(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】劣化判定装置、劣化判定システム、劣化判定方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20240827BHJP
G01S 13/86 20060101ALI20240827BHJP
G01B 15/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01S13/90 127
G01S13/86
G01B15/06
(21)【出願番号】P 2022566514
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044578
(87)【国際公開番号】W WO2022118359
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 香
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238704(US,A1)
【文献】水野正樹,“人工衛星SAR画像を用いた土砂災害緊急対応時の現地状況把握手法の研究”,新潟大学 [online],2016年05月12日,Pages 71-81, 98 ,<URL: https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/records/5791 >
【文献】柏瀬孝子 外4名,“鉄筋コンクリート造建物の性能評価手法に関する研究―ひび割れ幅に着目した柱・梁の曲げ・せん断実験―”,大林組技術研究所報 [online],2003年,Number 67,6 Pages,<URL: https://www.obayashi.co.jp/technology/shoho/067/2003_067_14.pdf >
【文献】木村誇 他,“衛星画像解析による熊本地震被災地域の斜面・地盤変動調査”,防災科学技術研究所研究資料,2017年09月29日,Number 412,Pages 34-36,<URL: https://doi.org/10.24732/nied.00002026 >, < DOI:10.24732/nied.00002026 >,“2.3. 検証作業”
【文献】NORTH, M. 他,“Monitoring the Response of Roads and Railways to Seasonal Soil Movement with Persistent Scatterers Interferometry over Six UK Sites”,REMOTE SENSING [online],2017年09月04日,Volume 9, Number 9,Article 922, 17 Pages,<URL: https://doi.org/10.3390/rs9090922 >, <DOI: 10.3390/rs9090922 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
G01B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表の変位の情報を取得する変位取得手段と、
前記地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する位置抽出手段と、
抽出した前記位置を出力する位置出力手段と、
出力した前記位置における前記センサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、
取得した前記センサ情報を用いて、構造物の劣化を判定する劣化判定手段と、
判定結果を出力する判定結果出力手段と
を
含み、
前記地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
前記センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
劣化判定装置。
【請求項2】
前記センサ情報を用いた劣化の判定の空間分解能が、前記地表の変位の空間分解能より高い
請求項1に記載の劣化判定装置。
【請求項3】
前記地表の変位の情報が、地表の変位の履歴を用いて算出した地表変位速度を含み、
前記センサ情報を取得する位置が、地表変位速度が閾値を超えている位置を含む
請求項1又は2に記載の劣化判定装置。
【請求項4】
前記センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量または地表変位速度が閾値を超えている位置に近接する位置をさらに含む
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【請求項5】
前記位置抽出手段が、前記地表の変位の情報に加え、所定の情報に基づいて前記センサ情報を取得する位置を抽出する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【請求項6】
所定の情報が、地表の変位に影響を与える情報、監視に関連する情報、過去の劣化情報、及び、走行実績の少なくとも一つを含む
請求項5に記載の劣化判定装置。
【請求項7】
前記劣化判定手段は、さらに前記地表の変位の情報を用いて劣化を判定する
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【請求項8】
前記位置抽出手段は、前記地表の変位の情報に基づいて、さらにセンサ情報を取得する位置の優先度を抽出し、
前記位置出力手段は、さらに前記優先度を出力する
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の前記劣化判定装置と、
前記劣化判定装置に前記地表の変位の情報を出力する合成開口レーダーと、
前記劣化判定装置から前記位置を取得して出力する端末装置と
を含む劣化判定システム。
【請求項10】
地表の変位の情報を取得し、
前記地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出し、
抽出した前記位置を出力し、
出力した前記位置における前記センサ情報を取得し、
取得した前記センサ情報を用いて、構造物の劣化を判定し、
判定結果を
出力し、
前記地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
前記センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
劣化判定方法。
【請求項11】
地表の変位の情報を取得する処理と、
前記地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する処理と、
抽出した前記位置を出力する処理と、
出力した前記位置における前記センサ情報を取得する処理と、
取得した前記センサ情報を用いて、構造物の劣化を判定する処理と、
判定結果を出力する処理と
をコンピュータに
実行させ、
前記地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
前記センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の劣化の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
地上の構造物を測定する技術として、「合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar(SAR))」を利用して地表の状態を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の地図情報更新支援装置(以下、「特許文献1の装置」と呼ぶ)は、光学画像を用いて地図を作成する場合の課題を解決するため、レーダー装置(SAR)を利用して、効率的に地図情報の更新を可能とする装置である。
【0004】
具体的には、特許文献1の装置は、レーダー装置が異なる時刻に取得した観測範囲の時系列画像データおのおのの特性値を算出する。そして、特許文献1の装置は、算出した特性値に基づいて、地物(地表の植生及び構築物など)の変化域を抽出する。そして、特許文献1の装置は、地物変化域と地図情報とを合成する。そして、特許文献1の装置は、地図を更新する際の調査個所として、地物変化域を含む地図情報を出力する。
【0005】
このように、特許文献1の装置は、地図の更新のための情報として、レーダー装置を用いて地物の変化域を抽出して、地物の変化域を地図情報と共に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
道路及び空港などの社会基盤を構成する構造物は、使用できなくなった場合に、社会への影響が大きい。しかし、構造物は、経年劣化する。そこで、構造物の管理主体(例えば、国、地方自治体、又は、運営会社)は、構造物の劣化の状態を確認し、構造物が劣化して使用不能な状態となる前に、修繕などを実施している。
【0008】
構造物の劣化を判定する技術として、SARを利用して構造物の基盤となる地表の変位(陥没、又は、隆起)を判定する技術が知られている。
【0009】
ただし、SARを利用した地表の変位の空間分解能は、比較的高い空間分解能のSARでも数m程度である。
【0010】
一方、例えば、路面における走行に影響する劣化(ひび割れ、及び、ポットホールなど)の大きさは、SARの空間分解能より小さい。
【0011】
このように、SARを用いて構造物の劣化を判定する場合、路面のひび割れのような構造物の詳細な劣化を判定できないという問題点があった。
【0012】
そこで、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定する情報の提供が望まれている。
【0013】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定するための情報を出力する劣化判定装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一形態における劣化判定装置は、
地表の変位の情報を取得する変位取得手段と、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する位置抽出手段と、
抽出した位置を出力する位置出力手段と
を含む。
【0015】
本発明の一形態における劣化判定システムは、
上記の劣化判定装置と、
劣化判定装置に地表の変位の情報を出力する合成開口レーダーと、
劣化判定装置から位置を取得して出力する端末装置と
を含む。
【0016】
本発明の一形態における劣化判定方法は、
地表の変位の情報を取得し、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出し、
抽出した位置を出力する。
【0017】
本発明の一形態における劣化判定方法は、
劣化判定装置が、上記の方法を実行し、
合成開口レーダーが、劣化判定装置に地表の変位の情報を出力し、
端末装置が、劣化判定装置から位置を取得して出力する。
【0018】
本発明の一形態におけるプログラムは、
地表の変位の情報を取得する処理と、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する処理と、
抽出した位置を出力する処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に基づけば、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定するための情報を提供するという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置を含む劣化判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる劣化判定システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置におけるセンサ情報を取得する位置を出力する動作の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、説明に用いる道路の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、センサ情報を取得する位置の表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置における劣化を判定する動作の一例を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態にかかる劣化判定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態にかかる劣化判定装置を含む劣化判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、劣化判定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
なお、各図面は、本発明の実施形態を説明するためのものである。ただし、本発明の実施形態は、各図面の記載に限られるわけではない。また、各図面の同様の構成には、同じ番号を付し、その繰り返しの説明を、省略する場合がある。また、以下の説明に用いる図面において、本発明の実施形態の説明において、本発明の課題の解決に関係しない部分の構成については、記載を省略し、図示しない場合もある。
【0023】
<用語>
まず、各実施形態の説明に用いる用語について説明する。
【0024】
「合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar(以下、「SAR」))」とは、飛翔体(人工衛星又は飛行機など)が移動しながら電波を送信及び受信して、大きな開口を持ったアンテナの場合と等価な画像を得るレーダーである。
【0025】
レーダー観測における分解能は、アンテナを大きくするほど向上する。しかし、人工衛星などに搭載できるアンテナの大きさには限りがある。そこで、SARは、実開口長が小さなアンテナを用いて、飛翔しながら電波を送信及び受信して(つまり、人工的に「開口」を「合成」して)、進行方向の分解能を高めている(つまり、仮想的に大きなアンテナを構成している)。
【0026】
「干渉SAR」とは、地表の同一の場所に対して2回のSARを用いた観測を実施し、2回の反射波の「位相」の差から、2回の観測時の間における、その場所までの距離の差(例えば、地表の場合、地表の変位(沈下又は隆起))を測定する技術である。
【0027】
なお、地表の変位の符号は、任意である。沈下が増加する場合の符号が、正でもよい。あるいは、隆起が増加する場合の符号が、正でもよい。あるいは、変位は、絶対値でもよい。
【0028】
なお、干渉SARは、詳細には、変位として、地盤(構造物の基礎を支える地面)上の構造物までの距離の変位を測定している。しかし、一般的に、構造物の変形は、地盤の変化に比べ小さい。また、干渉SARは、各種の要因に基づくノイズに対する除去技術を用いている。そのため、各実施形態は、干渉SARを用いて測定した距離の変位を、構造物の基礎となっている地盤の表面(つまり、地表)の変位とみなして動作する。
【0029】
「地表変位速度」とは、地表の変位(沈下又は隆起)の時間に対する変化の程度(例えば、mm/年)である。なお、以下の説明では、地表変位速度の符号は、沈下の速度が増加する方向が正とする。ただし、地表変位速度の符号は、隆起の速度が増加する方向が正でもよい。あるいは、地表変位速度は、絶対値でもよい。
【0030】
構造物の劣化を判定する技術として、SARを用いる技術以外に、車両に搭載されたセンサ(例えば、ドライブレコーダー)が取得したセンサ情報(例えば、画像及び/又は加速度)を用いて道路などの路面の劣化を判定する技術が知られている。
【0031】
次に、車両などに搭載又は牽引されたセンサを用いる技術に関連する用語を説明する。
【0032】
「センサ情報」とは、構造物(例えば、道路、橋、のり枠、堤防、桟橋、護岸、又は、滑走路)における判定対象となる部分における劣化を判定するために、所定のセンサを用いて取得された情報である。各実施形態は、センサ情報として、移動体(例えば、四輪車、二輪車、ドローン、又は、人)に搭載又は牽引されたセンサ情報取得装置(例えば、ドライブレコーダー、又は、加速度計)が取得した構造物に関連する情報(例えば、画像、又は、加速度)を用いる。例えば、センサ情報は、劣化の判定対象である構造物を走行した車両に搭載されたドライブレコーダーの加速度計が検出した加速度、又は、ドライブレコーダーが撮影した画像である。
【0033】
なお、以下の説明では、センサ情報取得装置、及び、センサ情報の一例として、ドライブレコーダー及び画像を用いる。
【0034】
なお、SARを利用した地表の変位の空間分解能は、数mから数十m程度である。これに対し、センサ情報を利用した劣化の判定の空間分解能は、数cmから数m程度である。このように、センサ情報を利用した劣化の判定の空間分解能は、地表の変位の空間分解能より高い。そのため、センサ情報を利用した劣化の判定は、地表の変位を用いた判定に比べ、より詳細に劣化を判定できる。
【0035】
「劣化度」とは、センサ情報を用いて判定された、構造物における判定対象となる部分における劣化の程度である。
【0036】
各実施形態において、劣化度の表現形式は、任意である。例えば、劣化度として、数値が用いられてもよい。あるいは、劣化度として、数値以外が用いられてもよい。例えば、劣化度として、{大、小}又は{大、中、小}のような文字が用いられてもよい。
【0037】
劣化度として値が用いられる場合、劣化度の値の範囲は、任意である。
【0038】
例えば、劣化度として路面の「ひび割れ率」が用いられる場合、劣化度の値は、0.0から1.0(0%から100%)の範囲となる。
【0039】
なお、ひび割れ率とは、ひび割れの面積を調査対象区画の面積で割った値である。
【0040】
あるいは、劣化度として「わだち掘れ量」が用いられる場合、劣化度の値は、一般的に、0以上の整数(単位は、mm)となる。なお、わだち掘れ量の値としては、有理数が用いられてもよい。
【0041】
なお、わだち掘れ量とは、所定の範囲(例えば、20m)における、わだち部から凸部までの高さである。
【0042】
あるいは、劣化度として「国際ラフネス指数(IRI:International Roughness Index)」が用いられる場合、劣化度の値は、0以上の有理数(単位は、mm/m又はm/km)となる。
【0043】
なお、IRIは、1986年に世界銀行が提案した舗装道路の凹凸に関する評価指数である。
【0044】
劣化度として「Boeing Bump Index(BBI)」が用いられる場合も、劣化度の値は、0以上の有理数(単位は、無次元)となる。
【0045】
なお、BBIは、米国連航空局が2009年に採用した平坦性指標である。
【0046】
このように、劣化度の値の範囲は、任意である。各実施形態の利用者が、適宜、判定対象となる構造物における劣化に対応した劣化度を選択すればよい。
【0047】
なお、以下の説明では、劣化度の一例として、「ひび割れ率」を用いて説明する。そのため、以下の説明において、劣化度は、悪化した場合に、その値が大きくなる。ただし、劣化度の値としては、劣化度を用いる処理の関係で、悪化した場合にその値が小さくなるような値が用いられてもよい。
【0048】
「劣化速度」とは、劣化度の時間に対する変化の程度である。
【0049】
なお、各実施形態において、劣化速度は、時間的に一定でもよく、変化してもよい。利用者が、判定対象に沿って、劣化速度の種類を選択すればよい。例えば、劣化速度としては、線形回帰など、直線近似が用いられてもよい。あるいは、劣化速度として、二次曲線(二次回帰)が用いられてもよい。
【0050】
さらに、各実施形態は、劣化の診断結果として、複数の劣化に対応した劣化度を用いてもよい。例えば、各実施形態において、劣化が、構造物に生じるひび割れと、わだちとである場合、劣化度は、例えば、ひび割れ率と、わだち掘れ量とである。この場合、各実施形態は、劣化それぞれに対する劣化度の他に、それぞれの劣化速度を用いてもよい。
【0051】
なお、以下の説明では、説明を明確とするため、一つの劣化度(上記のとおり、ひび割れ率)を用いる場合を説明する。
【0052】
構造物の「表層」とは、構造物の外部から劣化を確認できる範囲、例えば、表面及び表面に近い所定の範囲を含む部分である。例えば、構造物の表層とは、表面と、表面から所定の深さまで範囲を含む部分である。あるいは、構造物の表層は、構造物において他のものと接触する構成(例えば、舗装道路の場合、車両のタイヤと接する表層)である。
【0053】
また、以下の説明では、構造物の表層を除いた部分を、「深層」と呼ぶ。
【0054】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、第1の実施形態について説明する。
【0055】
[構成の説明]
まず、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10の構成について、図面を参照して説明する。
【0056】
図1は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10を含む劣化判定システム70の構成の一例を示すブロック図である。
【0057】
劣化判定システム70は、劣化判定装置10と、SAR20と、移動体30と、端末装置31と、センサ情報取得装置32と、表示装置40と、情報提供装置50とを含む。なお、劣化判定システム70は、少なくともいずれかの構成を、1つではなく、複数含んでもよい。例えば、劣化判定システム70は、移動体30、端末装置31、及び、センサ情報取得装置32をそれぞれ複数含んでもよい。この場合、移動体30の数、端末装置31の数、及び、センサ情報取得装置32の数は、同じでもよく、異なってもよい。例えば、移動体30は、複数のセンサ情報取得装置32を搭載してもよい。
【0058】
劣化判定システム70に含まれる各装置は、所定の通信路(例えば、インターネット又は公衆電話回線)を介して接続されている。なお、通信路は、有線、無線、又は、有線及び無線の組合せのいずれでもよい。
【0059】
SAR20は、SAR(干渉SAR)を用いて、判定対象となる構造物を含む所定の範囲を観測し、観測結果(例えば、SAR画像)を解析して、地表の変位を判定する装置又はシステムである。そして、SAR20は、判定の結果(地表の変位の情報)を劣化判定装置10に出力する。なお、判定の結果(地表の変位の情報)は、地表の変位に加え、変位の位置を含む。
【0060】
移動体30は、センサ情報取得装置32がセンサ情報を取得する位置におけるセンサ情報を取得するように、センサ情報取得装置32を搭載又は牽引して移動する。
【0061】
移動体30は、センサ情報を取得する位置にセンサ情報取得装置32を移動できれば任意である。例えば、移動体30は、車両(四輪車、又は、二輪車)、又は、ドローン(無人航空機)でもよい。あるいは、人が、移動体30として、センサ情報取得装置32を持ち歩いてもよい。
【0062】
例えば、移動体30がセンサ情報取得装置32を搭載する車両の場合、車両の運転手が、その車両を操作(運転)して、センサ情報を取得する位置を走行してもよい。あるいは、移動体30が人の場合、その人が、センサ情報取得装置32を、センサ情報を取得する位置に運んでもよい。
【0063】
なお、移動体30が車両又はドローンなどの輸送機器の場合、移動体30は、人が操作する輸送機器に限定されない。例えば、移動体30は、自動運転の車両又はドローンでもよい。
【0064】
端末装置31は、劣化判定装置10から、センサ情報取得装置32を用いてセンサ情報を取得する位置を取得する。そして、端末装置31は、取得した位置を出力する。
【0065】
なお、端末装置31が設置される場所は、任意である。
【0066】
例えば、移動体30が、端末装置31を搭載してもよい。例えば、移動体30が車両の場合、端末装置31は、車両に搭載されたナビゲーション装置でもよい。この場合、例えば、ナビゲーション装置が、地図上に取得した位置を出力する。そして、車両の運転手が、ナビゲーション装置が出力した位置を走行するように、車両を操作すればよい。
【0067】
なお、端末装置31がナビゲーション装置の場合、端末装置31は、現在位置又は所定の位置から、取得した位置までの経路を出力してもよい。例えば、端末装置31は、地図に重畳して、現在位置から取得した位置までの経路を出力してもよい。さらに、複数の位置を取得した場合、端末装置31は、複数の位置を経由する経路を出力してもよい。
【0068】
なお、移動体30が車両で、構造物が中央線のある道路の場合、車両が走行可能な車線は、進行方向ごとに半分の車線となる。そこで、端末装置31は、劣化判定装置10が出力する位置に基づいてセンサ情報を取得する車線を判定し、判定した車線を走行可能な経路を出力してもよい。あるいは、端末装置31は、両方向の車線を走行する経路を出力してもよい。あるいは、同じ方向の車線が複数の場合、端末装置31は、同じ方向における各車線それぞれを走行する経路を出力してもよい。
【0069】
あるいは、端末装置31は、移動体30とは異なる場所に設置されてもよい。例えば、端末装置31は、構造物を管理する組織(例えば、地方自治体)のシステムに含まれる装置(例えば、ディスプレイ)でもよい。この場合、組織の担当者が、ディスプレイに表示された位置を、移動体30の運転手に連絡してもよい。
【0070】
あるいは、端末装置31は、移動体30の運転手が携帯する装置(例えば、スマートフォン)でもよい。この場合、端末装置31は、所定の地図アプリケーションと連携して、位置を表示してもよい。
【0071】
また、端末装置31における表示形式は、任意である。劣化判定システム70の利用者が、適宜、移動体30の移動の仕組み、及び、センサ情報取得装置32におけるセンサ情報の取得方式に合わせて表示形式を選択すればよい。
【0072】
センサ情報取得装置32は、移動体30(例えば、車両)に搭載又は牽引されて移動する。そして、センサ情報取得装置32は、判定対象となる構造物(例えば、道路、橋、のり枠、堤防、桟橋、護岸、又は、滑走路)に関連するセンサ情報(例えば、画像、及び/又は、加速度)を取得する。
【0073】
例えば、センサ情報取得装置32は、車両に搭載されたドライブレコーダーでもよい。この場合、センサ情報は、例えば、路面の画像(例えば、車両の前方、後方、側面、及び/又は、全方位の路面の画像)である。
【0074】
ただし、センサ情報は、画像に限定されない。例えば、センサ情報取得装置32は、センサ情報として、移動体30の加速度を取得してもよい。この場合、移動体30は、センサ情報取得装置32として、加速度計を搭載してもよい。
【0075】
そして、センサ情報取得装置32は、取得したセンサ情報を劣化判定装置10に出力する。
【0076】
なお、センサ情報取得装置32が、端末装置31を含んでもよい。あるいは、端末装置31が、センサ情報取得装置32を含んでもよい。
【0077】
表示装置40は、液晶ディスプレイなどの表示機器を備え、劣化判定装置10から取得した判定結果を表示する。劣化判定システム70は、表示装置40として、任意の装置を用いてもよい。例えば、表示装置40は、道路を管理する地方自治体のシステムに含まれるディスプレイでもよい。あるいは、表示装置40は、構造物の劣化を確認する利用者が携帯する装置(例えば、スマートフォン)でもよい。
【0078】
なお、端末装置31及び表示装置40は、同じ装置でもよい。
【0079】
また、表示装置40における表示形式は、任意である。劣化判定システム70の利用者が、適宜、表示の使用目的に合わせて表示形式を選択すればよい。
【0080】
情報提供装置50は、劣化判定装置10に、所定の情報を出力する。情報提供装置50が出力する情報については、後ほどさらに説明する。
【0081】
劣化判定装置10は、SAR20から地表の変位の情報を取得する。そして、劣化判定装置10は、地表の変位の情報に基づいて、構造物の劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する。そして、劣化判定装置10は、抽出した位置を所定の装置(例えば、端末装置31)に出力する。
【0082】
なお、劣化判定装置10は、抽出した位置を所定の記憶装置に保存してもよい。この場合、端末装置31は、その記憶装置に保存されている位置を取得してもよい。例えば、端末装置31の利用者が、端末装置31を操作して、その記憶装置に保存されている位置を取得してもよい。
【0083】
さらに、劣化判定装置10は、センサ情報取得装置32から、センサ情報を取得する位置に対応したセンサ情報を取得する。そして、劣化判定装置10は、取得したセンサ情報を用いて、構造物の劣化を判定する。そして、劣化判定装置10は、劣化の判定結果を所定の装置(例えば、表示装置40)に出力する。
【0084】
なお、劣化判定装置10は、判定結果を所定の記憶装置に保存してもよい。この場合、表示装置40は、その記憶装置に保存されている判定結果を取得してもよい。例えば、表示装置40の利用者が、表示装置40を操作して、その記憶装置に保存されている判定結果を取得してもよい。
【0085】
なお、劣化判定装置10は、判定結果を端末装置31に出力してもよい。
【0086】
図2は、劣化判定システム70の構成の一例を示す概念図である。
【0087】
図2の劣化判定システム70は、劣化判定装置10の一例としてコンピュータ810、SAR20の一例として人工衛星と地上局とを含むSARシステム820、移動体30の一例として車両830、及び、表示装置40の一例として表示システム840を含む。さらに、劣化判定システム70は、端末装置31の一例としてタブレット831、及び、センサ情報取得装置32の一例としてドライブレコーダー832を含む。さらに、劣化判定システム70は、各装置及びシステムを接続する通信路として、ネットワーク880を含む。
【0088】
ネットワーク880は、各装置及びシステムを相互に接続する通信路である。ネットワーク880は、各装置及びシステムを接続できれば、特に制限はない。例えば、ネットワーク880は、インターネット、公衆電話回線、又は、それらの組合せでもよい。
【0089】
SARシステム820は、コンピュータ810に、人工衛星を用いて取得したSAR画像に基づいて判定した地表の変位の情報(例えば、地表の変位、及び、その位置)を出力する。
【0090】
コンピュータ810は、取得した地表の変位の情報に基づいて、構造物(例えば、道路)の劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する。そして、コンピュータ810は、抽出した位置をタブレット831に出力する。
【0091】
タブレット831は、コンピュータ810から取得した位置を表示する。
【0092】
車両830は、タブレット831及びドライブレコーダー832を搭載する。なお、
図2は、理解を容易にするため、タブレット831及びドライブレコーダー832を、車両830の外に表示している。
【0093】
そして、車両830の運転手が、車両830を操作して、タブレット831に表示された位置(例えば、道路)を走行する。
【0094】
ドライブレコーダー832は、タブレット831が取得した位置の道路におけるセンサ情報(例えば、画像及び加速度)を取得する。そして、ドライブレコーダー832は、取得したセンサ情報をコンピュータ810に出力する。
【0095】
コンピュータ810は、ドライブレコーダー832から取得したセンサ情報を用いて、構造物(例えば、道路)の劣化を判定する。そして、コンピュータ810は、判定結果を表示システム840に出力する。
【0096】
表示システム840は、取得した判定結果を所定の装置(例えば、液晶ディスプレイ)に表示する。
【0097】
なお、劣化判定システム70に含まれるコンピュータ810、SARシステム820、車両830、タブレット831、ドライブレコーダー832、及び、表示システム840は、特に制限などはない。コンピュータ810、SARシステム820、車両830、タブレット831、ドライブレコーダー832、及び、表示システム840としては、一般的に利用可能な製品及びシステムが用いられてもよい。そのため、これらの詳細な説明を省略する。
【0098】
【0099】
センサ情報取得装置32は、直接的ではなく、間接的に、センサ情報を劣化判定装置10に出力してもよい。例えば、センサ情報取得装置32は、リムーバルな記憶装置(例えば、Universal Serial Bus(USB)メモリ)にセンサ情報を保存してもよい。そして、利用者が、劣化判定装置10に接続された読み取り装置を用いて、リムーバルな記憶装置(例えば、USBメモリ)に保存されたセンサ情報を、劣化判定装置10に出力してもよい。
【0100】
なお、劣化判定装置10は、移動体30に搭載されてもよい。
【0101】
次に、劣化判定装置10の構成を説明する。
【0102】
劣化判定装置10は、変位取得部110と、位置抽出部120と、位置出力部130と、センサ情報取得部140と、劣化判定部150と、判定結果出力部160とを含む。なお、各構成は、図示しない記憶部に、取得した情報、及び/又は、生成した情報を保存してもよい。この場合、各構成は、記憶部から必要な情報を取得してもよい。なお、以下の説明は、説明の便宜のため、記憶部を用いない場合の動作を説明する。
【0103】
変位取得部110は、SAR20から、判定対象の構造物を含む地表の変位の情報(例えば、地表の変位、及び、変位の位置)を取得する。なお、変位取得部110が地表の変位の情報を取得するタイミングは、任意である。変位取得部110は、定期的(例えば、毎月の決まった日)に、地表の変位の情報を取得してもよい。あるいは、変位取得部110は、利用者の指示に対応して、SAR20から、地表の変位の情報を取得してもよい。
【0104】
そして、変位取得部110は、取得して地表の変位の情報を位置抽出部120に出力する。
【0105】
なお、劣化判定装置10は、SAR20の測定結果(例えば、SAR画像)を用いて、地表の変位を解析する構成(図示せず)を備えてもよい。この場合、劣化判定装置10は、SAR20から観測結果(例えば、SAR画像)を取得してよい。
【0106】
位置抽出部120は、地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定のためのセンサ情報を取得する位置を抽出する。
【0107】
なお、位置抽出部120は、抽出する位置として、個別の位置に限らず、複数位置を含む範囲を抽出してもよい。つまり、位置抽出部120は、地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定のためのセンサ情報を取得する位置、及び/又は、範囲を抽出してもよい。ただし、以下の説明では、説明の煩雑さを避けるため、複数の位置を含む範囲を含めて、「位置」と呼ぶ。
【0108】
位置抽出部120は、具体的には、センサ情報を取得する位置として、地表の変位が所定の条件を満たす位置を抽出する。
【0109】
位置抽出部120が位置の抽出に用いる条件は、任意である。利用者が、判定対象となる構造物に対応して、条件を決定すればよい。そして、利用者が、劣化判定装置10の利用の前に、劣化判定装置10に、決定した条件を設定すればよい。
【0110】
例えば、地表の沈下が大きい路面は、他の路面より、劣化の進みが速いと想定される。そこで、位置抽出部120は、路面における地盤沈下が大きい範囲(例えば、沈下量が閾値を超えている範囲)の位置を抽出してもよい。この場合、条件は、「地表の沈下量が閾値を超えている」となる。
【0111】
さらに、位置抽出部120は、抽出した位置として、条件を満足する位置に加え、所定の位置を追加してもよい。
【0112】
例えば、地盤の沈下は、周辺に広がる場合がある。そこで、位置抽出部120は、地盤沈下が大きい範囲に加え、その周辺の所定の範囲を抽出してもよい。具体的には、位置抽出部120は、地盤沈下の大きい位置に近接する位置を抽出してもよい。
【0113】
あるいは、例えば、地盤沈下が発生している範囲と発生していない範囲とに跨った構造物は、その境目において、ストレスが加わる。このように、地盤沈下の境界は、劣化が発生しやすい領域である。そこで、位置抽出部120は、地盤沈下が大きい範囲に加え、境界を含む周辺の所定の範囲を抽出してもよい。
【0114】
あるいは、位置抽出部120は、所定の情報を用いて、抽出する位置を選択、又は、追加してもよい。
【0115】
所定の情報は、地表の変位に影響を与える情報であってもよい。例えば、地表の変位に影響を与える情報とは地下の工事などである。地下の工事は、地表の構造物の地盤を変化させる場合がある。そこで、位置抽出部120は、所定の組織(例えば、工事の施工会社、又は、工事を監督する官公庁)から、判定対象の構造物及び構造物の周辺の地下の工事に関連する情報を取得し、取得した情報を参照して、抽出する位置を選択、又は、追加してもよい。あるいは、位置抽出部120は、安全性を考慮して、地下の工事から所定の範囲までの位置を追加してもよい。
【0116】
所定の情報は、所定の装置から取得した監視に関連する情報であってもよい。例えば、所定の装置から取得した監視に関連する情報は、過去の陥没及び水道管の割れなどの事故の情報、及び/又は、周辺住民から苦情などである。位置抽出部120は、上記の情報を参照して、抽出する位置を選択、又は、追加してもよい。
【0117】
所定の情報は、過去の劣化判定情報であってもよい。例えば、位置抽出部120は、過去に取得したセンサ情報を用いて、劣化判定を行った結果を踏まえて、抽出する位置を選択または追加してもよい。具体的には、過去の劣化判定の結果、劣化が大きいと判定された位置または劣化の進行が見られた位置などである。
【0118】
所定の情報は、過去の走行実績などであってもよい。例えば、位置抽出部120は、その位置を走行してセンサデータを取得した走行頻度や、最後にその位置を走行してセンサデータを取得した時からの経過時間を踏まえて、抽出する位置を選択または追加してもよい。
【0119】
図1において、劣化判定システム70は、このような情報の取得元の一例として、情報提供装置50を含んでいる。つまり、情報提供装置50は、上記のような、位置抽出部120が位置の抽出において参照する情報を提供する。ただし、情報提供装置50が提供する情報は、上記に限定されない。利用者が、適宜、情報提供装置50から取得する情報を決定すればよい。
【0120】
なお、劣化判定装置10が所定の情報を用いない場合、劣化判定システム70は、情報提供装置50を含まなくてもよい。
【0121】
位置抽出部120は、複数の時間における地表の変位を用いて、位置を抽出してもよい。例えば、劣化判定装置10は、図示しない記憶部に、履歴として、地表の変位の情報を保存してもよい。この場合、位置抽出部120は、地表の変位に加え、履歴を用いて算出した地表変位速度を用いて、位置を抽出してもよい。または、位置抽出部120は、履歴を用いて算出した地表変位速度を用いて、位置を抽出してもよい。あるいは、位置抽出部120は、前回の変位との差が所定の閾値より大きくなっている位置を抽出してもよい。
【0122】
また、さらに、位置抽出部120は、抽出した位置に対してセンサ情報を取得する優先度を付与してもよい。例えば、位置抽出部120は、複数位置を含む範囲を抽出した場合に、地盤の沈下量が大きい位置ほど高い優先度を付与してもよい。または、位置抽出部120は、地表変位速度が大きい位置ほど高い優先度を付与してもよい。
【0123】
位置抽出部120は、所定の情報を用いて抽出した位置に対してセンサ情報を取得する優先度を付与してもよい。
【0124】
例えば、位置抽出部120は、地表の変位に影響を与える情報を基に優先度を付与してもよい。具体的には地下の工事が行われている位置またはその周辺の位置の優先度が高くなるようにしてもよい。
【0125】
例えば、位置抽出部120は、所定の装置から取得した監視に関連する情報を基に優先度を付与してもよい。具体的には、過去の陥没及び水道管の割れなどの事故の情報、及び/又は、周辺住民から苦情などがあった位置の優先度が高くなるようにしてもよい。
【0126】
例えば、位置抽出部120は、過去の劣化判定情報を基に優先度を付与してもよい。具体的には、過去に劣化が大きいと判定された位置または劣化の進行が見られた位置の優先度が高くなるようにしてもよい。
【0127】
例えば、位置抽出部120は、過去の走行実績を基に優先度を付与してもよい。具体的には、走行頻度が少ないところや過去にその位置でセンサデータを取得したときからの経過時間が長いところの優先度が高くなるようにしてもよい。
【0128】
また、位置抽出部120は、上述した情報を複数組み合わせて優先度を付与してもよい。
【0129】
そして、位置抽出部120は、抽出した位置を位置出力部130に出力する。
【0130】
位置出力部130は、位置抽出部120が抽出した位置を、端末装置31に出力する。
【0131】
なお、位置出力部130は、位置を他の情報に関連付けて、端末装置31に出力してもよい。例えば、劣化判定装置10が図示しない記憶部に判定対象の構造物を含む地図データを保存している場合、位置出力部130は、保存されている地図データと合わせて位置を出力してもよい。
【0132】
あるいは、位置出力部130は、優先度を含めて出力してもよい。
【0133】
センサ情報取得部140は、センサ情報取得装置32から、位置出力部130が出力した位置に対応したセンサ情報を取得する。そして、センサ情報取得部140は、取得したセンサ情報を劣化判定部150に出力する。
【0134】
劣化判定部150は、取得したセンサ情報を用いて、構造物の劣化(例えば、構造物の表層の劣化の位置と劣化度)を判定する。
【0135】
劣化判定部150は、劣化の判定において、センサ情報に加え、変位取得部110が取得した地表の変位の情報を用いてもよい。
【0136】
例えば、地表の変位がない又は小さい場合、道路の舗装は、表層からひび割れが進む場合が多い(以下、「第1の劣化状態」と呼ぶ)。
【0137】
しかし、地盤沈下が発生している場合、道路の舗装は、表層でなく、地盤に近い部分(深層)からひび割れが発生する場合がある。そして、この場合、ひび割れは、深層から表層に広がっていく。すなわち、地盤沈下に起因してひび割れが生じる場合、ひび割れは、深層から表層に広がっていく。そのため、この場合、表層にひび割れが現れた時点では、既に、舗装は、下部から上部の全体において、ひび割れが発生している(以下、「第2の劣化状態」と呼ぶ)。
【0138】
そこで、劣化判定部150は、構造物の劣化の判定において、センサ情報に加え、判定対象の構造物を含む地表の変位を用いて、センサ情報だけでは判定できないような劣化を判定してもよい。例えば、劣化判定部150は、判定の結果として、第1の劣化状態と第2の劣化状態との区別を判定してもよい。
【0139】
なお、劣化判定部150は、複数の時間におけるセンサ情報を用いて、劣化を判定してもよい。例えば、劣化判定装置10は、図示しない記憶部に、履歴として、センサ情報を保存してもよい。この場合、劣化判定部150は、履歴として保存されたセンサ情報を用いて(例えば、劣化速度を用いて)、劣化を判定してもよい。
【0140】
さらに、劣化判定部150は、所定の情報を用いて劣化に対して、詳細な点検または修繕の優先度を設定して、設定した劣化の優先度を劣化の判定結果に含めてもよい。
【0141】
例えば、劣化判定部150は、劣化度及び地表の変位を用いて、劣化に優先度を設定してもよい。例えば、劣化判定部150は、地表の変位の大きさを用いて、同程度の劣化度の判定結果に優先度を設定してもよい。
【0142】
あるいは、劣化判定部150は、過去におけるセンサ情報の取得に関連する情報(例えば、過去の取得の頻度、過去の判定結果、及び/又は、最後の測定からの経過時間)を参照して、劣化に優先度を設定してもよい。
【0143】
さらに、劣化判定部150は、履歴として保存されたセンサ情報を用いて算出した劣化速度、及び/又は、履歴として保存された地表の変位を用いて算出した地表変位速度を用いて、劣化に優先度を設定してもよい。例えば、劣化判定部150は、劣化速度と、地表変位速度とのそれぞれに設定した重みを用いた加重平均の値を用いて、劣化に優先度を設定してもよい。
【0144】
あるいは、劣化判定部150は、情報提供装置50から取得した情報を参照して、劣化に優先度を設定してもよい。例えば、劣化判定部150は、過去の事故、又は、周辺住民の苦情の状態を考慮して優先度を設定してもよい。
【0145】
このように、劣化判定部150は、所定の情報に基づいて、劣化に優先度を設定してもよい。
【0146】
劣化判定部150における判定の手法は、任意である。例えば、劣化判定部150における判定は、構造物に関する所見(例えば、同種の構造物の過去の劣化の進行状態の記録)に基づいて決定されてもよい。あるいは、劣化判定部150は、AIを用いて劣化を判定してもよい。
【0147】
なお、劣化判定部150は、判定結果に、変位取得部110が取得した地表の変位の情報、位置抽出部120が抽出した位置、及び、センサ情報取得部140が取得したセンサ情報のいずれか一部又は全てを含めてもよい。
【0148】
そして、劣化判定部150は、判定結果を判定結果出力部160に出力する。
【0149】
判定結果出力部160は、劣化判定部150における判定結果を所定の装置(例えば、表示装置40)に出力する。
【0150】
なお、判定結果出力部160は、他の情報に関連付けて判定結果を出力してもよい。例えば、劣化判定装置10が図示しない記憶部に判定対象の構造物を含む地図データを保存している場合、判定結果出力部160は、保存されている地図データと合わせて判定結果を出力してもよい。
【0151】
なお、判定結果出力部160は、判定結果に、地表の変位の情報、センサ情報を取得する位置、及び、センサ情報のいずれか一部又は全てが含まれている場合、それらの情報を、全て、又は、一部を選択して出力してもよい。
【0152】
あるいは、劣化判定部150が劣化に対して、詳細な点検または修繕の優先度を設定している場合、判定結果出力部160は、優先度に基づいて出力する判定結果を選択してもよい。例えば、判定結果出力部160は、利用者からの指示に従って、所定の範囲の優先度となっている劣化を出力してもよい。
【0153】
なお、表示装置40が、詳細な点検または修繕の優先度を用いて、表示を変更してもよい。
【0154】
このように、劣化判定装置10は、劣化の判定のためのセンサ情報を取得する位置として、SAR20から取得した地表の変位が所定の条件(例えば、地盤沈下が閾値以上)となっている位置を抽出する。そして、劣化判定装置10は、抽出した位置を端末装置31に出力する。
【0155】
つまり、劣化判定装置10は、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定するための情報として、地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定のためのセンサ情報を取得する位置を提供する。
【0156】
さらに、劣化判定装置10は、出力した位置におけるセンサ情報を、センサ情報取得装置32から取得する。そして、劣化判定装置10は、取得したセンサ情報を用いて、その位置の劣化を判定する。
【0157】
このように、劣化判定装置10は、SAR20から取得した地表の変位が所定の条件を満たす位置(例えば、地盤沈下が大きい位置)における詳細な劣化(例えば、路面の劣化)を判定することができる。
【0158】
[動作の説明]
次に、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10の動作について、図面を参照して説明する。
【0159】
まず、劣化判定装置10におけるセンサ情報を取得する位置を出力する動作について説明する。
【0160】
図3は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10におけるセンサ情報を取得する位置を出力する動作の一例を示すフロー図である。
【0161】
変位取得部110は、SAR20から、地表の変位の情報を取得する(ステップS501)。
【0162】
位置抽出部120は、地表の変位に基づいて、センサ情報を取得する位置を抽出する(ステップS502)。
【0163】
そして、位置出力部130は、抽出した位置を所定の装置(例えば、端末装置31)に出力する(ステップS503)。なお、位置出力部130は、抽出した位置を保存してもよい。
【0164】
劣化判定装置10は、
図3に示したような動作に基づいて、地表の変位に基づいて、センサ情報を取得する位置を出力する。
【0165】
端末装置31は、出力された位置を表示する。
【0166】
図面を参照して、端末装置31における表示の一例を説明する。
【0167】
【0168】
図4における各線が、道路を示す。なお、道路の太さは、道路の種類を示している。例えば、太い道路は国道であり、細い道路は都道府県道、又は、市町村道である。
【0169】
図5は、抽出された位置の表示の一例を示す図である。
【0170】
図5において、端末装置31は、実線を用いて、センサ情報を取得する道路を示す。破線は、センサ情報を取得する道路として抽出されなかった道路である。
【0171】
なお、
図5において、端末装置31は、楕円を用いて、抽出された範囲(地盤沈下が大きい範囲)と、抽出された範囲に所定の周辺領域を追加した領域(センサ情報を取得する範囲)とを示している。
【0172】
次に、図面を参照して、劣化判定装置10における劣化を判定する動作について説明する。
【0173】
図6は、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10における劣化を判定する動作の一例を示すフロー図である。
【0174】
センサ情報取得部140は、センサ情報取得装置32からセンサ情報を取得する(ステップS511)。
【0175】
劣化判定部150は、センサ情報を用いて、構造物の劣化を判定する(ステップS512)。なお、劣化判定部150は、劣化の判定において、センサ情報に加え、地表の変位の情報を用いてもよい。
【0176】
判定結果出力部160は、判定の結果を所定の装置(例えば、表示装置40)に出力する(ステップS513)。
【0177】
劣化判定装置10は、
図6に示したような動作に基づいて、取得したセンサ情報を用いて、構造物の劣化を判定して、出力する。
【0178】
表示装置40は、劣化判定装置10の判定結果を表示する。
【0179】
図7は、劣化の表示の一例を示す図である。
図7は、
図5に示されているセンサ情報を取得する範囲におけるセンサ情報を用いた劣化の判定結果の表示の一例である。
【0180】
図7において、表示装置40は、黒い円を用いて、劣化と判定された位置を示している。さらに、表示装置40は、強調表示(感嘆符を付した黒丸)を用いて、劣化の程度が大きい位置を示している。さらに、表示装置40は、上記とは別の強調表示(×印を付した黒丸)を用いて、地表の変位が大きい領域と地表の変位が小さい領域との境界において劣化の程度が大きいと判定された位置を示している。
【0181】
このように、表示装置40は、劣化の程度及び種類などに対応して、表示を変更してもよい。
【0182】
なお、表示装置40は、劣化部分の詳細を表示してもよい。
【0183】
【0184】
図8において、表示装置40は、
図7において、利用者から指定され位置における画像を示し、矩形を用いて画像内における劣化の位置を示す。
【0185】
表示装置40は、各矩形における劣化の状態(局所的な劣化の状態)に対応して表示を変更してもよい。例えば、
図8において、表示装置40は、強調表示(斜線)を用いて、矩形内に複数の劣化を検出した領域を示している。また、表示装置40は、異なる劣化種別(ひびわれ、ポットホールなど)が検出された領域を、それぞれ異なる態様で表示してもよいし、劣化の進行度合いに応じて異なる態様で表示してもよい。
【0186】
ただし、表示装置40における表示は、上記に限定されない。
【0187】
例えば、劣化判定装置10が判定結果に地表の変位を含める場合、表示装置40は、劣化に加え、地表の変位を表示してもよい。
【0188】
この場合、表示装置40は、利用者の指示に従って、地表の変位の表示を切り替えてもよい。
【0189】
例えば、地表の変位の表し方には、複数の種類(例えば、累計(例えば、週単位の累計)、速度(例えば、年単位の平均速度)、又は、前回からの変化量(例えば、沈下の差分値))がある。そこで、表示装置40は、利用者からの指示に基づいて、表示する地表の変位を切り替えてもよい。
【0190】
例えば、地表の変位は、一般的に、ある程度の期間において、連続的に変化する。このような、ある程度の期間における変化を確認する場合、利用者は、表示装置40に対して、所定の時間範囲における平均速度の表示を指示する。この場合、表示装置40は、地表の変位として、所定の時間範囲における平均速度を表示する。
【0191】
しかし、例えば、地下の工事に伴う陥没、又は、大雨による地下水位の上昇などに伴う変位は、平均速度ではなく、累積を用いた方が、判定の精度が向上する場合がある。そこで、利用者は、上記のような場合の判定として、表示装置40に、累積の表示を指示してもよい。この場合、表示装置40は、地表の変位として、累積を表示する。
【0192】
このように、表示装置40は、地表の変位の表示を切り替えてもよい。
【0193】
[効果の説明]
次に、第1の実施形態にかかる劣化判定装置10の効果について説明する。
【0194】
第1の実施形態にかかる劣化判定装置10は、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定するための情報を提供するという効果を奏することができる。
【0195】
その理由は、次のとおりである。
【0196】
劣化判定装置10は、変位取得部110と、位置抽出部120と、位置出力部130とを含む。変位取得部110は、地表の変位の情報を取得する。位置抽出部120は、地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する。位置出力部130は、抽出した位置を出力する。
【0197】
例えば、地盤沈下が大きいところは、路面などの劣化の進行が速いと推定される。つまり、地盤沈下が大きいところは、詳細に劣化を判定した方が望ましい部分である。
【0198】
劣化判定装置10は、SAR20から取得した地表の変位が所定の条件を満足する位置(例えば、地盤が閾値より沈下している位置)を、センサ情報を取得する位置として、所定の装置(例えば、端末装置31)に出力する。
【0199】
SARを利用した地表の変位の空間分解能は、数mから数十m程度である。これに対し、センサ情報を利用した劣化の判定の空間分解能は、数cmから数m程度である。このように、センサ情報を利用した劣化の判定の空間分解能は、地表の変位の空間分解能より高い。そのため、センサ情報を利用した劣化の判定は、地表の変位を用いた判定に比べ、より詳細に劣化を判定できる。
【0200】
このように、劣化判定装置10は、構造物において、地表の変位を用いて、より詳細に判定した方がよい位置(つまり、センサ情報を取得して劣化を判定する位置)を抽出して出力する。
【0201】
そのため、利用者は、劣化判定装置10が出力した情報を用いて、より詳細に劣化を判定するためにセンサ情報を取得した方がよい位置を把握できる。例えば、利用者は、その位置においてセンサ情報を取得して、劣化を判定すればよい。
【0202】
さらに、劣化判定装置10は、センサ情報取得部140と、劣化判定部150と、判定結果出力部160とを含む。センサ情報取得部140は、出力した位置におけるセンサ情報を取得する。劣化判定部150は、取得したセンサ情報を用いて劣化を判定する。判定結果出力部160は、判定の結果を出力する。
【0203】
劣化判定装置10は、上記の構成を用いて、出力した位置に対応するセンサ情報を取得し、その位置における劣化を判定する。
【0204】
そのため、劣化判定装置10は、地表の変位が所定の条件を満たす位置における劣化を、センサ情報を用いて、より詳細に判定して、出力できる。
【0205】
例えば、利用者は、センサ情報取得装置32を利用して劣化判定装置10が出力した位置のセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報を劣化判定装置10に入力する。劣化判定装置10は、取得したセンサ情報に基づいて劣化を判定する。
【0206】
利用者は、劣化判定装置10が出力する劣化の判定結果を用いてより詳細な劣化を把握できる。
【0207】
劣化判定システム70は、劣化判定装置10と、SAR20と、端末装置31とを含む。SAR20は、劣化判定装置10に地表の変位の情報を出力する。劣化判定装置10は、SAR20から取得した地表の変位の情報に基づいて、センサ情報を取得する位置を抽出して出力する。端末装置31は、劣化判定装置10から位置を取得して出力する。
【0208】
このような構成を用いて、劣化判定システム70は、構造物の劣化判定において、利用者に対して、SAR20が出力する地表の変位に基づいて、センサ情報を用いてより詳細に劣化を判定するための位置を提供する。
【0209】
さらに、劣化判定システム70は、移動体30と、センサ情報取得装置32と、表示装置40とを含む。
【0210】
移動体30は、センサ情報取得装置32を搭載又は牽引して、端末装置31に出力された位置を移動する。センサ情報取得装置32は、劣化判定装置10から取得した位置におけるセンサ情報を取得し、劣化判定装置10に出力する。劣化判定装置10は、取得したセンサ情報を用いて、劣化を判定し、判定結果を表示装置40に出力する。表示装置40は、劣化判定装置10から取得した判定の結果を表示する。
【0211】
このような構成を用いて、劣化判定システム70は、利用者に、地表の変位を用いた判定に比べ、より詳細な判定結果を提供できる。
【0212】
なお、構造物は、一般的に、かなりの大きさを備えている。例えば、地方自治体が管理する道路は、数百kmから数千kmとなる。そのため、各自治体において、管理する道路の状態を監視することは、大きな負担となっている。
【0213】
そこで、判定の負荷を低減するため、ドライブレコーダーの画像を用いて路面の劣化を判定する装置が、道路の監視に用いられるようになってきている。
【0214】
しかし、このようなドライブレコーダーを用いて道路の劣化を判定する装置を用いても、すべての道路を監視する場合、その工数は、まだ、かなり大きな工数となる。そこで、監視対象となる位置を、選択する技術が望まれている。
【0215】
劣化判定装置10は、SAR20の解析結果を用いて、構造物において、より詳細に判定した方がよい位置を抽出して出力する。つまり、劣化判定装置10が出力するセンサ情報を取得する位置は、劣化が発生している、又は、近い将来において劣化が発生する可能性が高い位置である。そのため、利用者は、劣化判定装置10の出力を用いて、優先して監視する位置を把握できる。
【0216】
このように、劣化判定装置10は、ドライブレコーダーなどのセンサ情報を用いて劣化を判定する装置を利用する場合における、センサ情報を取得する位置を絞り込む効果を提供できる。
【0217】
また、SAR20の解析に用いるデータの取得の周期は、数週間から数カ月に1回程度である。これに対し、構造物の劣化には、数日で大きく変化する場合がある。例えば、地下にトンネルを設けるシールド工法は、一日に数十m進む場合もある。このような工事に伴う陥没などの監視は、SAR20のデータの取得周期より短い周期で監視することが望ましい。
【0218】
劣化判定システム70は、例えば、移動体30及びセンサ情報取得装置32として、車両とドライブレコーダーとを用いると、一日又は数日の単位で、センサ情報を取得できる。そのため、劣化判定システム70は、SAR20のデータの取得周期より短い周期で劣化を判定するという効果を得ることができる。
【0219】
<第2の実施形態>
劣化判定システム70は、構造物の劣化の判定を劣化判定装置10とは異なる装置を用いてもよい。この場合、劣化判定装置10は、劣化の判定に関連する構成を含まなくてもよい。
【0220】
図9は、第2の実施形態にかかる劣化判定装置11の構成の一例を示すブロック図である。
【0221】
劣化判定装置11は、変位取得部110と、位置抽出部120と、位置出力部130とを含む。変位取得部110は、地表の変位の情報を取得する。位置抽出部120は、地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する。位置出力部130は、抽出した位置を出力する。
【0222】
劣化判定装置11の各構成は、劣化判定装置10における対応する各構成と同様に動作する。
【0223】
このように構成された劣化判定装置11は、劣化判定装置10と同様の効果を得ることができる。すなわち、劣化判定装置11は、構造物の劣化判定において、より詳細に劣化を判定するための情報を提供するという効果を奏することができる。
【0224】
その理由は、劣化判定装置11の各構成が、劣化判定装置10における同様の構成と同様に動作するためである。
【0225】
なお、劣化判定装置11は、劣化判定装置10の最小構成である。
【0226】
(システム)
図10は、第2の実施形態にかかる劣化判定装置11を含む劣化判定システム71の構成の一例を示すブロック図である。
【0227】
劣化判定システム71は、劣化判定装置11と、SAR20と、端末装置31とを含む。SAR20は、劣化判定装置11に地表の変位の情報を出力する。劣化判定装置11は、SAR20から取得した地表の変位の情報に基づいて、センサ情報を取得する位置を抽出して出力する。端末装置31は、劣化判定装置11から位置を取得して出力する。
【0228】
このように構成された劣化判定システム71は、劣化判定システム70と同様の効果を得ることができる。すなわち、劣化判定システム71は、構造物において、より詳細に劣化を判定するための情報を提供するという効果を奏することができる。
【0229】
その理由は、劣化判定システム71の各構成が、劣化判定システム70における同様の構成と同様に動作するためである。
【0230】
なお、劣化判定システム71は、劣化判定システム70の最小構成である。
【0231】
<ハードウェア構成>
次に、劣化判定装置10及び11のハードウェア構成について、劣化判定装置10を用いて説明する。
【0232】
劣化判定装置10の各構成部は、ハードウェア回路で構成されてもよい。
【0233】
あるいは、劣化判定装置10において、各構成部は、ネットワークを介して接続した複数の装置を用いて、構成されてもよい。例えば、劣化判定装置10は、クラウドコンピューティングを利用して構成されてもよい。
【0234】
あるいは、劣化判定装置10において、複数の構成部は、1つのハードウェアで構成されてもよい。
【0235】
あるいは、劣化判定装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ装置として実現されてもよい。劣化判定装置10は、上記構成に加え、ネットワークインターフェース回路(NIC:Network Interface Circuit)を含むコンピュータ装置として実現されてもよい。
【0236】
図11は、劣化判定装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0237】
劣化判定装置10は、CPU610と、ROM620と、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを含み、コンピュータ装置を構成している。
【0238】
CPU610は、ROM620及び/又は記憶装置640からプログラムを読み込む。そして、CPU610は、読み込んだプログラムに基づいて、RAM630と、記憶装置640と、IOC650と、NIC650とを制御する。そして、CPU610を含むコンピュータは、これらの構成を制御し、
図1に示されている、変位取得部110と、位置抽出部120と、位置出力部130と、センサ情報取得部140と、劣化判定部150と、判定結果出力部160としての各機能を実現する。
【0239】
CPU610は、各機能を実現する際に、RAM630又は記憶装置640を、プログラムの一時的な記憶媒体として使用してもよい。
【0240】
また、CPU610は、コンピュータで読み取り可能にプログラムを記憶した記録媒体690が含むプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。あるいは、CPU610は、NIC650を介して、図示しない外部の装置からプログラムを受け取り、RAM630又は記憶装置640に保存して、保存したプログラムを基に動作してもよい。
【0241】
ROM620は、CPU610が実行するプログラム及び固定的なデータを記憶する。ROM620は、例えば、P-ROM(Programmable-ROM)又はフラッシュROMである。
【0242】
RAM630は、CPU610が実行するプログラム及びデータを一時的に記憶する。RAM630は、例えば、D-RAM(Dynamic-RAM)である。
【0243】
記憶装置640は、劣化判定装置10が長期的に保存するデータ及びプログラムを記憶する。また、記憶装置640は、CPU610の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置640は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)、又は、ディスクアレイ装置である。
【0244】
ROM620と記憶装置640とは、不揮発性(non-transitory)の記録媒体である。一方、RAM630は、揮発性(transitory)の記録媒体である。そして、CPU610は、ROM620、記憶装置640、又は、RAM630に記憶されているプログラムを基に動作可能である。つまり、CPU610は、不揮発性記録媒体又は揮発性記録媒体を用いて動作可能である。
【0245】
NIC650は、ネットワークを介して、他の装置(SAR20、端末装置31、センサ情報取得装置32、表示装置40、及び、情報提供装置50)とのデータのやり取りを中継する。NIC650は、例えば、LAN(Local Area Network)カードである。さらに、NIC650は、有線に限らず、無線を用いてもよい。
【0246】
このように構成された劣化判定装置10は、
図1の劣化判定装置10と同様の効果を得ることができる。
【0247】
その理由は、
図11に示されている劣化判定装置10のCPU610が、プログラムに基づいて
図1の劣化判定装置10と同様の機能を実現できるためである。
【0248】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0249】
(付記1)
地表の変位の情報を取得する変位取得手段と、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する位置抽出手段と、
抽出した位置を出力する位置出力手段と
を含む劣化判定装置。
【0250】
(付記2)
センサ情報を用いた劣化の判定の空間分解能が、地表の変位の空間分解能より高い
付記1に記載の劣化判定装置。
【0251】
(付記3)
地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
付記1又は2に記載の劣化判定装置。
【0252】
(付記4)
地表の変位の情報が、地表の変位の履歴を用いて算出した地表変位速度を含み、
センサ情報を取得する位置が、地表変位速度が閾値を超えている位置を含む
付記1ないし3のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【0253】
(付記5)
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量または地表変位速度が閾値を超えている位置に近接する位置をさらに含む
付記1ないし4のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【0254】
(付記6)
位置抽出手段が、地表の変位の情報に加え、所定の情報に基づいてセンサ情報を取得する位置を抽出する
付記1ないし5のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【0255】
(付記7)
所定の情報が、地表の変位に影響を与える情報、監視に関連する情報、過去の劣化情報、及び、走行実績の少なくとも一つを含む
付記6に記載の劣化判定装置。
【0256】
(付記8)
位置抽出手段が、地表の変位の情報及び所定の情報の少なくとも一方に基づいて、センサ情報を取得する位置に優先度を付与する
付記1ないし7のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【0257】
(付記9)
出力した位置におけるセンサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、
取得したセンサ情報を用いて劣化を判定する劣化判定手段と、
判定の結果を出力する判定結果出力手段と
を含む付記1ないし8のいずれか1項に記載の劣化判定装置。
【0258】
(付記10)
劣化判定手段が、地表の変位の情報を用いて劣化を判定する
付記9に記載の劣化判定装置。
【0259】
(付記11)
劣化判定手段が、所定の情報に基づいて、劣化に対して、詳細な点検または修繕の優先度を設定する
付記9又は10に記載の劣化判定装置。
【0260】
(付記12)
付記1ないし8のいずれか1項に記載の劣化判定装置と、
劣化判定装置に地表の変位の情報を出力する合成開口レーダーと、
劣化判定装置から位置を取得して出力する端末装置と
を含む劣化判定システム。
【0261】
(付記13)
付記9又は10に記載の劣化判定装置と、
劣化判定装置に地表の変位の情報を出力する合成開口レーダーと、
劣化判定装置から位置を取得して出力する端末装置と、
端末装置が出力した位置におけるセンサ情報を取得して劣化判定装置に出力するセンサ情報取得装置と、
劣化判定装置から判定の結果を取得して出力する表示装置と
を含む劣化判定システム。
【0262】
(付記14)
表示装置が、現在位置に又は所定の位置から劣化判定装置から取得した位置までの経路を出力する
付記13に記載の劣化判定システム。
【0263】
(付記15)
付記6ないし8及び11のいずれか1項に記載の劣化判定装置と、
劣化判定装置に地表の変位の情報を出力する合成開口レーダーと、
劣化判定装置から位置を取得して出力する端末装置と、
端末装置が出力した位置におけるセンサ情報を取得して劣化判定装置に出力するセンサ情報取得装置と、
劣化判定装置から判定の結果を取得して出力する表示装置と、
劣化判定装置に所定の情報を出力する情報提供装置と
を含む劣化判定システム。
【0264】
(付記16)
地表の変位の情報を取得し、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出し、
抽出した位置を出力する
劣化判定方法。
【0265】
(付記17)
センサ情報を用いた劣化の判定の空間分解能が、地表の変位の空間分解能より高い
付記16に記載の劣化判定方法。
【0266】
(付記18)
地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
付記16又は17に記載の劣化判定方法。
【0267】
(付記19)
地表の変位の情報が、地表の変位の履歴を用いて算出した地表変位速度を含み、
センサ情報を取得する位置が、地表変位速度が閾値を超えている位置を含む
付記16ないし18のいずれか1項に記載の劣化判定方法。
【0268】
(付記20)
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量または地表変位速度が閾値を超えている位置に近接する位置をさらに含む
付記16ないし19のいずれか1項に記載の劣化判定方法。
【0269】
(付記21)
地表の変位の情報に加え、所定の情報に基づいてセンサ情報を取得する位置を抽出する
付記16ないし20のいずれか1項に記載の劣化判定方法。
【0270】
(付記22)
所定の情報が、地表の変位に影響を与える情報、監視に関連する情報、過去の劣化情報、及び、走行実績の少なくとも一つを含む
付記21に記載の劣化判定方法。
【0271】
(付記23)
地表の変位の情報及び所定の情報の少なくとも一方に基づいて、センサ情報を取得する位置に優先度を付与する
付記16ないし22のいずれか1項に記載の劣化判定方法。
【0272】
(付記24)
出力した位置におけるセンサ情報を取得し、
取得したセンサ情報を用いて劣化を判定し、
判定の結果を出力する
付記16ないし23のいずれか1項に記載の劣化判定方法。
【0273】
(付記25)
地表の変位の情報を用いて劣化を判定する
付記24に記載の劣化判定方法。
【0274】
(付記26)
所定の情報に基づいて、劣化に優先度を設定する
付記24又は25に記載の劣化判定方法。
【0275】
(付記27)
劣化判定装置が、付記16ないし23のいずれか1項に記載の方法を実行し、
合成開口レーダーが、劣化判定装置に地表の変位の情報を出力し、
端末装置が、劣化判定装置から位置を取得して出力する
劣化判定方法。
【0276】
(付記28)
劣化判定装置が、付記24又は25に記載の方法を実行し、
合成開口レーダーが、劣化判定装置に地表の変位の情報を出力し、
端末装置が、劣化判定装置から位置を取得して出力し、
センサ情報取得装置が、端末装置が出力した位置におけるセンサ情報を取得して劣化判定装置に出力し、
表示装置が、劣化判定装置から判定の結果を取得して出力する
劣化判定方法。
【0277】
(付記29)
表示装置が、現在位置に又は所定の位置から劣化判定装置から取得した位置までの経路を出力する
付記28に記載の劣化判定方法。
【0278】
(付記30)
劣化判定装置が、付記16ないし23及び26のいずれか1項に記載の方法を実行し、
合成開口レーダーが、劣化判定装置に地表の変位の情報を出力し、
端末装置が、劣化判定装置から位置を取得して出力し、
センサ情報取得装置が、端末装置が出力した位置におけるセンサ情報を取得して劣化判定装置に出力し、
表示装置が、劣化判定装置から判定の結果を取得して出力し、
情報提供装置が、劣化判定装置に所定の情報を出力する
劣化判定方法。
【0279】
(付記31)
地表の変位の情報を取得する処理と、
地表の変位の情報に基づいて、劣化の判定に用いるセンサ情報を取得する位置を抽出する処理と、
抽出した位置を出力する処理と
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する記録媒体。
【0280】
(付記32)
センサ情報を用いた劣化の判定の空間分解能が、地表の変位の空間分解能より高い
付記31に記載の記録媒体。
【0281】
(付記33)
地表の変位の情報が、地盤の沈下量を含み、
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量が閾値を超えている位置を含む
付記31又は32に記載の記録媒体。
【0282】
(付記34)
地表の変位の情報が、地表の変位の履歴を用いて算出した地表変位速度を含み、
センサ情報を取得する位置が、地表変位速度が閾値を超えている位置を含む
付記31ないし33のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0283】
(付記35)
センサ情報を取得する位置が、地盤の沈下量または地表変位速度が閾値を超えている位置に近接する位置をさらに含む
付記31ないし34のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0284】
(付記36)
地表の変位の情報に加え、所定の情報に基づいてセンサ情報を取得する位置を抽出する処理
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する付記31ないし35のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0285】
(付記37)
所定の情報が、地表の変位に影響を与える情報、監視に関連する情報、過去の劣化情報、及び、走行実績の少なくとも一つを含む
付記36に記載の記録媒体。
【0286】
(付記38)
地表の変位の情報及び所定の情報の少なくとも一方に基づいて、センサ情報を取得する位置に優先度を付与する処理
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する付記31ないし37いずれか1項に記載の記録媒体。
【0287】
(付記39)
出力した位置におけるセンサ情報を取得する処理と、
取得したセンサ情報を用いて劣化を判定する処理と、
判定の結果を出力する処理と
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する付記31ないし38のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0288】
(付記40)
地表の変位の情報を用いて劣化を判定する処理
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する付記39に記載の記録媒体。
【0289】
(付記41)
所定の情報に基づいて、劣化に優先度を設定する処理
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する付記39又は40に記載の記録媒体。
【0290】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成及び詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0291】
10 劣化判定装置
11 劣化判定装置
20 SAR
30 移動体
31 端末装置
32 センサ情報取得装置
40 表示装置
50 情報提供装置
70 劣化判定システム
71 劣化判定システム
110 変位取得部
120 位置抽出部
130 位置出力部
140 センサ情報取得部
150 劣化判定部
160 判定結果出力部
610 CPU
620 ROM
630 RAM
640 記憶装置
650 NIC
690 記録媒体
810 コンピュータ
820 SARシステム
830 車両
831 タブレット
832 ドライブレコーダー
840 表示システム
880 ネットワーク