(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム、および有機溶剤処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240827BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240827BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240827BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01J20/18 A
B01J20/20 A
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2024523721
(86)(22)【出願日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2023043559
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022199743
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】館山 佐夢
(72)【発明者】
【氏名】貴堂 圭佑
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/014013(WO,A1)
【文献】特開平09-308814(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101255(WO,A1)
【文献】特開2015-100754(JP,A)
【文献】特開2013-128905(JP,A)
【文献】特開2011-062645(JP,A)
【文献】特開2005-161128(JP,A)
【文献】特開2007-050379(JP,A)
【文献】特開平07-136449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/14-53/18
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着素子により被処理ガスから有機溶剤を吸着除去し処理ガスを排出すると共に、吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して濃縮ガスを排出する有機溶剤濃縮装置を少なくとも2台と、吸着材により前記濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去し除去ガスを排出すると共に、吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着し、冷却凝縮器により前記濃縮ガスを冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置と、を備えた有機溶剤回収システムであって、
複数の前記有機溶剤濃縮装置のうちの第1の有機溶剤濃縮装置から排出された処理ガスを第2の有機溶剤濃縮装置に被処理ガスとして導入する処理ガス流路と、前記第1の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記有機溶剤回収装置に導入する連結流路と、前記第2の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する濃縮ガス戻し流路と、前記有機溶剤回収装置から排出された除去ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の下流であり前記第2の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する除去ガス戻し流路と、を備える有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記冷却凝縮器で未凝縮のガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する未凝縮ガス返送流路を備える請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記第1の有機溶剤濃縮装置及び前記第2の有機溶剤濃縮装置の吸着素子は、活性炭、活性炭素繊維、及びゼオライトの、少なくとも一つを含む材料から成る請求項1又は2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記第1の有機溶剤濃縮装置及び前記第2の有機溶剤濃縮装置の吸着素子は、プリーツ形状を有する活性炭素繊維シートから成る請求項1又は2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記活性炭素繊維シートは、合計目付が900~6000g/m
2、トルエン吸着率が25~75重量%、および繊維径が16~120μmである請求項4に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の有機溶剤回収システムを備え、
被処理ガスを前記有機溶剤回収システムに導入する前に処理する前処理装置、及び/又は、前記有機溶剤回収システムから排出されるガスを処理する後処理装置を備える有機溶剤処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤回収システムとして、有機溶剤濃縮装置と有機溶剤回収装置とを組み合わせたシステムが知られている。そのようなシステムとして、例えば特許文献1には、後段の有機溶剤回収装置の処理ガスを前段の有機溶剤濃縮装置の上流に返送することで、有機溶剤の除去率を高めつつ、有機溶剤の回収をおこなうシステムが開示されている。
【0003】
一般に、このような有機溶剤回収システムに用いられる有機溶剤回収装置は、吸着材で被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去する吸着工程と、加熱ガスによって吸着材に吸着された有機溶剤を脱着する脱着工程が交互に又は連続的に行われる。
【0004】
有機溶剤回収装置の例として、特許文献2には、吸着材に活性炭素繊維を用い、有機溶剤含有ガス中の有機溶剤の吸着と脱着を交互に切替えておこなう2対の吸着槽が設けられ、加熱した窒素ガスを使用して有機溶剤を脱着し、冷却凝縮し、液化回収する装置が開示されている。
【0005】
また、有機溶剤濃縮装置の例として、特許文献3には、有機溶剤を吸着する吸着材を含む吸着素子によって構成されたガス処理装置が開示されている。この吸着処理装置にあっては、吸着素子は周方向に円筒状となるように配置されており、配置された吸着素子は吸着ゾーンと脱着ゾーンとに分けられている。吸着ゾーンでは、有機溶剤を含む被処理ガスを吸着材によって、吸着し、清浄ガスが系外に排出される工程がおこなわれる。一方、脱着ゾーンでは、吸着素子に吸着された有機溶剤を、加熱ガスに移動させ、吸着素子の吸着能力を回復させるのと同時に、高濃度のガスとして、有機溶剤を含むガスを排出する工程がおこなわれる。吸着素子が配置されたローターは回転機構を備えており、周方向に回転することにより、吸着と脱着の工程が連続的におこなわれる装置となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-100754号公報
【文献】特開2013-128905号公報
【文献】国際公開公報WO2017/170207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の有機溶剤回収システムにおいて、さらに有機溶剤の除去率を高めたいというニーズがある。このようなニーズに対応させて、2台の有機溶剤濃縮装置を用い、第1の有機溶剤濃縮装置から排出された第1処理ガスをさらに処理するように第2の有機溶剤濃縮装置を配置し、被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に多段で吸着させ、高度処理をおこない、一方で第1の有機溶剤濃縮装置の濃縮ガスを後段の有機溶剤回収装置で回収するシステムが考えられる。
【0008】
しかしながら、このような有機溶剤回収システムは複数の有機溶剤濃縮装置を要するため、システムが大型化してしまい、小型化が大きな課題となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、有機溶剤濃縮装置と有機溶剤回収装置とで構成される有機溶剤回収システムの小型化を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0011】
1.吸着素子により被処理ガスから有機溶剤を吸着除去し処理ガスを排出すると共に、吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して濃縮ガスを排出する有機溶剤濃縮装置を少なくとも2台と、吸着材により前記濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去し除去ガスを排出すると共に、吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着し、冷却凝縮器により前記濃縮ガスを冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置と、を備えた有機溶剤回収システムであって、
複数の前記有機溶剤濃縮装置のうちの第1の有機溶剤濃縮装置から排出された処理ガスを第2の有機溶剤濃縮装置に被処理ガスとして導入する処理ガス流路と、前記第1の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記有機溶剤回収装置に導入する連結流路と、前記第2の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する濃縮ガス戻し流路と、前記有機溶剤回収装置から排出された処理ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の下流であり前記第2の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する除去ガス戻し流路と、を備える有機溶剤回収システム。
2.前記冷却凝縮器で未凝縮のガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する未凝縮ガス返送流路を備える上記1に記載の有機溶剤回収システム。
3.前記第1の有機溶剤濃縮装置及び前記第2の有機溶剤濃縮装置の吸着素子は、活性炭、活性炭素繊維、及びゼオライトの、少なくとも一つを含む材料から成る上記1又は2に記載の有機溶剤回収システム。
4.前記第1の有機溶剤濃縮装置及び前記第2の有機溶剤濃縮装置の吸着素子は、プリーツ形状を有する活性炭素繊維シートから成る上記1~3のいずれか1に記載の有機溶剤回収システム。
5.前記活性炭素繊維シートは、合計目付が900~6000g/m2、トルエン吸着率が25~75重量%、および繊維径が16~120μmである上記4に記載の有機溶剤回収システム。
6.上記1~5のいずれか1に記載の有機溶剤回収システムを備え、被処理ガスを前記有機溶剤回収システムに導入する前に処理する前処理装置、及び/又は、前記有機溶剤回収システムから排出されるガスを処理する後処理装置を備える有機溶剤処理システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、複数の有機溶剤濃縮装置を用いても、前段の有機溶剤濃縮装置の処理ガス風量が少なくなるため、有機溶剤濃縮装置及び付帯設備が小型化することができ、ひいては有機溶剤回収システムの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明における有機溶剤回収システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の比較例における有機溶剤回収システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。有機溶剤回収システム1は、有機溶剤濃縮装置100と、有機溶剤回収装置200と、連結流路L300と、除去ガス戻し流路L400とを備えている。有機溶剤回収システム1は、有機溶剤濃縮装置100を少なくとも2台を備えており、被処理ガス中の有機溶剤を、そのうちの1台である第1の有機溶剤濃縮装置101で処理し、さらにその処理ガスを第2の有機溶剤濃縮装置102で処理し、清浄ガスを排出する。第1の有機溶剤濃縮装置101の吸着材に吸着された有機溶剤は、加熱ガスで脱着され、濃縮ガスとして、有機溶剤回収装置200に導入される。第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着材に吸着された有機溶剤は、加熱ガスで脱着され、濃縮ガスとして、第1の有機溶剤濃縮装置101の上流に返送される。
【0016】
有機溶剤回収装置200に導入された濃縮ガスは、吸着材によって吸着除去され、処理ガスを排出する。有機溶剤回収装置200の吸着材に吸着された有機溶剤は、加熱ガスで脱着され、濃縮ガスとして、凝縮器に送られ、凝縮回収される。有機溶剤回収装置200の処理ガスは第2の有機溶剤濃縮装置102の上流に返送される構成となっている。
【0017】
以下に各構成について説明する。まず、有機溶剤濃縮装置100について説明する。本実施の形態では、有機溶剤濃縮装置100としては、第1の有機溶剤濃縮装置101と第2の有機溶剤濃縮装置102の2台備えられており、3台以上備えられていてもよい。
第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102は、有機溶剤を吸着可能な吸着材を含む吸着素子が配されたローター型の装置であり、それぞれ、周方向に配された吸着素子は吸着ゾーン103,104と脱着ゾーン105,106とに分割されている。
【0018】
第1の有機溶剤濃縮装置101の吸着ゾーン103は、被処理ガス導入流路L101に接続されており、他端には処理ガス流路L102が接続される。吸着ゾーン103は、被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去し、第1処理ガスを排出する。被処理ガス導入流路L101には、第1の有機溶剤濃縮装置101に導入される被処理ガスの温度および湿度を調整するため、クーラC1およびヒータH1が設けられていてもよい。また、被処理ガス導入流路L101には、第1の有機溶剤濃縮装置101に効率よく被処理ガスを導入するため、送風機が設けられていてもよい。
【0019】
第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着ゾーン104は、処理ガス流路L102に接続されており、他端には清浄ガス排出流路L104が接続される。吸着ゾーン104は、処理ガス流路L102から導入された第1処理ガス中の有機溶剤をさらに吸着除去し、清浄ガス排出流路L104から清浄ガスを排出する。処理ガス流路L102には、第2の有機溶剤濃縮装置102に導入される処理ガスの温度および湿度を調整するため、クーラC2およびヒータH2が設けられていてもよい。また、処理ガス流路L102には、第2の有機溶剤濃縮装置102に効率よく被処理ガスを導入するため、送風機が設けられていてもよい。
【0020】
第1の有機溶剤濃縮装置101の脱着ゾーン105は、加熱ガス導入流路L103に接続されており、他端には連結流路L300が接続される。脱着ゾーン105は、加熱ガス導入流路L103から導入された加熱ガスによって、吸着材に吸着された有機溶剤を脱着し、吸着材の吸着性能を回復させると同時に濃縮ガスを連結流路L300から排出する。また、加熱ガス導入流路L103には、第1の有機溶剤濃縮装置101に導入される加熱ガスの温度および湿度を調整するため、ヒータH3が設けられていてもよい。
【0021】
第2の有機溶剤濃縮装置102の脱着ゾーン106は、加熱ガス導入流路L105に接続されており、他端には濃縮ガス戻し流路L106が接続される。濃縮ガス戻し流路L106の他端は被処理ガス導入流路L101に接続される。脱着ゾーン106は、加熱ガス導入流路L105から導入された加熱ガスによって、吸着材に吸着された有機溶剤を脱着し、吸着材の吸着性能を回復させると同時に濃縮ガスを濃縮ガス戻し流路L106から排出する。また、加熱ガス導入流路L105には、第2の有機溶剤濃縮装置102に導入される加熱ガスの温度および湿度を調整するため、ヒータH4が設けられていてもよい。
【0022】
第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102は、ローター上の任意の一点で見ると吸着ゾーン、脱着ゾーンの順にゾーンが切り替わるようにローターが周方向に回転し、連続的に処理を行う。
【0023】
第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102に用いられる吸着素子は有機溶剤の吸着と脱着とが可能な吸着材を有している。吸着素子は、特に限定はしないが、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、ゼオライト、活性炭素繊維のいずれかを含む吸着材にて構成されるが、粒状、粉体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライト、活性炭素繊維が好ましい。
【0024】
吸着素子の構造として、ハニカム形状、単板、プリーツ形状からなるものがあるが、プリーツ形状からなるものが好ましい。プリーツ形状であることで、吸着圧損を抑えることができ、かつ被処理ガスと吸着材の接触効率が高まるため、少ない数の吸着素子で処理が可能となり、装置が小型化するからである。
【0025】
本実施形態において、当該吸着素子は、被処理ガスと吸着材との接触効率を向上させる観点から、プリーツ形状を有する活性炭素繊維シートから成ることが好ましい。当該活性炭素繊維シートは、当該吸着素子の性能をより向上させる観点から、合計目付が900~6000g/m2、トルエン吸着率が25~75重量%、および繊維径が16~120μmであることが好ましい。
【0026】
なお、脱着に用いる加熱ガスは、水蒸気を用いることができる。他に、空気、または窒素であってもよい。
【0027】
第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102は、ローター構造として、ディスク構造、またはシリンダー構造が用いられる。
【0028】
次に、有機溶剤回収装置200について説明する。有機溶剤回収装置200は、吸着槽201,202を備えている。吸着槽201,202は連結流路L300と接続されており、他端には吸着槽201,202からの処理ガスである除去ガスを排出し、第1の有機溶剤濃縮装置101の下流であり第2の有機溶剤濃縮装置102の上流に返送する除去ガス戻し流路L400が接続されている。また、吸着槽201,202は加熱ガスを導入するための加熱ガス導入流路L230が接続されており、他端には吸着材から脱着された有機溶剤を含むガスを排出する濃縮ガス排出流路L241,L242が接続されている。濃縮ガス排出流路L241,L242は、冷却凝縮器300に接続されている。連結流路L300には、吸着槽201,202に導入される濃縮ガスの温度および湿度を調整するため、クーラC3およびヒータH5が設けられていてもよい。また、連結流路L300には、吸着槽201,202に効率よく濃縮ガスを導入するため、送風機が設けられていてもよい。
【0029】
有機溶剤回収装置200は、一方の吸着槽が吸着材で被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去する吸着工程を行っている間に、他方の吸着槽が加熱ガスによって吸着材に吸着された有機溶剤を脱着する脱着工程を行い、かつ、各吸着槽が吸着工程と脱着工程を交互に行う。このように有機溶剤回収装置200は、連続的に連結流路L300から導入された濃縮ガスに対する処理を行う。
【0030】
図1は、吸着槽201が吸着工程を、吸着槽202が脱着工程を行う態様を示している。この態様では、開閉弁V211,V221,V202,V232は開状態、V201,V231,V212,V222は閉状態となる。吸着槽201では、吸着工程として、連結流路L300から導入された第1の有機溶剤濃縮装置101からの濃縮ガスが、被処理ガス導入流路L211を通り、吸着槽201で吸着除去され、処理ガス排出流路L221から除去ガスが排出される。排出された除去ガスは除去ガス戻し流路L400から第1の有機溶剤濃縮装置の下流であり第2の有機溶剤濃縮装置102の上流に返送される。吸着槽202では、脱着工程として、加熱ガス導入流路L230から供給された加熱ガスが加熱ガス導入流路L232より吸着槽202に導入され、吸着材に吸着された有機溶剤を脱着し、吸着材の吸着性能を回復させると同時に、濃縮ガス排出流路L242より、濃縮ガスとして排出される。排出された濃縮ガスは冷却凝縮器300に送られ冷却凝縮されて、有機溶剤が回収される。
【0031】
上記とは逆の態様、つまり、吸着槽201が脱着工程を、吸着槽202が吸着工程を行う態様について説明する。この態様では、開閉弁V211,V221,V202,V232は閉状態、V201,V231,V212,V222は開状態となる。吸着槽202は、吸着工程として、連結流路L300から導入された第1の有機溶剤濃縮装置101からの濃縮ガスが、被処理ガス導入流路L212を通り、吸着槽202で吸着除去され、処理ガス排出流路L222から除去ガスが排出される。排出された除去ガスは除去ガス戻し流路L400から第1の有機溶剤濃縮装置の下流であり第2の有機溶剤濃縮装置102の上流に返送される。吸着槽201では、脱着工程として、加熱ガス導入流路L230から供給された加熱ガスが加熱ガス導入流路L231より吸着槽201に導入され、吸着材に吸着された有機溶剤を脱着し、吸着材の吸着性能を回復させると同時に、濃縮ガス排出流路L241より、濃縮ガスとして排出される。排出された濃縮ガスは冷却凝縮器300に送られ冷却凝縮されて、有機溶剤が回収される。
【0032】
有機溶剤回収装置200は、必要に応じ、二つ以上の吸着槽を有していてもよい。
【0033】
冷却凝縮器300は、濃縮ガス排出流路L241,L242から排出された濃縮ガスを冷却することにより、当該濃縮ガスを凝縮させる。本実施形態では、凝縮した当該濃縮ガスを液化して回収する。また、冷却凝縮器300で未凝縮の濃縮ガスを有機溶剤濃縮装置100の上流に返送する未凝縮ガス返送流路を含む構成としてもよい。
【0034】
有機溶剤回収装置200の加熱ガスとしては、空気、窒素、水蒸気などが挙げられるが水蒸気が好ましい。
【0035】
さらに、被処理ガスを有機溶剤回収システム1に導入する前に処理する前処理装置、及び/又は、有機溶剤回収システム1から排出されるガスを処理する後処理装置を備えていてもよい。
【0036】
本実施形態の有機溶剤回収システム1の処理対象となる被処理ガスに含まれる有機化合物は、特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレインなどのアルデヒド類、メチルエチルケトン、ジアセチル、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、1,4-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、フェノール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの芳香族有機化合物、ジエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類、アクリロニトリルなどの二トリル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、エピクロロヒドリンなどの塩素有機化合物、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドの有機化合物などが一例として挙げられる。被処理ガスは、これらを1種または多種を含んでいてよい。
【実施例】
【0037】
上記実施の形態にて説明した本発明にかかる溶剤回収システムの詳細を、さらに以下の実施例を用いて説明する。しかし、本発明は以下実施例に限定されるものでない。
【0038】
[実施例]
上記説明した
図1に示す有機溶剤回収システム1を用いて以下の処理を実施した。本実施例では、有機溶剤含有ガスとしてジクロロメタンを200ppm含有する45℃の被処理ガスを、風量11.9Nm
3/minで導入した。系外へ排出するジクロロメタンの設計濃度は1ppm以下とした。第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着素子の吸着材として活性炭素繊維を使用した。
【0039】
まず、被処理ガスを、第1の有機溶剤濃縮装置101にて処理した。被処理ガスと第2の有機溶剤濃縮装置102の濃縮ガスとを合流したガスを、風量12.8Nm3/minにて、第1の有機溶剤濃縮装置101の吸着ゾーン103に導入して吸着工程を実施した。第1の有機溶剤濃縮装置101から排出される処理ガスの一部を脱着ガスとして、ヒータで130℃に加熱し、脱着ゾーン105に導入し、脱着工程を実施した。第1の有機溶剤濃縮装置の脱着ゾーン105から排出された濃縮ガスを、連結流路L300から有機溶剤回収装置200に導入した。この時の濃縮ガスの濃度は1500ppmであった。
【0040】
有機溶剤回収装置200の除去ガスを、第1の有機溶剤濃縮装置101の下流であり第2の有機溶剤濃縮装置102の上流に返送した。第1の有機溶剤濃縮装置101の処理ガスと有機溶剤回収装置200の除去ガスを合流したガスを、風量12.8Nm3/minにて、第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着ゾーン104へ被処理ガスとして導入して吸着工程を実施した。この時、第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着ゾーン104から排出された処理ガスである清浄ガスにおけるジクロロメタン濃度は、1ppm以下であった。
【0041】
[比較例]
比較例では、
図2に示す有機溶剤回収システム1Aを用いて以下の処理を実施した。有機溶剤回収システム1Aは、実施例で用いた有機溶剤回収システム1において除去ガス戻し流路L400が第1の有機溶剤濃縮装置101の上流と接続しており、有機溶剤回収システム1と同様の構成である。よって、有機溶剤回収システム1Aにおいて、有機溶剤回収装置200からの除去ガスは第1の有機溶剤濃縮装置101の上流に返送される。
【0042】
比較例では、実施例と同様に、被処理ガスの一例となる有機溶剤含有ガスにはジクロロメタンを200ppm含有する45℃の被処理ガスを、風量11.9Nm3/minにて、有機溶剤回収システム1Aに導入した。系外へ排出するジクロロメタンの設計濃度は1ppm以下とした。また、実施例と同様に、第1の有機溶剤濃縮装置101及び第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着素子の吸着材として活性炭素繊維を使用した。
【0043】
まず、被処理ガスを、第1の有機溶剤濃縮装置101にて処理した。被処理ガスと第2の有機溶剤濃縮装置102の濃縮ガスと有機溶剤回収装置200の除去ガスとを合流したガスを、風量14.3Nm3/minにて、第1の有機溶剤濃縮装置101の吸着ゾーン103に導入して吸着工程を実施した。第1の有機溶剤濃縮装置101から排出される処理ガスの一部を脱着ガスとして、ヒータで130℃に加熱し、脱着ゾーン105に導入し、脱着工程を実施した。第1の有機溶剤濃縮装置の脱着ゾーン105から排出された濃縮ガスを、連結流路L300から有機溶剤回収装置200に導入した。この時の濃縮ガス濃度は1500ppmであった。
【0044】
有機溶剤回収装置200の除去ガスを、第1の有機溶剤濃縮装置101の上流に返送した。第1の有機溶剤濃縮装置101の処理ガスを、処理ガス流路L102から第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着ゾーン104に被処理ガスとして導入し吸着工程を実施した。この時、第2の有機溶剤濃縮装置102の吸着ゾーンから排出された処理ガスである清浄ガスにおけるジクロロメタン濃度は、1ppm以下であった。
【0045】
表1に、実施例及び比較例における、第1の有機溶剤濃縮装置101と第2の有機溶剤濃縮装置102、及び、有機溶剤回収装置200の処理ガス風量の表を示す。
【0046】
【0047】
表1から分かるように、実施例は比較例に比べて、第1の有機溶剤濃縮装置101の処理ガス風量を約10%減らすことができ、第1の有機溶剤濃縮装置101および第2の有機溶剤濃縮装置102の小型化が可能となることがわかる。また、処理ガス風量が少なくなることにより、第1の有機溶剤濃縮装置101および第2の有機溶剤濃縮装置102の送風機、温調機も必然的に小型が可能となっていることを示しており、有機溶剤回収システム1の小型化が可能なことを示している。
【0048】
上記開示した実施の形態、各変形例、および実施例はすべて例示であり制限的なものではない。また、実施の形態、各変形例、および実施例を適宜組み合わせた形態も本発明の範疇に含まれる。つまり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって有効であり、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内のすべての変更・修正・置き換え等を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の有機溶剤回収システムは、後段の有機溶剤回収装置の除去ガスを、第2の有機溶剤濃縮装置に導入させるように返送する構成とすることで、第1の有機溶剤濃縮装置の処理ガス風量を低減させることができるため、有機溶剤濃縮装置、並びに付帯設備を小型化することができる。よって、有機溶剤回収システムの全体として小型化が可能となるため、産業界に大いに寄与できる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A:有機溶剤回収システム、100:有機溶剤濃縮装置、101:第1の有機溶剤濃縮装置、102:第2の有機溶剤濃縮装置、103,104:吸着ゾーン、105,106:脱着ゾーン、L101:被処理ガス導入流路、L102:処理ガス流路、L103,L105:加熱ガス導入流路、L104:清浄ガス排出流路、L106:濃縮ガス戻し流路、200:有機溶剤回収装置、201,202:吸着槽、201A,202A:吸着材、L211,L212:被処理ガス導入流路、L221,L222:処理ガス排出流路、L230,L231,L232:加熱ガス導入流路、L241,L242:濃縮ガス排出流路、V201,V202,V211,V212,V221,V222,V231,V232,V241,V242:開閉弁、300:冷却凝縮器、L300:連結流路、L400:除去ガス戻し流路、H1~H5:ヒータ、C1~C3:クーラ
【要約】
被処理ガスから処理ガスを排出すると共に、濃縮ガスを排出する有機溶剤濃縮装置を少なくとも2台と、前記濃縮ガスから除去ガスを排出すると共に、冷却凝縮器により前記濃縮ガスを液化回収する有機溶剤回収装置と、を備えた有機溶剤回収システムであって、複数の前記有機溶剤濃縮装置のうちの第1の有機溶剤濃縮装置から排出された処理ガスを第2の有機溶剤濃縮装置に被処理ガスとして導入する処理ガス流路と、前記第1の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記有機溶剤回収装置に導入する連結流路と、前記第2の有機溶剤濃縮装置から排出された濃縮ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する濃縮ガス戻し流路と、前記有機溶剤回収装置から排出された除去ガスを前記第1の有機溶剤濃縮装置の下流であり前記第2の有機溶剤濃縮装置の上流に返送する除去ガス戻し流路と、を備える有機溶剤回収システム。