(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】チョコレート類用油脂
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240827BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/36
(21)【出願番号】P 2023052974
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深見 洋次郎
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 栄治
(72)【発明者】
【氏名】栗山 雅充
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/194081(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034601(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/073899(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/156523(WO,A1)
【文献】特開2009-284899(JP,A)
【文献】特開2019-010024(JP,A)
【文献】特表2005-507028(JP,A)
【文献】特表2008-516018(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181159(WO,A1)
【文献】特開2021-153438(JP,A)
【文献】特開2015-173614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/00
A23G 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(f)を全て満たす、チョコレート類用油脂。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
【請求項2】
構成脂肪酸組成中、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量比が7以下である、請求項1記載のチョコレート類用油脂。
【請求項3】
全構成脂肪酸に占める、ラウリン酸含有量が13重量%以下である、請求項1記載のチョコレート類用油脂。
【請求項4】
全構成脂肪酸に占める、ラウリン酸含有量が13重量%以下である、請求項2記載のチョコレート類用油脂。
【請求項5】
下記SFC%を全て満たす、請求項1記載のチョコレート類用油脂。
・0℃のSFCが、10~60%
・5℃のSFCが、5~50%
・20℃のSFCが、9%以下
【請求項6】
請求項1~
5いずれか1項に記載のチョコレート類用油脂を0.2~15重量%使用してなるチョコレート類。
【請求項7】
請求項1~
5いずれか1項に記載のチョコレート類用油脂を含むブルーム抑制剤。
【請求項8】
構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が25重量%以下で、かつパルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比が1.5~5となるエステル交換油を、分別により高融点部を除去することを特徴とする、下記(a)~(f)を全て満たす、チョコレート類用油脂の製造方法。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
【請求項9】
下記(a)~(f)を全て満たすチョコレート類用油脂を配合することによる、テンパリング型チョコレート類のブルーム発現を抑制する方法。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート類用油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチョコレートは、テンパリング型と非テンパリング型に大別される。テンパリング型のチョコレートとしては、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、スイートチョコレート等が挙げられるが、乳脂を含まないスイートチョコレートや少量しか含まないセミスイートチョコレートにおいては、商品流通時のブルーム発現のリスクが比較的高いことが知られている。
【0003】
テンパリング型チョコレートにおけるブルーム現象は、チョコレート油脂部分の大半を占めるココアバターやココアバター代替脂等のSUS型油脂(S:炭素数16以上の飽和脂肪酸、U:炭素数18の不飽和脂肪酸)が最安定型結晶へ経時的に転移していくに伴い、油脂結晶が粗大化することを原因とするチョコレート表面での白色化(ブルーム)として説明されるが、ミルクチョコレート等ではこれに含まれる乳脂が最安定型結晶への転移を抑制するためブルームが発現しにくいと言われている。
【0004】
最近、油分含量の高いスイートチョコレートが多く流通する傾向にある。油分含量の高いスイートチョコレートはブルームの発生までの期間がミルクチョコレートに比べて顕著に短いことが知られており、高いブルーム抑制効果を有するブルーム抑制剤の開発が望まれている。
【0005】
文献1には、炭素数14以下の飽和脂肪酸と炭素数20以上の飽和脂肪酸の両方を含有するトリグリセリドを有効成分とするブルーム防止剤が開示されている。また文献2には、エステル交換油とStOStトリグリセリドからなるブルーム防止剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-39号公報
【文献】特開2020-156415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、固体脂含量の低い油脂を使用した、ブルーム抑制用油脂を提供することにある。
本発明者らは、課題の解決に向け鋭意検討を行った。特許文献1は、炭素数20以上の飽和脂肪酸の存在により、特許文献2は、StOStトリグリセリドの存在により、いずれも口溶けが悪化する原因となることがあった。そのため、口どけに悪影響を与えることなく、ブルーム抑制効果を有するブルーム抑制用油脂の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、当初の想定に反し、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸を高含有させ、かつCN38~CN46のトリグリセリド含有量、SO2トリグリセリド含有量、及びS2Oトリグリセリド含有量をそれぞれ特定の範囲とし、かつ10℃のSFCを5~40%に調整することにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発明を含有するものである。
(1) 下記(a)~(f)を全て満たす、チョコレート類用油脂。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
(2) 構成脂肪酸組成中、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量比が7以下である、(1)のチョコレート類用油脂。
(3) 全構成脂肪酸に占める、ラウリン酸含有量が13重量%以下である、(1)のチョコレート類用油脂。
(4) 全構成脂肪酸に占める、ラウリン酸含有量が13重量%以下である、(2)のチョコレート類用油脂。
(5) 下記SFC%を全て満たす、(1)のチョコレート類用油脂。
・0℃のSFCが、10~60%
・5℃のSFCが、5~50%
・20℃のSFCが、9%以下
(6) 下記SFC%を全て満たす、(2)のチョコレート類用油脂。
・0℃のSFCが、10~60%
・5℃のSFCが、5~50%
・20℃のSFCが、9%以下
(7) 下記SFC%を全て満たす、(3)のチョコレート類用油脂。
・0℃のSFCが、10~60%
・5℃のSFCが、5~50%
・20℃のSFCが、9%以下
(8) 下記SFC%を全て満たす、(4)のチョコレート類用油脂。
・0℃のSFCが、10~60%
・5℃のSFCが、5~50%
・20℃のSFCが、9%以下
(9) (1)~(8)のチョコレート類用油脂を0.2~15重量%使用してなるチョコレート類。
(10) (1)~(8)のチョコレート類用油脂を用いたブルーム抑制剤。
(11) 構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が25重量%以下で、かつパルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比が1.5~5となるエステル交換油を、分別により高融点部を除去することを特徴とする、下記(a)~(f)を全て満たす、チョコレート類用油脂の製造方法。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
(12) 下記(a)~(f)を全て満たすチョコレート類用油脂を配合することによる、テンパリング型チョコレート類のブルーム発現を抑制する方法。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、チョコレート類において、口どけに悪影響を与えることなく、ブルームの発生を抑制できる油脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、下記(a)~(f)を全て満たす、チョコレート類用油脂に関する。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が1分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、Sが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリドを示す。
上記(a)~(f)に示される範囲が全て適当であると、チョコレート類においてブルームの発生が抑制できる点で優れる。
【0013】
本発明のチョコレート類用油脂は、全構成脂肪酸に占めるトランス脂肪酸含有量が5重量%以下である必要がある。より好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、最も好ましくは2重量%以下となる。
なお、本発明における低トランスとは、硬化油(極度硬化油を除く。)などのトランス酸を含む油脂を実質的に原料に用いないという趣旨である。トランス酸を含む油脂とは、全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が2重量%を超える油脂をいう。トランス酸を含む油脂を実質的に原料に用いないとは、原料に占めるトランス酸を含む油脂が2重量%以下であることであり、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。最も好ましくは原料にトランス酸を含む油脂を用いないことである。
【0014】
本発明のチョコレート類用油脂は、全構成脂肪酸に占める炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%である必要がある。その下限は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上である。一方でその上限は、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。
【0015】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド(油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示す。)含有量が、40重量%以下である必要がある。その下限は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは13重量%以上である。一方でその上限は、好ましくは35重量%以下、より好ましくは33重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、最も好ましくは28重量%以下である。
【0016】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるSO2トリグリセリド(S(炭素数16~20の飽和脂肪酸)が1分子、O(オレイン酸)が2分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、40重量%以下である必要がある。その下限は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上である。一方でその上限は、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
【0017】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるS2Oトリグリセリド(S(炭素数16~20の飽和脂肪酸)が2分子、O(オレイン酸)が1分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、10~40重量%である必要がある。その下限は、好ましくは13重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは17重量%以上である。一方でその上限は、好ましくは37重量%以下、より好ましくは35重量%以下、さらに好ましくは33重量%以下である。
【0018】
本発明のチョコレート類用油脂は、10℃のSFCが5~40%以下である必要がある。その下限は、好ましくは6%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である。一方でその上限は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。
【0019】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるPO2トリグリセリド(P(パルミチン酸)が1分子、O(オレイン酸)が2分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、35重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは15重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。
この範囲が適当であると、ブルーム抑制効果の点で優れる。
【0020】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるStO2トリグリセリド(St(ステアリン酸)が1分子、O(オレイン酸)が2分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、10重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上、最も好ましくは3重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは9重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下、最も好ましくは7重量%以下である。
この範囲が適当であると、ブルーム抑制効果の点で優れる。
【0021】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるP2Oトリグリセリド(P(パルミチン酸)が2分子、O(オレイン酸)が1分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、30重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、最も好ましくは10重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは27重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、最も好ましくは23重量%以下である。
この範囲が適当であると、ブルーム抑制効果の点で優れる。
【0022】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるPStOトリグリセリド(P(パルミチン酸)、St(ステアリン酸)、O(オレイン酸)が1分子ずつ結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、13重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは4重量%以上、最も好ましくは6重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは11重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
この範囲が適当であると、ブルーム抑制効果の点で優れる。
【0023】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるSt2Oトリグリセリド(St(ステアリン酸)が2分子、O(オレイン酸)が1分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、10重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは0.7重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。
この範囲が適当であると、口どけに悪影響を与えることなくブルーム抑制効果の有する点で優れる。
【0024】
本発明のチョコレート類用油脂は、全トリグリセリドに占めるSSS(S(炭素数16~20の飽和脂肪酸)が3分子結合しているトリグリセリドを示す。)含有量が、2重量%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは0.1重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。
この範囲が適当であると、口どけに悪影響を与えることなくブルーム抑制効果の有する点で優れる。
【0025】
本発明のチョコレート類用油脂は、構成脂肪酸組成中、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量比が7以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上、最も好ましくは3以上である。一方でその上限は、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、最も好ましくは4.5以下である。
この範囲が適当であると、ブルーム抑制効果の点で優れる。
【0026】
本発明のチョコレート類用油脂は、全構成脂肪酸に占めるラウリン酸含有量が13重量%以下であることが好ましい。一その上限は、より好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは11重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。その下限は、特に限定されるものではないが、例えば1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上とすることができる。
【0027】
本発明のチョコレート類用油脂は、全構成脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が35重量%以上であることが好ましい。その下限は、より好ましくは37重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、最も好ましくは43重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは65重量%以下、さらに好ましくは62重量%以下、59重量%以下、56重量%以下、54重量%以下、最も好ましくは52重量%以下である。
この範囲が適当であると、不飽和脂肪酸の存在により固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0028】
本発明のチョコレート類用油脂は、S2Oトリグリセリド含有量に対するSSOトリグリセリド含有量の割合が40重量%以上であることが好ましい。その下限は、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。
ただし、S2Oトリグリセリドとは、炭素数16~20の飽和脂肪酸(S)が2分子、オレイン酸(O)が1分子結合しているトリグリセリドを示し、SSOトリグリセリドとは、トリグリセリド中の1位と2位に結合している脂肪酸が炭素数16~20の飽和脂肪酸(S)で、3位に結合している脂肪酸がオレイン酸(O)であるトリグリセリド及び、トリグリセリド中の2位と3位に結合している脂肪酸が炭素数16~20の飽和脂肪酸(S)で、1位に結合している脂肪酸がオレイン酸(O)であるトリグリセリドを示す。
この範囲が適当であると、チョコレート類においてブルームの発生が抑制できる点で優れる。
【0029】
本発明のチョコレート類用油脂は、SO2トリグリセリド含有量に対するOSOトリグリセリド含有量の割合が20重量%以上であることが好ましい。その下限は、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。その上限は、より好ましくは60重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以下であり、最も好ましくは40重量%以下である。
ただし、SO2トリグリセリドとは、炭素数16~20の飽和脂肪酸(S)が1分子、オレイン酸(O)が2分子結合しているトリグリセリドを示し、OSOトリグリセリドとは、トリグリセリド中の1位と3位に結合している脂肪酸がオレイン酸(O)で、2位に結合している脂肪酸が炭素数16~20の飽和脂肪酸(S)であるトリグリセリドを示す。
この範囲が適当であると、チョコレート類においてブルームの発生が抑制できる点で優れる。
【0030】
本発明のチョコレート類用油脂は、S2Oトリグリセリド含有量に対するSO2トリグリセリド含有量の比が2.4以下であることが好ましい。この範囲が適当であると、チョコレート類においてブルームの発生が抑制できる点で優れる。
【0031】
本発明のチョコレート類用油脂は、0℃のSFCが10~60%であることが好ましい。その下限は、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、25%以上、最も好ましくは30%以上である。一方でその上限は、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下、45%以下、最も好ましくは40%以下である。
この範囲が適当であると、固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0032】
本発明のチョコレート類用油脂は、5℃のSFCが5~50%であることが好ましい。その下限は、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上である。一方でその上限は、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下、最も好ましくは35%以下である。
この範囲が適当であると、固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0033】
本発明のチョコレート類用油脂は、15℃のSFCが20%以下であることが好ましい。その下限は、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上、最も好ましくは5%以上である。一方でその上限は、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下、13%以下、最も好ましくは10%以下である。
この範囲が適当であると、固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0034】
本発明のチョコレート類用油脂は、20℃のSFCが9%以下であることが好ましい。その上限は、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは3%以下、2%以下、最も好ましくは1%以下である。
この範囲が適当であると、固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0035】
本発明のチョコレート類用油脂は、25℃のSFCが3%以下であることが好ましい。その上限は、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下である。
この範囲が適当であると、固体脂含量を低下できる点で優れる。
【0036】
推測ではあるが、本発明のチョコレート類用油脂を用いたチョコレート類において、高いブルーム耐性が得られるメカニズムとして、チョコレート中の結晶が、テンパリング操作直後は安定型であるV型結晶(Vはローマ数字の5を示す。以下同じ。)であったとしても、温度サイクルなどの熱履歴の影響で、VI型(VIはローマ数字の6を示す。以下同じ。)への結晶転移することが起こり得るが、特定の組成を含むチョコレート類中の油分を含むことにより、この現象の発生が抑えられているためと考えている。
【0037】
本発明のチョコレート類用油脂の使用量はチョコレート類全体に対して、0.2~15重量%が好ましい。その下限は、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。一方でその上限は、より好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは8重量%以下である。使用量がチョコレート類全体に対して0.2重量%未満だと十分なブルーム耐性が得られない。一方で使用量がチョコレート類全体に対して15重量%を超えると過度に柔らかくなり保形性に欠ける。
【0038】
本発明のチョコレート類用油脂には、通常のチョコレート類用途に用いられる着色料、乳化剤、酸化防止剤、香料等の任意成分を適宜添加することができる。これらは本発明のチョコレート類用油脂に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下とする。
また上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、等が挙げられる。
【0039】
以上のようにして得られた本発明のチョコレート類用油脂は、本発明のチョコレート類用油脂の他に、カカオ成分や乳成分に由来する油脂分と、非テンパリング型ハードバター、その他油脂成分を組み合わせて、適宜配合量を調整することで、各種用途に適したチョコレート類用の油脂として使用することができる。
【0040】
本発明のチョコレート類用油脂は、例えば、原料油脂混合物をランダムエステル交換した後に、分別操作を行い、低融点部の油脂として得ることができる。係る分別操作方法としては、溶剤分別、非溶剤分別などの方法が選択できる。また複数の当該低融点部の油脂を作成し、これらを混合することによっても得ることができる。
ここで原料油脂は、具体的には、パーム油、菜種油、ハイエルシン菜種油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、大豆油、こめ油、コーン油、綿実油、落花生油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、亜麻仁油、パーム核油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、シア脂、サル脂等の植物性油脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、藻類油、微生物発酵由来の油脂、並びに、それらの硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。
そして特に、パーム油、パーム核油、ハイオレイックヒマワリ油のいずれか一種以上を必須原料油脂として、好適に使用することができる。
尚、ハイオレイックヒマワリ油を使用する場合、含まれるオレイン酸含量は、構成脂肪酸組成中、60質量%以上であることが好ましい。
【0041】
本発明のチョコレート類用油脂を、エステル交換後の分別低融点部として得る場合、そのエステル交換油は、ラウリン酸含有量が25重量%以下であることが好ましい。その上限は、より好ましくは20重量%以下である。その下限は、特に限定されるものではないが、例えば1重量%以上、2重量%以上とすることができる。また、上記エステル交換油は、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比が1.5~5であることが好ましい。その下限は、より好ましくは2以上である。一方でその上限は、より好ましくは4以下である。
【0042】
上記ランダムエステル交換の方法としては、化学的触媒を用いる方法でも良いし、酵素触媒による方法でも良い。化学的触媒としては、例えばナトリウムメチラート等のアルカリ金属触媒が使用でき、酵素触媒としては、例えばアルカリゲネス属(Alcaligenes)、ペニシリウム属(Penicillium)サーモマイセス属(Thermomyces)等のリパーゼが挙げられる。これらリパーゼは、既知の方法によりイオン交換樹脂や珪藻土などに固定化して用いても良いし、粉末状で用いても良い。
【0043】
本発明のチョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、およびチョコレート利用食品に限定されるものではなく、油脂類を必須成分とし、カカオマス、ココア、カカオバター、カカオバター代用脂、ハードバター等を利用した油脂加工食品をも包含するものである。
好ましい態様として、本発明のチョコレート類用油脂を使用したチョコレート類は、テンパリング型チョコレート類であることが好ましい。
【0044】
本発明のチョコレート類は、一般的なチョコレート類を製造する要領で行うことができる。一例を挙げれば、油脂類、糖類、カカオマス、ココアバター、ココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、乳化剤、酸化防止剤、香料、色素等を原料とし、混合工程、微粒化工程(ロール掛け)、精練工程(コンチング処理)、冷却工程等を有する。また、他の例を挙げれば、前記と同様の原料を混合工程、微粒化工程(ボールミル、ビーズミルによる粉砕)、攪拌工程、冷却工程等を有する。
【0045】
本発明のブルーム抑制剤は、既に述べた本発明のチョコレート類用油脂を用いたものである。該チョコレート類用油脂を含むブルーム抑制剤をチョコレート類に配合することで、ブルームの発生を抑制することができる。
【0046】
また本発明は、前記(a)~(f)を全て満たすチョコレート類用油脂を用いることによる、テンパリング型チョコレート類のブルーム発現を抑制する方法と捉えることもできる。具体的には、(a)全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下であり、かつ(b)全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%であり、かつ(c)全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下であり、かつ(d)全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下であり、かつ(e)全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%であり、かつ(f)10℃のSFCが5~40%であるチョコレート類用油脂をテンパリング型チョコレート類へ配合することにより、テンパリング型チョコレート類のブルーム発現を抑制することができる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中%及び部、比はいずれも重量基準を意味する。
【0048】
(脂肪酸組成の測定方法)
油脂の構成脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法2.4.2.1-2013により決定した。
(トリグリセリド組成(総炭素数)の測定方法)
油脂のトリグリセリド組成(総炭素数)の測定は、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法2.4.6 トリアシルグリセリン組成(ガスクロマトグラフ法)に準じて実施した。
(トリグリセリド組成(分子種)の測定方法)
油脂のトリグリセリド組成(分子種)は、基準油脂分析法2.4.6.2-2013に準拠して高速液体クロマトグラフ法により測定した。測定条件は、(カラム;ODS、溶離液;アセトン/アセトニトリル=80/20、液量;0.9ml/分、カラム温度;25℃、検出器;示差屈折計)にて実施した。ラウリンを含まない既知のPOP濃縮物或いはStOSt濃縮物の測定結果により各ピークの分子種の同定を行った。
(SFCの測定方法)
分析装置はBruker社製“minispecmq20”を使用した。SFC測定は、IUPAC2.150a (Solid Content Determination in Fats by NMR)に準じて行った。
【0049】
<実施例1>
パーム分別高融点部(ヨウ素価31)66.5重量%、パーム極度硬化油13.5重量%、パーム核油11.2重量%、菜種極度硬化油5.8重量%、ハイオレイックヒマワリ油1.8重量%、パーム油1.2重量%からなる原料油(原料油中のラウリン酸含有量5.0%、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比3.1)ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行い、得られたエステル交換油脂をヘキサン分別により高融点部を除去し、得られた分別低融点部を常法に従い脱色脱臭を行い、実施例1を得た。
【0050】
<実施例2>
ランダムエステル交換油の配合油として、パーム分別高融点部(ヨウ素価31)40重量%、パーム油28重量%、パーム極度硬化油25重量%、パーム核油7重量%からなる原料油(原料油中のラウリン酸含有量3.1%、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比3.0)を用いる以外は、実施例2と同様にして実施例2を得た。
【0051】
<実施例3>
パーム油43重量%、パーム分別高融点部(ヨウ素価12)34重量%、ハイオレイックヒマワリ極度硬化油(ヨウ素価2)12重量%、ハイオレイックヒマワリ油11重量%からなる原料油(原料油中のラウリン酸含有量1%未満、パルミチン酸含有量/ステアリン酸含有量の比3.3)、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行い、得られたエステル交換油脂をヘキサン及びアセトン分別により、いずれも高融点部を除去し、得られた分別低融点部を常法に従い脱色脱臭を行い、実施例3を得た。
【0052】
その他の比較例として、ヨウ素価67のパームスーパーオレイン(比較例1)、ヨウ素価25のパーム核オレイン(比較例2)を用いた。いずれも不二製油株式会社製である。
【0053】
表1~表4に実施例1~3、比較例1~2の油脂の分析値(脂肪酸組成%、トリグリセリド組成(総炭素数)%、トリグリセリド組成(分子種)%、SFC)を示す。
ただし、トリグリセリド組成(分子種)%については主要なトリグリセリドに限って記載している。尚、比較例2はラウリン酸(C12)を一定量以上含有するために生じる測定精度の観点から、分析値を記載しない。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
実施例1~3、比較例1~2について、下記(a)~(f)の数値にて評価を行った。その結果を表5に示す。
(a) 全構成脂肪酸に占める、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下
(b) 全構成脂肪酸に占める、炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸含有量が20~60重量%
(c) 全トリグリセリドに占める、CN38~CN46のトリグリセリド含有量が40重量%以下
(d) 全トリグリセリドに占める、SO2トリグリセリド含有量が40重量%以下
(e) 全トリグリセリドに占める、S2Oトリグリセリド含有量が10~40重量%
(f) 10℃のSFCが5~40%
ただし、「CN38~CN46のトリグリセリド」とは、油脂中のトリグリセリドの構成脂肪酸の総炭素数が38~46のトリグリセリドを示し、S2Oトリグリセリドとは、S(炭素数16~20の飽和脂肪酸を示す。以下同じ。)が2分子、O(オレイン酸を示す。以下同じ。)が1分子結合しているトリグリセリドを示し、SO2トリグリセリドとは、Sが1分子、Oが2分子結合しているトリグリセリドを示す。
【0059】
【0060】
(表5の考察)
・実施例1~3は、(a)~(f)の数値範囲を全て満たした。
・比較例1は、(f)の数値範囲を満たさないものであった。
・比較例2は、少なくとも(b)、(c)及び(f)の数値範囲を満たさないものであった。
【0061】
(モデル保存テストによる結晶型解析)
ココアバター90重量部に対し、前記実施例1~3或いは比較例1~2より選ばれる油脂サンプル10重量部を混合し、X線回折装置用ガラスプレートに少量アプライした後、温度調整によりテンパリング操作を行った後、20℃/32℃サイクル条件にて保存し、一定期間ごとに結晶型をX線回折装置にて測定した。測定は、X線回折装置MiniFlex600(株式会社リガク、最大定格出力600W、定格電圧40kV、定格電流15mA)を用い、スキャンモード2θ/θ連動、発散スリット1.25°、受光スリット0.3mm、散光スリット1.25°、モノクロ受光スリット0.8mm、開始角2.1°、終了角30.0°の条件で試料のX線回折像を測定した。得られたX線回折像より結晶型を解析し、V型結晶かVI型結晶への結晶転移が抑制されているか評価した。結果を表6に示す。
【0062】
【0063】
(表6の考察)
上記検討結果に見られる通り、前記指標(a)~(f)を満たす油脂である実施例1~実施例3は、いずれもモデル保存テストによる評価にて、保存10日後まで結晶型はV型を維持していた。一方で、前記指標(a)~(f)を一つ以上満たさない油脂である比較例1~2は、サイクル保存10日後において結晶型がV型からVI型へ転移しており、結晶転移抑制効果が不十分であることが示された。
【0064】
(チョコレート類テスト)
上記で作製したチョコレート類用油脂を使用した、チョコレート類テストを実施した。
表7の配合に従い、常法によりロール掛けによる粉砕、及びコンチングによる混練を行い、チョコレート類を作製した。チョコレート類用油脂である実施例1~3、及び比較例1~2を用い、それぞれチョコレート類である実施例4~6、及び比較例3~4を作製した。配合原料中のカカオマスはココアバターを55重量%含有していることから、本チョコレート類の油分は34.7%であり、油分に占めるココアバター、植物油脂の含有率はそれぞれ90.2%、9.8%と計算される。
試作したチョコレート類は完全溶解、冷却後に32℃でシードテンパーを取った後モールドに流し込み、5℃30分冷却し、その後型離れさせた。後述のブルーム評価基準に従いブルーム評価(表8)を行った。
【0065】
【0066】
(ブルーム評価基準)
2点以上を合格基準とした。
・5点 ツヤの消失共に観察されない。
・4点 極めて僅かにツヤの消失が観察される。
・3点 僅かにツヤの消失が観察される。
・2点 明らかなツヤの消失が観察される。
・1点 ブルーム発現が観察される。
【0067】
【0068】
(表8の考察)
上記検討結果に見られる通り、前記指標(a)~(f)を満たす油脂を配合したチョコレート類実施例では、モデル保存テストによる結果と同様、保存10日後までのブルーム発現を抑制した。一方で、前記指標(a)~(f)を一つ以上満たさない油脂を配合したチョコレート類比較例では、モデル保存テストによる結果と同様、保存10日後までにブルーム発現が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のチョコレート類用油脂を使用することで、テンパリング型チョコレート類においてブルーム発現を抑制することができる。
【要約】
【課題】
チョコレート類におけるブルーム発現を抑制することができる、低トランス脂肪酸の油脂を提供すること。
【解決手段】
炭素数16以上の鎖長を有する飽和脂肪酸を高含有させ、かつCN38~CN46のトリグリセリド含有量、SO2トリグリセリド含有量、及びS2Oトリグリセリド含有量をそれぞれ特定の範囲とし、かつ10℃のSFCを5~40%に調整するチョコレート類用油脂を用いることにより、解決することができる。
【選択図】なし