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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】積層造形用粉末材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/34 20210101AFI20240827BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20240827BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20240827BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240827BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20240827BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
B22F10/34
B22F10/14
B22F9/08 A
B22F1/00 T
B22F1/00 U
B22F1/12
B33Y70/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022211201
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2021017558の分割
【原出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2023040127
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518087915
【氏名又は名称】株式会社ExOne
(73)【特許権者】
【識別番号】302066375
【氏名又は名称】株式会社パシフィックソーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友
(72)【発明者】
【氏名】中島 英夫
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 隆将
(72)【発明者】
【氏名】加藤 欽之
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157217(JP,A)
【文献】特開2020-172674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/34
B22F 10/14
B22F 9/08
B22F 1/00
B22F 1/12
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲が開放されたパウダーベッド上にホッパーから吐出されながら自然落下されつつ供給され、その表面が加圧されて150μm以下の厚さの一層の原料粉末層として繰り返し積層され、該一層の原料粉末層が形成されるごとに、該原料粉末層の一部が結合されるバインダジェット法に用いる積層造形用粉末材料であって、
水アトマイズ合金鋼粉末からなる平均粒径が2~30μmの主原料粉末からなることを特徴とする積層造形用粉末材料。
【請求項2】
前記主原料粉末は、ステンレス、高速度鋼、ニッケル基耐熱鋼、低炭素鋼のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のバインダジェット法に用いる積層造形用粉末材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダジェット法や選択焼結法等によって三次元物体を成形する際に用いる積層造形用粉末材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダーベッド上への積層造形用の原料粉末(金属粉や合金粉、あるいはセラミックス粉)を積層する工程と、積層した一層の原料粉末を所定形状に結合する工程とを交互に繰り返し、最終的に三次元体を得る積層造形法が知られている。この積層造形法としては、レーザビームや電子ビームを原料粉末に照射して直接焼結することを繰り返し、焼結部分を結合させて目的の三次元形状を得る選択焼結法がある。一方、積層した原料粉末にバインダを印刷し、得られた原料粉末とバインダとの結合体を焼結して焼結体を得るバインダジェット法は、安価、かつ効率的に実施可能であることから、近年、特に開発ならびに実用化が進んでいる(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
この種の積層造形技術の課題は、積層粉末の充填度が不安定になる点にある。図9は、上述したバインダジェット法において、パウダーベッド100上に供給された一層の原料粉末Pにバインダを印刷する前に、原料粉末Pを2段のローラ110により圧力をかけて表層を平滑に均す状態を模式的に示している。各ローラ110は矢印B方向に回転しながら、F方向に移動する。ここで、原料粉末Pは矢印M1および矢印M2の方向に圧力を受けながら各ローラ110に押されてF方向に移動する。この圧力により、原料粉末Pは不規則に再配列を受ける。原料粉末Pの充填密度が低いほど、粉末の再配列によるばらつきが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-120475号公報
【文献】特開2014-522331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼結後の三次元体に対して、高い強度および寸法ばらつきの少ない高い寸法精度がともに求められる場合、積層される原料粉末の充填密度を高めることが有効である。そこで、原料粉末の充填密度を効果的に高めることができる粉末材料が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、原料粉末の充填密度を効果的に高めることができ、その結果、高い強度およびばらつきの少ない高い寸法精度を備えた三次元積層体を得ることができる積層造形用粉末材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した粉末積層による三次元体の造形技術においては、ナノシリカ等の流動化剤を添加することで原料粉末の充填性を高め、パウダーベッド上で原料粉末をローラ法やスキージング法で粉末を均す前に原料粉末の再配列を促進し充填密度を高くすることで、ローラ等による圧力で積層粉末の移動が可能な限り低減する。これは、ローラ等による積層粉末の不規則な再配列を大きく低減することになる。ローラ等の移動に原料粉末の再配列が影響され難くすることで、粉末積層時における積層体内の粉末の移動が制限される。その結果、積層体の重量ばらつきは低減される。また、重量ばらつきが低減した積層体は、収縮を伴う焼結後の寸法ばらつきも大幅に低減し、寸法精度を高めることができる。本発明者は、ナノサイズ粒子の流動化剤を0.0005wt%以上0.01wt%未満の割合で原料粉末に添加すると、積層粉末の充填密度が高まり、その後の積層体強度の向上および積層体の燒結体寸法ばらつきが低減することを見いだした。
【0008】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、周囲が開放されたパウダーベッド上にホッパーから吐出されながら自然落下されつつ供給され、その表面が加圧されて150μm以下の厚さの一層の原料粉末層として繰り返し積層され、該一層の原料粉末層が形成されるごとに、該原料粉末層の一部が結合されるバインダジェット法に用いる積層造形用粉末材料であって、水アトマイズ合金鋼粉末からなる平均粒径が2~30μmの主原料粉末からなることを特徴とする。
【0009】
本発明は、主原料粉末中に、一次粒子径が3~200nmのセラミック粉末からなる流動化剤が0.0005wt%以上0.01wt%未満の割合で添加されていることを好ましい態様とするさらに、流動化剤が0.005wt%以上0.01wt%未満の割合で添加されていることをより好ましい態様とする。
また、流動化剤は、SiO粉末、TiO 粉末、Al 粉末のうちの一種、または二種以上の混合粉末であることを好ましい態様とする。
【0010】
また、本発明は、主原料粉末は、ステンレス、高速度鋼、ニッケル基耐熱鋼、低炭素鋼のうちの少なくとも一種であることを好ましい態様とする。
【0011】
本発明の主原料粉末としては、ステンレス、高速度鋼、ニッケル基耐熱鋼、低炭素鋼、及びチタン合金等の粉末冶金や金属射出成形法(MIM:Metal Injection Molding)等で使用されている粉末全般、またはアルミナや炭化ケイ素等のセラミック射出成形に使用されている粉末のうちの少なくとも一種、または二種以上の混合粉末が挙げられる。
【0012】
主原料粉末の平均粒径は、2μm未満では、微細粉末の均質な流動性と積層状態を得ることが困難である。一方、30μm超では、バインダジェット法で得た三次元の粉末成形体を通常の金属粉末の焼結温度で焼結した場合において、焼結密度が工業的に要求される95%以上を確保しにくい。したがって主原料粉末の平均粒径は2~30μmが適切であり、好ましくは5~15μm、さらに好ましくは7~10μmである。
【0013】
本発明の主原料粉末に添加する流動化剤は、SiO粉末、TiO粉末、Al粉末のうちの一種、または二種以上の混合粉末が好適に用いられる。これら流動化剤は、ナノサイズの超微粒子粉末であって、その一次粒子径は、3nm未満では、粒子の凝集が生じて主原料粉末との混合時に均質な分散状態が得られない。一方、200nm超では、製造する上で球状のナノ粒子が不規則化するため主原料粉末に対する潤滑効果(流動化効果)が低下する。したがって流動化剤の一次粒子径は3~200nmが適切であり、好ましくは7~100nm、さらに好ましくは7~40nmである。
【0014】
流動化剤の添加量は、0.0005wt%未満では、積層状態での充填密度を高める効果がなく、高い強度およびばらつきの少ない高い寸法精度が得られ難い。一方、0.01wt%超では、積層状態での充填密度を高める効果が飽和する。したがって流動化剤の添加量は0.0005wt%以上0.01wt%未満が適切であり、0.001~0.025wt%程度がより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層造形用粉末材料によれば、原料粉末の充填密度を効果的に高めることができ、その結果、高い強度およびばらつきの少ない高い寸法精度を備えた三次元積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】三次元焼結体の成形方法の工程を模式的に示す図である。
図2図1に示すホッパーによる原料粉末の積層の状況を示す断面図である。
図3】実施例の積層粉末の充填密度の結果を示すグラフである。
図4】実施例の積層体の抗折力の結果を示すグラフである。
図5】実施例の積層体の重量ばらつきの結果を示すグラフである。
図6】実施例の積層体の寸法ばらつきの結果を示すグラフである。
図7】実施例の積層体の外観を示す写真である。
図8】比較例の積層体の外観を示す写真である。
図9】バインダジェット法において積層した原料粉末を均す状態を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、バインダジェット法で三次元物体を積層造形し、造形した目的形状の結合体を焼結して焼結体を成形する方法の工程を模式的に示している。
【0018】
図1に示す焼結体の成形方法は、はじめに、図1(A)に示すように、所定の面積を有する水平にセットされたパウダーベッド11上に、ホッパー12から原料粉末Pを自然落下させつつ供給して敷き詰め、所定厚さの一層の原料粉末層PLを形成する。原料粉末層PLは、図2に示すように、ホッパー12と連動して移動するローラ13により表面が加圧されることで、平坦、かつ均一な厚さになるよう均される。一層の原料粉末層PLの厚さは例えば40~50μm、あるいは100μm前後程度とされるが、概ね150μm以下の範囲で適宜に設定される。
【0019】
次に、図1(B)に示すように、積層した原料粉末層PLに、インクジェットディスペンサ14からバインダBを選択的に噴出させる。バインダBの噴出を受けた部分の原料粉末PはバインダBによって結合し硬化する。インクジェットディスペンサ14は、目的とする三次元の焼結体の形状に応じた三次元データに基づきコンピュータ制御されて、原料粉末層PL上を駆動させられる。
【0020】
次に、選択的にバインダBで結合させられた最初の原料粉末層PLの上に、再びホッパー12から原料粉末Pを供給するとともにローラ13で平坦化し、二層目の原料粉末層PLを積層する。次いで、二層目の原料粉末層PLに、インクジェットディスペンサ14からバインダBを選択的に噴出させ、原料粉末をバインダによって結合させる。
【0021】
このように、選択的にバインダBによる結合部分が形成された原料粉末層PL上に原料粉末Pを積層して次の原料粉末層PLを形成し、次いでその原料粉末層PLにバインダBを選択的に噴出させるという工程を多数回繰り返して、多層の原料粉末層PLの内部に、バインダBと原料粉末Pとの結合体Gを造形する(図1(C)に示す)。一体の三次元結合体を造形するため、上下に隣接して重畳する原料粉末層PLは少なくとも部分的にバインダBの供給部分が重畳して互いに結合し、これにより上下に連続する結合体Gが造形される。
【0022】
次に、図1(D)に示すように、上記結合体Gを原料粉末層PLの内部から取り出す。結合体Gを原料粉末層PLの内部から取り出すには、結合体Gを囲んでおりバインダが印刷されておらず結合されていない積層された原料粉末Pを、例えば吸入ノズルを用いて吸入するなどの方法で除去することができる。バインダBで結合されていない原料粉末Pの除去方法はこれに限られず適宜方法が選択される。次いで、取り出した結合体Gを所定の焼結条件で焼結し、焼結体を得る。
【0023】
以上が本実施形態に係るバインダジェット法を用いた三次元形状の焼結体の成形方法である。続いて、上記原料粉末PおよびバインダBについて詳細を説明する。
【0024】
[原料粉末]
原料粉末は、微細な主原料粉末中に、流動化剤として、超微粒子のSiO粉末、TiO粉末、Al粉末のうちの一種、または二種以上の混合粉末を微量添加したものとすることができる
【0025】
・主原料粉末
主原料粉末としては、水アトマイズ合金鋼粉末が用いられる。水アトマイズ法で製造される合金鋼粉末としては、ステンレス、高速度鋼、ニッケル基耐熱鋼、低炭素鋼等の粉末冶金や金属射出成形法(MIM:Metal Injection Molding)等で使用されている粉末全般が挙げられる。
【0026】
主原料粉末の粒度は、平均粒径が2~30μmのものが用いられる。これは、2μm未満では、微細粉末の均質な流動性と積層状態を得ることが困難であり、30μm超では、バインダジェット法で得た三次元の粉末成形体を通常の金属粉末の焼結温度で焼結した場合において、焼結密度が工業的に要求される95%以上を確保しにくいという理由からである。この範囲中では、5~15μmが好ましく、7~10μmがさらに好ましい。例えば-22μmと表記される平均粒径が10μm程度の粉末、あるいは-15μmと表記される平均粒径が7.5μm程度の粉末が市販されており、これらが好適であって入手可能である。
【0027】
・流動化剤
本発明において好ましく添加される流動化剤の粒度は、一次粒子径が3~200nmのものが用いられる。これは、3nm未満では、粒子の凝集が生じて主原料粉末との混合時に均質な分散状態が得られず、100nm超では、製造する上で球状のナノ粒子が不規則化するため主原料粉末に対する潤滑効果が低下するという理由からである。この範囲中では、7~100nmが好ましく、7~40nmがさらに好ましい。本発明の流動化剤としては、上記のようにSiO粉末、TiO粉末、Al粉末のうちの一種、または二種以上の混合粉末が用いられ、これらはいずれも同等の効果を示す。
【0028】
流動化剤の上記主原料粉末に対する添加量は、0.0005wt%以上0.01wt%未満とされる。これは、0.0005wt%未満では、積層状態での充填密度を高める効果がなく、高い強度およびばらつきの少ない高い寸法精度が得られ難く、0.01wt%超では、積層状態での充填密度を高める効果が飽和するからである。この範囲中では、0.001~0.025wt%程度がより好ましい。
【0029】
[バインダ]
バインダは、エチレングリコールを10~25%含む混合溶液や、エチレングリコールモノブチルエーテルを2.5~10%含む混合溶液等が用いられるが、これらに限定はされず、適宜なものが選択される。
【0030】
なお、本発明の粉末材料は、バインダジェット法に供される粉末に限定されず、レーザビームや電子ビームを原料粉末に照射して直接焼結することを繰り返し、焼結部分を結合させて目的の三次元形状を得る選択焼結法や、他の粉末積層法により三次元結合体を成形する技術にも適用することができる。
【実施例
【0031】
[1]シリカ粉末の添加量と、粉末充填密度および積層体の抗折力
平均粒径が10μm(-22μm)のSUS316Lを主原料粉末とし、この主原料粉末中に、一次粒子径が30nmのシリカ粉末(AEROSIL(登録商標)RX300・日本アエロジル(株))を、無添加(0wt%)、0.0001wt%、0.0005wt%、0.005wt%、0.01wt%、0.02wt%の割合で添加した粉末をそれぞれ調製した。シリカ粉末が無添加(0wt%)の粉末を「試料1」、0.0001wt%添加の粉末を「試料2」、0.0005wt%添加の粉末を「試料3」、0.005wt%添加の粉末を「試料4」、0.01wt%添加の粉末を「試料5」、0.02wt%添加の粉末を「試料6」とする。試料3、4は本発明の範囲内である実施例、試料1、2、5、6は本発明の範囲外である比較例である。
【0032】
試料1~6の原料粉末を用いて、図1および図2で模式的に示したようなバインダジェット法により同様形状の三次元結合体を造形した。造形した三次元結合体である積層体の充填密度(g/cm)と、積層体の抗折力をそれぞれ調べた。当該積層体は、積層粉末がバインダにより結合されて所定形状に成形されたものを乾燥させた焼結前の生の状態の三次元成形体である。充填密度の結果を図3に示し、抗折力の結果を図4に示す。
【0033】
なお、充填密度の測定は、「JIS Z 2512:2012 金属粉-タップ密度測定方法」に基づいて行い、抗折力の測定は、「JIS Z 2511:2006 金属粉-抗折試験による圧粉体強さ測定方法」に基づいて行った。
【0034】
図3によれば、原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0001wt%から0.0005wt%に増量すると積層体においては粉末充填密度が飛躍的に高くなり、0.01wtを超えると積層体においては粉末充填密度が飽和する。また、図4によれば、原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0001wt%から0.0005wt%に増量すると積層体の抗折力が飛躍的に高くなり、0.01wtを超えるとしだいに低くなる。したがって、原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0005wt%以上0.01wt%未満の場合に、積層体の充填密度が上がり、それに伴い積層体強度が向上することが確かめられた。
【0035】
[2]シリカ粉末の添加量と、重量および寸法のばらつき
上記各試料1~6の原料粉末を用いて、同じ体積の三次元結合体として一辺が20mmの立方体を、図1および図2で模式的に示したようなバインダジェット法により各試料1~6につき6つずつ積層造形し、それら積層体の重量と寸法のばらつきを調べた。各試料1~6のそれぞれの6つの試験ピースについては、表1に示すようにNo.1~6とナンバリングした。寸法のばらつきは、積層造形した積層体の高さ方向の寸法(一辺の長さ)をそれぞれ測定して、ばらつきの程度を調べた。重量ばらつきの結果を表1および図5に示し、寸法ばらつきの結果を表2および図6に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1、図5、および表2、図6によれば、原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0005wt%以上であると、0.0005wt%を下回る場合よりも積層体の重量ばらつきおよび寸法ばらつきのいずれも、ばらつきの程度が低い。また、それらのばらつきの程度は、0.01wt%を超えても大きな変化がないと見受けられる。したがって、原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0005wt%以上0.01wt%未満の場合に、積層体の重量および寸法のばらつきを低く抑えられることが確かめられた。
【0039】
[3]積層体の成形性の観察
上記試料1(シリカ粉末:無添加の比較例)の原料粉末と、上記試料3(シリカ粉末:0.0005wt%添加の実施例)の原料粉末を用いて、図1および図2で模式的に示したようなバインダジェット法により、所定寸法(縦24.5mm、横24.5mm、厚さ6.35mm)の三次元体を積層体として複数造形し、その成形性を観察した。試料3による積層体を図7に示し、試料1による積層体を図8に示す。
【0040】
図8に示すように、原料粉末にシリカ粉末が無添加の場合、粉末の成形性が悪く砕けてしまい、所望の三次元結合体が得られていない。これに対し原料粉末中にシリカ粉末を0.0005wt%添加すると、積層体は良好に成形されて形状が保持される。したがって原料粉末中のシリカ粉末の添加量が0.0005wt%以上あると、積層体は良好に成形することができる。
【符号の説明】
【0041】
11…パウダーベッド
12…ホッパー
13…ローラ
14…インクジェットディスペンサ
P…原料粉末
PL…原料粉末層
B…バインダ
G…結合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9