(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240827BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20240827BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
(21)【出願番号】P 2023110719
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2020025175の分割
【原出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安東 雄介
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実公平3-11768(JP,Y2)
【文献】特開2003-23718(JP,A)
【文献】特開2011-259643(JP,A)
【文献】特開平9-322361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
H02G 3/04
H01B 7/00
F16L 5/02
B60R 16/02
H01B 7/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスが通される車体パネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、
前記車体パネルにおける前記組付孔の周囲の部分に対向する対向部と、
前記対向部に設けられ、前記車体パネルに密着する環状のシール部と、
を備え、
前記シール部は、前記対向部から前記車体パネル側に延出された環状の第1リップ部と、前記対向部から前記車体パネル側に延出され、前記第1リップ部の径方向内側に設けられた環状の第2リップ部と、
前記第1リップ部の基端部と前記第2リップ部の基端部が交わる交差部と、を有し、
前記第1リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向外側に傾斜しており、
前記第2リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向内側に傾斜しており、
前記車体パネルに対する組付状態において、前記第1リップ部の外側面及び前記第2リップ部の外側面の各々が、前記対向部に対して離間するように構成されており、
前記第1リップ部は、前記第2リップ部よりも前記対向部から前記車体パネル側に長く延出されている、グロメット。
【請求項2】
前記車体パネルは、車両における車室内と車室外とを仕切るパネルであり、
前記車体パネルに対する組付状態において、前記第1リップ部及び前記第2リップ部が前記車体パネルの車室内側の面に密着するように構成された、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記対向部及び前記シール部を有するグロメット本体と、
前記グロメット本体よりも剛性の高い材料から形成されたインナー部材と、を備え、
前記インナー部材は、前記組付孔の周縁における前記シール部が密着する側とは反対側の面に係止される係止片と、前記グロメット本体の前記対向部に保持されるフランジ部と、を有し、
前記係止片が前記組付孔の周縁に係止された組付状態において、前記シール部は、前記車体パネルと前記フランジ部との間に圧縮状態で介在される、請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記対向部は、前記フランジ部と前記車体パネルとの間に介在される介在部を有し、
前記第2リップ部は、前記介在部から前記車体パネル側に延出されており、
前記フランジ部と前記車体パネルとの対向方向における前記介在部の厚さが、前記第2リップ部の基端側に向かうほど厚くなるように形成されている、請求項3に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されたグロメットは、車体パネルに形成された組付孔に組み付けられ、その組付孔に通されるワイヤハーネスと組付孔との間を止水するように構成されている。詳しくは、グロメットは、車体パネルにおける組付孔の周囲の部分に密着する環状のシール部を有し、そのシール部によって組付孔への水などの浸入を抑えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記のようなグロメットにおいて、止水性を向上させることを可能とするシール部の構成を検討していた。
そこで、止水性の向上を可能としたグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のグロメットは、ワイヤハーネスが通される車体パネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、前記車体パネルにおける前記組付孔の周囲の部分に対向する対向部と、前記対向部に設けられ、前記車体パネルに密着する環状のシール部と、を備え、前記シール部は、前記対向部から前記車体パネル側に延出された環状の第1リップ部と、前記対向部から前記車体パネル側に延出され、前記第1リップ部の径方向内側に設けられた環状の第2リップ部を備え、前記第1リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向外側に傾斜しており、前記第2リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向内側に傾斜しており、前記車体パネルに対する組付状態において、前記第1リップ部の外側面及び前記第2リップ部の外側面の各々が、前記対向部に対して離間するように構成されており、前記第1リップ部は、前記第2リップ部よりも前記対向部から前記車体パネル側に長く延出されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、止水性の向上を可能としたグロメットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態のグロメットの斜視図である。
【
図2】
図2は、同形態のグロメットの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同形態のグロメットの断面図である。
【
図4】
図4は、同形態のグロメットの要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、車体パネルへの組付状態におけるグロメットの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のグロメットは、
[1]ワイヤハーネスが通される車体パネルの組付孔に組み付けられるグロメットであって、前記車体パネルにおける前記組付孔の周囲の部分に対向する対向部と、前記対向部に設けられ、前記車体パネルに密着する環状のシール部と、を備え、前記シール部は、前記対向部から前記車体パネル側に延出された環状の第1リップ部と、前記対向部から前記車体パネル側に延出され、前記第1リップ部の径方向内側に設けられた環状の第2リップ部と、を有し、前記第1リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向外側に傾斜しており、前記第2リップ部は、先端側に向かうにつれて径方向内側に傾斜している。
【0009】
この構成によれば、第1リップ部と第2リップ部とが径方向において互いに離間するように傾斜している。これにより、第1リップ部と第2リップ部を車体パネルに密着させたときに、第1リップ部と第2リップ部と車体パネルとによって囲まれた空間を負圧(略真空)にして、シール部を車体パネルに吸着させることが可能となる。シール部が車体パネルに吸着すると、車体パネルとシール部との間に隙間が生じにくくなり、その結果、シール部の止水性が向上される。
【0010】
[2]前記車体パネルに対する組付状態において、前記第1リップ部の外側面及び前記第2リップ部の外側面の各々が、前記対向部に対して離間するように構成されている。
この構成によれば、車体パネルに吸着している第1リップ部及び第2リップ部が、対向部によって押し潰されることを防ぐことが可能となる。その結果、第1リップ部及び第2リップ部が車体パネルに吸着する状態を好適に保つことが可能となる。
【0011】
[3]前記車体パネルは、車両における車室内と車室外とを仕切るパネルであり、前記車体パネルに対する組付状態において、前記第1リップ部及び前記第2リップ部が前記車体パネルの車室内側の面に密着するように構成された。
【0012】
この構成によれば、車体パネルの車室外側の面には水がかかりやすいが、車室外側から組付孔を介して車室内側に浸入した水を、車体パネルに吸着するシール部によって好適に止水することが可能となる。
【0013】
[4]前記グロメットは、前記対向部及び前記シール部を有するグロメット本体と、前記グロメット本体よりも剛性の高い材料から形成されたインナー部材と、を備え、前記インナー部材は、前記組付孔の周縁における前記シール部が密着する側とは反対側の面に係止される係止片と、前記グロメット本体の前記対向部に保持されるフランジ部と、を有し、前記係止片が前記組付孔の周縁に係止された組付状態において、前記シール部は、前記車体パネルと前記フランジ部との間に圧縮状態で介在される。この構成によれば、シール部が車体パネルとインナー部材のフランジ部との間に圧縮状態で介在されるため、シール部を車体パネルに好適に吸着させることが可能となる。
【0014】
[5]前記対向部は、前記フランジ部と前記車体パネルとの間に介在される介在部を有し、前記第2リップ部は、前記介在部から前記車体パネル側に延出されており、前記フランジ部と前記車体パネルとの対向方向における前記介在部の厚さが、前記第2リップ部の基端側に向かうほど厚くなるように形成されている。この構成によれば、フランジ部と車体パネルとの間に介在される介在部の剛性を確保することが可能となる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。なお、本開示における垂直とは、厳密な意味での垂直を意味するものではなく、垂直とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0016】
図1及び
図3に示す本実施形態のグロメット10は、自動車の室内と室外とを隔てる車体パネルPに形成された組付孔Paに装着され、組付孔Paとその組付孔Paに通されるワイヤハーネスWとの間の止水性を確保するためのものである。また、グロメット10は、組付孔Paに通されるワイヤハーネスWを保護する役割も果たす。
【0017】
車体パネルPは、車室内と車室外(例えばエンジンルーム)とを仕切るパネルである。そして、本実施形態のグロメット10は、組付孔Paに対して室内側から組み付けられる。なお、ワイヤハーネスWは少なくとも1本の電線を含んで構成されている。
【0018】
グロメット10は、車体パネルPの組付孔Paに挿通されるインナー部材11と、インナー部材11に組み付けられたグロメット本体12と、を備えている。グロメット本体12は、可撓性が高い材料(例えばEPDM(エチレン・プロピレンゴム)などのエラストマ)からなる。インナー部材11は、グロメット本体12よりも剛性の高い材料(例えばPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂材料)からなる。
【0019】
(インナー部材11)
図2及び
図3に示すように、インナー部材11は筒状部13を備えている。筒状部13は、その軸方向から見て、組付孔Paの開口形状に倣った形状をなしている。なお、以下の説明では、筒状部13の中心軸線Lの直交方向を径方向と言う。筒状部13には、複数の係止片14が形成されている。本実施形態の係止片14は、筒状部13の周方向において略等間隔に3つ設けられている。
【0020】
各係止片14は、筒状部13の径方向に撓むように構成されている。各係止片14は、径方向外側に突出する凸部15を有している。各係止片14の凸部15は、組付孔Paの周縁に対し、グロメット10の挿入方向Dの反対方向に係止可能に構成されている(
図5参照)。本実施形態では、凸部15は、車体パネルPの室外側の面に係止する。
【0021】
インナー部材11は、筒状部13から径方向外側に延出するフランジ部16を備えている。フランジ部16は、筒状部13の軸線L方向の一端部(挿入方向Dの後方側端部)に形成されている。フランジ部16は、中心軸線Lに対して略垂直な平板状をなしている。また、フランジ部16の軸線L方向視の外形は、車体パネルPの組付孔Paよりも大きい形状をなしている。フランジ部16は、グロメット10の組付孔Paへの組付状態において、車体パネルPに対して室内側に位置する。
【0022】
(グロメット本体12)
図2及び
図3に示すように、グロメット本体12は、組付孔Paを塞ぐ基部21を備えている。基部21は、軸線L方向から見て、組付孔Paよりも一回り大きい形状をなしている。基部21の外周縁部において、基部21は、車体パネルPにおける組付孔Paの周囲の部分に対して軸線L方向に対向する対向部22を有している。対向部22は、基部21の外周縁部の周方向全体に亘って設けられている。
【0023】
グロメット本体12の基部21は、ワイヤハーネスWが挿通される円筒状の挿通部23を有している。挿通部23は、ワイヤハーネスWの外周を被覆している。また、挿通部23には、止水性を確保した状態でワイヤハーネスWが挿通される。なお、本実施形態では、ワイヤハーネスWが、軸線L方向に対して傾斜する態様で組付孔Paに挿通されるため、挿通部23は、ワイヤハーネスWの挿通方向に沿って軸線L方向に対して傾斜している。また、グロメット本体12とインナー部材11とが組み付いた状態において、グロメット本体12の挿通部23は、筒状部13の内周側に挿通されている。
【0024】
また、本実施形態のグロメット本体12は、基部21の外周縁から外周側に延出する傘状の被覆部24を備えている。被覆部24は、車体パネルPの室内側の側面に貼り付けられた図示しないインシュレータ(遮音部材)の開口を塞ぐようになっている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、基部21の対向部22は、インナー部材11のフランジ部16を保持する保持部25を有している。保持部25は、軸線L方向を中心とする環状に形成されている。保持部25は、径方向外側に窪む形状をなし、その窪みにフランジ部16が嵌め込まれている。すなわち、保持部25は、フランジ部16の軸線L方向の両側面と、フランジ部16の径方向外側面とを覆うように構成されている。
【0026】
(シール部26)
対向部22の軸線L方向の一側面、詳しくは、対向部22の挿入方向D前方側の面(車体パネルPと対向する面)には、車体パネルPにおける組付孔Paの周囲の部分に密着するシール部26が形成されている。シール部26は、組付孔Paの周縁に沿った、組付孔Paよりも一回り大きい環状をなしている。なお、本実施形態では、シール部26が車体パネルPの室内側の面に密着するように構成されている。
【0027】
図4及び
図5に示すように、シール部26は、第1リップ部31及び第2リップ部32を備えている。第1リップ部31及び第2リップ部32はそれぞれ、対向部22から車体パネルP側に延出されている。第2リップ部32は、組付孔Paの周縁に沿った、組付孔Paよりも一回り大きい環状をなしている。第1リップ部31は、第2リップ部32よりも一回り大きい環状をなしている。つまり、第2リップ部32は、第1リップ部31の径方向内側に設けられている。また、第1リップ部31及び第2リップ部32は、径方向に互いに対向している。
【0028】
第1リップ部31は、先端側に向かうにつれて(すなわち対向部22から離間するにつれて)径方向外側に傾斜している。また、第2リップ部32は、先端側に向かうにつれて(すなわち対向部22から離間するにつれて)径方向内側に傾斜している。また、本実施形態のシール部26は、第1リップ部31の基端部と第2リップ部32の基端部が交わる交差部33を有している。これにより、シール部26の軸線L方向に沿った断面形状が、車体パネルP側に開口する略V字状に形成されている。そして、グロメット10の車体パネルPへの組付状態において、第1リップ部31及び第2リップ部32の各々の内側面(互いに対向する面)が、車体パネルPの室内側の側面における組付孔Paの周囲に密着するようになっている(
図5参照)。
【0029】
対向部22は、軸線L方向において、シール部26とフランジ部16との間に介在される介在部22aを有している。介在部22aにおいて第2リップ部32と軸線L方向に対向する面は、傾斜面22bをなしている。傾斜面22bは、径方向外側に向かうにつれて、軸線L方向の第2リップ部32側(車体パネルP側)に変位するように傾斜している。すなわち、介在部22aの軸線L方向の厚さ(フランジ部16と車体パネルPとの対向方向の厚さ)が、第2リップ部32の基端側に向かうほど厚くなるように形成されている。これにより、介在部22aの剛性を確保することが可能となっている。
【0030】
本実施形態の作用について説明する。
グロメット10を車体パネルPの組付孔Paに対して室内側から挿入方向Dに挿入すると、
図5に示すように、第1リップ部31及び第2リップ部32の各々の内側面が車体パネルPと当接して対向部22側に倒れる。そして、対向部22の介在部22a及びシール部26が、フランジ部16と車体パネルPとによって軸線L方向に挟まれて圧縮された状態となる。また、この状態で、インナー部材11における各係止片14の凸部15が組付孔Paの周縁と係止される。
【0031】
このとき、第1リップ部31及び第2リップ部32を有するシール部26は、車体パネルPに吸着される。すなわち、第1リップ部31と第2リップ部32と車体パネルPとによって囲まれた空間Sが負圧(略真空)になることで、第1リップ部31及び第2リップ部32が外気圧の作用によって車体パネルPに貼り付くようになっている。
【0032】
このようにシール部26が車体パネルPに吸着する状態では、第1リップ部31及び第2リップ部32が車体パネルPに対して歪みなく接する。このため、第1リップ部31及び第2リップ部32と車体パネルPとの間に極めて隙間が出来にくい状態となり、シール部26の止水性が向上されるようになっている。
【0033】
また、本実施形態のグロメット10は車体パネルPの室内側から組み付けられ、グロメット本体12のシール部26が車体パネルPの室内側の面に密着する。車体パネルPにおいて水が掛かりやすいのは主に室外側の面であるため、室外側から組付孔Paを介してシール部26の内周側に水が浸入する場合がある。このため、本実施形態のシール部26では、内周側の水を外周側に流れないように止水する性能が求められる。なお、ここでは、シール部26が止水すべき径方向外側の方向を止水方向として説明する。
【0034】
ここで、比較例として、第2リップ部32が径方向外側に傾斜(第1リップ部31と同じ方向に傾斜)する構成を考えると、シール部26が車体パネルPに吸着しない上に、第1リップ部31及び第2リップ部32の両方が前記止水方向(径方向外側)に傾斜するため、シール部26の内周側の水を外周側に流れないように止水することが難しい。
【0035】
その点、本実施形態のグロメット10では、シール部26が、第1リップ部31及び第2リップ部32によって車体パネルPに吸着されるため、シール部26の内周側の水を外周側に流れないように好適に止水することが可能となっている。
【0036】
また、第1リップ部31及び第2リップ部32が車体パネルPに吸着する状態において、第1リップ部31の外側面31a及び第2リップ部32の外側面32aの各々が、対向部22に対して離間している。これにより、車体パネルPに吸着している第1リップ部31及び第2リップ部32が、対向部22によって押し潰されることを防ぐことが可能となり、その結果、第1リップ部31及び第2リップ部32が車体パネルPに吸着する状態を好適に保つことが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のシール部26では、第1リップ部31の外側面31a及び第2リップ部32の外側面32aが対向部22から離間していることから、第1リップ部31や第2リップ部32を挿入方向Dに押し潰すことで止水性を確保する構成ではない。このため、本実施形態のグロメット10では、組付孔Paに組み付ける際に必要な挿入力を小さく抑えることが可能となっており、グロメット10の組付性の向上に寄与している。
【0038】
本実施形態の効果について説明する。
(1)第1リップ部31と第2リップ部32とが径方向において互いに離間するように傾斜している。これにより、第1リップ部31と第2リップ部32を車体パネルPに密着させたときに、第1リップ部31と第2リップ部32と車体パネルPとによって囲まれた空間Sを負圧(略真空)にして、シール部26を車体パネルPに吸着させることが可能となる。シール部26が車体パネルPに吸着すると、車体パネルPとシール部26との間に隙間が生じにくくなり、その結果、シール部26の止水性が向上される。
【0039】
(2)車体パネルPに対する組付状態において、第1リップ部31の外側面31a及び第2リップ部32の外側面32aの各々が、対向部22に対して離間するように構成されている。この構成によれば、車体パネルPに吸着している第1リップ部31及び第2リップ部32が、対向部22によって押し潰されることを防ぐことが可能となる。その結果、第1リップ部31及び第2リップ部32が車体パネルPに吸着する状態を好適に保つことが可能となる。
【0040】
(3)車体パネルPは、車両における車室内と車室外とを仕切るパネルであり、グロメット10は、車体パネルPに対する組付状態において、第1リップ部31及び第2リップ部32が車体パネルPの車室内側の面に密着するように構成されている。この構成によれば、車体パネルPの車室外側の面には水がかかりやすいが、車室外側から組付孔Paを介して車室内側に浸入した水を、車体パネルPに吸着するシール部26によって好適に止水することが可能となる。
【0041】
(4)グロメット10は、対向部22及びシール部26を有するグロメット本体12と、グロメット本体12よりも剛性の高い材料から形成されたインナー部材11と、を備える。インナー部材11は、組付孔Paの周縁におけるシール部26が密着する側とは反対側の面に係止される係止片14と、グロメット本体12の対向部22に保持されるフランジ部16と、を備える。そして、係止片14が組付孔Paの周縁に係止された組付状態において、シール部26は、車体パネルPとフランジ部16との間に圧縮状態で介在される。この構成によれば、シール部26が車体パネルPとインナー部材11のフランジ部16との間に圧縮状態で介在されるため、シール部26を車体パネルPに好適に吸着させることが可能となる。
【0042】
(5)対向部22は、フランジ部16と車体パネルPとの間に介在される介在部22aを備え、第2リップ部32は、介在部22aから車体パネルP側に延出されている。そして、フランジ部16と車体パネルPとの対向方向(軸線L方向)における介在部22aの厚さが、第2リップ部32の基端側に向かうほど厚くなるように形成されている。この構成によれば、フランジ部16と車体パネルPとの間に介在される介在部22aの剛性を確保することが可能となる。
【0043】
(6)シール部26は、第1リップ部31の基端部と第2リップ部32の基端部が交わる交差部33を有している。これにより、第1リップ部31と第2リップ部32とが径方向において近接配置され、その結果、シール部26を、第1リップ部31及び第2リップ部32によって車体パネルPに好適に吸着させることが可能となる。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・グロメット本体12及びインナー部材11の形成材料は上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
【0045】
・第1リップ部31及び第2リップ部32を含むシール部26の形状などの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。なお、第1リップ部31及び第2リップ部32を車体パネルPに好適に吸着させるためには、第1リップ部31及び第2リップ部32の長さが極端に異ならない方がよい。具体的には、第1リップ部31及び第2リップ部32の一方の長さが、第1リップ部31及び第2リップ部32の他方の半分の長さよりも長い方が好ましい。
【0046】
・上記実施形態では、第1リップ部31の基端部と第2リップ部32の基端部が交わっているが、これに限らず、第1リップ部31の基端部と第2リップ部32の基端部とを径方向に離間させてもよい。
【0047】
・グロメット本体12の形状などの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態のグロメット本体12から被覆部24を省略してもよい。また、挿通部23が軸線L方向(組付孔Paの貫通方向)に沿って延びる構成に変更してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、組付孔Paに対して室内側から組み付けられるグロメット10に適用したが、室外側から組み付けられるグロメットに適用してもよい。
・上記実施形態では、エラストマなどの可撓性が高い材料からなるグロメット本体12と、該グロメット本体12よりも剛性の高いインナー部材11とからなるグロメット10に適用したが、これ以外に例えば、可撓性の高い材料のみで構成されたグロメットに適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 グロメット
11 インナー部材
12 グロメット本体
13 筒状部
14 係止片
15 凸部
16 フランジ部
21 基部
22 対向部
22a 介在部
22b 傾斜面
23 挿通部
24 被覆部
25 保持部
26 シール部
31 第1リップ部
31a 外側面
32 第2リップ部
32a 外側面
33 交差部
D 挿入方向
L 中心軸線
P 車体パネル
Pa 組付孔
S 空間
W ワイヤハーネス