(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】光伝送装置、光伝送システム、光伝送装置の制御方法、及び光伝送装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/07 20130101AFI20240827BHJP
【FI】
H04B10/07
(21)【出願番号】P 2023035596
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021508784の分割
【原出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019059076
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】関 幸治
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-325030(JP,A)
【文献】特開2009-130685(JP,A)
【文献】特開2004-274585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0268443(US,A1)
【文献】特開2005-348243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置であって、
装着された前記光モジュールの識別情報を取得する取得手段と、
複数の処理シーケンスのうち、取得された前記識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定手段と、
決定した処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する実行手段と、
前記取得手段と前記決定手段と前記実行手段を含む制御手段とを備え、
前記決定手段は、前記複数の処理シーケンスに関する情報が格納されたテーブルを参照して、前記複数の処理シーケンスのうち、取得された前記識別情報に対応する処理シーケンスを決定し、
前記制御手段は、
決定された処理シーケンスにより、前記光信号を出力可能な状態へ前記光モジュールを制御する
光伝送装置。
【請求項2】
前記複数の処理シーケンスに関する情報が格納された
前記テーブルを保持する記憶手
段を更に備
える、
請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記テーブルは、取得した前記光モジュールの前記識別情報が前記テーブルに未登録であった前記光モジュールに対して実行する前記処理シーケンスをさらに格納している、
請求項2に記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記光モジュールが装着されるポートを複数備え、
前記ポート毎に前記光モジュールの主信号を制御する主信号制御手段をさらに備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光伝送装置。
【請求項5】
装着された前記光モジュールの前記識別情報は、前記光モジュールが保持している前記光モジュールのベンダ情報を含む、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記ポートは、互いに異なる前記識別情報を有する複数の前記光モジュールのいずれかが装着可能であって、
前記処理シーケンスは、互いに異なる前記識別情報ごとに対応付けられている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光伝送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光伝送装置と、
前記光伝送装置の前記ポートに装着される前記光モジュールと、を含む、
光伝送システム。
【請求項8】
光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の制御方法であって、
装着された前記光モジュールの識別情報を取得し、
複数の処理シーケンスに関する情報が格納されたテーブルを参照して、複数の処理シーケンスのうち、
取得された前記光モジュールの識別情報に対応
する処理シーケンスを、前記光信号を出力可能な状態へ前記光モジュールを制御する処理シーケンス
として決定し、
決定された処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する、
光伝送装置の制御方法。
【請求項9】
前記光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスの決定は、前記光モジュールの識別情報のそれぞれに対応する処理シーケンスが格納されたテーブルを参照することによって行われる、
請求項8に記載の光伝送装置の制御方法。
【請求項10】
装着された前記光モジュールの識別情報は、前記光モジュールが保持している前記光モジュールのベンダ情報を含む、
請求項8又は請求項9に記載の光伝送装置の制御方法。
【請求項11】
光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の制御プログラムであって、
制御部に、
装着された前記光モジュールの識別情報を取得する取得処理と、
複数の処理シーケンスに関する情報が格納されたテーブルを参照して、複数の処理シーケンスのうち、
取得された前記光モジュールの識別情報に対応
する処理シーケンスを、前記光信号を出力可能な状態へ前記光モジュールを制御する処理シーケンス
として決定する決定処理と、
決定された処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する実行処理と、を実行させる、
光伝送装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置、及びその制御方法に関し、特に電気信号と光信号の変換機能を有する光モジュールに対する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ網を介して光信号を送受信する光伝送装置は、電気信号と光信号の変換機能を有する光モジュールを搭載する。このような光伝送装置の一例としてはトランスポンダ装置があり、またこのような光モジュールの一例としては光トランシーバがある。
【0003】
このような光伝送装置では、光伝送装置に対して挿抜可能に構成されるプラガブル光モジュールが主として採用されている。プラガブル光モジュールの利用によって、光伝送装置を含むシステムの稼働後に、光モジュールの増設や交換をすることができる。このプラガブル光モジュールには、構造やインタフェースを規定する団体規格(MSA:Multi Source Agreement)が存在する。各光モジュールのベンダは、この団体規格の要求に沿った光モジュールの開発を行っている。
【0004】
特許文献1は光伝送装置に関するものであり、プラガブル光モジュールに書き込まれた、ベンダ(製造者)コード、製造日、シリアルナンバー、波長などの保守に必要となる情報を専用のソフトウェアで読み出すことが、提案されている。特許文献1では、ネットワーク管理者が読み出された保守に必要となる情報を参照することにより、設定と異なる光モジュールが実装されていないか等を検査できることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光伝送装置に装着された光モジュールは、光伝送装置からの指示に応じて各種処理シーケンスを実行する。電気信号と光信号の変換機能を有する光モジュールにおける各種処理シーケンスには、光モジュールの起動シーケンスや光モジュールが出力する光信号の波長切替シーケンスなどが含まれる。
【0007】
図9は、背景技術の光伝送装置などを説明するための構成図である。
図9の光伝送装置100は、光伝送装置100に対して挿抜可能に構成されるプラガブル光モジュールが装着される。
【0008】
図9の光伝送装置100は、不揮発メモリ102と、CPU(Central Processing Unit)103と、を含む。
図9の光伝送装置100は複数のポートの一例として4つのポートを有しており、複数のプラガブル光モジュールの一例として4つの光モジュール104~107がポートにそれぞれ装着されている。これまで光伝送装置に接続されるプラガブル光モジュールは、全て同一のベンダにより製造されたものであることが通例であった。すなわち
図9の光モジュール104~107は例えばベンダAという同一のベンダにより製造されたものであることが通例であった。不揮発メモリ102にはプラガブル光モジュール制御用のファームウェアが保持されており、これはベンダAが製造した光モジュール104~107を制御するためのファームウェアである。この場合、
図9の光伝送装置100は全てのプラガブル光モジュールに対して同じ処理シーケンスを実行することが可能であった。
【0009】
団体規格の要求に沿ったプラガブル光モジュールを利用することによって、光伝送装置を含むシステムの稼働後に、光モジュールの増設や交換をすることが可能である。このようなメリットを生かして、近年では光通信装置に接続する光モジュールの一部又は全部を、システム運用中において変更されることも行われる。例えば光伝送装置のユーザは、光モジュールの性能やコストを考慮してシステムの運用中に光モジュールを変更することも行われる。
【0010】
ここで、光伝送装置のユーザが光モジュールを変更した場合、変更後の光モジュールの製造ベンダが運用開始時に接続されていた光モジュールの製造ベンダとは異なることが起こり得る。光モジュールの製造ベンダが異なる場合、光モジュールに対して実行すべき処理シーケンスの内容も異なるものとなり得る。
【0011】
光モジュールの増設や交換によって光伝送装置に装着された光モジュールの製造ベンダが異なるものとなった場合に処理シーケンスについても変更可能であることが望ましいが、特許文献1には上記課題を解決する方法についての開示はない。
【0012】
したがって本発明の目的は、装着される光モジュールに応じて処理シーケンスを切り替え可能な光伝送装置、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明に係る光伝送装置は、
光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置であって、
上記光モジュールの識別情報のそれぞれに対応する処理シーケンスが格納されたテーブルを保持する記憶手段と、
上記装着される光モジュールの識別情報を取得し、上記テーブルを参照して上記取得した光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定し、決定した処理シーケンスを上記光モジュールに対して実行する制御手段と、をさらに備える。
【0014】
本発明に係る光伝送装置の制御方法は、光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の制御方法であって、
上記装着される光モジュールの識別情報を取得し、
取得した上記装着される光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定し、
決定された処理シーケンスを上記光モジュールに対して実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装着される光モジュールに応じて処理シーケンスを切り替え可能な光伝送装置、及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の光伝送装置を説明するための構成図である。
【
図2】
図1の制御部4のより具体的な構成を説明するためのブロック図と、制御部4が実行する処理を説明するためのフロー図である。
【
図3】光モジュールの識別情報の一例としての、ベンダIDから、処理シーケンスを決定するために参照される判定テーブルの一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の光伝送装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の光伝送装置の各光モジュール6~9に対して実行する処理シーケンスの一例をそれぞれ示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の光伝送装置を説明するための構成図である。
【
図7】
図6の主信号制御チップと光モジュールのより詳細な構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】第2実施形態の光伝送装置の各光モジュール6、7に対して実行する処理シーケンスの一例をそれぞれ示すフローチャートである。
【
図9】背景技術の光伝送装置などを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
初めに、本発明の第1実施形態による光伝送装置、及びその制御方法について、説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の光伝送装置を説明するための構成図である。
図2は、
図1の制御部4のより具体的な構成を説明するためのブロック図と、制御部4が実行する処理を説明するためのフロー図である。
【0019】
(光伝送装置の構成)
図1に、光ファイバ網を介して光信号を送受信する光伝送装置の一例として光通信装置を示す。
図1の光通信装置1は、光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の一例として、4つのポートを備えた光伝送装置であり、トランスポンダ装置である。
図1の光通信装置1は、CPU(Central Processing Unit)4x及びメモリ4yを含む制御部4を有している。
【0020】
CPU(Central Processing Unit)4xは、光通信装置1と光モジュール6~9の制御を実行する機能を有する。
【0021】
メモリ4yは、CPU4x上で動作する
図2の記憶部4a、取得部4b、決定部4c、実行部4dのプログラムを有する。
【0022】
図1の上側には光モジュールが装着されていない状態の光通信装置1を示し、
図1の下側には4つのポートに光モジュール6~9が装着された状態の光通信装置1を示す。なおここで、光モジュール6はベンダAによる光モジュールであり、光モジュール7はベンダBによる光モジュールであり、光モジュール8はベンダCによる光モジュールであり、光モジュール9はベンダA乃至ベンダCとは異なるその他のベンダによる光モジュールであることを想定する。
【0023】
光モジュール6~9は、光通信装置1のポートに挿抜可能な構成を有するプラガブル光モジュールであり、光トランシーバである。光モジュール6~9は、光通信装置1を介して入力されるデータ信号(電気信号)を光信号に変換して外部に出力する。なお光モジュール6~9もまた図示しない制御部を内部に有し、光通信装置1の制御部4と制御信号のやり取りを行う。プラガブル光モジュールの種類としては、CFP(100G Form-factor Pluggable)、SFP(Small Form-factor Pluggable)、QSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)等が存在する。
【0024】
光通信装置1の制御部4は、
図2の下側のフロー図のように、装着される光モジュールの識別情報を取得する取得処理(S1)、取得した光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定処理(S2)、及び決定された処理シーケンスを光モジュールに対して実行する実行処理(S3)を順番に実施する。こうして、光伝送装置に装着された光モジュールに対して光モジュールの識別情報に応じて処理シーケンスを実施することができる。なおここで処理シーケンスとは、処理や、処理が複数あるときは処理の順番である。
【0025】
上記取得処理、上記決定処理、及び上記実行処理を実現させる光伝送装置の制御プログラムは、プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体の形態で、流通され得る。このプログラムは、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記録デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの光学記録媒体などの形態で、流通され得る。
【0026】
なお光モジュールの識別情報としては、一つの情報、或いは複数の情報の組合せを用いることができる。本実施形態では、光モジュールの識別情報の一例として光モジュールのベンダ情報を用いた場合で、以下説明する。光モジュールの識別情報としては、光モジュールの品名、品番や型番など、ベンダ情報以外の情報を用いることができる。
【0027】
データ信号(電気信号)を光信号に変換して外部に出力する光モジュールに対して実行する処理シーケンスとしては、起動シーケンスや波長切替シーケンスなどが含まれる。ここで、起動シーケンスを構成する処理を実行する順番については団体規格において規定されず、光モジュールの製造ベンダごとに異なる。
【0028】
光通信装置1の制御部4は、上記取得処理、上記決定処理、上記実行処理を実現させるプログラムを
図1のメモリ4yに読み込んでCPU4xが順次上記取得処理、上記決定処理、及び上記実行処理を実行することにより、
図2の上側の構成図のように、記憶部4a、取得部4b、決定部4c及び実行部4dの機能を実現する。
【0029】
記憶部4aは、ベンダ情報(ベンダID)と処理シーケンス(処理順番)を対応付けたテーブルを格納する。取得部4bは、光通信装置1のポートに装着された光モジュール6~9のベンダ情報を取得する。取得部4bによるベンダ情報(ベンダID)の取得は具体的には、光モジュール6~9が接続された場合に、当該光モジュールが備える制御部から取得してもよいし、外部からベンダ情報の入力を受け付けるようにしてもよい。決定部4cは、取得したベンダ情報とテーブルを参照して、実行する処理シーケンスを決定する。実行部4dは、決定した処理シーケンスを光モジュール6~9に対して実行する。
【0030】
図3は、光モジュールの識別情報の一例としての、ベンダID(Identification)から、処理シーケンスを決定するために参照される判定テーブルの一例を示す図である。
【0031】
図3の判定テーブルは、マルチベンダ制御のための判定テーブルである。
図3の判定テーブルでは、ベンダIDのベンダA、ベンダB、ベンダC、その他に対して、光モジュールに対して実行すべき処理シーケンスが対になるように保持されている。言い換えると、
図3の判定テーブルは、光モジュールのベンダIDのそれぞれに対応して、処理シーケンスが格納されている。
図3の判定テーブルでは、ベンダID毎に1番目の処理、2番目の処理、3番目の処理、4番目の処理に関する情報が保持されている。
図3の判定テーブルは、
図1の制御部4のメモリ4yの中に構成することができ、また制御部4のCPU4xの中に構成することができ、或いは
図1の制御部4の外に構成することも考えられる。
【0032】
(光伝送装置の動作)
次に、光伝送装置の動作、装着される光モジュールのベンダに応じた処理シーケンスの切り替え、実行について図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態の光伝送装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5は、本実施形態の光伝送装置の各光モジュール6~9に対して実行する処理シーケンスの一例をそれぞれ示すフローチャートである。
【0033】
光通信装置1の制御部4は、例えば光モジュール6~9がポートに装着されたときに、光モジュール6~9に書き込まれ光モジュール6~9が保持するベンダIDを読み出す(S61)。次に光通信装置1の制御部4は、読み出したベンダIDを
図3の判定テーブルと照合し、読み出したベンダIDに対応する制御の処理順番である、処理シーケンスを決定する(S62)。次に、決定された処理シーケンスをベンダ毎に実行する(S63)。
図1の光通信装置1では、光モジュール6に対してはベンダAのための処理シーケンスを実行し(S64)、光モジュール7に対してはベンダBのための処理シーケンスを実行する(S65)。光モジュール8に対してはベンダCのための処理シーケンスを実行し(S66)、光モジュール9に対してはその他のベンダのための処理シーケンスを実行する(S67)。光通信装置1に装着され、こうして処理シーケンスが実行された光モジュール6~9は、電気信号と光信号との変換機能を開始することができる。
【0034】
(光伝送装置の効果)
本実施形態の光伝送装置によれば、装着される光モジュールのベンダに応じて処理シーケンスを切り替え可能に構成することができる。ベンダごとの処理シーケンスを判定テーブルに格納し、取得したベンダ情報に対応する処理シーケンスを参照可能な構成とすることで、接続する光モジュールのベンダが変更された場合や複数ある場合においても適切な処理シーケンスを実行することが可能となる。
【0035】
これにより、光伝送装置のユーザが光モジュールを変更し、変更後の光モジュールの製造ベンダが運用開始時に接続されていた光モジュールの製造ベンダとは異なる状態となった場合にも、光モジュールに最適な処理シーケンスを制御部4が光モジュールに対して実行させることができる。これにより、光モジュールの起動不可を回避し、さらに変更後の光モジュールに期待された最大のパフォーマンスを発揮させて、光伝送装置を運用することができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による光伝送装置、及びその制御方法について、説明する。
図6は、本発明の第2実施形態の光伝送装置を説明するための構成図である。
【0037】
(光伝送装置の構成)
図6は、光ファイバ網を介して光信号を送受信する光伝送装置の一例として光通信装置を示す。
図6の光通信装置1は、第1実施形態と同様に、光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の一例として4つのポートを備えた光伝送装置である。
図6の光通信装置1は第1実施形態と同様に、CPU4x及びメモリ4yを含む制御部4を有している。制御部4は第1実施形態と同様に、CPU及びメモリによって、記憶部4a、取得部4b、決定部4c及び実行部4dと同等の機能を実現する。
【0038】
さらに
図6の光通信装置1は、CPU4xと、主信号制御チップ(♯1)10、主信号制御チップ(♯2)11、主信号制御チップ(♯3)12、及び主信号制御チップ(♯4)13と、を含む。
図6の光通信装置1は、主信号制御チップ10~13及び光モジュール6~9に対して、処理シーケンスの実行指示を行うことが可能である。
【0039】
CPU4xは、メモリ4yの制御部のプログラムを実行し、光通信装置1、主信号制御チップ10~13、およびマルチベンダの光モジュール6~9を制御する機能を有する。
【0040】
主信号制御チップ10~13は、ポートに装着される光モジュール毎に設けられており、ポートに装着される光モジュールの主信号を制御する。より具体的には、主信号制御チップ10~13はDSP(Digital Signal Processor)であり、伝送される主信号のデジタル信号処理を行う。
【0041】
次に、
図7を参照して光モジュールのより詳細な構成について説明する。
図7は、
図6の主信号制御チップと光モジュールのより詳細な構成を説明するためのブロック図である。
図7は、
図6の主信号制御チップと光モジュールとの組合せの一つを示したものである。主信号制御チップ10(~13)は、光モジュールで光電気変換される電気信号である主信号を光モジュールへ出力する。光モジュール6(~9)は内部にCPU95を備え、光通信装置1から入力される処理シーケンスの実行指示に応じて内部のコンポーネント(光電気変換部90、電源部94など)を制御する。
図7の上側に示すように光モジュール6(~9)は、主信号制御チップ10(~13)からの電気信号を光信号に変換して出力する光電気変換部90と、光モジュール6(~9)内の各要素へ必要な動作電源を供給する電源部94と、光電気変換部90と電源部94とを制御するCPU95と、を含む。
【0042】
図7の中央に示すように、光モジュール6(~9)の光電気変換部90は、光通信装置1内の主信号制御チップ10(~13)から出力されるデータ信号(電気)を増幅して駆動信号(電気)を生成する駆動回路91と、光を出力する光源部92と、上記光源部92からの光を印加された上記駆動信号に応じて変調し、光信号を出力する変調器93と、を含む。
【0043】
図7の下側に示すように、光モジュール6(~9)内のCPU95には、例えばLOWPOWER信号、RST信号、TX-DIS信号やCOMMAND信号が供給されて、光通信装置1から光モジュール6(~9)への制御が行われる。LOWPOWER信号は、光モジュール6(~9)に対する電源オン又は電源オフを指示する信号である。RST信号は、光モジュール6(~9)に対する再起動動作、すなわち光モジュール6(~9)内のステータスやデータを初期化する動作を指示する信号である。TX-DIS信号は、光モジュールからの光信号の送出の停止を指示する信号である。COMMAND信号は、光モジュール6(~9)が実行する機能に対して指示する信号であり、例えば光信号の波長切替の指示、光信号の光出力強度を変更する指示、や動作モードの変更の指示などが含まれる。
【0044】
また主信号制御チップ10(~13)に対しても、LOWPOWER信号が供給されて、光通信装置1から主信号制御チップ10(~13)への制御が行われる。例えば光通信装置1の制御部4は主信号制御チップ10(~13)にLow Power状態に遷移するよう命令して、主信号制御チップ10(~13)は電源オフ状態となる。また光通信装置1の制御部4は主信号制御チップ10(~13)にLow Power状態を解除するように命令して、主信号制御チップ10(~13)は電源オン状態となる。
【0045】
なおLOWPOWER信号、RST信号、TX-DIS信号やCOMMAND信号による光モジュール6(~9)や主信号制御チップ10(~13)に対する制御は、光モジュール6(~9)や主信号制御チップ10(~13)が備えるハードウェアピンを介して指示することとしてもよい。
【0046】
(光伝送装置の動作)
次に、光伝送装置の動作、装着される光モジュールのベンダに応じた処理シーケンスを切り替え、実行について図面を参照して説明する。本実施形態では光通信装置1が主信号制御チップ10~13を含んでおり、光通信装置1の制御部4は主信号制御チップ10及び光モジュール6の対に対して処理シーケンスを実行させる点で、第1実施形態と相違している。
【0047】
図8は、第2実施形態の光伝送装置の各光モジュール6、7に対して実行する処理シーケンスの一例をそれぞれ示すフローチャートである。光通信装置1の制御部4は第1実施形態と同様に、装着される光モジュールの識別情報を取得する取得処理、取得した光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定処理、及び決定された処理シーケンスを光モジュールに対して実行する実行処理を順番に実施する。こうして、光伝送装置に装着された光モジュールに対して光モジュールの識別情報に応じて処理シーケンスを実施することができる。
【0048】
本実施形態においても、取得した光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定処理には、判定テーブルを参照するものとする。図示しないが本実施形態の判定テーブルではベンダIDごとに、例えば
図8のフローチャートの各処理に対応する、1番目の処理~7番目の処理の内容や処理の順番が保持されているものとする。
【0049】
図6の光通信装置1の制御部4は、例えば光モジュール6~9がポートに装着されたときに、光モジュール6~9に書き込まれ光モジュール6~9が保持するベンダIDを読み出す。次に光通信装置1の制御部4は、読み出したベンダIDを判定テーブルと照合し、読み出したベンダIDに対応する制御の処理順番である、処理シーケンスを決定する。こうして決定された処理シーケンスに沿って、ベンダAに対する処理シーケンスや、ベンダBに対する処理シーケンスが実行される。
図8のフローチャートでは、ベンダAの光モジュールに対しては、処理#1、処理#2、処理#3、処理#4、処理#5、処理#6、及び処理#7をこの順番に実行させる処理シーケンスを示している。またベンダBの光モジュールに対しては、処理#1、処理#4、処理#5、処理#2、処理#3、処理#6、及び処理#7をこの順番に実行させる処理シーケンスを示している。
【0050】
図8のフローチャートに一例を示す、ベンダAの光モジュールに対して実行する処理シーケンスを一通り説明する。まず制御部4が主信号制御チップ10、及び光モジュール6にLow Power状態に遷移するよう命令する(処理#1)。次に、制御部4が光モジュール6にLow Power状態を解除するように命令する(処理#2)。次に、制御部4は光モジュール6がHigh Power状態に遷移したことを確認する(処理#3)。次に、制御部4が主信号制御チップ10に対してLow Power状態を解除するように命令する(処理#4)。次に、制御部4は主信号制御チップ10がHigh Power状態に遷移したことを確認する(処理#5)。次に、制御部4は光モジュール6に対して発光するように命令する(処理#6)。次に、制御部4は光モジュール6が発光したことを確認する(処理#7)。こうして光通信装置1の制御部4は、主信号制御チップ10、及び光モジュール6に対する一連の制御シーケンスで光信号を出力可能な状態へ光モジュール6を制御することができる。
【0051】
図8のフローチャートに一例を示す、ベンダBの光モジュールに対して実行する処理シーケンスを一通り説明する。まず制御部4が主信号制御チップ11、及び光モジュール7にLow Power状態に遷移するよう命令する(処理#1)。次に、制御部4が主信号制御チップ11に対してLow Power状態を解除するように命令する(処理#4)。次に、制御部4は主信号制御チップ11がHigh Power状態に遷移したことを確認する(処理#5)。次に、制御部4が光モジュール6にLow Power状態を解除するように命令する(処理#2)。次に、制御部4は光モジュール6がHigh Power状態に遷移したことを確認する(処理#3)。次に、制御部4は光モジュール6に対して発光するように命令する(処理#6)。次に、制御部4は光モジュール6が発光したことを確認する(処理#7)。こうして光通信装置1の制御部4は、主信号制御チップ11、及び光モジュール7に対する一連の制御シーケンスで光信号を出力可能な状態へ光モジュール7を制御することができる。
【0052】
(光伝送装置の効果)
本実施形態の光伝送装置によれば、装着される光モジュールのベンダに応じて処理シーケンスを切り替え可能に構成することができる。ベンダごとの処理シーケンスを判定テーブルに格納し、取得したベンダ情報に対応する処理シーケンスを参照可能な構成とすることで、接続する光モジュールのベンダが変更された場合や複数ある場合においても適切な処理シーケンスを実行することが可能となる。
【0053】
これにより、光伝送装置のユーザが光モジュールを変更し、変更後の光モジュールの製造ベンダが運用開始時に接続されていた光モジュールの製造ベンダとは異なる状態となった場合にも、光モジュールに最適な処理シーケンスを制御部4が光モジュールに対して実行させることができる。これにより、光モジュールの起動不可を回避し、さらに変更後の光モジュールに期待された最大のパフォーマンスを発揮させて、光伝送装置を運用することができる。
【0054】
さらに本実施形態の光伝送装置によれば、装着される光モジュールのベンダに応じて光モジュール及び光モジュールの主信号を制御する主信号制御チップに対して、処理シーケンスを切り替え可能に構成することができる。これにより伝送される主信号に対するデジタル信号処理を行う主信号制御チップ10~13と光モジュール6~9との組み合わせに対して、最適な処理シーケンスを制御部4が主信号制御チップ及び光モジュールに対して実行させることができる。これにより、光モジュールの起動不可を回避し、さらに変更後の光モジュールに期待された最大のパフォーマンスを発揮させて、光伝送装置を運用することができる。
【0055】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが本発明はこれらに限られるものではない。
【0056】
第1実施形態では、ベンダIDと、光モジュールに対して実行すべき処理シーケンスとが対になるように保持された判定テーブルを用いることを説明したが、テーブルの形態はこれに限られない。例えば、処理シーケンスの種別ごとにテーブルを保持し、実行する制御シーケンスの種別に応じて参照するテーブルを変更するようにしてもよい。ベンダIDのみでなく種別を参照する場合は、種別ごとにテーブルを有するように構成すればよい。
【0057】
また上述した第1実施形態及び第2実施形態では、取得したベンダ情報と判定テーブルを参照して、実行する処理シーケンスを決定するものとして決定したが、処理シーケンスの決定には判定テーブルの参照以外の手法も考えられる。例えば、光モジュールから読み出したベンダ情報から、実行する処理シーケンスが導出されるような論理回路を構成し、こうしてベンダ情報に対応する処理シーケンスを実行することも考えられる。
【0058】
また上述したように、光モジュールのベンダ情報は光モジュールが光通信装置1に接続された場合に当該光モジュールが備える制御部から取得してもよいし、外部からベンダ情報の入力を受け付けるようにしてもよい。また光通信装置1は光モジュールが接続されたことに応じてベンダ情報を読み取り、処理シーケンスの判定を開始するようにしてもよい。
【0059】
また現実の運用では、判定テーブルにベンダ情報が格納されていない光モジュールが光通信装置1に装着される場面も想定される。光モジュールから読み出したベンダ情報が判定テーブルに格納されていないベンダ情報である場合、光通信装置1はアラームを出力するようにしてもよい。
図3の判定テーブルでは、ベンダIDがベンダA、ベンダB、ベンダCのものがそれぞれ保持され、ベンダIDがその他のものが保持されている。ベンダA、ベンダB、ベンダC以外のベンダに対しては共通に、その他に対応した処理シーケンスを実行させるものと考えることができる。光モジュールから読み出したベンダ情報が判定テーブルに格納されていないといった場面を想定して、未登録ベンダに適用する処理シーケンスをテーブルに格納しておき、当該処理シーケンスを実行するようにしてもよい。
【0060】
また光通信装置1は、未登録のベンダ情報に対する処理シーケンスをテーブルに格納する目的で、外部装置より処理シーケンスを登録するためのインタフェースを有するようにしてもよい。
【0061】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置であって、前記光モジュールの識別情報のそれぞれに対応する処理シーケンスが格納されたテーブルを保持する記憶手段と、装着された光モジュールの識別情報を取得し、前記テーブルを参照して前記取得した光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定し、決定した処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する制御手段と、をさらに備える、光伝送装置。
(付記2)前記制御手段は、前記装着される光モジュールの識別情報を取得する取得手段と、前記テーブルを参照し、前記取得した光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定手段と、前記決定手段が決定した処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する実行手段と、を含む、付記1に記載の光伝送装置。
(付記3)前記テーブルは、前記取得した光モジュールの識別情報が前記テーブルに未登録であった光モジュールに対して実行する処理シーケンスをさらに格納している、付記1又は付記2に記載の光伝送装置。
(付記4)前記光モジュールが装着されるポートを複数備え、前記ポート毎に前記光モジュールの主信号を制御する主信号制御手段をさらに備える、付記1乃至付記3のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記5)前記光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスは、前記主信号制御手段と前記光モジュールとをともにローパワーモードに遷移させる第1処理と、前記第1処理の後で前記光モジュールをハイパワーモードに遷移させる第2処理と、前記第2処理の後で前記主信号制御手段をハイパワーモードに遷移させる第3処理と、を含む、付記4に記載の光伝送装置。
(付記6)前記光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスは、前記主信号制御手段と前記光モジュールとをともにローパワーモードに遷移させる第1処理と、前記第1処理の後で前記主信号制御手段をハイパワーモードに遷移させる第2処理と、前記第2処理の後で前記光モジュールをハイパワーモードに遷移させる第3処理と、を含む、付記4に記載の光伝送装置。
(付記7)前記装着される光モジュールの識別情報は、前記光モジュールが保持している前記光モジュールのベンダ情報を含む、付記1乃至付記6のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記8)付記1乃至7のいずれか一つに記載の光伝送装置と、前記光伝送装置の前記ポートに装着される光モジュールと、を含む、光伝送システム。
(付記9)光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の制御方法であって、装着された光モジュールの識別情報を取得し、取得した前記装着される光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定し、決定された処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する、光伝送装置の制御方法。
(付記10)前記光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスの決定は、前記光モジュールの識別情報のそれぞれに対応する処理シーケンスが格納されたテーブルを参照することによって行われる、付記9に記載の光伝送装置の制御方法。
(付記11)前記装着される光モジュールの識別情報は、前記光モジュールが保持している前記光モジュールのベンダ情報を含む、付記9又は付記10に記載の光伝送装置の制御方法。
(付記12)光信号の送信を行う光モジュールが装着されるポートを備えた光伝送装置の制御プログラムであって、制御部に、装着された光モジュールの識別情報を取得する取得処理と、取得した前記装着される光モジュールの識別情報から、光モジュールの識別情報に対応する処理シーケンスを決定する決定処理と、決定された処理シーケンスを前記光モジュールに対して実行する実行処理と、を実行させる、光伝送装置の制御プログラム。
(付記13)前記処理シーケンスを決定する決定処理は、前記光モジュールの識別情報のそれぞれに対応する処理シーケンスが格納されたテーブルを参照することによって行われる、付記12に記載の光伝送装置の制御プログラム。
【0062】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0063】
この出願は、2019年3月26日に出願された日本出願特願2019-59076号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0064】
1 光通信装置
4 制御部
4a 記憶部
4b 取得部
4c 決定部
4d 実行部
4x CPU
4y メモリ
6、7、8、9 光モジュール
10、11、12、13 主信号制御チップ