(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】結紮等に適した医療器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61B17/122
(21)【出願番号】P 2022510445
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011478
(87)【国際公開番号】W WO2021193463
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2020053425
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】317011595
【氏名又は名称】帝人メディカルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】兼田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】川邉 康弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 勝大
(72)【発明者】
【氏名】平田 滋己
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039586(WO,A1)
【文献】特開2006-87671(JP,A)
【文献】特表2002-508986(JP,A)
【文献】中国実用新案第207755326(CN,U)
【文献】特開2016-165427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324527(US,A1)
【文献】特表昭56-500242(JP,A)
【文献】中国実用新案第202027648(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12 ―17/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端と近位端とを有する可撓性のバンド体と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の第一棒状体と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の第二棒状体とを有し、
バンド体の遠位端と第一棒状体の近位端とが連結されており、
第一棒状体の遠位端と第二棒状体の近位端とが連結部を介して連結されており、
バンド体は、第一棒状体および第二棒状体よりも撓みやすく、
第二棒状体およびバンド体は、所望の位置でバンド体を第二棒状体に緊結することができるロック機構を有し、
ロック機構によって緊結されると、第一棒状体の近位端と第二棒状体の遠位端との間がバンド体の一部を介して繋がれ、連結部が屈曲し、且つ第一棒状体と第二棒状体と前記バンド体の一部とによって所望の大きさの環を形成することができ、且つ
第二棒状体は、ロック機構によって緊結されたときに、
バンド体の残部を第二棒状体の遠位端から近位端の方向に向かっ
て第二棒状体の外面に沿わせる機構をさらに有する、
医療器具。
【請求項2】
第一棒状体および/または第二棒状体の内面は、中央部が遠位端および近位端に対して、内に向かって凹に曲っている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
第一棒状体および/または第二棒状体の内面は、中央部が遠位端および近位端に対して、内に向かって凸に曲っている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
バンド体の残部を第二棒状体の外面に沿わせる機構が、第二棒状体の外面に設けられたバンド体に対応する形状の溝である、請求項1~3のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項5】
第二棒状体の外面は、少なくとも遠位端近傍が外に向かって凸に曲がっている、請求項1~4のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項6】
バンド体、第一棒状体および第二棒状体は、生体内分解吸収性ポリマーからなる、請求項1~5のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項7】
第一棒状体の内面および第二棒状体の内面に緩衝材の層が設けられている、請求項1~6のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項8】
第一棒状体の内面および第二棒状体の内面にインナーベルトが設けられている、請求項1~6のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項9】
生体組織を結紮するための、請求項1~8のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項10】
結紮しても生体組織の壊死が起こりにくいように
ロック機構によって緊結される位置を変えることができる構成を有する、請求項9に記載の医療器具。
【請求項11】
結紮しても生体組織内の血流が維持されるように
ロック機構によって緊結される位置を変えることができる構成を有する、請求項9に記載の医療器具。
【請求項12】
結紮する生体組織が器官である、請求項9
~11のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項13】
結紮する生体組織が膵である、請求項9
~11のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項14】
結紮する生体組織が膵の体部若しくは尾部である、請求項9
~11のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項15】
結紮する生体組織が膵の頭部である、請求項9
~11のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項16】
結紮しても膵液瘻が起こらないように
ロック機構によって緊結される位置を変えることができる構成を有する、請求項13
~15のいずれかひとつに記載の医療器具。
【請求項17】
結紮する生体組織が肝である、請求項9に記載の医療器具。
【請求項18】
結紮する生体組織が血管である、請求項9に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関する。より詳細に、肝(liver)、膵(pancreas)、血管などの生体組織(例えば、臓器、器官など)の一部切除などにおいて、種々の合併症の発生を防ぐなどのために用いることができ、且つ侵襲が少ない、結紮などに適した医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
外傷などで離断した組織を引き寄せ固定するため、血管や卵管を取り巻くようにして縛り管腔を途絶させるため、ヘルニア門などを閉じるように組織を縛り固定するため、または除去したい組織を縛りあげ、血流を止め、壊死・脱落させるためなどに、結紮が行われる。結紮を行うための医療器具が、種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、所定長の止血帯体を有し、同止血帯体の長さ方向の締め代となる範囲には、抜止め噛合部を連続形成し、同抜止め噛合部の形成範囲に渡る止血帯体の適所に、滑止めリブを連続形成した上、止血帯体基端には、一方に挿入口、他方に繰出し口を開口した短尺トンネル状をなし、内側適所に、先端から繰り込まれた止血帯体の抜止め噛合部を脱抜不能に係止可能な係止鈎を形成した尾錠部を一体形成してなり、全体が可撓性を有する合成樹脂成型品からなることを特徴とする結紮用バンドを開示している。
【0004】
特許文献2は、前方側部、後方側部、先端部、および後続端部を有する細長い可撓性のバンドであって、前記バンドは、前記バンドの中に画定された穿孔部および横桟部を有する、バンドと、前記バンドの前記後続端部に接続されているロッキングケースであって、前記ロッキングケースは、前記バンドの受け入れのために寸法決めされたチャネルを有する、ロッキングケースと、前記ロッキングケースに接続されているロッキング部材であって、前記ロッキング部材は、前記チャネルに関連して配設され、前記バンドの中に画定されている穿孔部および横桟部と連結するように構成されている、ロッキング部材とを含み、前記ロッキングケースの中の前記チャネルは、前記ロッキング部材の反対側に配置されているアーチング部分を含み、前記バンドは、前記ロッキング部材が前記バンドの横桟部と係合するときに、前記ロッキング部材の上方にアーチ状になり、前記アーチング部分の中へ少なくとも部分的に突出するように構成されていることを特徴とする、組織結紮のための医療用デバイスを開示している。
【0005】
特許文献3は、生体内分解吸収性ポリマーからなる遠位端と近位端とを有する細長い可撓性の第1バンド部と、生体内分解吸収性ポリマーからなる遠位端と近位端とを有する細長い可撓性の第2バンド部と、生体内分解吸収性ポリマーからなる第1ラチェット爪を有する第1ロッキング部とを有し、第1ロッキング部は第2バンド部の遠位端に形成されており、第1バンド部の遠位端と第2バンド部の近位端とが接合されており、且つ第1バンド部の外面には第1ラチェット爪と噛み合わせることができるラチェット歯が少なくとも一つ形成されている、ラチェット歯と第1ラチェット爪とを噛み合わせることによって扁平な輪を成し、その輪にて、臓器を緊縛して、臓器断端に開口する管または腔を結紮するための、臓器断端処置具を開示している。
【0006】
特許文献4は、柔軟性のある帯体を一端に備えた2本の硬質性の棒状体と、該棒状体が連結される連結部と、一方の帯体に設けられた少なくとも1つ以上の貫通孔とにより構成され、他方の帯体を先端部側から挿通し前記貫通孔に通すことにより、2本の棒状体が前記連結部を支点として腸管を挟み込めることを特徴とする腸管挟締器を開示している。
【0007】
特許文献5は、生体吸収性材料からなり、熱変形によって生体組織を縫合結紮する生体用縫合結紮具において、縫合結紮具本体を、熱変形開始温度が摂氏45度以上、100度以下の生体吸収性材料で形成したことを特徴とする生体用縫合結紮具を開示している。
【0008】
特許文献6は、ラッチ部材と、近位及び遠位端部を有する保持部材とを有する結紮用クリップと、近位端部において該ラッチ部材と保持部材を連結する弾性ヒンジと、ラッチ部材の遠位端部に付着された軸部に連結された突起を有するラッチと、ラッチを収容し、保持部材の遠位端部における閉位置において結紮用クリップをロックするように適合された孔とロック表面とを有する保持器と、ラッチと保持器の係合の視覚点検を可能にするために保持部材の遠位端部に位置するポートとを具備し、この場合、該ラッチ部材の部分と該保持部材の部分は、ラッチ部材が保持部材によって適所にロックされる時、ロック位置におけるラッチ部材の存在が外的に可視である如く対照色であるラッチ機構を具える外科用装置を開示している。
【0009】
特許文献7は、1対のアームの各アームはその一端において他方のアームの一端へ該両アームを分離しようとする可撓性、弾性の1つの部材によって相互に連結されておりそして各アームは上記一端と反対の1つの端部を有しており、上記部材は該両アームがほぼ平行となるまで互に向って動かされることを許容し、該両アームの一方は他方のアームに向き合う1個の中間の、部位係合、締めつけ部分を有しておりそして他方のアームは前記一方のアームの該締めつけ部分に向き合う1個の中間の、部位係合、締めつけ部分を有しており、上記両締めつけ部分の対向面のそれぞれの上に置かれている弾性材料の1つの層を有し、その材料は該締めつけ部分の材料よりも柔軟であり、および一方のアームの上記反対側の端部にありそして他方のアームに向って延在し且つ該他方のアームの上記反対側端部近傍において該他方のアームと係合可能な、両アームが互に向って動かされた時、該両アームを固定した複数の相対位置で保持するための解放可能なラチェット手段を有してなることを特徴とする外科用鉗子を開示している。
【0010】
特許文献8は、一対の実質的に真直ぐな第一および第二部材、前記部材の第一端に繋がり且つ前記部材を相互に傾いた位置に付勢するスプリング手段、前記部材の一方に在り且つ前記部材をスプリング部材からの力に対して実質的に平行且つ近接近にて保持するロック手段、および少なくとも一つの第一突起部とそれに対応する第一および第二部材に在る第一溝を有し且つ前記部材によって輪郭が定まる臍帯グリッピング且つクロージング手段を有して成る、新生児の臍帯断端を閉じるためのクランプを開示している。
【0011】
特許文献9は、第1の挟み込み面を画定する内面、および外面を有する本体を含む第1のジョーと、第2の挟み込み面を画定する内面、および外面を有する本体を含む第2のジョーと、前記第1および前記第2のジョーと一体的に形成されたヒンジであって、前記ヒンジが、内側ヒンジ部および外側ヒンジ部を含み、前記内側ヒンジ部が、前記第1および前記第2のジョーの前記第1および前記第2の挟み込み面と隣接する内面、および外面を有し、前記ヒンジが、開放位置と挟み込み位置との間の前記第2のジョーに対する前記第1のジョーの枢動を容易にするように構成されている、ヒンジと、を備え、前記内側ヒンジ部の前記内面が、複数の湾曲部によって画定されている、結紮クリップを開示している。
【0012】
特許文献10は、第一および第二湾曲脚部材から成るポリマー製手術用クリップであって、両脚部材はそれらの近接端が弾性丁番手段によって接合しており、脚部材のそれぞれは、血管クリップ用内側面と背中合わせの外側面とを有し、一方の脚部材の血管クランプ用内側面は他方の脚部材の血管クランプ用内側面と向かい合っており、第一脚部材はその末端が第二脚部材の方へ湾曲した屈撓性フック部となっており、第二脚部材はその末端が上記フック部に対し相補的ロック部となっており、これによって、第一および第二脚部材が丁番手段のまわりを開放位置から閉鎖位置まで移動すると、フック部は第二脚部材の末端のまわりに屈撓して当該クリップを閉鎖位置にロックし、第一脚部材の内側面は丁番手段とフック部間に凹状の曲率半径を有し、第二脚部材の内側面は丁番手段とその末端間に凸状の曲率半径を有し、さらに第二脚部材の外側面は丁番手段とその末端間に凹状の曲率半径を有することを特徴とするポリマー製手術用クリップを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2004-298501号公報
【文献】特表2015-523144号公報
【文献】WO 2019/039586 A1
【文献】特開2006-87671号公報
【文献】特開平5-337123号公報
【文献】特開平8-215201号公報
【文献】特表昭56-500242号公報
【文献】US 3705586 A
【文献】特開2020-025856号公報
【文献】特開平1-146536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、肝、膵、血管などの生体組織(例えば、臓器、器官など)の一部切除などにおいて、種々の合併症の発生を防ぐなどのために用いることができ、且つ侵襲が少ない、結紮などに適した医療器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0016】
〔1〕 遠位端と近位端とを有する可撓性のバンド体と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の第一棒状体と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の第二棒状体とを有し、
バンド体の遠位端と第一棒状体の近位端とが連結されており、
第一棒状体の遠位端と第二棒状体の近位端とが連結部を介して連結されており、
バンド体は、第一棒状体および第二棒状体よりも撓みやすく、
第二棒状体およびバンド体は、所望の位置でバンド体を第二棒状体に緊結することができるロック機構を有し、
ロック機構によって緊結されると、第一棒状体の近位端と第二棒状体の遠位端との間がバンド体の一部(具体的には、バンド体の遠位端から第二棒状体の遠位端が接する部分までの部分)を介して繋がれ、連結部が屈曲し、且つ第一棒状体と第二棒状体と前記バンド体の一部とによって所望の大きさの環を形成することができ、且つ
第二棒状体は、ロック機構によって緊結されたときに、第二棒状体の遠位端から近位端の方向に向かって、バンド体の残部(具体的には、バンド体の第二棒状体の遠位端が接する部分から近位端までの部分)を第二棒状体の外面に沿わせる機構をさらに有する、
医療器具。
【0017】
〔2〕 第一棒状体の内面および/または第二棒状体の内面は、中央部が遠位端および近位端に対して、内に向かって凹に曲っている、〔1〕に記載の医療器具。
〔3〕 第一棒状体および/または第二棒状体の内面は、中央部が遠位端および近位端に対して、内に向かって凸に曲っている、〔1〕に記載の医療器具。
【0018】
〔4〕 バンド体の残部を第二棒状体の外面に沿わせる機構が、第二棒状体の外面に設けられたバンド体に対応する形状の溝である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔5〕 第二棒状体の外面は、少なくとも遠位端近傍が外に向かって凸に曲っている、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
【0019】
〔6〕 バンド体、第一棒状体および第二棒状体は、生体内分解吸収性ポリマーからなる、〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
【0020】
〔7〕 第一棒状体の内面および第二棒状体の内面に緩衝材の層が設けられている、〔1〕~〔6〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔8〕 第一棒状体の内面および第二棒状体の内面にインナーベルトが設けられている、〔1〕~〔6〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
【0021】
〔9〕 生体組織を結紮するための、〔1〕~〔8〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔10〕 結紮しても生体組織の壊死が起こりにくいように調整できる、〔9〕に記載の医療器具。
〔11〕 結紮しても生体組織内の血流が維持されるように調整できる、〔9〕に記載の医療器具。
〔12〕 結紮する生体組織が器官である、〔9〕~〔11〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔13〕 結紮する生体組織が膵である、〔9〕~〔11〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔14〕 結紮する生体組織が膵の体部若しくは尾部である、〔9〕~〔11〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔15〕 結紮する生体組織が膵の頭部である、〔9〕~〔11〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔16〕 結紮しても膵液瘻が起こらないように調整できる、〔13〕~〔15〕のいずれかひとつに記載の医療器具。
〔17〕 結紮する生体組織が肝である、〔9〕に記載の医療器具。
〔18〕 結紮する生体組織が血管である、〔9〕に記載の医療器具。
【発明の効果】
【0022】
本発明の医療器具は、肝、膵、血管などの生体組織(例えば、臓器、器官など)の一部切除などにおいて、種々の合併症の発生を防ぐなどのために用いることができ、且つ侵襲が少なく、生体組織の結紮に用いることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の医療器具の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図3】第一棒状体と第二棒状体とが概ね平行になるように閉じたときの状態の一例を示す図である。
【
図4】第一棒状体と第二棒状体とが概ね平行になるように閉じたときの状態の別の一例を示す図である。
【
図5】第一棒状体と第二棒状体とが概ね平行になるように閉じたときの状態の別の一例を示す図である。
【
図6】第一棒状体と第二棒状体とが概ね平行になるように閉じたときの状態の別の一例を示す図である。
【
図7】バンド体の残部を近位端1p側から第二棒状体の遠位端3dの外面に沿わせてラチェット爪5の部分に差し込む直前の状態を、第二棒状体の遠位側から近位側に見たときの一例を示す部分概念図である。
【
図8】
図7の状態を、側方から見たときの一例を示す部分概念図である。
【
図9】バンド体の残部を近位端1p側から第二棒状体の遠位端3dの外面に沿わせてラチェット爪5の部分に差し込みロックさせた状態を、第二棒状体の遠位側から近位側に見たときの一例を示す部分概念図である。
【
図10】
図9の状態を、側方から見たときの一例を示す部分概念図である。
【
図11】第二棒状体に形成されたホールの一例を示す側面図である。
【
図13】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示す医療器具を別の方角から見たときの要部斜視図である。
【
図15】本発明の医療器具の別の一例を示す要部斜視図である。
【
図16】
図15に示す医療器具においてロックした状態を示す要部斜視図である。
【
図17】
図16に示す医療器具のロック機構を示す要部断面図である。
【
図18】本発明の医療器具における第二棒状体の別の一例を示す斜視図である。
【
図19】
図18に示す第二棒状体のロック機構を示す断面図である。
【
図20】
図18に示す第二棒状体と組み合わせることができる、第一棒状体およびバンド体の一例を示す斜視図である。
【
図21】
図20に示す第一棒状体の遠位端と
図18に示す第二棒状体の近位端とを連結し、バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構に収めた状態を示す図である。
【
図22】
図20に示す第一棒状体の遠位端と本発明の医療器具における別の一例の第二棒状体との近位端とを連結し、バンド体を第二棒状体のロック機構に収めた状態を一部破壊して示す図である。
【
図23】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図25】バンド体を第二棒状体のロック機構に収めロックした状態を示す要部断面図である。
【
図26】
図23に示す医療器具の別の状態を示す断面図である。
【
図27】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図28】
図27に示す医療器具におけるロック機構を示す図である。
【
図29】
図27に示す医療器具において、バンド体を第二棒状体のロック機構に収め、締め付けた状態を示す断面図である。
【
図30】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図32】本発明の医療器具の別の一例を示す斜視図である。
【
図38】バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構の一例を示す図である。
【
図39】バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構の一例を示す図である。
【
図40】バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構の一例を示す図である。
【
図41】バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
本発明の医療器具は、バンド体1、第一棒状体2、および第二棒状体3を有する。
バンド体1は、遠位端1dと近位端1pとを有する細長い可撓性の帯状部材である。バンド体は、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。バンド体は、バルク(塊)で形成されたものであってもよいし、網、織布、不織布などのような繊維で形成されたものであってもよい。
【0025】
第一棒状体2は、遠位端2dと近位端2pとを有する細長い可撓性の棒状部材である。第二棒状体3は、遠位端3dと近位端3pとを有する細長い可撓性の棒状部材である。第一棒状体および第二棒状体は、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。第一棒状体および第二棒状体は、バルク(塊)で形成されたものであってもよいし、網、織布、不織布などのような繊維で形成されたものであってもよいが、撓みにくくするために、バルクで形成されたものが好ましい。
【0026】
なお、本発明の医療器具は、例えば、医用材料であるポリマーを公知の樹脂成形法によって各部の形を作ることによって得ることができる。ポリマーとしては、例えば、乳酸ポリマー、乳酸-グリコール酸ポリマー、トリメチレンカーボネート系ポリマー、ジオキサノン系ポリマー、ポリエチレングリコール系ポリマー、ラクトン系ポリマーなどを挙げることができる。
【0027】
また、バンド体、第一棒状体および第二棒状体は、その長さ、太さ、弾性率などにおいて特に制限されず、例えば、処置の対象となる生体組織の形状や大きさに応じて、適宜、設定することができる。
【0028】
本発明の医療器具においては、バンド体1の遠位端と第一棒状体2の近位端とが連結部4bを介して連結されている。バンド体の遠位端と第一棒状体の近位端とは、内に凹となるように連結されていることが好ましい。連結部4bは、例えば、短い帯状部材であってもよいし、ヒンジ部材であってもよい。また、連結部4bは、連結解除可能な構造を有することで、第一棒状体2とバンド体1とを切り離すことができるようにしてもよい。連結部4bは、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の医療器具においては、第一棒状体2の遠位端と第二棒状体3の近位端とが連結部4aを介して連結されている。第一棒状体2の遠位端と第二棒状体3の近位端とは、内に凹となるように連結されていることが好ましい。連結部4aは、例えば、短い帯状部材であってもよいし、ヒンジ部材であってもよい。また、連結部4aは、連結解除可能な構造を有することで、第一棒状体2と第二棒状体3とを切り離すことができるようにしてもよい。
連結部4aを、
図29のように、第二棒状体3の近位端3pおよび第一棒状体2の遠位端2dの厚さよりも薄くした形状、
図34に示すようなランドルト環状、若しくは
図35、36若しくは37に示すようなぺニンスラ部12を内側に設けた形状としてもよい。これらのような形状の連結部4aは、第一棒状体と第二棒状体との間のすき間をより平行に又は密に接するようにすることができ、生体組織に掛かる締め圧力をより均一にすることができ、生体組織を連結部4aにて挟み込むリスクを減らすことができる。ぺニンスラ部の設置は、特に生体組織の挟み込みのリスクを効果的に低減できる。
連結部4aは、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。
なお、バンド体の近位端および第二棒状体の遠位端は、後述するロック機構による緊結をしていない状態においては、どこにも束縛されていないことが好ましい。バンド体の近位端側は、リブ8などを設けて、剛性をバンド体の遠位端側に比べて高くすると、座屈を抑制でき、ロック機構への挿入を容易にするために好ましい。
【0030】
また、バンド体は、第一棒状体および第二棒状体よりも撓みやすい。撓みやすさの調節は、その手法において特に限定されず、例えば、同じ材料でバンド体、第一棒状体および第二棒状体を作製した場合には、厚さまたは太さを調整することなどによって行うことができる。リブ8のように一部の厚さを厚くすることによって撓みやすさを低くすることができる。また、
図2に示すようにバンド体の外面に、曲る方向に対して直交する方向に、溝(例えば、ラチェット歯6間の溝など)を複数設けることによって撓みやすさを高くすることができる。
【0031】
第二棒状体3およびバンド体1は、ロック機構を有する。ロック機構は、所望の位置でバンド体を第二棒状体に緊結することができる。
【0032】
ロック機構は、バンド体に在る部位とそれに緊結できるような構造をした第二棒状体に在る部位との組み合わせからなる。ロック機構は、例えば、第二棒状体に設けられたラチェット爪5とバンド体に長手方向に沿って並んで設けられた複数のラチェット歯6との組み合わせ、第二棒状体に設けられた少なくとも一つの凹みとバンド体に長手方向に沿って並んで設けられた複数の突起との組み合わせ、または第二棒状体に設けられた少なくとも一つの突起とバンド体に長手方向に沿って並んで設けられた複数の凹みとの組み合わせ、などが挙げられる。
【0033】
ロック機構における突起としては、ピン、フックなどが挙げられる。凹みとしては、孔、ループ、括れ、ノッチなどを挙げることができる。バンド体に設けられる複数の突起若しくは凹みは、球状若しくは環状のものが数珠状に連なったものであってもよいし、両サイドに張り出した鋸歯状のものであってもよいし、梯子状のものであってもよい。
【0034】
ロック機構における突起には差し込まれた凹みからの抜け防止のために返しが付いていることが好ましい。返し付き突起は、逆L字形状のもの、T字形状のもの、十字形状のものなどであってもよい。バンド体に設けられる複数の凹みは、突起を挿通できる限り、布や網における目であってもよい。フックとループとの組み合わせとして、例えば、面ファスナを使用してもよい。
【0035】
ロック機構の一例である、ラチェットは、動作方向を一方向に制限するために用いられる機構の一つである。ラチェット歯6をラチェット爪5に噛合せることによって緊結される。ラチェット爪は可動式のものと固定式のものとがある。可動式ラチェット爪にラチェット歯を噛合せた場合には該噛み合わせを容易に解放することができる。固定式ラチェット爪にラチェット歯を噛合せた場合は該噛み合わせを解放することが難しい。図においては可動式ラチェット爪を一つ設けているだけだが、固定式ラチェット爪と可動式ラチェット爪とを併設した場合には、まず可動式ラチェット爪によってバンド体をロックし、生体組織への締め付け力がきつ過ぎる時に噛み合わせを解放し、締め付け力を緩めることができ、そして締め付け力が確定したときに固定式ラチェット爪によってバンド体の位置が変わらないように噛み合わせることができる。
【0036】
ロック機構によって緊結されると、第一棒状体の近位端と第二棒状体の遠位端との間がバンド体の一部(具体的には、バンド体の遠位端から第二棒状体の遠位端が接する部分までの部分)を介して繋がれ、連結部4aが屈曲し、且つ第一棒状体と第二棒状体とバンド体の一部とによって環を形成することができる。環は扇状の形状であってもよいが、多角形状の環であってもよい。
【0037】
第一棒状体の近位端と第二棒状体の遠位端との間を繋ぐバンド体の一部は、緊結する位置を変えることによって、その長さを変えることができ、結果として、環の大きさを変えることができる。これによって、結紮対象の大きさに応じて、環を所望の大きさにすることができ、また所望の締め付け力にすることができる。
【0038】
第一棒状体の内面および第二棒状体の内面は、それぞれ独立に、遠位端と近位端との間が真直ぐであってもよいし、遠位端と近位端との間が内に向かって凹に曲っていてもよいし、または遠位端と近位端との間が内に向かって凸に曲っていてもよい。具体的には、
図3に示すように、第一棒状体の内面および第二棒状体の内面がともに遠位端と近位端との間で内に向かって凸に曲っている形態、
図4に示すように、第一棒状体の内面および第二棒状体の内面がともに遠位端と近位端との間で内に向かって凹に曲っている形態、
図5に示すように、第一棒状体2の内面が遠位端と近位端との間で内に向かって凹に曲っていて、第二棒状体3の内面が遠位端と近位端との間で内に向かって凸に曲っている形態、
図6に示すように、第一棒状体2の内面が遠位端と近位端との間で内に向かって凸に曲っていて、第二棒状体3の内面が遠位端と近位端との間で内に向かって凹に曲っている形態を挙げることができる。生体組織の結紮をスムーズに行えるという観点から、第一棒状体の内面および第二棒状体の内面は、好ましくは、両方が遠位端と近位端との間が内に向かって凹に曲っている(
図4参照)かまたは両方が遠位端と近位端との間が内に向かって凸に曲っており(
図3参照)、より好ましくは、両方が遠位端と近位端との間が内に向かって凹に曲っている。
【0039】
第一棒状体の内面および第二棒状体の内面は、結紮時の生体組織との摩擦力を高め、滑りを防止するために、ざらざらの面であってもよいし、凸の線条13または凹の線条11または格子を有する面であってもよいし、凸または凹の点を複数有する面であってもよい。第一棒状体の内面および第二棒状体の内面のエッジ付近に長手方向に対して平行に凸条を設けると、消化液漏出防止性、止血性を向上させることができる。
【0040】
さらに、生体組織を締め付けたときに生体組織を傷つけにくくするために、緩衝材の層を、第一棒状体の内面および第二棒状体の内面に設けてもよい。緩衝材としては、例えば、ゴムなどの軟質弾性体、スポンジなどの発泡弾性体、フェルトなどの不織布若しくは織布などを挙げることができる。緩衝材は、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。
【0041】
生態組織を結紮したときに、略平行になった第一棒状体と第二棒状体との間にすき間が生じ、生体組織がそのすき間に逃げ込むことがあるので、それを防ぐために、結紮しようとする生体組織の部位を一周取り巻くように若しくは連結部4aまたは4bの内側付近(
図2参照)に帯状部材(インナーベルト10)を取り付けることができる。インナーベルトは、医用材料からなることが好ましく、生体適合性ポリマーからなることがより好ましく、生体内分解吸収性ポリマーからなることがさらに好ましい。インナーベルトは、バルクで形成されたものであってもよいし、不織布、織布、網などの繊維で形成されたものであってもよい。なお、
図2に示されるインナーベルト10の拘束されていない末端部分は、結紮する際に、第二棒状体と生体組織との間に挟むか、第二棒状体にインナーベルトに対応する取り付け構造を設けそれに取り付けるなどして固定することができる。
【0042】
第二棒状体3には、ロック機構によって緊結したときに、第二棒状体の遠位端から近位端の方向に向かって、バンド体1の残部(具体的には、バンド体の第二棒状体の遠位端が接する部分から近位端までの部分)を第二棒状体の外面に沿わせる機構をさらに有する。
バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構としては、第二棒状体の外面に設けられたバンド体を挿通可能なベルトループ7、第二棒状体の外面に設けられたバンド体に対応する形状の溝9、バンド体の内面に設けられた返し付きピン、フック、ループ、孔などに対応する第二棒状体の外面に設けられた孔、ループ、フック、返し付きピンなどを挙げることができる。バンド体の固定のためにベルトループ7にラチェット爪を設けてもよい。また、バンド体1を第二棒状体3の遠位端で折り返して、スムーズに第二棒状体の外面に沿わせるために、第二棒状体の外面は、少なくとも遠位端近傍が外に向かって凸に曲がっている構造が好ましい。この構造は、バンド体1をロック機構に締結したときに第二棒状体の外面に沿って密着する形状を成していることが好ましい。バンド体1が上記のように密着してロックされていると、バンド体1の遠位端1dから第二棒状体の遠位端に接するバンド体1の部分までの距離が長くなることはないので、生体組織への安定した締め付け力が得られ、かつ緩みにくい。また、この構造は、バンド体1に在るラチェット歯の第二棒状体に在るラチェット爪に対する方向を、両者の噛み合わせが確実になるような向きに、誘導することができる。この構造によって、バンド体1が噛み合わせに適正でない方向に向いてラチェット爪に大きな荷重がかかるということを防止でき、ラチェット爪の破損リスクを下げることができる。例えば、
図7~10は、バンド体1をラチェット爪5の部分に差し込みロックするまでの状態を示すものである。第二棒状体の遠位端3dは、
図7に示すように、その両側に設けられた堤9cによって、バンド体1の幅に相当するサイズの溝9を有する。溝9はバンド体を適正な方向に誘導し、且つ横ずれを防止する。また、第二棒状体の遠位端3dの近傍は、
図8に示すように、外面が外に向かって凸に曲がっている。バンド体1を、それの近位端1p側から可動式ラチェット爪5の部分に通すと、バンド体1が、第二棒状体の外面に沿うようにして、溝9に収まる(
図9、
図10)。
【0043】
バンド体を第二棒状体の外面に沿わせる機構としては、パイルアンドフックやホールアンドフックを用いることができる。パイルアンドフックは、パイル(細いループ)とフックとが対を成していて、フックの出っ張りがパイルに絡まることによって固定するものである。絡まりを解くとフックとパイルとを引き離すことができる。本発明においては、バンド体の内面および第二棒状体の外面に対を成すようにフックとパイルとをそれぞれ設け、バンド体をパイルアンドフックによって第二棒状体の外面に沿うように固定することができる。ホールアンドフックは、孔とフックとが対を成していて、フックが孔に嵌ることによって固定するものである。フックの出っ張りが孔の縁に引っ掛かり抜けにくくする。引っ掛かりを解くとフックと孔とを引き離すことができる。本発明においては、バンド体の内面にフックを設け、第二棒状体の外面に孔を設け、バンド体をホールアンドフックによって第二棒状体の外面に沿うように固定することができる。なお、孔は貫通孔である必要はない。具体例としては、孔(orifice)32とフック31との対(
図38)、対向フック33とフック31との対(
図39)、パイル34とフック31との対(
図40)などを挙げることができる。フック31は頭部に引っ掛かり形状を有するピン31'であってもよい(
図41)。
パイルアンドフック(面ファスナ)やホールアンドフックの第二棒状体への設置場所は、第二棒状体の外面に沿わせるのに適した部分であれば特に制限されない。例えば、
図21中の、堤9cに挟まれた第二棒状体の外面、ベルトループ7に代えてその位置の第二棒状体の外面、ラチェット爪5とベルトループ7との間の第二棒状体の外面などに、設けることができる。パイルアンドフック(面ファスナ)やホールアンドフックのバンド体への設置場所は、ラチェット歯の列の脇のバンド体の内面、ラチェット歯の一部を抜いてその抜いた位置のバンド体の内面などに、設けることができる。
【0044】
図13および
図14は、本発明の医療器具の別の一例を示す図である。
図13および14に示す医療器具は、第一棒状体および第二棒状体の内面(生体組織が触れる面)に長手方向に並行に凹の線条が設けられている。この凹の線条に、生体組織が食い込み、結紮を確実にするとともに、滑り止めなどの効果をもたらす。
【0045】
図15~17に示す本発明の医療器具は、ラチェット爪5を、内向きに、第二棒状体3の遠位端3d側の膨らみ部に設けられている。第二棒状体3は第一棒状体2よりも若干長くなっている。
【0046】
図18または19は、本発明の一例である医療器具を構成する、第二棒状体3を示す図である。
図20は、
図18または19に示す第二棒状体3と組み合わせることができる、第一棒状体2とバンド体1を示す図である。第二棒状体3の近位端3pにフック4a'が設けられており、第一棒状体2の遠位端2dにフック4a'に係合できる軸4a"が設けられており、フック4a'と軸4a"とを係合することによって、連結部4aを構成する。この実施形態において、バンド体1は、ラチェット歯6が内向きに設けられており、第二棒状体3の遠位端3d側の膨らみ部およびベルトループ7内に、ラチェット爪が外向きに設けられている。
図21または22に示すように、第二棒状体3の遠位端3d側の膨らみ部に在るラチェット爪5にラチェット歯6を噛合することができる。さらに、バンド体(1)をベルトループ7に通してラチェット歯(6)をベルトループ7内のラチェット爪に噛合することができる。なお、
図22においては、バンド体の遠位側の部分およびラチェット歯(
図22中、「1」および「6」とそれぞれ表記している。)とバンド体の近位側の部分およびラチェット歯(
図22中、「(1)」および「(6)」とそれぞれ表記している。)とは、本来繋がっているが、その描画を省略している。
【0047】
図23~26に示す医療器具は、第二棒状体3の遠位端3dにラチェット爪5を設けている。遠位端1d付近にはラチェット歯6が無く、ラチェット歯の無いところまでバンド体を引いても、バンド体の引きを弱めるとラチェット爪5が遠位端1dに最も近い位置にあるラチェット歯まで戻り噛み合わさる。これにより締め付け限度を設定できる。また、遠位端3dにある膨らみ部と第二棒状体本体との間に隙間があり、膨らみ部を隙間が狭くなるように押して第二棒状体本体に近づけるとラチェット爪がラチェット歯から外れるようになっている。
【0048】
図27~29に示す医療器具は、バンド体の遠位端1d付近に設けたラチェット歯とバンド体本体との間に隙間があり、バンド体が予期せず緩んだ場合でも、噛合が外れにくくなっている。
図29に示す医療器具においては、連結部4aは、第二棒状体3の近位端3pおよび第一棒状体2の遠位端2dの厚さよりも薄く成形されている。
【0049】
図30~31に示す医療器具は、バンド体1が溝9に嵌まらないように、第二棒状体3の遠位端3dと第一棒状体2の近位端2pとがずれており、ラチェット爪とラチェット歯が予期せず噛み合うのを防ぐことができる。連結部4aは可撓性があるので、第二棒状体3の遠位端3dと第一棒状体2の近位端2pとをバンド体1が溝9に嵌まるようにすると、ラチェット爪とラチェット歯とを噛み合わせることができる。
【0050】
図32~33に示す医療器具は、第一棒状体および第二棒状体の形状を変え、連結部4aを
図34に示すような断面がランドルト環状の可撓性のある一体成形部材とした以外は、
図30~31に示す医療器具と同様の機構を有するものである。
図32に示す医療器具においては、ランドルト環状を成す連結部4aは、第二棒状体3の近位端3pおよび第一棒状体2の遠位端2dの厚さよりも薄く、第二棒状体3の近位端3pおよび第一棒状体2の遠位端2dがランドルト環の切れ目部分に繋がっている。
【0051】
本発明の医療器具は、例えば生体組織の結紮のために用いることができる。かかる生体組織としては、結紮処理が有効である限り特に限定されないが、例えば器官に対して用いられ、特に臓器に対して好適に用いられる。そのような器官としては、例えば血管、リンパ管、胸管、胆管、卵管、膣、尿管、尿道、精管、気管、気管支等の管腔構造を有する器官が挙げられ、臓器としては、例えば膵、肝、胆嚢、脾(spleen, lien)、腎(kidney)、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、心臓、甲状腺、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、リンパ節が挙げられる。
本発明の医療器具は、膵の結紮に好ましく用いることができ、膵切除術時の膵の体部若しくは尾部の結紮により好ましく用いることができる。
本発明の医療器具は、肝の結紮に好ましく用いることができ、肝からの出血時の肝実質の結紮により好ましく用いることができ、肝切除術時の肝からの出血を減じる目的で用いることができる。
本発明の医療器具は、脾の結紮に好ましく用いることができ、脾からの出血時の脾実質の結紮により好ましく用いることができ、脾切除術時の脾からの出血を減じる目的で用いることができる。
本発明の医療器具は、腎の結紮に好ましく用いることができ、腎からの出血時の腎実質の結紮により好ましく用いることができ、腎切除術時の腎からの出血を減じる目的で用いることができる。
【0052】
生体組織、なかでも臓器は変形しやすく、脆弱なことから、その断端の結紮処理に用いられる従来技術の結紮器具は、結紮による組織障害、例えば組織内の血流を阻害することによる組織壊死を最小化すべく、できるだけ臓器の切断面に均等な圧力を加えられるよう、通常、切断面の外形に近似する形状のものが用いられてきた。例えば、膵の断端処理であれば、略円形の結紮器具が従来用いられてきた。
ところで、生体組織の中に管腔構造がある場合、その生体組織を切断すると、切断面に管腔構造の開口部が露出することになる。そして管腔構造内に、例えば消化液など周囲の組織を障害するおそれのある液体が内在していた場合、その漏出を阻止することも生体組織の結紮処理時の課題となる。例えば膵液瘻である。
しかしながら、従来の略円形の結紮器具においては、生体組織への過度な圧迫を避けるために緩く結紮すると生体組織の切断面における管腔構造の開口部を効果的に塞ぐことが十分にできない。一方、管腔構造の閉塞を重視すると、過大な圧力を生体組織に加えることとなり、生体組織内の血流阻害やそれによる組織壊死の問題が顕著となる。すなわち、結紮による組織障害の低減の要請と、生体組織切断面における管腔構造開口部からの液体漏出抑制の要請とはトレードオフの関係にある。
【0053】
本発明の医療器具は、前述したように、特定の形状および特定の可撓性を有する第一棒状体および第二棒状体、ならびに結紮時における第一棒状体の近位端と第二棒状体の遠位端との距離を適切に保持できるよう調節可能なロック機構を備えたことにより、生体組織の周囲から均等に圧力を加える構造ではないにもかかわらず、加圧による生体組織内の血流阻害やそれによる壊死を最小限におさえるように調整することができる。それでいて、本発明の医療器具によれば、生体組織内に管腔構造があったとしても、その開口部を効果的に閉塞することができる。
すなわち、本発明の医療器具は、結紮による組織障害の低減と、生体組織切断面における管腔構造開口部からの液体漏出抑制との両立を可能とするものである。また、膵を結紮する力を調整することにより、管腔構造の開口を保持しながら、膵に本発明の医療器具を固定することができ、膵消化管吻合において後述の通り消化管や組織を縫い付けることができる。
【0054】
また、本発明の医療器具の第二棒状体3および第一棒状体2に、
図11および
図12に示すように、長さ方向に沿って開口が少なくとも1列に並ぶホール(ハトメ穴、eyelet holeとも呼ぶことがある。)25を有することができる。ホール25に、糸を通して、消化管や組織などを消化器断端に縫い付けることができる。ホール25を有する本発明の医療器具を膵頭十二指腸切除後の膵に固定すると、縫合針をホール25に通すだけで、縫合糸を膵に取り付けることができ、縫合針を膵実質に突き刺す必要がなくなる。そして、縫合糸の取り付けられた膵を、腸、胃等の他の臓器を縫い合わせること(例えば、膵消化管吻合など)ができる。
【0055】
本発明の医療器具は、図面に示す実施形態に限られず、前記の各部材の形状、大きさ、色、材質を変更したもの、または前記部材以外の周知または慣用の部品を追加したものも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1:バンド体
2:第一棒状体
3:第二棒状体
4a:第一棒状体と第二棒状体との間の連結部
4b:バンド体と第一棒状体との間の連結部
5:ラチェット爪
6:ラチェット歯
7:ベルトループ
8:リブ
9:溝
9c:堤
10:インナーベルト
11:滑り止め(凹の線条)
12:ぺニンスラ部
13:凸の線条
25:ホール
1p:バンド体の近位端
1d:バンド体の遠位端
2p:第一棒状体の近位端
2d:第一棒状体の遠位端
3p:第二棒状体の近位端
3d:第二棒状体の遠位端
4a':フック
4a”:軸
31:フック
31’:ピン
32:孔
33:対向フック
34:パイル
3’:第二棒状体の外側の壁