(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】劣化監視装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20240827BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240827BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240827BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20240827BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240827BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/3828
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
B60R16/04 W
(21)【出願番号】P 2023023070
(22)【出願日】2023-02-17
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃太
(72)【発明者】
【氏名】島貫 伊紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮川 仁
(72)【発明者】
【氏名】西谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輝
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/098686(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/026743(WO,A1)
【文献】特開2021-060198(JP,A)
【文献】特開2022-082585(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112560287(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109752656(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/382
G01R 31/3828
G01R 31/385
G01R 31/392
H01M 10/48
H02J 7/00
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの劣化を監視する劣化監視装置であって、
前記バッテリの使用状態を示す第1のパラメータ及び前記バッテリの劣化状態を示す第2のパラメータのデータを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの相関関係を求めると共に前記相関関係の変化に基づいて、前記バッテリの現在の状態を判定する演算部と、
を有
し、
前記現在の状態は、
前記バッテリが急激に劣化した状態、前記バッテリの点検が必要な状態、前記バッテリの交換が必要な状態又は前記バッテリの価値の残存状態である、
ことを特徴とする劣化監視装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、前記バッテリの駆動時間、前記バッテリの駆動停止時間、前記バッテリの消費電力積算量、前記バッテリの消費電流積算量、および、前記車両の走行距離のうち、少なくとも1つに関するパラメータであり、
前記第2のパラメータは、前記バッテリの容量維持率、および、前記バッテリの内部抵抗のうち、少なくとも1つに関するパラメータである、
ことを特徴とする請求項1記載の劣化監視装置。
【請求項3】
前記相関関係は、
前記第1のパラメータに対する前記第2のパラメータの減少率である、
ことを特徴とする請求項1記載の劣化監視装置。
【請求項4】
バッテリの使用状態を示すパラメータおよび前記バッテリの容量維持率を取得する取得部と、
前記パラメータに対する前記容量維持率の変化量および前記容量維持率に基づく前記バッテリの状態を示す情報を出力する出力部と、
を有し、
前記出力部は、
前記パラメータに対する前記容量維持率の変化量が第1の閾値以上であり、かつ、前記容量維持率が第2の閾値以上である場合、前記バッテリの状態が第1の状態であることを示す情報を出力し、
前記パラメータに対する前記容量維持率の変化量が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記容量維持率が第2の閾値未満である場合、前記バッテリの状態が第2の状態であることを示す情報を出力する、
ことを特徴とする劣化監視装置。
【請求項5】
前記出力部は、
前記パラメータに対する前記容量維持率の変化量が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記容量維持率が前記第2の閾値より小さい第3の閾値未満である場合、前記バッテリの状態が第3の状態であることを示す情報を出力する、
ことを特徴とする請求項
4記載の劣化監視装置。
【請求項6】
前記パラメータは、
前記バッテリの駆動時間、前記バッテリの駆動停止時間、前記バッテリの消費電力積算量、前記バッテリの消費電流積算量、および、車両の走行距離のうち、少なくとも1つに関するパラメータである、
ことを特徴とする請求項
4記載の劣化監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの劣化を監視する劣化監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリの劣化状態は、BMS(Battery management system;バッテリマネジメントシステム)からバッテリの容量維持率(State of Health;SOH(以下、「SOH」と記載する))を取得して、取得したSOHに基づいて判断していた。そして、従来は、取得したSOHを監視することにより、バッテリの交換要否判定等を行っていた。
【0003】
また、特許文献1は、バッテリの容量劣化状態を推定して、推定した容量劣化状態に基づく数値と、記憶部に記憶されているバッテリの必要容量に基づく数値と、の関係に基づいて、車両の利用者が所定の用途で車両を利用することができるか否かを示す情報を出力する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、どのような経緯によってバッテリが劣化してきたかを考慮していないため、バッテリの容量劣化状態を高精度で判定することができないという課題を有する。
【0006】
本開示の目的は、バッテリの使用状態を示す第1のパラメータとバッテリの劣化状態を示す第2のパラメータとの相関関係の変化を考慮してバッテリの現在の状態を判定するため、バッテリの現在の状態を精度よく判定することができる劣化監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る劣化監視装置は、車両に搭載されるバッテリの劣化を監視する劣化監視装置であって、前記バッテリの使用状態を示す第1のパラメータ及び前記バッテリの劣化状態を示す第2のパラメータのデータを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの相関関係を求めると共に前記相関関係の変化に基づいて、前記バッテリの現在の状態を判定する演算部と、を有し、前記現在の状態は、前記バッテリが急激に劣化した状態、前記バッテリの点検が必要な状態、前記バッテリの交換が必要な状態又は前記バッテリの価値の残存状態である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バッテリの使用状態を示す第1のパラメータとバッテリの劣化状態を示す第2のパラメータとの相関関係の変化を考慮してバッテリの現在の状態を判定するため、バッテリの現在の状態を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る劣化監視装置の構成を示すブロック図
【
図2】本開示の実施の形態1に係る劣化監視装置に記憶されるテーブルの一例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態1に係る劣化監視装置により求められる現在のSOHと駆動時間との相関関係が相関関係の推定結果から逸脱する一例を示す図
【
図4】本開示の実施の形態1に係る劣化監視装置により求められる現在のSOHと稼働時間との相関関係が相関関係の推定結果から逸脱する他の一例を示す図
【
図5】本開示の実施の形態2に係る車載装置の構成を示すブロック図
【
図6】本開示の実施の形態2に係る劣化監視装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示はこの実施の形態に限定されるものではない。なお、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
<劣化監視装置の構成>
本開示の実施の形態1に係る劣化監視装置3の構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
劣化監視装置3は、図示しない車両に搭載され、バッテリBTの劣化状態を監視する。劣化監視装置3は、車両情報を収集するVCU(Vehicle Control Unit;車両制御ユニット)1及びバッテリBTのバッテリ情報を収集するBMS2と接続している。
【0013】
ここで、車両情報は、経過時間(使用時間)、走行距離、及びバッテリBTの駆動時間又は駆動停止時間の情報である。バッテリ情報は、バッテリBTのSOH、バッテリBTの充電状態(State of Charge;SOC)、バッテリBTの消費電力積算量若しくは消費電流積算量、及びバッテリBTの内部抵抗の情報である。SOHは、バッテリBTにおいて新品時の容量に対して維持できている容量を表しており、バッテリBTの現在の容量を新品時の容量で除算することにより求められる。
【0014】
劣化監視装置3は、制御部30と記憶部35とを有する。制御部30は、CPU(Computing Processing Unit)である。記憶部35は、プログラムおよび後述のパラメータを記憶する不揮発性の記録媒体であって、例えば、RAM(Randam Access Memory)である。制御部30は、記憶部35から読み出したプログラムおよびパラメータを用いて、演算部31と、蓄積部32と、送信部33との機能を実現する。制御部30の機能モジュールとして、演算部31と、蓄積部32と、送信部33と、を有する。なお、制御部30は、1つのCPUに限らず、1以上のプロセッサで構成されていてもよく、さらに、1以上の電子回路との組み合わせによって構成されていてもよい。
【0015】
演算部31は、バッテリBTの実運用時及び過渡運転時において、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。演算部31は、車両情報及びバッテリ情報のデータを取得する取得部として機能する。ここで、実運用時とは、バッテリBTが電力を出し入れできる(稼働できる)状態の時である。また、過渡運転時とは、バッテリBTが充放電している状態の時である。
【0016】
演算部31は、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいて、バッテリBTの使用状態を示す第1のパラメータと、バッテリBTの劣化状態を示す第2のパラメータと、の相関関係(以下、「パラメータの相関関係」と記載する)を求めると共に、求めたパラメータの相関関係の変化の経緯よりパラメータの相関関係の変化の推移を推定する。ここで、第1のパラメータは、バッテリBTの駆動時間若しくは駆動停止時間、車両の走行距離、又はバッテリBTの消費電力積算量若しくは消費電流積算量等である。第2のパラメータは、バッテリBTのSOH、又はバッテリBTの内部抵抗等である。具体的には、演算部31は、パラメータの相関関係を示す曲線(以下、「劣化曲線」と記載する)を求めると共に、求めた劣化曲線に基づいて将来の劣化曲線を推定する。パラメータの相関関係は、例えば、第1のパラメータに対する第2のパラメータの減少率や、第2のパラメータが第1のパラメータの関数で表される場合における当該関数の係数である。例えば、演算部31は、駆動時間(第1のパラメータ)と、バッテリBTのSOH(第2のパラメータ)と、から、駆動時間(第1のパラメータ)に対するバッテリBTのSOH(第2のパラメータ)の減少率(相関関係)を取得する。演算部31は、駆動時間に対するバッテリBTのSOHの減少率の変化に基づいて、将来の駆動時間に対するバッテリBTのSOHの減少率の変化を推定する。
【0017】
演算部31は、パラメータの相関関係の変化の推移の推定結果に応じて、バッテリBTの現在の状態を判定する。演算部31は、パラメータの相関関係の変化の推移の推定結果に応じて、バッテリBTが急激に劣化した状態、バッテリBTの点検が必要な状態、バッテリBTの交換が必要な状態又はバッテリBTの価値の残存状態を判定する。具体的には、演算部31は、推定した将来の劣化曲線に対して現在のパラメータの相関関係が逸脱した場合に、バッテリBTの現在の状態を判定する。また、演算部31は、推定した将来の劣化曲線に対する現在のパラメータの相関関係の逸脱の度合いに応じて、バッテリBTの現在の状態を判定する。
【0018】
演算部31は、判定したバッテリBTの現在の状態を示すデータを、送信部33に出力すると共に蓄積部32に蓄積させる。
【0019】
蓄積部32は、演算部31により書き込まれた車両情報、バッテリ情報、劣化曲線及びバッテリBTの現在の状態を示すデータを記憶する。
【0020】
送信部33は、バッテリBTの現在の状態を図示しない表示装置に表示させるために、演算部31より入力されるバッテリBTの現在の状態を示すデータを表示装置に送信する。送信部33は、バッテリBTの現在の状態を示す情報を、外部に設けられた車両監視装置(サーバ)に出力するものであってもよい。すなわち、送信部33は、バッテリBTの現在の状態を示す情報を出力する出力部として機能する。
【0021】
<劣化監視装置の動作>
本発明の実施の形態1に係る劣化監視装置3の動作について、
図2から
図4を参照しながら、詳細に説明する。
図3及び
図4では、バッテリBTの使用状態を示す第1のパラメータとしてバッテリBTの駆動時間を用いると共にバッテリBTの劣化状態を示す第2のパラメータとしてSOHを用いる場合を一例として示している。
【0022】
まず、演算部31は、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。演算部31は、例えば
図2に示すテーブルを作成してVCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。
【0023】
次に、演算部31は、蓄積部32に蓄積させたデータに基づいて、SOHとバッテリBTの駆動時間との相関関係を示す劣化曲線を求める。例えば、演算部31は、
図2に示すテーブルにおけるバッテリBTの駆動時間を積算して駆動時間の積算値(駆動時間の積算値=b1+b2+b3+b4+b5)を求めて、SOHとバッテリBTの駆動時間の積算値との相関関係を示す劣化曲線を求める。
【0024】
次に、演算部31は、求めた劣化曲線に基づいて、将来のSOHとバッテリBTの駆動時間との相関関係を示す劣化曲線を推定する。具体的には、演算部31は、求めたバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が直線である場合又は直線に近い場合に、求めたバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係のうちの複数の値を用いて線形近似により将来のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係を推定する。線形近似では、単純減少であるため、y=ax+bの数式を用いる。一方、演算部31は、求めたバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が曲線である場合には、求めたバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係のうちの複数の値を用いた曲線近似等のカーブフィッテイングにより将来のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係を推定する。
【0025】
次に、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した将来の劣化曲線L1に対して逸脱する場合に、バッテリBTの現在の状態を判定する。
【0026】
演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した将来の劣化曲線L1に対して逸脱し、かつ、現在のバッテリBTのSOHが閾値TH1未満且つ閾値TH2以上である場合には、バッテリBTの現在の状態はバッテリBTの転用が可能な状態であると判定する。バッテリBTの転用が可能な状態は、バッテリBTの価値の残存状態「高」であるということもできる。また、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した将来の劣化曲線L1に対して逸脱し、かつ、現在のバッテリBTのSOHが閾値TH2未満且つ閾値TH3以上である場合には、バッテリBTの現在の状態はバッテリBTの点検が必要な状態であると判定する。バッテリBTの点検が必要な状態は、バッテリBTの価値の残存状態「低」であるともいうこともできる。更に、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した将来の劣化曲線L1に対して逸脱し、現在のバッテリBTのSOHが閾値TH3未満である場合には、バッテリBTの現在の状態はバッテリBTの交換が必要な状態であると判定する。
【0027】
図3は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が推定した劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L2になった場合を示している。
【0028】
図3の場合において、演算部31は、時刻t1において、求めた劣化曲線が劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L2となり且つ現在のバッテリBTのSOHが閾値TH2と閾値TH3との間であるため、バッテリBTの現在の状態はバッテリBTの点検が必要な状態及びバッテリBTの価値の残存状態「低」であると判定する。また、演算部31は、時刻t2において、求めた劣化曲線が劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L2となり且つ現在のバッテリBTのSOHが閾値TH3未満であるため、バッテリBTの現在の状態はバッテリBTの交換が必要な状態であると判定する。
【0029】
また、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱する場合において、逸脱の度合いに応じて、バッテリBTの現在の状態を判定する。
【0030】
具体的には、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱する場合において、現在のSOHが閾値TH11未満且つ閾値TH12以上である場合に、所定時間ΔTにおけるSOHの変化量が所定値以上の場合にはバッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態であると判定する。また、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱する場合において、現在のSOHが閾値TH12未満且つ閾値TH13以上である場合に、所定時間ΔTにおけるSOHの変化量が所定値以上の場合にはバッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態であると判定する。更に、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱する場合において、現在のSOHが閾値TH13未満である場合に、バッテリBTの交換が必要な状態であると判定する。
【0031】
図4は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が推定した劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L3又はL4になった場合を示している。
【0032】
図4の場合において、演算部31は、時刻t11において、求めた劣化曲線が劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L4となり且つ現在のバッテリBTのSOHが閾値TH11と閾値TH12との間であるため、時刻t10からt11までの所定時間ΔT1におけるSOHの変化量を求め、求めた変化量が第1の閾値以上である場合に、バッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態である第1の状態であると判定する。
【0033】
第1の閾値は、例えば、t10以前の駆動時間に対するバッテリBTのSOHの減少率の平均値から設定することができる。例えば、ある期間における減少率の平均値に対してマージンを加えた値を第1の閾値として設定する。これにより、バッテリBTの減少率が増大し、急激な劣化が発生する、または、今後発生する可能性が高いことを検知することが可能となる。また、第1の閾値は、あらかじめバッテリBTの種類や特性に応じて定められた固定値を用いてもよい。例えば、バッテリBTの設計上、想定される減少率の上限値を第1の閾値として設定してもよい。
【0034】
また、演算部31は、時刻t13において、求めた劣化曲線が劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L3となり且つ現在のバッテリBTのSOHが閾値TH12と閾値TH13の間であるため、時刻t12からt13までの所定時間ΔT2におけるSOHの変化量を求め、求めた変化量が第1の閾値以上である場合に、バッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態である第2の状態であると判定する。更に、演算部31は、時刻t14において、求めた劣化曲線が劣化曲線L1から逸脱して劣化曲線L3となり且つ現在のバッテリBTのSOHが閾値TH13未満であるため、バッテリBTの交換が必要な第3の状態であると判定する。
【0035】
送信部33は、演算部31が判定したバッテリBTの状態を、表示装置や外部の車両監視装置に出力する。表示装置や車両監視装置のユーザは、受信したバッテリBTの状態に基づいて、車両のユーザにバッテリBTの交換を提案したり、交換したバッテリBTを再利用する場合のユースケースを設定したりすることが可能となる。
【0036】
また、蓄積部32は、演算部31が判定したバッテリBTの状態を、バッテリ情報として記憶する。
【0037】
なお、上記の動作において、劣化曲線L1から逸脱した場合にバッテリBTの現在の状態を判定したが、これに限らず、劣化曲線L1から逸脱したか否かに関わらずバッテリBTの現在の状態を判定してもよい。例えば、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱したか否かに関わらず、現在のSOHが閾値TH11未満且つ閾値TH12以上である場合に、所定時間ΔTにおけるSOHの変化量が第1の閾値以上の場合にはバッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態であると判定する。また、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱したか否かに関わらず、現在のSOHが閾値TH12未満且つ閾値TH13以上である場合に、所定時間ΔTにおけるSOHの変化量が第1の閾値以上の場合にはバッテリBTが急激に劣化した状態及びバッテリBTの点検が必要な状態であると判定する。更に、演算部31は、現在のバッテリBTの駆動時間とSOHとの相関関係が、推定した劣化曲線L1に対して逸脱したか否かに関わらず、現在のSOHが閾値TH13未満である場合に、バッテリBTの交換が必要な状態であると判定する。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、バッテリBTの使用状態を示す第1のパラメータ及びバッテリBTの劣化状態を示す第2のパラメータのデータを蓄積する蓄積部32と、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいて、第1のパラメータと第2のパラメータとの相関関係を求めると共に相関関係の変化に基づいて、バッテリBTの現在の状態を判定する演算部31と、を有することにより、第1のパラメータと第2のパラメータとの相関関係を考慮してバッテリBTの現在の状態を判定するため、バッテリBTの現在の状態を精度よく判定することができる。
【0039】
(実施の形態2)
<劣化監視装置の構成>
本開示の実施の形態2に係る劣化監視装置6の構成について、
図5及び
図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0040】
なお、
図5及び
図6において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
劣化監視装置6は、車載装置4と無線回線又は有線回転によって接続しており、バッテリBTの劣化を推定する。ここで、車載装置4は、図示しない車両に搭載され、VCU1と、BMS2と、送信部5と、を備えている。送信部5は、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを劣化監視装置6に送信する。
【0042】
劣化監視装置6は、車載装置4が搭載されている車両の外部に設けられ、制御部130と記憶部135とを有する。制御部130は、CPU(Computing Processing Unit)である。記憶部135は、プログラムおよび上記のパラメータを記憶する不揮発性の記録媒体であって、例えば、RAMである。制御部130は、記憶部135から読み出したプログラムおよびパラメータを用いて、受信部7と、演算部31と、蓄積部32と、送信部33との機能を実現する。制御部130の機能モジュールとして、受信部7と、演算部31と、蓄積部32と、送信部33と、を有する。なお、制御部130は、1つのCPUに限らず、1以上のプロセッサで構成されていてもよく、さらに、1以上の電子回路との組み合わせによって構成されていてもよい。
【0043】
受信部7は、車載装置4の送信部5より送信されたデータを受信して演算部31に出力する。
【0044】
演算部31は、受信部7より入力される車両情報及びバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。
【0045】
なお、劣化監視装置6の動作は劣化監視装置3の動作と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1の効果と同一の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本開示は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの劣化を監視する劣化監視装置に好適である。
【符号の説明】
【0049】
1 VCU
2 BMS
3 劣化監視装置
4 車載装置
5 送信部
6 劣化監視装置
7 受信部
30 制御部
31 演算部
32 蓄積部
33 送信部
35 記憶部
130 制御部
135 記憶部
BT バッテリ
【要約】
【課題】バッテリの現在の状態を精度よく判定すること。
【解決手段】車両に搭載されるバッテリBTの劣化を監視する劣化監視装置3は、バッテリBTの使用状態を示す第1のパラメータ及びバッテリBTの劣化状態を示す第2のパラメータのデータを蓄積する蓄積部32と、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいて、第1のパラメータと第2のパラメータとの相関関係を求めると共に相関関係の変化に基づいて、バッテリBTの現在の状態を判定する演算部31と、を有する。
【選択図】
図1