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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/18 20190101AFI20240827BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20240827BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240827BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240827BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20240827BHJP
【FI】
B60L53/18
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/46 101
B60L3/00 S
H02J7/00 P
H02J7/00 S
H02H7/18
B60L53/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022017876
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2023115579
(43)【公開日】2023-08-21
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 大和
(72)【発明者】
【氏名】南井 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 優
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 寿基
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144032(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0042983(US,A1)
【文献】特開2013-66328(JP,A)
【文献】特開2010-220299(JP,A)
【文献】特開2011-4448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
H02H 7/00
H02H 7/10- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の電源から充電ケーブルを介して供給される電力を受けて車載のバッテリを充電可能に構成された車両であって、
前記充電ケーブルに設けられたコネクタが接続可能に構成されたインレットと、
前記電源から前記インレットに入力される電圧である入力電圧を検出する電圧センサと、
前記インレットに前記コネクタが接続された状態において、検知処理を実行するように構成された制御装置とを備え、
前記検知処理は、
充電開始前の前記入力電圧である第1電圧と、充電開始後の前記入力電圧である第2電圧との差が閾値以上である場合に充電を一時停止させる第1処理と、
前記第1処理において充電が一時停止されている時の前記入力電圧である第3電圧と、充電再開後の前記入力電圧である第4電圧との差が前記閾値以上である場合に充電を停止させる第2処理とを含む、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1処理において、前記第1電圧と前記第2電圧との差が前記閾値以上である場合、前記電源から前記インレットまでの充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、
前記第2処理において、前記第3電圧と前記第4電圧との差が前記閾値以上である場合、前記充電経路のインピーダンス異常を確定させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2処理において、前記第3電圧と前記第4電圧との差が前記閾値未満である場合、充電を継続させる、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2処理において、前記第3電圧と前記第4電圧との差が複数回連続して前記閾値以上である場合、前記充電経路のインピーダンス異常を確定させる、請求項2または請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1処理において、前記第1電圧を取得してから所定時間内に前記第2電圧を取得し、
前記第2処理において、前記第3電圧を取得してから前記所定時間内に前記第4電圧を取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記充電ケーブルの定格電流に基づいて前記閾値を設定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記電源から前記インレットに入力される電流である入力電流を検出する電流センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記入力電流に基づいて前記閾値を設定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
車両外部の電源から充電ケーブルを介して供給される電力を受けて車載のバッテリを充電可能に構成された車両であって、
前記充電ケーブルに設けられたコネクタが接続可能に構成されたインレットと、
前記電源から前記インレットに入力される電圧である入力電圧を検出する電圧センサと、
前記インレットに前記コネクタが接続された状態において、検知処理を実行するように構成された制御装置とを備え、
前記検知処理は、
前記入力電圧の単位時間変化量が閾値以上である場合に充電を一時停止させる第1処理と、
前記第1処理において充電が一時停止された後の充電再開後の、前記入力電圧の単位時間変化量が前記閾値以上である場合に充電を停止させる第2処理とを含む、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両外部の電源から供給される電力を用いて車載のバッテリを充電可能に構成された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5660203号公報(特許文献1)には、車両外部の交流電源から充電ケーブルを介して供給される交流電力を用いて車載のバッテリを充電する交流(AC:Alternating current)充電が可能に構成された車両が開示されている。この車両は、交流電源から供給される交流電力を、バッテリを充電するための直流電力に変換する充電回路を備える。そして、車両は、交流電源から充電回路に入力される入力電圧の低下幅がしきい幅を超える状態が所定時間継続した場合に、交流電源から車両までの充電経路のインピーダンス異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5660203号公報
【文献】特許第5359143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、充電回路(充電器)の入力電圧が低下する要因としては、充電経路のインピーダンス異常の他に、交流電源から供給される電力の電圧(以下「系統電圧」とも称する)の低下も挙げられる。特許文献1に開示された、充電器に入力される入力電圧の低下量に基づく手法では、充電経路のインピーダンス異常と、系統電圧の低下とを適切に切り分けることができない可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)この開示のある局面に係る車両は、車両外部の電源から充電ケーブルを介して供給される電力を受けて車載のバッテリを充電可能に構成された車両である。車両は、充電ケーブルに設けられたコネクタが接続可能に構成されたインレットと、電源からインレットに入力される電圧である入力電圧を検出する電圧センサと、インレットにコネクタが接続された状態において、検知処理を実行するように構成された制御装置とを備える。検知処理は、充電開始前の入力電圧である第1電圧と、充電開始後の入力電圧である第2電圧との差が閾値以上である場合に充電を一時停止させる第1処理と、第1処理において充電が一時停止されている時の入力電圧である第3電圧と、充電再開後の入力電圧である第4電圧との差が閾値以上である場合に充電を停止させる第2処理とを含む。
【0007】
上記構成によれば、まず、第1処理が実行され、第1電圧と第2電圧との差が閾値以上であると充電が一時停止される。第1処理において充電が一時停止されると、その後に第2処理が実行され、第3電圧と第4電圧との差が閾値以上であると充電が停止される。仮に、第1電圧の取得後に系統電圧が低下し、系統電圧の低下に起因して第1処理において第1電圧と第2電圧との差が閾値以上になっていた場合には、第2処理における第3電圧と第4電圧との差は閾値未満になることが想定される。一方、電源からインレットまでの充電経路のインピーダンス異常に起因して第1処理において第1電圧と第2電圧との差が閾値以上になっていた場合には、第2処理における第3電圧と第4電圧との差は閾値以上になることが想定される。第1処理のみで電源からインレットまでの充電経路のインピーダンス異常を判断するのではなく、第1処理で充電が一時停止された場合に、さらに第2処理を実行して第3電圧と第4電圧との差と閾値との差を比較することにより、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを適切に切り分けることができる。したがって、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【0008】
(2)ある実施の形態においては、制御装置は、第1処理において、第1電圧と第2電圧との差が閾値以上である場合、電源からインレットまでの充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、第2処理において、第3電圧と第4電圧との差が閾値以上である場合、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。
【0009】
上記構成によれば、制御装置は、第1処理において、第1電圧と第2電圧との差が閾値以上である場合には、電源からインレットまでの充電経路のインピーダンス異常を仮検知して、充電を一時停止させる。この時点では、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを適切に切り分けることができない。そこで、制御装置は、さらに第2処理を実行して第3電圧と第4電圧とを比較し、第3電圧と第4電圧との差が閾値以上である場合、充電経路のインピーダンス異常を確定させて充電を停止させる。このようにして、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【0010】
(3)ある実施の形態においては、制御装置は、第2処理において、第3電圧と第4電圧との差が閾値未満である場合、充電を継続させる。
【0011】
第2処理において第3電圧と第4電圧との差が閾値未満である場合には、第1処理において第1電圧と第2電圧との差が閾値以上となったのは系統電圧の低下が起因していると想定される。したがって、このような充電経路のインピーダンスに異常がない場合には、充電が継続される。これにより、充電を停止すべきでない場合にまで充電が停止されることを抑制することができる。
【0012】
(4)ある実施の形態においては、制御装置は、第2処理において、第3電圧と第4電圧との差が複数回連続して閾値以上である場合、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。
【0013】
上記構成によれば、第2処理において第3電圧と第4電圧との差を複数回閾値と比較することにより、ノイズ等に起因した誤判断の発生を抑制することができる。
【0014】
(5)ある実施の形態においては、制御装置は、第1処理において、第1電圧を取得してから所定時間内に第2電圧を取得し、第2処理において、第3電圧を取得してから所定時間内に第4電圧を取得する。
【0015】
上記構成によれば、第1電圧を取得してから所定時間内に第2電圧を取得することで、第1電圧を取得した後に、第2電圧を取得するまでに系統電圧が変動してしまうことを抑制することができる。したがって、充電経路のインピーダンス異常が仮検知されるケースの発生を抑制することができる。よって、仮検知に伴なう充電の一時停止を省略できる分、充電に要する時間を短縮させることができる。また、第3電圧を取得してから所定時間内に第4電圧を取得することで、第3電圧を取得した後に、第4電圧を取得するまでに系統電圧が変動してしまうことを抑制することができる。したがって、充電経路のインピーダンス異常を誤検知してしまうことを抑制することができる。
【0016】
(6)ある実施の形態においては、制御装置は、充電ケーブルの定格電流に基づいて閾値を設定する。
【0017】
充電開始前の入力電圧から充電開始後の入力電圧の電圧低下量は、充電電流の大きさに比例する。したがって、充電ケーブルの定格電流に基づいて閾値を設定することにより、第1電圧と第2電圧との差、および、第3電圧と第4電圧との差を適切に判断することができる。
【0018】
(7)ある実施の形態においては、車両は、電源からインレットに入力される電流である入力電流を検出する電流センサをさらに備える。制御装置は、入力電流に基づいて閾値を設定する。
【0019】
実際の入力電流(すなわち充電電流)に基づいて閾値を設定することにより、第1電圧と第2電圧との差、および、第3電圧と第4電圧との差を適切に判断することができる。
【0020】
(8)この開示の他の局面に係る車両は、車両外部の電源から充電ケーブルを介して供給される電力を受けて車載のバッテリを充電可能に構成された車両である。車両は、充電ケーブルに設けられたコネクタが接続可能に構成されたインレットと、電源からインレットに入力される電圧である入力電圧を検出する電圧センサと、インレットにコネクタが接続された状態において、検知処理を実行するように構成された制御装置とを備える。検知処理は、入力電圧の単位時間変化量が閾値以上である場合に充電を一時停止させる第1処理と、第1処理において充電が一時停止された後の充電再開後の、入力電圧の単位時間変化量が閾値以上である場合に充電を停止させる第2処理とを含む。
【0021】
系統電圧は、長期的な視点でみると徐々に変動し得る。そうすると、たとえば系統電圧の変動に起因して、充電開始前の入力電圧から充電開始後の入力電圧が大きく低下し得る。これを充電経路のインピーダンス異常として仮検知してしまうと充電が一時停止されてしまう。上記構成によれば、入力電圧の単位時間変化量が閾値以上である場合に充電が一時停止され、その後、充電再開後の入力電圧の単位時間変化量が閾値以上である場合に充電が停止される。入力電圧の単位時間変化量を用いることで、系統電圧が徐々に変動したとしても、その影響をキャンセルすることができる。よって、系統電圧の変動に起因して、充電経路のインピーダンス異常を仮検知してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態に係る車両の全体構成図である。
図2】AC充電に関する回路の構成例を示す図である。
図3】スイッチSW1,SW2の状態と、パイロット信号CPLTの電位と、CCIDリレーの状態との対応関係を示す図である。
図4】検知処理を説明するためのタイムチャート(その1)である。
図5】検知処理を説明するためのタイムチャート(その2)である。
図6】ECUで実行される検知処理の手順を示すフローチャートである。
図7】変形例1に係る検知処理の手順を示すフローチャートである。
図8】変形例4に係る検知処理の手順を示すフローチャートである。
図9】変形例5に係る検知処理を説明するための図である。
図10】変形例5で実行される検知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
<全体構成>
図1は、本実施の形態に係る車両1の全体構成図である。車両1は、車外の充電設備500から供給される交流電力を用いて車両1に搭載されるバッテリ100を充電するAC充電が可能に構成される。
【0026】
本実施の形態に係る充電設備500は、自宅等に設けられる。充電設備500は、交流電源510と、コンセント520とを含む。コンセント520は、たとえば一般家庭用のACコンセントである。
【0027】
AC充電時には、充電設備500と車両1とが充電ケーブル400で接続される。充電ケーブル400は、交流電力線440と、交流電力線440の一端に設けられた充電コネクタ410と、交流電力線440の他端に設けられたプラグ420と、交流電力線440上に設けられた充電回路遮断装置(以下、「CCID(Charging Circuit Interrupt Device)」とも称する)430とを含む。充電コネクタ410は、車両1のインレット220に接続可能に構成される。プラグ420は、充電設備500のコンセント520に接続可能に構成される。CCID430は、充電設備500から車両1への電力の供給および遮断を切り替えるための回路である。
【0028】
車両1は、バッテリ100に蓄えられた電力を用いて図示しない走行用モータを駆動させて走行する電気自動車である。なお、車両1は、車外の充電設備から供給される電力を用いて車載のバッテリ100を充電する外部充電が可能に構成された車両であればよく、たとえば、燃料電池自動車やプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0029】
車両1は、バッテリ100と、充電器200と、充電リッド210と、インレット220と、電圧センサ230と、電流センサ240と、ECU(Electronic Control Unit)300と、報知装置600とを備える。
【0030】
バッテリ100は、駆動電源(すなわち動力源)として車両1に搭載される。バッテリ100は、積層された複数の電池を含んで構成される。電池は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池である。また、電池は、正極と負極との間に液体電解質を有する電池であってもよいし、固体電解質を有する電池(全固体電池)であってもよい。なお、バッテリ100は、再充電可能な直流電源であればよく、大容量のキャパシタも採用可能である。
【0031】
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)310(図2参照)、メモリ(図示せず)および入出力バッファ(図示せず)を含み、センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で構築して処理することも可能である。
【0032】
インレット220は、充電ケーブル400の充電コネクタ410が接続可能に構成される。インレット220は、通常時は充電リッド210で覆われている。充電リッド210が開かれると、ユーザが充電コネクタ410をインレット220に接続することができる。AC充電時には、インレット220に充電コネクタ410が接続される。
【0033】
インレット220の近傍には、ロック装置250が設けられる。ロック装置250は、インレット220に接続された充電コネクタ410(充電ケーブル400)をインレット220から抜き差しすることが規制されるロック状態と、インレット220に接続された充電コネクタ410をインレット220から抜き差し可能なアンロック状態との切り替えが可能に構成される。
【0034】
充電器200は、バッテリ100とインレット220との間に電気的に接続されている。充電器200は、たとえば、AC/DC変換部、DC/AC変換部、および、絶縁トランス等を含む。充電器200は、インレット220を介して充電設備500から受けた電力を、バッテリ100を充電するための電力に変換して、当該電力をバッテリ100に供給する。充電器200は、ECU300によって制御される。
【0035】
電圧センサ230は、インレット220と充電器200とを電気的に接続する電力線CPL,CNL間の電圧(入力電圧)VINを検出し、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。電圧センサ230は、たとえば、充電器200内に設けることも可能である。
【0036】
電流センサ240は、電力線CPL,CNLに流れる電流(充電電流)IINを検出し、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。電流センサ240は、たとえば、充電器200内に設けることも可能である。
【0037】
報知装置600は、表示装置、点灯装置および音声出力装置のうちの少なくとも1つを含んで構成される。報知装置600は、ECU300からの指令に従って、表示装置に情報を表示させたり、点灯装置を点灯させたり、音声出力装置に音声出力(たとえば情報の読み上げ)をさせたりする。
【0038】
図2は、AC充電に関する回路の構成例を示す図である。図2においては、インレット220に充電ケーブル400の充電コネクタ410が接続されている。
【0039】
車両1のECU300は、インレット220と充電コネクタ410との接続状態によって電位が変化する接続信号PISWを受ける。ECU300は、接続信号PISWの電位に基づいて、インレット220に充電コネクタ410が接続されているか否かを判断する。
【0040】
また、充電ケーブル400が充電設備500およびインレット220に接続されている場合、ECU300は、充電ケーブル400のCCID430から信号線L1を介してパイロット信号CPLTを受ける。パイロット信号CPLTは、CPLT制御回路470からECU300へ充電ケーブル400の定格電流を通知するための信号である。また、パイロット信号CPLTは、車両1のECU300によって電位が操作され、ECU300からCCIDリレー450を遠隔操作するための信号として使用される。
【0041】
充電ケーブル400内のCCID430は、CCIDリレー450と、CCID制御部460と、CPLT制御回路470と、電磁コイル471と、漏電検出器480と、電圧センサ481と、電流センサ482とを含む。
【0042】
CCIDリレー450は、車両1への給電経路に設けられ、CPLT制御回路470によって制御される。CCIDリレー450が開放状態のときは、給電経路が遮断され、充電設備500から車両1へ電力を供給できない状態となる。CCIDリレー450が閉成状態のときは、充電設備500から充電ケーブル400を介して車両1へ電力を供給可能な状態となる。
【0043】
CCID制御部460は、CPUと、メモリと、入出力ポート等とを含み(いずれも図示せず)、各種センサおよびCPLT制御回路470の信号の入出力を行なうとともに、CPLT制御回路470の動作を制御する。
【0044】
CPLT制御回路470は、充電コネクタ410およびインレット220を介してECU300へパイロット信号CPLTを出力する。パイロット信号CPLTは、車両1のECU300によって電位が操作され、ECU300からCCIDリレー450を遠隔操作するための信号として使用される。CPLT制御回路470は、パイロット信号CPLTの電位に基づいてCCIDリレー450を制御する。また、パイロット信号CPLTは、CPLT制御回路470からECU300へ充電ケーブル400の定格電流を通知するための信号としても使用される。
【0045】
具体的には、CPLT制御回路470は、発振装置472と、抵抗R20と、電圧センサ473とを含む。
【0046】
発振装置472は、電圧センサ473によって検出されるパイロット信号CPLTの電位が規定の電位V1(たとえば12V)のときは非発振のパイロット信号CPLTを出力し、パイロット信号CPLTの電位が上記の規定の電位V1よりも低い電位V2(たとえば9V)に低下したときは、CCID制御部460により制御されて、規定の周波数(たとえば1kHz)およびデューティサイクルで発振するパイロット信号CPLTを出力する。
【0047】
パイロット信号CPLTのデューティサイクルは、充電ケーブル400の定格電流に応じて設定される。車両1のECU300は、CPLT制御回路470から信号線L1を介して受信したパイロット信号CPLTのデューティに基づいて、充電ケーブル400の定格電流を検出することができる。
【0048】
パイロット信号CPLTの電位がV2よりもさらに低いV3(たとえば6V)に低下すると、CPLT制御回路470は、電磁コイル471へ電流を供給する。CPLT制御回路470から電磁コイル471に電流が供給されると、電磁コイル471が電磁力を発生し、CCIDリレー450は閉成状態となる。これにより、充電ケーブル400を介して車両1のインレット220に給電電圧(充電設備500からの電圧)が印加される。
【0049】
漏電検出器480は、CCID430内部において充電ケーブル400の交流電力線440の途中に設けられ、漏電の有無を検出する。具体的には、漏電検出器480は、交流電力線440を構成する電力線対に互いに反対方向に流れる電流の平衡状態を検出し、その平衡状態が破綻すると漏電の発生を検出する。漏電検出器480により漏電が検出されると、電磁コイル471への給電が停止され、CCIDリレー450は開放状態となる。
【0050】
電圧センサ481は、充電ケーブル400のプラグ420がコンセント520に差し込まれると、充電設備500から伝達される電源電圧を検出し、その検出値をCCID制御部460に通知する。また、電流センサ482は、交流電力線440に流れる充電電流を検出し、その検出値をCCID制御部460に通知する。
【0051】
充電コネクタ410内には、抵抗R6,R7およびスイッチSW20が設けられる。抵抗R6,R7およびスイッチSW20は、車両1のECU300に設けられる電源ノード350およびプルアップ抵抗R10、ならびにインレット220に設けられる抵抗R5とともに、充電コネクタ410とインレット220との接続状態を検出する回路を構成する。
【0052】
抵抗R6,R7は、接地線L2と接続信号線L3との間に直列に接続される。スイッチSW20は、抵抗R7に並列に接続される。スイッチSW20は、たとえばリミットスイッチであり、充電コネクタ410がインレット220に接続されると接点が閉じられる。また、スイッチSW20は、充電コネクタ410に設けられる押しボタン(図示せず)と連動する。押しボタンは、充電コネクタ410をインレット220から取り外す際にユーザによって操作される。押しボタンが押されていないときは、スイッチSW20は閉成状態であり、押しボタンが押されると、スイッチSW20は開放状態となる。
【0053】
上記の回路構成により、インレット220に充電コネクタ410が接続されていない状態では、電源ノード350の電圧、プルアップ抵抗R10、および抵抗R5によって定まる電位Vxを有する信号が接続信号PISWとして接続信号線L3に生じる。
【0054】
インレット220に充電コネクタ410が接続された状態(押しボタンは非操作)では、電源ノード350の電圧、プルアップ抵抗R10および抵抗R5,R6によって定まる電位Vyを有する信号が接続信号PISWとして接続信号線L3に生じる。インレット220に充電コネクタ410が挿入された状態で押しボタンが操作されると、電源ノード350の電圧、プルアップ抵抗R10および抵抗R5~R7によって定まる電位Vzを有する信号が接続信号PISWとして接続信号線L3に生じる。したがって、ECU300は、接続信号PISWの電位を検出することによって、充電コネクタ410とインレット220との接続状態を検出することができる。
【0055】
なお、抵抗R6の値は、充電ケーブル400の定格電流に応じて選定することもできる。この場合には、車両1のECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続された状態(押しボタンは非操作)の接続信号PISWの電位に基づいて、充電ケーブル400の定格電流を検出することができる。
【0056】
車両1において、ECU300は、上記の電源ノード350およびプルアップ抵抗R10に加えて、CPU310と、抵抗回路320と、入力バッファ330,340とをさらに含む。
【0057】
抵抗回路320は、信号線L1を通じて通信されるパイロット信号CPLTの電位を操作するための回路である。抵抗回路320は、プルダウン抵抗R1,R2と、スイッチSW1,SW2とを含む。プルダウン抵抗R1およびスイッチSW1は、パイロット信号CPLTが通信される信号線L1と車両アース360との間に直列に接続される。プルダウン抵抗R2およびスイッチSW2も、信号線L1と車両アース360との間に直列に接続される。そして、スイッチSW1,SW2は、それぞれCPU310からの制御信号S1,S2に従って導通(オン)状態または非導通(オフ)状態に制御される。
【0058】
入力バッファ330は、信号線L1からパイロット信号CPLTをCPU310に取り込むための回路である。入力バッファ340は、接続信号線L3から接続信号PISWをCPU310に取り込むための回路である。
【0059】
CPU310は、入力バッファ330から、パイロット信号CPLTを受ける。また、CPU310は、入力バッファ340から、接続信号PISWを受ける。CPU310は、接続信号PISWの電位を検出し、接続信号PISWの電位に基づいてインレット220と充電コネクタ410との接続状態を検出する。また、CPU310は、パイロット信号CPLTの発振状態およびデューティサイクルを検出することによって、充電ケーブル400の定格電流を検出する。
【0060】
さらに、CPU310は、インレット220に充電コネクタ410が接続されている場合に、抵抗回路320内のスイッチSW1,SW2を制御することによってパイロット信号CPLTの電位を操作し、充電設備500に対して電力の供給およびその停止を要求する。具体的には、CPU310は、パイロット信号CPLTの電位を操作することによって、充電ケーブル400内のCCIDリレー450を遠隔操作する。
【0061】
CPU310による遠隔装置によって充電ケーブル400内のCCIDリレー450の接点が閉じられると、充電設備500からの交流電力が充電器200に与えられ、AC充電の準備が完了する。CPU310は、充電器200を制御することにより、充電設備500からの交流電力をバッテリ100が充電可能な直流電力に変換してバッテリ100に出力する。これにより、バッテリ100のAC充電が実行される。
【0062】
図3は、スイッチSW1,SW2の状態と、パイロット信号CPLTの電位と、CCIDリレー450の状態との対応関係を示す図である。図3の横軸には時間が示され、縦軸にはパイロット信号CPLTの電位、スイッチSW1,SW2の状態、およびCCIDリレー450の状態が示される。
【0063】
時刻t1になるまでは、充電ケーブル400は、車両1および充電設備500のいずれにも接続されていない状態である。この状態においては、各スイッチSW1,SW2およびCCIDリレー450はオフの状態であり、パイロット信号CPLTの電位は0Vである。
【0064】
時刻t1において、充電ケーブル400のプラグ420が充電設備500のコンセント520に接続されると、充電設備500からの電力を受けてCPLT制御回路470がパイロット信号CPLTを発生する。なお、この時刻t1では、充電ケーブル400の充電コネクタ410はインレット220に接続されていない。また、パイロット信号CPLTの電位はV1(たとえば12V)であり、パイロット信号CPLTは非発振状態である。
【0065】
時刻t2において、充電コネクタ410がインレット220に接続されると、CPU310に入力される接続信号PISWの電位が変化する。この接続信号PISWの電位の変化に応じて、CPU310はスイッチSW2をオンする。これにより、プルダウン抵抗R2によってパイロット信号CPLTの電位はV2(たとえば9V)に低下する。
【0066】
パイロット信号CPLTの電位がV2に低下したことがCCID制御部460によって検出されると、時刻t3において、CCID制御部460は、発振装置472に発振指令を出力してパイロット信号CPLTを発振させる。
【0067】
パイロット信号CPLTが発振されたことがCPU310によって検出されると、CPU310は、パイロット信号CPLTのデューティによって充電ケーブル400の定格電流を検出する。
【0068】
時刻t4において、CPU310は、充電開始操作が行なわれたことを検知すると、スイッチSW2に加えて、スイッチSW1をオンする。これにより、プルダウン抵抗R1によってパイロット信号CPLTの電位がさらにV3(たとえば6V)に低下する。充電開始操作は、たとえば、車両1のHMI装置(図示せず)に表示された充電開始ボタン(図示せず)を押す操作であってもよいし、充電設備500に設けられた充電開始ボタン(図示せず)を押す操作であってもよい。
【0069】
時刻t5において、パイロット信号CPLTの電位がV3に低下されると、CPLT制御回路470によってCCIDリレー450の接点が閉じられる。これにより、充電設備500からの電力が充電ケーブル400を介して車両1に伝達される。その後、車両1において、CPU310によって充電器200(図1参照)が制御されることによって、バッテリ100のAC充電が開始される。
【0070】
<検知処理>
ここで、AC充電を行なう際、接続が不十分な箇所や断線しそうな箇所が充電経路(交流電源510からインレット220までの経路)に存在する状態で充電器200を動作させると、上記箇所のインピーダンスの増大によって電圧降下が生じる。また、充電設備500のコンセント520と充電ケーブル400のプラグ420との間に延長ケーブルを使用するような場合にも、充電経路のインピーダンスが増大して電圧降下が生じる。電圧降下が大きくなると、たとえば、入力電圧VINが充電器200の作動下限値を下回り、充電器200が停止してしまったりする。そのため、充電経路のインピーダンスの異常を適切に検出することが望ましい。
【0071】
一方で、系統電圧(交流電源510の電圧)が低下する場合もある。たとえば、電圧センサ230の検出値を取得して充電器200の入力電圧VINを監視したとしても、入力電圧VINの降下が充電経路のインピーダンス異常に起因するものであるのか、系統電圧の低下に起因するものであるのかを適切に判断することができない。
【0072】
そこで、本実施の形態に係る車両1のECU300は、検知処理を実行することにより、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを切り分けて検知し、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知する。検知処理は、充電経路のインピーダンス異常を仮検知するための第1処理と、充電経路のインピーダンス異常を確定させるための第2処理とを含む。
【0073】
具体的には、まず、ECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続された状態において第1処理を実行する。第1処理において、ECU300は、AC充電開始前の入力電圧VIN0と、AC充電開始後の入力電圧VIN1とを比較する。ECU300は、両者の差分Δ1が閾値Vth以上である場合には、充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。
【0074】
ECU300は、第1処理において充電経路のインピーダンス異常を仮検知すると(すなわち、AC充電を一時停止させると)、第1処理に引き続いて第2処理を実行する。
【0075】
第2処理において、ECU300は、AC充電を一時停止した状態の入力電圧VIN2を取得し、再び充電器200を制御してAC充電を再開させる。ECU300は、AC充電再開後の入力電圧VIN3を取得する。ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3とを比較し、両者の差分Δ2が閾値Vth以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth以上であれば、充電経路のインピーダンス異常と判断する(充電経路のインピーダンス異常を確定させる)。一方、ECU300は、差分Δ2が閾値Vth未満であれば、第1処理において差分Δ1が閾値Vth以上となったのは、系統電圧(交流電源510の電圧)の低下に起因するものと判断する。上記のような検知処理を実行することにより、充電経路のインピーダンス異常を適切に判断することができる。なお、本実施の形態に係る入力電圧VIN0,VIN1,VIN2,VIN3は、本開示に係る第1電圧,第2電圧,第3電圧,第4電圧にそれぞれ相当する。
【0076】
以下では、具体例を用いながら検知処理をさらに詳細に説明する。図4および図5は、検知処理を説明するためのタイムチャートである。図4および図5には、上から順に、系統電圧、充電器200の入力電圧、および充電電流の時間変化が示されている。図4では、系統電圧は一定であり、かつ、充電経路のインピーダンス(系統インピーダンス)が高い(異常)である状況を想定する。図5では、系統電圧が変動し、かつ、充電経路のインピーダンス(系統インピーダンス)が低い(正常)である状況を想定する。
【0077】
まず、図4を参照して、系統電圧は一定であるが、充電経路のインピーダンスが異常である場合について説明する。
【0078】
時刻t10において、インレット220に充電コネクタ410が接続され、充電開始操作が行なわれる。これによって、インレット220(充電器200)には、充電設備500からの入力電圧VINが印加されている。ECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続されたことを検知すると、検知処理を開始し、第1処理を実行する。
【0079】
時刻t11において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電開始前の充電器200に入力されている入力電圧VIN0として記憶する。
【0080】
時刻t12において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始する。AC充電の開始により、充電設備500から車両1へ充電ケーブル400を介して充電電流が流れ、充電器200の入力電圧VINが低下する。
【0081】
時刻t13において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電開始後の充電器200に入力されている入力電圧VIN1として記憶する。
【0082】
時刻t14において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との差分Δ1を算出し、差分Δ1を閾値Vthと比較する。閾値Vthは、充電ケーブル400の定格電流に応じて予め用意され、たとえば、ECU300の不図示のメモリに予め記憶されている。充電電流が大きいほどAC充電時の電圧降下が大きくなるため、定格電流が大きいほど、大きな閾値Vthが設定される。閾値Vthと定格電流との関係を示すマップが用意されてもよい。ECU300は、定格電流をマップに照合させることにより閾値Vthを設定する。ここでは、充電経路のインピーダンスが異常であるため、差分Δ1は閾値Vthよりも大きな値となる。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth以上であることを判断すると、充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。これにより、充電電流が流れなくなり、充電器200の入力電圧VINが上昇する。
【0083】
ECU300は、第1処理において充電経路のインピーダンス異常が仮検知されると、第1処理に引き続いて第2処理を開始する。
【0084】
時刻t15において、ECU300は、AC充電が一時停止されている状態で、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電の一時停止時に充電器200に入力されている入力電圧VIN2として記憶する。
【0085】
時刻t16において、ECU300は、再び充電器200を制御してAC充電を再開させる。これにより、再び充電電流が流れ、充電器200の入力電圧VINが低下する。
【0086】
時刻t17において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電再開後の入力電圧VIN3として記憶する。
【0087】
時刻t18において、ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3との差分Δ2を算出し、差分Δ2を閾値Vthと比較する。ここでは、充電経路のインピーダンスが異常であるため、上述の差分Δ1と同様に、差分Δ2も閾値Vthよりも大きな値となる。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth以上であることを判断すると、充電経路のインピーダンス異常を確定させ、充電器200を制御してAC充電を停止させる。これにより、充電電流が流れなくなり、充電器200の入力電圧VINが上昇する。これ以降、ECU300は、AC充電を停止させた状態を継続させる。
【0088】
ECU300は、たとえば、充電経路のインピーダンス異常を報知装置600に報知させてもよい。報知装置600は、ECU300からの指令に従って、たとえば、充電経路のインピーダンス異常を表示したり、充電経路のインピーダンス異常を音声出力したりする。
【0089】
次に図5を参照して、充電経路のインピーダンスは正常であるが、系統電圧が変動する場合について説明する。
【0090】
時刻t20において、インレット220に充電コネクタ410が接続され、充電開始操作が行なわれる。これによって、インレット220(充電器200)には、充電設備500からの入力電圧VINが印加されている。ECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続されたことを検知すると、検知処理を開始し、第1処理を実行する。
【0091】
時刻t21において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電開始前の充電器200に入力されている入力電圧VIN0として記憶する。
【0092】
時刻t22において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始する。AC充電の開始により、充電設備500から車両1へ充電ケーブル400を介して充電電流が流れ、充電器200の入力電圧VINが低下する。このときの入力電圧VINの低下量は、充電経路のインピーダンスが正常であるので、図4における時刻t12における入力電圧VINの低下量よりも小さい。
【0093】
時刻t23において、系統電圧すなわち交流電源510の電圧が低下したものとする。系統電圧の低下に伴なって、充電器200の入力電圧VINも低下する。
【0094】
時刻t24において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電開始後の充電器200に入力されている入力電圧VIN1として記憶する。
【0095】
時刻t25において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との差分Δ1を算出し、差分Δ1を閾値Vthと比較する。ここでは、入力電圧VIN0の取得後に系統電圧が低下しているため、差分Δ1は閾値Vthよりも大きな値となる。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth以上であることを判断すると、充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。これにより、充電電流が流れなくなり、充電器200の入力電圧VINが上昇する。ここでの入力電圧VINの上昇量は、充電経路のインピーダンスが正常であるので、図4における時刻t14における入力電圧VINの上昇量よりも小さい。
【0096】
ECU300は、第1処理において充電経路のインピーダンス異常が仮検知されると、第1処理に引き続いて第2処理を開始する。
【0097】
時刻t26において、ECU300は、AC充電が一時停止されている状態で、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電の一時停止時に充電器200に入力されている入力電圧VIN2として記憶する。
【0098】
時刻t27において、ECU300は、再び充電器200を制御してAC充電を再開させる。これにより、再び充電電流が流れ、充電器200の入力電圧VINが低下する。
【0099】
時刻t28において、ECU300は、電圧センサ230から検出値を取得して、当該検出値をAC充電再開後の入力電圧VIN3として記憶する。
【0100】
時刻t27において、ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3との差分Δ2を算出し、差分Δ2を閾値Vthと比較する。ここでは、充電経路のインピーダンスが正常であるため、差分Δ2は閾値Vthよりも小さな値となる。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth未満であることを判断すると、第1処理において差分Δ1が閾値Vth以上となったのは、系統電圧(交流電源510の電圧)の低下に起因するものと判断して、充電経路のインピーダンスが正常であることを確定させる。この場合には、ECU300は、引き続きAC充電を継続させる。
【0101】
上記のように、本実施の形態に係る検知処理を実行することにより、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを切り分けて検知し、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【0102】
<フローチャート>
図6は、ECU300で実行される検知処理の手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートの処理は、インレット220に充電コネクタ410が接続された際に開始される。図6および後述の図7,8,10のフローチャートの各ステップ(以下ステップを「S」と略す)は、ECU300によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がECU300内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
【0103】
S1において、ECU300は、充電開始操作が行なわれたか否かを判断する。ECU300は、充電開始操作が行なわれていないと判断した場合には(S1においてNO)、充電開始操作が行なわれるのを待つ。ECU300は、充電開始操作が行なわれたと判断した場合には(S1においてYES)、処理をS3に進める。
【0104】
S3において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電開始前の充電器200の入力電圧VIN0として取得する。
【0105】
S5において、ECU300は、パイロット信号CPLTのデューティに基づいて検出した充電ケーブル400の定格電流を、上述のマップに照合させて閾値Vthを設定する。
【0106】
S7において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始する。
S9において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電開始後の充電器200の入力電圧VIN1として取得する。
【0107】
S11において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との差分Δ1が閾値Vth以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth未満であると判断すると(S11においてNO)、処理をS13に進める。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth以上であると判断すると(S11においてYES)、処理をS15に進める。
【0108】
S13において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との関係が正常であるので、AC充電をそのまま継続して実行する。
【0109】
S15において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との関係が異常であるので、充電経路のインピーダンス異常を仮検知する。この際、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。
【0110】
S17において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電一時停止時の充電器200の入力電圧VIN2として取得する。
【0111】
S19において、ECU300は、充電器200を制御して一時停止させていたAC充電を再開させる。
【0112】
S21において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電再開後の充電器200の入力電圧VIN3として取得する。
【0113】
S23において、ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3との差分Δ2が閾値Vth以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth未満であると判断すると(S23においてNO)、処理をS13に進める。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth以上であると判断すると(S23においてYES)、処理をS25に進める。
【0114】
S25において、ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3との関係が異常であるので、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。この際、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を停止させる。
【0115】
S27において、ECU300は、報知装置600を制御して、充電経路のインピーダンス異常のためAC充電を停止させたことを車両1のユーザに報知する。
【0116】
以上のように、本実施の形態に係る車両1のECU300は、AC充電を開始する際に検知処理を実行し、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを切り分けて検知する。ECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続された状態において第1処理を実行し、AC充電開始前の入力電圧VIN0と、AC充電開始後の入力電圧VIN1とを比較する。そして、ECU300は、両者の差分Δ1が閾値Vth以上である場合には、充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。ECU300は、第1処理において充電経路のインピーダンス異常を仮検知すると、引き続いて第2処理を実行し、AC充電を一時停止した状態の入力電圧VIN2と、AC充電再開後の入力電圧VIN3とを比較し、両者の差分Δ2が閾値Vth以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth以上であれば、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。一方、ECU300は、差分Δ2が閾値Vth未満であれば、系統電圧の低下が生じていると判断する。充電経路のインピーダンス異常を仮検知し、AC充電の一時停止の入力電圧VIN2と、AC充電再開後の入力電圧VIN3とに基づいて充電経路のインピーダンス異常を検知することにより、充電経路のインピーダンス異常と系統電圧の低下とを適切に切り分けることができる。したがって、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【0117】
[変形例1]
実施の形態では、充電経路のインピーダンス異常を仮検知した後、AC充電一時停止時の入力電圧VIN2とAC充電再開後の入力電圧VIN3との差分Δ2を閾値Vthとの1回の比較結果に基づいて、充電経路のインピーダンス異常を確定させる例について説明した。変形例1では、差分Δ2と閾値Vthとの複数回の比較結果に基づいて、充電経路のインピーダンス異常を確定させる例について説明する。
【0118】
図7は、変形例1に係る検知処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートの処理は、実施の形態と同様、インレット220に充電コネクタ410が接続された際にECU300により開始される。なお、図7のフローチャートは、図6のフローチャートに対して、S30およびS32の処理を追加したものである。図7のフローチャートのS30およびS32以外の処理については、図6のフローチャートと同様であるため、同じステップ番号を付してその説明は繰り返さない。
【0119】
変形例1に係る検知処理では、差分Δ2と閾値Vthとの比較回数を示す変数nが用いられる。nは自然数であり、図7のフローチャートの開始時には、変数nに1の値が入力される。
【0120】
S23において、ECU300は、差分Δ2が閾値Vth以上であると判断すると(S23においてYES)、処理をS30に進める。
【0121】
S30において、ECU300は、変数nが規定値Mであるか否かを判断する。規定値Mは、2以上の自然数であり、差分Δ2と閾値Vthとの比較回数を定めた値である。規定値Mは、適宜設定することができる。ECU300は、変数nが規定値Mでない、すなわち、変数nが規定値Mより小さい場合(S30においてNO)、処理をS32に進める。一方、ECU300は、変数nが規定値Mである場合(S30においてYES)、処理をS25に進める。
【0122】
S32において、ECU300は、変数nに1をインクリメントし、処理をS15に返す。これにより、S15以降の処理、すなわち差分Δ2と閾値Vthとの比較が繰り返し行なわれる。
【0123】
そして、変数nが規定値Mに達すると、ECU300は、処理をS25に進めて、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。換言すれば、ECU300は、M回連続して差分Δ2が閾値Vth以上であった場合に、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。
【0124】
たとえば、ノイズ等に起因して差分Δ2が大きな値に算出されてしまう場合が起こり得る。変形例1では、M回連続して差分Δ2が閾値Vth以上であった場合に、充電経路のインピーダンス異常を確定させることにより、充電経路のインピーダンス異常の検知精度を高めることができる。
【0125】
[変形例2]
第1処理において、入力電圧VIN0を取得してから入力電圧VIN1するまでの時間が所定時間内となるように、入力電圧VIN1を取得してもよい。たとえば、入力電圧VIN0を取得してから入力電圧VIN1するまでの時間が長くなると、その間に系統電圧が変動する可能性が高くなる。入力電圧VIN0を取得してから入力電圧VIN1するまでの間に系統電圧が変動すると、充電経路のインピーダンスが正常であるにもかかわらず、第1処理により充電経路のインピーダンス異常が仮検知される可能性がある。充電経路のインピーダンス異常が仮検知されると、AC充電が一時停止されるので、AC充電に要する時間が長くなってしまう。
【0126】
入力電圧VIN0を取得してから入力電圧VIN1するまでの時間を所定時間内とすることにより、系統電圧が安定している間に差分Δ1を取得することができる。これにより、系統電圧の変動に起因して、充電経路のインピーダンス異常が仮検知されるケースの発生を抑制することができる。したがって、仮検知に伴なうAC充電の一時停止を省略できる分、AC充電に要する時間を短縮させることができる。
【0127】
また、同様に、第2処理において、入力電圧VIN2を取得してから入力電圧VIN3するまでの時間が所定時間内となるように、入力電圧VIN3を取得してもよい。入力電圧VIN2を取得してから入力電圧VIN3するまでの時間を所定時間内とすることにより、系統電圧が安定している間に差分Δ2を取得することができる。これにより、系統電圧の変動に起因して、差分Δ2が閾値Vth以上であると判断されてしまうことを抑制することができる。
【0128】
なお、変形例2は、変形例1と組み合わせることも可能である。
[変形例3]
実施の形態では、充電設備500が自宅等に設けられており、車両1のユーザは、一般家庭用のコンセント520に充電ケーブル400のプラグ420を接続して、AC充電を行なう例について説明した。AC充電を行なう充電設備は、たとえば、公共の充電スタンド(図示せず)である場合もある。
【0129】
充電スタンドには充電ケーブルが備え付けられており、車両1のユーザは充電スタンドから充電ケーブルを取り外すことはできない。車両1のユーザは、充電ケーブルの先端に設けられた充電コネクタをインレット220に接続して、AC充電を行なう。
【0130】
ここで、一般家庭で使用される充電設備500では、たとえば、コンセント520とプラグ420との接続不良や、コンセント520とプラグ420との間に延長ケーブルを使用する等、充電経路のインピーダンスが高くなるリスクが高い。一方、充電スタンドでは、配線工事等が業者によって行なわれており、充電経路のインピーダンスが高くなるリスクが低い。そこで、変形例3では、車両1のECU300は、充電設備500を使用したAC充電が行なわれる場合には検知処理を実行し、充電スタンドを使用したAC充電が行なわれる場合には検知処理を実行しない。
【0131】
実行されるAC充電が、充電設備500を使用したAC充電であるか、充電スタンドを使用したAC充電であるかは、たとえば、充電ケーブルの定格電流に基づいて判断することができる。一般的に、充電設備500の充電ケーブル400の定格電流は、充電スタンドの充電ケーブルの定格電流よりも小さい。予め閾電流Ithを定めておき、充電ケーブルの定格電流を閾電流Ithと比較することにより、充電設備500を使用したAC充電であるか、充電スタンドを使用したAC充電であるかを判断することができる。閾電流Ithは、ECU300のメモリに予め記憶しておくことができる。
【0132】
ECU300は、パイロット信号CPLTのデューティまたは接続信号PISWの電位に基づいて充電ケーブルの定格電流を検出する。ECU300は、定格電流と閾電流Ithとを比較する。ECU300は、定格電流が閾電流Ith未満である場合には、充電設備500を使用したAC充電が実行されると判断して、検知処理を実行する。ECU300は、定格電流が閾電流Ith以上である場合には、充電スタンドを使用したAC充電が実行されると判断して、検知処理を実行しない。これにより、検知処理の実行が求められる場合に限り検知処理を実行するようにすることができる。よって、不必要な処理の実行を省略して、演算資源を節約することができる。
【0133】
なお、変形例3は、変形例1,2と組み合わせることも可能である。
[変形例4]
実施の形態では、閾値Vthは充電ケーブル400の定格電流に応じて設定された。変形例4では、充電電流に応じて閾値Vthを設定する例について説明する。
【0134】
図8は、変形例4に係る検知処理の手順を示すフローチャートである。図8のフローチャートの処理は、実施の形態と同様、インレット220に充電コネクタ410が接続された際にECU300により開始される。なお、図8のフローチャートは、図6のフローチャートに対して、S5の処理を削除し、S9の処理をS40の処理に、S21の処理をS44の処理に変更し、さらにS42およびS46の処理を追加したものである。図8のフローチャートのその他の処理については、図6のフローチャートと同様であるため、同じステップ番号を付してその説明は繰り返さない。
【0135】
S7において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始すると、処理をS40に進める。
【0136】
S40において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電開始後の充電器200の入力電圧VIN1として取得する。また、ECU300は、電流センサ240の検出値を充電電流として取得する。
【0137】
S42において、ECU300は、閾値Vth1と充電電流との関係を定めたマップをメモリから読み出し、S40で取得した充電電流を引数として、閾値Vth1を設定する。なお、S42で用いられるマップは、たとえば、実施の形態で説明したマップであってもよい。
【0138】
S11において、ECU300は、入力電圧VIN0と入力電圧VIN1との差分Δ1が閾値Vth1以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth1未満であると判断すると(S11においてNO)、処理をS13に進める。ECU300は、差分Δ1が閾値Vth1以上であると判断すると(S11においてYES)、処理をS15に進める。
【0139】
S19において、ECU300は、充電器200を制御して一時停止させていたAC充電を再開させると、処理をS44に進める。
【0140】
S44において、ECU300は、電圧センサ230の検出値をAC充電再開後の充電器200の入力電圧VIN3として取得する。また、ECU300は、電流センサ240の検出値を充電電流として取得する。
【0141】
S46において、ECU300は、閾値Vth2と充電電流との関係を定めたマップをメモリから読み出し、S44で取得した充電電流を引数として、閾値Vth2を設定する。なお、S46で用いられるマップは、たとえば、実施の形態で説明したマップであってもよい。
【0142】
S23において、ECU300は、入力電圧VIN2と入力電圧VIN3との差分Δ2が閾値Vth2以上であるか否かを判断する。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth2未満であると判断すると(S23においてNO)、処理をS13に進める。ECU300は、差分Δ2が閾値Vth2以上であると判断すると(S23においてYES)、処理をS25に進める。
【0143】
充電経路のインピーダンスによる電圧低下量は充電電流に比例する。そのため、充電電流が大きい場合には、充電経路のインピーダンスが正常であっても電圧低下量が大きくなる。一律の閾値Vthを用いると、充電電流が小さい場合の充電経路のインピーダンス異常と、充電電流が大きい場合の充電経路のインピーダンス異常との両方を適切に検知できない可能性がある。上記のように、充電電流に応じて閾値Vth1,Vth2をそれぞれ設定することにより、充電電流の大きさに関わらず、充電経路のインピーダンス異常を適切に検知することができる。
【0144】
なお、閾値Vthに代えて、閾インピーダンスを用いることも可能である。この場合には、ECU300は、差分Δ1をS40で取得した充電電流で除算してインピーダンスを算出する。そして、算出されたインピーダンスを閾インピーダンスと比較し、算出されたインピーダンスが閾インピーダンス以上である場合に、充電経路のインピーダンス異常を仮検知する。
【0145】
そして、ECU300は、差分Δ2をS44で取得した充電電流で除算してインピーダンスを算出する。そして、算出されたインピーダンスを閾インピーダンスと比較し、算出されたインピーダンスが閾インピーダンス以上である場合に、充電経路のインピーダンス異常を確定する。
【0146】
なお、変形例3は、変形例1~3と組み合わせることも可能である。
[変形例5]
系統電圧は、長期的な視点でみると徐々に変動し得る。そこで、変形例5では、充電器200への入力電圧の微分値を用いて、充電経路のインピーダンス異常を検知する例について説明する。
【0147】
図9は、変形例5に係る検知処理を説明するための図である。図9には、上から順に、系統電圧、充電器200の入力電圧VIN、充電電流、および、充電器200の入力電圧の微分値(以下、単に「微分値」とも称する)の時間変化が示されている。
【0148】
時刻t30において、インレット220に充電コネクタ410が接続され、充電開始操作が行なわれる。これによって、インレット220(充電器200)には、充電設備500からの入力電圧VINが印加されている。ECU300は、インレット220に充電コネクタ410が接続されたことを検知すると、検知処理を開始し、第1処理を実行する。
【0149】
時刻t31において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始する。AC充電の開始により、充電設備500から車両1へ充電ケーブル400を介して充電電流が流れ、充電器200の入力電圧VINが低下する。ECU300は、AC充電を開始すると、所定の周期毎に電圧センサ230から検出値を取得して微分値を算出する。そして、ECU300は、微分値を閾値Vdthと比較する。閾値Vdthは、過去の系統電圧の変動の統計等に基づいて予め定められ、ECU300のメモリに記憶されている。ECU300は、微分値が閾値Vdth以上になった場合に、充電経路のインピーダンス異常を仮検知する。
【0150】
図9に示す例では、時刻t32において、系統電圧が徐々に低下し始める。系統電圧は長期にわたって徐々に低下していく。
【0151】
たとえば、入力電圧VINの変動値に基づいて、充電経路のインピーダンス異常を仮検知する構成であると、たとえば、時刻t32において、AC充電開始前(時刻t30から時刻t31の間)の入力電圧VINからの電圧低下量が閾値Vthを超えて、充電経路のインピーダンス異常が仮検知される。そうすると、充電経路のインピーダンスが正常であるにもかかわらず、AC充電が一時停止されてしまう。そこで、微分値を用いることにより、充電経路のインピーダンスが正常である場合に、充電経路のインピーダンス異常が仮検知されることを抑制することができる。
【0152】
図10は、変形例5で実行される検知処理の手順を示すフローチャートである。図10のフローチャートの処理は、実施の形態と同様、インレット220に充電コネクタ410が接続された際にECU300により開始される。
【0153】
S50において、ECU300は、充電開始操作が行なわれたか否かを判断する。ECU300は、充電開始操作が行なわれていないと判断した場合には(S50においてNO)、充電開始操作が行なわれるのを待つ。ECU300は、充電開始操作が行なわれたと判断した場合には(S50においてYES)、処理をS52に進める。
【0154】
S52において、ECU300は、不図示のメモリから閾値Vdthを読み出す。
S54において、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を開始する。
【0155】
S56において、ECU300は、電圧センサ230の検出値を入力電圧VINとして取得する。なお、本フローチャートの開始後、初回にS56の処理が実行される際には、S56の処理は、所定の周期間隔で2回実行される。
【0156】
S58において、ECU300は、前回取得された入力電圧VINおよびS56で取得された入力電圧VINに基づいて、微分値を算出する。なお、本フローチャートの開始後、初回にS56の処理が実行される際には、ECU300は、S56で取得された2つの入力電圧VINに基づいて、微分値を算出する。
【0157】
S60において、ECU300は、微分値が閾値Vdth以上であるか否かを判断する。ECU300は、微分値が閾値Vdth未満であると判断すると(S60においてNO)、処理をS62に進める。ECU300は、微分値が閾値Vdth以上であると判断すると(S60においてYES)、処理をS64に進める。
【0158】
S62において、ECU300は、微分値が正常値であるので、AC充電をそのまま継続して実行する。
【0159】
S64において、ECU300は、微分値が異常値であるので、充電経路のインピーダンス異常を仮検知する。この際、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を一時停止させる。
【0160】
S66において、ECU300は、充電器200を制御して一時停止させていたAC充電を再開させる。
【0161】
S68において、ECU300は、所定の周期間隔で2回、電圧センサ230の検出値を入力電圧VINとして取得する。
【0162】
S70において、ECU300は、S68で取得された入力電圧VINに基づいて、微分値を算出する。
【0163】
S72において、ECU300は、微分値が閾値Vdth以上であるか否かを判断する。ECU300は、微分値が閾値Vdth未満であると判断すると(S72においてNO)、処理をS62に進める。ECU300は、微分値が閾値Vdth以上であると判断すると(S72においてYES)、処理をS74に進める。
【0164】
S74において、ECU300は、微分値が異常であるので、充電経路のインピーダンス異常を確定させる。この際、ECU300は、充電器200を制御してAC充電を停止させる。
【0165】
S76において、ECU300は、報知装置600を制御して、充電経路のインピーダンス異常のためAC充電を停止させたことを車両1のユーザに報知する。
【0166】
以上のように、系統電圧が長期的に徐々に変動する場合において、微分値を用いることにより、充電経路のインピーダンスが正常である場合に、充電経路のインピーダンス異常が仮検知されることを抑制することができる。
【0167】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
1 車両、100 バッテリ、200 充電器、210 充電リッド、220 インレット、230 電圧センサ、240 電流センサ、250 ロック装置、320 抵抗回路、330,340 入力バッファ、350 電源ノード、360 車両アース、400 充電ケーブル、410 充電コネクタ、420 プラグ、430 CCID、440 交流電力線、450 CCIDリレー、460 CCID制御部、470 CPLT制御回路、471 電磁コイル、472 発振装置、473,481 電圧センサ、480 漏電検出器、482 電流センサ、500 充電設備、510 交流電源、520 コンセント、600 報知装置、CNL,CPL 電力線、L1 信号線、L2 接地線、L3 接続信号線、R1,R2 プルダウン抵抗、R10 プルアップ抵抗、R5,R6,R7,R20 抵抗、SW1,SW2,SW20 スイッチ。
図1
図2
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