(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】モバイル通信システム、移動管理装置、および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/14 20090101AFI20240827BHJP
【FI】
H04W36/14
(21)【出願番号】P 2023508336
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012650
(87)【国際公開番号】W WO2022201454
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】井上 義雄
(72)【発明者】
【氏名】安岡 大知
(72)【発明者】
【氏名】原田 将如
(72)【発明者】
【氏名】正野 隆文
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 登
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345230(US,A1)
【文献】国際公開第2019/179925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル端末と複数のネットワークとの接続を制御するモバイル通信システムであって、
基地局と、
前記基地局に接続し、前記基地局のセル内のモバイル端末の移動を管理する移動管理装置と、を備え、
前記モバイル端末が前記基地局に接続するときに、前記移動管理装置は、第1のネットワークを識別するネットワーク識別情報を前記モバイル端末から取得し、
前記基地局は、前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークの基地局と前記モバイル端末との間の通信品質を表す品質情報を前記モバイル端末から受信し、
前記移動管理装置は、前記品質情報に基づいて、前記モバイル端末に対して、前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークに接続することを指示する
ことを特徴とするモバイル通信システム。
【請求項2】
前記基地局は、前記モバイル端末に対して、前記第1のネットワークの基地局と前記モバイル端末との間の通信品質の測定を依頼し、
前記基地局は、前記依頼に応じて前記モバイル端末から送信される前記品質情報を受信する
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信システム。
【請求項3】
前記移動管理装置は、前記第1のネットワークの基地局とモバイル端末との間の通信品質が所定の閾値より高くなったときに、前記モバイル端末に対して、前記第1のネットワークに接続することを指示する
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信システム。
【請求項4】
前記移動管理装置は、前記通信品質が前記閾値より高く、且つ、前記モバイル端末と前記基地局との間でデータ通信が行われていないときに、前記モバイル端末に対して、前記第1のネットワークに接続することを指示する
ことを特徴とする請求項3に記載のモバイル通信システム。
【請求項5】
前記品質情報は、前記第1のネットワークの基地局から送信される信号の受信電力を表すメジャーメントレポートである
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信システム。
【請求項6】
前記モバイル端末は、優先的に接続すべきネットワークが登録されるリストを備え、
前記移動管理装置は、前記モバイル端末が前記第1のネットワークに優先的に接続されるように、前記リストを更新する
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信システム。
【請求項7】
前記第1のネットワークは、前記モバイル端末のホームネットワークである
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信システム。
【請求項8】
モバイル端末と複数のネットワークとの接続を制御するモバイル通信システムにおいて、訪問先ネットワークの基地局のセル内のモバイル端末の移動を管理する移動管理装置であって、
前記モバイル端末が前記基地局に接続するときに、第1のネットワークを識別するネットワーク識別情報を前記モバイル端末から取得する取得部と、
前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークの基地局と前記モバイル端末との間の通信品質に基づいて、前記モバイル端末に対して、前記第1のネットワークに接続することを指示する接続制御部と、
を備える移動管理装置。
【請求項9】
モバイル端末とネットワークとの接続を制御する通信制御方法であって、
モバイル端末が訪問先ネットワークの基地局に接続するときに、移動管理装置は、第1のネットワークを識別するネットワーク識別情報を前記モバイル端末から取得し、
前記基地局は、前記第1のネットワークの基地局と前記モバイル端末との間の通信品質を表す品質情報を前記モバイル端末から受信し、
前記移動管理装置は、前記通信品質に基づいて、前記モバイル端末に対して、前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークに接続することを指示する
ことを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル通信システム、移動管理装置、および通信制御方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
モバイル端末は、そのモバイル端末の利用者が契約している通信会社のネットワークを介して通信を行うことができる。以下の記載では、この通信会社を「契約通信会社」と呼ぶことがある。また、契約通信会社のネットワークをホームネットワーク(又は、HPLMN:Home Public Land Mobile Network)と呼ぶことがある。
【0003】
モバイル端末は、ローミング(Roaming)により、契約通信会社と提携している他の通信会社のネットワークを利用できることがある。以下の記載では、このネットワークを訪問先ネットワーク(又は、VPLMN:Visited Public Land Mobile Network)と呼ぶことがある。
【0004】
例えば、モバイル端末がホームネットワークのセル内に位置するときは、モバイル端末は、ホームネットワークを介して通信を行う。また、モバイル端末がホームネットワークのセルエリアから訪問先ネットワークのセルエリアに移動すると、ローミングにより、モバイル端末は訪問先ネットワークに接続する。すなわち、セルの切替えが実行される。さらに、モバイル端末が訪問先ネットワークのセルエリアからホームネットワークのセルエリアに戻ると、モバイル端末は再びホームネットワークに接続する。
【0005】
なお、VPLMNに属するセルからHPLMNに属するセルへ切り替える方法については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、訪問先ネットワークに属するセル(即ち、VPLMNセル)からホームネットワークに属するセル(即ち、HPLMNセル)への切替えに要する時間が長くなることがある。例えば、従来の手順の1つにおいては、VPLMNセルからHPLMNセルへの切替えは、所定の周期で設定されているセル切替え期間においてのみ実行可能である。この場合、VPLMNセルからHPLMNセルへの切替えトリガが発生するタイミングによっては、切替えトリガの発生時から実際にセルの切替えが完了するまでに長い時間を要することになる。
【0008】
なお、特許文献1に記載されている方法によれば、この問題を解決または緩和できるかも知れない。ただし、特許文献1に記載の方法は、モバイル端末に専用のソフトウェアを実装する必要がある。
【0009】
本発明の1つの側面に係わる目的は、モバイル端末が接続するセルの切替えに要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様に係わるモバイル通信システムは、モバイル端末と複数のネットワークとの接続を制御する。モバイル通信システムは、基地局と、前記基地局に接続し、前記基地局のセル内のモバイル端末の移動を管理する移動管理装置と、を備える。前記モバイル端末が前記基地局に接続するときに、前記移動管理装置は、第1のネットワークを識別するネットワーク識別情報を前記モバイル端末から取得する。前記基地局は、前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークの基地局と前記モバイル端末との間の通信品質を表す品質情報を前記モバイル端末から受信する。前記移動管理装置は、前記品質情報に基づいて、前記モバイル端末に対して、前記ネットワーク識別情報により識別される第1のネットワークに接続することを指示する。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、モバイル端末が接続するセルの切替えに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係わるモバイル端末の移動の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わるモバイル通信システムの一例を示す図である。
【
図3】訪問先ネットワークからホームネットワークへの切替えの一例を示すシーケンス図(その1)である。
【
図4】訪問先ネットワークからホームネットワークへの切替えの一例を示すシーケンス図(その2)である。
【
図7】モバイル端末の移動の他の例を示す図である。
【
図8】コアネットワーク、基地局、およびモバイル端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わるモバイル端末の移動の一例を示す。この例では、HPLMN基地局1およびVPLMN基地局2が互いに隣接して設置されている。よって、HPLMN基地局1により形成されるHPLMNセル1aの一部およびVPLMN基地局2により形成されるVPLMNセル2aの一部が互いに重複している。なお、HPLMNセル1aはHPLMN基地局1の通信エリアを表し、VPLMNセル2aはVPLMN基地局2の通信エリアを表す。また、HPLMN基地局1およびVPLMN基地局2は、それぞれ、例えば、eNBであってもよい。
【0014】
なお、以下の記載では、モバイル端末3のホームネットワークのセルと他のネットワーク(即ち、訪問先ネットワーク)のセルとの間の切替えについて説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、自治体または通信会社以外の企業がプライベートネットワークを有するケースでは、プライベートネットワークのセル間の切替えにも本発明は適用可能である。
【0015】
HPLMN基地局1を運用する通信会社は、この通信会社と契約している利用者に対して通信サービスを提供する。そして、モバイル端末3の利用者は、この通信会社と通信サービスに係わる契約を結んでいる。したがって、モバイル端末3は、HPLMN基地局1を介してネットワークに接続することができる。以下の記載では、この通信会社を「契約通信会社」と呼ぶことがある。また、この契約通信会社のネットワークをホームネットワーク(又は、HPLMN)と呼ぶことがある。
【0016】
VPLMN基地局2を運用する通信会社は、ローミングを行うことについて、契約通信会社と提携している。したがって、モバイル端末3は、VPLMN基地局2を介してネットワークに接続することもできる。以下の記載では、このネットワークを訪問先ネットワーク(又は、VPLMN)と呼ぶことがある。
【0017】
モバイル端末3は、
図1に示す曲線に沿って移動するものとする。この場合、モバイル端末3が点P1に位置しているときには、モバイル端末3は、HPLMN基地局1に接続する。モバイル端末3が点P1から点P2に移動すると、HPLMN基地局1から受信する信号の品質が閾値より低くなり、VPLMN基地局2から受信する信号の品質が閾値より高くなる。そうすると、モバイル端末3は、HPLMN基地局1との間のリンクを切断すると共に、VPLMN基地局2に接続する。すなわち、ローミングにより、ホームネットワークから訪問先ネットワークへの切替えが行われる。
【0018】
この後、モバイル端末3が点P2から点P3に移動すると、HPLMN基地局1から受信する信号の品質が閾値より高くなる。そうすると、モバイル端末3は、VPLMN基地局2との間のリンクを切断すると共に、HPLMN基地局1に接続する。すなわち、訪問先ネットワークからホームネットワークへの切替えが行われる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係わるモバイル通信システムの一例を示す。この実施例では、モバイル端末3のホームネットワークを提供するモバイル通信システムは、HPLMN基地局1およびHPLMNコアネットワーク4を備える。また、モバイル端末3の訪問先ネットワークを提供するモバイル通信システムは、VPLMN基地局2およびVPLMNコアネットワーク5を備える。
【0020】
HPLMN基地局1は、RRC(Radio Resource Control)処理部11および送受信部12を備える。RRC処理部11は、HPLMN基地局1に接続するモバイル端末の呼制御(コネクションの確立を含む)およびRRC状態管理を行う。また、RRC処理部11は、モバイル端末がHPLMN基地局1に接続するための情報(周波数情報、周辺セル情報、アクセス規制情報など)を報知する機能を備える。送受信部12は、送信機および受信機を備える。送信機は、モバイル端末に無線信号を送信する。受信機は、モバイル端末から送信される無線信号を受信する。
【0021】
HPLMNコアネットワーク4は、移動管理部41および加入者情報保存部42を備える。移動管理部41は、MME(Mobility Management Entity)に相当するサーバコンピュータであり、1または複数の基地局を収容する。そして、移動管理部41は、配下の基地局に接続するモバイル端末の移動を管理する。加入者情報保存部42には、契約通信会社と契約しているモバイル端末に係わる加入者情報が保存される。加入者情報は、モバイル端末を識別する端末IDを含む。
【0022】
VPLMN基地局2は、RRC処理部21、送受信部22、および端末状態管理部23を備える。RRC処理部21および送受信部22の機能は、それぞれ実質的に、RRC処理部11および送受信部12と同じである。端末状態管理部23は、ローミングによりVPLMN基地局2に接続するモバイル端末の状態を管理する。
【0023】
VPLMNコアネットワーク5は、移動管理部51および加入者情報保存部52を備える。移動管理部51および加入者情報保存部52の機能は、それぞれ実質的に、移動管理部41および加入者情報保存部42と同じである。ただし、移動管理部51は、ローミングによりVPLMN基地局2に接続するモバイル端末の移動を管理することができる。また、加入者情報保存部52には、ローミングによりVPLMN基地局2に接続するモバイル端末に係わる加入者情報も保存される。
【0024】
移動管理部51は、取得部51aおよび接続制御部51bを含む。取得部51aおよび接続制御部51bについては後で記載する。
【0025】
モバイル端末3は、RRC処理部31、無線品質測定部32、送受信部33、およびPLMNリスト34を備える。RRC処理部31は、基地局のRRC処理部と通信を行う。なお、RRC処理部31は、NAS(Non-Access Stratum)機能を備えてもよい。無線品質測定部32は、基地局から送信される無線信号の品質を測定する。ここで、無線品質測定部32は、指定されたネットワークの基地局から送信される、指定された周波数の無線信号の品質を測定することができる。品質は、例えば、受信信号の電力で表される。この場合、無線品質測定部32は、受信信号の電力を測定する。
【0026】
送受信部33は、送信機および受信機を備える。送信機は、基地局に無線信号を送信する。受信機は、基地局から送信される無線信号を受信する。PLMNリスト34には、モバイル端末3が接続できるネットワークが登録される。すなわち、PLMNリスト34には、モバイル端末3が接続できる1または複数のPLMNが登録される。そして、モバイル端末3は、接続すべきネットワークを選択するときには、PLMNリスト34に登録されているネットワークを優先的に選択する。PLMNリスト34に複数のネットワークが登録されているときは、モバイル端末3は、高い優先度が与えられているネットワークを選択する。なお、PLMNリスト34は、EPLMN(Equivalent PLMN)が登録されるEPLMNリストに相当する。
【0027】
図3~
図4は、訪問先ネットワークからホームネットワークへの切替えの一例を示すシーケンス図である。この実施例では、
図1に示すように、ホームネットワークHPLMNを識別するPLMN番号は「441-90-xxx1」であり、訪問先ネットワークVPLMNを識別するPLMN番号は「441-90-xxx2」である。また、モバイル端末3を識別する端末IDは「abc」である。そして、モバイル端末3は、HPLMN基地局1のセル内に位置している。
【0028】
この後、モバイル端末3は、
図1に示す点P1から点P2に移動する。このとき、モバイル端末3において、HPLMN基地局1から受信する信号の品質が閾値より低くなり、VPLMN基地局2から受信する信号の品質が閾値より高くなる。そうすると、モバイル端末3は、訪問先ネットワークVPLMNに接続するための手順を実行する。すなわち、モバイル端末3は、VPLMN基地局2との間でRRCコネクションを確立する。また、モバイル端末3は、VPLMNコアネットワーク5にAttachリクエストを送信する。
【0029】
Attachリクエストは、モバイル端末3を識別する端末IDおよびモバイル端末3のホームネットワークHPLMNを識別するPLMN番号を含み、訪問先ネットワークVPLMNへの接続を要求する。そして、Attachリクエストは、VPLMN基地局2を介してVPLMNコアネットワーク5の移動管理部51に転送される。そうすると、移動管理部51は、必要に応じてモバイル端末3の認証手順を実行する。このとき、移動管理部51は、不図示のHSS(Home Subscriber Server)に認証を依頼してもよい。また、移動管理部51は、モバイル端末3に係わる情報を加入者情報保存部52に保存する。具体的には、モバイル端末3の端末IDおよびモバイル端末3のホームネットワークHPLMNを表すPLMN番号が加入者情報保存部52に保存される。なお、以下の記載では、モバイル端末3のホームネットワークHPLMNを表すPLMN番号を「ホームPLMN番号」と呼ぶことがある。
【0030】
図5は、加入者情報保存部52の一例を示す。加入者情報保存部52には、上述したように、ローミングにより訪問先ネットワークVPLMNに接続するモバイル端末に係わる情報が保存される。よって、モバイル端末3の端末ID「abc」およびホームPLMN番号「441-90-xxx1」が加入者情報保存部52に保存される。なお、加入者情報保存部52には、
図5に示していない他の情報が保存されてもよい。
【0031】
なお、モバイル端末3の端末IDおよびホームPLMN番号を取得する手順は、
図2に示す取得部51aにより行われる。すなわち、取得部51aは、モバイル端末3がVPLMN基地局2に接続するときに、モバイル端末3のホームネットワークを識別するネットワーク識別情報をモバイル端末3から取得する。
【0032】
モバイル端末3が訪問先ネットワークVPLMNに接続すると、モバイル端末3において、PLMNリスト34が更新される。例えば、
図6(a)に示すように、最も優先度が高いネットワークとして、モバイル端末3が在圏しているネットワーク(すなわち、訪問先ネットワークVPLMN)がPLMNリスト34に登録される。
【0033】
また、モバイル端末3が訪問先ネットワークVPLMNに接続すると、VPLMN基地局2のRRC処理部21は、端末状態管理部23に端末接続通知を送信する。端末接続通知は、モバイル端末3を識別する端末IDを含む。そうすると、端末状態管理部23は、VPLMNコアネットワーク5にローミング確認依頼を送信する。このローミング確認依頼は、モバイル端末3がローミングにより訪問先ネットワークVPLMNに接続したことを表す。したがって、このローミング確認依頼は、モバイル端末3を識別する端末IDを含む。
【0034】
VPLMNコアネットワーク5の移動管理部51は、VPLMN基地局2からローミング確認依頼を受信すると、加入者情報保存部52を参照することにより、モバイル端末3が訪問先ネットワークVPLMNにローミングしてきたことを確認する。このとき、加入者情報保存部52から、モバイル端末3の端末IDに対応づけて保存されているPLMN番号(即ち、モバイル端末3のホームPLMN番号)が抽出される。
図5に示す例では、端末ID「abc」に基づいてPLMN番号「441-90-xxx1」が抽出される。この後、移動管理部51は、受信したローミング確認依頼に対応するローミング確認応答をVPLMN基地局2に送信する。このローミング確認応答は、モバイル端末3の端末IDおよびホームPLMN番号を含む。すなわち、端末状態管理部23は、モバイル端末3の端末IDおよびホームPLMN番号を取得できる。
【0035】
端末状態管理部23は、ローミング確認応答を受信すると、RRC処理部21に品質監視依頼を送る。この品質監視依頼は、モバイル端末3の端末IDおよびホームPLMN番号を含み、モバイル端末3とこのホームPLMN番号により識別されるネットワークとの間の通信品質の測定を依頼する。
【0036】
RRC処理部21は、品質監視依頼を受け取ると、モバイル端末3にメジャーメントレポート依頼を送信する。このメジャーメントレポート依頼は、モバイル端末3と品質監視依頼に含まれているPLMN番号(即ち、ローミング確認応答に含まれていたPLMN番号)により識別されるネットワークとの間の通信品質の測定を依頼する。この例では、PLMN番号は、ホームネットワークHPLMNを表す。なお、メジャーメントレポート依頼は、通信品質を測定すべき周波数を指定してもよい。
【0037】
モバイル端末3は、VPLMN基地局2から受信するメジャーメントレポート依頼に応じてメジャーメントレポートを作成する。すなわち、モバイル端末3は、メジャーメントレポート依頼により指定されるネットワークとの間の通信の品質を測定する。この実施例では、メジャーメントレポート依頼は、ホームネットワークHPLMNを表すPLMN番号を含む。この場合、モバイル端末3は、HPLMN基地局1から送信される無線信号の電力を測定する。このとき、モバイル端末3は、送信電力が既知である参照信号の受信電力を測定してもよい。或いは、モバイル端末3は、HPLMN基地局1から送信される信号の総電力を測定してもよい。なお、モバイル端末3は、定期的に受信信号の電力を測定する。そして、モバイル端末3は、測定結果を表すメジャーメントレポートをVPLMN基地局2に送信する。
【0038】
なお、モバイル端末3が使用する周波数が予め設定されているときは、モバイル端末3は、その周波数の品質を測定する。また、メジャーメントレポート依頼が周波数を指定するときは、モバイル端末3は、指定された周波数の品質を測定する。
【0039】
VPLMN基地局2において、メジャーメントレポートは、受信品質報告として端末状態管理部23に渡される。ここで、受信品質報告は、モバイル端末3がHPLMN基地局1から受信する信号の品質(例えば、電力)を表す。そして、端末状態管理部23は、この受信品質と所定の閾値とを比較する。閾値は、例えば、モバイル端末3が基地局と良好な品質で通信を行うことができるか否かを判定するために使用される。よって、受信品質が閾値より高いときは、端末状態管理部23は、モバイル端末3がHPLMN基地局1と良好な品質で通信を行うことができると判定する。すなわち、受信品質が閾値より高いときは、端末状態管理部23は、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNのセル内に位置している(或いは、モバイル端末3が訪問先ネットワークVPLMNのセルからホームネットワークHPLMNのセルへ移動した)と判定する。
【0040】
なお、受信品質が閾値より低いときは、端末状態管理部23は、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNのセル内に位置していないと判定する。この場合、VPLMN基地局2は、次のメジャーメントレポートを待ち受ける。
【0041】
受信品質が閾値より高くなると、端末状態管理部23は、VPLMNコアネットワーク5に更新依頼を送信する。この更新依頼は、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNのセル内へ移動したことを表す。
【0042】
VPLMNコアネットワーク5において、移動管理部51は、更新依頼に基づいてEPLMN更新指示を作成する。ここで、この更新依頼は、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNのセルへ移動したことを表す。よって、EPLMN更新指示は、モバイル端末3のEPLMNの値を、ホームネットワークHPLMNを表す値に更新することを指示する。すなわち、EPLMN更新指示は、モバイル端末3のPLMNリスト34において最も優先度が高いネットワークとしてホームネットワークHPLMNを表すPLMN番号を記録することを指示する。そして、移動管理部51は、EPLMN更新指示をモバイル端末3に送信する。
【0043】
なお、EPLMN更新指示を作成してモバイル端末3に送信する手順は、
図2に示す接続制御部51bにより行われる。すなわち、接続制御部51bは、モバイル端末3とホームネットワークHPLMNとの間の通信品質が所定の閾値より高くなったときに、モバイル端末3に対して、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNに優先的に接続することを指示する。
【0044】
モバイル端末3は、VPLMN基地局2を介してEPLMN更新指示を受信すると、PLMNリスト34を更新する。この実施例では、
図6(b)に示すように、PLMNリスト34において最も優先度が高いネットワークとしてホームネットワークHPLMNを表すPLMN番号が記録される。
【0045】
また、VPLMNコアネットワーク5において、移動管理部51は、更新依頼に対応する更新応答をVPLMN基地局2に送信する。そうすると、端末状態管理部23は、更新応答に応じて、リリース依頼を作成してRRC処理部21に送る。
【0046】
RRC処理部21は、リリース依頼を受信すると、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間の通信のためのリソースを解放する。そして、RRC処理部21は、モバイル端末3にリリース通知を送信する。リリース通知は、「リダイレクト」に起因してモバイル端末3とVPLMN基地局2との間の通信のためのリソースが解放されたことを表す。よって、モバイル端末3は、リリース通知を受信すると、訪問先ネットワークVPLMNと接続するためのリソースを解放する。また、RRC処理部21は、VPLMNコアネットワーク5にもリリース通知を送信する。そうすると、移動管理部51は、モバイル端末3が訪問先ネットワークVPLMNから離れたことを加入者情報保存部52に記録する。
【0047】
モバイル端末3は、新たなネットワークに接続する手順を開始する。このとき、モバイル端末3は、PLMNリスト34に登録されているネットワークの中で、優先度が高いネットワークから順番に接続を試みる。この実施例では、上述したEPLMN更新指示により、PLMNリスト34は
図6(b)に示す状態に更新されている。したがって、この場合、モバイル端末3は、ホームネットワークHPLMNへの接続を試みる。具体的には、モバイル端末3は、HPLMN基地局1にAttachリクエストを送信する。そうすると、このAttachリクエストは、HPLMNコアネットワーク4の移動管理部41に転送される。この結果、モバイル端末3はホームネットワークHPLMNに接続することができる。
【0048】
このように、本発明の実施形態に係わる手順においては、モバイル端末3が訪問先ネットワークに接続しているときに、モバイル端末3は、訪問先ネットワークから与えられる指示(
図3では、メジャーメントレポート依頼)に基づいて、ホームネットワークの基地局から受信する信号の品質を測定する。受信品質が閾値より高くなると、訪問先ネットワークのコアネットワーク(
図2では、移動管理部51)は、モバイル端末3が優先的に接続すべきネットワークを指定する情報(
図4では、EPLMN更新指示)をモバイル端末3に送信する。そして、モバイル端末3は、訪問先ネットワークのコアネットワークから指定されたネットワークに接続する。すなわち、モバイル通信システムは、モバイル端末3の無線状況に基づいて、訪問先ネットワークからホームネットワークへの接続の切替えを制御できる。
【0049】
このケースでは、訪問先ネットワークに接続するモバイル端末3がホームネットワークのセル内に移動すると、即座に
図4に示す手順が実行され、モバイル端末3はホームネットワークに接続する。したがって、訪問先ネットワークのセルからホームネットワークのセルへの切替えに要する時間は短い。
【0050】
また、訪問先ネットワークの移動管理部51から送信されるEPLMN更新指示によりモバイル端末3のEPLMN(すなわち、PLMNリスト34)が更新される。したがって、モバイル端末3が訪問先ネットワークのセルからホームネットワークのセルに移動したとき、モバイル端末3は、ホームネットワークに確実に再接続できる。例えば、
図7に示す例では、モバイル端末3が点P2から点P3に移動すると、モバイル端末3は、ホームネットワークに属するHPLMNセル1aおよび他のネットワークに属するセル6aの双方に在圏する。ところが、モバイル端末3のPLMNリスト34には、ホームネットワークHPLMNが登録されている。したがって、このようなケースであっても、モバイル端末3は、ホームネットワークに確実に再接続できる。
【0051】
なお、上述の実施例では、通信品質が閾値より高くなったときに即座にセルの切替えが行われるが、本発明はこの手順に限定されるものではない。例えば、通信品質が閾値より高くなったときに、VPLMN基地局2は、
図4に示すように、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間でデータ通信が継続しているか否かを確認してもよい。
【0052】
この場合、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間でデータ通信が継続しているときは、VPLMN基地局2は、VPLMNコアネットワーク5に更新依頼を送信しない。そして、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間のデータ通信が終了すると、VPLMN基地局2は、VPLMNコアネットワーク5に更新依頼を送信する。すなわち、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間のデータ通信が終了した後に、セルの切替えが行われる。この手順によれば、データ通信が途切れにくくなる。
【0053】
或いは、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間でデータ通信が継続しているときは、VPLMN基地局2は、モバイル端末3にリリース依頼を送信しない。そして、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間のデータ通信が終了すると、VPLMN基地局2は、モバイル端末3にリリース依頼を送信する。この場合も、モバイル端末3とVPLMN基地局2との間のデータ通信が終了した後に、セルの切替えが行われる。
【0054】
また、上述の実施例では、モバイル端末3と訪問先ネットワークVPLMNとの間の通信を切断した後に、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNに接続するが、本発明はこの手順に限定されるものではない。すなわち、モバイル端末3がホームネットワークHPLMNに接続した後に、モバイル端末3と訪問先ネットワークVPLMNとの間の通信を切断してもよい。
【0055】
さらに、上述の実施例では、モバイル端末3がVPLMN基地局2に接続するときに、移動管理部51は、モバイル端末3のホームネットワークを識別するネットワーク識別情報をモバイル端末3から取得するが、本発明はこの手順に限定されるものではない。例えば、モバイル端末3が所定の条件下で接続する特定ネットワークが予め決められており、その特定ネットワークを識別する情報がモバイル端末3のホームネットワーク情報に対応付けられてVPLMN基地局2またはVPLMNコアネットワーク5に保存されているものとする。この場合、VPLMN基地局2は、モバイル端末3のホームネットワーク情報からその特定ネットワークを検出する。そして、VPLMN基地局2は、検出した特定ネットワークの通信品質の測定をモバイル端末3に指示する。
【0056】
或いは、例えば、モバイル端末3が所定の条件下で接続する特定ネットワークが予め決められており、その特定ネットワークを識別するネットワーク識別情報がモバイル端末3の所定のメモリ領域に記録されているものとする。また、モバイル端末3は、Attachリクエストと共に、その特定ネットワークを識別するネットワーク識別情報を移動管理部51に送信するものとする。この場合、特定ネットワークの基地局とモバイル端末3との間の通信品質が所定の閾値より高くなったときに、移動管理部51は、モバイル端末3に対して、特定ネットワークに優先的に接続することを指示する。
【0057】
さらに、プライベートネットワーク内にシステムが異なる複数のサブネットワーク(例えば、sXGPおよびBWA)が混在するケースでは、本発明は、1つのサブネットワークのセルと他のサブネットワークのセルとの間の切替えにも適用可能である。
【0058】
さらに、上述の実施例では、訪問先ネットワークVPLMNからホームネットワークHPLMNへの切替えが行われるが、本発明はこの手順に限定されるものではない。すなわち、モバイル通信システムは、訪問先ネットワークVPLMNから所望のネットワークへの切替えを行ってもよい。ただし、接続すべきネットワークがVPLMNコアネットワーク5の移動管理部51に登録されていることが好ましい。
【0059】
この場合、例えば、移動管理部51は、
図3に示すローミング確認応答において、モバイル端末3が接続すべきネットワークを指定する。VPLMN基地局2は、指定されたネットワークをモバイル端末3に通知する。そして、モバイル端末3は、指定されたネットワークの通信品質を測定する。また、移動管理部51は、
図3に示すEPLMN更新指示において、接続すべきネットワークをモバイル端末3に通知する。
【0060】
図8(a)は、VPLMNコアネットワーク5のハードウェア構成の一例を示す。VPLMNコアネットワーク5は、CPU5a、メモリ5b、およびネットワークIF5cを備える。CPU5aは、メモリ5bに保存されているプログラムを実行することで移動管理部51(取得部51aおよび接続制御部51bを含む)の機能を提供する。また、CPU5aは、他の機能を提供することもできる。メモリ5bは、CPU5aが実行するプログラムを保存する。また、メモリ5bは、CPU5aの作業領域として使用される。さらに、加入者情報保存部52は、メモリ5bを利用して実現してもよい。ネットワークIF5cは、VPLMN基地局2との間のインタフェースを提供する。また、ネットワークIF5cは、他の機器との間のインタフェースを提供してもよい。
【0061】
図8(b)は、VPLMN基地局2のハードウェア構成の一例を示す。VPLMN基地局2は、CPU2a、メモリ2b、ネットワークIF2c、およびRF回路2dを備える。CPU2aは、メモリ2bに保存されているプログラムを実行することでRRC処理部21および端末状態管理部23の機能を提供する。また、CPU2aは、基地局の他の機能を提供することもできる。メモリ2bは、CPU2aが実行するプログラムを保存する。また、メモリ2bは、CPU2aの作業領域として使用される。ネットワークIF2cは、VPLMNコアネットワーク5との間のインタフェースを提供する。また、ネットワークIF2cは、他の機器との間のインタフェースを提供してもよい。RF回路2dは、
図2に示す送受信部22に相当し、無線送信機および無線受信機を含む。
【0062】
図8(c)は、モバイル端末3のハードウェア構成の一例を示す。モバイル端末3は、CPU3a、メモリ3b、およびRF回路3cを備える。CPU3aは、メモリ3bに保存されているプログラムを実行することでRRC処理部31および無線品質測定部32の機能を提供する。また、CPU3aは、モバイル端末3の他の機能を提供することもできる。メモリ3bは、CPU3aが実行するプログラムを保存する。また、メモリ3bは、CPU3aの作業領域として使用される。さらに、PLMNリスト34は、メモリ3bを利用して実現してもよい。RF回路3cは、
図2に示す送受信部33に相当し、無線送信機および無線受信機を含む。
【0063】
なお、HPLMNコアネットワーク4の構成は、VPLMNコアネットワーク5と実質的に同じである。また、HPLMN基地局1の構成は、VPLMN基地局2と実質的に同じである。
【符号の説明】
【0064】
1 HPLMN基地局
2 VPLMN基地局
3 モバイル端末
4 HPLMNコアネットワーク
5 VPLMNコアネットワーク
21 RRC処理部
23 端末状態管理部
32 無線品質測定部
34 PLMNリスト
51 移動管理部
51a 取得部
51b 接続制御部
52 加入者情報保存部