(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】改良シルク繊維を合成するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20240827BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240827BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240827BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240827BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240827BHJP
D01F 4/02 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
D01F4/02
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021130596
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2019127424の分割
【原出願日】2014-09-17
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2013-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516079198
【氏名又は名称】ボルト スレッズ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】2261 Market Street, STE 5447 San Francisco, CA 94114 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ターナー ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】レイ リンジー
(72)【発明者】
【氏名】ウィドマイアー ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブレスラウアー デビッド エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】キトルソン ジョシュ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-502347(JP,A)
【文献】Comparative Biochemistry and Physiology, PartB,2013年,Vol.164,p.151-158
【文献】Argiope bruennichi major ampullate silk protein 2 (MASP2) mRNA, complete cds,GenBank, [online],JX112872,2013年,[令和5年5月12日検索],インターネット<ncbi.nlm.nih.gov/nucccore/JX112872.1/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/435
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択されるアミノ酸配列の複数のリピート単位を含むペプチドを含む、タンパク様ブロックコポリマー:
(a) GGYGPGAGQQGPGSGGQQGPGGQGPYGSGQQGPGGAGQQGPGGQGPYGPGAAAAAAAAAGGYGPGAGQQGPGGAGQQGPGSQGPGGQGPYGPGAGQQGPGSQGPGSGGQQGPGGQGPYGPSAAAAAAAAAGGYGPGAGQRSQGPGGQGPYGPGAGQQGPGSQGPGSGGQQGPGGQGPYGPSAAAAAAAA (SEQ ID NO: 1394); および
(b) GGYGPGAGQQGPGSQGPGSGGQQGPGGQGPYGPGAAAAAAAVGGYGPGAGQQGPGSQGPGSGGQQGPGGQGPYGPSAAAAAAAAGGYGPGAGQQGPGSQGPGSGGQQGPGGQGPYGPSAAAAAAAA (SEQ ID NO: 1395)。
【請求項2】
SEQ ID NO: 1394のアミノ酸配列
を含む
リピート単位の2~8回連結されたリピートを含む、請求項1記載のタンパク様ブロックコポリマー。
【請求項3】
SEQ ID NO: 1395のアミノ酸配列
を含む
リピート単位の2~8回連結されたリピートを含む、請求項1記載のタンパク様ブロックコポリマー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載のタンパク様ブロックコポリマーを含む繊維。
【請求項5】
請求項1記載のタンパク様ブロックコポリマーをコードする発現構築物。
【請求項6】
請求項2記載のタンパク様ブロックコポリマーをコードする発現構築物。
【請求項7】
請求項3記載のタンパク様ブロックコポリマーをコードする発現構築物。
【請求項8】
前記タンパク様ブロックコポリマーのコード配列と機能的に連結されている分泌シグナルをさらに含む、請求項5~7のいずれか一項記載の発現構築物。
【請求項9】
請求項8記載の発現構築物を含む、宿主細胞。
【請求項10】
前記細胞が、酵母細胞、真菌細胞、およびグラム陽性細菌からなる群より選択される、請求項9記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞がトリコデルマ(Trichoderma)属に由来する、請求項9記載の宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項記載の分泌されたタンパク様ブロックコポリマーを含む細胞培養培地。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項記載の宿主細胞を含む細胞培養培地。
【請求項14】
前記タンパク様ブロックコポリマーの発現を促進させる条件下で、請求項9記載の宿主細胞を培養する工程;および
前記発現したブロックコポリマーを回収する工程
を含む、分泌ブロックコポリマーを製造するための方法。
【請求項15】
以下を含む、繊維を製造するための方法:
(a) 請求項12記載の細胞培養培地を得る工程;
(b) タンパク様ブロックコポリマーを単離する工程;
(c) タンパク質を紡糸液へ処理する工程;および
(d) 前記紡糸液から繊維を製造する工程。
【請求項16】
以下を含む、繊維紡糸液:
(a) 請求項1~3のいずれか一項記載のタンパク様ブロックコポリマーを含むポリペプチド;および
(b) 紡糸溶媒;ここで前記ポリペプチドは該紡糸溶媒に溶解されている。
【請求項17】
前記タンパク様ブロックコポリマーがSEQ ID NO: 1394および1395を含む、請求項16記載の繊維紡糸液。
【請求項18】
前記タンパク様ブロックコポリマーがSEQ ID NO: 1396を含む、請求項17記載の繊維紡糸液。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 1396の2~8回連結されたリピート、またはその円順列変異体を含む、請求項18記載の繊維紡糸液。
【請求項20】
前記紡糸溶媒がギ酸を含む、請求項16記載の繊維紡糸液。
【請求項21】
前記紡糸溶媒がギ酸である、請求項16記載の繊維紡糸液。
【請求項22】
前記繊維紡糸液が20~30重量%の前記ポリペプチドを含む、請求項16記載の繊維紡糸液。
【請求項23】
前記繊維紡糸液が20~30重量%の前記ポリペプチドを含む、請求項19記載の繊維紡糸液。
【請求項24】
前記ポリペプチドがFLAGタグをさらに含む、請求項16記載の繊維紡糸液。
【請求項25】
前記FLAGタグが前記ポリペプチドのC末端上である、請求項24記載の繊維紡糸液。
【請求項26】
前記FLAGタグが3X FLAGタグである、請求項24記載の繊維紡糸液。
【請求項27】
前記FLAGタグがSEQ ID NO: 1409を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項24記載の繊維紡糸液。
【請求項28】
請求項16記載の繊維紡糸液を提供する工程、および
前記繊維紡糸液からシルク繊維を製造する工程、
を含む、シルク繊維を作製する方法。
【請求項29】
前記繊維紡糸液からシルク繊維を製造する工程が、
凝固浴へオリフィスを通って繊維紡糸液を押し出すこと;および
前記凝固浴からシルク繊維を抽出すること
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
以下を含む、繊維紡糸液を調製するための方法:
(a) 請求項1~3のいずれか一項記載のタンパク様ブロックコポリマーを含むポリペプチドを提供する工程;および
(b) 前記ポリペプチドを紡糸溶媒に溶解する工程。
【請求項31】
前記タンパク様ブロックコポリマーがSEQ ID NO: 1394および1395を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク様ブロックコポリマーがSEQ ID NO: 1396を含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 1396の2~8回連結されたリピート、またはその円順列変異体を含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記紡糸溶媒がギ酸を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記紡糸溶媒がギ酸である、請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドを前記紡糸溶媒に溶解させて、前記溶媒中のポリペプチドの最終濃度を20~30重量%とする、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年9月17日に出願された米国仮特許出願第61/878,858号の恩典を主張する。上記出願の全教示は、全ての目的について参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、配列表を含有する。2014年9月16日に作成された、該ASCIIコピーは、27321PCT_CRF_SequenceListing.txtという名称であり、サイズは4,189,730バイトである。
【0003】
発明の分野
本開示は、合成ブロックコポリマータンパク質に関する方法および組成物、それらの分泌のための発現構築物、それらの産生のための組換え微生物、ならびに天然シルクの多くの特性を再現するこれらのタンパク質を含む合成繊維に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
クモのシルクポリペプチドは、3つのドメイン:N末端非反復ドメイン(NTD)、リピートドメイン(REP)、およびC末端非反復ドメイン(CTD)に分解することができる大きな(>150kDa、>1000アミノ酸)ポリペプチドである。NTDおよびCTDは、比較的小さく(それぞれ、約150、約100アミノ酸)、十分に研究されており、ポリペプチドへ水安定性、pH感受性、および凝集時の分子整列を与えると考えられている。NTDはまた、強く予想される分泌タグを有し、これは異種発現の間に除去されることが多い。反復領域は、天然ポリペプチドの約90%を構成し、シルク繊維に対してそれぞれ強度および可撓性を与える、結晶領域およびアモルファス領域へ折り畳まれる。
【0005】
シルクポリペプチドは、ハチ、ガ、クモ、ダニ、および他の節足動物を含む、様々な供給源に由来する。ある生物は、特有の配列、構造エレメント、および機械的特性を有する複数のシルク繊維を作る。例えば、ナガコガネグモは、環境またはライフサイクル段階に適合するように調整された繊維へ重合される異なるシルクポリペプチド配列を産生する6つの特有のタイプの腺を有する。繊維は、それらが生じる腺にちなんで命名され、ポリペプチドは、腺の略語(例えば「Ma」)およびスピドロイン(spidroin)(クモフィブロインの省略)についての「Sp」で表示される。ナガコガネグモ(orb weaver)において、これらのタイプは、大瓶状腺(Major Ampullate)(MaSp、しおり糸とも呼ばれる)、小瓶状腺(Minor Ampullate)(MiSp)、鞭状腺(Flagelliform)(Flag)、ブドウ状腺(Aciniform)(AcSp)、管状腺(Tubuliform)(TuSp)、および梨状腺(Pyriform)(PySp)を含む。生物の異なる属および種間の繊維タイプ、ドメイン、およびバリエーションにわたるポリペプチド配列のこの組み合わせは、組換え繊維の商業生産によって利用することができる無数の可能性のある特性をもたらす。現在まで、組換えシルクの研究の大部分は、大瓶状腺スピドロイン(MaSp)に注目してきた。
【0006】
現在、組換えシルク繊維は市販されておらず、一握りの例外を除いて、大腸菌(Escherichia coli)および他のグラム陰性原核生物以外の微生物においては産生されていない。現在まで製造された組換えシルクは、時にはNTDおよび/またはCTDと組み合わされた、天然リピートドメインの重合された短いシルク配列モチーフまたは断片から大部分がなった。これは、細胞内発現およびクロマトグラフィーまたはバルク沈殿による精製を用いて産生される組換えシルクポリペプチドの小規模の生産をもたらした(実験室規模でミリグラム、バイオプロセッシング規模でキログラム)。これらの方法は、既存の技術的および織物用繊維の価格と競争することができる実行可能な商業的スケーラビリティをもたらさない。シルクポリペプチドを製造するために用いられてきたさらなる産生宿主としては、トランスジェニックヤギ、トランスジェニックカイコ、および植物が挙げられる。これらの宿主は、遅いエンジニアリングサイクルおよび貧弱なスケーラビリティに恐らく起因して、まだシルクの商業規模生産を可能にしていない。
【0007】
マイクロファイバーは、1デシテックス(dtex)、直径およそ10μm未満の繊度を有する繊維の分類である。H.K., Kaynak and O. Babaarslan, Woven Fabrics, Croatia: InTech, 2012(非特許文献1)。マイクロファイバーの小さな直径は、消費者に望ましい様々な特性および特徴をマイクロファイバー糸および織物に与える。マイクロファイバーは、本質的により柔軟であり(曲げは繊維直径に反比例する)、したがって、柔らかな感触、低い剛性および高いドレープ性(drapeability)を有する。マイクロファイバーはまた、高い繊維密度(糸断面積当たりより多い繊維)を有する糸へ紡糸され、同様の寸法の他の糸と比較してより高い強度をマイクロファイバー糸に与えることができる。マイクロファイバーはまた、糸内の個別の応力緩和に寄与し、しわの寄らない織物を生じさせる。さらに、マイクロファイバーは、糸内で高い圧縮効率を有し、これは、他の防水および防風技術(例えば、ポリビニルコーティング)と比較して通気性を維持しながら織物防水性および防風性を改善する。マイクロファイバー織物内の繊維の高密度は、繊維間のマイクロチャネル構造を生じさせ、これは、毛管効果を促進し、ウィッキングおよび速乾特徴を与える。マイクロファイバー糸の体積に対する高い表面積により、より明るくかつより鮮明に染まることが可能となり、印刷された織物は、同様に、より明確かつより鮮明なパターン保持を有する。現在、組換えシルク繊維は、マイクロファイバータイプ特徴を有するシルクを生じさせるために十分に小さな繊度を有していない。米国特許出願公開第2014/0058066号(特許文献1)は、概ね5~100μmの繊維直径を開示しているが、5μmと同じぐらい小さな直径を有する繊維のいかなる実施例も実際には開示していない。
【0008】
したがって、必要なものは、組換えブロックコポリマータンパク質に関する改良された方法および組成物、高速でのそれらの分泌のための発現構築物、これらのタンパク質を発現する微生物、ならびにシルク繊維の多くの特性を再現するこれらのタンパク質から作製された合成繊維、例えば、マイクロファイバー布地に有用な小さな直径を有する繊維である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2014/0058066号
【非特許文献】
【0010】
【文献】H.K., Kaynak and O. Babaarslan, Woven Fabrics, Croatia: InTech, 2012
【発明の概要】
【0011】
本発明は、繊維へアセンブルすることができるタンパク様ブロックコポリマーの組成物、および該コポリマーの製造方法を提供する。タンパク様ブロックコポリマーは擬似リピートドメインを含み、該コポリマーは繊維へアセンブルすることができる。いくつかの態様において、コポリマーは、コポリマーのアミノ酸配列の12~40%のアラニン組成、コポリマーのアミノ酸配列の25~50%のグリシン組成、コポリマーのアミノ酸配列の9~20%のプロリン組成、コポリマーのアミノ酸配列の15~37%のβターン組成、コポリマーのアミノ酸配列の18~55%のGPGアミノ酸モチーフ含有量、およびコポリマーの全アミノ酸の9~35%のポリアラニンアミノ酸モチーフ含有量を含む。
【0012】
いくつかの態様において、コポリマーはまた、75~350アミノ酸長のN末端非反復ドメイン、および75~350アミノ酸長のC末端非反復ドメインを含む。いくつかの態様において、擬似リピートドメインは、500~5000、119~1575、または900~950アミノ酸長である。他の態様において、コポリマーの質量は、40~400、12.2~132、または70~100 kDaである。いくつかの態様において、アラニン組成は、コポリマーのアミノ酸配列の16~31%または15~20%である。他の態様において、グリシン組成は、コポリマーのアミノ酸配列の29~43%または38~43%である。いくつかの態様において、プロリン組成は、コポリマーのアミノ酸配列の11~16%または13~15%である。他の態様において、βターン組成は、コポリマーのアミノ酸配列の18~33%または25~30%である。いくつかの態様において、GPGアミノ酸モチーフ含有量は、コポリマーのアミノ酸配列の22~47%または30~45%である。他の態様において、ポリアラニンアミノ酸モチーフ含有量は、コポリマーのアミノ酸配列の12~29%である。いくつかの態様において、コポリマーは、表13aからの配列、SEQ ID NO: 1396、またはSEQ ID NO: 1374を含む。他の態様において、コポリマーは、SEQ ID NO: 1398またはSEQ ID NO: 2770からなる。
【0013】
いくつかの態様において、改変微生物は、分泌シグナルおよびコード配列をコードする異種核酸分子を含み、コード配列は上述のコポリマーをコードし、分泌シグナルは微生物からのコポリマーの分泌を可能にする。さらなる態様において、改変微生物は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)またはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)である。他の態様において、細胞培養物は培養培地および改変微生物を含む。他の態様において、分泌ブロックコポリマーを製造するための方法は、細胞培養培地を得る工程、および改変微生物に少なくとも2~20 mgシルク/g DCW/時間の速度でコポリマーを分泌させる条件下で細胞培養培地を維持する工程を含む。さらなる態様において、コポリマーは少なくとも20 mgシルク/g DCW/時間の速度で分泌される。さらなる他の態様において、細胞培養培地は上述の分泌コポリマーを含む。
【0014】
他の態様において、本発明は、上述の細胞培養培地を得る工程、分泌されたタンパク質を単離する工程、およびタンパク質を紡糸液へ処理し、紡糸液から繊維を製造する工程を含む、繊維を製造するための方法を含む。いくつかの態様において、繊維は上述の分泌コポリマーを含む。いくつかの態様において、繊維は、24~172または150~172 MPaの降伏応力を有する。他の態様において、繊維は、54~310または150~310 MPaの最大応力を有する。いくつかの態様において、繊維は、2~200%または180~200%の破断歪みを有する。他の態様において、繊維は、4.48~12.7または4~5μmの直径を有する。いくつかの態様において、繊維は、1617~5820または5500~5820 MPaの初期モジュラスを有する。他の態様において、繊維は、少なくとも0.5、3.1、または59.2 MJ/m3の靭性値を有する。さらに他の態様において、繊維は、0.2~0.6デニールの繊度を有する。
【0015】
[本発明1001]
擬似リピートドメインを含むタンパク様ブロックコポリマーであって、繊維へアセンブルすることができ、かつ
該コポリマーのアミノ酸配列の12~40%のアラニン組成、
該コポリマーのアミノ酸配列の25~50%のグリシン組成、
該コポリマーのアミノ酸配列の9~20%のプロリン組成、
該コポリマーのアミノ酸配列の15~37%のβターン組成、
該コポリマーのアミノ酸配列の18~55%のGPGアミノ酸モチーフ含有量、および
該コポリマーの全アミノ酸の9~35%のポリアラニンアミノ酸モチーフ含有量
を含む、タンパク様ブロックコポリマー。
[本発明1002]
75~350アミノ酸長のN末端非反復ドメインおよび75~350アミノ酸長のC末端非反復ドメインをさらに含む、本発明1001のコポリマー。
[本発明1003]
擬似リピートドメインが500~5000アミノ酸長である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1004]
擬似リピートドメインが119~1575アミノ酸長である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1005]
擬似リピートドメインが900~950アミノ酸長である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1006]
前記コポリマーの質量が40~400 kDaである、本発明1001のコポリマー。
[本発明1007]
前記コポリマーの質量が12.2~132 kDaである、本発明1001のコポリマー。
[本発明1008]
前記コポリマーの質量が70~100 kDaである、本発明1001のコポリマー。
[本発明1009]
アラニン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の16~31%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1010]
アラニン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の15~20%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1011]
グリシン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の29~43%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1012]
グリシン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の38~43%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1013]
プロリン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の11~16%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1014]
プロリン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の13~15%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1015]
βターン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の18~33%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1016]
βターン組成が、前記コポリマーのアミノ酸配列の25~30%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1017]
GPGアミノ酸モチーフ含有量が、前記コポリマーのアミノ酸配列の22~47%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1018]
GPGアミノ酸モチーフ含有量が、前記コポリマーのアミノ酸配列の30~45%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1019]
ポリアラニンアミノ酸モチーフ含有量が、前記コポリマーのアミノ酸配列の12~29%である、本発明1001のコポリマー。
[本発明1020]
表13aからの配列を含む、本発明1001のコポリマー。
[本発明1021]
SEQ ID NO: 1396を含む、本発明1001のコポリマー。
[本発明1022]
SEQ ID NO: 1398からなる、本発明1001のコポリマー。
[本発明1023]
SEQ ID NO: 1374を含む、本発明1001のコポリマー。
[本発明1024]
SEQ ID NO: 2770からなる、本発明1001のコポリマー。
[本発明1025]
分泌シグナルおよびコード配列をコードする異種核酸分子を含む改変微生物であって、コード配列が本発明1001のコポリマーをコードし、分泌シグナルが微生物からのコポリマーの分泌を可能にする、改変微生物。
[本発明1026]
改変微生物がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、本発明1025の改変微生物。
[本発明1027]
改変微生物がバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)である、本発明1025の改変微生物。
[本発明1028]
培養培地および本発明1025の改変微生物を含む、細胞培養物。
[本発明1029]
a)本発明1028の細胞培養培地を得る工程、および
b)改変微生物に少なくとも2~20 mgシルク/g DCW/時間の速度でコポリマーを分泌させる条件下で細胞培養培地を維持する工程
を含む、分泌ブロックコポリマーを製造するための方法。
[本発明1030]
コポリマーが少なくとも20 mgシルク/g DCW/時間の速度で分泌される、本発明1029の方法。
[本発明1031]
本発明1001の分泌コポリマーを含む、細胞培養培地。
[本発明1032]
a)本発明1031の細胞培養培地を得る工程、
b)分泌されたタンパク質を単離する工程、および
c)タンパク質を紡糸液へ処理し、紡糸液から繊維を製造する工程
を含む、繊維を製造するための方法。
[本発明1033]
本発明1001の分泌コポリマーを含む、繊維。
[本発明1034]
24~172 MPaの降伏応力を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1035]
150~172 MPaの降伏応力を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1036]
54~310 MPaの最大応力を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1037]
150~310 MPaの最大応力を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1038]
2~200 %の破断歪みを有する、本発明1033の繊維。
[本発明1039]
180~200%の破断歪みを有する、本発明1033の繊維。
[本発明1040]
4.48~12.7μmの直径を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1041]
4~5μmの直径を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1042]
1617~5820 MPaの初期モジュラスを有する、本発明1033の繊維。
[本発明1043]
5500~5820 MPaの初期モジュラスを有する、本発明1033の繊維。
[本発明1044]
少なくとも0.5 MJ/m3の靭性値を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1045]
少なくとも3.1 MJ/m3の靭性値を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1046]
少なくとも59.2 MJ/m3の靭性値を有する、本発明1033の繊維。
[本発明1047]
0.2~0.6デニールの繊度を有する、本発明1033の繊維。
本発明のこれらおよび他の態様を、ここで、図、明細書、実施例および特許請求の範囲においてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】天然シルクポリペプチドのブロックコポリマー構造を含む、シルクポリペプチド配列の階層的構造を示す。
図1は「AAAAAA」をSEQ ID NO: 2838として開示する。
【
図2】本発明のいくつかの態様に従う、シルクポリペプチドドメインについてのスクリーニングプロセスおよびそれらのDNAコード化を示す。
【
図3】本発明の態様に従う、予備スクリーニングに合格するシルクリピート配列および末端ドメインが、精製されて繊維にされ得る機能性ブロックコポリマーを作るために、どのようにアセンブルされるかを示す。
【
図4】発現されたシルクリピート配列および末端ドメイン配列の代表的なウエスタンブロットを示す。
【
図5】発現されたシルクリピート配列および末端ドメイン配列の代表的なウエスタンブロットを示す。
【
図6】本発明の態様に従う、リピート配列R1、R2からのブロックコポリマー18Bシルクポリヌクレオチドのアセンブリを示す。
【
図7】本発明の態様に従う、シルクポリヌクレオチドセグメントをアセンブルするために使用されるアセンブリベクターを示す。
【
図8】本発明の態様に従う、シルクポリヌクレオチド配列の一部を形成するための2つの配列のライゲーションを示す。
図8は、出現順で、それぞれ、SEQ ID NO: 2839~2842および2841~2843を開示する。
【
図9】18Bシルクポリペプチドを発現する培養物から単離されたブロックコポリマーシルクポリペプチドを含むウエスタンブロットである。
【
図10】本明細書に記載される方法によって製造されたブロックコポリマー繊維の光学顕微鏡検査拡大図である。
【
図11】本明細書に記載される方法に従って製造されたいくつかのブロックコポリマー繊維についての応力対歪みのグラフを示す。
【
図12】本発明の態様に従う、ブロックコポリマーポリヌクレオチドを形成するためのいくつかのシルクRドメインのアセンブリダイヤグラムである。
【
図13】発現されたブロックコポリマーポリペプチドのウエスタンブロットを示し、各ポリペプチドは、記載されるシルクリピート配列の4つのコピーのコンカテマーである。
【
図14】発現されたシルク末端ドメイン配列およびシルクリピート配列を用いて構築された付加的な発現されたブロックコポリマーポリペプチドの代表的なウエスタンブロットを示す。
【
図15】本発明の態様に従う、18Bポリペプチドの円順列変異体のアセンブリを示す。
【
図16】円順列変異体および異なるプロモーターまたは異なるコピー数によって発現された変異体を含む、1~6つのRドメインからなるシルクリピートドメインを用いて構築された発現されたブロックコポリマーペプチドのウエスタンブロットを示す。
【
図17】18Bポリペプチドのブロックコポリマー繊維の延伸比の効果を示す応力-歪み曲線である。
【
図18】SEQ ID NO: 1398を含むブロックコポリマー繊維についての応力-歪み曲線である。
【
図19】未処理およびアニール処理ブロックコポリマー繊維についてのFTIRスペクトルの結果を示す。
【
図20】本発明のブロックコポリマー繊維の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図21】繊維の製造に有用なブロックコポリマーとして発現され得る様々なシルクリピート配列のアミノ酸含有量を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本明細書において特に定義されない限り、本発明に関して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書に記載される生化学、酵素学、分子および細胞生物学、微生物学、遺伝学、ならびにポリペプチドおよび核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法および技術は、当該技術において周知であり、一般的に使用されるものである。
【0018】
本発明の方法および技術は、別段の指示がない限り、概して、当技術分野において周知の従来の方法に従って、かつ本明細書の全体にわたって引用および議論される様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献において記載されているように、実施される。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, and Supplements to 2002); Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990); Taylor and Drickamer, Introduction to Glycobiology, Oxford Univ. Press (2003); Worthington Enzyme Manual, Worthington Biochemical Corp., Freehold, N.J.; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol I, CRC Press (1976); Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol II, CRC Press (1976); Essentials of Glycobiology, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照のこと。
【0019】
本明細書に記載される全ての刊行物、特許および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0020】
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0021】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語には、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNAまたは合成DNA)およびRNA分子(例えば、mRNAまたは合成RNA)が含まれ、非天然のヌクレオチドアナログ、非ネイティブのヌクレオシド間結合、またはこの両方を含有するDNAまたはRNAのアナログも含まれる。核酸は任意の位相幾何学的なコンフォメーションで存在し得る。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四本鎖、部分二本鎖、分枝型、ヘアピン型(hairpinned)、環状、またはパッドロック(padlocked)コンフォメーションであり得る。
【0022】
別段の指示がない限り、一般形式「SEQ ID NO:」で本明細書において記載される全ての配列についての例として、「SEQ ID NO:1を含む核酸」は、少なくとも一部分が、(i)SEQ ID NO:1の配列または(ii)SEQ ID NO:1に相補的な配列の、いずれかを有する核酸を指す。二者択一は文脈によって指示される。例えば、核酸がプローブとして用いられる場合、二者択一は、プローブは所望の標的に相補的であるという要件によって決定される。
【0023】
「単離された」RNA、DNA、または混合ポリマーは、その天然の宿主細胞においてネイティブのポリヌクレオチドに天然に付随している他の細胞成分、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、および天然に会合しているゲノム配列から実質的に分離されているものである。
【0024】
用語「組換え」は、(1)天然に存在する環境から除去されているか、(2)遺伝子が自然において見られるポリヌクレオチドの全部または一部と会合していないか、(3)自然においては連結されていないポリヌクレオチドに機能的に連結されているか、または(4)自然界には存在しない、生体分子、例えば、遺伝子またはポリペプチドを指す。用語「組換え」は、クローニングされたDNA単離物、化学的に合成されポリヌクレオチドアナログ、または異種システムによって生物学的に合成されたポリヌクレオチドアナログ、ならびにそのような核酸によってコードされるポリペプチドおよび/またはmRNAに関して用いられ得る。
【0025】
本明細書において用いる場合、生物のゲノム中の内因性核酸配列(またはその配列がコードされたポリペプチド産物)は、この内因性核酸配列の発現が変更されるように、異種配列が内因性核酸配列に隣接して配置されている場合、本明細書において「組換え」と見なされる。この文脈において、異種配列は、異種配列がそれ自体内因性である(同じ宿主細胞もしくはその子孫に由来する)または外因性である(異なる宿主細胞もしくはその子孫に由来する)か否かに関わらず、天然では内因性核酸配列に隣接していない配列である。例として、プロモーター配列が、遺伝子が変更された発現パターンを有するように、宿主細胞のゲノム中のこの遺伝子のネイティブなプロモーターの代わりに(例えば、相同組換えによって)用いられ得る。この遺伝子はこの場合は「組換え」となり、何故ならば、それに天然では隣接している配列の少なくとも一部から分離しているためである。ある態様において、異種核酸分子は生物に対して内因性でない。さらなる態様において、異種核酸分子は、相同またはランダム組み込みによって宿主染色体へ組み込まれたプラスミドまたは分子である。
【0026】
核酸はまた、天然ではゲノム中の対応の核酸には生じない任意の修飾を含有する場合、「組換え」と見なされる。例えば、内因性コード配列は、例えば人の介入によって、人工的に導入された、挿入、欠失または点変異を含有する場合、「組換え」と見なされる。「組換え核酸」はまた、宿主細胞染色体の異種部位へ組み込まれた核酸、およびエピソームとして存在する核酸構築物を含む。
【0027】
本明細書において用いる場合、参照核酸配列の「縮重バリアント」という句は、参照核酸配列から翻訳されるものと同一のアミノ酸配列を提供するよう、標準的な遺伝暗号に従って翻訳され得る核酸配列を包含する。用語「縮重オリゴヌクレオチド」または「縮重プライマー」は、1つまたは複数の特定のセグメント内において必ずしも配列は同一ではないが相互に相同である標的核酸配列とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを表すために使用される。
【0028】
核酸配列の文脈における「パーセント配列同一性」または「同一の」という用語は、最大に一致するよう整列化された場合に同じである2つの配列内の残基を指す。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、一般的には少なくとも約20ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36ヌクレオチド、またはそれ以上のヌクレオチドのストレッチにわたる場合がある。ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用され得る当技術分野において公知の多数の異なるアルゴリズムが存在する。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wisの中のプログラムであるFASTA、GapまたはBestfitを使用して比較され得る。FASTAは、クエリー配列と検索配列と間の最適なオーバーラップの領域の整列化およびパーセント配列同一性を提供する。Pearson, Methods Enzymol. 183:63-98 (1990)(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6およびスコアリングマトリックスのためのNOPAMファクター)を用いてFASTAを使用して、または参照により本明細書に組み入れられるGCG Version 6.1の中に提供されているようなそのデフォルトパラメータを用いてGapを使用して、決定され得る。あるいは、配列は、コンピュータプログラムBLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990); Gish and States, Nature Genet. 3:266-272 (1993); Madden et al., Meth. Enzymol. 266:131-141 (1996); Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997); Zhang and Madden, Genome Res. 7:649-656 (1997))、特にblastpまたはtblastn(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を使用して比較され得る。
【0029】
用語「実質的な相同性」または「実質的な類似性」は、核酸またはその断片を指す場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を用いて別の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列化された場合に、前述のようなFASTA、BLASTまたはGapのような周知の配列同一性のアルゴリズムにより測定されるようなヌクレオチド配列同一性が、ヌクレオチド塩基の少なくとも少なくとも約76%、80%、85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%に存在することを示す。
【0030】
本発明の核酸(ポリヌクレオチドとも呼ばれる)には、RNA、cDNA、ゲノムDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方、ならびにこれらの合成型および混合ポリマーが含まれ得る。これらは、化学的もしくは生化学的に修飾されてもよいし、または当業者により容易に認識されるような非天然のもしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有していてもよい。このような修飾には、例えば、標識、メチル化、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つまたは複数のアナログでの置換、電荷を有しない結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート等)、電荷を有する結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、懸垂部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレン等)、キレート化剤、アルキル化剤、および修飾された結合(例えば、アルファアノマー核酸等)のようなヌクレオチド間修飾が含まれる。水素結合および他の化学的相互作用を介して指定の配列に結合する能力に関してポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。このような分子は、当技術分野において公知であり、例えば、分子の骨格内のリン酸結合がペプチド結合に置換されたものを含む。他の修飾には、例えば、リボース環が、架橋部分または「ロックド(locked)」核酸において見られる修飾のような他の構造を含有するアナログが含まれ得る。
【0031】
「変異型」という用語は、核酸配列に適用される場合、核酸配列内のヌクレオチドが、参照核酸配列と比較して挿入、欠失、または変化されている場合があることを意味する。単一の変更が1つの遺伝子座においてなされてもよいし(点変異)、または複数のヌクレオチドが単一の遺伝子座において挿入、欠失、もしくは変化されていてもよい。さらに、1つまたは複数の変更が、核酸配列内の任意の数の遺伝子座においてなされてもよい。核酸配列は、「エラープローン(error-prone)PCR」(PCR産物の全長にわたって高い割合で点変異が得られるよう、DNAポリメラーゼのコピーの正確さが低い条件の下でPCRを実施する方法;例えば、Leung et al., Technique, 1:11-15 (1989)およびCaldwell and Joyce, PCR Methods Applic. 2:28-33 (1992)を参照のこと);および「オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発」(関心対象のクローニングされたDNAセグメントにおける部位特異的な変異の発生を可能にする方法;例えば、Reidhaar-Olson and Sauer, Science 241:53-57 (1988)を参照のこと)のような突然変異誘発技術を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法により変異させられ得る。
【0032】
用語「ベクター」は、本明細書において用いる場合、これと連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すように意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、付加的なDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを一般に指すが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅からまたは制限酵素での環状プラスミドの処理から得られるものなどの、線形二本鎖分子も含む。他のベクターには、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、および酵母人工染色体(YAC)が含まれる。ベクターの別のタイプは、付加的なDNAセグメントがウイルスゲノムへとライゲートされ得るウイルスベクター(より詳細に後述される)である。ある種のベクターは、導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、宿主細胞において機能する複製起点を有するベクター)。他のベクターは、宿主細胞へと導入された際、宿主細胞のゲノムへ組み込まれ得、これにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種の好ましいベクターは、これらと機能的に連結されている遺伝子の発現を指図することができる。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0033】
用語「発現系」は、本明細書において用いる場合、宿主細胞における遺伝子の発現のためのビヒクルまたはベクター、ならびに宿主染色体への遺伝子の安定した組み込みをもたらすビヒクルまたはベクターを含む。
【0034】
「機能的に連結された(operatively linked)」または「機能的に連結された(operably linked)」発現制御配列は、発現制御配列が、関心対象の遺伝子を制御するよう、関心対象の遺伝子と連続しているような連結を指し、関心対象の遺伝子を制御するよう、トランスでまたはある程度の距離を置いて作用する発現制御配列も指す。
【0035】
用語「発現制御配列」は、本明細書において用いる場合、これらと機能的に連結されているコード配列の発現に影響を与えるのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後事象、および翻訳を制御する配列である。発現制御配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルのような効率的なRNAプロセシングのためのシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);ポリペプチド安定性を増強する配列が含まれ;所望により、ポリペプチド分泌を増強する配列が含まれる。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なり;原核生物において、このような制御配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれる。「制御配列」という用語には、最小限、この存在が発現にとって不可欠である成分全てが含まれるように意図され、この存在が有利である付加的な成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含まれ得る。
【0036】
用語「プロモーター」は、本明細書において用いる場合、遺伝子転写を開始するためにRNAポリメラーゼが結合するDNA領域を指し、mRNA転写開始部位の5'方向に位置する。
【0037】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において用いる場合、組換えベクターが導入されている細胞を指すように意図される。このような用語は、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の子孫も指すように意図される。後続の世代においては、変異または環境的影響のいずれかによって、ある種の修飾が起こり得るため、このような子孫は、実際は親細胞と同一ではない場合があるが、これでも本明細書において使用されるような「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞は、培養で増殖された単離された細胞もしくは細胞系であってもよいし、または生存している組織もしくは生物に属している細胞であってもよい。
【0038】
用語「ペプチド」は、本明細書において用いる場合、短いポリペプチド、例えば、典型的には約50アミノ酸長未満、より典型的には約30アミノ酸長未満であるものを指す。この用語は、本明細書において用いる場合、構造的およびしたがって生物学的機能を模倣するアナログおよびミメティックを包含する。
【0039】
用語「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質および天然には存在しないタンパク質の両方、ならびにそれらの断片、変異体、誘導体、およびアナログを包含する。ポリペプチドは、モノマーまたはポリマーであり得る。さらに、ポリペプチドは、各々が1つまたは複数の別個の活性を有する多数の異なるドメインを含み得る。
【0040】
本明細書において用いる場合、用語「分子」は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、糖、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、脂質などを含むが、これらに限定されない、任意の化合物を意味し、このような化合物は天然であってもよくまたは合成であってもよい。
【0041】
用語「ブロック」または「リピート単位」は、本明細書において用いる場合、恐らくわずかな変化を伴って、天然シルクポリペプチド配列において繰り返し見られる、該天然シルクポリペプチドのうちのおよそ12アミノ酸を超えるサブ配列を指し、該シルクポリペプチド配列において基本繰り返し単位として役立つ。例は表1において見られ得る。ブロックアミノ酸配列のさらなる例はSEQ ID NO: 1515~2156において見られ得る。ブロックは、非常に短い「モチーフ」を含んでもよいが、必ずしも含まない。「モチーフ」は、本明細書において用いる場合、複数のブロックにおいて出現するおよそ2~10アミノ酸配列を指す。例えば、モチーフは、アミノ酸配列GGA、GPG、またはAAAAA(SEQ ID NO: 2803)からなり得る。複数のブロックの配列は「ブロックコポリマー」である。
【0042】
本明細書において用いる場合、用語「リピートドメイン」は、シルクポリペプチド中の連続的な(公知のシルクスペーサーエレメントを除いた、実質的な非反復ドメインによって途切れていない)反復セグメントのセットより選択される配列を指す。天然シルク配列は、一般に1つのリピートドメインを含有する。本発明のいくつかの態様において、1シルク分子当たり1つのリピートドメインが存在する。「マクロリピート(macro-repeat)」は、本明細書において用いる場合、1つを超えるブロックを含む天然に存在する反復アミノ酸配列である。ある態様において、マクロリピートは、リピートドメインにおいて少なくとも2回繰り返される。さらなる態様において、2つの繰り返しは不完全である。「擬似リピート」は、本明細書において用いる場合、ブロックのアミノ酸配列が類似しているが同一ではないように、1つを超えるブロックを含むアミノ酸配列である。
【0043】
「リピート配列」または「R」は、本明細書において用いる場合、反復アミノ酸配列を指す。例としては、SEQ ID NO: 1~467のヌクレオチド配列、SEQ ID NO: 468~931のクローニングのためのフランキング配列を有するヌクレオチド配列、およびSEQ ID NO: 932~1398のアミノ酸配列が挙げられる。ある態様において、リピート配列は、マクロリピートまたはマクロリピートの断片を含む。他の態様において、リピート配列はブロックを含む。さらなる態様において、単一のブロックは、2つのリピート配列にわたって分割される。
【0044】
本明細書に開示される任意の範囲は範囲の端を含む。例えば、2~5%の範囲は、2%および5%、ならびにその間の任意の数または数の分数、例えば:2.25%、2.5%、2.75%、3%、3.25%、3.5%、3.75%、4%、4.25%、4.5%、および4.75%を含む。
【0045】
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。例示的な方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載されたものと同様または等価の方法および材料も、本発明の実施において使用され得、当業者には明白であろう。本明細書において言及された全ての刊行物および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が適用されるであろう。材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定的であるようには意図されない。
【0046】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」のような活用形は、明示された整数または整数の群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
【0047】
シルク配列
いくつかの態様において、1)シルクポリペプチド配列由来のリピートドメインを混合し組み合わせることによって作製されたブロックコポリマーポリペプチド組成物、およびに2)産業的に拡張可能な微生物からの分泌によって有用な繊維を形成するために十分に大きなサイズ(およそ40 kDa)を有するブロックコポリマーポリペプチドの組換え発現を、本明細書において開示する。本発明者らは、クモシルクポリペプチドのほぼ全ての公開されたアミノ酸配列からの配列を含む、シルクリピートドメイン断片から改変された比較的大きな(およそ40 kDa~およそ100 kDa)ブロックコポリマーポリペプチドを、拡張可能な改変微生物宿主において産生する能力を本明細書において提供する。いくつかの態様において、シルクポリペプチド配列は、繊維形成が可能な高度に発現され分泌されるポリペプチドを産生するように組み合わせて設計される。
【0048】
いくつかの態様において、シルクポリペプチド配列スペースにわたるシルクポリペプチドドメインのコンビナトリアルミックスから改変されたブロックコポリマーの発現および分泌のための組成物を本明細書において提供する。いくつかの態様において、拡張可能な生物(例えば、酵母、真菌、およびグラム陽性細菌)においてブロックコポリマーを分泌する方法を本明細書において提供する。いくつかの態様において、ブロックコポリマーポリペプチドは、0または1以上のN末端ドメイン(NTD)、1またはそれ以上のリピートドメイン(REP)、および0または1以上のC末端ドメイン(CTD)を含む。態様のいくつかの局面において、ブロックコポリマーポリペプチドは、>100アミノ酸の単一ポリペプチド鎖である。いくつかの態様において、ブロックコポリマーポリペプチドは、SEQ ID NO: 932~1398の配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるドメインを含む。
【0049】
天然クモシルクのいくつかのタイプが同定された。天然に紡糸された各シルクタイプの機械的特性は、そのシルクの分子組成に密接に関連していると考えられている。例えば、Garb, J.E., et al., Untangling spider silk evolution with spidroin terminal domains, BMC Evol. Biol., 10:243 (2010); Bittencourt, D., et al., Protein families, natural history and biotechnological aspects of spider silk, Genet. Mol. Res., 11:3 (2012); Rising, A., et al., Spider silk proteins: recent advances in recombinant production, structure-function relationships and biomedical applications, Cell. Mol. Life Sci., 68:2, pg. 169-184 (2011); およびHumenik, M., et al., Spider silk: understanding the structure-function relationship of a natural fiber, Prog. Mol. Biol. Transl. Sci., 103, pg. 131-85 (2011)を参照のこと。例えば:
【0050】
ブドウ状腺(AcSp)シルクは、適度に高い伸長性に加えて適度に高い強度の結果、高い靭性を有する傾向がある。AcSpシルクは、ポリセリンおよびGPXのモチーフをしばしば組み入れる大きなブロック(「アンサンブル・リピート」)サイズを特徴とする。管状腺(TuSpまたは円柱状腺(Cylindrical))シルクは、適度な強度および高い伸長性を伴う、大きな直径を有する傾向がある。TuSpシルクは、それらのポリセリンおよびポリトレオニン含有量、ならびにポリアラニンの短い管(short tract)を特徴とする。大瓶状腺(MaSp)シルクは、高い強度および適度の伸長性を有する傾向がある。MaSpシルクは、2つのサブタイプのうちの1つであり得る:MaSp1およびMaSp2。MaSp1シルクは、一般に、MaSp2シルクよりも伸長性が低く、ポリアラニン、GX、およびGGXモチーフを特徴とする。MaSp2シルクは、ポリアラニン、GGX、およびGPXモチーフを特徴とする。小瓶状腺(MiSp)シルクは、適度な強度および適度な伸長性を有する傾向がある。MiSpシルクは、GGX、GA、およびポリAモチーフを特徴とし、およそ100アミノ酸のスペーサーエレメントをしばしば含有する。鞭状腺(Flag)シルクは、非常に高い伸長性および適度な強度を有する傾向がある。Flagシルクは、通常、GPG、GGX、および短いスペーサーモチーフを特徴とする。
【0051】
各シルクタイプの特性は、種によって異なり得、別個の生活様式を送るクモ(例えば、定住性シロアリモドキ(web spinner)に対して放浪ハンター)または進化的により古いものは、上記の説明とは特性が異なるシルクを産生し得る(クモ多様性および分類の説明については、Hormiga, G., and Griswold, C.E., Systematics, phylogeny, and evolution of orb-weaving spiders, Annu. Rev. Entomol. 59, pg. 487-512 (2014); およびBlackedge, T.A. et al., Reconstructing web evolution and spider diversification in the molecular era, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 106:13, pg. 5229-5234 (2009)を参照のこと)。しかし、天然シルクタンパク質のリピートドメインと配列類似性および/またはアミノ酸組成類似性を有する合成ブロックコポリマーポリペプチドは、対応の天然シルク繊維の特性を再現する一貫したシルク様繊維を商業規模で製造するために使用することができる。
【0052】
いくつかの態様において、推定シルク配列のリストは、関連用語、例えば、「スピドロイン」「フィブロイン」「MaSp」についてGenBankをサーチすることによって編集することができ、それらの配列は、独立したシークエンシング努力によって得られた付加的な配列と共にプールすることができる。次いで、配列をアミノ酸へ翻訳し、二重エントリーについてフィルタリングし、手動でドメイン(NTD、REP、CTD)へ分割する。いくつかの態様において、候補アミノ酸配列を、ピキア(コマガテラ)パストリス(Pichia (Komagataella) pastoris)における発現について最適化されたDNA配列へ逆翻訳する。DNA配列を発現ベクターへそれぞれクローニングし、ピキア(コマガテラ)パストリスへ形質転換する。いくつかの態様において、成功した発現および分泌を示す様々なシルクドメインを、続いて、繊維形成することができるシルク分子を構築するためにコンビナトリアル様式でアセンブルする。
【0053】
シルクポリペプチドは、非反復領域(例えば、C末端およびN末端ドメイン)に隣接するリピートドメイン(REP)から構成されることを特徴とする。ある態様において、C末端ドメインおよびN末端ドメインは両方とも75~350アミノ酸長である。リピートドメインは、
図1において示されるように、階層的構造を示す。リピートドメインは、一連のブロック(リピート単位とも呼ばれる)を含む。ブロックは、シルクリピートドメインの全体にわたって、時には完全にそして時には不完全に(擬似リピートドメインを構築する)、繰り返される。ブロックの長さおよび組成は、異なるシルクタイプによって、および異なる種によって変わる。表1は、選択された種およびシルクタイプからのブロック配列の例を列挙し、さらなる例は、Rising, A. et al., Spider silk proteins: recent advances in recombinat production, structure-function relationships and biomedical applications, Cell Mol. Life Sci., 68:2, pg 169-184 (2011); およびGatesy, J. et al., Extreme diversity, conservation, and convergence of spider silk fibroin sequences, Science, 291:5513, pg. 2603-2605 (2001)に示されている。ある場合には、ブロックは、規則的なパターンで配置され、シルク配列のリピートドメインにおいて複数回(通常2~8回)出現するより大きなマクロリピートが形成され得る。リピートドメインまたはマクロリピート内の繰り返されるブロック、およびリピートドメイン内のマクロリピートは、スペーシングエレメントによって分離されていてもよい。いくつかの態様において、ブロック配列は、グリシンリッチ領域、続いてポリA領域を含む。いくつかの態様において、短い(約1~10)アミノ酸モチーフは、ブロックの内部で複数回出現する。一般的に観察されるモチーフのサブセットを
図1に示す。本発明の目的のために、異なる天然シルクポリペプチドからのブロックを、円順列に関係なく選択することができる(即ち、その他の点ではシルクポリペプチド間で類似している同定されたブロックは、円順列に起因して整列しなくてもよい)。したがって、例えば、SGAGG (SEQ ID NO: 2804)の「ブロック」は、本発明の目的について、GSGAG (SEQ ID NO: 2805)と同じであり、またGGSGA (SEQ ID NO: 2806)と同じであり;それらは全て互いの円順列にすぎない。所定のシルク配列について選択される特定の順列は、他の何よりも便宜によって指示され得る(通常Gで始まる)。NCBIデータベースより得られたシルク配列は、ブロックおよび非反復領域へ区分化することができる。
【0054】
【0055】
本発明のある態様に従う、ブロックおよび/またはマクロリピートドメインからの繊維形成ブロックコポリマーポリペプチドの構築を、
図2および3に示す。
図2は、別個のドメインへのシルク配列の分割を示す。GenBankなどのタンパク質データベースからまたはデノボシークエンシングによって得られた天然シルク配列200は、ドメイン(N末端ドメイン202、リピートドメイン204、およびC末端ドメイン206)ごとに分解される。繊維への合成およびアセンブリの目的のために選択されたN末端ドメイン202およびC末端ドメイン206配列は、天然アミノ酸配列情報および本明細書に記載される他の修飾を含む。リピートドメイン204は、シルクのタイプに依存して通常1~8個、代表的なブロックを含有するリピート配列208へ分解され、これは、重要なアミノ酸情報を獲得し、一方、アミノ酸をコードするDNAのサイズを、容易に合成可能な断片へ縮小させる。
図3は、選択されたNT 202、CT 206、およびリピート配列208がどのようにアセンブルされ、ブロックコポリマーポリペプチドを作ることができるかを示しており、該ブロックコポリマーポリペプチドは、本発明の態様に記載するように、精製して、シルクの機能特性を再現する繊維にすることができるものである。発現および分泌されると確認された個々のNT、CT、およびリピート配列は、機能性ブロックコポリマーポリペプチドへアセンブルされる。いくつかの態様において、適切に形成されたブロックコポリマーポリペプチドは、少なくとも1つのリピート配列208を含む少なくとも1つのリピートドメインを含み、任意でN末端ドメイン202および/またはC末端ドメイン206に隣接する。
【0056】
いくつかの態様において、リピートドメインは、少なくとも1つのリピート配列を含む。いくつかの態様において、リピート配列、N末端ドメイン配列、および/またはC末端ドメイン配列は、SEQ ID NO: 932~1398より選択される。いくつかの態様において、リピート配列は150~300アミノ酸残基である。いくつかの態様において、リピート配列は複数のブロックを含む。いくつかの態様において、リピート配列は複数のマクロリピートを含む。いくつかの態様において、ブロックまたはマクロリピートは複数のリピート配列にわたって分割される。
【0057】
いくつかの態様において、DNAアセンブリ要件を満たすために、リピート配列はグリシンで始まり、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、メチオニン(M)、またはアスパラギン酸(D)で終わることはできない。いくつかの態様において、リピート配列の一部は、天然配列と比較して変更され得る。いくつかの態様において、リピート配列は、ポリペプチドのC末端へのセリンの付加などによって変更され得る(F、Y、W、C、H、N、M、またはDで終結することを避けるため)。いくつかの態様において、リピート配列は、別のブロック由来の相同配列で不完全なブロックを埋めることによって修飾され得る。いくつかの態様において、リピート配列は、ブロックまたはマクロリピートの順序を再配置することによって修飾され得る。
【0058】
いくつかの態様において、非反復NおよびC末端ドメインは、合成のために選択され得る(SEQ ID NO: 1~145を参照のこと)。いくつかの態様において、N末端ドメインは、例えば、SignalP (Peterson, T.N., et. Al., SignalP 4.0: discriminating signal peptides from transmembrane regions, Nat. Methods, 8:10, pg. 785-786 (2011))によって同定されるような、リーディングシグナル配列の除去によるものであり得る。
【0059】
いくつかの態様において、N末端ドメイン、リピート配列、またはC末端ドメイン配列は、アゲレノプシス・アペルタ(Agelenopsis aperta)、アリアチプス・グロサス(Aliatypus gulosus)、アフォノペルマ・シーマニー(Aphonopelma seemanni)、アプトスチチュス種(Aptostichus sp.)AS217、アプトスチチュス種AS220、アラネウス・ディアデマツス(Araneus diadematus)、アラネウス・ゲムモイデス(Araneus gemmoides)、アラネウス・ヴェントリコサス(Araneus ventricosus)、アルギオペ・アモエナ(Argiope amoena)、アルギオペ・アルゲンタタ(Argiope argentata)、アルギオペ・ブルエンニチ(Argiope bruennichi)、アルギオペ・トリファスシアタ(Argiope trifasciata)、アチポイデス・リヴェルシ(Atypoides riversi)、アヴィキュラリア・ジュルエンシス(Avicularia juruensis)、ボスリオシルツム・カリフォルニカム(Bothriocyrtum californicum)、デイノピス・スピノサ(Deinopis Spinosa)、ディグエチア・カニチエス(Diguetia canities)、ドロメデス・テネブロサス(Dolomedes tenebrosus)、エウアグルス・キソセウス(Euagrus chisoseus)、エウプロスセノプス・オーストラリス(Euprosthenops australis)、ガステラキャンタ・マンモサ(Gasteracantha mammosa)、ヒポキルス・トレルリ(Hypochilus thorelli)、ククルカニア・ヒベルナリス(Kukulcania hibernalis)、ラトロデクツス・ヘスペルス(Latrodectus hesperus)、メガヘクスラ・フルヴァ(Megahexura fulva)、メテペイラ・グランディオサ(Metepeira grandiosa)、ネフィラ・アンチポディアナ(Nephila antipodiana)、ネフィラ・クラヴァタ(Nephila clavata)、ネフィラ・クラヴィペス(Nephila clavipes)、ネフィラ・マダガスカリエンシス(Nephila madagascariensis)、ネフィラ・ピリペス(Nephila pilipes)、ネフィレンギス・クルエンタタ(Nephilengys cruentata)、パラウィキシア・ビストリアタ(Parawixia bistriata)、ペウセチア・ヴィリダンス(Peucetia viridans)、プレクトレウリス・トリスチス(Plectreurys tristis)、ポエシロセリア・レガリス(Poecilotheria regalis)、テトラグナタ・カウアイエンシス(Tetragnatha kauaiensis)、またはウロボルス・ディヴェルサス(Uloborus diversus)に由来し得る。
【0060】
いくつかの態様において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、α接合因子ヌクレオチドコード配列へ機能的に連結され得る。いくつかの態様において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、別の内因性または異種分泌シグナルコード配列へ機能的に連結され得る。いくつかの態様において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、3X FLAGヌクレオチドコード配列へ機能的に連結され得る。いくつかの態様において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、6~8つのHis残基(SEQ ID NO: 2824)などの他のアフィニティータグへ機能的に連結される。
【0061】
発現ベクター
本発明の発現ベクターは、当技術分野において公知の技術を考慮して本明細書の教示に従って作製することができる。配列、例えば、ベクター配列またはトランスジーンをコードする配列は、Integrated DNA Technologies, Coralville, IA、またはDNA 2.0, Menlo Park, CAなどの会社から商業的に得ることができる。キメラシルクポリペプチドの高レベル発現を指示する発現ベクターを本明細書において例示する。
【0062】
本発明において用いられるポリヌクレオチドの別の標準供給源は、生物(例えば、細菌)、細胞、または選択された組織から単離されたポリヌクレオチドである。選択された供給源からの核酸は、標準手順によって単離され得、これは、典型的に、連続的なフェノールおよびフェノール/クロロホルム抽出、続いてのエタノール沈殿を含む。沈殿後、ポリヌクレオチドは、核酸分子を断片へ切断する制限エンドヌクレアーゼで処理することができる。クローニングのための適切なサイズの出発材料を提供するために、選択されたサイズの断片が、アガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動またはパルスフィールドゲル電気泳動(Care et al. (1984) Nuc. Acid Res. 12:5647-5664; Chu et al. (1986) Science 234:1582; Smith et al. (1987) Methods in Enzymology 151:461)を含む、多数の技術によって分離され得る。
【0063】
発現ベクターまたは構築物のヌクレオチド成分を得る別の方法はPCRである。PCRについての一般手順は、MacPherson et al., PCR: A PRACTICAL APPROACH, (IRL Press at Oxford University Press, (1991))に教示されている。各適用反応についてのPCR条件は経験的に決定され得る。多数のパラメータが反応の成功に影響を与える。これらのパラメータには、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+およびATP濃度、pH、ならびにプライマー、テンプレートおよびデオキシリボヌクレオチドの相対濃度がある。例示的なプライマーを実施例において下述する。増幅後、得られた断片は、アガロースゲル電気泳動、続く臭化エチジウム染色および紫外線照射による可視化によって検出され得る。
【0064】
ポリヌクレオチドを得るための別の方法は、酵素消化によるものである。例えば、ヌクレオチド配列は、適切な認識制限酵素による適切なベクターの消化によって作製され得る。制限切断された断片は、標準技術を用いて、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下で大腸菌DNAポリメラーゼIの大きな断片(Klenow)で処理することによって平滑末端化され得る。
【0065】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法を用いて、適切な骨格、例えばプラスミドへ挿入される。例えば、挿入物およびベクターDNAは、適切な条件下で、制限酵素と接触させて、各分子上に相補末端または平滑末端を作製することができ、これらは互いと対を形成して、リガーゼで連結され得る。代替として、合成核酸リンカーをポリヌクレオチドの末端へライゲートすることもできる。これらの合成リンカーは、ベクターDNAにおける特定の制限部位に対応する核酸配列を含有し得る。他の手段も、当技術分野において公知であり利用可能である。様々な供給源を成分ポリヌクレオチドのために使用することができる。
【0066】
いくつかの態様において、R、N、またはC配列を含有する発現ベクターを、発現および分泌のために宿主生物へ形質転換する。いくつかの態様において、発現ベクターは分泌シグナルを含む。いくつかの態様において、発現ベクターはターミネーターシグナルを含む。いくつかの態様において、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムへ組み込まれるように設計され、以下を含む:標的ゲノムと相同の領域、プロモーター、分泌シグナル、タグ(例えば、Flagタグ)、終結/ポリAシグナル、ピキアについての選択可能なマーカー、大腸菌についての選択可能なマーカー、大腸菌についての複製起点、および関心対象の断片を放出するための制限部位。
【0067】
宿主細胞形質転換体
本発明のいくつかの態様において、本発明の核酸分子またはベクターで形質転換された宿主細胞、およびその子孫を提供する。本発明のいくつかの態様において、これらの細胞は、ベクター上に本発明の核酸配列を保有しており、自由にベクターを複製し得るがその必要はない。本発明の他の態様において、核酸は宿主細胞のゲノムへ組み込まれている。
【0068】
いくつかの態様において、本発明のブロックコポリマーポリペプチドの大規模生産を可能にする微生物または宿主細胞は、以下の組み合わせを含む:1)大きな(>75kDa)ポリペプチドを産生する能力、2)細胞の外にポリペプチドを分泌して高価な下流の細胞内精製を回避する能力、3)大規模での汚染物質(例えば、ウイルスおよび細菌汚染)に対する耐性、および4)生物を増殖させ処理するための既存のノウハウが大規模(1~2000m3)バイオリアクターである。
【0069】
様々な宿主生物が、ブロックコポリマーポリペプチド発現系を含むように改変/形質転換され得る。組換えシルクポリペプチドの発現について好ましい生物としては、酵母、真菌、およびグラム陽性細菌が挙げられる。ある態様において、宿主生物は、アークスラ・アデニニヴォランス(Arxula adeninivorans)、アスペルギルス・アクレアータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メタノリカス(Bacillus methanolicus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、カンジダ・ボイディニー(Candida boidinii)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・マーキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliopthora thermophila)、ニューロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)、オガタエア・ポリモルファ(Ogataea polymorpha)、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)、ペニシリウム・カネセンス(Penicillium canescens)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・エメルソニイ(Penicillium emersonii)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・グリセオロセウム(Penicillium griseoroseum)、ペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア(コマガテラ)パストリス、ピキア・ポリモルファ(Pichia polymorpha)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、またはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。
【0070】
好ましい局面において、方法は、バイオマスを抽出する必要のない容易な回収のための直接産物分泌についての宿主細胞を培養することを提供する。いくつかの態様において、ブロックコポリマーポリペプチドは、収集および処理のために培地へ直接分泌される。
【0071】
ポリペプチド精製
組換え原核生物または真核生物システムにおける遺伝子発現によって産生されたクモシルク配列に基づく組換えブロックコポリマーポリペプチドは、当技術分野において公知の方法に従って精製され得る。好ましい態様において、市販の発現/分泌システムを使用することができ、それによって、組換えポリペプチドが発現され、その後、宿主細胞から分泌され、周囲の培地から容易に精製される。発現/分泌ベクターが使用されない場合、代替アプローチは、ポリペプチドが発現された原核または真核細胞に由来する細胞溶解物(細胞完全性の破壊後の細胞の残骸)から組換えブロックコポリマーポリペプチドを精製することを伴う。そのような細胞溶解物の作製方法は当業者に公知である。いくつかの態様において、組換えブロックコポリマーポリペプチドは、細胞培養上清から単離される。
【0072】
組換えブロックコポリマーポリペプチドは、アフィニティー分離によって、例えば、組換えポリペプチドへ特異的に結合する抗体との免疫学的相互作用、またはN末端もしくC末端にて6~8個のヒスチジン残基でタグ化された組換えポリペプチドの単離のためのニッケルカラムによって、精製してもよい。代替のタグは、FLAGエピトープまたは血球凝集素エピトープを含み得る。そのような方法は当業者によって一般的に使用されている。
【0073】
加えて、本発明の方法は、発現されたブロックコポリマーポリペプチドを含有する細胞培養上清を5~60%飽和、好ましくは10~40%飽和の硫酸アンモニウムへ曝露することを含む、精製方法を好ましくは含み得る。
【0074】
繊維を作製するための紡糸
いくつかの態様において、当技術分野において公知のプロセスの要素を用いて、本発明のブロックコポリマーポリペプチドの溶液を繊維へ紡糸する。これらのプロセスとしては、例えば、湿式紡糸、乾湿式紡糸、および乾式紡糸が挙げられる。好ましい湿式紡糸態様において、フィラメントが液体凝固浴へオリフィスを通って押し出される。一態様において、フィラメントは、凝固浴と接触する前にエアギャップを通って押し出され得る。乾湿式紡糸法において、紡糸液は、凝固浴に入る前に、不活性非凝固性流体、例えば空気において、細められ引き伸ばされる。適切な凝固流体は、湿式紡糸法において使用されるものと同じである。
【0075】
湿式紡糸のための好ましい凝固浴は、0~90℃、より好ましくは20~60℃の温度で維持され、好ましくは約60%、70%、80%、90%、またはさらには100%アルコール、好ましくはイソプロパノール、エタノール、またはメタノールである。好ましい態様において、凝固浴は、85:15体積%のメタノール:水である。代替の態様において、凝固浴は、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または他のタンパク質沈殿塩を20~60℃の温度で含む。ある種の凝固剤浴が、ドープ溶液の組成および所望の繊維特性に依存して好ましい場合がある。例えば、塩ベースの凝固剤浴は、水性ドープ溶液について好ましい。例えば、メタノールは、円形断面繊維を製造するために好ましい。凝固浴中の滞留時間は、ほぼ瞬間から数時間までの範囲であり得、好ましい滞留時間は1分間以下持続し、より好ましい滞留時間は約20~30秒間持続する。滞留時間は、押し出された繊維またはフィラメントの形状に依存し得る。ある態様において、押し出されたフィラメントまたは繊維は、異なるまたは同じ組成の2つ以上の凝固浴を通過させる。任意で、フィラメントまたは繊維はまた、残留溶媒および/または凝固剤を除去するために1つまたは複数のリンス浴を通過させる。好ましくは最終の水浴まで、塩またはアルコール濃度を低下させるリンス浴が、塩またはアルコール浴に好ましくは続く。
【0076】
押し出し後、フィラメントまたは繊維は延伸され得る。延伸は、フィラメントのコンシステンシー、軸配向および靭性を改善し得る。延伸は、凝固浴の組成物によって増強され得る。延伸はまた、水、グリセロールまたは塩溶液などの可塑剤を含有する延伸浴において行われ得る。延伸はまた、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)またはホルムアルデヒドなどの架橋剤を含有する延伸浴において行われ得る。延伸は、繊維特性を変えるために25~100℃の温度で、好ましくは60℃で行われ得る。連続処理において一般的であるように、延伸は、前述した凝固、洗浄、可塑化、および/または架橋手順の間、同時に(simulationeously)行われ得る。延伸率は、処理されるフィラメントに依存する。一態様において、延伸率は、好ましくは、凝固浴からの繰糸の率の約5倍である。
【0077】
本発明のある態様において、フィラメントは、押し出し後または延伸後にスプール上に巻き取られる。巻き取り速度は一般に1~500 m/分、好ましくは10~50 m/分である。
【0078】
他の態様において、繊維が容易に処理されるために、フィラメントは、巻き取り前に潤滑剤またはフィニッシュでコーティングされ得る。適切な潤滑剤またはフィニッシュは、ポリマーまたはワックスフィニッシュ、例えば、これらに限定されないが、鉱油、脂肪酸、ステアリン酸イソブチル、牛脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン、ジメチルポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびプロピレンオキシドコポリマーであり得る。
【0079】
本発明の方法によって製造される紡糸繊維は、原材料(即ち、ドープ溶液)の初期特性、ならびに所望の最終製品(その製品が、医学適用における細胞増殖の助けとなる柔らかく、粘質で、柔軟なマトリックスであるか、または釣り糸もしくはケーブルなどの耐荷重性弾性繊維であるかどうかに関わらない)を達成するために実施される本方法の可変の局面の調整および選択に依存して、様々な物理的特性および特徴を有し得る。本発明の方法によって紡糸されたフィラメントの引張強度は、一般に0.2 g/デニール(またはg/(g/9000 m))~3 g/デニールの範囲であり、耐荷重使用に意図されるフィラメントは、好ましくは、少なくとも2 g/デニールの引張強度を示す。ある態様において、繊維は0.2~0.6デニールの繊度を有する。弾性および破断点伸びなどの特性は、紡糸繊維の意図される使用に依存して異なるが、弾性は好ましくは5%以上であり、弾性が重要である使用についての、例えば、縫合糸またはレースなどの「結ぶ」ことができる製品についての弾性は、好ましくは10%以上である。紡糸繊維の保水性は、好ましくは、天然シルク繊維のそれ、即ち10%に近い。紡糸繊維の直径は、適用に依存して、広範囲にわたってよく、好ましい繊維直径は、5、10、20、30、40、50、60ミクロンの範囲であるが、実質的により厚い繊維が、特に産業適用(例えば、ケーブル)について、製造され得る。紡糸繊維の断面特徴は様々であってよく、例えば、好ましい紡糸繊維は、円形断面、楕円形、星形断面、および別のコア/シース断面を特徴とする紡糸繊維、ならびに中空繊維を含む。
【実施例】
【0080】
実施例1
シルク配列の獲得
以下の用語を用いてNCBIのヌクレオチドデータベースをサーチし、クモシルクを同定することによって、シルク配列および部分配列を得た:MaSp、TuSp、CySp、MiSp、AcSp、Flag、大瓶状腺、小瓶状腺、鞭状腺、ブドウ状腺、管状腺、円柱状腺、スピドロイン、およびクモフィブロイン。得られたヌクレオチド配列をアミノ酸配列へ翻訳し、次いで精選し(curate)、繰り返される配列を除去した。シルクのタイプに依存して、200~500アミノ酸長未満であった配列を除去した。上記のサーチからのシルク配列をブロック(例えば、反復配列)および非反復領域へ区分化した。
【0081】
反復ポリペプチド配列(リピート(R)配列)を各シルク配列から選択し、これらをSEQ ID NO: 1077~1393として列挙する。配列がF、Y、W、C、H、N、M、またはDアミノ酸で終結しないようにするために、例えば、C末端へセリンを付加することによって、R配列の一部を変更した。これは下述のベクターシステムへの組み込みを可能にする。本発明者らはまた、別のブロックからの相同配列からのセグメントの組み込みによって不完全なブロックを変更した。SEQ ID NO: 1077~1393のいくつかの配列について、ブロックまたはマクロリピートの順序を、NCBIデータベースにおいて見られる配列から変更し、擬似リピートドメインを作製した。
【0082】
非反復N末端ドメイン配列(N配列)およびC末端ドメイン配列(C配列)も各シルク配列から選択した(SEQ ID NO: 932~1076)。リーディングシグナル配列の除去によって、既に存在しない場合は、N末端グリシン残基の付加によって、N末端ドメイン配列を変更した。
【0083】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。
【0084】
実施例2
ヌクレオチド配列へのシルクポリペプチド配列の逆翻訳
実施例1に記載されたR、N、およびCアミノ酸配列をヌクレオチド配列へ逆翻訳した。逆翻訳を行うために、各位置で所望のアミノ酸をコードするコドンのバイアスランダム選択へのピキア(コマガテラ)パストリスコドン使用を用いることによって、10,000個の候補配列を作製した。次いで、選択制限部位(BsaI、BbsI、BtgZI、AscI、SbfI)を各配列から除去し;部位を除去することができなかった場合は、配列を廃棄した。次いで、エントロピー、最長の繰り返されるサブ配列、および繰り返される15量体の数を、各配列についてそれぞれ決定した。
【0085】
10,000個の各セットから合成に使用するための最適な配列を選ぶために、以下の基準を連続的に適用した:最長の繰り返されるサブ配列の最低の25%を有する配列を維持し、配列エントロピーの最高の10%を有する配列を維持し、繰り返される15量体の最低の数を有する配列を使用する。
【0086】
実施例3
選択されたN、C、またはR配列からのシルクポリペプチドのスクリーニング
実施例1および2からのヌクレオチド配列に、クローニングを可能にするために、合成の過程で、以下の配列を隣接させた:
ここで、「シルク」は実施例2の教示に従って選択されたポリヌクレオチド配列である。
【0087】
得られたDNAをBbsIで消化し、BtgZIで消化しかつウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM618 (SEQ ID NO:1399)または発現ベクターRM652 (SEQ ID NO:1400)のいずれかへライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離およびDNA増幅のために大腸菌へ形質転換した。
【0088】
ピキア(コマガテラ)パストリス
R、N、またはC配列を含有する発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いて、ピキア(コマガテラ)パストリス(株RMs71;これは、野生型ゲノム(NRRLY 11430)の断片での形質転換によって野生型へ戻されたHIS4遺伝子における変異、およびヒスチジンを欠いている所定の寒天培地プレートにおける選択を伴う株GS115(NRRL Y15851)である)へ形質転換した。発現ベクターは、ターゲティング領域(HIS4)、ドミナント耐性マーカー(nat-ノウルセオスリシン(nourseothricin)に対する耐性を付与する)、プロモーター(pGAP)、分泌シグナル(α接合因子リーダーおよびプロ配列)、ならびにターミネーター(pAOX1 pAシグナル)からなった。
【0089】
形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのYPDへ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。得られたデータは、上清中の検出不可能なポリペプチドレベルから、比較的高い力価を示すウエスタンブロット上の強いシグナルまでの範囲に及ぶ、様々な発現および分泌表現型を実証している。
【0090】
成功したポリペプチド発現および分泌をウエスタンブロットによって判断した。各ウエスタンレーンを、1:バンド無し、2:適度なバンド、または3:強いバンドとしてスコアリングした。各クローンについての2つのスコアのうちより高いものを記録した。構築物番号が付けられた代表的なウエスタンブロットを
図4および
図5に示し、代表的なクローンについての付加的なウエスタンブロットを
図14に示す。試験した全てのR、N、およびC配列の完全なリストをウエスタンブロット結果と共に表2に示す。各腺カテゴリーおよび全てのドメインタイプを包含する、多数の種からのシルクポリペプチドが、成功裏に発現された。
【0091】
【0092】
実施例4
アセンブリベクターへの挿入のためのN、R、およびC配列の増幅
N、R、およびC配列についてのDNAを発現ベクターからPCR増幅し、AscI/SbfI制限部位を用いてアセンブリベクターへライゲートした。
【0093】
フォワードプライマーは、以下の配列からなった:
+ N、R、またはC配列の最初の19 bp。
【0094】
リバースプライマーは、N、R、またはC配列の最後の17 bp +
からなった。
【0095】
例えば、以下の配列:
について、使用したプライマーは以下であった:
フォワード:
リバース:
。
【0096】
PCR反応溶液は、12.5μL 2x KOD Extreme Buffer、0.25μl KOD Extreme Hot Start Polymerase、0.5μl 10μM Fwdオリゴ、0.5μl 10μM Revオリゴ、5 ngテンプレートDNA(発現ベクター)、0.5μlの10 mM dNTP、および最終体積25μlまで添加されたddH2Oからなった。次いで、反応物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルした。
1.94℃で5分間変性させる
2.94℃で30秒間変性させる
3.55℃で30秒間アニール処理する
4.72℃で30秒間伸長させる
5.29回の付加的なサイクルについて工程2~4を繰り返す
6.72℃で5分間最終伸長
【0097】
得られたPCR産物を制限酵素AscIおよびSbfIで消化し、アセンブリベクター(実施例5中の説明を参照のこと)、
のうちの1つへライゲートし、これらは、ルーチンな方法を用いて不要な挿入物を放出するために同じ酵素で消化されていた。
【0098】
実施例5
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ブロックからのシルクの合成(RM439、「18B」)
実施例2に記載されるアルゴリズムを用いて、アルギオペ・ブルエンニチMaSp2からの6つのリピートブロックのセット(またはブロックコポリマー)を選択し、各々が3つのブロックからなる2つのR配列へ分割した。次いで、2つの3-ブロックR配列を、以下のように短いオリゴヌクレオチドから合成した。
【0099】
RM409配列の合成:
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ブロック配列を、実施例3において用いたものとは異なる方法を用いて作製した。表3中のオリゴRM2919~RM2942 (SEQ ID NO: 1468~1491)を、各オリゴを等しい量で有する単一の混合物へ合わせた(合計100μM)。1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、1μl 100μMプールされたオリゴ、1μl NEB T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10,000 U/ml)、および7μl ddH2Oを合わせ、37℃で1時間インキュベートすることによって調製されたリン酸化反応物において、これらのオリゴをリン酸化した。次いで、4μlのリン酸化反応物と16 μlのddH2Oとを混合し、混合物を95℃へ5分間加熱し、次いで混合物を0.1℃/秒の速度で25℃へ冷却することによって、これらのオリゴをアニールした。次いで、4μlのアニール処理オリゴと、5 nmolベクター骨格(AscIおよびSbfIで消化された、RM396 [SEQ ID NO: 1405])、1μl NEB T4 DNAリガーゼ(400,000 U/ml)、1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、および10 μlへのddH2Oとを合わせることによって、これらのオリゴをベクターへ一緒にライゲートした。ライゲーション溶液を室温で30分間インキュベートした。ライゲーション反応物の全体を、公知の技術に従ってクローン選択、プラスミド単離、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0100】
得られたオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 930の5′→3′ヌクレオチド配列を有し、RM409と特定する。
【0101】
(表3)RM409シルクリピートドメインを作製するためのオリゴ配列(クローニングのためのフランキング配列を有する) (SEQ ID NO: 930)
【0102】
RM410配列の合成:
表4中のオリゴRM2999~RM3014 (SEQ ID NO: 1492~1507)を、各オリゴ100μMの濃度で単一の混合物へ合わせた。1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、1μl 100μMプールされたオリゴ、1μl NEB T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10,000 U/ml)、および7μl ddH2Oを合わせ、37℃で1時間インキュベートすることによって調製されたリン酸化反応物において、これらのオリゴをリン酸化した。次いで、4μlのリン酸化反応物と16 μlのddH2Oとを混合し、混合物を95℃へ5分間加熱し、次いで混合物を0.1℃/秒の速度で25℃へ冷却することによって、これらのオリゴをアニールした。次いで、4 μlのアニール処理オリゴと、5 nmolベクター骨格(AscIおよびSbfIで消化された、RM400 [SEQ ID NO: 1406])、1μl NEB T4 DNAリガーゼ(400,000 U/ml)、1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、および10μlへのddH2Oとを合わせることによって、これらのオリゴをベクターへ一緒にライゲートした。ライゲーション溶液を室温で30分間インキュベートした。ライゲーション反応物の全体を、公知の技術に従ってクローン選択、プラスミド単離、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0103】
得られたオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 931の5′→3′ヌクレオチド配列を有し、RM410と特定する。
【0104】
(表4)RM410シルクリピートドメインを作製するためのオリゴ配列(クローニングのためのフランキング配列を有する) (SEQ ID NO: 931)
【0105】
アルギオペ・ブルエンニチMasp2、「18B」のアセンブリおよびアッセイ
上述の方法に従って合成されたRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)オリゴヌクレオチド配列を、
図6に示されるダイヤグラムに従ってアセンブルし、RM439シルクヌクレオチド配列(例えば「18B」)を作製した。
【0106】
アセンブリベクター中のRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)を、
図7および
図8に示されるダイヤグラムに従って消化およびライゲートした。シルクN、R、およびCドメイン、ならびにα接合因子プレ-プロ配列および3X FLAGタグを含む付加的なエレメントを、シュード-スカーレス2アンチバイオティック(pseudo-scarless 2 antibiotic)(2ab)法(Leguia, M., et al., 2ab assembly: a methodology for automatable, high-throughput assembly of standard biological parts, J. Biol. Eng., 7:1 (2013); およびKodumal, S.J., et al., Total synthesis of long DNA sequences: synthesis of a contiguous 32-kb polyketide synthase gene cluster, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 101:44, pg. 15573-15578 (2004))を用いてアセンブルした。
【0107】
2abアセンブリは、2つの選択可能なマーカーのアイデンティティーおよび相対的位置以外は同一である6つのアセンブリベクターの使用に依存する。各ベクターは、以下のうちの正確に2つに対して耐性である:クロラムフェニコール(CamR)、カナマイシン(KanR)、およびアンピシリン(AmpR)。耐性遺伝子の順序(相対的位置)は重要であり、従って、DNAアセンブリの目的についてAmpR/KanRはKanR/AmpRとは異なる。6つのアセンブリベクターを表5に示し、これらは各々における2つの耐性マーカーに基づいて命名される(CamRについてC、KanRについてK、およびAmpRについてA)。6つのアセンブリベクターは以下の通りである:
アセンブリベクターを表5に示す。ベクターについての配列はSEQ ID NO: 1399~1410の配列を含む。
【0108】
【0109】
図7は、2つの適合性ベクター、AC (RM398 SEQ ID NO:1404)およびCK (RM401 SEQ ID NO:1407)を用いて行われる単一のアセンブリ反応を示し、一つは、標的複合配列の5′末端に予定される配列を含有し、一つは、標的複合配列の3′末端に予定される。5′配列を有するプラスミドをBbsIで独立して消化し、一方、3′配列を有するプラスミドをBsaIで独立して消化した。
【0110】
酵素の不活性化後、2つの消化されたプラスミドをプールし、ライゲートする。所望の産物はAKベクターに存在し、これは、全てのインプットベクターおよび不要な副産物とは異なる。これは大腸菌への形質転換後の所望の産物についての選択を可能にする。
【0111】
このプロセスの間のクローニング部位のDNA配列を
図8に示す。AGGTとなるようにタイプIIs酵素によって作製される4 bp突出部を選択することによって、DNA断片のアセンブリは、所望のコードされたポリペプチドにおいて傷跡がない接合部を生じさせ、但し、ポリペプチドは、グリシン(GGTによってコードされる)で始まり、Aで終わるコドンで終結する(F、Y、W、C、H、N、M、およびD以外の全て)。
【0112】
それぞれ、KCおよびCAアセンブリベクター中のRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)のアセンブリは、
図6に示されるように、KA中のRM411(SEQ ID NO: 465)を作製した。RM411(SEQ ID NO: 465)配列を、AscIおよびSbfIを用いてACおよびCAへトランスファーした。RM411(SEQ ID NO: 465) KAおよびAC配列を、上述の手順に従って消化およびライゲートし、KC中のRM434(SEQ ID NO: 466)を作製した。最後に、KC中のRM434(SEQ ID NO: 466)を消化し、CA中のRM411(SEQ ID NO: 465)とライゲートし、最終シルクポリペプチドコード配列RM439(SEQ ID NO: 467) (aka,「18B」)を作製した。
【0113】
RM468発現ベクターへの「18B」シルクポリペプチドコード配列(RM439)のトランスファー:
RM468 (SEQ ID NO: 1401)発現ベクターは、α接合因子配列および3X FLAG配列(SEQ ID NO: 1409)を含有する。18Bシルクポリペプチドコード配列RM439 (SEQ ID NO: 467)を、BtgZI制限酵素およびGibson反応キットによってRM468 (SEQ ID NO: 1401)発現ベクターへトランスファーした。RM439ベクターをBtgZIで消化し、シルク配列を含有するポリヌクレオチド断片をゲル電気泳動によって単離した。不要なダミー挿入物を除外して、発現ベクターRM468を、実施例4に記載された条件を用いて、プライマーRM3329およびRM3330を使用するPCRによって増幅した。得られたPCR産物および単離されたシルク断片を、製造業者の説明書に従ってGibson反応キットを用いて合わせた。Gibson反応キットは市販されており(https://www.neb.com/products/e2611-gibson-assembly-master-mix)、米国特許第5,436,149号およびGibson, D.G. et al., Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases, Nat. Methods, 6:5, pg. 343-345 (2009)に記載されている。
【0114】
RM439 (SEQ ID NO: 467)を含有する得られた発現ベクターを、ピキア(コマガテラ)パストリスへ形質転換した。得られた細胞のクローンを以下の条件に従って培養した:出発供給材料としてのグリセロール50g/Lと共に、[http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/pichiaferm_prot.pdf]に記載のものと類似した、最小基本塩培地において、培養物を増殖させた。1 VVMの空気流および2000 rpm撹拌を伴う、30Cに制御された撹拌発酵容器において、増殖を行った。水酸化アンモニウムのオンデマンド添加によってpHを3に制御した。溶存酸素の急増に基づいて必要に応じて追加のグリセロールを添加した。溶存酸素が最大値の15%に達するまで増殖を継続させ、その時点で、典型的に200~300 ODの細胞密度で、培養物を採取した。
【0115】
発酵槽からの培養液を遠心分離によって脱細胞化した。ピキア(コマガテラ)パストリス培養物からの上清を収集した。限外濾過を用いて上清から低分子量成分を除去し、ブロックコポリマーポリペプチドよりも小さな粒子を除去した。次いで、濾過された培養上清を50xまで濃縮した。上清中のポリペプチドを沈殿させ、ウエスタンブロットによって分析した。産物を
図9中のウエスタンブロットに示す。処理された18Bの予想される分子量は82 kDaである。
図9中のウエスタンブロットにおいて観察された産物は、約120 kDaのより高いMWを示した。この矛盾の原因は不明であるが、他のシルクポリペプチドは、予想される分子量よりも高い分子量で出現することが観察された。
【0116】
18Bブロックコポリマーポリペプチドを精製し、繊維紡糸液へ処理した。精製および乾燥されたポリペプチドを紡糸溶媒に溶解することによって、繊維紡糸液を調製した。ポリペプチドを選択した溶媒中に20~30重量%で溶解する。次いで、90体積%メタノール/10体積%水を含む凝固浴へ150ミクロン直径オリフィスを通って繊維紡糸液を押し出した。繊維を凝固から取り出し、それらの長さを1~5倍延伸し、続いて乾燥させた。得られた繊維を
図10に示す。
【0117】
上述のように分泌され、精製され、溶解され、そして繊維にされた18Bブロックコポリマーポリペプチドについて機械的試験を行った。一般的な方法を用いて、特注の引張試験機において繊維の機械的特性を試験した。試験サンプルをゲージ長5.75mmで搭載し、1%の歪み速度で試験した。結果として生じた力を、顕微鏡検査によって測定されるような繊維直径に対して標準化した。応力対歪みの結果を
図11に示し、ここで、各応力-歪み曲線は、単一のバッチからの、単一の紡糸実験からの繊維からのリプリケート測定を示す。
【0118】
実施例6
4XリピートR配列のアセンブリおよびアッセイ
十分に発現および分泌されたSEQ ID NO: 1~1398からの選択されたRドメインを、
図12に示されるアセンブリスキームを用いて4xリピートドメインへ連結した。実施例4に説明され
図7および8に示されるように、連結を行った。R配列のこのライゲーションからの選択された配列を表6に示す。これらのシルク構築物についての配列は、SEQ ID NO: 1411~1468の完全長シルク構築物配列を含む。4つのリピート配列、α接合因子、および3X FLAGドメインを含む、得られた産物を、所望のシルク配列を放出するためにAscIおよびSbfIで消化し、そして、不要なダミー挿入物を放出するためにAscIおよびSbfIで消化されていた発現ベクターRM652 (SEQ ID NO: 1400)へライゲートした。大腸菌からのクローン単離後、次いで、ベクターをピキア・パストリスへ形質転換した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのBMGYへ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した(
図13)。4x同一リピート配列で形質転換された28個の構築物のうち、大部分(18/28)が、ウエスタンブロット上に実質的なシグナルを有する少なくとも1つのクローンを有し、1つのみがシグナルを全く示さなかった。各々2つの別個のリピート配列の2つのリピートから構成された2つの構築物のうち、一方は、強いウエスタンブロットシグナルを示したが、他方は適度なウエスタンシグナルを示した。これは、より小さな十分に発現されるポリヌクレオチドからより大きなブロックコポリマー発現性ポリヌクレオチドをアセンブルすることが、一般に、機能的に発現されるブロックコポリマーポリペプチドをもたらすことを確認する。縞入り(streakiness)、複数のバンド、およびクローン間バリエーションがウエスタン上において明らかである。これらのバリエーションの具体的な原因は特定されていないが、それらは、ポリペプチド分解、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)、およびゲノム組み込み後のクローン変異を含む、典型的に観察される現象と概ね一致している。修飾および分解されたポリペプチド産物は、意図される使用に応じて、繊維の有用性に悪影響を与えることなく、繊維へ組み入れられ得る。
【0119】
(表6)α接合因子、4Xリピートドメイン、および3X FLAGドメインを有する完全長ブロックコポリマーシルク構築物
【0120】
実施例7
バチルス・サブチリスからの18Bの発現
大腸菌/B.サブチリスシャトルおよび発現プラスミドを先ず構築する。18Bをコードするポリヌクレオチドを、Gibson反応を用いて、プラスミドpBE-S (Takara Bio Inc.)へトランスファーする。PCR反応においてプライマー
を用いて、プラスミドpBE-S (SEQ ID NO: 1512)を増幅する。反応混合物は、1μlの10μM BES-F、1μlの10μM BES-R、0.5μgのpBE-S DNA(1μl体積)、22μlの脱イオン化H2O、および25μlのPhusion High-Fidelity PCR Master Mix (NEBカタログM0531S)からなる。混合物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルする。
1)95℃で5分間変性させる
2)95℃で30秒間変性させる
3)55℃で30秒間アニール処理する
4)72℃で6分間伸長させる
5)29回の付加的なサイクルについて工程2~4を繰り返す
6)72℃で5分間最終伸長を行う
【0121】
製造業者の説明書に従ってZymoclean Gel DNA Recovery Kit (Zymo Research)を用いて、産物をゲル電気泳動へ供し、およそ6000 bpの産物を単離し、次いで抽出する。18Bをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素BtgZIを用いてKAアセンブリベクター中の18Bの消化によって単離し、続いて、ゲル電気泳動、断片単離、およびゲル抽出を行う。製造業者の説明書に従ってGibson Assembly Master Mix (New England Biolabs)を用いて、pBE-Sおよび18B断片を一緒に連結し、得られたプラスミドを、その後のクローン単離、DNA増幅、およびDNA精製についての標準技術を用いて大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミド、pBE-S-18B (SEQ ID NO: 1513)を、次いで、製造業者の説明書に従って様々なシグナルペプチドの挿入によって多様化する(「SP DNA 混合物」)。異なる分泌シグナルペプチドを含有するpBE-S-18Bプラスミドの混合物を、次いで、製造業者の説明書に従ってB.サブチリス株RIK1285へ形質転換する。96個の得られたコロニーをTY培地(10 g/Lトリプトン、5 g/L酵母抽出物、5 g/L NaCl)中で48時間インキュベートし、この時点で、細胞をペレット化し、18Bポリペプチドの発現について上清をウエスタンブロットによって分析する。
【0122】
実施例8
クラミドモナス・レインハルドチ(Chlamydomonas reinhardtii)からの18Bの発現
切除可能なC.レインハルドチ発現カセットpChlamy (SEQ ID NO: 1514)を有する大腸菌ベクターを、商業的なDNA合成および標準技術を用いて先ず構築する。カセットは、Rasala, B.A., Robust expression and secretion of Xylanase1 in Chlamydomonas reinhardtii by fusion to a selection gene and processing with the FMDV 2A peptide, PLoS One, 7:8 (2012)に詳細に記載されている。18B、3xFLAGタグ、および終止コドンをコードするポリペプチドを、C.レインハルドチのコドン選択(例えば、http://www.kazusa.or.jp/codon/cgi-bin/showcodon.cgi?species=3055で入手可能)を用いて逆翻訳し、商業的な合成を用いて合成する。合成の過程で、隣接するBbsI部位を含め、18B-3xFLAGポリヌクレオチドの放出を可能にする。5'-ATGTTTTAA-3'を除くプラスミド配列全体を含みかつさらに各末端に18B-3xFLAGコード配列に対する40 bpの相同性を含む線形断片を生じるように設計されたプライマーを用いたpChlamyプラスミドのPCR増幅から得られるポリヌクレオチドを、Gibson反応を用いてBbsIでの消化によって遊離した18B-3xFLAGポリヌクレオチドと連結し、クローン選択、DNA増幅、およびプラスミド単離のために大腸菌へ形質転換する。得られたプラスミドをBsaIで消化し、18B発現カセットを放出させ、これをゲル精製によって単離する。消化された断片を株cc3395へエレクトロポレートし、これを次いで15μg/mlゼオシンで選択する。いくつかのクローンを液体培養で増殖させ、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清をタンパク質発現についてウエスタンブロットによって分析する。
【0123】
実施例9
付加的なシルクおよびシルク様配列
「スピドロイン」「カイコガ属(bombyx)」および「ゴケグモ属(latrodectus)」を除外しながら、用語「シルク」についてサーチすることによって、付加的なシルクおよびシルク様配列ならびに部分配列をNCBIの配列データベースから得た。得られたヌクレオチド配列のサブセットをアミノ酸配列へ翻訳し、次いで精選し、繰り返される配列を除去した。短い配列、一般に200~500アミノ酸長未満、を除去した。さらに、構造エレメントを形成することが公知のポリペプチドを選択するための一次配列を、公共データベースから得た。実施例1に記載された配列に加えて、そのように得られたアミノ酸配列を使用し、相同性によって付加的なシルクおよびシルク様配列をサーチした。得られたシルクおよびシルク様配列を精選し、次いで反復および非反復領域へ区分化した。
【0124】
反復ポリペプチド配列(リピート(R)配列)を各シルク配列から選択し、これらは、SEQ ID NO: 2157~2690を含む(SEQ ID NO: 2157~2334はヌクレオチド配列であり、SEQ ID NO: 2335~2512はクローニングのためのフランキング配列を有するヌクレオチド配列であり、SEQ ID NO: 2513~2690はアミノ酸配列である)。配列がF、Y、W、C、H、N、M、またはDアミノ酸で終結しないようにするために、例えば、C末端へセリンを付加することによって、R配列の一部を変更した。これは上述のベクターシステムへの組み込みを可能にする。不完全なブロックはまた、別のブロックからの相同配列からのセグメントの組み込みによって変更されていてもよい。
【0125】
非反復N末端ドメイン配列(N配列)およびC末端ドメイン配列(C配列)もいくつかのシルクおよびシルク様配列から選択した(SEQ ID NO: 2157~2690)。リーディングシグナル配列の除去によって、既に存在しない場合は、N末端グリシン残基の付加によって、N末端ドメイン配列を変更した。ある場合には、Nおよび/またはCドメインを、さらなるプロセッシングの前にR配列から分離しなかった。R、N、およびCアミノ酸配列を、実施例2に記載されたようにヌクレオチド配列へ逆翻訳した。得られたヌクレオチド配列に、クローニングを可能にするために合成の過程で、以下の配列に隣接させた:
ここで、「シルク」は上記の教示に従って選択されたポリヌクレオチド配列である。
【0126】
得られた線形DNAをBbsIで消化し、ダミー挿入物を放出するためにBsmBIで消化したベクターRM747 (SEQ ID NO: 2696)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミドをBsaIおよびBbsIで消化し、シルクまたはシルク様ポリペプチドをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。BsmBIで消化し、ウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM1007 (SEQ ID NO: 2707)へ、断片を続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0127】
R、N、および/またはC配列を含有する発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換した。発現ベクターは、ターゲティング領域およびプロモーター(pGAP)、ドミナント耐性マーカー(nat-ノウルセオスリシンに対する耐性を付与する)、分泌シグナル(α接合因子リーダーおよびプロ配列)、C末端3xFLAGエピトープ、ならびにターミネーター(pAOX1 pAシグナル)からなった。
【0128】
形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(Yeast Extract Peptone Dextrose Medium)(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(Buffered Glycerol-complex Medium)(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。
【0129】
成功したポリペプチド発現および分泌をウエスタンブロットによって判断した。各ウエスタンレーンを、1:バンド無し、2:適度なバンド、または3:強いバンドとしてスコアリングした。各クローンについての2つのスコアのうちより高いものを記録した。代表的なウエスタンブロットデータを
図14に示す。試験した全てのR、N、およびC配列の完全なリストをウエスタンブロット結果と共に表7に示す。多様な種および多様なポリペプチド構造を包含する、多数の種からのシルクおよびシルク様ブロックコポリマーポリペプチドが、成功裏に発現された。
【0130】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。
【0131】
【0132】
実施例10
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリペプチドの円順列変異体
実施例5において特定されたアルギオペ・ブルエンニチMaSp2由来の6つのリピートブロック(ブロックコポリマー)を、およそ90度円順列にし(6つのブロックの末端から最初へ約1.5ブロックを移動させることによる)、次いで、各々、約3つのブロックからなる2つのR配列、RM2398 (SEQ ID NO: 2708)およびRM2399 (SEQ ID NO: 2709)へ分割した。これらの3ブロック配列を続いて使用して、オリジナルの6ブロック配列から約90および約270度回転された6ブロック配列を作製し、既存の3ブロック配列(RM409およびRM410)を使用して、約180度回転された6ブロック配列を作製した。次いで、各6ブロック配列を18ブロック配列へアセンブルした。アセンブリプロセスおよび回転された配列を
図15に示す。
【0133】
RM2398およびRM2399を作製するために、いずれかのプライマー
を用いるPCRによって、プラスミドRM439 (SEQ ID NO: 467)を増幅した。各反応物は、12.5μL 2x KOD Extreme Buffer、0.25μl KOD Extreme Hot Start Polymerase、0.5μl 10μM Fwdオリゴ、0.5μl 10μM Revオリゴ、5 ngテンプレートDNA (RM439)、0.5μlの10 mM dNTP、および最終体積25μlまで添加されたddH2Oからなった。次いで、各反応物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルした:
1.94℃で5分間変性させる
2.94℃で30秒間変性させる
3.55℃で30秒間アニール処理する
4.72℃で60秒間伸長させる
5.29回の付加的なサイクルについて工程2~4を繰り返す
6.72℃で5分間最終伸長
【0134】
得られた線形DNAをBsaIで消化し、BsmBIで消化したアセンブリベクターRM2086 (SEQ ID NO: 2693)およびRM2089 (SEQ ID NO: 2695)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。実施例5に記載された2abアセンブリプロセス(BtgZI切断部位をシルク配列からさらに遠くへシフトするためのアセンブリベクターに対する軽微な修正を伴う)を用いて、3ブロック断片を2つの異なる6ブロック断片へアセンブルし、一つは、RM2398の後に(proceeding)RM2399 (RM2452 - SEQ ID NO: 2710を製造)を有し、一つは、RM2399の後にRM2398 (RM2454 - SEQ ID NO: 2712を製造)を有した。加えて、RM409 (SEQ ID NO 463)およびRM410 (SEQ ID NO 464)を、BbsIおよびBsaIでアセンブリベクターRM396から消化し、BbsIおよびBsaIで消化しウシ腸アルカリホスファターゼで処理したベクターRM2105 (SEQ ID NO: 2691)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミドを続いてAscIおよびSbfIで消化し、シルクをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。断片を、AscIおよびSbfIで消化したアセンブリベクターRM2086およびRM2089へ続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。2abアセンブリを用いて、RM410の後にRM409からなる6-ブロック断片を作製した(RM2456 - SEQ ID NO: 2711を製造)。RM2452、RM2454、およびRM2456を、AscIおよびSbfIでアセンブリベクターRM2081(SEQ ID NO: 2692)から消化し、AscIおよびSbfIで消化されていたアセンブリベクターRM2088およびRM2089へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。2abアセンブリを用いて、18ブロック配列を3つの6ブロック断片の各々から作製し、配列RM2462 (SEQ ID NO: 2713)、RM2464 (SEQ ID NO: 2715)、およびRM2466 (SEQ ID NO: 2714)が得られた。次いで、6ブロック配列および18ブロック配列の各々を、BsaIおよびBbsIを用いてアセンブリベクターから消化し、シルクをコードする断片をゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。BsmBIで消化しウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM1007 (SEQ ID NO: 2707)へ、断片を続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。。得られたプラスミドをBsaIで線形化し、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換するために使用した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ポリペプチドの代表的なクローンについてのウエスタンブロットデータを
図16に示す。円順列ポリペプチドの各々の発現および分泌は、その未回転相当物と匹敵するようである。これは、開始位置の任意の番号が、それらのブロックから構成されるポリペプチドの発現または分泌に対して影響を与えることなく、繰り返されるシルクもしくはシルク様ポリペプチド中のブロックを特定するために選択され得ることを示唆している。
【0135】
実施例11
コピー数およびプロモーター強度の制御によるアルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリヌクレオチドの発現の変化
外因的に導入されたポリヌクレオチドの転写の程度は、産生されるポリペプチドの量に影響を与えることが公知である(例えば、Liu, H., et al., Direct evaluation of the effect of gene dosage on secretion of protein from yeast Pichia pastoris by expressing EGFP, J. Microbiol. Biotechnol., 24:2, pg. 144-151 (2014); およびHohenblum, H., et al., Effects of gene dosage, promoters, and substrates on unfolded protein stress of recombinant Pichia pastoris, Biotechnol. Bioeng., 85:4, pg. 367-375 (2004)を参照のこと)。ピキア(コマガテラ)パストリスにおいて、転写の程度は、宿主ゲノムへ組み込まれるポリヌクレオチドのコピー数を増加させることによって、または転写を駆動するための適切なプロモーターを選択することによって、一般的に制御される(例えば、Hartner, F.S., et al., Promoter library designed for fine-tuned gene expression in Pichia pastoris, Nucleic Acids Res., 36:12 (2008); Zhang, A.L., et al., Recent advances on the GAP promoter derived expression system of Pichia pastoris, Mol. Biol. Rep., 36:6, pg. 1611-1619 (2009); Ruth, C., et al., Variable production windows for porcine trypsinogen employing synthetic inducible promoter variants in Pichia pastoris, Syst. Synth. Biol., 4:3, pg. 181-191 (2010); Stadlmayr, G., et al., Identification and characterisation of novel Pichia pastoris promoters for heterologous protein production, J. Biotechnol., 150:4, pg. 519-529 (2010)を参照のこと)。異種タンパク質発現のために用いられるプロモーターのセットへ比較的最近追加されたのは、pGCW14(Liang, S., Identification and characterization of P GCW14: a novel, strong constitutive promoter of Pichia pastoris, Biotechnol. Lett. 35:11, pg. 1865-1871 (2013))であり、これは、pGAPよりも5~10倍強いことが報告されている。シルクおよびシルク様ポリペプチドの発現および分泌がコピー数によっても影響され得ることを確認するために、18B(実施例5に記載される)の発現を駆動するpGAPを1、3、または4コピー含有する株、および18Bの発現を駆動するpGCW14を1、2、3、または4コピー含有する株を作製し、試験した。株を表8に記載する。
【0136】
(表8)複数のポリヌクレオチド配列または異なるプロモーターを有する株
【0137】
α接合因子 + 18B + 3xFLAGタグをコードするポリヌクレオチド配列を、制限酵素AscIおよびSbfIを用いて実施例5に記載されるプラスミド(RM439, SEQ ID NO: 467がクローニングされている、RM468, SEQ ID NO: 1401)から消化した。α接合因子 + 18B + 3xFLAGタグをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。得られた線形DNAを、AscIおよびSbfIで消化した発現ベクターRM630 (SEQ ID NO: 2697)、RM631 (SEQ ID NO: 2698)、RM632 (SEQ ID NO: 2699)、RM633 (SEQ ID NO: 2700)、RM812 (SEQ ID N: 2701)、RM837 (SEQ ID NO: 2702)、RM814 (SEQ ID N: 2703)、およびRM815 (SEQ ID NO: 2704)へ、ライゲートした。発現ベクターの重要な特質を表9に要約し、配列はSEQ ID NO: 2691~2707を含む。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0138】
【0139】
発現ベクターRM630中の18Bをコードするポリヌクレオチドを、BsaIで線形化し、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(株GS115 - NRRL Y15851)へ形質転換した。形質転換体を最小デキストロース(MD)寒天プレート(アミノ酸添加無し)上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs126, 1x pGAP 18Bを作製した。
【0140】
RMs126を、続いて、エレクトロポレーション法を用いて、発現ベクターRM632およびRM633(BsaIで線形化した)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで同時形質転換した(Wu., S., and Letchworth, G.J., High efficiency transformation by electroporation of Pichia pastoris pretreated with lithium acetate and dithiothreitol, Biotechniques, 36:1, pg. 152-154 (2004))。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンおよび100μg/mlハイグロマイシンBを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs127, 3x pGAP 18Bを作製した。
【0141】
RMs127を、続いて、PEG法を用いて、発現ベクターRM631(BsaIで線形化した)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで形質転換した。形質転換体を、300μg/ml G418を含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs134, 4x pGAP 18Bを作製した。
【0142】
株RMs133、RMs138、RMs143、およびRMs152(それぞれ、1x、2x、3x、および4x p754 18B)を作製するために、株GS115(NRRL Y15851)を、PEG法を用いて、発現ベクターRM812、RM814、RM815、およびRM837(BsaIで線形化した後)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで連続的に形質転換した。
【0143】
各株のクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ポリペプチドの代表的なクローンについてのウエスタンブロットデータを
図16に示す。バンド強度の増加は、より高い転写が、付加的なブロックコポリマーポリペプチドの発現および分泌をもたらしたことを示唆しており、これは、転写を増加させる戦略が、シルクおよびシルク様ポリペプチドリピート単位に基づくブロックコポリマーに対して機能することを確認する。
【0144】
実施例12
Rドメインのホモポリマーとの単一のRドメインの発現および分泌の比較
十分に発現および分泌されたSEQ ID NO: 1~1398からの付加的な選択されたRドメインを、2abアセンブリ(実施例5に記載される)を用いて4~6xリピートドメインへ連結した。加えて、2abアセンブリを用いて、12B配列を18B配列(実施例5より)と連結し、30B配列が得られた。各シルク配列が、5'末端でα接合ドメインおよび3'末端で3xFLAGドメインに隣接し、pGAPプロモーターによって駆動されるように、得られた産物を発現ベクターへトランスファーした。作製された配列を表10に記載し、配列はSEQ ID NO: 2734~2748を含む。
【0145】
(表10)α接合因子、複数のリピートドメイン、および3X FLAGドメインを有するさらなる完全長ブロックコポリマー構築物
【0146】
次いで、ブロックコポリマー発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用い、てピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのBMGYへ取り、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ブロックコポリマー構築物についての代表的なクローン、ならびに実施例6からの1x Rドメイン相当物および4x Rドメイン構築物を
図16に示す。実施例6において観察されたように、縞入りおよび複数のバンドがウエスタン上において明らかである。これらのバリエーションの具体的な原因は特定されていないが、それらは、ポリペプチド分解および翻訳後修飾(例えばグリコシル化)を含む、典型的に観察される現象と概して一致している。さらに、4~6x Rドメインポリペプチドのバンド強度は、対応の1x Rドメイン構築物よりも弱いようである。これは、アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリペプチドの6B、12B、18B、および30Bシリーズにおいても明らかである。これは、シルクリピート配列を含むより長いブロックコポリマーは、同じまたは異なるリピート配列を含むより短いブロックコポリマー配列よりも一般にあまり発現および分泌されないことを示唆している。
【0147】
実施例13
シルクを発現および分泌する株の生産性の測定
表11は、実施例10、実施例11、および実施例12に記載されたポリペプチドを発現する株の体積的生産性および比生産性を列挙する。
【0148】
【0149】
生産性を測定するために、各株の3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。48時間インキュベーション後、各培養物4μlを用いて、96-ウェルスクエアウェルブロック中の新鮮な400μlのBMGYに接種し、これを次いで1000 rpmで撹拌しながら30℃で24時間インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を除去し、細胞を400μlの新鮮なBMGY中に再懸濁させた。細胞を遠心分離によって再びペレット化し、上清を除去し、細胞を800μlの新鮮なBMGY中に再懸濁させた。その800μlから、400μlを96-ウェルスクエアウェルブロックへ等分し、これを次いで1000 rpmで撹拌しながら30℃で2時間インキュベートした。2時間後、培養物のOD600を記録し、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清をさらなる分析のために収集した。各上清中のブロックコポリマーポリペプチドの濃度を、3xFLAGエピトープを定量化する直接的酵素免疫測定法(ELISA)分析によって決定した。
【0150】
各株の相対的な生産性は、ウエスタンブロットデータに基づいて行われた定性的観察を確認する。円順列ポリペプチドは、未回転シルクと同様のレベルで発現し、より強いプロモーターまたはより多いコピーは、より高いブロックコポリマー発現および分泌をもたらし、シルクリピート配列を含むより長いブロックコポリマーポリペプチドは、同じまたは異なるリピート配列を含むより短いブロックコポリマーよりも一般にあまり発現しない。興味深いことには、産生された12B(55.9 kDa)のグラムは、産生された6B(29.5 kDa)のグラムを超え、このことは、シルクリピート配列を含むより大きなブロックコポリマーの発現の低下に至る要因は、18B(82.2 kDa)のサイズにより近いブロックコポリマーの発現まで、有力になり得ないことを示唆している。重要なことには、ブロックコポリマーポリペプチドの大部分は、ポリペプチド転写レベルのいかなる最適化前でも、比較的高い比生産性を有する(> 0.1 mgシルク/g乾燥細胞重量(Dry Cell Weight)(DCW)/時間。いくつかの態様において、生産性は2 mgシルク/g DCW/時間を超える。さらなる態様において、生産性は5 mgシルク/g DCW/時間を超える)。さらなる転写は、18Bの生産性を、およそ5倍、20(ほぼ21)mgポリペプチド/g DCW/時間へと改善した。
【0151】
実施例14
シルク繊維の機械的特性の測定
実施例5において産生されたブロックコポリマーポリペプチドを、繊維へ紡糸し、様々な機械的特性について試験した。先ず、標準技術を用いて、ギ酸ベースの紡糸溶媒中に精製および乾燥されたブロックコポリマーポリペプチドを溶解することによって、繊維紡糸液を調製した。スピンドープを、時折混合しながら3日間回転シェーカー上において35℃でインキュベートした。3日後、スピンドープを16000 rcfで60分間遠心分離し、紡糸前に少なくとも2時間室温へ平衡化させた。
【0152】
スピンドープを、標準のアルコールベースの凝固浴へ50~200μm直径オリフィスを通して押し出した。繊維を張力下で凝固浴から引き上げ、それらの長さを1~5倍延伸し、続いて乾燥させた。少なくとも5つの繊維を少なくとも10メートルの紡糸繊維から無作為に選択した。リニアアクチュエータおよび較正ロードセル(calibrated load cell)を含む機器を用いて、これらの繊維を引張機械的特性について試験した。繊維を1%歪みで破損まで引っ張った。画像処理ソフトウェアを用いて倍率20xにて光学顕微鏡検査で繊維直径を測定した。平均最大応力は54~310 MPaの範囲であった。平均降伏応力は24~172 MPaの範囲であった。平均最大歪みは2~200%の範囲であった。平均初期モジュラスは1617~5820 MPaの範囲であった。延伸比の効果を表12および
図17に示す。さらに、3つの繊維の平均靭性は、0.5 MJ m
-3 (標準偏差0.2)、20 MJ m
-3 (標準偏差0.9)、および59.2 MJ m
-3 (標準偏差8.9)と測定された。
【0153】
【0154】
少なくとも10 mの紡糸繊維から無作為に選択された少なくとも4~8個の繊維の平均値として繊維直径を決定した。各繊維について、6回の測定を0.57 cmのスパンにわたって行った。直径は4.48~12.7μmの範囲であった。繊維直径は同じサンプル内で一致していた。サンプルは様々な平均直径にわった:10.3μm (標準偏差0.4μm)、13.47μm (標準偏差0.36μm)、12.05μm (標準偏差0.67)、14.69μm (標準偏差0.76μm)、および9.85μm (標準偏差0.38μm)。
【0155】
最適化された回収および分離プロトコルから作製されたブロックコポリマー材料から紡糸された特に有効なある繊維は、最大最終引張強度310 MPa、平均直径4.9μm (標準偏差0.8)、および最大歪み20%を有した。繊維引張試験結果を
図18に示す。
【0156】
繊維を室温で一晩乾燥させた。4 cm
-1分解能で400 cm
-1から4000 cm
-1までDiamond ATRモジュールを用いてFTIRスペクトルを収集した(
図19)。アミドI領域(1600 cm
-1~1700 cm
-1)をベースライン化し、オリジナルの曲線の二次導関数からのピーク位置によって決定された5~6個の位置でガウス分布と曲線適合させた。アミドI領域の総面積によって割られた約1620 cm
-1および約1690 cm
-1でのガウス分布下面積として、βシート含有量を決定した。アニール処理および未処理繊維を試験した。アニーリングのために、繊維を湿潤真空チャンバ内にて1.5 Torrで少なくとも6時間インキュベートした。未処理繊維は31% βシート含有量を含有することが分かり、アニール処理繊維は50% βシート含有量を含有することが分かった。
【0157】
液体窒素を用いる凍結割断によって繊維断面を調べた。サンプルを白金/パラジウムでスパッタコーティングし、5 kV加速電圧でHitachi TM-1000を用いて画像化した。
図20は、繊維が滑らかな表面、円形断面を有し、中身が詰まっておりボイドを含まないことを示している。いくつかの態様において
【0158】
実施例15
最適な繊維の製造
MaSp2様シルクのRドメインを表13aおよび13bに列挙されるものから選択し、
図12に示されるアセンブリスキームを用いて、Rドメインを、5'末端でα接合因子および3'末端で3X FLAGに隣接した4xリピートドメインへ連結する。実施例4に記載され
図7および
図8に示されるように、連結を行う。得られたポリヌクレオチド配列および対応のポリペプチド配列を表13aおよび13bに列挙する。
【0159】
表13aおよび13b中の配列について:(1)プロリン含有量は11.35~15.74%の範囲である(表13aおよび13bのパーセンテージは、対応のポリペプチド配列中のアミノ酸残基の総数に対する記載の含有量のアミノ酸残基、この場合はプロリンの数を指す)。同様のRドメインのプロリン含有量はまた、13~15%、11~16%、9~20%、または3~24%の範囲であり得る;(2)アラニン含有量は16.09~30.51%の範囲である。同様のRドメインのアラニン含有量はまた、15~20%、16~31%、12~40%、または8~49%の範囲であり得る;(3)グリシン含有量は29.66~42.15%の範囲である。同様のRドメインのグリシン含有量はまた、38~43%、29~43%、25~50%、または21~57%の範囲であり得る;(4)グリシンおよびアラニン含有量は54.17~68.59%の範囲である。同様のRドメインのグリシンおよびアラニン含有量はまた、54~69%、48~75%、または42~81%の範囲であり得る;(5)βターン含有量は18.22~32.16%の範囲である。βターン含有量は、Geourjon, C., and Deleage, G., SOPMA: significant improvements in protein secondary structure prediction by consensus prediction from multiple alignments, Comput. Appl. Biosci., 11:6, pg. 681-684 (1995)からのSOPMA法を用いて計算される。SOPMA法は以下のパラメータを用いて適用される:ウィンドウ幅-10;類似性閾値-10;状態の数-4。同様のRドメインのβターン含有量はまた、25~30%、18~33%、15~37%、または12~41%の範囲であり得る;(6)ポリアラニン含有量は12.64~28.85%の範囲である。少なくとも4つの連続するアラニン残基を含む場合、モチーフはポリアラニンモチーフと見なされる。同様のRドメインのポリアラニン含有量はまた、12~29%、9~35%、または6~41%の範囲であり得る;(7)GPGモチーフ含有量は22.95~46.67%の範囲である。同様のRドメインのGPGモチーフ含有量はまた、30~45%、22~47%、18~55%、または14~63%の範囲であり得る;(8)GPGおよびポリアラニン含有量は42.21~73.33%の範囲である。同様のRドメインのGPGおよびポリアラニン含有量はまた、25~50%、20~60%、または15~70%の範囲であり得る。他のシルクタイプは、異なる範囲のアミノ酸含有量および他の特性を示す。
図21は、本明細書に開示されるシルクポリペプチド配列の様々なシルクタイプについてのグリシン、アラニン、およびプロリン含有量の範囲を示す。
図21は、ポリペプチド配列中の残基の総数に対するグリシン、アラニン、またはプロリンアミノ酸残基のパーセンテージを示す。
【0160】
4つのリピート配列、α接合因子、および3X FLAGドメインを含む連結の得られた産物を、所望のシルク配列を放出するためにAscIおよびSbfIで消化し、そして、AscIおよびSbfIで消化した発現ベクターRM812 (SEQ ID N: 2701)、RM837 (SEQ ID NO: 2702)、RM814 (SEQ ID NO: 2703)、およびRM815 (SEQ ID NO: 2704)(発現ベクターの重要な特質が表9に要約される)へライゲートする。PEG法を用いて、得られた発現ベクター(BsaIでそれらを線形化した後)でピキア(コマガテラ)パストリス株GS115 (NRRL Y15851)を連続的に形質転換することによって、pGCW14の転写制御下でシルクポリヌクレオチドのの4コピーを含有する株を作製する。同様の擬似リピートドメインは、500~5000、119~1575、300~1200、500~1000、または900~950アミノ酸長の範囲であり得る。ブロックコポリマー全体は、40~400、12.2~132、50~200、または70~100 kDaの範囲であり得る。
【0161】
【0162】
【0163】
得られた株のクローンを以下の条件に従って培養する:出発供給材料としてのグリセロール50g/Lと共に、[http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/pichiaferm_prot.pdf]に記載のものと類似した、最小基本塩培地において、培養物を増殖させる。1 VVMの空気流および2000 rpm撹拌を伴う、30Cに制御された撹拌発酵容器において、増殖を行う。水酸化アンモニウムのオンデマンド添加によってpHを3に制御する。溶存酸素の急増に基づいて必要に応じて追加のグリセロールを添加する。溶存酸素が最大値の15%に達するまで増殖を継続させ、その時点で、典型的に200~300 ODの細胞密度で、培養物を採取する。
【0164】
発酵槽からの培養液を遠心分離によって脱細胞化する。ピキア(コマガテラ)パストリス培養物からの上清を収集する。限外濾過を用いて上清から低分子量成分を除去し、ブロックコポリマーポリペプチドよりも小さな粒子を除去する。次いで、濾過された培養上清を50xまで濃縮する。
【0165】
ギ酸ベースの紡糸溶媒中に精製および乾燥されたブロックコポリマーポリペプチドを溶解することによって、繊維紡糸液を調製する。スピンドープを、時折混合しながら3日間回転シェーカー上において35℃でインキュベートする。3日後、スピンドープを16000 rcfで60分間遠心分離し、紡糸前に少なくとも2時間室温へ平衡化させる。スピンドープを、標準のアルコールベースの凝固浴へ150μm直径オリフィスを通して押し出す。繊維を張力下で凝固浴から引き上げ、それらの長さを1~5倍延伸し、続いてタイトハンク(tight hank)として乾燥させる。
【0166】
少なくとも5つの繊維を少なくとも10メートルの紡糸繊維から無作為に選択する。リニアアクチュエータおよび較正ロードセルを含む特注の機器を用いて、繊維を引張機械的特性について試験する。繊維をゲージ長5.75 mmで搭載し、破損まで1%歪み速度で引っ張る。繊維の最終引張強度は50~500 MPaであると測定される。どの繊維が選択されるかに依存して、降伏応力は24~172 MPaまたは150~172 MPaであると測定され、最終引張強度(最大応力)は54~310 MPaまたは150~310 MPaであると測定され、破断歪みは2~200%または180~200%であると測定され、初期モジュラスは1617~5820 MPaまたは5500~5820 MPaであると測定され、靭性値は少なくとも0.5 MJ/m3、少なくとも3.1 MJ/m3、または少なくとも59.2 MJ/m3であると測定される。
【0167】
結果として生じた力を、光学顕微鏡検査によって測定されるような繊維直径に対して標準化する。画像処理ソフトウェアを用いて倍率20xにて光学顕微鏡検査で繊維直径を測定する。少なくとも10 mの紡糸繊維から無作為に選択された少なくとも4~8個の繊維の平均値として繊維直径を決定する。各繊維について、6回の測定を5.75 mmのスパンにわたって行う。どの繊維が選択されるかに依存して、繊維直径は、4~100μm、4.48~12.7μm、または4~5μmであると測定される。
【0168】
繊維のβシート結晶含有量を試験するために、繊維を室温で一晩乾燥させる。4 cm-1分解能で400 cm-1から4000 cm-1までDiamond ATRモジュールを用いてFTIRスペクトルを収集する。アミドI領域(1600 cm-1~1700 cm-1)をベースライン化し、オリジナルの曲線の二次導関数からのピーク位置によって決定された5~6個の位置でガウス分布と曲線適合させる。アミドI領域の総面積によって割られた約1620 cm-1および約1690 cm-1でのガウス分布下面積として、βシート含有量を決定する。βシート結晶を誘導するために、繊維を湿潤真空チャンバ内にて1.5 Torrで少なくとも6時間インキュベートする。繊維表面形態および断面(液体窒素を用いる凍結割断によって得られる)を、走査電子顕微鏡法によって分析する。サンプルを白金/パラジウムでスパッタコーティングし、5 kV加速電圧でHitachi TM-1000を用いて画像化する。
【0169】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。
【配列表】