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  • 特許-電池の判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電池の判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240827BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240827BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20240827BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/42 P
G01R31/396
H02J7/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022111143
(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公開番号】P2024009537
(43)【公開日】2024-01-23
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 啓太
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235782(JP,A)
【文献】特開2020-169932(JP,A)
【文献】特開2019-114437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池が正規品であるか否かを判定する、電池の判定方法であって、
前記電池の状態として、充電状態(SOC)または電圧で規定される状態Xを特定する特定工程と、
前記状態Xの前記電池に対して、充電および放電の少なくとも一方を行い、前記電池の状態を、状態Yに調整する、第1調整工程と、
前記第1調整工程により調整された前記状態Yにおける、前記電池の抵抗値を第1抵抗値として測定する、第1測定工程と、
前記第1測定工程後の前記電池に対して、以下の(i)または(ii)に該当する、充電および放電を行い、前記電池の状態を、再び前記状態Yに調整する、第2調整工程と、
(i)前記第1調整工程において、高SOC側または高電圧側から、前記状態Yに調整した場合は、放電および充電をこの順に行うことで、低SOC側または低電圧側から、再び前記状態Yに調整する、
(ii)前記第1調整工程において、低SOC側または低電圧側から、前記状態Yに調整した場合は、充電および放電をこの順に行うことで、高SOC側または高電圧側から、再び前記状態Yに調整する、
前記第2調整工程により調整された前記状態Yにおける、前記電池の抵抗値を第2抵抗値として測定する、第2測定工程と、
前記第1抵抗値および前記第2抵抗値に基づいて、前記電池が正規品であるか否かを判定する、判定工程と、を有する、電池の判定方法。
【請求項2】
前記状態Xおよび前記状態Yが、前記充電状態(SOC)で規定される、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記状態Xおよび前記状態Yが、前記電圧で規定される、請求項1に記載の判定方法。
【請求項4】
前記第1調整工程において、前記充電および前記放電の少なくとも一方を1/3C以上の電流値で行う、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の判定方法。
【請求項5】
前記第2調整工程において、前記充電および前記放電を1/3C以上の電流値で行う、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の判定方法。
【請求項6】
前記第2調整工程において、前記(i)に該当する、前記充電および前記放電を行う、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の判定方法。
【請求項7】
前記第2調整工程において、前記(ii)に該当する、前記充電および前記放電を行う、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池に関して、正規な製造者により製造された電池(以下、正規品と称する)と、正規品を模倣した電池および正規品を不正に改造した電池等(以下、非正規品と称する)とを判別する技術が知られている。例えば特許文献1には、電池の重量の差の絶対値が予め設定したしきい値より大の場合に、電池が正規でないと判定する制御部とを備える電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-174487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1では、電池重量の差に基づいて非正規品の判別をおこなっているが、電池重量に差がない場合でも非正規品を判別できることが望ましい。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池の重量に基づかず非正規品の判別ができる、電池の判定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]
電池が正規品であるか否かを判定する、電池の判定方法であって、上記電池の状態として、充電状態(SOC)または電圧で規定される状態Xを特定する特定工程と、上記状態Xの上記電池に対して、充電および放電の少なくとも一方を行い、上記電池の状態を、状態Yに調整する、第1調整工程と、上記第1調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を第1抵抗値として測定する、第1測定工程と、上記第1測定工程後の上記電池に対して、以下の(i)または(ii)に該当する、充電および放電を行い、上記電池の状態を、再び上記状態Yに調整する、第2調整工程と、(i)上記第1調整工程において、高SOC側または高電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、放電および充電をこの順に行うことで、低SOC側または低電圧側から、再び上記状態Yに調整する、(ii)上記第1調整工程において、低SOC側または低電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、充電および放電をこの順に行うことで、高SOC側または高電圧側から、再び上記状態Yに調整する、上記第2調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を第2抵抗値として測定する、第2測定工程と、上記第1抵抗値および上記第2抵抗値に基づいて、上記電池が正規品であるか否かを判定する、判定工程と、を有する、電池の判定方法。
【0006】
[2]
上記状態Xおよび上記状態Yが、上記充電状態(SOC)で規定される、[1]に記載の判定方法。
【0007】
[3]
上記状態Xおよび上記状態Yが、上記電圧で規定される、[1]に記載の判定方法。
【0008】
[4]
上記第1調整工程において、上記充電および上記放電の少なくとも一方を1/3Cの電流値で行う、[1]から[3]までのいずれかに記載の判定方法。
【0009】
[5]
上記第2調整工程において、上記充電および上記放電を1/3Cの電流値で行う、[1]から[4]までのいずれかに記載の判定方法。
【0010】
[6]
上記第2調整工程において、上記(i)に該当する、上記充電および上記放電を行う、[1]から[5]までのいずれかに記載の判定方法。
【0011】
[7]
上記第2調整工程において、上記(ii)に該当する、上記充電および上記放電を行う、[1]から[5]までのいずれかに記載の判定方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示においては、電池の重量に基づかず非正規品の判別ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示における電池の判定方法を例示するフローチャートである。
図2】本開示におけるメカニズムを説明する図である。
図3】本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。
図4】本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。
図5】本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。
図6】本開示における第2調整工程を説明する図である。
図7】本開示における判定工程における判定を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示における電池の判定方法について、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示における電池の判定方法を例示するフローチャートである。本開示における電池の判定方法では、まず、電池の状態として、充電状態(SOC)または電圧で規定される状態Xを特定する(特定工程、S1)。次に、上記状態Xの上記電池に対して、充電および放電の少なくとも一方を行い、上記電池の状態を、状態Yに調整する(第1調整工程、S2)。次に、上記第1調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を、第1抵抗値として測定する(第1測定工程、S3)。次に、上記第1測定工程後の上記電池に対して、以下の(i)または(ii)に該当する、充電および放電を行い、上記電池の状態を、再び上記状態Yに調整する(第2調整工程、S4)。(i)上記第1調整工程において、高SOC側または高電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、放電および充電をこの順に行うことで、低SOC側または低電圧側から、再び上記状態Yに調整する。(ii)上記第1調整工程において、低SOC側または低電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、充電および放電をこの順に行うことで、高SOC側または高電圧側から、再び上記状態Yに調整する。次に、上記第2調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を、第2抵抗値として測定する(第2測定工程、S5)。そして、上記第1抵抗値および上記第2抵抗値に基づいて、上記電池が正規品であるか否かを判定する(判定工程、S6)。
【0016】
本開示によれば、高SOC側または高電圧側から状態Yに調整した後の抵抗値(放電後の抵抗値)と、低SOC側または低電圧側から状態Yに調整した後の抵抗値(充電後の抵抗値)と、に基づき、電池が正規品か非正規品かを判定するため、電池の重量に基づかず非正規品の判別ができる。
【0017】
本開示における判定方法のメカニズムを、図を用いて説明する。図2は、本開示におけるメカニズムを説明する図である。具体的には、図2(a)は、所定の充電状態(SOC)まで充電した後にさらに充電をする場合のイオン(キャリアイオン)の移動について示した図であり、図2(b)は、所定のSOCまで放電した後に充電をする場合のイオン(キャリアイオン)の移動について示した図である。図2(a)に示すように、電池を充電すると電解質層側の負極合材層(負極活物質)から充電反応が進んでいく。そのため、所定のSOCまで充電した後、さらに充電する場合、キャリアイオンは負極集電体側の負極活物質と反応する必要があり、キャリアイオンの移動距離が長くなる。その結果、充電抵抗は相対的に大きくなる。また、図2(b)に示すように、電池を放電すると電解質層側の負極合材層(負極活物質)から放電反応が進んでいく。そのため、所定のSOCまで放電した後に充電する場合、キャリアイオンは電解質層側の負極活物質と反応できるため、キャリアイオンの移動距離が短く、充電抵抗が相対的に小さくなる。なお、所定のSOCまで充電した後放電をする場合、放電抵抗は相対的に小さくなり、所定のSOCまで放電した後に、さらに放電する場合、放電抵抗は相対的に大きくなる。
【0018】
このように、電池の充放電においては、電解質層側に位置する活物質から優先的に充放電反応に使用されるため、電極層(正極合材層および負極合材層)において、キャリアイオンの濃度にムラが生じる場合がある。また、図2(a)、(b)に示すように、電池の履歴の違いによって、つまり、直前に充電されていたのか放電されていたのかの違いによって、同じSOCに調整した電池であっても抵抗同士(充電抵抗同士および放電抵抗同士)に違いが生じる。また、このようなイオン濃度のムラに起因する抵抗の違いは、負極合材層および正極合材層の材料、厚さおよび容量比などに影響される。そのため、抵抗の違いを正規品の電池と比較することで、対象電池が正規品であるか非正規品であるかを判別することができる。
【0019】
1.特定工程
本開示における測定工程は、上記電池の状態として、充電状態(SOC)または電圧で規定される状態Xを特定する工程である。状態Xを特定する方法は特に限定されず、電流計および電圧計などの機器を用いる方法を挙げることができる。
【0020】
特定結果に基づき、後述する第1調整工程において、どのような充放電制御により電池を状態Yに調整するか、を決定することができる。例えば、状態Xが、状態YよりもSOCまたは電圧が低い場合、第1調整工程では充電を行うことで状態Yに調整すること、を決定することができる。また、状態YよりもSOCまたは電圧が低い場合においては、第1調整工程では、充電した後に放電を行うことで状態Yに調整すること、を決定することができる。また、例えば、状態Xが、状態YよりもSOCまたは電圧が高い場合、第1調整工程では放電を行うことで状態Yに調整すること、を決定することができる。また、状態YよりもSOCまたは電圧が高い場合においては、第1調整工程では放電した後に充電を行うことで、状態Yに調整すること、を決定することができる。
【0021】
2.第1調整工程
本開示における第1調整工程は、上記状態Xの上記電池に対して、充電および放電の少なくとも一方を行い、上記電池の状態を、状態Yに調整する工程である。上述した状態XがSOCで規定される状態である場合、状態YもSOCで規定される状態である。同様に、上述した状態Xが電圧で規定される状態である場合、状態Yも電圧で規定される状態である。
【0022】
状態Yが、電池の充電状態(SOC)で規定される状態Y(SOC)である場合、状態Y(SOC)は、通常100%未満である。状態Y(SOC)は、例えば20%以上であり、30%以上であってもよく、50%以上であってもよい。一方、状態Y(SOC)は、例えば90%以下であり、70%以下であってもよい。
【0023】
一方、状態Yが、電池の電圧で規定される状態Y(電圧)である場合、状態Y(電圧)は特に限定されない。ここで、状態Y(電圧)をVとし、電池の満充電時の電圧をVとした場合、Vは、通常V未満である。V/Vは、例えば0.2以上であり、0.3以上であってもよく、0.5以上であってもよい。一方、V/Vは、例えば0.9以下であり、0.7以下であってもよい。
【0024】
状態Yは、予め設定していてもよく、上記特定工程で特定された状態Xに基づき設定してもよい。例えば、状態Xが予め設定された状態Yと同じ状態であった場合(例えば、状態Xが状態Y同じSOCであった場合)、状態Yを状態Xとは異なるSOCの状態に設定してもよい。
【0025】
第1調整工程における、充電および放電の電流値は、それぞれ、例えば1/5C以上であり、1/4C以上であってもよく、1/3C以上であってもよい。一方、充電および放電における電流値は、それぞれ、例えば1C以下であり、2/3C以下であってもよい。
【0026】
ここで、第1調整工程における充放電を、電池の状態がSOCで規定される場合において説明する。
【0027】
図3は、本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。具体的には、図3(a)は、状態Xが状態YよりもSOCが高い状態であった場合、かつ、第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。また、図3(b)は、状態Xが状態YよりもSOCが高い状態であった場合、かつ、第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。例えば図3(a)に示すように、放電のみを行い状態Yに調整してもよい。これにより、後述する第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定することができる。一方、図3(b)に示すように、放電および充電の両方を行い状態Yに調整してもよい。例えば、状態Xから、状態YよりもSOCが低い状態である状態Pにまで放電し、状態Pから状態Yにまで充電する。これにより、後述する第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定することができる。なお、状態Pは、例えば状態YよりもSOCが5%以上低い条件であることが好ましい。
【0028】
図4は、本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。具体的には、図4(a)は、状態Xが状態YとSOCが同じ状態であった場合、かつ、第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。また、図4(b)は、状態Xが状態YとSOCが同じ状態であった場合、かつ、第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。状態Xが状態YとSOCが同じ状態である場合、図4(a)、(b)に示すように、第1調整工程においては、充電および放電の両方を行うことで状態Yに調整することが好ましい。例えば図4(a)に示すように、例えば、状態X(状態Y)よりもSOCが高い状態である状態Qにまで充電し、状態Qから状態Yにまで放電する。これにより、後述する第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定することができる。なお、状態Qは、例えば状態YよりもSOCが5%以上高い条件であることが好ましい。一方、図4(b)に示すように、例えば、状態X(状態Y)よりもSOCが低い状態である状態Pにまで放電し、状態Pから状態Yにまで充電する。これにより、後述する第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定することができる。状態Pは上述したとおりである。
【0029】
図5は、本開示における第1調整工程の一例を説明する図である。具体的には、図5(a)は、状態Xが状態YよりもSOCが低い状態であった場合、かつ、第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。また、図5(b)は、状態Xが状態YよりもSOCが低い状態であった場合、かつ、第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定する場合の、第1調整工程について説明する図である。図5(a)に示すように、充電のみを行い状態Yに調整してもよい。これにより、後述する第1抵抗値を充電後の抵抗値として測定することができる。一方、図5(b)に示すように、放電および充電の両方を行い状態Yに調整してもよい。例えば、状態Xから、状態YよりもSOCが高い状態である状態Qにまで充電し、状態Qから状態Yにまで放電する。これにより、後述する第1抵抗値を放電後の抵抗値として測定することができる。なお、状態Qは上述したとおりである。
【0030】
3.第1測定工程
本開示における第1測定工程は、上記第1調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を第1抵抗値として測定する工程である。第1抵抗値は、充電抵抗値であってもよく放電抵抗値であってもよい。第1抵抗値を測定する方法は特に限定されず、例えばI-V法を挙げることができる。
【0031】
4.第2調整工程
本開示における第2調整工程は、第1測定工程後の上記電池に対して、以下の(i)または(ii)に該当する、充電および放電を行い、上記電池の状態を、再び上記状態Yに調整する工程である。
(i)上記第1調整工程において、高SOC側または高電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、放電および充電をこの順に行うことで、低SOC側または低電圧側から、再び上記状態Yに調整する。
(ii)上記第1調整工程において、低SOC側または低電圧側から、上記状態Yに調整した場合は、充電および放電をこの順に行うことで、高SOC側または高電圧側から、再び上記状態Yに調整する。
【0032】
ここで、第2調整工程における充放電を、電池の状態がSOCで規定される場合において説明する。なお、第1抵抗値が充電抵抗である場合、第1測定工程後の電池の状態(例えばSOC)は、状態Yよりも高くなっていると考えられるが、状態Yとの差は極めて小さいと考えられる。また、第1抵抗値が放電抵抗である場合、第1測定工程後の電池の状態(例えばSOC)は、状態Yよりも低くなっていると考えられるが、状態Yとの差は極めて小さいと考えられる。よって、本開示においては、第1測定工程後の電池の状態は、状態Yと実質的に同じであると捉えることができる。
【0033】
図6は、本開示における第2調整工程を説明する図である。具体的には、図6(a)は、上記(i)に該当する第2調整工程の充放電を説明する図である。また、図6(b)は、上記(ii)に該当する第2調整工程の充放電を説明する図である。例えば、図6(a)に示すように、第1調整工程S2において高SOC側から状態Yに調整した場合、第2調整工程S4では、状態YよりもSOCが低い状態である状態Pにまで放電し、状態Pから状態Yにまで充電する。これにより、後述する第2抵抗値を、充電後の抵抗値として測定することができる。なお、状態Pは、例えば状態YよりもSOCが5%以上低い条件であることが好ましい。また、状態Pは上述した状態Pと同じ状態であってもよく、異なる状態であってもよい。
【0034】
一方、例えば、図6(b)に示すように、第1調整工程S2において、低SOC側から状態Yに調整した場合、第2調整工程S4では、状態YよりもSOCが高い状態である状態Qにまで充電し、状態Qから状態Yにまで放電する。これにより、後述する第2抵抗値を、放電後の抵抗値として測定することができる。なお、状態Qは、例えば状態YよりもSOCが5%以上高い条件であることが好ましい。また、状態Qは上述した状態Qと同じ状態であってもよく、異なる状態であってもよい。
【0035】
第2調整工程における、充電および放電の電流値は、それぞれ、例えば1/5C以上であり、1/4C以上であってもよく、1/3C以上であってもよい。一方、充電および放電における電流値は、それぞれ、例えば1C以下であり、2/3C以下であってもよい。また、第2調整工程における充電及び放電の電流値は、第1調整工程における充電および放電の電流値と、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
5.第2測定工程
本開示における第2測定工程は、上記第2調整工程により調整された上記状態Yにおける、上記電池の抵抗値を第2抵抗値として測定する工程である。第1抵抗値が充電抵抗値である場合、第2抵抗値も充電抵抗であることが好ましい。同様に、第1抵抗値が放電抵抗値である場合、第2抵抗値も放電抵抗値であることが好ましい。第2抵抗値を測定する方法は特に限定されず、例えばI-V法などを挙げることができる。
【0037】
6.判定工程
本開示における判定工程は、上記第1抵抗値および上記第2抵抗値に基づいて、上記電池が正規品であるか否かを判定する工程である。
【0038】
判定工程では、第1抵抗値および第2抵抗値を用いた任意の方法で、電池が正規品であるか否かが判定される。例えば、第1抵抗値をR1、第2抵抗値をR2とした場合、R1とR2との差の絶対値(|R1-R2|:抵抗変化量)、または、第2抵抗値R2に対する第1抵抗値R1の比(R1/R2:抵抗変化率)に基づき判定をすることができる。例えば、図7に示すように、各容量(例えば、単位面積容量)の正規品の電池について、所定の条件Y(例えば、SOC50%)で抵抗変化率を算出して、容量に対する抵抗変化率のグラフを作成する。次に、所定の容量の対象電池に対して算出した抵抗変化率を、上記グラフと参照する。そして、所定の容量における正規品と対象電池との抵抗変化率を比較し、両者の差の絶対値が基準値以下であれば対象電池は正規品であると判定し、両者の差の絶対値が基準値を超えていれば対象電池は非正規品であると判定する。例えば、図7において、電池Aおよび電池Bは正規品の電池と判定でき、電池Cは非正規品の電池と判定できる。
【0039】
基準値は、例えば電池の種類、電池の容量に基づき適宜調整することができる。例えば正規品の抵抗変化率および抵抗変化量をTとした場合、基準値は、例えば、0.01T以上、0.1T以下である。
【0040】
7.電池
本開示における判定対象の電池は、電解質が液系電解質である液系電池であってもよく、電解質が固体電解質である全固体電池であってもよい。また、電池は、例えば、リチウムイオン電池およびナトリウムイオン電池などの陽イオンをキャリアイオンとして用いる電池であってもよく、フッ化物イオン電池などの陰イオンをキャリアイオンとして用いる電池であってもよい。
【0041】
また、本開示における電池の単位面積容量(mAh/cm)は、大きいことが好ましい。単位面積容量が大きいと、電極層の厚さが大きくなるため、充放電によりイオン濃度のムラがより生じやすくなり、抵抗変化量(|R1-R2|またはR1/R2)が大きくなる。その結果、正規品と非正規品との判別をより容易に行うことができる。電池の単位面積容量(mAh/cm)は、例えば1mAh/cm以上である。
【0042】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7