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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車体フレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20240827BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B62D25/20 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023552654
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037333
(87)【国際公開番号】W WO2023058222
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷 貴信
(72)【発明者】
【氏名】阿部 滉平
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143881(JP,A)
【文献】特開2005-225341(JP,A)
【文献】特開2011-42259(JP,A)
【文献】特開2019-93937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/15
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を空けて設けられ、車両前後方向に沿って延びる一対のサイドフレームと、
車両前後方向に間隔をあけて配置され、前記一対のサイドフレームを互いに連結する複数のクロスメンバと、
を備え、
前記一対のサイドフレームは、車両最後部に前記車両前後方向にわたって設けられる第1領域と、前記第1領域の前端から車両前方側にわたって設けられる第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも車両前後方向の変形強度が小さく形成され、
前記複数のクロスメンバのうち車両最後部に配置されるクロスメンバは、車幅方向に延び前記第2領域に連結される前脚部と、前記前脚部から車両後方に離れて設けられるとともに、車幅方向に延び前記第1領域に連結される後脚部と、車幅方向中央部において前記前脚部と前記後脚部とを接続する接続部と、を有する、
車体フレーム。
【請求項2】
前記サイドフレームは、前記第1領域に車幅方向外側に突出する第1部材を備え、
前記後脚部は、前記第1部材と車両前後方向において重なるように前記サイドフレームに接合される、
請求項1に記載の車体フレーム。
【請求項3】
前記第1部材は、前記車体フレームの上にボディを搭載するためのキャブマウントブラケットである、
請求項2に記載の車体フレーム。
【請求項4】
前記サイドフレームは、車幅方向内側に設けられたインナフレームと、車幅方向外側に設けられ、前記インナフレームと組み合わされるアウタフレームと、を含み、
前記後脚部は、前記アウタフレームの車幅方向内側面に接合され、
前記第1部材は、前記アウタフレームの車幅方向外側面に接合される、
請求項2又は3に記載の車体フレーム。
【請求項5】
前記後脚部は、車両高さ方向の変形強度が車両前後方向の変形強度よりも大きい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車体フレーム。
【請求項6】
前記前脚部及び前記後脚部は、前記車両高さ方向に延びる縦壁と、前記縦壁の上端部及び下端部のそれぞれから前記車両前後方向に延びる一対の横壁と、を有する、車両前後方向に開口する断面コ字状に形成され、
前記前脚部は、断面が車両後方に開口し、
前記後脚部は、断面が車両前方に開口する、
請求項5に記載の車体フレーム。
【請求項7】
前記サイドフレームは、前記第1領域に設けられる第1フレームと、前記第2領域に設けられ、前記第1フレームに接続される第2フレームと、を含み、
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、それぞれ折り曲げられた板状体で構成され、
前記第1フレームの板厚を前記第2フレームの板厚よりも薄くすることで前記第1領域の車両前後方向の変形強度を前記第2領域よりも小さくし、
前記前脚部は、取付ブラケットを介して前記一対のサイドフレームに連結され、
前記取付ブラケットは、前記第1フレームから前記第2フレームに亘って設けられる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車体フレーム。
【請求項8】
前記前脚部は、車幅方向両外側から内側に向かって車両後方に傾斜し、前記後脚部は車幅方向両外側から内側に向かって車両前方に傾斜する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の車体フレーム。
【請求項9】
前記接続部は、スペアタイヤを支持するための支持部を有する、請求項8に記載の車体フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、後面衝突時における車室内の乗員の安全性を向上させるために、衝突時に車両後部を変形させて衝突エネルギを吸収する、車体フレームが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両後部において車両前後方向に延びる一対のサイドフレームのそれぞれに第1変形促進部及び第2変形促進部が設けられた車体フレームが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-39313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が示す従来の構成では、第1変形促進部及び第2変形促進部が設けられた範囲において一対のサイドフレームを連結するようにクロスメンバが設けられているので、一対のサイドフレームの第1変形促進部及び第2変形促進部が設けられた範囲におけるクロスメンバが接続された箇所の変形が阻害され、後面衝突時におけるエネルギ吸収性能が損なわれている。後面衝突時にサイドフレームの変形がクロスメンバにより阻害される範囲を小さくする手法として、クロスメンバの車両前後方向の幅を小さくすることが考えられるが、この場合はクロスメンバの強度、剛性を十分に確保することが難しくなる。
【0006】
本開示は、上述する課題に鑑みてなされたもので、クロスメンバの強度、剛性を十分に確保するとともに後面衝突時におけるエネルギ吸収性能を高めることができる車体フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る車体フレームは、車幅方向に間隔を空けて設けられ、車両前後方向に沿って延びる一対のサイドフレームと、車両最後部において前記一対のサイドフレームを互いに連結するクロスメンバと、を備え、前記一対のサイドフレームは、車両最後部に前記車両前後方向にわたって設けられる第1領域と、前記第1領域の前端から車両前方側にわたって設けられる第2領域と、を有し、前記第1領域は前記第2領域よりも車両前後方向の変形強度が小さく形成され、前記クロスメンバは、車幅方向に延び前記第2領域に連結される前脚部と、前記前脚部から車両後方に離れて設けられるとともに、車幅方向に延び前記第1領域に連結される後脚部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車体フレームによれば、クロスメンバは、一対のサイドフレームに車両前後方向に離れた2箇所で連結されるので、各連結箇所におけるクロスメンバの車両前後方向の幅を小さくすることができる。また、各接続箇所のうち車両後側の箇所は変形強度が小さい第1領域に連結され、車両前側の箇所は第2領域に連結されるので、第1領域に連結されるクロスメンバの車両前後方向の幅を小さくすることができ、車両の後面衝突時のクロスメンバによるサイドフレームの変形阻害量を小さくできる。これにより、後面衝突時の衝突エネルギが第1領域に効果的に吸収されるので、後面衝突時におけるエネルギ吸収性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車体フレームを概略的に示す斜視図である。
図2図1に示した車体フレームの車両前後方向最後部の詳細を示す平面図である。
図3図1に示した車体フレームの車両前後方向最後部の詳細を示す背面図である。
図4図1に示した車体フレームの車両前後方向最後部の詳細を示す車幅方向内側から視た側面図である。
図5図1に示したクロスメンバの詳細を示す斜視図である。
図6】サイドフレームの低強度領域以外の領域にクロスメンバを連結する取付ブラケットを示す斜視図である。
図7】車体フレームに支持されたスペアタイヤを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態に係る車両の後部車体構造について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
[車体フレーム1の全体構成]
図1に示すように、実施形態に係る車体フレーム1は、ラダーフレーム(梯子型フレーム)であって、車幅方向に間隔を空けて設けられ、車両前後方向に沿って延びる一対のサイドフレーム2,2と、一対のサイドフレーム2,2を互いに連結する複数のクロスメンバ31~36,4と、を備えている。
【0012】
一対のサイドフレーム2,2は、それぞれ、複数のフレーム21,22,23を車両前方から順に接続することで構成される。例えば、図1に示すサイドフレーム2は、三つのフレーム21,22,23で構成される。また、複数のフレーム22,23は、車幅方向内側に設けられたインナフレーム221,231と、車幅方向外側に設けられ、インナフレーム221,231と組み合わされるアウタフレーム222,232とを含み、インナフレーム221,231とアウタフレーム222,232を接合することで複数のフレーム22,23が構成される。例えば、インナフレーム221,231及びアウタフレーム222,232は、それぞれ折り曲げた板状体(例えば、鋼板)で構成される。なお、インナフレーム221と231との接続箇所は、アウタフレーム222と232との接続箇所から車両前後方向で異なる箇所に設けられている。
【0013】
複数のクロスメンバ31~36,4は、車両前後方向において間隔を空けて設けられ、各クロスメンバ31~36,4によって一対のサイドフレーム2,2が互いに連結される。例えば、クロスメンバ31~36,4は、中実な部材、又は溝型や筒状に成型した中空な部材で構成される。
【0014】
[車体フレーム1の要部構成]
実施形態に係る一対のサイドフレーム2,2のそれぞれは、車両最後部に車両前後方向にわたって設けられる第1領域2Aと、第1領域2Aの前端から車両前方側にわたって設けられる第2領域2Bと、を有し、第1領域2Aを第2領域2Bよりも車両前後方向の変形強度が小さくなるように形成している。変形強度とは、ある方向に対する強度又は剛性を指すものとする。以下、第1領域2Aを低強度領域2A、第2領域2Bを高強度領域2Bと記載する。なお、本実施形態では、第1領域2Aはリアサイドフレーム、すなわちサイドフレーム2,2に設けられた車両後方かつ上方に傾斜するキックアップ部の後端から後方に延びる部分の一部に設けられる。
【0015】
本実施形態では、サイドフレーム2は、後端から車両前方に延びる第1フレーム23と、第1フレームの前端から車両前方に延びる第2フレーム22と、を含んでいる。そして、第1フレーム23を構成するインナフレーム231及びアウタフレーム232の板厚を第2フレーム22を構成するインナフレーム221及びアウタフレーム222の板厚よりも薄くすることで、第1フレーム23の車両前後方向の変形強度を小さくし、第1フレーム23を低強度領域2Aとし、第2フレーム22を高強度領域2Bとしている。なお、本実施形態では、インナフレーム231と221との接続箇所はアウタフレーム232と222との接続箇所よりも車両前方に位置しており、このような場合にはアウタフレーム232と222との接続箇所よりも車両後方側を低強度領域2Aと定義する。また、図2及び図7に示すように、第1フレーム23を構成するインナフレーム231及びアウタフレーム232には車両高さ方向に沿って凹み231a,232aが設けられ、第1フレーム23の車両前後方向の変形強度を更に小さくしている。
【0016】
低強度領域2Aの形成方法は上記実施例に限らず、第1フレーム23の断面積を第2フレーム22の断面積よりも小さくしたり、第1フレーム23の材料を第2フレーム22の材料よりも圧縮強度の小さい材料とすることで第1フレーム23を低強度領域2Aとしてもよい。また、第1フレーム23を構成するインナフレーム231及びアウタフレーム232の板厚を第2フレーム22を構成するインナフレーム221及びアウタフレーム222の板厚と異ならせることなく、車両高さ方向又は車幅方向に沿った凹みや穴等の脆弱部を第1フレーム23の車両前後方向全域に並べて設けることで、第1フレーム23の車両前後方向の変形強度を小さくし、第1フレーム23を低強度領域2Aとしてもよい。また、低強度領域2Aを第1フレーム23の後部のみに形成してもよい。
【0017】
低強度領域2Aは、車両の乗員スペースより車両後方(例えば荷室)に設けられることが望ましい。また、高強度領域2Bは、車両の乗員スペースに設けられることが望ましい。このようにすることで、車両の後面衝突時に変形強度の小さく圧縮変形しやすい低強度領域2Aが蛇腹状に変形するが、低強度領域2Aは車両の乗員スペースより後方に位置しているため、乗員スペースが保護される。
【0018】
図2及び図3に示すように、一対のサイドフレーム2,2のそれぞれは、低強度領域2Aの車両最後部から車幅方向外側に突出する第1部材24を備えている。第1部材24は、例えば、車体フレーム1の上にボディ(キャビン)を搭載するためのキャブマウントブラケット25であり、板状体(例えば、鋼板)がL字状に折り曲げられることにより構成され、L字の一辺がアウタフレーム232の車幅方向外側面に接合される。尚、第1部材24は、キャブマウントブラケット25に限定されるものではない。
【0019】
キャブマウントブラケット25には、フック26が接合されている(図1参照)。フック26は、他車両等を牽引するためのもので、板状体261(例えば、鋼板)にJ字状に折り曲げられた棒状の部材262を接合することで構成され、キャブマウントブラケット25を挟んでアウタフレーム232に接合されている。
【0020】
図1に示すように、車両最後部のクロスメンバ4(特許請求の範囲に記載のクロスメンバ。以下、単に「クロスメンバ4」と記載する。)は、一対のサイドフレーム2,2のそれぞれに車両前後方向に離れた2箇所の接続箇所で連結されるように、前脚部41と、前脚部41から車両後方に離れた後脚部42とを有する。そして、前脚部41は高強度領域2Bに連結され、後脚部42は低強度領域2Aに連結される。
【0021】
本実施形態では、前脚部41は、車幅方向両外側から内側に向かって車両後方に傾斜し、後脚部42は車幅方向両外側から内側に向かって車両前方に傾斜する。更に、クロスメンバ4は、車幅方向内側において前脚部41と後脚部42とを接続する接続部43を有している(図6参照)。これにより、クロスメンバ4は平面視で略X字状になっている。
【0022】
図6に示すように、前脚部41は高強度領域2Bである第2フレーム22の車両後端部に接続され、後脚部42は低強度領域2Aである第1フレーム23の車両後端部に接続される。前脚部41は、前脚部41とサイドフレーム2を接続する取付ブラケット5を備える。取付ブラケット5は、第2フレーム22から第1フレーム23に亘って設けられる。詳細には、取付ブラケット5は、インナフレーム221の後端部からインナフレーム231の前端部に亘ってサイドフレーム2に接続され、前脚部41は、取付ブラケット5の車両前後方向において(車幅方向から見て)インナフレーム221と重なる箇所に接続される。
【0023】
図2に示すように、後脚部42は、例えば、車両前後方向において(車幅方向から見て)第1部材24と重なるように、第1フレーム23に連結される。例えば、図2に示すように、第1フレーム23はインナフレーム231の後端がアウタフレーム232の後端より車両前方に位置しており、図3及び図4に示すように、後脚部42は、インナフレーム231の後端より車両後方においてアウタフレーム232の車幅方向内側面に接合される。
【0024】
図5に示すように、前脚部41及び後脚部42の車両高さ方向の寸法H(高さ)は、車両前後方向の寸法W(幅)よりも大きい。例えば、前脚部41及び後脚部42は、車両高さ方向に延びる縦壁41a,42aと、縦壁41a,42aの上端部及び下端部のそれぞれから車両前後方向に延びる一対の横壁41b,41c,42b,42cと、を備える。縦壁41a(42a)の寸法(高さ)は、一対の横壁41b,41c(42b,42c)の寸法(幅)よりも大きい。
【0025】
また、例えば、前脚部41の一対の横壁41b,41cは、縦壁41aの上端部及び下端部のそれぞれから車両後方に延び、後脚部42の一対の横壁42b,42cは、縦壁42aの上端部及び下端部のそれぞれから車両前方に延びている。すなわち、前脚部41は車両後方に開口する断面コ字状に形成されており、後脚部42は車両前方に開口する断面コ字状に形成されている。接続部43は、前脚部41及び後脚部42の開口に挿入され、前脚部41及び後脚部42にそれぞれ接合されることで、前脚部41と後脚部42とを接続している。
【0026】
図6に示すように、クロスメンバ4は、クロスメンバ4の車幅方向中央部にスペアタイヤSTを支持するための支持部431を有する。支持部431は、例えば、接続部43に設けられる。なお、支持部431は、車幅方向において完全に中央に位置している必要はない。車幅方向中央部とは、スペアタイヤSTが一対のサイドフレーム2,2の間に収まる範囲で車幅方向に幅を持った範囲である。
【0027】
上述した実施形態に係る車体フレーム1によれば、クロスメンバ4は、一対のサイドフレーム2,2のそれぞれに車両前後方向に離れた2箇所の連結箇所で連結されるので、一対のサイドフレーム2,2を1箇所で連結した従来のクロスメンバと比較して各連結箇所における車両前後方向の幅を小さくすることができる。すなわち、クロスメンバは車体のねじれ等に対応するため、ある程度の強度、剛性が必要となり、それを実現する1つの手法として車両前後方向の幅を大きくすることが考えられる。本実施形態によれば、車両前後方向に離れた2箇所の連結箇所における車両前後方向の幅の合計で所望の強度、剛性を確保すればよいため、一対のサイドフレーム2,2を1箇所で連結した従来のクロスメンバより各連結箇所の車両前後方向の幅を小さくすることができる。これに加え、クロスメンバ4の一対のサイドフレーム2,2への接続箇所のうち車両後側の箇所は低強度領域2Aに連結され、車両前側の箇所は高強度領域2Bに連結されるので、低強度領域2Aに接続されるクロスメンバ4車両前後方向の幅を従来のクロスメンバより小さくすることができる。これにより、車両の後面衝突時のクロスメンバ4による低強度領域2Aの変形阻害量を小さくできる。よって、後面衝突時の衝突エネルギが低強度領域2Aに効果的に吸収されるので、後面衝突時におけるエネルギ吸収性能を高めることができる。また、接続箇所のうち車両前側の箇所は高強度領域2Bに連結されるので、サイドフレーム2の低剛性領域に入力された車体をねじるような荷重を、接続箇所のうち車両後側の箇所を通り車両前側の箇所へ伝達し、高強度領域2Bで受けることができるため、車両のねじれ剛性も確保することができる。
【0028】
また、接続箇所のうち車両後側の箇所は、低強度領域2Aにおける第1部材24が設けられる部分と車両前後方向において重なるので、低強度領域2Aの、クロスメンバ4による車両前後方向の変形阻害箇所と、第1部材24による車両前後方向の変形阻害箇所とが車両前後方向において重なり、車両前後方向に分散する場合よりも低強度領域2Aの変形阻害量を小さくできる。
【0029】
また、第1部材24がキャブマウントブラケット25である場合には、接続箇所のうち車両後側の箇所がキャブマウントブラケット25と車両前後方向において重なるので、クロスメンバ4によりキャブマウントブラケット25の振動を抑制でき、キャブマウントブラケット25に搭載されるボディ(キャビン)の振動も抑制できる。
【0030】
また、接続箇所のうち車両後側の箇所はアウタフレーム232の車幅方向内側面に接合され、第1部材24はアウタフレーム232の車幅方向外側面に接合されるので、接続箇所のうち車両後側の箇所により、アウタフレーム232の第1部材24が取り付けられる箇所を補強することができる。
【0031】
また、後脚部42の車両高さ方向の寸法は、車両前後方向の寸法よりも大きいので、車両高さ方向の変形強度を車両前後方向の変形強度よりも大きくできる。これにより、後脚部42を車両上下方向には変形し難くし、前後方向には変形し易くすることができるので、一対のサイドフレーム2,2のねじれ剛性を確保しつつ、車両の後面衝突時のクロスメンバ4による低強度領域2Aの変形阻害量を小さくできる。
【0032】
また、前脚部41は車両高さ方向に延びる縦壁41aと、縦壁41aの上端部及び下端部のそれぞれから車両後方に延びる一対の横壁41b,41cとを有し、後脚部42は縦壁42aと、縦壁42aの上端部及び下端部のそれぞれから車両前方に延びる一対の横壁42b,42cとを有する。すなわち、前脚部41の断面は車両後方に開口し、後脚部42の断面は車両前方に開口するので、車両高さ方向の変形強度を車両前後方向の変形強度よりも大きくできる。また、前脚部41の前端及び後脚部42の後端に縦壁を有するので、サイドフレーム2とクロスメンバ4との接続箇所の車両前後方向両端に縦壁を有することとなり、ねじれ剛性を確保することができる。
【0033】
なお、後脚部42の車両高さ方向の変形強度を車両前後方向の変形強度よりも大きくする手法はこれらに限るものではない。例えば、後脚部42の断面を車両高さ方向の寸法と車両前後方向の寸法が同程度な閉断面構造とし、車両前後方向を向く縦壁に車両高さ方向に延びるビード若しくは凹みを設けてもよい。また、前脚部41及び後脚部42を開断面とする場合も、前脚部41の断面は車両前方に、後脚部42の断面は車両後方に開口するようにしてもよいし、前脚部41及び後脚部42を車両前後方向両側に開口するI字状の断面としてもよい。
【0034】
また、第1フレーム23の板厚を第2フレーム22の板厚よりも薄くすることで車両前後方向の変形強度を小さくするので、低強度領域2Aを容易に設けることができる。また、取付ブラケット5が第2フレーム22から第1フレーム23に亘って設けられ、前脚部41と第2フレーム22を接続するので、後面衝突時に、サイドフレーム2が第2フレーム22と第1フレーム23の接続部分で折れるのを抑制し、低強度領域2Aを安定的に変形させることができる。
【0035】
また、クロスメンバ4は、前脚部41が車幅方向両外側から内側に向かって車両後方に傾斜し、後脚部42が車幅方向両外側から内側に向かって車両前方に傾斜する、平面視で略X字状となっているため、例えば車体がねじれて後脚部42の車幅方向一方側に入力された荷重を、前脚部41の車幅方向他方側で効率的に受けることができ、ねじれ剛性を向上させることができる。
【0036】
また、車幅方向両外側から内側に向かって車両後方に傾斜する前脚部41と車幅方向両外側から内側に向かって車両前方に傾斜する後脚部42との接続箇所でスペアタイヤSTを支持したので、スペアタイヤSTが車体に対して移動しようとして発生する荷重を、クロスメンバ4で安定して受けることができる。このとき、後脚部42の車両高さ方向の変形強度が車両前後方向の変形強度よりも大きくなっていると、より安定してスペアタイヤSTを支持することができる。
【0037】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。例えば、本発明はフレーム車両のみではなく、モノコック車両にも適用可能である。また、クロスメンバ4は平面視略X字状に限らず、例えば前脚部41及び後脚部42が車幅方向に真っ直ぐ延びた平面視略H字状としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車体フレーム
2 サイドフレーム
2A 第1領域(低強度領域)
2B 第2領域(高強度領域)
21 フレーム
22 第2フレーム
221 インナフレーム
222 アウタフレーム
23 第1フレーム
231 インナフレーム
232 アウタフレーム
24 第1部材
25 キャブマウントブラケット
26 フック
3 クロスメンバ
31,32,33,34、35,36 クロスメンバ
4 車両最後部のクロスメンバ
41 前脚部
42 後脚部
43 接続部
431 支持部
5 取付ブラケット
ST スペアタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7