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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B60H1/00 103S
B60H1/00 101Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022088232
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2023176121
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大尭
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-014183(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158771(WO,A1)
【文献】特開2021-054126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動運転を行うための自動運転システムと、該自動運転システムに運転操作を依存する度合いである自動運転度に応じて前記車両の窓の曇りを防止する防曇機能を発揮する空調手段とを搭載した車両の制御装置において、
車室内の空調状態の変更要求時に乗員が操作する空調操作部と、
前記乗員に向けて通知を行う通知手段と、
前記空調手段が前記自動運転度に応じた防曇性能で作動している状態において、前記乗員が前記空調手段の防曇性能が変化する可能性のある前記空調操作部の操作を行ったことに起因する所定条件が成立した場合に、前記通知手段から当該乗員に向けて前記空調操作部の操作に起因する通知を行うための通知情報を作成する通知情報作成部と、を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作が、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある操作であることであり、
前記通知情報は、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある前記空調操作部の操作を行った旨の情報を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作および車室内環境に基づいた窓の曇り推定動作によって窓に曇りが発生すると推定されたことであり、
前記通知情報は、前記推定動作によって窓に曇りが発生すると推定された旨の情報を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の制御装置において、
前記通知情報は、所定時間経過後に前記自動運転度が低下することを予告する旨の情報、または、所定時間経過後に前記自動運転が終了することを予告する旨の情報を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の制御装置において、
前記所定時間経過までの間に、前記空調操作部の操作に対する解除操作を前記乗員が行った場合には、前記通知手段からの前記通知を解除すると共に、前記自動運転システムによる現在の自動運転度での自動運転を継続する一方、
前記所定時間経過しても、前記空調操作部の操作に対する解除操作が行われなかった場合には、前記空調操作部の操作に従った空調動作に切り替えると共に、前記自動運転システムによって前記自動運転度の低下動作または前記自動運転の終了動作が行われることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作が、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある操作であることであり、
前記通知情報は、前記空調操作部の操作を受け付けない旨の情報を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に係る。特に、本発明は、車両の自動運転を行うための自動運転システムと、該自動運転システムに運転操作を依存する度合いである自動運転度(一般的には自動運転レベルと呼ばれている)に応じて窓の曇りを防止する防曇機能を発揮する空調手段とを搭載した車両の制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗員の要求や車両の状態に応じて自動運転の自動運転度を変更可能とする自動運転システムを搭載した車両の開発が進められている。また、特許文献1には、自動運転度に応じて空調ユニットの防曇性能(防曇機能のレベル)を自動的に変更する技術が開示されている。具体的には、自動運転度が高いほど(自動運転システムに運転操作を依存する度合いが高いほど、言い換えると、運転操作に対する運転者の介入度合いが低いほど)防曇性能を低くするように空調ユニットを制御したり、自動運転度が低くなることの予兆を検知した際には自動運転度が低くなる前に防曇性能を高くするように空調ユニットを制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6669273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動運転度に応じて空調ユニットの防曇性能を制御している状態から、乗員がエアコン操作パネルを操作して空調ユニットの設定を変更した際、その操作が空調ユニットの防曇性能を低下させてしまう可能性のある操作である場合がある。例えば、空調ユニットの吹出口モードがデフロスタモード(フロントガラスに向かって空気を吹き出すモード)であった状態から、乗員がエアコン操作パネルを操作してフットモード(乗員の足元部に向かって空気を吹き出すモード)に変更した場合等である。
【0005】
この場合、その乗員の操作に従って空調ユニットの運転状態を変更してしまうと、空調ユニットによる防曇効果を維持することが難しくなる可能性がある。そして、この場合、乗員は自身の操作が空調ユニットの防曇性能を低下させてしまう可能性のある操作であったことを認識していない場合があり、乗員が意図しない防曇性能の低下を招いてしまうことになる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗員の操作が空調ユニット(空調手段)の防曇性能に影響を及ぼす可能性のある状況において、そのことを乗員に認識させ、防曇性能に関して乗員の意思に従った制御が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車両の自動運転を行うための自動運転システムと、該自動運転システムに運転操作を依存する度合いである自動運転度に応じて前記車両の窓の曇りを防止する防曇機能を発揮する空調手段とを搭載した車両の制御装置を前提とする。そして、この車両の制御装置は、車室内の空調状態の変更要求時に乗員が操作する空調操作部と、前記乗員に向けて通知を行う通知手段と、前記空調手段が前記自動運転度に応じた防曇性能で作動している状態において、前記乗員が前記空調手段の防曇性能が変化する可能性のある前記空調操作部の操作を行ったことに起因する所定条件が成立した場合に、前記通知手段から当該乗員に向けて前記空調操作部の操作に起因する通知を行うための通知情報を作成する通知情報作成部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この特定事項により、車両の自動運転が行われている状況で、空調手段が自動運転度に応じた防曇性能で作動している状態において、乗員が空調操作部の操作(空調手段の防曇性能が変化する可能性のある空調操作部の操作)を行った際、その操作を行ったことに起因する所定条件が成立した場合には、通知情報作成部により、この空調操作部の操作に起因する通知を乗員に向けて行うための通知情報が作成され、通知手段から乗員に向けて通知(空調操作部の操作に起因する通知)が行われることになる。
【0009】
これにより、通知手段からの通知を受けた乗員は、自身が行った空調操作部の操作が、空調手段の防曇性能に影響を及ぼす可能性があること、または、車両の自動運転に影響を及ぼす可能性があること(自動運転システムが、防曇性能の変化に応じて自動運転度を変更するものである場合)を認識することができる。例えば、乗員が、自身が行った空調操作部の操作に起因して空調手段による防曇効果が維持できなくなる可能性があることを認識した場合には、その操作前の状態に戻すことで空調手段の防曇性能を維持させるか(窓の曇り防止を優先させるか)、自身が行った空調操作部の操作に従った空調動作(空調運転)を行わせるか(自身が要求している空調の快適性を優先させるか)を自らの意思によって選択することができ、乗員が意図しない空調手段の防曇性能の低下を招いてしまうことがなくなる。
【0010】
具体的に、前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作が、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある操作であることであり、前記通知情報は、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある前記空調操作部の操作を行った旨の情報を含む。
【0011】
これによれば、乗員が行った空調操作部の操作が、空調手段の防曇性能を低下させる可能性のあるものであった場合には、当該乗員は、そのことを通知手段からの通知を受けることで認識することになる。これにより、乗員は、操作前の状態(空調手段が自動運転度に応じた防曇性能で作動している状態)を維持したい場合には、空調操作部の操作に対する解除操作(空調設定を元の状態に戻す操作)を行う必要があることを認識する。つまり、空調操作部の操作に対する解除操作を行うことで空調操作部の操作前の状態を維持させることができる。一方、自身が行った空調操作部の操作を有効にしたい(空調操作部の操作に従った空調運転を行いたい)場合には、空調操作部の操作に対する解除操作を行わないことで、自身が行った空調操作部の操作を有効にした空調運転に移行させることができる。このように、空調操作部の操作が空調手段の防曇性能を低下させる可能性のある操作であることを乗員に向けて通知することにより、乗員の意思を反映した制御を行うことができる。
【0012】
また、前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作および車室内環境に基づいた窓の曇り推定動作によって窓に曇りが発生すると推定されたことであり、前記通知情報は、前記推定動作によって窓に曇りが発生すると推定された旨の情報を含むものであってもよい。
【0013】
この場合、曇り推定動作によって窓に曇りが発生すると推定された場合には、乗員は、そのことを通知手段からの通知を受けることで、窓に曇りが発生する状況にあることを認識することになる。従って、この場合にも、乗員は、操作前の状態を維持したい場合には、空調操作部の操作に対する解除操作を行う必要があることを認識する。一方、自身が行った空調操作部の操作を有効にしたい場合には、空調操作部の操作に対する解除操作を行わないことで、自身が行った空調操作部の操作を有効にした空調運転に移行させることができる。このように、本解決手段によっても、窓に曇りが発生すると推定されたことを乗員に向けて通知することにより、乗員の意思を反映した制御を行うことができる。
【0014】
また、前記通知情報としては、所定時間経過後に前記自動運転度が低下することを予告する旨の情報、または、所定時間経過後に前記自動運転が終了することを予告する旨の情報を含むようにしてもよい。
【0015】
乗員が空調操作部の操作を行ったことに起因して空調手段の防曇性能が低下する可能性がある場合または窓に曇りが発生すると推定された場合には、現在の自動運転度による自動運転を維持するべきではない状況を招くことがある。このため、本解決手段では、乗員が行った空調操作部の操作が空調手段の防曇性能を低下させる可能性のある操作である場合や、乗員が行った空調操作部の操作に起因して窓に曇りが発生すると推定された場合には、所定時間経過後に自動運転度が低下することを予告する旨の通知、または、所定時間経過後に自動運転が終了することを予告する旨の通知を行う。これにより、乗員は、空調操作部の操作に対する解除操作を行うことで現在の自動運転度による自動運転を維持させるのか、空調操作部の操作に対する解除操作を行わないことで、現在の自動運転度による自動運転が行われない(自動運転度が低下する、または、自動運転が終了する)ことになったとしても自身が行った空調操作部の操作を有効にした空調運転に移行させるのかを自らの意思によって選択することができる。これによっても、乗員に向けての通知を行うことにより、乗員の意思を反映した制御を行うことができる。
【0016】
具体的に、前記所定時間経過までの間に、前記空調操作部の操作に対する解除操作を前記乗員が行った場合には、前記通知手段からの前記通知を解除すると共に、前記自動運転システムによる現在の自動運転度での自動運転を継続する一方、前記所定時間経過しても、前記空調操作部の操作に対する解除操作が行われなかった場合には、前記空調操作部の操作に従った空調動作に切り替えると共に、前記自動運転システムによって前記自動運転度の低下動作または前記自動運転の終了動作が行われることになる。
【0017】
ここでいう自動運転度の低下動作または自動運転の終了動作の例としては、前記車両の運転操作が前記自動運転システムを主体とした自動運転度から前記乗員を主体とした自動運転度に移行する動作が挙げられる。
【0018】
前記所定時間経過までの間に、空調操作部の操作に対する解除操作を乗員が行った場合、通知手段からの通知が解除されることにより、乗員は、現在の自動運転度による自動運転が維持されることを認識することになる。一方、所定時間経過しても、空調操作部の操作に対する解除操作が行われなかった場合には、空調操作部の操作に従った空調手段の空調動作に切り替えると共に、自動運転システムによって自動運転度の低下動作または自動運転の終了動作が行われる。つまり、自動運転度の低下動作または自動運転の終了動作が行われるものの、空調操作部の操作に従った空調動作が行われることにより、乗員自身が要求した空調の快適性を得ることができる。
【0019】
また、前記所定条件は、前記乗員が行った前記空調操作部の操作が、前記空調手段の前記防曇性能を低下させる可能性のある操作であることであり、前記通知情報は、前記空調操作部の操作を受け付けない旨の情報を含むものであってもよい。
【0020】
この場合、通知手段からの通知を受けた乗員は、自身が行った空調操作部の操作が無効とされ、現在の車両の自動運転および空調手段の防曇性能(自動運転度に応じた防曇性能)が維持されることを認識することになる。つまり、自身が行った空調操作部の操作が、自動運転の自動運転度や空調手段の防曇性能に影響を及ぼす可能性があるために、この影響を避けるべく空調操作部の操作が無効にされたことを認識することになる。このため、通知されることなく空調操作部の操作が無効にされてしまって乗員が空調手段の故障を疑う状況を招いてしまうといったことがなくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、自動運転システムに運転操作を依存する度合いである自動運転度に応じた防曇性能で空調手段が作動している状態において、乗員が空調手段の防曇性能が変化する可能性のある空調操作部の操作を行ったことに起因する所定条件が成立した場合に、その操作に起因する通知を乗員に向けて行うようにしている。このため、乗員の操作が空調手段の防曇性能に影響を及ぼす可能性がある状況において、そのことを乗員に認識させ、防曇性能に関して乗員の意思に従った制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る車両に搭載された自動運転システムの概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る車両に搭載された空調ユニットの概略構成を示す図である。
図3】実施形態における空調ユニットの制御系の概略構成を示すブロック図である。
図4】実施形態における空調ユニットのエアコン操作パネルの一例を示す図である。
図5】第1実施形態における防曇制御ECUに関連する制御系の機能ブロック図である。
図6】エアコン操作パネルの操作とその操作に従って空調ユニットを制御した場合の防曇性能との関係を示す図である。
図7】第1実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャート図である。
図8】第2実施形態における防曇制御ECUに関連する制御系の機能ブロック図である。
図9】第2実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャート図である。
図10】第3実施形態における防曇制御ECUに関連する制御系の機能ブロック図である。
図11】第3実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャート図である。
図12】参考例におけるLV3の自動運転移行時における空調ユニットの制御の処理手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動運転レベル(本発明でいう自動運転度)がレベル0~レベル5の間で切り替え可能とされた自動運転システムを搭載した車両に本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。
【0025】
-自動運転システム-
本実施形態に係る車両に搭載された自動運転システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る車両に搭載された自動運転システム100の概略構成を示す図である。この図1に示すように、本実施形態に係る自動運転システム100は、車両の自動運転の制御の中枢を担う自動運転ECU110を備えている。この自動運転ECU110には、周辺状況センサ121、車両状態センサ122、運転操作センサ123、外部通信装置130、GPS受信機140、地図データベース150、ナビゲーション装置160、アクチュエータ170、補助機器180、および、HMI(Human Machine Interface)190が接続されている。
【0026】
以下では、自動運転システム100を搭載した車両を、他の車両と区別する必要がある場合には「自車両」と呼ぶこととする。また、自車両は、乗員の運転操作が不要な自動運転と、乗員(運転者となるべき乗員)の運転操作によって走行が可能となるマニュアル運転との両方が可能な車両である。自動運転のレベル(自動運転レベルであって、本発明でいう自動運転度)の切り替え動作については後述する。
【0027】
周辺状況センサ121は、自車両の周辺の状況に関する情報を取得するセンサである。この自車両の周辺の状況に関する情報には、自車両の前方の道路、自車両の周辺の障害物(他車両、歩行者、建物、縁石等)、天候、明るさなどに関する情報が含まれる。
【0028】
周辺状況センサ121は、例えば、カメラ、ライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection And Ranging)、ミリ波レーダセンサ等を備える。周辺状況センサ121としては、必ずしも、これらを全て備える必要はなく、また、これら以外のものを備えていてもよく、自動運転の実施に必要な周辺状況を検知できるセンサであればよい。
【0029】
前記カメラは、車室内から自車両の周辺を撮影することにより、撮影された画像を処理することによって、自車両の周辺の障害物の情報、自車両の周辺の交通情報(道路形状、車線数、道路標識、白線の有無、信号機の状態等)、自車両の車線に対する位置情報(車線の中心ラインに対する自車両の相対的な方向、横方向のずれ量等)、自車両の周辺の気象情報(雨、雪、霧等の情報)を取得し、それらの情報を自動運転ECU110に送信する。尚、カメラは、自車両の前方のみを撮影するものであってもよいし、複数台のカメラによって自車両の全周囲を撮影するものであってもよい。
【0030】
ライダは、例えば、自車両の全周囲に向けてレーザ光を順次照射し、その反射光から道路および障害物までの距離を計測する。ライダは、計測結果に基づいて車両の全周囲における道路および障害物の三次元画像を生成し、その三次元画像の情報を自動運転ECU110に送信する。
【0031】
ミリ波レーダセンサは、ライダよりも遠距離に亘って自車両の周辺の障害物を検知するセンサであって、自車両の外周位置(例えば、フロントバンパ、リアバンパ等)に設けられる。ミリ波レーダセンサは、ミリ波帯の電波を送信し、その反射波を受信することによって、送信波と受信波とに基づいて、自車両の周辺に存在する障害物との相対位置(距離、方向)、および、障害物との相対速度を測定する。ミリ波レーダセンサは、測定結果である障害物情報を自動運転ECU110に送信する。
【0032】
車両状態センサ122は、例えば、自車両の走行速度を検知する車速センサ、自車両の前後方向の加速度を検知する前後加速度センサ、自車両の横方向の加速度を検知する横加速度センサ、および、自車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサなどである。車両状態センサ122は、検知結果の情報を自動運転ECU110に送信する。
【0033】
運転操作センサ123は、アクセルペダルの操作量を検知するアクセル操作量センサ、ブレーキペダルの操作量を検知するブレーキ操作量センサ、ブレーキペダルの操作の有無を検知するブレーキスイッチ、操舵角を検知する操舵角センサ、操舵トルクを検知する操舵トルクセンサ、および、変速機のシフトポジションを検知するシフトポジションセンサ等である。運転操作センサ123は、検知結果の情報を自動運転ECU110に送信する。
【0034】
外部通信装置130は、自車両と、自車両の外部との間での通信を行う装置であって、自車両の周辺環境情報を取得する。例えば、外部通信装置130は、情報センタとの間の通信によって、自車両の走行環境に関する交通情報等を取得する。また、外部通信装置130は、道路に設置された路側機との間での通信である路車間通信、あるいは、他車両に設けられた外部通信装置130との間での通信である車車間通信によって交通情報等を取得する。外部通信装置130は、取得した周辺環境情報を自動運転ECU110に送信する。
【0035】
GPS受信機140は、GPS衛星からの信号を受信することにより、自車両の位置を計測して、計測結果である自車両位置情報を自動運転ECU110に送信する。
【0036】
地図データベース150は、地図情報を備えたデータベースであって、自車両に搭載されたハードディスク等の記憶デバイスに記憶される。地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路の形状の情報(例えば、カーブ/直線部の種別、カーブの曲率半径等)、交差点および分岐点の位置情報、道路種別情報(自動車専用道路、高速道路、一般道等を区別することができる情報)、車線数を表す情報が含まれる。
【0037】
ナビゲーション装置160は、乗員によって設定された目的地まで自車両を誘導する。ナビゲーション装置160は、GPS受信機140によって検知された自車両の現在位置情報と、地図データベース150の地図情報とに基づいて、目的地までの目標ルートを演算し、その目標ルートに関する情報をナビゲーション情報として自動運転ECU110に送信する。また、ナビゲーション装置160は、任意の地点を登録する地点登録機能を備えている。尚、ナビゲーション装置160は、自動運転が実施されない場合(運転者となるべき乗員の運転操作によって車両を走行させる場合)には、運転者に対して目的地までの案内を行う。
【0038】
アクチュエータ170は、駆動力アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、および、ステアリングアクチュエータである。例えば、自車両の走行駆動源がエンジンであれば、駆動力アクチュエータは、エンジン、および、エンジンの運転状態を変更するためのアクチュエータ、例えば、スロットル弁アクチュエータである。また、自車両が電気自動車であれば、駆動力アクチュエータは、走行用モータ、および、走行用モータへの通電を制御するモータ駆動回路である。
【0039】
ブレーキアクチュエータは、例えば、自車両のブレーキ装置が油圧式であれば、油圧摩擦制動機構、および、油圧摩擦制動機構のホイールシリンダの油圧を制御する油圧制御回路である。
【0040】
ステアリングアクチュエータは、自車両が電動パワーステアリング装置を備えている場合には、ステアリング機構に組み込まれた操舵用モータ、および、操舵用モータへの通電を制御するモータ駆動回路である。
【0041】
自動運転ECU110は、駆動力アクチュエータに目標駆動力に応じた駆動力制御信号を送信することによって目標駆動力を発生させることができる。また、自動運転ECU110は、ブレーキアクチュエータに目標制動力に応じた制動力制御信号を送信することによって目標制動力を発生させることができる。また、自動運転ECU110は、ステアリングアクチュエータに目標操舵トルク(あるいは目標操舵角)に応じた操舵制御信号を送信することによって目標操舵トルク(あるいは実舵角を目標操舵角に追従させる操舵トルク)を発生させることができる。
【0042】
従って、自動運転ECU110は、アクチュエータ170に制御信号を送信することによって、運転者が運転操作(ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作)を行わなくても、自車両の走行を制御することが可能となっている。
【0043】
補助機器180は、アクチュエータ170に含まれない機器を総称したもので、例えば、ウインカ、ヘッドランプ、ワイパ等である。自動運転ECU110は、補助機器180に作動信号を出力して、補助機器180の作動を制御することが可能となっている。
【0044】
HMI(通知手段)190は、乗員と自動運転システム100との間で情報の入出力を行うためのインタフェースであって、例えば、文字または画像情報を表示するディスプレイ、音を発生させるスピーカおよびブザー、乗員が入力操作を行うための操作ボタン、タッチパネル、マイク等から構成される。
【0045】
自動運転ECU110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random-Access Memory)、および、入出力ポート等を備えている。自動運転ECU110は、自動運転を実施する場合には、周辺状況センサ121から提供された情報に基づいて自車両の周囲を監視しつつ、自車両が目標ルートに沿って安全に走行するようにアクチュエータ170の作動を制御する。
【0046】
本実施形態の自動運転システム100においては、6段階の自動運転レベルが決められており、各自動運転レベルに応じた運転モードにて自車両の走行が制御される。この自動運転レベルの定義は、日本国土交通省自動車局による「自動運転車の安全技術ガイドライン」によって規定されている。本実施形態の自動運転システム100は、このガイドラインに沿った自動運転レベルでの車両走行を制御する。
【0047】
自動運転レベル0(以下、LV0と呼ぶ場合もある)では、運転の自動化が全く行われないマニュアル運転モードに設定される。従って、運転者は、自身の安全監視下において、アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、ステアリング操作などの全ての運転操作を行う必要がある。
【0048】
自動運転レベル1(以下、LV1と呼ぶ場合もある)では、自動運転システム1が、縦方向または横方向の何れかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。「縦方向の車両運動制御」とは、車両の加減速制御(車速制御)を意味する。「横方向の車両運動制御」とは、車両の操舵制御を意味する。従って、運転者は、ペダル操作、あるいは、ステアリング操作の何れか一方を行う必要がある。このLV1においては、安全運転に係る監視は、運転者に要求される。また、自動運転システム100の作動継続が困難となる場合の対応主体は運転者とされる。
【0049】
自動運転レベル2(以下、LV2と呼ぶ場合もある)では、自動運転システム100が、縦方向および横方向の両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する。従って、運転者(運転席に座る乗員)は、ペダル操作、および、ステアリング操作の両方を行う必要はない。安全運転に係る監視については、このLV2においてもLV1と同様に運転者に要求される。また、自動運転システム100の作動継続が困難となる場合の対応主体についても運転者とされる。
【0050】
LV2以下では、自動運転を担う主体は運転者であるが、以下に説明する自動運転レベル3以上においては、自動運転を担う主体は自動運転システム100側に移る。
【0051】
自動運転レベル3(以下、LV3と呼ぶ場合もある)では、自動運転システム100が、全ての動的運動タスクを限定領域において実行する。従って、運転者(運転席に座る乗員)は、全ての運転操作を行う必要はない。また、このLV3においては、安全運転に係る監視は、自動運転システム100に要求される。但し、自動運転システム100の作動継続が困難となる場合の対応主体については運転者とされる。
【0052】
自動運転レベル4(以下、LV4と呼ぶ場合もある)では、自動運転システム100が、全ての動的運動タスクおよび作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行する。また、このLV4においては、安全運転に係る監視は、自動運転システム100に要求される。
【0053】
自動運転レベル5(以下、LV5と呼ぶ場合もある)では、自動運転システム100が、全ての動的運動タスクおよび作動継続が困難な場合への応答を無制限に(即ち、限定領域内ではない)実行する。
【0054】
LV3以上における限定領域は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)とも呼ばれ、自動運転システム100が正常に作動する前提となる設計上の走行環境に係る特有の条件を表す。ODDに含まれる走行環境条件としては、例えば、次のものが挙げられる。
【0055】
・道路条件(高速道路、一般道、車線数、車線の有無、自動運転車の専用道路等)
・地理条件(都市部、山間部の設定等)
・環境条件(天候、夜間制限等)
・その他条件(速度制限、信号情報等のインフラ協調の要否、特定された経路のみに限定すること、保安要員の乗車要否等)
従って、LV3あるいはLV4で自車両の走行が制御されている状況において、ODDの条件が途中で成立しなくなると、自動運転レベルをLV2以下にまで下げる必要が生じる。この場合、運転の主体が自動運転システム100から運転者に移される。従って、運転者は、自動運転システム100から運転操作を引き継ぐ必要が生じる。
【0056】
-空調ユニット-
次に、車両に搭載された空調ユニット(空調手段)について説明する。図2は、本実施形態に係る車両に搭載された空調ユニット200の概略構成を示す図である。この図2に示すように、空調ユニット200は、車室内に空調空気を導くための空気通路を形成する空調ダクト210、この空調ダクト210内において空気流を発生させる遠心式送風機(空調用送風機)220、空調ダクト210内を流れる空気を冷却するための冷媒循環回路230、および、空調ダクト210内を流れる空気を加熱するための冷却水回路240等を備えている。
【0057】
空調ダクト210の最も上流側(風上側)は、吸込口切替箱(内外気切替箱)を構成する部分であって、車室内空気(内気)を取り入れる内気吸込口211、および、車室外空気(外気)を取り入れる外気吸込口212を有している。
【0058】
更に、内気吸込口211および外気吸込口212の内側には、内外気切替ドア213が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ドア213は、サーボモータ等のアクチュエータ213a(図3を参照)により駆動されて、吸込口モードを内気循環モードと外気導入モードとの間で切り替える。
【0059】
また、空調ダクト210の最も下流側(風下側)は、吹出口切替箱を構成する部分であって、デフロスタ(DEF)開口部214、フェイス(FACE)開口部215、および、フット(FOOT)開口部216を有している。
【0060】
前記DEF開口部214は、車両のフロントガラスFWの内面に向かって空気(空調空気)を吹き出す。また、FACE開口部215は、乗員の頭部および胸部に向かって空調空気を吹き出す。更に、FOOT開口部216は、乗員の足元部に向かって空調空気を吹き出す。
【0061】
そして、各開口部214,215,216の内側には、吹出口切替ドア217,218が回動自在に取り付けられている。これら吹出口切替ドア217,218は、サーボモータ等のアクチュエータ217a,218a(図3を参照)によりそれぞれ駆動されて、吹出口モードを、フェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モードおよびデフロスタ(DEF)モードの何れかに切り替える。フェイスモードではFACE開口部215のみから空調空気が吹き出される。バイレベルモードではFACE開口部215およびFOOT開口部216それぞれから空調空気が吹き出される。フットモードではFOOT開口部216のみから空調空気が吹き出される。フットデフモードではFOOT開口部216およびDEF開口部214それぞれから空調空気が吹き出される。デフロスタモードではDEF開口部214のみから空調空気が吹き出される。
【0062】
前記遠心式送風機220は、空調ダクト210と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容されたブロア221、および、このブロア221を回転駆動するブロアモータ222を有している。
【0063】
そして、ブロアモータ222は、ブロア駆動回路222a(図3を参照)を介して印加されるブロア端子電圧に基づいて、ブロア風量(ブロア221の回転速度)が制御される。
【0064】
冷媒循環回路230は、圧縮機231、この圧縮機231の吐出口より吐出された冷媒が流入する凝縮器(コンデンサ)232、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すレシーバ233、液冷媒を減圧膨張させるエキスパンションバルブ234、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる蒸発器(エバポレータ)235、および、これらを環状に接続する冷媒配管236等から構成されている。
【0065】
前記蒸発器235は、空気通路の長手方向の一部分においてその通路内の全体に亘って配設されている。
【0066】
圧縮機231は、吸入した冷媒を圧縮して吐出するもので、電動モータ237によって駆動される電動圧縮機として構成されている。電動モータ237は、図示しないインバータから出力される交流電圧によって、その作動(回転速度)が制御される交流モータである。この電動モータ237の作動に伴う動力が圧縮機231に伝達されることにより、冷媒循環回路230を冷媒が循環し、蒸発器235における冷媒の蒸発気化に伴って空気の冷却および除湿が行われる。また、電動モータ237が停止すると圧縮機231も停止し、冷媒循環回路230での冷媒の循環も行われなくなる。
【0067】
また、凝縮器232は、圧縮機231で圧縮された冷媒を凝縮液化させる。具体的に、この凝縮器232は、冷却ファン238により送風される外気および走行風(車両走行時)と冷媒との間で熱交換を行うことで冷媒を凝縮液化させる。
【0068】
前記冷却水回路240は、ウォータポンプ241によって、エンジンEGのウォータジャケット内で暖められた冷却水を循環させる回路であって、ヒータコア242を有している。
【0069】
このヒータコア242は、内部にエンジン冷却水が流れ、このエンジン冷却水を暖房用熱源として空気を加熱する。尚、この冷却水回路240には、前記ヒータコア242の他に、エンジン冷却水の熱を大気に放出するためのラジエータや、冷却水の循環経路を切り替えるためのサーモスタット(何れも図示省略)等が備えられている。これらの構成については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0070】
前記ヒータコア242は、蒸発器235よりも下流側の空気通路の一部分(例えば空気通路の長手方向の一部分においてその通路の下側半分)に配設されている。
【0071】
また、ヒータコア242の上流側には、エアミックスドア243が回動自在に取り付けられている。このエアミックスドア243は、サーボモータ等のアクチュエータ243a(図3を参照)によって駆動されて、ヒータコア242に対し空気を全て迂回させるMAX・COOL位置から、ヒータコア242に空気を全て通すMAX・HOT位置までの間でその停止位置によって、ヒータコア242を通過する空気量とヒータコア242をバイパス(迂回)する空気量との割合を変更して、車室内へ吹き出す空気の温度を調整する。
【0072】
図3に示すように、エアコンECU250は、車室内の空調要求に応じて前記空調ユニット200の圧縮機231(電動モータ237)や各アクチュエータ213a,217a,218a、243a等を制御するものである。このエアコンECU250も、前記自動運転ECU110と同様に、CPU等のプロセッサ、制御プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、および、入出力ポート等を備えている。
【0073】
図3に示すように、エアコンECU250には、車室内前面(インストルメントパネル)に設けられたエアコン操作パネル(空調操作部)260上の各種スイッチからのスイッチ信号、および各種センサからのセンサ信号が入力される。
【0074】
図4は、エアコン操作パネル260の一例を示す図である。この図4に示すように、エアコン操作パネル260は、エアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)261、風量調整ダイヤル262、温度調整ダイヤル263、吹出口選択スイッチ264および導入切替スイッチ265、オートスイッチ266を備えている。
【0075】
エアコンスイッチ261は、圧縮機231のオン/オフを切り替える操作を行うためのスイッチであり、ここでは風量調整ダイヤル262の内側に配置された「A/C」の表示がなされたスイッチである。風量調整ダイヤル262は、空調ユニット200の吹出風量を調整する操作を行うためのダイヤルである。温度調整ダイヤル263は、空調ユニット200の温度設定(空調風の温度設定)を調整するためのダイヤルである。導入切替スイッチ265は、空調ユニット200を外気導入と内気循環とで切り替える操作を行うためのスイッチであり、内気循環モードスイッチ265aおよび外気導入モードスイッチ265bを備えている。
【0076】
吹出口選択スイッチ264は、空調ユニット200の吹出口を選択する操作を行うためのスイッチであり、本実施形態では、前述した吹出口モードに応じた複数の選択スイッチ264a~264eを含んで構成されている。つまり、フェイスモードを選択する際に押圧されるフェイスモードスイッチ264a、バイレベルモードを選択する際に押圧されるバイレベルモードスイッチ264b、フットモードを選択する際に押圧されるフットモードスイッチ264c、フットデフモードを選択する際に押圧されるフットデフモードスイッチ264d、デフロスタモードを選択する際に押圧されるデフロスタモードスイッチ264eが備えられている。
【0077】
オートスイッチ266は、空調ユニット200を自動制御する際に操作されるスイッチである。このオートスイッチ266がONされた場合には、車室内温度、温度調整ダイヤル263によって設定された温度設定等に基づいて空調ユニット200が自動制御されることになる。
【0078】
また、図3に示すように、エアコンECU250に接続される各種センサとしては、車室内温度を検出する内気温度センサ271、外気温度を検出する外気温度センサ272、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ273、車室内湿度を検出する車内湿度センサ274等がある。
【0079】
-防曇制御ECU-
次に、本実施形態の特徴である防曇制御ECUについて説明する。この防曇制御ECUは、エアコンECU250および自動運転ECU110と連繋することにより、空調ユニット200の防曇性能(フロントガラスFW(以下、単に窓という場合もある)の曇りを防止する防曇機能のレベル)および自動運転レベルを調整する制御を行うものである。以下では、後述する防曇制御ECUの各機能部をエアコンECU250および自動運転ECU110とは独立したものとした場合について説明するが、これら機能部の一部または全部が、エアコンECU250または自動運転ECU110に組み込まれた構成となっていてもよい。
【0080】
図5は、防曇制御ECU300に関連する制御系の機能ブロック図である。この防曇制御ECU300も、自動運転ECU110およびエアコンECU250と同様に、CPU等のプロセッサ、制御プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、および、入出力ポート等を備えている。
【0081】
そして、この防曇制御ECU300は、前記制御プログラムによって実現される機能部として、情報入力部310、操作判定部320、通知情報作成部330、情報出力部340、タイマ350を備えている。
【0082】
情報入力部310は、自動運転ECU110からの自動運転に係る情報、および、エアコンECU250からの空調動作(空調運転)に係る情報を受信する。
【0083】
自動運転ECU110から受信する自動運転に係る情報としては、現在の自動運転レベルの情報(LV0~LV5のうちの何れかの情報)である。エアコンECU250から受信する空調動作に係る情報としては、現在の空調運転の状態情報(吸込口モードの情報、吹出口モードの情報、空調設定温度の情報、圧縮機231のオン/オフの情報)およびエアコン操作パネル260の操作情報である。
【0084】
操作判定部320は、情報入力部310からエアコン操作パネル260の操作情報を受けた場合に、そのエアコン操作パネル260の操作が空調ユニット6の防曇性能(窓の曇りの防止に寄与する防曇性能)を低下させる可能性のある操作であるか否かを判定する。以下、具体的に説明する。
【0085】
図6は、エアコン操作パネル260の操作とその操作に従って空調ユニット200を制御した場合の防曇性能との関係を示す図である。この図6では、吸込口モード、吹出口モード、空調設定温度、および、圧縮機231の状態それぞれにおいて、図中の下側に設定されるほど防曇性能としては高くなるものとなっている。つまり、吸込口モードと防曇性能との関係としては、内気循環モードよりも外気導入モードの方が防曇性能が高くなっている。また、吹出口モードと防曇性能との関係としては、フェイスモードおよびバイレベルモードでは他の吹出口モードに比べて防曇性能が低くなっており、フットモード、フットデフモード、デフロスタモードの順で防曇性能が高くなっていく。空調設定温度と防曇性能との関係としては、空調設定温度が高いほど防曇性能が高くなっていく。また、圧縮機231のオフ状態よりも圧縮機231のオン状態の方が防曇性能が高くなっている。
【0086】
そして、操作判定部320は、情報入力部310からエアコン操作パネル260の操作情報を受信した場合に、そのエアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を高くする可能性のあるものであるか低くする可能性のあるものであるかを図6に基づいて判定する。つまり、この図6に相当する判定マップがROMに記憶されており、操作判定部320は、それに従って、エアコン操作パネル260の操作が行われた場合に、その操作が空調ユニット200の防曇性能を高くする可能性のあるものであるか低くする可能性のあるものであるかを判定する。
【0087】
例えば、吸込口モードが外気導入モードである状態で内気循環モードスイッチ265aが操作された場合には、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作が行われたと判定する。また、吹出口モードがデフロスタモードである状態でフットモードスイッチ264cが操作された場合にも、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作が行われたと判定する。また、空調設定温度が25℃である状態で温度調整ダイヤル263の操作によって空調設定温度が23℃とされた場合にも、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作が行われたと判定する。また、圧縮機231のオン状態でエアコンスイッチ261の操作によって圧縮機231がオフされた場合にも、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作が行われたと判定する。
【0088】
通知情報作成部330は、操作判定部320の判定結果を受信し、それに基づいて、HMI190から乗員に向けた通知(エアコン操作パネル260の操作に起因する通知)を行うための通知情報を作成する。
【0089】
具体的に、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を高くする可能性のあるものである場合には、通知情報を作成しない。一方、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のあるものである場合には、乗員に対し、当該乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作である旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報(運転の主体が自動運転システム100から運転者に移されることを予告する旨の情報)を作成する。この所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報の作成は、窓の曇りが発生する可能性のある状況では自動運転レベルをLV3に維持させない(LV3からL2に移行させる必要がある)といった法規に基づいたもの(法規を遵守するためのもの)である。
【0090】
情報出力部340は、通知情報作成部330で作成された前記情報を、自動運転ECU110を介してHMI190に出力する。これにより、HMI190は、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作である旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報を通知する。例えば、「空調設定操作により窓が曇る虞があります。自動運転を継続する場合は5秒以内に空調設定を元に戻すかオートスイッチを操作してください。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声を前記スピーカから発したりする動作が行われることになる。前記時間は5秒に限定されるものではなく任意に設定可能である。また、前記情報を通知する手段としては、自動運転ECU110に接続されたHMI190に限らず、防曇制御ECU300にディスプレイおよびスピーカを接続しておき、これらディスプレイおよびスピーカから情報を通知するようになっていてもよい。
【0091】
タイマ350は、前述した情報の通知を開始した時点からカウントを開始し、所定時間(例えば数秒間)経過した時点でタイムアップするものである。そして、このタイマ350は、タイムアップした際に、その情報を情報出力部340および自動運転ECU110に送信する。このタイマ350がタイムアップするまでの時間としては、前記情報の通知において指定した時間(5秒)と同等の時間またはこの指定した時間よりも僅かに長い時間として設定されている。
【0092】
この情報を受信した情報出力部340は、自動運転レベルを低下させる旨の情報を作成し、この情報を、自動運転ECU110を介してHMI190に出力する。これにより、HMI190は、自動運転レベルを低下させる旨の情報を通知する。例えば、「自動運転レベルをLV2に変更します。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声をスピーカから発したりする動作が行われることになる。また、タイマ350がタイムアップした情報を受信した自動運転ECU110は、自動運転レベルを低下させる旨の情報を通知したタイミングと略同時または僅かな時間遅れをもって自動運転レベルをLV2に移行させる。
【0093】
また、タイマ350がタイムアップする前に、前述したエアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が解除された場合には、HMI190による通知を終了することになる。また、この場合、現在の自動運転レベル(LV3)が維持されることになる。エアコン操作パネル260の操作の解除としては、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作とは逆の操作(例えば、吸込口モードが外気導入モードである状態で内気循環モードスイッチ265aが操作されていた場合には、外気導入モードスイッチ265bの操作)である。また、オートスイッチ266が操作された場合にもエアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が解除されたと扱われる。
【0094】
-防曇制御-
次に、前述の如く構成された車両における防曇制御について説明する。図7は、本実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートでは、車両の運転状態がLV3の自動運転とLV2の自動運転との間で切り替えられる場合を例に挙げて説明する。但し、これに限定されるものではなく、LV3以上の自動運転(LV3、LV4、LV5の何れかの自動運転)とLV2以下の自動運転(LV2、LV1の何れかの自動運転)またはLV0の運転(前記マニュアル運転モード)との間で切り替えられるものであればよい。LV2、LV1の何れかの自動運転に切り替える場合が本発明でいう「自動運転度が低下すること」に相当し、LV0の運転に切り替える場合が本発明でいう「自動運転が終了すること」に相当する。
【0095】
先ず、ステップST1において、現在の車両の運転状態がLV3の自動運転中であるか否かを判定する。運転状態がLV3の自動運転中ではなく(例えばLV2の自動運転中等であり)、ステップST1でNO判定された場合には、ステップST2に移り、乗員からLV3の自動運転要求が生じたか否かを判定する。LV3の自動運転要求が生じておらず、ステップST2でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0096】
一方、乗員からLV3の自動運転要求が生じ、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、自動運転システム100によってLV3の自動運転に移行される。このようにしてLV3の自動運転に移行されると、ステップST4において、空調ユニット200は自動制御(オート)となる。つまり、LV3の自動運転に移行される前段階で空調ユニット200がマニュアル操作状態となっていた場合には自動制御に切り替えられることになる。
【0097】
この場合の自動制御は、季節や車両の走行エリアによって異なるものとなる。具体的に、夏期において空調設定温度が25℃となっていた場合には、例えば、吸込口モードは内気循環モードとなり、吹出口モードはフェイスモードとなり、圧縮機231はON状態となる。また、冬期において車両が市街地を走行している場合に、空調設定温度が25℃となっていた場合には、例えば、吸込口モードは外気導入モードとなり、吹出口モードはフットモードとなり、圧縮機231はON状態となる。また、冬期において車両が高速道路を走行している場合に、空調設定温度が25℃となっていた場合には、例えば、吸込口モードは外気導入モードとなり、吹出口モードはフットデフモードとなり、圧縮機231はON状態となる。車両が市街地を走行している場合には吹出口モードをフットモードとし、車両が高速道路を走行している場合には吹出口モードをフットデフモードとする理由は、車両が高速道路を走行している場合、窓の温度が低くなって曇りが発生しやすくなることを考慮したためである。また、市街地の走行と高速道路の走行とを判別する手法としては、車両の速度や当該速度での走行の継続時間等によって判別することが挙げられる。また、GPS受信機140によって受信された自車両の位置の情報と地図データベース150とに基づいて判別するようにしてもよい。
【0098】
空調ユニット200が自動制御となった後、ステップST5に移り、エアコン操作パネル260の操作が行われたか否かが判定される。この判定は、操作判定部320が、情報入力部310からエアコン操作パネル260の操作情報を受けたか否かによって行われる。エアコン操作パネル260の操作が行われておらず、ステップST5でNO判定された場合には、そのままリターンされる。この場合、既にLV3の自動運転に移行されているので、ステップST1ではYES判定されて、ステップST5に戻ることになる。つまり、LV3の自動運転が継続されていることを条件として、エアコン操作パネル260の操作が行われたか否かの判定が行われることになる。
【0099】
一方、エアコン操作パネル260の操作が行われて、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST6に移り、そのエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であるか否かを判定する。この判定は、図6を用いて説明したように、吸込口モード、吹出口モード、空調設定温度、および、圧縮機231の状態の何れかが、図6中における上側のものに変更されるように設定された場合に、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であると判定することになる。
【0100】
エアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作ではなく(例えば空調ユニット6の防曇性能を高くする操作である場合等であり)、ステップST6でNO判定された場合には、ステップST7に移り、LV3の自動運転を継続すると共に、エアコン操作パネル260の操作に応じた空調ユニット200の空調運転に切り替えられてリターンされる。
【0101】
一方、そのエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であり、ステップST6でYES判定された場合には、ステップST8に移り、HMI190によって、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作である旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報を通知する(操作に起因する通知を行う)。つまり、前述したように、「空調設定操作により窓が曇る虞があります。自動運転を継続する場合は5秒以内に空調設定を元に戻すかオートスイッチを操作してください。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声をスピーカから発したりする動作が行われる。
【0102】
このようにして通知を開始した後、ステップST9に移り、タイマ350のカウントが開始される。このタイマ350のカウントが開始された後、ステップST10に移り、所定時間が経過したことでタイマ350がタイムアップしたか否かが判定される。
【0103】
タイマ350がタイムアップしておらずNO判定された場合には、ステップST11に移り、前記ステップST5で行われたエアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が解除されたか否かが判定される。つまり、前述した空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作とは逆の操作が行われるか、オートスイッチ266が操作された場合には、この解除が行われたと判定することになる。
【0104】
エアコン操作パネル260の操作が解除され(タイマ350がタイムアップするまでに解除され)、ステップST11でYES判定された場合には、ステップST12に移り、HMI190による通知(乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作である旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報の通知)が停止され、また、LV3の自動運転が継続されてリターンされる。つまり、エアコン操作パネル260の操作が行われる前の空調ユニット200の運転状態を継続すると共にLV3の自動運転が継続される。
【0105】
一方、タイマ350がタイムアップし、ステップST10でYES判定された場合(エアコン操作パネル260の操作が解除されることなくタイマ350がタイムアップした場合)には、ステップST13に移り、自動運転レベルをLV3からLV2に移行する旨の通知を行った後、LV2の自動運転に移行する。この際、空調ユニット200の運転状態としては、エアコン操作パネル260の操作に従った空調運転状態となる。例えば、吹出口モードがデフロスタモードである状態でフットモードスイッチ264cが操作された状況でタイマ350がタイムアップした場合には、自動運転レベルをLV3からLV2に移行すると共に、空調ユニット200の吹出口モードをフットモードに切り替えることになる。
【0106】
以上の動作が繰り返される。
【0107】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態では、HMI190からの通知を受けた乗員は、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能に影響を及ぼす(防曇性能を低下させる)可能性があること、または、車両の自動運転に影響を及ぼす(自動運転レベルをLV3からLV2に移行させる)可能性があることを認識することができる。そして、乗員が、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作に起因して空調ユニット200による防曇効果が維持できなくなる可能性があることを認識した場合には、その操作前の状態に戻すことで空調ユニット200の防曇性能を維持させるか(窓の曇り防止を優先させるか)、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作に従った空調動作を行わせるか(空調の快適性を優先させるか)を自らの意思によって選択することができ、乗員が意図しない空調ユニット200の防曇性能の低下を招いてしまうことがなくなる。
【0108】
つまり、HMI190からの通知を受けた乗員が、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のあるものであることを認識することにより、乗員は、操作前の状態(空調ユニット200が自動運転レベルに応じた防曇性能で作動している状態)を維持したい場合には、エアコン操作パネル260の操作に対する解除操作(空調設定を元の状態に戻す操作)を行う必要があることを認識する。つまり、エアコン操作パネル260の操作に対する解除操作を行うことでエアコン操作パネル260の操作前の状態を維持させることができる。一方、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作を有効にしたい(エアコン操作パネル260の操作に従った空調運転を行いたい)場合には、エアコン操作パネル260の操作に対する解除操作を行わないことで、自身が行ったエアコン操作パネル260の操作を有効にした空調運転に移行させることができる。このように、乗員に向けての通知を行うことにより、乗員の意思を反映した制御を行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、HMI190からの通知情報として、所定時間経過後に自動運転レベルが低下する(LV3からLV2に移行させる)ことを予告する旨の情報を含ませている。これにより、乗員は、エアコン操作パネル260の操作に対する解除操作を行うことで現在の自動運転レベルによる自動運転を維持させるのか、エアコン操作パネル260の操作に対する解除操作を行わないことで、現在の自動運転レベルによる自動運転が行われない(自動運転レベルが低下する)ことになったとしても自身が行ったエアコン操作パネル260の操作を有効にした空調運転に移行させるのかを自らの意思によって選択することができる。これによっても、乗員に向けての通知を行うことにより、乗員の意思を反映した制御を行うことができる。
【0110】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、エアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が行われた場合の動作が前記第1実施形態のものと異なっている。従って、ここでは、前記第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0111】
図8は、本実施形態に係る防曇制御ECU300Aに関連する制御系の機能ブロック図である。本実施形態に係る防曇制御ECU300Aは、制御プログラムによって実現される機能部として、情報入力部310、操作判定部320、曇り発生推定部360、通知情報作成部330、情報出力部340、タイマ350を備えている。
【0112】
情報入力部310は、自動運転ECU110からの自動運転に係る情報、および、エアコンECU250からの空調動作に係る情報を受信する。この情報入力部310がエアコンECU250から受信する空調動作に係る情報としては、前述した第1実施形態における各情報に加えて、車内湿度センサ274によって検出された車室内湿度の情報が挙げられる。また、本実施形態にあっては、フロントガラスFWの内面の温度を検出する図示しないガラス温度センサが備えられており、情報入力部310は、このガラス温度センサから温度情報(フロントガラスFWの内面の温度情報)も受信するようになっている。
【0113】
操作判定部320は、前述した第1実施形態の場合と同様に、情報入力部310からエアコン操作パネル260の操作情報を受けた場合に、そのエアコン操作パネル260の操作が空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であるか否かを判定する。
【0114】
曇り発生推定部360は、操作判定部320からの判定情報(エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であるか否かの判定情報)と、情報入力部310が受信した車室内湿度の情報(車内湿度センサ274によって検出された車室内湿度の情報)およびガラス温度センサによって検出されたフロントガラスFWの内面の温度情報とを受信する。
【0115】
そして、この曇り発生推定部360は、操作判定部320からの判定情報が、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作である判定情報であった場合には、車室内湿度およびフロントガラスFWの内面の温度情報から窓の曇りの発生の有無を推定する。つまり、車室内湿度から車室内における露点を算出し、フロントガラスFWの内面の温度が当該露点に達している(露点以下になっている)か否かを判定することにより、窓の曇りの発生の有無を推定する。
【0116】
通知情報作成部330は、曇り発生推定部360の推定結果(窓の曇りの発生の有無の推定結果)を受信し、それに基づいて、HMI190から乗員に向けた通知を行うための通知情報を作成する。
【0117】
具体的に、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を高くする可能性のあるものである場合には、通知情報を作成しない。また、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のあるものであった場合であっても、曇り発生推定部360の推定結果が窓の曇りの発生の可能性が低いとする推定結果であった場合にも、通知情報を作成しない。一方、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を低く可能性のあるするものであって、曇り発生推定部360の推定結果が窓の曇りが発生するといった推定結果であった場合には、乗員に対し、当該乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作である旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報(運転の主体が自動運転システム100から運転者に移されることを予告する旨の情報)を作成する。
【0118】
情報出力部340およびタイマ350の機能は前述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
図9は、本実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャートである。図9において、第1実施形態で説明した図7のフローチャートと同一の処理を行うステップについては同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0120】
ステップST1~ステップST7の処理動作は前述した第1実施形態の場合と同様である。
【0121】
エアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であり、ステップST6でYES判定された場合には、ステップST20に移り、車室内湿度およびフロントガラスFWの内面の温度情報から窓の曇りの発生の有無を推定する。この動作は、前記曇り発生推定部360によって行われる推定動作である。窓の曇りの発生がないと推定され、ステップST20でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0122】
一方、窓の曇りが発生すると推定され、ステップST20でYES判定された場合には、ステップST8に移り、HMI190によって、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作であり窓の曇りが発生する旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報を通知する(操作に起因する通知を行う)。つまり、前述したように、「空調設定操作により窓が曇る虞があります。自動運転を継続する場合は5秒以内に空調設定を元に戻すかオートスイッチを操作してください。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声をスピーカから発したりする動作が行われる。
【0123】
ステップST9以降の処理動作は前述した第1実施形態の場合と同様である。以上の動作が繰り返される。
【0124】
本実施形態によれば、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作であることに加えて、窓の曇りが発生することが推定された場合に、乗員に向けて通知(窓の曇りが発生する旨の情報、および、所定時間経過後に自動運転レベルが低下することを予告する旨の情報の通知)を行うようにしている。このため、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作であったとしても、車室内環境(例えば車室内湿度)が、窓の曇りが発生し難い状況であった場合には、前記通知を行わないことになる。このため、必要以上の通知を行うことがなくなる。
【0125】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態も、エアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が行われた場合の動作が前記第1実施形態のものと異なっている。従って、ここでも、前記第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0126】
図10は、本実施形態に係る防曇制御ECU300Bに関連する制御系の機能ブロック図である。本実施形態に係る防曇制御ECU300Bは、制御プログラムによって実現される機能部として、情報入力部310、操作判定部320、通知情報作成部330、情報出力部340を備えている。
【0127】
情報入力部310および操作判定部320の機能は前述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0128】
通知情報作成部330は、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を高くする可能性のあるものである場合には、通知情報を作成しない。一方、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のあるものである場合には、乗員に対し、当該乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作を無効にする(操作を受け付けない)旨の通知を行うための情報を作成する。
【0129】
情報出力部340は、通知情報作成部330で作成された前記情報を、自動運転ECU110を介してHMI190に出力する。これにより、HMI190は、乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット200の防曇性能を低下させる可能性のある操作であった場合に、その操作を無効にする旨の情報を通知する。例えば、「窓が曇る虞のある操作が行われたため、操作を無効にします。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声を前記スピーカから発したりする動作が行われることになる。
【0130】
図11は、本実施形態における防曇制御の処理手順を示すフローチャートである。図11において、第1実施形態で説明した図7のフローチャートと同一の処理を行うステップについては同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0131】
ステップST1~ステップST7の処理動作は前述した第1実施形態の場合と同様である。
【0132】
エアコン操作パネル260の操作が、空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であり、ステップST6でYES判定された場合には、ステップST30に移り、HMI190によって、エアコン操作パネル260の操作を無効にする旨の情報を通知する。つまり、前述したように、「窓が曇る虞のある操作が行われたため、操作を無効にします。」といった文字を前記ディスプレイに表示したり、同様の音声を前記スピーカから発したりする動作が行われる。
【0133】
このような通知が行われた状態でステップST31に移り、ステップST5で行われたエアコン操作パネル260の操作(空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作)が解除されたか否かが判定される。つまり、前述した空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のある操作とは逆の操作が行われるか、オートスイッチ266が操作された場合には、この解除が行われたと判定することになる。
【0134】
エアコン操作パネル260の操作が解除され、ステップST31でYES判定された場合には、ステップST32に移り、HMI190による通知(エアコン操作パネル260の操作を無効にする旨の情報の通知)が停止され、そのままリターンされる。
【0135】
本実施形態によれば、空調ユニット200の防曇性能を低くする可能性のあるエアコン操作パネル260の操作が行われた場合、乗員は、自身が行った操作が、自動運転の自動運転レベルや空調ユニット200の防曇性能に影響を及ぼす可能性があるために、この影響を避けるべくエアコン操作パネル260の操作が無効にされたことを認識することになる。このため、通知されることなくエアコン操作パネル260の操作が無効にされてしまって乗員が空調ユニット200の故障を疑う状況を招いてしまうといったことがなくなる。
【0136】
(参考例)
次に、参考例について説明する。本参考例は、自動運転レベルがLV3に移行される(例えばLV2からLV3に移行される)場合の動作を改良したものである。
【0137】
図12は、本参考例におけるLV3の自動運転移行時における空調ユニット200の制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0138】
先ず、ステップST41において、運転状態がLV3の自動運転ではない状態(例えばLV2の自動運転状態)から、乗員からLV3の自動運転要求が生じたか否かを判定する。LV3の自動運転要求が生じておらず、ステップST41でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0139】
一方、乗員からLV3の自動運転要求が生じ、ステップST41でYES判定された場合には、ステップST42に移り、自動運転システム100によってLV3の自動運転に移行される。
【0140】
このようにしてLV3の自動運転に移行された後、ステップST43において、LV3の自動運転に移行される前段階において空調ユニット200はON状態(圧縮機231が作動している状態)であったか否かを判定する。
【0141】
空調ユニット200がON状態となっており、ステップST43でYES判定された場合にはステップST46に移る一方、空調ユニット200がOFF状態であり、ステップST43でNO判定された場合には、ステップST44に移り、車内湿度センサによって検出された車室内湿度が所定値αを超えているか否かを判定する。この所定値αは適宜設定されたものである。車室内湿度が所定値α以下であり、ステップST44でNO判定された場合には、そのままリターンされる。この場合、現在の空調ユニット200の空調動作が維持されたままLV3の自動運転が行われることになる。
【0142】
一方、車室内湿度が所定値αを超えており、ステップST44でYES判定された場合には、ステップST45に移り、空調ユニット200をONにしてステップST46に移る。これにより、車室内湿度が所定値αを超えていることを条件として空調ユニット200の防曇機能が発揮されるようにしておく。つまり、窓の曇りが発生することに起因して自動運転レベルをLV3に維持することができず(法規の規制等によってLV3に維持することができず)L2に移行されてしまうといったことを抑制するようにしている。これにより、LV3での自動運転の領域の拡大を図っている。
【0143】
ステップST46では、LV3の自動運転に移行される前段階において空調ユニット200の吹出口モードとしてはDEF開口部214からの吹き出しがあるモード(フットデフモードまたはデフロスタモード)であったか否かを判定する。
【0144】
空調ユニット200の吹出口モードがDEF開口部214からの吹き出しがあるモードとなっており、ステップST46でYES判定された場合にはステップST49に移る一方、空調ユニット200の吹出口モードがDEF開口部214からの吹き出しがないモードとなっており、ステップST46でNO判定された場合には、ステップST47に移り、車内湿度センサによって検出された車室内湿度が所定値βを超えているか否かを判定する。この所定値βは前記所定値αよりも大きい値であって適宜設定されたものである。車室内湿度が所定値β以下であり、ステップST47でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0145】
一方、車室内湿度が所定値βを超えており、ステップST47でYES判定された場合には、ステップST48に移り、空調ユニット200の吹出口モードをDEF開口部214からの吹き出しがあるモードに切り替えてステップST49に移る。これにより、車室内湿度が所定値βを超えていることを条件として空調ユニット200の防曇機能が大きく発揮されるようにしておく。つまり、窓の曇りが発生する可能性が高い車室内環境にある場合に、窓の曇りが発生することに起因して自動運転レベルをLV3に維持することができず(法規の規制等によってLV3に維持することができず)L2に移行されてしまうといったことを抑制するようにしている。これにより、LV3での自動運転の領域の拡大を図っている。
【0146】
ステップST49では、車内湿度センサによって検出された車室内湿度が所定値γを超えているか否かを判定する。この所定値γは前記所定値βよりも大きい値であって適宜設定されたものである。車室内湿度が所定値γ以下であり、ステップST49でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0147】
一方、車室内湿度が所定値γを超えており、ステップST49でYES判定された場合には、ステップST50に移り、自動運転レベルをLV3からLV2に移行する旨の通知を行った後、LV2の自動運転に移行する。これは、窓の曇りが発生する可能性が高いため、窓の曇りが発生する前段階で自動運転レベルをLV2に移行させておくものである。
【0148】
本参考例によれば、LV3の自動運転に移行される前段階において空調ユニット200がOFF状態であった場合、LV3の自動運転に移行されたことのみを条件として空調ユニット200をON状態に切り替えるのではなく、車室内湿度が所定値αを超えていることも空調ユニット200をON状態に切り替える条件としている。このため、LV3の自動運転に移行される前段階において乗員が空調ユニット200をOFF状態に設定していたにも拘わらず、LV3の自動運転に移行された時点で空調ユニット200の運転状態が急変して無用な空調動作が開始されて違和感や不快感を招くといったことがなくなる。また、エネルギ効率(燃費や電費)を改善することもできる。
【0149】
また、本参考例によれば、LV3の自動運転に移行される前段階において吹出口モードがDEF開口部214からの吹き出しがないモードであった場合、LV3の自動運転に移行されたことのみを条件としてDEF開口部214からの吹き出しがあるモードに切り替えるのではなく、車室内湿度が所定値βを超えていることもDEF開口部214からの吹き出しがあるモードに切り替える条件としている。このため、LV3の自動運転に移行される前段階において乗員がDEF開口部214からの吹き出しがないモードに設定していたにも拘わらず、LV3の自動運転に移行された時点でDEF開口部214からの吹き出しがあるモードに切り替わって違和感や不快感を招くといったことがなくなる。
【0150】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0151】
例えば、本発明が適用可能な車両としては、内燃機関のみを動力源とするコンベンショナル車両に限らず、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車等であってもよい。
【0152】
また、前記第1実施形態では、吸込口モード、吹出口モード、空調設定温度、および、圧縮機231の状態の4つの操作系のうち一つでも防曇性能を低下させる可能性のある操作が行われた場合には、この操作に起因する通知を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、2つの操作系において防曇性能を低下させる可能性のある操作が行われた場合に操作に起因する通知を行うようにしたり、4つの操作系のうち一つでも防曇性能を低下させる可能性のある操作が行われた場合に操作に起因する通知を行う操作系と、複数の操作系において防曇性能を低下させる可能性のある操作が行われた場合に操作に起因する通知を行う操作系とを区別するようにしてもよい。
【0153】
また、前記第2実施形態の曇り発生推定部360による窓の曇りの発生の有無の推定手法としては、前述したものには限定されず、各種センサからの検出値の情報および空調ユニット200の設定情報等から推定するようにしてもよい。例えば、これら情報をパラメータとする曇り発生推定マップをROMに記憶させておき、このマップから窓の曇りの発生の有無を推定することが挙げられる。また、窓の曇りを直接的に検知する手段(車室内カメラ等)からの情報に基づいて推定するようにしてもよい。
【0154】
また、前記第1実施形態および前記第2実施形態において、タイマ350による遅延を設けないようにしてもよい。つまり、乗員への通知と共に自動運転レベルの切り替えや空調ユニット200の運転状態の切り替えを行うものである。
【0155】
また、前記第3実施形態にあっては、エアコン操作パネル260の操作が空調ユニット6の防曇性能を低下させる可能性のある操作であった場合に、当該乗員が行ったエアコン操作パネル260の操作を無効にする旨の通知を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、第2実施形態において説明した曇り発生推定部360によって窓の曇りが発生すると推定された場合にエアコン操作パネル260の操作を無効にする旨の通知を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、自動運転システムおよび防曇機能を発揮する空調ユニットを搭載した車両の制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0157】
100 自動運転システム
190 HMI(通知手段)
200 空調ユニット(空調手段)
260 エアコン操作パネル(空調操作部)
300 防曇制御ECU
330 通知情報作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12