1側Y1に付勢された案内輪13は、第1位置P1に配置される。案内レール80に関与しない状態で幅方向第2側Y2に付勢された案内輪13は、第2位置P2に配置される。
【0041】
本実施形態では、搬送車Vは、被検出体70(
図1参照)を検出する検出部4を備えている。また本例では、搬送車Vは、走行輪10の回転速度を計測する計測部3を備えている。制御システムHは、計測部3による計測結果と検出部4による検出結果とを取得するように構成されている。
【0042】
本実施形態では、計測部3は、走行輪10の回転速度に加えて、当該回転速度に基づいて搬送車Vの走行距離を計測するように構成されている。計測部3は、例えば、ロータリエンコーダを用いて構成されている。本例では、計測部3は、前輪10fの回転速度と後輪10rの回転速度とを別々に計測するように構成されている。換言すれば、計測部3を構成するロータリエンコーダが、前輪10f及び後輪10rのそれぞれに対応して設けられている。
【0043】
本実施形態では、検出部4は、走行経路Rに配置された被検出体70から情報を読み取るように構成されている。上述のように、被検出体70は、当該被検出体70が配置された位置のアドレス情報(走行経路Rに沿った位置を示す情報)を保持している。従って、検出部4は、被検出体70に保持されたアドレス情報を読み取ることで、搬送車Vの現在位置を検出することができる。
図1に示す例では、被検出体70は、各案内区間SGに対して走行方向Xの上流側に隣接する非案内区間SNに設置されている。従って本例では、検出部4は、被検出体70に保持されたアドレス情報を読み取ることで、搬送車Vが非案内区間SNに位置していることを検出する。
【0044】
本実施形態では、制御システムHは、搬送車Vが走行すべき経路を判定する経路判定部Haを備えている。経路判定部Haは、上位コントローラCtから送信された経路情報に基づいて、搬送車Vがこれから走行すべき経路を判定するように構成されている。
図1に示す例では、区間G、B、C、D、E、F、Iを順番に繋ぐ経路が、上位コントローラCtから送信される経路情報に含まれている。そして、経路判定部Haは、当該経路を、搬送車Vがこれから走行する経路であると判定する。
【0045】
本実施形態では、制御システムHは、経路判定部Haにより判定された経路に基づいて、当該経路中の各案内区間SGを搬送車Vが走行する場合における案内輪13の幅方向Yの位置を判定する。本例では、制御システムHは、案内区間SGにおける搬送車Vの進路に応じて案内輪13を第1位置P1又は第2位置P2とするように案内輪駆動部5を制御する案内輪切替制御を実行するように構成されている。
【0046】
図1に示す例において、経路判定部Haにより判定された区間G、B、C、D、E、F、Iを順番に繋ぐ経路のうち、区間B、D、Fが案内区間SGである。この場合、制御システムHは、区間Bにおける案内輪13の幅方向Yの位置が第1位置P1(
図4参照)であり、区間Dにおける案内輪13の幅方向Yの位置が第2位置P2(
図5参照)であり、区間Fにおける案内輪13の幅方向Yの位置が第1位置P1であると判定する。そして、制御システムHは、当該判定に基づいて、案内輪切替制御を実行する。これにより、経路判定部Haにより判定された区間G、B、C、D、E、F、Iを順番に繋ぐ経路を搬送車Vに適切に走行させることができる。
【0047】
本実施形態では、制御システムHは、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する位置判定部Hbを備えている。本例では、位置判定部Hbは、計測部3によって計測された走行輪10の回転速度の情報を取得するように構成されている。そして、位置判定部Hbは、走行方向X又は幅方向Yに離間した2つ以上の走行輪10を対象として、当該対象となる2つ以上の走行輪10の回転速度の差である回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する。
【0048】
ここで、搬送車Vが両輪走行状態でカーブする場合には、カーブの内側に配置された走行輪10の回転速度が、カーブの外側に配置された走行輪10の回転速度に比べて低くなり、これら両輪間において回転速度差が生じる。なお、本実施形態では、第1前輪11fと第2前輪12fとが同速で回転駆動され、第1後輪11rと第2後輪12rとが同速で回転駆動される。そして、搬送車Vは、片輪走行状態でカーブする。そのため、本実施形態では、上記の回転速度差は生じない。或いは、カーブの内側に配置された前輪10fが走行レール90のカーブ部分を走行しつつ、当該前輪10fと幅方向Yの同じ側に配置された後輪10rが走行レール90のカーブ部分の手前にある直線部分を走行する場合には、前輪10fの回転速度が後輪10rの回転速度に比べて低くなり、これら両輪間において回転速度差が生じる。さらに、反対に、カーブの外側に配置された前輪10fが走行レール90のカーブ部分を走行しつつ、当該前輪10fと幅方向Yの同じ側に配置された後輪10rが走行レール90のカーブ部分の手前にある直線部分を走行する場合には、前輪10fの回転速度が後輪10rの回転速度に比べて高くなり、これら両輪間において回転速度差が生じる。
【0049】
位置判定部Hbは、上記のようにして生じる回転速度差を利用して、対象となる2つ以上の走行輪10の回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する。
【0050】
本実施形態では、搬送車Vが、直線状の非案内区間SNを走行しつつ湾曲状の案内区間SGにおいて進行方向を変更する場合に、位置判定部Hbは、対象となる2つ以上の走行輪10の回転速度差がしきい値以上変化したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する。「進行方向を変更する場合」とは、直進状態から幅方向第1側Y1に曲がる場合又は幅方向第2側Y2に曲がる場合を意味する。
図1に示す例では、搬送車Vは、直線状の非案内区間SNである区間Gを走行し、その後、案内区間SGである区間Bにおいて進行方向を幅方向第1側Y1(図中右側)に変更する。
【0051】
本実施形態では、位置判定部Hbによる判定基準となる上記の回転速度差は、第1後輪11r及び第2後輪12rの少なくとも一方の回転速度と、第1前輪11f及び第2前輪12fの少なくとも一方の回転速度との差である。すなわち、位置判定部Hbは、前輪10fと後輪10rとの回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する。なお、「規定のしきい値」は、搬送車Vの走行速度や走行レール90のカーブ部分における曲率半径などを考慮して、実験等によって予め定められていると良い。
【0052】
本開示に係る物品搬送設備100において、制御システムHは、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する場合であって(
図1参照)、第1案内区間SG1において案内輪13を第1位置P1(
図4参照)とし、第2案内区間SG2において案内輪13を第2位置P2(
図5参照)とする場合に、事前付勢処理を実行する。事前付勢処理は、第1案内区間SG1において案内輪13が案内レール80の第1側面81に対して幅方向第1側Y1から接触している状態であって案内輪13が非案内区間SNに進入する前に、案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させる方向に付勢するように案内輪駆動部5を制御する処理である。
図1に示す例では、制御システムHは、搬送車Vが区間B(第1案内区間SG1)、区間C(非案内区間SN)、区間D(第2案内区間SG2)の順に走行する場合であって、区間Bにおいて案内輪13を第1位置P1とし、区間Dにおいて案内輪13を第2位置P2とする場合に、事前付勢処理を実行する。
【0053】
そして、制御システムHは、事前付勢処理を継続したまま案内輪13に非案内区間SNを通過させることによって、非案内区間SNにおいて案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させ、第2案内区間SG2において案内輪13を案内レール80の第2側面82に対して幅方向第2側Y2から接触させる。
図1に示す例では、制御システムHは、事前付勢処理を継続したまま案内輪13に区間C(非案内区間SN)を通過させることによって案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させ、区間D(第2案内区間SG2)において案内輪13を案内レール80の第2側面82に対して幅方向第2側Y2から接触させる。
【0054】
以下、
図7~
図11を参照して、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2を順に走行する場合に事前付勢処理が行われる手順を、時系列に沿って説明する。なお、
図7~
図11中、案内輪13に付された白色矢印は、案内輪13が付勢されている方向を示すものであり、案内輪13が変位していることを示すものではない。
【0055】
図7に示すように、制御システムHは、案内輪13を第1位置P1とするように案内輪駆動部5を制御した状態で、案内輪13を第1案内区間SG1に進入させる。これにより、案内輪13は、幅方向第1側Y1へ付勢され、案内レール80の第1側面81を転動する。そして、搬送車Vがカーブに差し掛かると、第1後輪11rが走行レール90の直線部分を転動すると共に第1前輪11fが走行レール90のカーブ部分(カーブ部分の内側)を転動する状態となる。そのため、第1後輪11rが転動する距離が、第1前輪11fが転動する距離よりも長くなり、第1後輪11rと第1前輪11fとに回転速度差が生じる。そして、位置判定部Hbは、この回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、搬送車Vがカーブに差し掛かっていること、すなわち、案内輪13が湾曲状の第1案内区間SG1にあることを判定する。
【0056】
図8に示すように、制御システムHは、第1案内区間SG1において案内輪13が案内レール80の第1側面81に対して幅方向第1側Y1から接触している状態であって案内輪13が非案内区間SNに進入する前に、事前付勢処理を実行する。制御システムHは、事前付勢処理の実行により、案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させる方向に付勢する。すなわち制御システムHは、案内輪13を幅方向第2側Y2へ付勢する。本実施形態では、制御システムHは、位置判定部Hbにより案内輪13が第1案内区間SG1にあることが判定された時点から、走行方向Xにおける第1案内区間SG1の長さに基づいて設定された設定距離を搬送車Vが走行するまでの間に、事前付勢処理を実行する。ここで、「設定距離」は、走行方向Xにおける第1案内区間SG1の長さ未満とされる。詳細には、設定距離は、案内レール80における湾曲の開始点(
図7において前側案内輪13fがある位置)から案内レール80における走行方向Xの下流端までの長さ未満とされる。これにより、案内輪13が非案内区間SNに進入する前に、確実性高く事前付勢処理を実行することができる。
【0057】
本実施形態では、制御システムHは、第1案内区間SG1への後側案内輪13rの進入後、前側案内輪13fが非案内区間SNに進入する前に、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方について同時期に事前付勢処理を実行する。本例では、位置判定部Hbは、前側案内輪13fが第1案内区間SG1にあることを判定した時点から搬送車Vが走行した距離に基づいて、後側案内輪13rが第1案内区間SG1にあることを判定する。すなわち、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの走行方向Xの離間距離は既知である。そのため、位置判定部Hbは、前側案内輪13fが第1案内区間SG1にあることを判定した時点から当該離間距離の分、搬送車Vが走行したことに基づいて、後側案内輪13rが第1案内区間SG1にあることを判定することができる。これにより、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方が第1案内区間SG1にあることを確実性高く判定した上で、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方について同時期に事前付勢処理を実行することができる。
【0058】
なお、このように、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方について同時期に事前付勢処理を実行することにより、前側案内輪13fと後側案内輪13rとが、同時期に幅方向第2側Y2へ付勢される。但し、前側案内輪13f及び後側案内輪13rは、案内レール80の第1側面81に対して幅方向第1側Y1から接した状態であるため、幅方向第2側Y2に付勢されても幅方向Yに変位することはない。すなわち、案内輪13は、搬送車Vの重量に応じた力で第1側面81に押し当てられている。そして、事前付勢処理において案内輪13に付与される付勢力は、案内輪13が第1位置P1に維持される大きさ(言い換えれば、案内輪13が幅方向Yに変位しない大きさ)とされている。
【0059】
図9及び
図10に示すように、制御システムHは、事前付勢処理を継続したまま案内輪13に非案内区間SNを通過させることによって、非案内区間SNにおいて案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させる。
【0060】
本実施形態では、搬送車Vは、互いに走行方向Xに離間して配置された前側案内輪13fと後側案内輪13rとを備えている。そのため、
図9に示すように、前側案内輪13fが非案内区間SNに進入しつつ後側案内輪13rが非案内区間SNに進入していない場合であっても、前側案内輪13fのみが第1位置P1から第2位置P2へ移動する。そして、
図10に示すように、後側案内輪13rは、前側案内輪13fに遅れて非案内区間SNに進入し、第1位置P1から第2位置P2へ移動する。すなわち本実施形態では、前側案内輪13fと後側案内輪13rとのそれぞれが非案内区間SNに進入した際に順次、幅方向Yの位置の切替動作が行われる。そのため、非案内区間SNが短かったり搬送車Vの走行速度が高かったりする場合でも、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方について、幅方向Yの位置の切替動作を非案内区間SN内で適切に完結させることができる。
【0061】
図11に示すように、制御システムHは、非案内区間SNにおいて案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させた後、その状態を維持しつつ、第2案内区間SG2において案内輪13を案内レール80の第2側面82に対して幅方向第2側Y2から接触させる。これにより、搬送車Vは、区間Dから区間Eへ走行する(
図1参照)。
【0062】
本実施形態では、制御システムHは、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する場合であって、走行方向Xにおける非案内区間SNの長さが予め定められたしきい値以上である場合には、事前付勢処理を実行しない。すなわち、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する際に、案内輪13の幅方向Yの位置を第1位置P1から第2位置P2へ切り替える必要がある場合であっても、非案内区間SNが十分に長い場合には、搬送車Vが非案内区間SNを走行中に案内輪13の幅方向Yの位置を切り替えることができる。この場合には、制御システムHは、案内輪13が第1案内区間SG1を退出してから非案内区間SNに進入した後に、案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させる方向に付勢するように案内輪駆動部5を制御する。事前付勢処理を実行する場合には、案内輪13が第1案内区間SG1から退出する際に急激に位置変更することにより振動が生じる可能性がある。しかし、非案内区間SNが十分に長い場合には事前付勢処理を行わないことで、上記のような振動が生じる事態を回避することができる。なお、走行方向Xにおける非案内区間SNの長さと比較される上述の「予め定められたしきい値」は、搬送車Vの走行速度、例えば、搬送車Vが走行経路Rを走行する場合の平均速度や最高速度などに基づいて、実験等により定められると良い。
【0063】
また、本実施形態では、制御システムHは、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する場合であって、第1案内区間SG1での案内輪13の幅方向Yの位置と第2案内区間SG2での案内輪13の幅方向Yの位置とが同じである場合には、事前付勢処理を実行しない。例えば、
図1に示すように、搬送車Vが区間A、B、C、Dを順に走行する場合において、区間Bが第1案内区間SG1とされ、区間Dが第2案内区間SG2とされる場合には、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する際に案内輪13の幅方向Yの位置の切替動作は行われない。すなわち、この場合において、区間B(第1案内区間SG1)では案内輪13の位置は第2位置P2とされ、区間D(第2案内区間SG2)でも案内輪13の位置は第2位置P2とされる。従って、案内輪13の幅方向Yの位置の切替動作を行う必要がないため、制御システムHは事前付勢処理を実行しない。
【0064】
ここで
図12及び
図13に示すように、本実施形態では、走行経路Rには、走行経路Rが分岐及び合流する分岐合流区間Sが設けられている。分岐合流区間Sは、走行経路Rが交差している区間の一態様である。搬送車Vが分岐合流区間Sを走行する場合には、案内輪13の幅方向Yの位置の切替動作を短期間で行う必要がある。この場合にも、制御システムHは、事前付勢処理を実行する。以下、詳細に説明する。なお、
図12及び
図13では、上述の説明とは反対に、幅方向第1側Y1が進行方向を基準として左側を指し、幅方向第2側Y2が進行方向を基準として左側を指している例を示している。
【0065】
図12及び
図13に示すように、分岐合流区間Sは、第1区間S1と、第1区間S1に対して並列に配置された第2区間S2と、第1区間S1と第2区間S2とを接続する接続区間S3と、を備えている。
【0066】
接続区間S3は、第1区間S1に対して幅方向第1側Y1へ分岐すると共に、第2区間S2に対して幅方向第2側Y2から合流するように構成されている。搬送車Vは、分岐合流区間Sを走行する場合、第1区間S1から幅方向第1側Y1へ分岐して接続区間S3を走行し、第2区間S2に対して幅方向第2側Y2から合流する。
【0067】
案内レール80は、第1区間S1から接続区間S3の途中に亘って配置された分岐案内部GBと、接続区間S3の途中から第2区間S2に亘って配置された合流案内部GCと、分岐案内部GBと合流案内部GCとの走行方向Xの間に設けられ、案内輪13の幅方向Yの移動が許容される切替エリアGEと、を備えている。この場合、分岐案内部GBが設けられた区間が第1案内区間SG1である。また、切替エリアGEが設けられた区間が非案内区間SNである。そして、合流案内部GCが設けられた区間が第2案内区間SG2である。
【0068】
図12に示すように、制御システムHは、分岐案内部GBが設けられた区間(第1案内区間SG1)において案内輪13が分岐案内部GB(案内レール80)の第1側面81に対して幅方向第1側Y1から接触している状態であって案内輪13が切替エリアGE(非案内区間SN)に進入する前に、案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させる方向に付勢するように案内輪駆動部5を制御する。すなわち、制御システムHは、案内輪13を幅方向第2側Y2へ付勢する。
【0069】
そして、
図13に示すように、制御システムHは、事前付勢処理を継続したまま案内輪13に切替エリアGE(非案内区間SN)を通過させることによって、切替エリアGEにおいて案内輪13を第1位置P1から第2位置P2へ移動させ、合流案内部GC(第2案内区間SG2)において案内輪13を合流案内部GC(案内レール80)の第2側面82に対して幅方向第2側Y2から接触させる。
【0070】
このようにして、制御システムHは、搬送車Vが分岐合流区間Sを走行する場合に事前付勢処理を実行する。これにより、搬送車Vは、分岐合流区間Sを円滑に走行することができる。
【0071】
以上説明した物品搬送設備100によれば、搬送車Vの走行速度の低下を抑制しつつ、案内輪13の幅方向Yの位置の切替動作を適切に行うことが可能となる。
【0072】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0073】
(1)上記の実施形態では、位置判定部Hbが、走行方向X又は幅方向Yに離間した2つ以上の走行輪10を対象として、当該対象となる2つ以上の走行輪10の回転速度の差である回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、位置判定部Hbは、別の方法により、案内輪13が案内区間SGにあることを判定しても良い。例えば
図14に示すように、位置判定部Hbは、検出部4(
図6参照)が被検出体70を検出した時点から、搬送車Vが予め定められた距離Lを走行したことに基づいて、案内輪13が案内区間SGにあることを判定しても良い。上述のように、被検出体70は、複数の案内区間SGのそれぞれに対して走行方向Xの上流側に隣接する非案内区間SNに設置されている。被検出体70から当該被検出体70に隣接する案内区間SGまでの距離は既知である。
図14に示す例では、距離Lは、被検出体70から当該被検出体70に隣接する案内区間SGまでの距離よりも規定の超過距離長く設定されている。この超過距離は、搬送車Vにおける検出部4の配置位置と案内輪13の配置位置との走行方向Xの離間距離に基づいて設定される。検出部4が被検出体70を検出した時点から当該検出部4が案内区間SGに進入するまでの距離と、検出部4が被検出体70を検出した時点から案内輪13が案内区間SGに進入するまでの距離とは、両者の配置位置によっては異なるためである。例えば、検出部4と案内輪13とが走行方向Xにおける同じ位置に配置されている場合には、上記の超過距離はゼロとなり、距離Lは、被検出体70から当該被検出体70に隣接する案内区間SGまでの距離に略等しくなる。上記構成により、検出部4が被検出体70を検出した時点から、搬送車Vが予め定められた距離Lを走行した後に、案内輪13が案内区間SGにあることを確実性高く判定することができる。なお、搬送車Vが予め定められた距離Lを走行したか否かは、搬送車Vの走行距離を計測可能な計測部3(
図6参照)による計測結果に基づいて判断することができる。
【0074】
(2)上記の実施形態では、制御システムHは、搬送車Vが第1案内区間SG1、非案内区間SN、第2案内区間SG2の順に走行する場合であって、走行方向Xにおける非案内区間SNの長さが予め定められたしきい値以上である場合には、事前付勢処理を実行しない例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御システムHは、走行方向Xにおける非案内区間SNの長さが予め定められたしきい値以上であっても、事前付勢処理を実行しても良い。
【0075】
(3)上記の実施形態では、制御システムHが、第1案内区間SG1への後側案内輪13rの進入後、前側案内輪13fが非案内区間SNに進入する前に、前側案内輪13fと後側案内輪13rとの双方について同時期に事前付勢処理を実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御システムHは、前側案内輪13fと後側案内輪13rとそれぞれについて、第1案内区間SG1への進入後であって非案内区間SNに進入する前に、順次、事前付勢処理を実行しても良い。
【0076】
(4)上記の実施形態では、前側案内輪13fと後側案内輪13rとが、独立して駆動される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、前側案内輪13fと後側案内輪13rとは、一体的に駆動される構成であっても良い。
【0077】
(5)上記の実施形態では、搬送車Vが、前側走行部1Fに設けられた案内輪13としての前側案内輪13fと、後側走行部1Rに設けられた案内輪13としての後側案内輪13rとを備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vは、単一の走行部1と単一の案内輪13とを備えた構成であっても良い。
【0078】
(6)上記の実施形態では、搬送車Vが、被検出体70(
図1参照)を検出する検出部4を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vは、検出部4を備えていなくても良い。
【0079】
(7)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0080】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0081】
走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記走行経路が交差している区間及び前記走行経路が湾曲している区間の少なくともいずれかに配置されて前記搬送車の進路を案内する案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記搬送車は、一対の前記走行レールそれぞれの上面を転動する走行輪と、前記案内レールにおける前記幅方向第1側を向く第1側面又は前記幅方向第2側を向く第2側面を転動する案内輪と、前記第1側面を転動するための前記案内輪の位置を第1位置とし前記第2側面を転動するための前記案内輪の位置を第2位置として、前記案内輪を前記第1位置と前記第2位置とに前記幅方向に移動させる案内輪駆動部と、を備え、
前記走行経路には、前記案内レールが配置された案内区間が複数設けられていると共に、前記案内レールが配置されていない非案内区間が設けられており、
複数の前記案内区間のうちの1つを第1案内区間とし、前記第1案内区間に対して前記非案内区間を挟んで前記走行方向の下流側に位置する前記案内区間を第2案内区間として、
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記第1案内区間において前記案内輪を前記第1位置とし、前記第2案内区間において前記案内輪を前記第2位置とする場合に、事前付勢処理を実行し、
前記事前付勢処理は、前記第1案内区間において前記案内輪が前記案内レールの前記第1側面に対して前記幅方向第1側から接触している状態であって前記案内輪が前記非案内区間に進入する前に、前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる方向に付勢するように前記案内輪駆動部を制御する処理であり、
前記制御システムは、前記事前付勢処理を継続したまま前記案内輪に前記非案内区間を通過させることによって、前記非案内区間において前記案内輪を前記第1位置から前記第2位置へ移動させ、前記第2案内区間において前記案内輪を前記案内レールの前記第2側面に対して前記幅方向第2側から接触させる。
【0082】
本構成によれば、案内輪が第1案内区間に進入した後であって非案内区間に進入する前に、案内輪を第2位置へ移動させる方向に付勢する事前付勢処理を行う。そのため、案内輪が非案内区間に進入した際に、案内輪の幅方向位置を第1位置から第2位置に迅速に切り替えることができ、非案内区間において案内輪の切替動作に要する時間を短く抑えることができる。これにより、案内輪の切替動作を行うために搬送車の減速を行う必要性を、低くすることができる。このように、本構成によれば、搬送車の走行速度の低下を抑制しつつ、案内輪の幅方向位置の切替動作を適切に行うことが可能となる。また、搬送車の走行速度の低下を抑制することで、設備全体の搬送効率が低下することも抑制できる。
【0083】
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記第1案内区間での前記案内輪の前記幅方向の位置と前記第2案内区間での前記案内輪の前記幅方向の位置とが同じである場合には、前記事前付勢処理を実行しない、と好適である。
【0084】
本構成によれば、案内輪の幅方向位置の切替動作を行う必要がない場合には事前付勢処理も行わないようにできる。そのため、案内輪駆動部を無駄に動作させることなく、適切に搬送車を走行させることができる。
【0085】
前記制御システムは、前記搬送車が前記第1案内区間、前記非案内区間、前記第2案内区間の順に走行する場合であって、前記走行方向における前記非案内区間の長さが予め定められたしきい値以上である場合には、前記事前付勢処理を実行しない、と好適である。
【0086】
事前付勢処理を実行する場合には、案内輪が第1案内区間から退出する際に急激に位置変更することにより振動が生じる可能性がある。しかし本構成によれば、案内輪の幅方向位置の切替動作を行う必要がある場合であっても、非案内区間が十分に長い場合には事前付勢処理を行わず、案内輪が非案内区間に進入してから案内輪の幅方向位置の切替動作を行う。従って、上記振動が生じる事態を回避し易い。
【0087】
前記走行輪は、前記走行方向及び前記幅方向の少なくとも一方に離間して複数設けられ、
前記制御システムは、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する位置判定部を備え、
前記位置判定部は、前記走行方向又は前記幅方向に離間した2つ以上の前記走行輪を対象として、当該対象となる2つ以上の前記走行輪の回転速度の差である回転速度差が規定のしきい値以上変化したことに基づいて、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する、と好適である。
【0088】
案内区間は、走行経路が交差している区間及び走行経路が湾曲している区間の少なくともいずれかに対応しているため、走行レールも基本的には走行経路に沿って湾曲している。そのため、搬送車が、走行経路が直線状となる区間から案内区間に進入して、湾曲した走行レールを走行する場合には、対象となる2つ以上の走行輪に回転速度差が生じる。本構成によれば、この現象を利用して、湾曲した走行レールを搬送車が走行していること、すなわち、案内輪が案内区間にあることを判定することができる。従って、案内輪が案内区間にあることを検知するための専用のセンサ等を不要にすることができる。
【0089】
一対の前記走行レールのうち、前記幅方向第1側に配置されたものを第1走行レールとし、前記幅方向第2側に配置されたものを第2走行レールとして、
複数の前記走行輪は、前記第1走行レールの上面を転動する第1前輪と、前記第1走行レールを転動すると共に前記第1前輪に対して進行方向の後ろ側に配置された第1後輪と、前記第2走行レールの上面を転動する第2前輪と、前記第2走行レールを転動すると共に前記第2前輪に対して進行方向の後ろ側に配置された第2後輪と、を含み、
前記回転速度差は、前記第1後輪及び前記第2後輪の少なくとも一方の回転速度と、前記第1前輪及び前記第2前輪の少なくとも一方の回転速度との差である、と好適である。
【0090】
走行経路が湾曲して成る案内区間を搬送車が走行する場合、当該案内区間に配置された一対の走行レールのうち円弧の径方向内側に配置された走行レールを転動する車輪の速度は、直線状の区間に配置された走行レールを転動している場合に比べて低下する。そして、当該案内区間に配置された一対の走行レールのうち円弧の径方向外側に配置された走行レールを転動する車輪の速度は、直線状の区間に配置された走行レールを転動している場合に比べて上昇する。そのため、搬送車の一対の前輪が、直線状の区間から案内区間に進入して、湾曲した走行レールを転動する際には、その時点での後輪の速度に比べて、一方の前輪の速度は低下し、他方の前輪の速度は上昇する。本構成によれば、このような現象を利用して、案内輪が案内区間にあることを判定することができる。
【0091】
前記制御システムは、前記位置判定部により前記案内輪が前記第1案内区間にあることが判定された時点から、前記走行方向における前記第1案内区間の長さに基づいて設定された設定距離を前記搬送車が走行するまでの間に、前記事前付勢処理を実行する、と好適である。
【0092】
本構成によれば、搬送車の走行距離に基づいて、案内輪が第1案内区間にある期間に適切に事前付勢処理を実行することができる。
【0093】
前記走行経路に沿って予め定められた位置に被検出体が設置され、
前記搬送車は、前記被検出体を検出する検出部を備え、
前記制御システムは、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する位置判定部を備え、
前記位置判定部は、前記検出部が前記被検出体を検出した時点から、前記搬送車が予め定められた距離を走行したことに基づいて、前記案内輪が前記案内区間にあることを判定する、と好適である。
【0094】
本構成によれば、検出部による被検出部の検出結果と、搬送車の走行距離とに基づいて、案内輪が案内区間にあることを適切に判定することができる。
【0095】
前記搬送車は、前記走行輪としての前輪を備えた前側走行部と、前記走行輪としての後輪を備えた後側走行部と、前記前側走行部に設けられた前記案内輪としての前側案内輪と、前記後側走行部に設けられた前記案内輪としての後側案内輪とを備え、
前記制御システムは、前記第1案内区間への前記後側案内輪の進入後、前記前側案内輪が前記非案内区間に進入する前に、前記前側案内輪と前記後側案内輪との双方について同時期に前記事前付勢処理を実行する、と好適である。
【0096】
本構成によれば、一度の指令により、前側案内輪と後側案内輪との双方について事前付勢処理を実行することができるため、制御を簡略化し易い。また、本構成によれば、前側案内輪と後側案内輪とのそれぞれが非案内区間に進入した際に順次、幅方向位置の切替動作を行う。そのため、非案内区間が短かったり搬送車の走行速度が高かったりする場合でも、前側案内輪と後側案内輪との双方について、幅方向位置の切替動作を非案内区間内で適切に完結させることができる。
【0097】
前記走行経路には、前記走行経路が分岐及び合流する分岐合流区間が設けられており、
前記分岐合流区間は、第1区間と、前記第1区間に対して並列に配置された第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを接続する接続区間と、を備え、
前記接続区間は、前記第1区間に対して前記幅方向第1側へ分岐すると共に、前記第2区間に対して前記幅方向第2側から合流するように構成され、
前記案内レールは、前記第1区間から前記接続区間の途中に亘って配置された分岐案内部と、前記接続区間の途中から前記第2区間に亘って配置された合流案内部と、前記分岐案内部と前記合流案内部との前記走行方向の間に設けられ、前記案内輪の前記幅方向の移動が許容される切替エリアと、を備え、
前記分岐案内部が設けられた区間が前記第1案内区間であり、
前記切替エリアが設けられた区間が前記非案内区間であり、
前記合流案内部が設けられた区間が前記第2案内区間である、と好適である。
【0098】
本構成によれば、走行経路が分岐及び合流する分岐合流区間を搬送車が走行する場合であっても、案内輪の幅方向位置の切替動作を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示に係る技術は、走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車の進路を案内する案内レールと、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 :物品搬送設備
V :搬送車
1 :走行部
1F :前側走行部
1R :後側走行部
10 :走行輪
10f :前輪
10r :後輪
11f :第1前輪
11r :第1後輪
12f :第2前輪
12r :第2後輪
13 :案内輪
13f :前側案内輪
13r :後側案内輪
4 :検出部
5 :案内輪駆動部
70 :被検出体
80 :案内レール
81 :第1側面
82 :第2側面
90 :走行レール
91 :第1走行レール
92 :第2走行レール
GB :分岐案内部
GC :合流案内部
GE :切替エリア
H :制御システム
Hb :位置判定部
L :予め定められた距離
P1 :第1位置
P2 :第2位置
R :走行経路
S :分岐合流区間
S1 :第1区間
S2 :第2区間
S3 :接続区間
SG :案内区間
SG1 :第1案内区間
SG2 :第2案内区間
SN :非案内区間
W :物品
X :走行方向
Y :幅方向
Y1 :幅方向第1側
Y2 :幅方向第2側