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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】遠隔自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20240827BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240827BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
G05D1/00
G08G1/09 V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023047745
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安山 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】狩野 岳史
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538619(JP,A)
【文献】特開2021-068132(JP,A)
【文献】特開2018-105967(JP,A)
【文献】特開2022-129103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
G08G 1/00-99/00
G05D 1/00- 1/87
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を製造する工場に用いられる遠隔自動運転システムであって、
製造過程において前記工場内の走路を走行可能な前記車両であって、通信機能を有する車両通信部と前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御により前記車両が走行可能な走路の環境に関する情報である走路情報を取得する走路情報取得部と、
取得された前記走路情報を用いて、前記車両の走行可否と、前記車両を走行させる走行経路との少なくともいずれかを含む走行方法を決定する走行方法決定部と、
前記遠隔制御に用いられる前記車両の画像を取得可能な少なくとも一のカメラと、を備え、
前記少なくとも一のカメラは、
前記走路のうち第一走路に設けられ、前記第一走路の前記車両の画像を取得可能な第一カメラと、
前記走路のうち前記第一走路とは異なる第二走路に設けられ、前記第二走路の前記車両の画像を取得可能な第二カメラと、を含み、
前記走路情報は、前記カメラによって撮像される画像を用いて取得され、
前記走路情報は、前記カメラによって取得された物標の画像における前記物標の認識状態を示す情報を含み、
前記走行方法決定部が前記走路情報を用いて前記走行経路を前記第一走路に設定した場合には、前記第一カメラによって取得される前記車両の画像における前記車両の認識状態は、前記第二カメラによって取得される前記車両の画像における前記車両の認識状態よりも良い、
遠隔自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔自動運転システムであって、
前記走行方法決定部が前記走行経路を前記第一走路に設定した場合には、前記第二カメラに入射する光量は、前記第一カメラに入射する光量よりも多い、
遠隔自動運転システム。
【請求項3】
車両を製造する工場に用いられる遠隔自動運転システムであって、
製造過程において前記工場内の走路を走行可能な前記車両であって、通信機能を有する車両通信部と前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御により前記車両が走行可能な走路の環境に関する情報である走路情報を取得する走路情報取得部と、
取得された前記走路情報を用いて、前記車両の走行可否と、前記車両を走行させる走行経路との少なくともいずれかを含む走行方法を決定する走行方法決定部と、
前記遠隔制御に用いられる前記車両の画像を取得可能な少なくとも一のカメラと、
を備え、
前記走路情報は、前記カメラによって撮像される画像を用いて取得され、
前記走路情報は、前記カメラによって取得された物標の画像における前記物標の認識状態を示す情報を含み、
前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光の角度に関する情報と、前記カメラに入射する光量に関する情報との少なくともいずれかを用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行し、前記評価の結果を用いて前記走行方法を決定する、
遠隔自動運転システム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔自動運転システムであって、
前記走路情報取得部は、外部機関による太陽高度の公称値を取得し、
前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光の角度に関する情報として、前記太陽高度の公称値を用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行する、
遠隔自動運転システム。
【請求項5】
請求項3に記載の遠隔自動運転システムであって、
前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光量に関する情報として、エアロゾルの種別と、前記エアロゾルの量との少なくともいずれかを用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行する、
遠隔自動運転システム。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔自動運転システムであって、
前記走路情報取得部は、外部機関による前記エアロゾルの種別と、前記エアロゾルの量との少なくともいずれかの公称値を取得し、
前記走行方法決定部は、前記公称値を用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行する、
遠隔自動運転システム。
【請求項7】
請求項1または3記載の遠隔自動運転システムであって、
さらに、前記車両通信部との無線通信を行うための無線通信部を備え、
前記走路情報は、前記走路における前記車両通信部と前記無線通信部との通信状態を含む、
遠隔自動運転システム。
【請求項8】
前記通信状態は、前記無線通信部の電波強度と、前記無線通信部のチャネル使用率との少なくともいずれかである、請求項に記載の遠隔自動運転システム。
【請求項9】
請求項1または3記載の遠隔自動運転システムであって、
前記走路情報は、前記走路における日照時間と前記走路における気温との少なくともいずれかを含む前記走路における天気情報を含む、
遠隔自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両を製造するための製造システムにおいて、遠隔制御によって、車両を製造システムの組立ラインの終端から製造システムの駐車場まで走行させる車両走行方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔制御によって車両を走行させる走路の状態は、走行させる時間や季節、天気などによって変化することが考えられる。そのため、走路の状態に応じた適正な走行経路で車両を走行させるための技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両を製造する工場に用いられる遠隔自動運転システムが提供される。この遠隔自動運転システムは、製造過程において前記工場内の走路を走行可能な前記車両であって、通信機能を有する車両通信部と前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、前記遠隔制御により前記車両が走行可能な走路の環境に関する情報である走路情報を取得する走路情報取得部と、取得された前記走路情報を用いて、前記車両の走行可否と前記車両を走行させる走行経路との少なくともいずれかを含む走行方法を決定する走行方法決定部と、を備える。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、走路情報を用いることにより、走路の状態に応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(2)上記形態の遠隔自動運転システムは、さらに、前記車両通信部との無線通信を行うための無線通信部を備えてよい。前記走路情報は、前記走路における前記車両通信部と前記無線通信部との通信状態を含んでよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御のための無線通信部との通信状態に応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(3)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記通信状態は、前記無線通信部の電波強度と、前記無線通信部のチャネル使用率との少なくともいずれかであってよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、無線通信部の電波強度と、無線通信部のチャネル使用率との少なくともいずれかに応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(4)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走路情報は、前記走路における日照時間と前記走路における気温との少なくともいずれかを含む前記走路における天気情報を含んでよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、走路における日照時間と走路における気温とに応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(5)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走路情報は、前記走路で実施される工事に関する情報と、前記走路における停止車両に関する情報との少なくともいずれかを含む情報を含んでよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、走路で実施される工事と、走路における停止車両に基づき車両が走行不能となる位置を回避することができる。
(6)上記形態の遠隔自動運転システムは、さらに、前記遠隔制御に用いられる前記車両の画像を取得可能な少なくとも一のカメラを備えてよい。前記走路情報は、前記カメラによって撮像される画像を用いて取得されてよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御に用いられるカメラの撮像画像を走路情報として用いることにより、遠隔制御に用いられる撮像画像に応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(7)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走路情報は、前記カメラによって取得された物標の画像における前記物標の認識状態を示す情報を含んでよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御に用いられるカメラの撮像画像の認識状態に応じた適正な車両の走行方法を決定することができる。
(8)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光の角度に関する情報と、前記カメラに入射する光量に関する情報との少なくともいずれかを用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行し、前記評価の結果を用いて前記走行方法を決定してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、カメラに入射する光の角度もしくは光量を用いて走行方法を決定することにより、光が画像解析に与え得る不具合を抑制することができる車両の走行方法を決定することができる。
(9)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走路情報取得部は、外部機関による太陽高度の公称値を取得してよい。前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光の角度に関する情報として、前記太陽高度の公称値を用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、太陽高度の公称値を用いた簡易な方法により、画像解析での不具合を抑制することができる車両の走行方法を決定することができる。
(10)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走行方法決定部は、前記カメラに入射する光量に関する情報として、エアロゾルの種別と、前記エアロゾルの量との少なくともいずれかを用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、撮像画像の画像解析等を省略した簡易な方法によりカメラによる車両の認識状態を評価することができる。
(11)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走路情報取得部は、外部機関による前記エアロゾルの種別と、前記エアロゾルの量との少なくともいずれかの公称値を取得してよい。前記走行方法決定部は、前記公称値を用いて、前記カメラによる前記車両の認識状態の評価を実行してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、公称値の取得という簡易な方法により車両の認識状態を判定することができる。
(12)上記形態の遠隔自動運転システムは、さらに、前記走路のうち第一走路に設けられ、前記第一走路の前記車両の画像を取得可能な第一カメラと、前記走路のうち前記第一走路とは異なる第二走路に設けられ、前記第二走路の前記車両の画像を取得可能な第二カメラと、を備えてよい。前記走行方法決定部が前記走路情報を用いて前記走行経路を前記第一走路に設定した場合には、前記第一カメラによって取得される前記車両の画像における前記車両の認識状態は、前記第二カメラによって取得される前記車両の画像における前記車両の認識状態よりも良くてよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、認識状態が良好な走行経路で車両を走行させることができる。
(13)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記走行方法決定部が前記走行経路を前記第一走路に設定した場合には、前記第二カメラに入射する光量は、前記第一カメラに入射する光量よりも多くてよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、白飛びなどの画像解析における不具合を抑制した走行走路で車両を走行させることができる。
(14)上記形態の遠隔自動運転システムは、さらに、前記走路のうち第一走路に設けられ、前記第一走路の前記車両の画像を検出可能な第一カメラと、前記走路のうち前記第一走路とは異なる第二走路に設けられ、前記第二走路の前記車両の画像を検出可能な第二カメラと、を備えてよい。前記走行方法決定部は、前記第一走路および前記第二走路のいずれでも前記車両の認識状態が予め定められた基準状態よりも悪い場合には、前記車両の走行停止を決定してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御による運転制御が安定しない状態で車両が走行することを防止することができる。
本開示は、遠隔自動運転システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、車両、サーバ、車両の走行方法、走行経路決定方法、車両の製造方法、車両の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の遠隔自動運転システムの概略構成を示す説明図。
図2】サーバの内部機能構成を示すブロック図。
図3】遠隔制御部の遠隔制御による車両の自動運転制御を示す説明図。
図4】予定走行経路決定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図5】走行方法決定部が走路情報を用いて走行経路を変更する例を示す第一の説明図。
図6】走行方法決定部が走路情報を用いて走行経路を変更する例を示す第二の説明図。
図7】走行経路決定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図8】第一走路に対応する第一カメラの認識状態と、第二走路に対応する第二カメラの認識状態との取得方法を示す説明図。
図9】第一走路に対応するアクセスポイントの通信状態と、第二走路に対応するアクセスポイントの通信状態との取得方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の遠隔自動運転システム500の概略構成を示す説明図である。遠隔自動運転システム500は、遠隔制御によって、車両100の自動運転を制御する。車両100は、例えば、乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである。遠隔自動運転システム500は、遠隔制御によって、車両100を製造する工場FC内の製造過程などで車両100を自動走行させることができる。本明細書では、製品として完成した状態と、製造途中の半製品・仕掛品の状態とを総じて「車両」と呼ぶ。
【0009】
図1に示すように、工場FCには、前工程50と、後工程60と、車両100の走路RTと、アクセスポイント70とが備えられている。アクセスポイント70は、車両100との無線通信を実行するための無線通信部として機能する。走路RTは、前工程50と後工程60とを繋ぐ工場FC内における車両100の搬送区間である。「工場FC内」には、車両100が完成してから、完成した車両100が出荷のため荷積みを待機する待機場所、ならびに当該待機場所までの走路も含まれ得る。工場FCおよび製造過程における各工程は、1つの建物である場合や、1箇所の敷地や1箇所の住所に存在する場合などには限定されない。工場FCおよび製造過程における各工程は、複数の建物、複数の敷地、複数の住所等に亘って存在してもよい。また、「車両100が工場FC内を走行する」とは、車両100が、1つの場所に存在する工場内の走路を走行する場合のみには限らず、複数の場所に存在する複数の工場および工程の間の搬送区間を走行する場合を含む。「車両100が工場FC内を走行する」には、例えば、車両100が複数の場所に存在する工場および工程の間を移動するために、私道に限らず公道を走行する場合が含まれる。
【0010】
前工程50は、例えば、車体に部品を組み付ける組み立て工程である。後工程60は、例えば、車両100の検査工程である。前工程50から払い出された車両100は、後工程60の仕掛品となり、走行先である後工程60へと走路RTを走行する。車両100は、後工程60への投入許可が得られると後工程60に投入される。車両100は、後工程60としての検査工程を終えると製品として完成され、出荷を待機するための工場FC内の待機場所へと走行する。その後、車両100は、車両100ごとに対応する仕向国へと出荷される。「仕向国」とは、工場FCで製造された車両100の出荷先が所在する国を意味する。なお、前工程50および後工程60は、組み立て工程や検査工程のみに限らず、前工程50および後工程60による処理後の車両100が遠隔制御によって走行可能であることを前提に種々の工程を採用することができる。
【0011】
前工程50および後工程60を含む工場FC内の各工程には、車両100の製造情報を管理するための工程管理装置が備えられている。「製造情報」には、例えば、工程による処理の進行状況、仕掛品の数、処理中の製品の数、工程ごとの製造時間、各工程による処理の開始時刻および完了時刻、各工程に存在する車両100の車両識別情報、1日の製造予定数、車両100を1台製造するための工程の目標製造時間などが含まれる。目標製造時間は、「タクトタイム」と呼ばれることがある。「車両識別情報」とは、車両100を個別に識別可能な種々の情報を意味する。車両識別情報には、例えば、車両識別情報(VIN:Vehicle Identification Number)などの車両100ごとに与えられるID情報、車種・色・形状などの車両100の仕様情報、仕掛かり中の工程の名称などの車両100の生産管理情報などが含まれる。車両識別情報は、例えば、車両100に付されたRF-ID(Radio Frequency-Identification:無線移動識別)タグ等から狭域通信などを介して取得することができる。各工程の工程管理装置は、各工程に設けられる図示しないカメラやセンサなどから、各工程の車両100の製造状況を取得し、取得した製造状況をサーバ300に送信する。各工程の製造状況は、工場FCの各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置に送信されてもよい。
【0012】
車両100は、通信部190と、受電装置150と、バッテリ120と、PCU130と、モータ140と、ECU(Electronic Control Unit)180とを備えている。通信部190は、例えばドングルなど、車両100に搭載される無線通信装置である。車両100に搭載される通信部を「車両通信部」とも呼ぶ。通信部190は、車両100の制御などに用いられ得るCAN(Controller Area Network)通信、および故障診断などに用いられ得るダイアグノシス通信を用いて通信する通信機能を備えている。CAN通信は、多方向に送信または受信を行うことができる通信規格である。ダイアグノシス通信は、要求と応答とを1対1で対応付けることができる通信規格である。通信部190は、工場FC内のアクセスポイント70を介して、ネットワーク72に接続されたサーバ300や、車両100の生産情報を統括管理する図示しない生産管理装置など、車両100の外部の装置との無線通信を行う。通信部190は、サーバ300から、車両100の遠隔制御の制御信号を受信する。
【0013】
受電装置150は、外部の給電装置などから供給される交流電力を整流器によって直流電力に変換し、負荷としてのバッテリ120に供給する。バッテリ120は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの充電可能な二次電池である。バッテリ120は、例えば、数百Vの高電圧バッテリであり、車両100の走行に利用される電力を蓄えている。外部の給電装置から受電装置150に供給される電力、ならびにモータ140によって発電された回生電力がバッテリ120に供給されると、バッテリ120が充電される。
【0014】
モータ140は、例えば、交流同期モータであり、電動機および発電機として機能する。モータ140が電動機として機能するとき、モータ140は、バッテリ120に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ140の出力は、減速機および車軸を介して車輪に伝達される。車両100の減速時には、モータ140は、車輪の回転を利用する発電機として機能し、回生電力を発電する。モータ140とバッテリ120との間には、PCU(Power Control Unit)130が電気的に接続されている。
【0015】
PCU130は、インバータ、昇圧コンバータ、ならびにDC/DCコンバータを有している。インバータは、バッテリ120から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力をモータ140に供給する。インバータは、モータ140から供給される回生電力を直流電力に変換してバッテリ120に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力がモータ140に供給されるときに、バッテリ120の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力を補機等に供給する場合に、バッテリ120の電圧を降圧する。
【0016】
ECU180は、車両100に搭載され、車両100の各種の制御を実行する。ECU180は、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、光記録媒体、半導体メモリ等のメモリと、中央演算処理装置としてのCPUなどを備えている。CPUがメモリに格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、運転制御部184などの各種の機能が実現される。運転制御部184は、車両100の運転制御を実行する。「運転制御」とは、例えば、加速度、速度、ならびに舵角の調整などである。遠隔制御による運転制御では、運転制御部184は、通信部190を介してサーバ300から受信した遠隔制御の制御信号に従い、車両100に搭載された各アクチュエータを制御する。また、ECU180は、PCU130を制御することによって、バッテリ120とモータ140との間の電力の授受を制御する。
【0017】
遠隔自動運転システム500は、車両検出器と、サーバ300とを備えている。車両検出器は、車両100の画像と、車両100の位置との少なくともいずれかを含む車両情報を検出する。検出された車両情報は、遠隔自動運転システム500による遠隔制御に利用される。車両情報には、さらに、車両100の走行方向あるいは車両100の向きが含まれてもよい。車両100の走行方向や車両100の向きは、例えば、車両100の形状あるいは車両100の部品等を検出することによって取得することができる。ただし、車両検出器によって車両100の位置のみを取得し、車両100の経時的な変化を用いることによって、車両100の走行方向や向きが推定されてもよい。
【0018】
本実施形態では、車両検出器には、カメラ80が用いられている。カメラ80は、サーバ300と無線通信あるいは有線通信により通信可能に接続されている。カメラ80は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像部と光学系とを有している。カメラ80は、走路RTと、走路RTを走行する車両100とを撮像できる位置に固定されており、車両情報としての車両100の画像を取得する。カメラ80によって取得される画像は、画像解析によって、走路RTに対する車両100の相対位置、および車両100の向きなど、遠隔制御に利用可能な種々の車両情報を取得することができる。工場FCに設置されたカメラ80の画像を用いることにより、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)などの車両100に搭載された検出器を用いることなく、遠隔制御による車両100の自動走行を実行することができる。ただし、遠隔制御中の衝突防止等を目的に、車両100に搭載された検出器が補助的に利用されてもよい。なお、車両検出器は、車両100の位置を取得可能であれば、車両100の画像を取得しなくてもよい。車両検出器には、例えば、LiDAR、赤外線センサ、レーザセンサ、超音波センサ、ミリ波レーダなど、車両100の位置を検出可能な種々の検出器が用いられてもよい。
【0019】
図2は、サーバ300の内部機能構成を示すブロック図である。サーバ300は、中央演算処理装置としてのCPU310と、記憶装置320と、遠隔通信部390とを備えており、これらは、内部バスやインターフェース回路等を介して相互に接続されている。遠隔通信部390は、ネットワーク72を介して車両100などとの無線通信を行うための回路である。
【0020】
記憶装置320は、たとえば、RAM、ROM、HDD、SSD等である。記憶装置320には、本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されている。記憶装置320に記憶されたコンピュータプログラムがCPU310によって実行されることにより、CPU310は、遠隔制御部312、走路情報取得部314、ならびに走行方法決定部316などとして機能する。これらの機能の一部または全部はハードウェア回路によって構成されてもよい。
【0021】
走路情報取得部314は、外部の装置あるいは所定のデータベース等から走路情報322を取得する。走行方法決定部316は、走路情報取得部314によって取得された走路情報322を用いて、車両100の走行可否と、車両100を走行させる走行経路とを含む車両100の走行方法を決定する。「車両100の走行方法」は、車両100の走行態様(way of driving)あるいは車両100の走行内容(driving details)ということもできる。走行方法決定部316は、例えば、走路情報322から、走路RTに車両100が走行できない場所がある場合、あるいは遠隔制御による車両100の走行中の不具合等の影響が推定される場合などには、車両100の走行経路を、これらの位置を回避する走行経路へと変更する。また、走行方法決定部316は、車両100が走路RTを安全に走行できないと判定する場合には、車両100の走行停止を決定する。
【0022】
遠隔制御部312は、遠隔制御によって、工場FC内の車両100の自動走行を実行する。より具体的には、遠隔制御部312は、遠隔通信部390を介して、遠隔制御を要求する制御信号を車両100に送信する。車両100が遠隔制御の要求を受け付けると、ECU180によって制御信号に従った運転制御が実現され、この結果、車両100が自動的に走行する。遠隔制御による自動走行を利用した車両100の搬送を、「自走搬送」とも呼ぶ。車両100の自走搬送により、車両100を搬送する際の人為的な事故を抑制または防止することができる。
【0023】
図3は、遠隔制御部312の遠隔制御による車両100の自動運転制御を示す説明図である。図3の例では、走路RTは、互いに連続する走路RT1と、走路RT2と、走路RT3と、走路RT4とを含んでいる。走路RT1と、走路RT2とは、直角のカーブを介して互いに接続されている。遠隔制御部312は、通常時には、車両100を走路RTに沿って後工程60への投入位置PGまで走行させる。図3の例では、走路RTは、2車線を有しているが、走路RTの車線数は単数であってもよく、3以上の任意の数であってもよい。
【0024】
車両検出器としてのカメラ80は、図3に示すように、走路RTの車両100を上方から俯瞰する画像を取得する。カメラ80の数は、カメラ80の画角などを考慮して、走路RTの全体を撮像することが可能な数で設定されている。図3の例では、カメラ80は、走路RT1の全体を含む範囲RG1を撮像可能なカメラ801と、走路RT2の全体を含む範囲RG2を撮像可能なカメラ802と、走路RT3および走路RT4の全体を含む範囲RG3を撮像可能なカメラ803とを含んでいる。なお、カメラ80は、車両100の上方からの画像に限らず、車両100の前方、後方、側方などからの画像を取得してもよい。また、これらの画像を取得するカメラが任意に組み合わせられてもよい。
【0025】
走路RTには、遠隔制御において車両100が走行すべき目標ルートが予め設定されている。遠隔制御部312は、アクセスポイント70を介した車両100との無線通信を介して、カメラ80によって取得される走路RTと車両100との画像を取得する。遠隔制御部312は、取得した画像を所定の時間間隔で解析しながら、ECU180に車両100の運転制御を実行させる。遠隔制御部312が遠隔制御を車両100に要求する場合に、目標ルートに対する車両100の相対位置を逐次に調節することによって、車両100は、目標ルートに沿って走行することができる。なお、遠隔制御には、車両100全体の画像が用いられてもよく、車両100に設けられるアライメントマークなど、車両100の一部の画像が用いられてもよい。
【0026】
図3に示す位置P1のように、各走路の接続位置では、接続される各走路に対応するカメラ80の画角が互いに重複するように構成されている。位置P1の例では、走路RT1に対応するカメラ801の画角と、走路RT2に対応するカメラ802の画角とが互いに重複する。前工程50から払い出された車両100は、カメラ801の撮像画像を利用した遠隔制御によって位置P1まで走行する。位置P1に到達すると、カメラ801に代えてカメラ802が取得する撮像画像を用いた遠隔制御に切り替えられ、車両100は、第二走路CR2を走行する。同様に、走路RT3および走路RT4の走行にはカメラ803による撮像画像が用いられる。このように、遠隔制御部312は、解析する撮像画像を走路RTの範囲ごとに適宜に切り替えながら車両100の遠隔制御を行う。
【0027】
図2に戻り、記憶装置320の読み書き可能な領域には、走路情報322が格納されている。走路情報322は、車両100が走行可能な走路RTの環境に関する各種のデータが含まれている。「走路RTの環境に関するデータ」とは、遠隔制御による車両100の走行の適否、走路RTにおける車両100の位置や向きの認識状態およびこれらの検出精度など、車両100の走行に影響を与え得る走路RTの環境に関する種々のデータを意味する。走路情報322には、走行不能位置情報323、通信状態情報324、天気情報325、太陽高度情報326、ならびにエアロゾル情報327が含まれている。
【0028】
走行不能位置情報323は、走路RTにおける車両100が走行できない位置に関する情報である。本実施形態では、走行不能位置情報323には、走路RTで実施される工事に関する情報と、走路RTにおける停車車両に関する情報とが含まれている。「走路RTで実施される工事に関する情報」には、例えば、工事を行う予定日時、工事が行われる走路RT上の位置などが含まれる。工事に関する情報は、工事を行う作業者や事業者、あるいはこれらの者を管理する管理者などによって工場に関する情報を管理するための工場情報管理装置などに入力される。入力結果は、サーバ300によって取得される。「走路RTにおける停止車両」には、例えば、工事などを目的として走路RTに停止させる予定の車両と、故障などにより非常停止された車両などが含まれる。走路RTにおける停止車両は、工事を行う作業者や事業者などによって予め入力された情報をサーバ300が取得してもよく、走路RT上に停止した状態の車両100がカメラ80等によって検出されてもよい。なお、走行不能位置情報323には、走路RTで実施される工事に関する情報と、走路RTにおける停車車両に関する情報とのいずれかのみが含まれてもよく、走路RT上に検出された異物の位置情報など、走路RTで実施される工事に関する情報および走路RTにおける停車車両に関する情報以外の情報が含まれてもよい。
【0029】
通信状態情報324は、遠隔制御による車両100の運転制御を実行するための無線通信の通信状態に関する情報である。より具体的には、車両100が走路RTを走行あるいは停車する場合における車両100の通信部190と、アクセスポイント70との無線通信の通信状態に関する情報である。本実施形態では、通信部190とアクセスポイント70との通信状態には、通信部190が接続しているアクセスポイント70の電波強度と、当該アクセスポイント70のチャネル使用率(Channel Utilization)とが含まれている。無線通信の通信状態が不調である場合には、遠隔制御のための制御信号の送受信が不調となり、車両100の運転制御が適正に実行できない可能性がある。アクセスポイント70のチャネル使用率は、例えば、アクセスポイント70からの出力値をサーバ300が取得することで得られる。通信状態は、アクセスポイント70の電波強度と、アクセスポイント70のチャネル使用率とのいずれかのみであってもよい。また、通信状態には、電波強度やチャネル使用率のほか、通信部190とアクセスポイント70との通信速度や、電波強度のヒートマップなどが含まれてもよい。
【0030】
天気情報325は、走路RTにおける天気に関する情報である。より具体的には、天気情報325には、走路RTにおける日照時間と、走路RTにおける気温とが含まれる。天気情報325は、例えば、気象庁などの外部機関によって公開される天気予報などから取得することができる。走路RTの日照時間では、太陽光がカメラ80の撮像部に入射しやすくなる。太陽光がカメラ80の撮像部に過剰に入射すると、撮像画像の画像処理において、いわゆる白飛びなどにより車両100を適正に検出することができなくなる場合がある。また、走路RTにおける気温が低い場合には、走路RTの路面の凍結が発生して車両100がスリップしやすくなり、遠隔制御による車両100の運転制御による走行位置の調整精度が低くなる、あるいは運転制御が困難となる可能性がある。なお、天気情報325は、日照時間と、気温とのいずれかのみであってもよい。また、天気情報325は、日照時間や気温のほか、降雨量や降雪量、風向や風力、全天日射量、台風や竜巻などに関する情報など、日照時間や気温以外の情報が含まれてもよい。
【0031】
太陽高度情報326は、走路RTにおける太陽高度に関する情報である。「太陽高度」は、地平線方向を角度ゼロ度とし、天頂を角度90度として測った太陽までの角度を意味する。太陽高度は、例えば、国立天文台(NAOJ:National Astronomical Observatory of Japan)や気象庁などの外部機関による公称値を取得することで得られる。「走路RTにおける太陽高度に関する情報」は、カメラ80に入射する光の角度を推定するために用いられる。
【0032】
エアロゾル情報327は、空気中に含まれるエアロゾル(aerosol)に関する情報である。「エアロゾル」とは、空気中に浮遊する固体や液体の粒子を意味する。本実施形態では、エアロゾル情報327には、エアロゾルの種別と、エアロゾルの量とが含まれる。エアロゾルの種別およびエアロゾルの量は、例えば、気象庁などの外部機関による公称値を取得することで得られる。エアロゾルの種別およびエアロゾルの量は、カメラ80に入射する光量に関する情報である。例えば、エアロゾルの量が多い場合、あるいは発生するエアロゾルの種類によっては、カメラ80の視野が妨げられてカメラ80に入射する光量が減少し、車両100の画像が適正に取得できないことがある。エアロゾルの種別には、霧やミストなどの液体のエアロゾルと、煙や粉塵などの固体のエアロゾルとが含まれる。また、エアロゾルの種別には、黄砂などの鉱物粒子、花粉などの生物粒子、化石燃料やバイオマスの燃焼から放出されるすすなどが含まれる。エアロゾル情報327には、エアロゾルの種別と、エアロゾルの量とのいずれかのみであってもよい。
【0033】
図4は、本実施形態の遠隔自動運転システム500によって実行される予定走行経路決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。「予定走行経路」とは、車両100が走行する前に予め決定される走路RT上の経路である。本実施形態において、予定走行経路は「第一走路」とも呼ばれることがある。本実施形態では、車両100が遠隔制御によって前工程50から後工程60までの走路RTを走行する際の走行経路を決定する処理を例に説明する。
【0034】
本フローは、例えば、工程管理装置等から取得した製造情報を用いて、車両100が走路RTを走行することを検出した走行方法決定部316によって開始される。本フローは、例えば、所定の車両識別情報を有する車両100が前工程50による処理が実行される日の前日など、走路RTを走行するタイミングよりも前のタイミングで実行されることが好ましい。
【0035】
ステップS10では、走路情報取得部314は、走行不能位置情報323を取得する。走路情報取得部314は、工場FC内の工場情報管理装置に格納された走行不能位置情報を取得して、サーバ300の記憶装置320に格納する。この結果、走路情報取得部314は、車両100が走行を予定する時間帯に走路RTで実施される工事に関する情報と、当該時間帯に走路RTに停車される車両100に関する情報とを取得する。
【0036】
ステップS20では、走路情報取得部314は、天気情報325を取得する。走路情報取得部314は、例えば、気象庁などによって公開される天気予報のうち、走路RTの所在地に対応する天気予報などを取得する。取得された天気情報は、記憶装置320に天気情報325として格納される。この結果、走路情報取得部314は、車両100が走行を予定する時間帯における走路RTにおける気温と、走路RTにおける日照時間とを取得する。
【0037】
ステップS30では、走路情報取得部314は、太陽高度情報326を取得する。具体的には、走路情報取得部314は、例えば、国立天文台等によって公開される太陽高度の公称値を取得する。この結果、走路情報取得部314は、車両100が走行を予定する時間帯における太陽高度を取得する。
【0038】
ステップS40では、走路情報取得部314は、エアロゾル情報327を取得する。具体的には、走路情報取得部314は、例えば、気象庁によって公開される走路RTの所在地に発生し得るエアロゾルの種別と、エアロゾルの量とを取得する。この結果、走路情報取得部314は、車両100が走行を予定する時間帯におけるエアロゾルの種別と、エアロゾルの量とを取得する。
【0039】
ステップS50では、走行方法決定部316は、取得された走路情報322としての走行不能位置情報323、天気情報325、太陽高度情報326、ならびにエアロゾル情報327を用いて、車両100を走行させる予定走行経路を決定する。走行方法決定部316は、走路情報322を用いて、例えば、予め走路RT上に設定されている基準の走行経路のうち、走行不能と判断される箇所と、車両100の認識精度が低下する可能性がある箇所とを抽出する。走行方法決定部316は、抽出結果を参照し、公知の経路生成アルゴリズム等を利用して、走路RT上の走行できない箇所を回避あるいは迂回させつつ、車両100の認識精度が低下する可能性が低い経路を走行する予定走行経路を決定する。本実施形態では、走行方法決定部316は、車両100の認識精度が低下する可能性が最も低い走行経路を予定走行経路として決定し、予定走行経路よりも可能性が高い走行経路を補助走行経路として決定する。補助走行経路は、後述する走行経路決定処理において予定走行経路の走行が不適であると判断された場合に、予定走行経路に代替され得る走行経路である。本明細書では、補助走行経路のことを、「第二走路」とも呼ぶ。
【0040】
図5は、走行方法決定部316が走路情報322を用いて走行経路を変更する例を示す第一の説明図である。図5には、走行不能位置情報323の一例としての走路RTにおける工事CNの実施位置が示されている。走行方法決定部316は、走行不能位置情報323を参照して、工事CNの実施位置を取得し、基準の走行経路SRのうち走行できない箇所として抽出する。走行方法決定部316は、走行できない工事CNの実施位置を回避するために、基準の走行経路SRから走行経路CRへと変更し、変更後の走行経路CRを予定走行経路として決定する。
【0041】
図6は、走行方法決定部316が走路情報322を用いて走行経路を変更する例を示す第二の説明図である。図6では、走行方法決定部316は、天気情報325の一例としての走路RTにおける日照時間を参照して走行経路を変更する。
【0042】
図6の例では、前工程50と後工程60との間の走路RTは、基準の走行経路SR1と、走行経路SR1に接続されるバイパス経路CR1と、を含んでいる。基準の走行経路SR1では、カメラ80の一例としてのカメラ81によって取得される範囲CA1における車両100の画像を用いた自走搬送が実行される。バイパス経路CR1では、カメラ80の一例としてのカメラ82によって取得される範囲CA2における車両100の画像を用いた自走搬送が実行される。図6の例では、カメラ81による範囲CA1の撮像画像では、日照時間中、太陽光がカメラ81の撮像部に多く入射して車両100の認識精度が低下する。カメラ82による範囲CA2は、日照時間中において建物BDの影SDに覆われる。そのため、範囲CA2では、太陽光がカメラ82に入射しにくくなり、範囲CA2の撮像画像は、範囲CA1の撮像画像を用いた場合と比較して車両100の認識精度が高くなる。
【0043】
走行方法決定部316は、天気情報325として走路RTにおける日照時間を参照して、日照時間中に走路RTの走行を予定する車両100の予定走行経路を、車両100の認識精度が低下する可能性が低いバイパス経路CR1に決定する。本実施形態において、第一走路である予定走行経路を走行する車両100の画像を取得するカメラ81を、第一カメラ81とも呼び、第二走路である補助走行経路を走行する車両100の画像を取得するカメラ82を、第二カメラ82とも呼ぶ。走行方法決定部316が走行経路を第一走路SR2に設定した場合、第一カメラ81によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態は、第二カメラ82によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態よりも良くなる。また、走行方法決定部316が走行経路を第一走路SR2に設定した場合には、第一カメラ81に入射する光量は、第二カメラ82に入射する光量よりも多くなる。なお、図6の例において、日照時間以外の時間帯では、基準の走行経路SR1と、バイパス経路CR1とで車両100の認識精度に優劣がない。この場合には、走行方法決定部316は、基準の走行経路SR1を予定走行経路として決定する。
【0044】
図7は、本実施形態の遠隔自動運転システム500によって実行される走行経路決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、車両100が走路RTの走行を開始する際に実行される。具体的には、本フローは、例えば、前工程50による処理が完了したこと、あるいは車両100が前工程50からの走行を開始する準備が完了したことを検知した走路情報取得部314によって開始される。
【0045】
ステップS110では、走路情報取得部314は、ステップS50で決定された予定走行経路に対応するカメラ80の認識状態を取得する。例えば、走路情報取得部314は、カメラ80の認識状態を識別するための物標をカメラ80に撮像させた撮像画像を取得する。走路情報取得部314は、取得された画像中の物標の画像解析を実行して、撮像画像における物標の認識状態を評価する。
【0046】
物標の認識状態の評価方法としては、機械学習を利用した物体認識アルゴリズムを用いて算出される確率などを用いることができる。物体認識には、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(RNN: Recurrent neural network)、敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network)、変分自己符号化器(VAE:Variational Autoencoder)などの種々のニューラルネットワークなどを利用した機械学習モデルを利用することができる。カメラ80から取得した画像を、学習済みの機械学習モデルに入力して、撮像画像中の物標を物体認識させて、教師画像の物標と一致している確率を取得する。取得された確率が所定の閾値よりも低い場合には認識状態が低いと評価することができる。なお、走行方法決定部316は、予定走行経路のいずれの場所でも取得された確率が所定の閾値よりも低い場合には、カメラ80の認識状態が悪いと判定し、予定走行経路を走行不能と判定する。
【0047】
ステップS120では、走路情報取得部314は、ステップS50で決定された補助走行経路に対応するカメラ80の認識状態を取得する。より具体的には、走路情報取得部314は、カメラ80の認識状態を識別するための物標をカメラ80に撮像させて、撮像画像を取得する。走路情報取得部314は、ステップS110と同様に、取得された物標の画像解析によって物標の認識状態を評価する。
【0048】
図8は、第一走路に対応する第一カメラの認識状態と、第二走路に対応する第二カメラの認識状態との取得方法を示す説明図である。図8には、予定走行経路としての第一走路SR2に対応する第一カメラ81と、補助走行経路としての第二走路CR2に対応する第二カメラ82とが示されている。第一カメラ81が撮像可能な範囲CA1には、第一カメラ81の認識状態を評価するための評価用マークAT1が配置されている。第二カメラ82が撮像可能な範囲CA2には、第二カメラ82の認識状態を評価するための評価用マークAT2が配置されている。評価用マークAT1および評価用マークAT2には、機械学習モデルを利用した物体認識によってカメラ80の認識状態を評価することができる所定の図形が示されている。
【0049】
走路情報取得部314は、第一カメラ81から評価用マークAT1の撮像画像を取得し、第二カメラ82から評価用マークAT2の撮像画像を取得する。走路情報取得部314は、取得された評価用マークAT1,AT2の画像を機械学習モデルに入力し、機械学習モデルから出力値としての確率を取得する。取得された確率が、例えば予め定められた閾値よりも低い場合には、走行方法決定部316は、当該走行経路が走行不能であると判定する。
【0050】
図7に戻り、ステップS130では、走路情報取得部314は、予定走行経路における車両100の通信部190と、アクセスポイント70との無線通信の通信状態に関する情報を取得する。本実施形態では、走路情報取得部314は、予定走行経路を走行する車両100の通信部190と無線通信を行うアクセスポイント70から出力されるチャネル使用率を取得する。取得されたチャネル使用率が、所定の閾値よりも低い場合には、通信状態が低いと評価することができる。この閾値は、例えば、遠隔制御部312の遠隔制御による車両100の運転制御が不調となる程度の値を用いて設定することができる。本実施形態では、走行方法決定部316は、予定走行経路のうちいずれかの場所でアクセスポイント70の通信状態が低いことが検出された場合には、予定走行経路を走行不能と判定する。
【0051】
ステップS140では、走路情報取得部314は、補助走行経路に対応するカメラ80の認識状態を取得する。より具体的には、走路情報取得部314は、補助走行経路における車両100の通信部190と、アクセスポイント70との無線通信の通信状態に関する情報を取得する。走路情報取得部314は、補助走行経路に対応するアクセスポイント70から出力されるチャネル使用率を取得する。走路情報取得部314は、ステップS130と同様に、取得されたチャネル使用率を用いて、無線通信の通信状態を評価する。
【0052】
図9は、第一走路SR2に対応するアクセスポイント701の通信状態と、第二走路CR2に対応するアクセスポイント702の通信状態との取得方法を示す説明図である。図9に示すように、アクセスポイント701の通信範囲AR1は、予定走行経路としての第一走路SR2を含み、アクセスポイント702の通信範囲AR2は、補助走行経路としての第二走路CR2を含んでいる。走路情報取得部314は、アクセスポイント701から第一走路SR2におけるチャネル使用率を取得するとともに、アクセスポイント702から第二走路CR2におけるチャネル使用率を取得する。
【0053】
図7に示すように、ステップS150では、走行方法決定部316は、予定走行経路および補助走行経路が走行可能であるか否かを確認する。具体的には、走行方法決定部316は、ステップS110からステップS140におけるカメラの認識状態および通信状態の評価結果から、予定走行経路および補助走行経路が走行可能か否かを確認する。予定走行経路および補助走行経路の双方が走行不能と判定する場合には(S150:NO)、走行方法決定部316は、処理をステップS152に移行する。なお、予定走行経路および補助走行経路の双方が走行不能である場合とは、予定走行経路および補助走行経路のいずれでも車両100の認識状態が悪い場合と、予定走行経路および補助走行経路のいずれでも通信状態が悪い場合との少なくともいずれかである。
【0054】
ステップS152では、走行方法決定部316は、車両100が走行不能であることを報知する。報知は、例えば、前工程50や後工程60の作業者や管理者等に対して実行することができる。報知は、例えば、各工程の管理装置のディスプレイへの表示や、車両100に搭載されたスピーカによる音声等によって実行できる。ステップS154では、遠隔制御部312は、車両100を停止させて、処理を終了する。遠隔制御部312は、車両100を所定の待機位置まで走行させてもよい。
【0055】
ステップS150において、予定走行経路および補助走行経路の少なくともいずれかが走行可能であれば(S150:YES)、走行方法決定部316は、処理をステップS160へと移行する。ステップS160では、走行方法決定部316は、ステップS110からステップS140までの取得結果を参照して、予定走行経路から走行経路を変更するか否か、すなわち、予定走行経路から補助走行経路に変更するか否かを確認する。補助走行経路に変更する場合としては、予定走行経路での車両100の認識状態および予定走行経路での通信状態が補助走行経路よりも悪い場合などが挙げられる。
【0056】
走行経路の変更がなければ(S160:NO)、走行方法決定部316は、処理をステップS162に移行する。ステップS162では、走行方法決定部316は、走行経路を予定走行経路に決定して、処理を終了する。走行経路の変更があれば(S160:YES)、走行方法決定部316は、処理をステップS164に移行する。ステップS164では、走行方法決定部316は、走行経路を補助走行経路に決定して、処理を終了する。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、遠隔制御による車両100の走行が走行可能な走路RTの環境に関する走路情報322を取得する走路情報取得部314と、取得された走路情報322を用いて、車両100の走行可否と、車両100を走行させる走行経路SRの変更との少なくともいずれかを含む走行方法を決定する走行方法決定部316と、を備えている。したがって、走路情報322を用いて走行方法を決定することにより、走路RTの状態に応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0058】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、さらに、通信部190との無線通信を行うための無線通信部としてのアクセスポイント70を備えている。走路情報322には、走路RTにおける通信部190とアクセスポイント70との通信状態が含まれる。したがって、遠隔制御のための通信状態に応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0059】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、通信部190とアクセスポイント70との通信状態とは、アクセスポイント70の電波強度およびアクセスポイント70のチャネル使用率である。したがって、アクセスポイント70の電波強度およびチャネル使用率に応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0060】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走路情報322は、走路RTにおける日照時間と走路RTにおける気温とを含む走路RTにおける天気情報325を含んでいる。したがって、日照時間と気温とに応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0061】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走路情報322は、走路RTで実施される工事CNに関する情報と、走路RTにおける停止車両に関する情報との少なくともいずれかを含む走行不能位置に関する情報を含んでいる。したがって、走路RTで実施される工事CN、ならびに走路RTにおける停止車両など、車両100が走行不能となる位置を回避可能な適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0062】
本実施形態の遠隔自動運転システム500は、さらに、遠隔制御に用いられる車両100の画像を取得可能なカメラ80を備えている。走路情報322は、カメラ80によって撮像される画像を用いて取得される。したがって、遠隔制御に用いられるカメラ80の撮像画像を走路情報322として用いることにより、遠隔制御に用いられる撮像画像に応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0063】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走路情報322は、カメラ80によって取得された評価用マークAT1,AT2の画像における評価用マークAT1,AT2の認識状態を示す情報を含んでいる。したがって、遠隔制御に用いられるカメラ80の撮像画像の認識状態に応じた適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0064】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光の角度に関する情報と光量に関する情報とを用いて、カメラ80による車両100の認識状態を評価し、当該評価の結果を用いて車両100の走行方法を決定する。カメラ80に入射する光の角度および光量を用いて走行方法を決定することにより、いわゆる白飛びなどの画像解析における不具合を抑制させる適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0065】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走路情報取得部は、外部機関による太陽高度の公称値を取得し、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光の角度に関する情報として、太陽高度の公称値を用いて、車両100の認識状態の評価を実行する。太陽高度の公称値を用いた簡易な方法により画像解析での不具合を抑制させる適正な車両100の走行方法を決定することができる。
【0066】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光量に関する情報として、空気中に含まれるエアロゾルの種別と、エアロゾルの量とを用いて、車両100の認識状態の評価を実行する。カメラ80による車両100の認識状態を、エアロゾルに関する情報を用いて判定することができる。したがって、撮像画像の画像解析等を省略した簡易な方法によりカメラ80による車両100の認識状態を評価することができる。
【0067】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走路情報取得部は、気象庁などの外部機関によるエアロゾルの種別と、エアロゾルの量との少なくともいずれかの公称値を取得する。走行方法決定部316は、公称値を用いて、車両100の認識状態の評価を実行する。公称値の取得という簡易な方法によりエアロゾルに関する情報を取得することができ、簡易な方法により車両100の認識状態を判定することができる。
【0068】
本実施形態の遠隔自動運転システム500は、第一走路SR2の車両100の画像を取得可能な第一カメラ81と、第二走路CR2の車両100の画像を取得可能な第二カメラ82とを備える場合において、走行方法決定部316が走行経路を第一走路SR2に設定した場合には、第一カメラ81によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態は、第二カメラ82によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態よりも良い。したがって、車両100を、認識状態が良好な走行経路で走行させることができる。
【0069】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走行方法決定部316が走行経路SRを第一走路SR2に設定した場合には、第二カメラ82に入射する光量は、第一カメラ81に入射する光量よりも多い。したがって、車両100を、白飛びなどの画像解析における不具合を抑制した走行走路で走行させることができる。
【0070】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、走行方法決定部316は、第一走路SR2および第二走路CR2のいずれでも車両100の認識状態が悪い場合には、車両100の走行停止を決定する。したがって、遠隔制御による運転制御が安定しない状態で車両100が走行することを防止することができる。
【0071】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、走行方法決定部316によって、基準の走行経路SR1と、走行経路SR1に接続されるバイパス経路CR1との別々の走路に対して予定走行経路および1つの補助走行経路が決定される例を示した。これに対して、基準の走行経路SR1において異なる車線を利用するなど、1つの走行経路内で予定走行経路および補助走行経路が設定されてもよい。また、補助走行経路は1つには限らず複数の補助走行経路が設定されてもよい。この場合には、複数の補助走行経路に対して、優先順位が設定されることが好ましい。
【0072】
(B2)上記第1実施形態では、車両100の通信部190との無線通信を行うためのアクセスポイント70を備える例を示した。これに対して、車両100の通信部190がサーバ300と有線通信を行う場合では、アクセスポイント70を備えなくてもよい。
【0073】
(B3)上記実施形態では、走路情報322に含まれる車両100の通信部190とアクセスポイント70との通信状態として、チャネル使用率が用いられる例を示した。これに対して、チャネル使用率に代えて、またはそれとともに、アクセスポイント70の電波強度が用いられてもよい。
【0074】
(B4)上記実施形態では、天気情報325には、走路RTにおける日照時間と、走路RTにおける気温とが含まれる例を示した。これに対して、天気情報325は、走路RTにおける日照時間と、走路RTにおける気温とのいずれかのみであってもよい。
【0075】
(B5)上記実施形態では、走行不能位置情報323には、走路RTで実施される工事に関する情報と、走路RTにおける停車車両に関する情報とが含まれる例を示した。これに対して、走行不能位置情報323は、走路RTで実施される工事に関する情報と、走路RTにおける停車車両に関する情報とのいずれかのみであってもよい。
【0076】
(B6)走路情報322は、第一カメラ81および第二カメラ82によって取得された撮像画像中の評価用マークAT1,AT2の認識状態である例を示した。これに対して、走路情報322には、撮像画像における評価用マークAT1,AT2以外の物標の認識状態が含まれてもよい。また、走路情報322は、カメラ80の撮像画像における物標の認識状態には限らず、カメラ80の視認性、撮像画像のホワイトバランスや色調など、カメラ80あるいはカメラ80の撮像画像に関する他の項目が用いられてもよい。
【0077】
(B7)上記実施形態では、走路情報322には、走行不能位置情報323、通信状態情報324、天気情報325、太陽高度情報326、ならびにエアロゾル情報327が含まれる例を示した。これに対して、走路情報322は、走行不能位置情報323のみであってもよく、通信状態情報324のみであってもよく、天気情報325のみであってもよく、太陽高度情報326のみであってもよく、ならびにエアロゾル情報327のみであってもよい。また、走路情報322は、これらの情報が任意に組み合わせられてもよい。
【0078】
(B8)上記実施形態では、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光の角度に関する情報とカメラ80に入射する光量に関する情報とを用いて、車両100の認識状態の評価を実行する例を示した。これに対して、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光の角度に関する情報とカメラ80に入射する光量に関する情報とのいずれかのみを用いて、カメラ80による車両100の認識状態が悪いか否かを判定してもよい。
【0079】
(B9)上記実施形態では、走路情報取得部314は、外部機関による太陽高度の公称値を走路情報322として取得する例を示した。これに対して、太陽高度は、日時などに基づいて算出されてもよい。また、予め定められた太陽高度が示された日時と太陽高度との対応テーブルを走路情報322として予め格納されていてもよい。これらの場合には、走行方法決定部316は、カメラ80に入射する光の角度に関する情報として、太陽高度の公称値に代えて、算出した値あるいは対応テーブルから導出された値を用いて、カメラ80による車両100の認識状態の評価を実行する。
【0080】
(B10)上記実施形態では、走行方法決定部316が、カメラ80に入射する光量に関する情報として、エアロゾルの種別と、エアロゾルの量との双方を用いて、カメラ80による車両100の認識状態が悪いか否かを判定する例を示した。これに対して、走行方法決定部316は、エアロゾルの種別と、エアロゾルの量とのいずれかのみを用いて、カメラ80による車両100の認識状態の評価を実行してもよい。
【0081】
(B11)上記実施形態では、走路情報取得部314が外部機関によるエアロゾルの種別と、エアロゾルの量との少なくともいずれかの公称値を取得する例を示した。これに対して、空気中の粒子を検出可能な検出器などを走路RT近傍に配置して、走路情報取得部314が当該検出器による検出結果を取得するように構成されてもよい。この場合には、走行方法決定部316が当該検出結果を用いて、カメラ80による車両100の認識状態が悪いか否かを判定する。
【0082】
(B12)上記実施形態では、走路RTのうち第一走路SR2に設けられ、第一走路SR2の車両100の画像を取得可能な第一カメラ81と、走路RTのうち第一走路SR2とは異なる第二走路CR2に設けられ、第二走路CR2の車両100の画像を取得可能な第二カメラ82と、を備える例を示した。これに対して、車両100の走路RTは単数とされてもよい。この場合には、一つの走路RTの車両100の画像を取得可能なカメラ80のみが配置されてもよい。
【0083】
(B13)上記実施形態では、走行方法決定部316が走路情報322を用いて走行経路SRを第一走路SR2に設定した場合には、第一カメラ81によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態は、第二カメラ82によって取得される車両100の画像における車両100の認識状態よりも良くなるように構成されている例を示した。これに対して、走行方法決定部316が、走行不能位置など、カメラ80の撮像画像以外の情報を用いて走行経路を第一走路SR2に設定した場合には、第二カメラ82の認識状態が第一カメラ81の認識状態よりも良くなってもよく、互いの認識状態が同等とされてもよい。
【0084】
(B14)上記実施形態では、走行方法決定部316が走行経路SRを第一走路SR2に設定した場合には、第二カメラ82に入射する光量は、第一カメラ81に入射する光量よりも多くなるように構成されている例を示した。これに対して、走行方法決定部316が、走行不能位置など、カメラ80の撮像画像以外の情報を用いて走行経路を第一走路SR2に設定した場合には、第一カメラ81に入射する光量が第二カメラ82に入射する光量よりも多くなってもよく、互いの光量が同等とされてもよい。
【0085】
(B15)上記実施形態では、第一走路SR2および第二走路CR2のいずれでも車両100の認識状態が予め定められた基準状態よりも悪い場合には、車両100の走行が停止される例を示した。これに対して、車両100を予め定められた待機位置へと走行させるなど、車両100の走行が停止されないようにすることもできる。この場合には、車両100を安全に待機位置まで走行させるようにするために、例えば、工場FC内の待機位置に繋がる走路として、例えば、建物内など車両100の認識状態が基準状態よりも良くなる走路を予め設定しておくことが好ましい。
【0086】
(B16)上記各実施形態では、走行方法決定部316が、走路情報322を用いて、車両100の走行可否と、車両100を走行させる走行経路との双方を含む走行方法を決定する例を示した。これに対して、走行方法決定部316は、車両100の走行方法として、車両100の走行可否と、車両100の走行経路とのいずれかのみを決定してもよい。
【0087】
(B17)上記各実施形態では、走路情報取得部314および走行方法決定部316がサーバ300に備えられる例を示した。これに対して、走路情報取得部314および走行方法決定部316などの機能の全部またはその一部は、車両100や各工程に配置される情報処理装置などのサーバ300以外の装置に備えられてもよい。
【0088】
(B18)上記第1実施形態では、遠隔制御部312がカメラ80による撮像画像を取得し、取得された撮像画像を画像解析することによって、車両100の位置や向きを含む車両情報を取得する例を示した。これに対して車両検出器がカメラ80以外である場合には、カメラ80以外の車両検出器が取得した検出結果を解析することによって、遠隔制御による車両100の運転制御が実行されてよい。また、カメラ80と、カメラ80以外の車両検出器とが併用されてもよい。
【0089】
(B19)上記第1実施形態では、車両100が乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである例を示した。ただし、車両100は、これらに限らず、二輪車、四輪車などの種々の自動車や電車などを含んでもよい。また、上記実施形態では、遠隔自動運転システム500が遠隔制御によって車両100を自動走行させる例を示したが、車両100のみに限らず、車両100以外の種々の移動体を遠隔制御によって自動走行させてもよい。「移動体」とは、移動し得る物体を意味する。移動体は、車両を含み、船舶、航空機、ロボット、リニアモーターカーなどが含まれる。この場合には、本開示における「車両」「車」との表現を、適宜に「移動体」に置き換えることができ、「走行」との表現を、適宜に「移動」に置き換えることができる。
【0090】
(B20)上記第1実施形態では、予定走行経路決定処理と、走行経路決定処理との双方が実行される例を示した。これに対して、予定走行経路を省略することもできる。この場合には、走行経路決定処理において、ステップS150よりも前のタイミングでステップS10からステップS40が実行され、ステップS10からステップS40で取得された走路情報322は、ステップS150での走行可否の判定に用いられる。
【0091】
本開示に記載の制御及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0092】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
50…前工程、60…後工程、70,701,702…アクセスポイント、72…ネットワーク、80,801,802,803…カメラ、81…第一カメラ、82…第二カメラ、100…車両、120…バッテリ、130…PCU、140…モータ、150…受電装置、180…ECU、184…運転制御部、190…通信部、300…サーバ、310…CPU、312…遠隔制御部、314…走路情報取得部、316…走行方法決定部、320…記憶装置、322…走路情報、323…走行不能位置情報、324…通信状態情報、325…天気情報、326…太陽高度情報、327…エアロゾル情報、390…遠隔通信部、500…遠隔自動運転システム、AR1,AR2…通信範囲、AT1,AT2…評価用マーク、BD…建物、CN…工事、CR,SR…走行経路、CR1…バイパス経路、CR2…第二走路、FC…工場、PG…投入位置、RT,RT1,RT2,RT3,RT4…走路、SD…影、SR2…第一走路
【要約】
【課題】遠隔自動運転システムにおいて、走路の状態に応じた適正な車両の走行方法を決定することができる技術を提供する。
【解決手段】遠隔自動運転システムは、製造過程において工場内の走路を走行可能な車両であって、通信機能を有する車両通信部と車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える車両を遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、遠隔制御により車両が走行可能な走路の環境に関する情報である走路情報を取得する走路情報取得部と、取得された走路情報を用いて、車両の走行可否と車両を走行させる走行経路との少なくともいずれかを含む走行方法を決定する走行方法決定部と、を備える。
【選択図】図2
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