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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 55/00 20190101AFI20240827BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240827BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240827BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240827BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
B60L55/00
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/13
B60L1/00 L
H02J7/00 P
H02J7/34 A
H02J3/14 130
G16Y10/40
G16Y20/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022018663
(22)【出願日】2022-02-09
(65)【公開番号】P2023116087
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 達
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-150988(JP,A)
【文献】特開2021-16288(JP,A)
【文献】特開2020-150717(JP,A)
【文献】特開2020-195203(JP,A)
【文献】特開2021-27797(JP,A)
【文献】特表2021-536725(JP,A)
【文献】特開2021-93802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
H02J 3/00- 5/00
G16Y 10/40
G16Y 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統における電力需給バランスを調整するためのDR(Demand Response)に参加可能な車両であって、
電気負荷と、
前記電力系統から、前記車両の外部に設けられる電力設備を通じて受電するように構成された受電装置と、
前記受電装置により受電された電力を蓄える蓄電装置と、
前記電気負荷と前記蓄電装置の充電とを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記受電装置を用いて前記蓄電装置を充電する外部充電を実行するように構成されており、
前記DRは、前記車両が前記DRに参加する場合に前記外部充電における前記蓄電装置の充電量の低減を前記車両に要請する下げDRを含み、
前記制御装置は、前記電力設備が設けられた前記車両の走行終了地点において前記車両が前記下げDRに参加する場合に、前記車両が前記走行終了地点において前記下げDRに参加しない場合よりも、前記走行終了地点における前記蓄電装置のSOCである走行終了時SOCが低くなるように前記電気負荷を制御するSOC低下制御を実行する、車両。
【請求項2】
前記車両が前記走行終了地点において第1期間中に前記下げDRに参加しない場合、前記第1期間中の前記外部充電における前記充電量は、第1充電量であり、
前記車両が前記走行終了地点において前記第1期間中に前記下げDRに参加する場合、
前記第1期間中の前記外部充電における前記充電量は、前記第1充電量よりも少ない第2充電量であり、
前記制御装置は、前記第1期間の終了時刻から前記車両の出発予定時刻までの第2の期間中に、前記第1充電量と前記第2充電量との差分の電力量である差分電力量が前記蓄電装置に充電されるように前記外部充電を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記DRは、前記外部充電における前記充電量の増加を前記車両に要請する上げDRを含み、
前記SOC低下制御は、前記走行終了地点において前記車両が前記上げDRに参加する場合に、前記走行終了地点において前記車両が前記上げDRに参加しない場合よりも前記走行終了時SOCが低くなるように前記電気負荷を制御することを含む、請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電気負荷は、前記蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって前記車両の走行駆動力を発生する回転電機を含み、
前記SOC低下制御は、前記走行終了地点において前記車両が前記DRに参加する場合に、前記走行終了地点において前記車両が前記DRに参加しない場合よりも前記車両の走行中の前記回転電機による出力の上限が高くなるように前記回転電機を制御することを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが必要SOC未満に低下しないように、前記車両の走行中に前記電気負荷を制御し、
前記必要SOCは、前記車両が前記走行終了地点としての前記車両の目的地まで走行するために必要な前記蓄電装置のSOCである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、複数の前記目的地の候補を予測するように構成され、
前記必要SOCは、第1必要SOCおよび第2必要SOCに従って決定され、
前記第1必要SOCは、前記複数の前記目的地の候補のうちの第1候補地まで前記車両が走行するために必要な前記蓄電装置のSOCであり、
前記第2必要SOCは、前記複数の前記目的地の候補のうちの、前記第1候補地よりも前記車両からの距離が長い第2候補地まで前記車両が走行するために必要な前記蓄電装置のSOCである、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記電気負荷は、前記蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって作動する補機を含み、
前記SOC低下制御は、前記走行終了地点において前記車両が前記DRに参加する場合に、前記走行終了地点において前記車両が前記DRに参加しない場合よりも前記補機による電力消費が増大するように前記補機を制御することを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記電気負荷は、前記蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって作動する補機を含み、
前記SOC低下制御は、前記走行終了地点において前記車両が前記DRに参加する場合に、前記車両の走行開始予定時刻よりも前に前記補機が作動を開始するように前記補機を制御することを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記電気負荷は、前記車両の制動に伴って回生発電を行うように構成された発電機を含み、
前記回生発電により生成された電力である回生電力は、前記発電機から前記蓄電装置に供給され、
前記SOC低下制御は、前記走行終了地点において前記車両が前記下げDRに参加する場合に、前記走行終了地点において前記車両が前記下げDRに参加しない場合よりも前記車両の走行中の前記回生電力を低減するように前記発電機を制御することを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記制御装置は、前記車両が前記走行終了地点に到着する予定の時刻である走行終了予定時刻よりもしきい時間だけ前の事前時刻が到来すると前記SOC低下制御を開始する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項11】
前記制御装置は、前記車両から前記走行終了地点までの距離がしきい距離に低下すると前記SOC低下制御を開始する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項12】
前記電力設備が、前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記電力設備を通じて前記電力系統に放電する放電処理と、前記制御装置に前記電力系統の電力を用いて前記外部充電を実行させる充電処理とのうち前記充電処理のみを実行可能な場合に、前記制御装置は、前記SOC低下制御を実行する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の車両。
【請求項13】
前記車両は、前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記電力設備を通じて前記電力系統に放電する外部放電と前記外部充電とのうち前記外部充電のみを実行するように構成されるV1G車両を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関し、特に、蓄電装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-150717号公報(特許文献1)は、電力系統に接続可能な電動車両を開示する。電動車両は、二次電池と、車両ECU(Electronic Control Unit)と、二次電池のSOCを調整するSOC(State of Charge)調整手段とを含む。車両ECUは、電動車両の走行状態を制御する。電力系統において電力供給予測量が電力需要予測量よりも多い場合、SOC調整手段は、SOCを低下させるように車両ECUに運転指示を出力する。電力需要予測量が電力供給予測量よりも多い場合、SOC調整手段は、SOCを増加させるように車両ECUに運転指示を出力する。電動車両は、蓄電装置から電力系統への放電と、電力系統から蓄電装置への充電との両方を実行可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-150717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)において、電力需給バランスを調整するためのデマンドレスポンス(DR:Demand Response)が検討されている。DRは、電力需要を変化(例えば、減少)させるように需要者の電力リソースに要請する仕組みである。
【0005】
蓄電装置を備える車両がDRの電力リソースとして用いられる場合、車両の蓄電装置から電力系統への放電と、電力系統から蓄電装置への充電とのうち、充電のみが可能な場合(例えば、車両が上記の充電のみを実行可能な場合)が想定される。特許文献1においては、このような場合においても車両が電力需給バランスの調整に貢献するための技術について検討されていない。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置を備える車両において、蓄電装置から電力系統への放電と電力系統から蓄電装置への充電とのうち充電のみが可能な場合に、電力系統における電力需給バランスの調整に貢献することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両は、電力系統における電力需給バランスを調整するためのDRに参加可能な車両である。車両は、電気負荷と、受電装置と、蓄電装置と、制御装置とを備える。受電装置は、電力系統から、車両の外部に設けられる電力設備を通じて受電するように構成される。蓄電装置は、受電装置により受電された電力を蓄える。制御装置は、電気負荷と蓄電装置の充電とを制御する。制御装置は、受電装置を用いて蓄電装置を充電する外部充電を実行するように構成されている。DRは、車両がDRに参加する場合に外部充電における蓄電装置の充電量の低減を車両に要請する下げDRを含む。制御装置は、電力設備が設けられた車両の走行終了地点において車両が下げDRに参加する場合に、車両が走行終了地点において下げDRに参加しない場合よりも、走行終了地点における蓄電装置のSOCである走行終了時SOCが低くなるように電気負荷を制御するSOC低下制御を実行する。
【0008】
蓄電装置から電力系統への放電と電力系統から蓄電装置への充電とのうち充電のみが可能であり、かつ、電力系統における電力需要が電力供給よりも多い場合、車両は、電力需給バランスの調整に貢献するためには下げDRに参加することを要する。上記の構成とすることにより、車両が下げDRに参加する場合に、車両が下げDRに参加しない場合よりも走行終了地点における蓄電装置の空き容量を増やすことができる。これにより、車両が下げDRに参加する期間中に元々予定されていた充電量から低減可能な電力量(キャンセル可能な電力量)を増加させることができる。その結果、電力需給バランスの調整への貢献を大きくすることができる。
【0009】
車両が走行終了地点において第1期間中に下げDRに参加しない場合、第1期間中の外部充電における充電量は、第1充電量であってもよい。車両が走行終了地点において第1期間中に下げDRに参加する場合、第1期間中の外部充電における充電量は、第1充電量よりも少ない第2充電量であってもよい。制御装置は、第1期間の終了時刻から車両の出発予定時刻までの第2の期間中に、第1充電量と第2充電量との差分の電力量である差分電力量が蓄電装置に充電されるように外部充電を実行してもよい。
【0010】
上記の構成とすることにより、第1期間中に蓄電装置に充電されなかった電力量に相当する差分電力量が第2の期間中に蓄電装置に充電される。その結果、車両の出発予定時刻に蓄電装置が十分に充電されていない状況を回避することができる。
【0011】
DRは、外部充電における充電量の増加を車両に要請する上げDRを含んでもよい。SOC低下制御は、走行終了地点において車両が上げDRに参加する場合に、走行終了地点において車両が上げDRに参加しない場合よりも走行終了時SOCが低くなるように電気負荷を制御することを含んでもよい。
【0012】
上記の構成とすることにより、車両が上げDRに参加する場合に、車両が上げDRに参加しない場合よりも走行終了地点における蓄電装置の空き容量を増やすことができる。これにより、車両が上げDRに参加する期間中に蓄電装置に余分に充電可能な電力量を増やすことができる。
【0013】
電気負荷は、蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって車両の走行駆動力を発生する回転電機を含んでもよい。SOC低下制御は、走行終了地点において車両がDRに参加する場合に、走行終了地点において車両がDRに参加しない場合よりも車両の走行中の回転電機による出力の上限が高くなるように回転電機を制御することを含んでもよい。
【0014】
上記の構成とすることにより、車両の走行中に回転電機による電力消費を増やすことができる。これにより、ユーザが車両による力強い走行を好む場合にはユーザの欲求を満たしつつ、蓄電装置のSOCを低下させ易くすることができる。
【0015】
制御装置は、蓄電装置のSOCが必要SOC未満に低下しないように、車両の走行中に電気負荷を制御してもよい。必要SOCは、車両が走行終了地点としての車両の目的地まで走行するために必要な蓄電装置のSOCであってもよい。
【0016】
上記の構成とすることにより、車両が目的地に到着することができないほどSOCが低下する事態を回避することができる。
【0017】
制御装置は、複数の目的地の候補を予測するように構成されていてもよい。必要SOCは、第1必要SOCおよび第2必要SOCに従って決定されてもよい。第1必要SOCは、複数の目的地の候補のうちの第1候補地まで車両が走行するために必要な蓄電装置のSOCであってもよい。第2必要SOCは、複数の目的地の候補のうちの、第1候補地よりも車両からの距離が長い第2候補地まで車両が走行するために必要な蓄電装置のSOCであってもよい。
【0018】
上記の構成とすることにより、第1必要SOCおよび第2必要SOCの両方が必要SOCの決定において反映される。これにより、車両が第2候補地まで走行する場合に、蓄電装置のSOCが過度に低下する事態を回避することができる。
【0019】
電気負荷は、蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって作動する補機を含んでもよい。SOC低下制御は、走行終了地点において車両がDRに参加する場合に、走行終了地点において車両がDRに参加しない場合よりも補機による電力消費が増大するように補機を制御することを含んでもよい。
【0020】
上記の構成とすることにより、補機による電力消費を増やすことができる。これにより、ユーザが補機の機能を十分に享受しつつ、蓄電装置のSOCを低下させ易くすることができる。
【0021】
電気負荷は、蓄電装置に蓄えられた電力を消費することによって作動する補機を含んでもよい。SOC低下制御は、走行終了地点において車両がDRに参加する場合に、車両の走行開始予定時刻よりも前に補機が作動を開始するように補機を制御することを含んでもよい。
【0022】
上記の構成とすることにより、ユーザが車両に乗車する時点において直ちに補機の機能を享受しつつ、蓄電装置のSOCを低下させ易くすることができる。
【0023】
電気負荷は、車両の制動に伴って回生発電を行うように構成された発電機を含んでもよい。回生発電により生成された電力である回生電力は、発電機から蓄電装置に供給されてもよい。SOC低下制御は、走行終了地点において車両が下げDRに参加する場合に、走行終了地点において車両が下げDRに参加しない場合よりも車両の走行中の回生電力を低減するように発電機を制御することを含んでもよい。
【0024】
上記の構成とすることにより、SOCが回生発電により不必要に高められる事態が回避される。その結果、SOCを低下させ易くすることができる。
【0025】
制御装置は、車両が走行終了地点に到着する予定の時刻である走行終了予定時刻よりもしきい時間だけ前の事前時刻が到来するとSOC低下制御を開始してもよい。
【0026】
上記の構成とすることにより、事前時刻の到来前にはSOC低下制御が実行されない。これにより、蓄電装置のSOCが不必要に低下する事態を回避することができる。
【0027】
制御装置は、車両から走行終了地点までの距離がしきい距離に低下するとSOC低下制御を開始してもよい。
【0028】
上記の構成とすることにより、前記車両から前記走行終了地点までの距離がしきい距離に低下する前にはSOC低下制御が実行されない。これにより、蓄電装置のSOCが不必要に低下する事態を回避することができる。
【0029】
電力設備が、蓄電装置に蓄えられた電力を電力設備を通じて電力系統に放電する放電処理と、制御装置に電力系統の電力を用いて外部充電を実行させる充電処理とのうち充電処理のみを実行可能な場合に、制御装置は、SOC低下制御を実行してもよい。
【0030】
上記の構成とすることにより、電力設備が上記の充電処理および放電処理のうち放電処理を実行可能に構成されていない場合に、走行終了時SOCが低くなる。その結果、ユーザは、このような場合にも対処しつつ、電力需給バランスの調整に貢献することができる。
【0031】
車両は、蓄電装置に蓄えられた電力を電力設備を通じて電力系統に放電する外部放電と外部充電とのうち外部充電のみを実行するように構成されるV1G車両を含んでもよい。
【0032】
上記の構成とすることにより、車両の構成および制御を簡素化しつつ、電力需給バランスの調整に貢献することができる。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、蓄電装置を備える車両において、蓄電装置から電力系統への放電と電力系統から蓄電装置への充電とのうち充電のみが可能な場合に、電力系統における電力需給バランスの調整に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施の形態に従う電力管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】車両の構成の一例を模式的に示す図である。
図3】車両が電力設備に電気的に接続されているときの状況を示す図である。
図4】サーバの記憶装置に格納されるデータの一例を示す図である。
図5】V1G車両が走行終了地点においてDRに参加する場合の、その車両の走行用バッテリのSOCの時間的推移を説明するための図である。
図6】本実施の形態において車両が走行終了地点において下げDRに参加する場合の、バッテリのSOCの時間的推移を説明するための図である。
図7】車両が下げDRに参加するか否かに従ってトルク要求値-車速特性が変化することを説明するための図である。
図8】車両が走行終了地点においてDRに参加する場合の、バッテリのSOCの時間的推移を説明するための図である。
図9】車両の現在地から目的地までの距離と、必要SOCとの関係を示す図である。
図10】回生電力の上限および電気負荷による電力消費の上限と、余裕電力量との関係を説明するための図である。
図11】実施の形態1に従うECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態1に従うECUにより実行される処理の他の例を示すフローチャートである。
図13】この変形例1に従うECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図14】この変形例2に従うECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図15】候補目的地の数が2である場合に必要SOCがどのように決定されるかを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に従う電力管理システムの概略的な構成を示す図である。図1を参照して、電力管理システム10は、電力系統PGと、電力リソース群500と、サーバ600と、サーバ700とを含む。
【0037】
電力系統PGは、送配電設備によって構築される。電力系統PGは、その運用者である電力会社により保守および管理される。
【0038】
電力リソース群500は、各々がバッテリ105を搭載する複数の車両100を含む。各車両100は、電力系統PGと電気的に接続可能に構成されており、分散型電源として機能する電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。電力リソース群500は、HEMS(Home Energy Management Service)などの、車両100とは異なる他の蓄電システムをさらに含んでもよい。
【0039】
各車両100は、車両外部に設けられる電力設備から供給される電力を用いてバッテリ105を充電する外部充電を実行可能に構成される。各車両100が外部充電を実行すると、電力系統PGから各車両100に電力が供給されるため、電力系統PGにおける電力負荷が増加する。このように、各車両100は、外部充電を実行することによってDRに参加することができる。
【0040】
例えば、車両100がDRに参加するときに外部充電における充電量の増加を車両100に要請する「上げDR」に応答して外部充電が実行される場合、増加された電力量だけ電力系統PGにおける電力需要を増加させることができる。上げDRは、電力系統PGにおける電力供給が電力需要よりも多い場合に行われる。
【0041】
他方、車両100がDRに参加するときに外部充電における充電量の低減(節約)を車両100に要請する「下げDR」に応答して充電量が低減される場合、低減された充電量だけ電力系統PGにおける電力需要が低減する(キャンセルされる)。下げDRは、電力系統PGにおける電力需要が電力供給よりも多い場合に行われる。
【0042】
サーバ600は、アグリゲータに帰属するコンピュータであって、電力リソース群500を管理するように構成される。アグリゲータは、電力リソース群500を用いて電力系統PGに電力を調達する電気事業者である。
【0043】
サーバ600は、処理装置605と、通信装置630と、記憶装置620とを備える。処理装置605は、プロセッサおよびメモリを含む。通信装置615は、各種の通信インターフェースである。記憶装置620は、例えば、処理装置605により実行されるプログラム、および処理装置605により用いられる種々の情報を格納する。
【0044】
サーバ600は、電力系統PGにおける電力需給バランスを期間(時間帯)ごとに予測し、その予測結果に従って車両100にDRを要請するように構成される。具体的には、サーバ600は、下げDR信号S1または上げDR信号S2を車両100に送信するように構成される。下げDR信号S1および上げDR信号S2は、それぞれ、車両100に下げDRおよび上げDRを要請するための信号である。下げDR信号S1および上げDR信号S2の各々は、DRが行われる期間(DR期間)と、その期間中に車両100と電力系統PGとの間で授受される電力量(授受電力量)とを示す情報を含む。これらの信号は、DRのために車両100により用いられる電力設備(以下、「DR参加用設備」とも表す)の情報(例えば、その設備のIDおよび位置情報)をさらに含んでもよい。
【0045】
サーバ600は、承認信号S11または承認信号S21を車両100から受信するように構成される。承認信号S11および承認信号S21は、それぞれ、下げDR信号S1および上げDR信号S2に応答して車両100からサーバ600に送信される。承認信号S11および承認信号S21は、それぞれ、車両100が下げDRおよび上げDRに参加することを車両100のユーザが承認したことを示す。
【0046】
サーバ600が承認信号S11または承認信号S21を受信すると、車両100のユーザとアグリゲータとの間で契約が成立する。この契約は、DR期間(その開始時刻および終了時刻)と、DRの種類(DRが下げDRまたは上げDRのいずれであるか)、DR期間中の授受電力量(例えば、充電電力量)と、アグリゲータからユーザに支払われる対価(報酬)とを示す情報を含む。この契約の内容を示す契約情報は、承認信号S11または承認信号S21に含まれており、車両100の記憶装置にも格納される。契約情報は、DR参加用設備を示す情報と、その契約がV1Gの契約であるか否かを示す情報とをさらに含んでいてもよい。「V1Gの契約」とは、車両が、そのバッテリに蓄えられた電力を電力系統PGに供給(放電)することなく電力系統PGからの受電のみをすることによってDRに参加するように行われた契約である。
【0047】
車両100が下げDRまたは上げDRに参加する場合、ユーザは、それぞれ、DR期間中に元々予定されていた充電量からキャンセルすることができた電力量、またはその充電量よりも余分に消費することができた電力量に従って、アグリゲータから報酬を得ることができる(ネガワット取引またはポジワット取引)。
【0048】
サーバ700は、電力会社に帰属するコンピュータであって、サーバ600と通信可能に構成される。サーバ700は、例えば、電力系統PGにおける需給バランス調整のための電力量が電力系統PGに調達されるようにサーバ600に要求を出力する。
【0049】
図2は、車両100の構成の一例を模式的に示す図である。車両100は、バッテリ105に加えて、インレット110と、電力変換装置120と、PCU(Power Control Unit)133と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)135とを含む。車両100は、補機類140と、記憶装置176と、位置検出装置178と、通信装置180と、HMI(Human Machine Interface)装置182とをさらに含む。車両100は、スタートスイッチ184と、アクセルペダル185と、アクセルポジションセンサ187と、ECU150とをさらに含む。
【0050】
バッテリ105は、走行用の電力を蓄える蓄電装置であり、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ105は、インレット110により受電された電力を蓄えるように構成される。バッテリ105のSOCは、バッテリ105に蓄えられる電力量に対応する。バッテリ105は、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置により代替されてもよい。
【0051】
インレット110は、電力系統PGから、車両100の外部に設けられる電力設備310を通じて受電するように構成される受電装置である。インレット110は、非接触充電方式に適合する受電装置により代替されてもよい。
【0052】
電力変換装置120は、バッテリ105とインレット110との間に設けられる。電力変換装置120は、インレット110により受電された電力を変換し、変換された電力をバッテリ105に供給する。これにより、車両100の外部充電が実行される。電力変換装置120は、バッテリ105に蓄えられた電力を変換してインレット110に出力可能には構成されていない一方向の電力変換装置である。そのため、車両100は、電力系統PGからバッテリ105への充電(外部充電)と、バッテリ105から電力設備310を通じた電力系統PGへの放電(外部放電)とのうち、外部充電のみを行うことができる車両である。このような車両は、V1G車両とも呼ばれる。他方、外部充電および外部放電の両方を行うことができる車両は、V2G車両とも呼ばれる。
【0053】
PCU133は、MG135(後述)を駆動するための駆動装置である。PCU133は、インバータを含む。PCU133は、バッテリ105から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を用いてMG135を駆動する。PCU133は、車両100の制動時にモータジェネレータMG135により発電された交流電力を直流電力に変換するようにも構成される。
【0054】
MG135は、車両100に搭載される電気負荷であり、例えば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG135は、バッテリ105に蓄えられた電力を消費することによって車両100の走行駆動力(トルク)を発生するように構成されている。MG135により発生された駆動力は、車両100の駆動輪に伝達される。これにより、車両100が走行する。車両100の走行駆動力が大きいほど、または車両100の走行速度(車速)が早いほど、MG135による電力消費が大きくなる。MG135は、車両100の制動時に、駆動輪の回転力によって発電する発電機として機能することもできる(回生発電)。回生発電によって生成された電力である回生電力は、PCU133を通じてバッテリ105に供給(充電)される。
【0055】
補機類140は、バッテリヒータ142と、空調装置144とを含む。バッテリヒータ142は、バッテリ105の近傍に設けられ、バッテリ105を加熱するように構成される。空調装置144は、車両100の車室内の温度を調整するように構成されており、暖房機能および冷房機能を有する。バッテリヒータ142および空調装置144は、いずれも、車両100に搭載される電気負荷であり、バッテリ105に蓄えられた電力を消費することによって作動する補機である。
【0056】
記憶装置176は、ECU150(後述)により用いられるプログラムおよびデータ(例えば、車両100の電費、および車両100がV1G車両またはV2G車両のいずれであるか)、ならびにHMI装置182(後述)に入力された情報を記憶する。記憶装置176は、道路情報データベースと、車両100のユーザの行動履歴(例えば、車両100の位置の時間的な変化の履歴)とをさらに含んでもよい。
【0057】
位置検出装置178は、GPS(Global Positioning System)を用いて、車両100の現在地を示す情報(例えば、現在地の経度および緯度)を検出する。位置検出装置178により検出された情報の履歴は、記憶装置176に格納されてもよい。
【0058】
通信装置180は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、サーバ600(図1)などの外部機器と通信するように構成される。通信装置180は、例えば、下げDR信号S1または上げDR信号S2をサーバ600から受信したり、承認信号S11または承認信号S21をサーバ600に送信したりするように構成される。
【0059】
HMI装置182は、例えばタッチスクリーンである。HMI装置182は、ユーザによる操作を受けたり、様々な情報をユーザに表示したりする。HMI装置182は、例えば、車両100の目的地、外部充電のスケジュール、および、車両100の出発予定時刻(後述)を設定するためのユーザ操作を受ける。
【0060】
スタートスイッチ184は、ユーザにより押下される。スタートスイッチ184が押下されると、車両100の走行用システム(電源システム)が起動して車両100が走行可能状態になる。
【0061】
アクセルペダル185は、運転席に設けられる。アクセルポジションセンサ187は、ユーザによるアクセルペダル185の操作量(アクセル開度)を検出し、その検出値をECU150に出力する。
【0062】
ECU150は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリとを含む(いずれも図示せず)。メモリは、ROM(Read only memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。
【0063】
ECU150は、電力変換装置120、PCU133、MG135、補機類140、HMI装置182、および通信装置180などの、車両100の各機器を制御する。ECU150は、例えば、バッテリ105の充電を制御するように構成される。ECU150はインレット110により受電された電力を用いてバッテリ105を充電する外部充電を実行可能に構成される。
【0064】
通信装置180が下げDR信号S1または上げDR信号S2を受信した場合、ECU150は、その信号に対応するDRに車両100が参加するか否かを、HMI装置182を用いてユーザに問い合わせる。そして、車両100が下げDRまたは上げDRに参加することを示すユーザ操作がHMI装置182に入力された場合、ECU150は、通信装置180を通じて承認信号S11または承認信号S21をサーバ600に送信する。
【0065】
ECU150は、アクセルポジションセンサ187の検出値(アクセル開度)に従って、車両100のトルク要求値を算出する。ECU150は、例えば、アクセル開度とトルク要求値との関係を示すマップと、アクセルポジションセンサ187の検出値とに従って、トルク要求値を算出する。このマップは、記憶装置176に記憶されている。車両100の走行中にトルク要求値がしきいトルク未満である場合、ECU150は、トルク要求値のトルクがMG135により出力されるようにPCU133を制御する。他方、車両100の走行中にトルク要求値がしきいトルクを超過した場合、しきいトルクがMG135により出力されるようにPCU133を制御する。
【0066】
ECU150は、車両100の目的地が設定されている場合に、車両100が目的地としての走行終了地点に到着する予定の時刻である走行終了予定時刻を算出するように構成される。ECU150は、記憶装置176に格納される道路情報データベースと、車両100の現在位置と、車両100の目的地とに従って現在位置から目的地までの走行経路を決定し、その決定結果に基づいて走行終了予定時刻を算出する。
【0067】
図3は、車両100が電力設備310に電気的に接続されているときの状況を示す図である。図3を参照して、電力設備310は、通信装置312と、電力変換装置315と、制御装置316を含む。
【0068】
通信装置312は、サーバ600と通信可能に構成される。電力変換装置315は、電力系統PGから供給される電力を変換し、変換された電力を電力ケーブル320およびそのコネクタ325を通じて車両100に供給するように構成される。電力変換装置315は、電力設備310に接続される電力リソース(例えば、車両)から電力設備310に供給される電力を変換して変換後の電力を電力系統PGに供給するようには構成されていない。このように、電力変換装置315は、車両100の電力変換装置120と同様に一方向の電力変換装置であるため、電力設備310は、外部放電および外部充電のうち外部充電専用である。
【0069】
制御装置316は、コネクタ325がインレット110に接続されている場合に、車両100に外部充電の開始要求を出力することによってECU150に電力系統PGの電力を用いて外部充電を実行させる充電処理を実行することができる。一方、制御装置316は、バッテリ105に蓄えられた電力を、電力設備310を通じて電力系統PGに放電する放電処理を実行するようには構成されていない。
【0070】
図4は、サーバ600の記憶装置620に格納されるデータの一例を示す図である。図4を参照して、記憶装置620は、リソース管理情報テーブル(リストパターン)625と、電力設備情報テーブル626とを格納している。
【0071】
リソース管理情報テーブル625は、電力リソースの各種情報をリソースIDごとに示す。「リソースID」は、各電力リソースに割り当てられる識別情報である。
【0072】
「種類」は、電力リソースの種類を示す。この例では、R1~R4のIDを有する電力リソースは、車両である。R5のIDを有する電力リソースは、HEMSである。
【0073】
「タイプ」は、電力リソースの種類が車両に分類される場合にその車両がV2G車両またはV1G車両のいずれであるかを示す。この例では、R1~R3のIDを有する車両は、車両100のようなV1G車両である。R4のIDを有する車両は、V2G車両である。
【0074】
「契約情報」は、各電力リソースがどのようにDRに参加するように契約が行われているかを期間ごとに示す。各期間は、電力リソースがDRに参加可能な期間である。各期間の長さは、例えば30分であるが、限定されない。この例では、R1のIDを有する車両は、期間PT1中に、A1の電力量が電力系統PGからこの車両のバッテリに充電されるように電力設備EE1を用いて外部充電を実行する。R4のIDを有する車両は、期間PT2中に、A4の電力量がこの車両のバッテリから電力系統PGに放電されるように電力設備EE4を用いてバッテリの放電制御を実行する。
【0075】
サーバ600は、R1のIDを有する車両が上げDRまたは下げDRに参加する場合(具体的には、承認信号S21または承認信号S11をこの車両から受信した場合)に、そのDRが行われる期間中の車両における充電量(例えば、A1)が増加または低減するように、リソース管理情報テーブル625を書き換える。
【0076】
電力設備情報テーブル626は、電力設備の各種情報を設備IDごとに示す。「設備ID」は、各電力設備に割り当てられる識別情報である。
【0077】
「種類」は、電力設備の種類を示す。この例では、EE1~EE3のIDを有する電力設備は、電力設備310と同様に、外部放電および外部放電のうち外部充電のためにのみ用いられる。EE4,EE5のIDを有する電力設備は、外部放電および外部放電のうち両方のために用いられ得る。「位置」は、電力設備の位置(例えば、緯度および経度)を示す。
【0078】
図5は、V1G車両が走行終了地点においてDRに参加する場合の、その車両の走行用バッテリのSOCの時間的推移を説明するための図である。走行終了地点は、例えば、この車両のユーザの家の駐車場である。実施の形態1では、走行終了地点には、電力設備310が設けられている。この例は、後述のECU150による制御が実行されない場合の比較例を示す。
【0079】
図5を参照して、線800は、比較例のV1G車両が走行を終了した後に外部充電を実行するときのバッテリのSOCの推移の一例を示す(ケースA)。
【0080】
この例では、ΔX1に対応する電力量(第1充電量)が期間P2中に電力系統PGから車両のバッテリに供給(充電)されるように、外部充電のスケジュールが設定されている。比較例のケースAでは、車両は、DR(上げDRおよび下げDRを含む)に参加しない。
【0081】
時刻t0よりも前の期間P0の間、車両は走行しており、SOCは車両の走行に伴って低下する。車両が時刻t0において走行を終了すると、ユーザにより車両のインレットに電力ケーブル320のコネクタ325(図3)が接続される。この比較例では、走行終了地点におけるSOCである走行終了時SOCは、X0である。
【0082】
時刻t1が到来すると、車両は、外部充電を実行する(期間P2)。時刻t2においてSOCがRV1に到達すると、外部充電が終了する。これにより、ΔX1に対応する電力量がバッテリに充電される。RV1は、例えば、車両の走行開始後の目的地が設定されている場合には、車両がその目的地まで走行するために最低限必要なSOCとして定められた基準値である。ECU150は、車両の電費と、車両の現在地から目的地までの距離とに従ってRV1を決定する。
【0083】
その後、SOCがRV1である状態が継続した後(例えば、期間P8,P9)、時刻t10において車両が走行を出発する。時刻t10は、車両の出発予定時刻である。以後、SOCは、車両の走行に伴って低下する。
【0084】
線810は、V1G車両が走行終了地点において下げDRに参加する場合のバッテリのSOCの推移の一例を示す(ケースB1)。
【0085】
この例では、車両は、時刻t1よりも前に、下げDR信号S1を受信して承認信号S11をサーバ600に送信しているものとする。下げDR信号S1は、期間P2の間の外部充電によりバッテリに充電される電力量を、ΔX1に対応する電力量だけ低減(節約)するように車両に要請するものとする。
【0086】
期間P2の間、車両の外部充電における充電量は、ΔX1に対応する電力量だけケースAよりも低減される。この例では、外部充電がキャンセルされているため、充電量がゼロであり、SOCが変化しない。すなわち、ΔX1に対応する電力量が元々は期間P2の間に車両のバッテリに充電される予定であったにも拘らず、バッテリが全く充電されない。これにより、ΔX1に対応する電力量が電力系統PGから車両に供給される事態が回避される。すなわち、この電力量に相当する電力負荷が電力系統PGにおいて減少する。
【0087】
その後、時刻t9が到来する前に(この例では、期間P3の間)、ΔX1に対応する電力量がバッテリに充電されるように車両の外部充電が実行される。これにより、SOCは、RV1まで上昇する。
【0088】
線815は、V1G車両が走行終了地点において下げDRに参加する場合のバッテリのSOCの推移の他の例を示す(ケースB2)。
【0089】
線815は、期間P2の間の充電量が、ΔX1よりも少ないΔX2に対応する電力量だけ低減される点において、線810と異なる。この例では、期間P2の間、SOCは、X0からΔX3だけ上昇する(RV2まで上昇する)。その後、時刻t9(または時刻t10)が到来する前に(この例では、期間P3の間に)、ΔX2に対応する電力量がバッテリに充電されるように外部充電が実行される。これにより、SOCがRV1まで上昇する。ΔX2(0<ΔX2≦ΔX1)がΔX1に等しい場合、言い換えれば、ΔX3が0である場合(RV2がX0に等しい場合)、線815は、線810に一致する。
【0090】
線820は、V1G車両が走行終了地点において上げDRに参加する場合のバッテリのSOCの推移の一例を示す(ケースC)。
【0091】
この例では、車両は、時刻t1よりも前に、上げDR信号S2を受信して承認信号S21をサーバ600に送信しているものとする。上げDR信号S2は、期間P2の間の外部充電によりバッテリに充電される電力量を、ΔX4に対応する電力量だけケースAよりも増加するように車両に要請するものとする。
【0092】
これにより、ΔX5(=ΔX1+ΔX4)に対応する電力量が期間P2の間にバッテリに充電される。その結果、SOCは、RV3まで上昇する。RV3は、例えば、バッテリが満充電状態にあるときのSOCである。
【0093】
このように、V1G車両は、下げDRまたは上げDRに参加する場合に、それぞれ、DR期間中の充電量を低減(ケースB1,B2)または増加(ケースC)するように構成される。
【0094】
V1G車両は、走行終了地点において下げDRまたは上げDRに参加する場合に、走行終了地点におけるバッテリの空き容量を可能な限り増やすことが好ましい。バッテリの空き容量は、バッテリに充電可能な電力量に等しい。この電力量は、ΔX1(ケースB1,B2)またはΔX5(ケースC)に対応する。
【0095】
例えば、車両が下げDRに参加する場合、ΔX1が大きいほど、ΔX2をより大きくすることができる(ケースB2)。これにより、電力系統PGから車両のバッテリに充電される電力量として元々予定されていた充電電力量から低減可能な電力量(キャンセル可能な電力量:ΔX2に相当)を増加させることができるため、ネガワット量を増加させることができる。その結果、車両のユーザは、下げDRに対する対価として、アグリゲータからより多くの報酬を得ることができる。
【0096】
他方、車両が上げDRに参加する場合、ΔX5が多いほど、ΔX4をより大きくすることができる。これにより、車両から電力系統PGに供給される電力量として元々予定されていた電力量よりも、余分に多くの電力量をバッテリ105に充電することができるため、ポジワット量を増加させることができる。その結果、車両のユーザは、上げDRの対価として、アグリゲータからより多くの報酬を得ることができる。
【0097】
V1G車両が電力リソースとして用いられる場合、外部放電および外部充電とのうち、外部充電のみが可能である。このような外部充電のみが可能な場合に、車両が電力系統PGにおける電力需給バランスの調整に貢献することは重要である。
【0098】
本実施の形態に従う車両100のECU150は、このような場合に電力需給バランスの調整に貢献するための構成を備える。具体的には、ECU150は、電力設備310が設けられる車両100の走行終了地点において車両100が下げDRに参加する場合に、車両100が走行終了地点において下げDRに参加しない場合よりも、走行終了地点におけるバッテリ105のSOCである走行終了時SOCが低くなるように電気負荷を制御する。この電気負荷は、例えば、MG135、またはバッテリヒータ142もしくは空調装置144などの補機である。以下、ECU150によるこのような電気負荷の制御を「SOC低下制御」とも表す。
【0099】
外部充電および外部放電のうち外部充電のみが可能であり、かつ、電力系統PGにおける電力需要が電力供給よりも多い場合、車両100は、電力需給バランスの調整に貢献するためには下げDRに参加することを要する。上記のような構成とすることにより、車両が下げDRに参加する場合に、車両が下げDRに参加しない場合よりも走行終了地点におけるバッテリ105の空き容量を増やすことができる。これにより、車両が下げDRに参加する期間中に元々予定されていた充電量から低減可能な電力量(キャンセル可能な電力量)を増加させることができる。以下、ECU150によるSOC低下制御を詳しく説明する。
【0100】
図6は、本実施の形態において車両100が走行終了地点において下げDRに参加する場合の、バッテリ105のSOCの時間的推移を説明するための図である。
【0101】
図6を参照して、線802は、車両100が走行を終了した後に外部充電を実行する予定であるときのバッテリのSOCの推移の一例を示す(ケースA)。線802は、車両100が下げDR信号S1を受信する前に元々予定されていた外部充電のスケジュールを示す。
【0102】
線812,817は、車両100が走行終了地点において下げDRに参加する場合のバッテリのSOCの推移の一例を示す(ケースB1,B2)。
【0103】
線802,812,817は、それぞれ、走行終了時SOCがX1(<X0)である点において、比較例(図5)の線800,810,815と主に異なる。時刻t20~t30および期間P20~P30は、それぞれ、比較例の時刻t0~t10および期間P0~P10と同じである。
【0104】
ECU150は、車両100の走行中(例えば、期間P20中)にSOC低下制御を実行する。この例では、ECU150は、車両100の走行中のMG135による出力の上限が、車両100が走行終了地点においてDRに参加しない場合(図5のケースA)よりも高くなるようにMG135を制御する。MG135による出力とは、MG135により出力されるトルク、または、当該トルクにより車両100が駆動されるときの車速である。
【0105】
図7は、車両100が下げDRに参加するか否かに従ってトルク要求値-車速特性が変化することを説明するための図である。以下、トルク要求値-車速特性を、T-V特性とも表す。
【0106】
図7を参照して、T-V特性405は、車両100が下げDRに参加しない場合のT-V特性を表す。T-V特性405の領域(ハッチング領域)407は、車速Vがしきい速度THV0(しきい速度THV)未満であり、かつ、トルク要求値TがしきいトルクTHT0(しきいトルクTHT)未満である領域である。
【0107】
車速Vおよびトルク要求値Tの組により定められる点Pの座標が領域407内にある場合、ECU150は、そのトルク要求値Tおよび車速Vで車両100が走行するようにMG135を制御する。一方、トルク要求値TがしきいトルクTHTを超過すると、そのトルク要求値TではなくしきいトルクTHTにより車両100が駆動される。
【0108】
T-V特性410は、車両100が下げDRに参加する場合のT-V特性である。この場合、ECU150は、車両100が下げDRに参加しない場合(T-V特性405)よりも、しきいトルクTHTおよびしきい速度THVを高く設定する(THT=THT1>THT0,THV=THV1>THV0)。ECU150は、例えば、通信装置180を通じて承認信号S11をサーバ600に送信したときに、この設定処理を実行する。
【0109】
これにより、しきいトルクT0以上の高トルク、または、しきい車速THV0以上の高速で車両100が走行することが可能になる。その結果、MG135による電力消費を増大させることができる。よって、ユーザが車両100による力強い走行を好む場合にはユーザの欲求を満たしつつ、車両100が走行終了地点に到達するまでにバッテリ105のSOCを低下させ易くすることができる。
【0110】
図6を再び参照して、時刻t20において、車両100の走行終了時SOCは、X1(<X0)である。X1は、例えば、HMI装置182を用いてユーザにより設定された値、またはデフォルト値である。
【0111】
ケースAにおいて、車両100が期間P22(第1の期間)の間に外部充電を実行するように外部充電のスケジュールが予め設定されている。ケースB1,B2において、車両100は、期間P22の間に下げDRに参加するものとする。
【0112】
ケースB1において、期間P22の間、車両100は、元々予定されていた(ケースA)外部充電をキャンセルする。すなわち、この例では、期間P22の外部充電におけるバッテリ105の充電量は、ゼロである(線812)。
【0113】
ケースB2において、この充電量は0でない(線817)。具体的には、期間P22の間、SOCは、X1からΔX13だけ上昇する(RV2Aまで上昇する)。RV2AがX1に等しい場合、ΔX13が0であり、ΔX12がΔX11に一致し、ケースB2はケースB1に相当する。
【0114】
上記のように、元々予定されていた充電量よりも充電量が低減されると(ケースB1,B2)、ΔX11またはΔX12に対応する電力量が電力系統PGから車両に供給される事態が回避される。これにより、この電力量に相当する電力負荷が電力系統PGにおいて減少する。
【0115】
本実施の形態では、比較例(図5)と比較すると、DR期間(期間P22)に元々予定されていた充電量から低減可能な電力量(キャンセル可能な電力量)は、ΔX11(ケースB1)またはΔX12(ケースB2)に対応する電力量である。これらの電力量は、比較例におけるそれらの電力量(ΔX1,ΔX2)よりも、ΔX10またはΔX12Aに対応する電力量だけ多い。すなわち、ネガワット量を多くすることができる。
【0116】
期間P23の終了時刻である時刻t23から時刻t30までの期間中、ECU150は、ΔX11(ケースB1)またはΔX12(ケースB2)に対応する電力量がバッテリ105に充電されるように外部充電を実行する。この電力量は、期間P22の間に元々はバッテリ105に充電される予定であったにもかかわらずバッテリ105に充電されなかった電力量に相当する。この電力量は、期間P22の間にバッテリ105に元々は充電される予定であった電力量(ケースAにおけるΔX11に対応する電力量)と、期間P22の間に車両100が下げDRに参加するときにバッテリ105に充電される電力量(第2充電量)との差分電力量である。第2充電量は、ケースB1においては0、ケースB2においてはΔX13に対応する電力量である。差分電力量は、ケースB1においてはΔX11であり、ケースB2においてはΔX12である。
【0117】
このように外部充電が実行されると、差分電力量が時刻t23から時刻t30までの期間(第2の期間)中にバッテリ105に充電される(補完される)。その結果、車両100が走行を開始する予定である時刻t30に、バッテリ105が十分に充電されていない状況を回避することができる。
【0118】
このように、本実施の形態では、ECU150は、SOC低下制御を実行するため、比較例の場合(図5)よりも走行終了時SOCが低い(X1<X0)。その結果、期間P21~P30の間にバッテリ105に充電可能な電力量(ΔX11に対応)は、比較例の場合にバッテリ105に充電可能な電力量(ΔX1に対応)よりも多くすることができる。
【0119】
ECU150は、車両100が上げDRに参加する場合にSOC低下制御を実行してもよい。具体的には、SOC低下制御は、走行終了地点において車両100が上げDRに参加する場合に、走行終了地点において車両100が上げDRに参加しない場合よりも走行終了時SOCが低くなるように、MG135などの電気負荷を制御することであってもよい。
【0120】
これにより、車両100が上げDRに参加する場合に、車両100が上げDRに参加しない場合よりも走行終了地点におけるバッテリ105の空き容量を増やすことができる。これにより、車両100が上げDRに参加する期間中にバッテリ105に余分に充電可能な電力量を増やすことができる。以下、この点を詳しく説明する。
【0121】
図8は、車両100が走行終了地点においてDRに参加する場合の、バッテリ105のSOCの時間的推移を説明するための図である。
【0122】
図8を参照して、線825は、車両100が走行終了地点において上げDRに参加する場合のSOCの変化の一例を示す。線825は、走行終了時SOCがX1(<X0)である点において、比較例(図5)の線820と主に異なる。時刻t20~t30および期間P20~P30は、図6に示されるものと同様である。
【0123】
この例では、期間P22の間に、ΔX15(=ΔX5+ΔX14)に対応する電力量がバッテリ105に充電される。その結果、SOCは、RV3まで上昇する。
【0124】
このように、期間P22の間の充電量(ΔX15に対応)は、ΔX14に対応する電力量だけ比較例の場合の充電量(ΔX5に対応)よりも多い。よって、電力系統PGから車両100に供給される電力を、比較例の場合よりも増加させることができる。すなわち、ポジワット量を増加させることができる。その結果、電力系統PGにおける電力負荷を比較例の場合よりも増大させることができる。
【0125】
SOC低下制御は、走行終了地点において車両100がDRに参加する場合に、走行終了地点において車両100がDRに参加しない場合よりも補機による電力消費が増大するように補機を制御することによってSOC低下制御を実行することであってもよい。DRは、下げDRまたは上げDRのいずれでもよい。
【0126】
ECU150は、例えば、空調装置144を用いてSOC低下制御を実行する場合、ユーザ操作により設定された車室内の温度よりも、車室内の温度が高くまたは低くなるように空調装置144を制御する。ECU150は、例えば、冬においては空調装置144による暖房能力がより高くなるように、または、夏においては空調装置144による冷却能力がより高くなるように空調装置144を制御してもよい。
【0127】
ECU150は、バッテリヒータ142を用いてSOC低下制御を実行する場合、バッテリヒータ142から発生する熱量が増大するようにバッテリヒータ142を制御してもよい。
【0128】
このように補機が制御されると、ユーザが補機の機能を十分に享受しつつ、車両100が走行終了地点に到達するまでにSOCを低下させ易くすることができる。
【0129】
SOC低下制御は、走行終了地点において車両100が下げDRに参加する場合に、走行終了地点において車両100が下げDRに参加しない場合よりも車両100の走行中の回生電力を低減させるようにMG135を制御することであってもよい。具体的には、ECU150は、車両100の制動時に、MG135により発電される回生電力が低減されるようにPCU133を制御してもよい。
【0130】
これにより、車両100の制動時にMG135からPCU133を通じてバッテリ105に供給(充電)される電力が低減される。その結果、SOCが回生発電により不必要に高められる事態が回避される。よって、車両100が走行終了地点に到達するまでにSOCを低下させ易くすることができる。
【0131】
車両100は、バッテリ105のSOCが必要SOC未満に低下しないように、車両100の走行中に電気負荷(例えば、MG135または補機類140)を制御することが好ましい。必要SOCは、車両100が走行終了地点としての目的地まで走行するために必要なSOCである。これにより、車両100が目的地に到着することができないほどSOCが低下する事態を回避することができる。ECU150は、車両100の現在地から目的地までの距離と、車両100の電費とに従って必要SOCを逐次算出する。
【0132】
図9は、車両100の現在地から目的地までの距離と、必要SOCとの関係を示す図である。線905は、車両100の現在地から目的地までの距離Dが減少するほど(車両100が目的地に近づくほど)、必要SOCが低下することを示す。
【0133】
図10は、回生電力の上限および電気負荷による電力消費の上限と、余裕電力量との関係を説明するための図である。
【0134】
図10を参照して、余裕電力量は、バッテリ105の現状のSOCから必要SOCが差し引かれた値に対応する電力量である。余裕電力量が多いほど、車両100が目的地に到達するまでにMG135または補機類140により余分に消費可能な電力量が多い。
【0135】
線910は、回生電力の上限ULRGと、余裕電力量との関係を示す。ECU150は、車両100の制動時に、回生電力の値が上限ULRGを超過しないようにPCU133を制御する。
【0136】
ECU150は、余裕電力量が減少するほど上限ULRGが高くなるように上限ULRGを設定する。これにより、余裕電力量が少ない場合には、バッテリ105が多くの回生電力により充電されることが許容される。その結果、現状のSOCが必要SOC未満に低下することを防止し易くなる。他方、余裕電力量が多い場合には、回生電力が低減され易くなる。その結果、現状のSOCが上昇し難くなるため、走行終了時SOCを低下させ易くすることができる。
【0137】
線915は、電気負荷(例えば、MG135または補機類140)による電気消費の上限ULEEと、余裕電力量との関係を示す。ECU150は、電気負荷による電気消費が上限ULEEを超過しないように電気負荷を制御する。
【0138】
ECU150は、余裕電力量が減少するほど上限ULEEが低くなるように上限ULEEを設定する。これにより、余裕電力量が少ない場合には、電気負荷による電力消費が低減される。その結果、現状のSOCが必要SOC未満に低下し難くなる。他方、余裕電力量が多い場合には、電気負荷による電力消費が増大し易くなる。その結果、現状のSOCが低下し易くなるため、走行終了時SOCを低下させ易くすることができる。
【0139】
上記の説明において、外部放電および外部充電のうち外部充電のみを実行するように構成された車両100においてSOC低下制御が実行されるものとした。これに対して、外部放電および外部充電の両方を実行可能なV2G車両においてSOC低下制御が実行されてもよい。
【0140】
例えば、V2G車両が外部放電を実行することによってDRに参加するようにアグリゲータと契約を行っていない場合、V2G車両がDRに参加するときにその車両のECUが行うことができるのは、外部放電および外部充電のうち外部充電のみである。すなわち、V2G車両は、電力系統PGから受電のみをすることができる。この場合、V2G車両のECUは、SOC低下制御を実行してもよい。
【0141】
上記の説明において、電力設備310は、外部充電専用であるものとした。これに対して、電力設備は、電力リソースからの電力を変換して変換後の電力を電力系統PGに供給するように構成されていてもよい。すなわち、電力設備の電力変換装置は、双方向の電力変換装置であってもよい。V1Gである車両100がこのような電力設備を用いてDRに参加する場合においても、ECU150が行うことができるのは、外部放電および外部充電のうち外部充電のみである。この場合、ECU150は、SOC低下制御を実行してもよい。
【0142】
V2G車両が外部充電専用の電力設備310を用いてDRに参加する場合においても、V2G車両のECUが行うことができるのは、外部放電および外部充電のうち外部充電のみである。この場合、そのECUは、SOC低下制御を実行してもよい。
【0143】
図11は、実施の形態1に従うECU150により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両100が下げDRに参加する場合に実行され、スタートスイッチ184(図2)が押下されると開始される。このフローチャートの説明において、車両100の目的地が設定されているものとする。以下、図6を適宜参照する。
【0144】
図11を参照して、ECU150は、それ自体が搭載される車両がV1G車両またはV2G車両のいずれであるか否かに従って処理を切り替える(ステップS115)。この例では、ECU150は、V1G車両である車両100に搭載されているため、ステップS135に処理を進める。ECU150は、仮にそれ自体がV2G車両に搭載されている場合、ステップS120に処理を進める。
【0145】
次いで、ECU150は、車両100がDRに参加するために用いられる電力設備310(DR参加用設備)が外部充電専用であるか否かを、サーバ600からの信号に従って判定する(ステップS120)。サーバ600は、承認信号S11または承認信号S21に含まれるDR参加用設備の情報と、電力設備情報テーブル626(図4)とに従って、DR参加用設備が外部充電専用であるか否かを判定し、その判定結果を車両100に送信する。
【0146】
DR参加用設備が外部充電専用である場合(ステップS120においてYES)、ECU150は、ステップS135に処理を進める。ステップS135に処理が進む場合は、電力設備310が前述の放電処理および充電処理うち充電処理のみを実行可能な場合に相当する。他方、DR参加用設備が外部充電専用でない場合、すなわち、DR参加用設備が外部充電および外部放電の両方を実行可能である場合(ステップS120においてNO)、ECU150は、ステップS125に処理を進める。
【0147】
次いで、ECU150は、それ自体が搭載される車両のユーザがアグリゲータと前述のV1Gの契約を行っているか否かを判定する(ステップS125)。ECU150は、記憶装置176に格納された契約情報に従って、この判定処理を実行する。V1Gの契約が行われていない場合(ステップS125においてNO)、ECU150は、図11の処理を終了する。他方、V1Gの契約が行われている場合(ステップS125においてYES)、ECU150は、ステップS135に処理を進める。
【0148】
次いで、ECU150は、車両100の走行開始に伴ってSOC低下制御を実行する(ステップS135)。ECU150は、SOCが必要SOC未満に低下しない程度にSOC低下制御を実行する。
【0149】
次いで、ECU150は、車両100が走行終了地点としての目的地に到着したか否かを判定する(ステップS140)。ECU150は、位置検出装置178による検出結果に従って、この判定処理を実行する。車両100が目的地に到着していない場合(ステップS140においてNO)、ECU150は、車両100が目的地に到着するまでSOC低下制御を実行する。他方、車両100が目的地に到着した場合(ステップS140においてYES)、ECU150は、ステップS145に処理を進める。目的地でのSOC(走行終了時SOC)は、X1(<X0)である。
【0150】
次いで、電力設備310の電力ケーブル320のコネクタ325(図3)が車両100のインレット110に接続された状態でDR期間(例えば、期間P22)が到来すると、ECU150は、そのDR期間中に車両100を下げDRに参加させる(ステップS145)。この期間中のバッテリ105の充電量が0である場合は、図6のケースB1に相当する。この充電量が0でない場合は、図6のケースB2に相当する。
【0151】
次いで、ECU150は、SOCがRV2Aに到達したか否かを判定する(ステップS150)。SOCがRV2Aに到達していない場合(ステップS150においてNO)、ECU150は、SOCがRV2Aに到達するまで外部充電を実行することによって車両100を下げDRに参加させる。RV2AがX1に等しい場合(図6のケースB2)、外部充電は実行されない。他方、SOCがRV2に到達すると(ステップS150においてYES)、ECU150は、ステップS155に処理を進める。
【0152】
次いで、ECU150は、DR期間が終了したか否かを、記憶装置176に格納された契約情報に従って判定する(ステップS155)。DR期間が終了していない場合(ステップS155においてNO)、ECU150は、DR期間が終了するまでこの判定処理を実行する。他方、DR期間が終了した場合(ステップS155においてYES)、ECU150は、ステップS160に処理を進める。
【0153】
次いで、ECU150は、車両100の出発予定時刻よりも前の時刻(例えば、時刻t29)までに、差分電力量がバッテリ105に充電されるように外部充電を実行する(ステップS160)。
【0154】
次いで、ECU150は、SOCがRV1に到達したか否かを判定する(ステップS165)。SOCがRV1に到達していない場合(ステップS165においてNO)、ECU150は、SOCがRV1に到達するまで外部充電を継続する。他方、SOCがRV1に到達した場合(ステップS165においてYES)、ECU150は、外部充電を終了するとともにステップS170に処理を進める。
【0155】
次いで、ECU150は、車両100の出発予定時刻(例えば、時刻t30)が到来したか否かを判定する(ステップS170)。出発予定時刻が到来していない場合(ステップS170においてNO)、ECU150は、出発予定時刻が到来するまでこの判定処理を実行する。他方、出発予定時刻が到来した場合(ステップS170においてYES)、ECU150は、図11の処理を終了する。
【0156】
図12は、実施の形態1に従うECU150により実行される処理の他の例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両100が上げDRに参加する場合に実行され、スタートスイッチ184が押下されると開始される。このフローチャートの説明において、車両100の目的地が設定されているものとする。
【0157】
このフローチャートは、ステップS160,S165に対応する処理が省かれている点において、図11のフローチャートとは異なる。一方、ステップS215~S255,S270の処理は、それぞれ、図11のステップS115~S155,S170の処理と同様である。
【0158】
実施の形態では、電力リソースとしてV1G車両である車両100が主に用いられる。これにより、V2G車両が電力リソースとして用いられる場合よりも車両の構成および制御を簡素化しつつ、電力需給バランスの調整に貢献することができる。
【0159】
あるいは、電力リソースとしてV2G車両が用いられる場合、その車両は、外部充電および外部放電のうち外部充電のみが可能である状況に対処しつつDRに適切に参加することができる。具体的には、このような状況にあってもV2G車両においてSOC低下制御が実行されて走行終了時SOCがX1(<X0)に低下する。その結果、V2G車両は、SOC低下制御が実行されない場合よりも、電力需給バランスの調整に貢献することができる。
【0160】
ECU150は、電力需給バランスに関する情報を(例えば、サーバ600から)取得することなくSOC低下制御を実行してもよい。これにより、ECU150による処理を簡素化しつつ、車両100をDRに特化して用いることができる。
[実施の形態1の変形例1]
前述の実施の形態1では、ECU150は、車両100の走行中にSOC低下制御を実行するものとしたが、車両100の走行開始前(停車中)にSOC低下制御を実行してもよい。
【0161】
具体的には、SOC低下制御は、走行終了地点(目的地)において車両100がDRに参加する場合に、車両100の走行開始予定時刻よりも前に補機類140が作動を開始するように補機類140を制御することであってもよい。この変形例1では、走行開始予定時刻は、図6の時刻t20よりも前に車両100が走行を開始する時刻であり、例えばHMI装置182を用いて設定される。以下、ECU150による上記の制御をプレ作動制御とも表す。
【0162】
空調装置144が作動する場合のプレ作動制御を、プレ空調制御とも表す。プレ空調制御は、車両100の走行開始予定時刻に車両100の車室内の温度を適温に調整するために、走行開始予定時刻の所定時間(たとえば、10分)前に空調装置144を作動させる制御である。
【0163】
バッテリヒータ142が作動する場合のプレ作動制御を、プレバッテリヒータ制御とも表す。プレバッテリヒータ制御は、走行開始予定時刻にバッテリ105の温度を適温に調整するために、走行開始予定時刻の所定時間前にバッテリヒータ142を作動させる制御である。
【0164】
プレ作動制御を実行するか否か、走行開始予定時刻、上記の所定時間、適温、およびプレ作動制御の開始時刻は、例えば、HMI装置182を用いてユーザにより設定(予約)される。
【0165】
プレ作動制御が実行される場合、プレ作動制御が実行されない場合よりも補機類140による電力消費を増やすことができる。その結果、ユーザが車両100に乗車すると考えられる走行開始予定時刻において直ちに補機の機能を享受しつつ、バッテリ105のSOCを低下させ易くすることができる。
【0166】
図13は、この変形例1に従うECU150により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両100がDRに参加する場合に実行され、プレ作動制御の開始時刻が到来すると開始される。
【0167】
図13を参照して、ECU150は、バッテリヒータ142または空調装置144などの補機のプレ作動制御を実行する(ステップS302)。
【0168】
次いで、ECU150は、車両100の走行開始予定時刻が到来したか否かを判定する(ステップS304)。走行開始予定時刻が到来していない場合(ステップS304においてNO)、ECU150は、この時刻が到来するまで補機のプレ作動制御を継続する。他方、この時刻が到来した場合(ステップS304においてYES)、ECU150は、図13の処理を終了する。
[実施の形態1の変形例2]
ECU150は、車両100の走行終了予定時刻よりもしきい時間前の事前時刻が到来すると、車両100の走行中のSOC低下制御を開始してもよい。
【0169】
このような構成とすることにより、事前時刻の到来前にはSOC低下制御が実行されない。その結果、事前時刻の到来前に、バッテリ105のSOCが不必要に低下する事態(例えば、車両100が走行することができないほど低下する事態)を回避することができる。
【0170】
上記のしきい時間は、例えば、事前時刻が走行終了予定時刻の直前になるように、HMI装置182を用いてユーザにより設定された値、または、デフォルト値(例えば、10分)として記憶装置176に格納されている。
【0171】
ECU150は、車両100の走行中に車両100から目的地までの距離がしきい距離(例えば、3kmなどの所定距離)に低下すると、SOC低下制御を開始してもよい。
【0172】
このような構成とすることにより、車両100から目的地までの距離がしきい距離に低下する前にはSOC低下制御が実行されない。これにより、バッテリ105のSOCが不必要に低下する事態を回避することができる。
【0173】
図14は、この変形例2に従うECU150により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、車両100が下げDRに参加する場合に実行され、スタートスイッチ184が押下されると開始される。このフローチャートの説明において、車両100の目的地が設定されているものとする。
【0174】
図14を参照して、このフローチャートは、ステップS432の処理が追加されている点において図11のフローチャートと異なる。ステップS415~S425,S435~S470の処理は、図11のステップS115~S125,S135~S170の処理とそれぞれ同様である。
【0175】
ECU150は、事前時刻が到来したか否かを判定する(ステップS432)。ECU150は、記憶装置176に格納された、契約情報としきい時間を示す情報とに従ってこの判定処理を実行する。事前時刻が到来していない場合(ステップS432においてNO)、ECU150は、事前時刻が到来するまでこの判定処理を実行する。他方、事前時刻が到来した場合(ステップS432においてYES)、ECU150は、ステップS435に処理を進め、SOC低下制御を開始する。
【0176】
このフローチャートは、車両100が下げDRに参加する例を示す。これに対して、ECU150は、車両100が上げDRに参加する場合に、事前時刻の到来に応答してSOC低下制御を開始してもよい。
【0177】
[実施の形態2]
前述の実施の形態1およびその変形例1,2では、車両100の目的地は、ユーザにより設定されるものとしたが、ユーザの行動履歴に従ってECU150により予測されてもよい。
【0178】
具体的には、ECU150は、記憶装置176に格納されたユーザの行動履歴に従って、複数の目的地の候補を予測するように構成される。以下、目的地の候補を「候補目的地」とも表す。
【0179】
実施の形態2では、ECU150は、車両100が各候補目的地まで走行するために必要なバッテリ105のSOCに従って、前述の必要SOCを決定する。以下、説明を容易にするために、候補目的地の数が2である場合を説明する。
【0180】
実施の形態2に従う車両100のハードウェア構成および制御手順は、特に断らない限り、実施の形態1に従う車両100のハードウェア構成および制御手順とそれぞれ同様である。
【0181】
図15は、候補目的地の数が2である場合に必要SOCがどのように決定されるかを説明するための図である。
【0182】
図15を参照して、縦軸はバッテリ105のSOCを表し、横軸は時間を表す。この例では、地点1および地点2が候補目的地である。ECU150は、地点1が目的地である確率が確率PR1であり、地点2が目的地である確率が確率PR2であると予測する(A+B=100[%])。確率PR1,PR2は、車両100の走行中に時間とともに変化し得る。車両100から地点2までの距離は、車両100から地点1までの距離よりも長い。すなわち、地点2は、地点1よりも車両100から遠い。
【0183】
棒グラフ950a,950b,950cは、それぞれ、時刻ta,tb,tcにおけるSOCを表し、車両100が走行するほどSOCが低下することを示す。線980,970は、それぞれ、車両100が地点1,2まで走行するために必要なSOCの時間的な推移を示す。線985は、この実施の形態2におけるバッテリ105の必要SOCを示す。
【0184】
例えば、時刻ta,tb,tcの各々において、バッテリ105のSOCは、Xにより表される。車両100が2つの候補目的地のうちの地点1まで走行するために必要なSOC(以下、第1必要SOCとも表す)は、X1である。車両100の目的地が地点1である場合、前述の余裕電力量は、Y1に対応する電力量である。この場合、車両100が地点1に到着するまでに、ECU150は、この余裕電力量が電気負荷により消費されるようにSOC低下制御を実行することができる。
【0185】
車両100が2つの候補目的地のうちの地点2まで走行するために必要なSOC(以下、第2必要SOCとも表す)は、X2である。車両100の目的地が地点2である場合、余裕電力量は、Y2に対応する電力量である。この場合、車両100が地点2に到着するまでに、ECU150は、この余裕電力量が電気負荷により消費されるようにSOC低下制御を実行することができる。
【0186】
このように地点1,2の両方が候補目的地である場合、ECU150は、第1必要SOC(線980)および第2必要SOC(線970)に従って必要SOC(線985)を決定する。例えば、ECU150は、車両100の走行中に、第1必要SOCと確率PR1との乗算値と、第2必要SOCと確率PR2との乗算値とを合計し、その合計値に必要SOCを決定してもよい。この場合、必要SOCは、第1必要SOCよりも高く、かつ、第2必要SOC未満の範囲内である。このように必要SOCが決定されると、第1必要SOCおよび第2必要SOCの両方が必要SOCの決定において反映される。その結果、車両100が地点2まで走行する場合に、バッテリ105のSOCが過度に低下する事態を回避することができる。
【0187】
ECU150は、第2必要SOCに等しくなるように必要SOCを決定してもよい。これにより、車両100が地点2に到着できないほどバッテリ105のSOCが低下する事態を回避することができる。
【0188】
車両100のユーザの行動履歴は、車両100の通信装置180を通じてサーバ600に逐次送信されてサーバ600の記憶装置620に格納されてもよい。ECU150は、複数の候補目的地を予測する場合、サーバ600からユーザの行動履歴を取得し、その取得結果に従って上記のように必要SOCを算出してもよい。
【0189】
ECU150は、ユーザの行動履歴に従って走行終了予定時刻を決定してもよい。ECU150は、例えば、車両100が走行を終了する頻度が他の時間帯よりも高い時間帯(例えば、ユーザが帰宅する頻度が高い時間帯)における時刻を、走行終了予定時刻に決定してもよい。ECU150は、通信装置180を通じて車両100の走行経路上の渋滞情報を外部サーバから取得し、その取得結果を用いて走行終了予定時刻を決定してもよい。
[その他の変形例]
車両100は、内燃機関をさらに搭載したハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。
【0190】
DR期間は、期間P22(図6)に限定されず、時刻t20から、時刻t30よりも前の時刻までの期間のうちいずれの期間であってもよい。同様に、差分電力量がバッテリ105に充電される期間は、下げDRの期間よりも後であってかつ時刻t30よりも前であれば、期間P23に限定されない。
【0191】
ECU150は、SOC低下制御を実行している間に仮にSOCが必要SOC未満に低下すると、SOC低下制御を一時的に中断してもよい。その後、例えば回生発電によりバッテリ105が充電されてSOCが上昇した場合、ECU150は、SOC低下制御を開始してもよい。
【0192】
HMI装置182は、ユーザがSOC低下制御を希望するか否かをユーザに問い合わせてもよい。ユーザがSOC低下制御を希望することを示すユーザ操作がHMI装置182を用いて行われた場合、ECU150は、前述のようにSOC低下制御を実行する。他方、このユーザ操作が行われなかった場合、ECU150は、SOC低下制御を実行しないように構成されていてもよい。これにより、走行終了地点において車両100がDRに参加しない場合(例えば、この地点において電力設備310が設けられていない場合)には、SOCが低下することを回避することができる。
【0193】
サーバ600は、DR期間中の外部充電を遠隔で制御してもよい。例えば、コネクタ325(図3)がインレット110に接続された状態で車両100のDR期間が到来すると、サーバ600は、外部充電が実行されるように電力設備310を制御してもよい。この場合、サーバ600は、リソース管理情報テーブル625(図6)に従って外部充電のスケジュールを設定する。
【0194】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0195】
10 電力管理システム、100 車両、105 バッテリ、110 インレット、140 補機類、142 バッテリヒータ、144 空調装置、150 ECU、310 電力設備、135 MG。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15