(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240827BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
G01S7/521 A
(21)【出願番号】P 2023506797
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001606
(87)【国際公開番号】W WO2022196078
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021045099
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 智昭
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-135466(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132492(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/189812(WO,A1)
【文献】特開2004-40614(JP,A)
【文献】特開2020-136931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
G01S 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側壁と前記側壁の一方の端部に配置されている底板とを有するケースと、
前記ケースの内部で前記底板上に配置されている圧電素子とを備え、
前記側壁は、互いに対向する1対の厚壁部と、互いに対向する1対の薄壁部とを含み、
前記側壁の他方の端部の内周縁は、面取部を有し、
前記1対の薄壁部の一方の前記面取部に凹部が設けられている、超音波センサ。
【請求項2】
前記凹部は、前記1対の薄壁部の前記一方の中央部に設けられている、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記ケースは、前記側壁の前記底板から遠い側の表面であって前記底板と平行に延在する第1面を有し、
前記凹部は前記面取部から前記第1面内に延在している、請求項1または2に記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
底板と側壁とを有する有底筒状のケースと、このケースの内部の底面に配置された圧電素子とを備える超音波センサが知られている。このような超音波センサの一例が、特開2004-40614号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波センサを製造する際に、ケースの内部の底面に圧電素子が貼り付けられる。このとき、ケースの向きの判別が可能であれば、ケースの振動面の傾きなどを把握した上で圧電素子を好ましい向きで貼り付けることができるので、好ましい。しかし、ケースの形状が対称である場合には、ケースの向きの判別は困難である。
【0005】
また、超音波センサのケースは、鍛造加工などによって作製される。加工によって実際に得られたケースの成形精度の変化を把握して加工条件にフィードバックすることができれば、ケースの成形精度を向上させることができる。これにより、ケースの形状ばらつきを小さく抑えることができ、その結果、超音波センサとしての製品ばらつきの低減を図ることができる。製品ばらつきが小さくなれば、周波数精度を向上させることができる。しかし、ケースの形状が対称である場合には、ケースの向きの判別が困難であり、ケースの成形精度の変化を把握することも困難である。
【0006】
特許文献1に記載された超音波センサのように、ケースの開口部側に凹部が設けられている場合、ケースの形状が非対称となり、スプリアス周波数での振動の強度が大きくなる。スプリアス周波数での振動は、余剰振動である。スプリアス周波数での振動の強度が大きくなると、残響時間が長くなる。そうなると、超音波センサにおける近距離の検知性能は低くなる。
【0007】
そこで、本発明は、スプリアス周波数での振動の強度が大きくならず、ケースの向きの判別を可能とした超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく超音波センサは、筒状の側壁と上記側壁の一方の端部に配置されている底板とを有するケースと、上記ケースの内部で上記底板上に配置されている圧電素子とを備える。上記側壁は、互いに対向する1対の厚壁部と、互いに対向する1対の薄壁部とを含む。上記側壁の他方の端部の内周縁は、面取部を有する。上記1対の薄壁部の一方の上記面取部に凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプリアス周波数での振動の強度が大きくならず、ケースの向きの判別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの斜視図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの平面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの側面図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサのケースの斜視図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの第1の断面図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの第2の断面図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサのケースの平面図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサの部分拡大図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態1における超音波センサで、凹部が設けられる範囲についての説明図である。
【
図11】シミュレーションに用いた第1のモデルの部分斜視図である。
【
図12】シミュレーションに用いた第2のモデルの部分斜視図である。
【
図13】シミュレーションに用いた第3のモデルの部分斜視図である。
【
図14】シミュレーションによって得られたスプリアス周波数での振動の強度のグラフである。
【
図15】本発明に基づく実施の形態2における超音波センサの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において示す寸法比は、必ずしも忠実に現実のとおりを表しているとは限らず、説明の便宜のために寸法比を誇張して示している場合がある。以下の説明において、上または下の概念に言及する際には、絶対的な上または下を意味するとは限らず、図示された姿勢の中での相対的な上または下を意味する場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
図1~
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態1における超音波センサについて説明する。本実施の形態における超音波センサ101の斜視図を
図1に示す。超音波センサ101の平面図を
図2に示す。超音波センサ101の側面図を
図3に示す。超音波センサ101が備えるケース1の斜視図を
図4に示す。超音波センサ101の第1の断面図として、
図2のV-V線における矢視断面図を
図5に示す。超音波センサ101の第2の断面図として、
図3のVI-VI線における矢視断面図を
図6に示す。超音波センサ101が備えるケース1の平面図を
図7に示す。
【0013】
図5に示すように、超音波センサ101は、ケース1と、圧電素子5とを備える。ケース1は、底板2と、側壁3とを有する。側壁3は筒状で、側壁3の一方の端部に底板2が配置されている。側壁3の他方の端部は開口部4となっている。すなわち、ケース1は有底筒状であり、側壁3の他方の端部は側壁3の底板2から遠い側の端部である。圧電素子5は、ケース1の内部で底板2上に配置されている。
図6に示すように、側壁3は、互いに対向する1対の厚壁部31と、互いに対向する1対の薄壁部32とを含む。
図4および
図5に示すように、側壁3の他方の端部の内周縁は、面取部13を有する。1対の薄壁部32の一方の面取部13に凹部14が設けられている。
【0014】
図1~
図5に示すように、ケース1は、フランジ部9を備える。フランジ部9は、側壁3の底板2から遠い側の端部、すなわち、開口部4側の端部から外側に張り出している。ケース1は、たとえばアルミニウムなどの金属製である。また、ケース1は、たとえば一体的に形成されたものである。
図4および
図5に示すように、ケース1は、第1面15と、内周面16とを有する。第1面15は、底板2から遠い側の表面、すなわち、開口部4側の表面である。第1面15は、底板2と平行に延在する。
図5に示すように、ケース1の内部空間には、制振材8が充填されている。制振材8は、絶縁材料である。
【0015】
図1~
図3に示すように、超音波センサ101は、2本のピン端子6を備える。ピン端子6の各々は、一方の端部がケース1の内部に配置されており、他方の端部がケース1の外に配置されている。2本のピン端子6は、リード線、フレキシブル基板などによって圧電素子5と電気的に接続されている。
図5および
図6においては、ピン端子6と圧電素子5とを電気的に接続する部材は、省略されている。
【0016】
凹部14およびその近傍を拡大したところを、
図8に示す。凹部14は、目視で存在を認識できる程度の大きさを有する。凹部14は、丸み部17を含む。丸み部17は、凹部14の第1面15側の端部に設けられている。丸み部17は、平面視してU字状であり、曲率半径0.2mmとなっている。凹部14の内周面16側の端部には丸み部がない。凹部14の長手方向の長さL1は、1.0mmである。凹部14の幅方向の長さWは、0.6mmである。凹部14は面取部13内に配置されている。凹部14は、内周面16には達していない。
【0017】
本実施の形態では、ケース1が面取部13を有し、1対の薄壁部32の一方の面取部13に凹部14が設けられているので、スプリアス周波数での振動の強度が大きくならず、凹部14によりケース1の向きの判別が可能となる。すなわち、凹部14は、ケース1の向きを判別するためのマーキングとして用いることができる。また、凹部14は、超音波センサ101の向きを判別するためのマーキングとしても用いることができるので、超音波センサ101の向きの判別が可能となる。
【0018】
(シミュレーション)
ケース1を振動させたときの挙動について、シミュレーションした結果を
図9に示す。
図9では、ケース1の各部位における変位量の大きさが、ハッチングによって区別して表示されている。側壁3のうち厚壁部31の開口部4側の端部の内縁部の中央において変位量が特に大きくなっている。一方、凹部14が設けられている薄壁部32の面取部13を含む、側壁3のうち薄壁部32の開口部4側の端部の内縁部の中央においては、変位量は特に小さくなっている。
図9からは、凹部14の有無によって、ケース1の振動時の挙動は、凹部14の有無による影響をほとんど受けていないことがわかる。
【0019】
(凹部14の位置と中心線との関係)
凹部14は、1対の薄壁部32の一方の中央部に設けられていることが好ましい。
図10を参照して、凹部14が設けられる範囲について説明する。凹部14が設けられることが好ましい範囲Rを、
図10に示す。凹部14は、薄壁部32の開口部4側の端部にある面取部13のうち、中心線を挟む範囲R内に設けられることが好ましい。範囲Rは、中心線から±1.5mmの範囲である。すなわち、中央部の幅3mmの範囲内に設けられることが好ましい。
【0020】
(比較実験)
図11~
図13に示す3通りのモデルを用意して、シミュレーションを行なった。スプリアス周波数での振動の強度を圧電共振解析により算出した。モデルAは、厚壁部31の開口部4側の端部の内縁部の中央に凹部が設けられたものである。モデルBは、
図11に示すように、薄壁部32の開口部4側の端部の内縁部の中央に凹部14vが設けられたものである。凹部14vは、第1面15から内周面16にわたって設けられている。モデルCは、
図12に示すように、薄壁部32の開口部4側の端部の内縁部の中央に凹部14が設けられたものである。モデルCの凹部14は、本実施の形態で説明した凹部14と同じ形状である。モデルDは、
図13に示すように、第1面15に凹部14wが設けられたものである。
【0021】
モデルA~Dにおける算出結果を、
図14に示す。このグラフの縦軸にある「スプリアス強度」とは、スプリアス周波数での振動の強度を意味する。モデルC,Dにおいては、スプリアス周波数での振動の強度が小さく抑えられている。特に、モデルCにおいて、スプリアス周波数での振動の強度を抑制する効果が顕著である。
【0022】
(実施の形態2)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態2における超音波センサについて説明する。本実施の形態における超音波センサのケースの一部を拡大したところを
図15に示す。本実施の形態における超音波センサでは、ケースの面取部13に凹部14iが設けられている。その他の構成は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、説明を繰り返さない。
【0023】
本実施の形態における超音波センサでは、凹部14iは面取部13から第1面15内に延在している。
【0024】
本実施の形態においても、本発明に基づく実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0025】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0026】
1 ケース、2 底板、3 側壁、4 開口部、5 圧電素子、6 ピン端子、8 制振材、9 フランジ部、13 面取部、14,14i,14v,14w 凹部、15 第1面、16 内周面、17 丸み部、31 厚壁部、32 薄壁部、101 超音波センサ。