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特許7544361アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C08F290/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021525029
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019080197
(87)【国際公開番号】W WO2020094621
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】18204369.5
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19178917.1
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505308917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート ゲント
(73)【特許権者】
【識別番号】521193832
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】アルスラーン,アイス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルゲン,ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】ルーズ,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ボンティンク,ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヴリエルベルゲ,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブルーエル,ピーター
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0257216(US,A1)
【文献】特開昭61-207478(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106167678(CN,A)
【文献】特開2012-201786(JP,A)
【文献】特開昭61-004720(JP,A)
【文献】特開平03-210364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (I)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、
Y1及びY2は、独立して、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらの組み合わせから選択されるスペーサーであり、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ
X1及びX2中の(メタ)アクリレート基の合計が少なくとも3である)によるアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項2】
少なくとも4000 Daの分子量を有する、請求項1に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項3】
X1及びX2中の(メタ)アクリレート基の合計が3又は4である、請求項1又は2に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項4】
前記主鎖は、ポリエーテル、ポリアミド、多糖類、ポリオキサゾリン、及びポリエステルを含むリストから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項5】
前記主鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリn-ビニルピロリドン(PVP)、ポリn-ビニルカプロラクタム(PNVCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリグリコール酸(PGA)を含むリストから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項6】
前記1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分は、エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(EPPETA)プロポキシル化されたグリセロールジ(メタ)アクリレート(PGDA)及びそれらの組み合わせを含むリストから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項7】
前記含ウレタン部分及び/又は含尿素部分は、ポリイソシアネート部分であるか、又はジイソシアネート部分及びポリイソシアネートの三量体を含むリストから選択されるポリイソシアネート部分である、請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項8】
前記ジイソシアネート部分は、環状脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネート、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、1,1'-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、L-2,6-ジイソシアナトヘキサン酸エチルエステル(LDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン(TMDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(TDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、1,3-メタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、及び1,1'-メチレンビス(4-イソシアナトベンゼン)(MDI)、並びに1,6-ジイソシアナトヘキサンビウレット及びイソシアヌレートのようなそれらの誘導体を含むリストから選択される、請求項7に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートの三量体は、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)の三量体である、請求項7に記載のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマー。
【請求項10】
2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、請求項1~9のいずれか一項に記載のアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、特に少なくとも3つのアクリレート末端基が存在することを特徴とし、それにより2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレー等の多種の技術を使用した更なる加工に特に適したものとなる、アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
二光子重合(2PP)は、100 nmを下限とする加工寸法を有する複雑な三次元構造物を作製するのに魅力的な技術である。それにより、二光子重合は組織工学用途、フォトニクス、マイクロフルイディクス、マイクロオプティクス等の精度が重要な用途に向けた強力なツールとなる。市販の2PP樹脂(例えば、ORMOCER)は、有機-無機複合材から構成されており、加工しやすいという利点を有すると共に、優れたCAD-CAM模写性(mimicry)(コンピューター支援設計-コンピューター支援製造)に加えて、良好な動力学、熱的特性、及び機械的特性を有する。しかしながら、これらの樹脂は、組織工学用途を対象とする場合に望まれる生分解性を示さない。
【0003】
低分子量のモノマー/オリゴマー分子化合物に着目した2PP用途向けの生分解性樹脂の開発が試みられている。しかしながら、これらの配合物には、重合するために低い描画速度及び高いレーザー出力が必要とされるが、これは大規模な足場製造には好ましくなく、高い照射量が燃焼効果を引き起こすため、欠陥のある構造物が製造されるリスクが高まる。さらに、ほとんどの現在の解決策では、2PP加工時に十分なCAD-CAM模写性及び形状忠実度は得られなかった。
【0004】
例えば、非特許文献1により、低分子量のトリブロックコポリマーのポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)-b-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ε-カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)((PCL-co-PTMC)-b-PEG-b-(PCL-co-PTMC))から構成された生分解性2PP樹脂が開発された。著者らは材料の十分な生分解を達成したとは言え、加工された構造物は、特に複雑な形状の場合には限られた精度しか示さなかった。
【0005】
非特許文献2により、足場の微細作製用の一連の生分解性樹脂が開発された。フォトレジンは、3000 g/molまでの分子量を有するメタクリレート化されたオリゴラクトンから構成されていた。100 μm s-1~5000 μm s-1の範囲の描画速度を使用して材料が構造化された。別の研究(非特許文献3)では、メタクリレート化された官能性を有する合成オリゴマーヒドロゲル前駆体(PG、PEG)が合成され、50 μm s-1~5000 μm s-1の範囲の低い描画速度を使用して微細構造物へと加工された。この配合物は特許で保護されている(特許文献1「Producing 3-dimensional, biocompatible and biodegradable structure, useful e.g. as a molded body for implants in bone- and cartilage tissue, comprises subjecting a formulation to two-photon-polymerization」)。
【0006】
非特許文献4により、メタクリレート官能性を有する生分解性の低分子量4アームポリラクチド樹脂が開発された。この樹脂は2PPを介して低い描画速度(50 μm s-1)で加工された。
【0007】
非特許文献5により、乳酸(LA)及びε-カプロラクトン(CL)のメタクリレート化されたランダムコポリマーが合成され、2PPを介して最大50000 μm s-1の描画速度で加工された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102009042037号
【文献】国際公開第2017/005613号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Claeyssens et al., 2009
【文献】Weiss et al., 2011
【文献】Berg et al., 2011
【文献】Melissinaki et al., 2011
【文献】Felfel et al., 2016
【発明の概要】
【0010】
これらの以前の出版物とは異なり、本発明者らの配合物は、複数の光反応性末端基を有する巨大分子化合物から構成されている。光反応性基は、直接的に又は(小さな)スペーサー基を介して主鎖に連結されており、ここで、スペーサー基は鎖の可撓性を可能にし、反応動力学を改善する。本発明の分子の独自の構造は生分解性、高速で簡単なプリント、優れたCAD-CAM模写性、優れた安定性、調整可能な機械的特性、スケールアップの可能性、及び形状忠実度をもたらすことにより、現在の解決策に関連する主要な不利点を克服する。
【0011】
本発明の化合物は、ポリマー主鎖と該主鎖に直接的に又は(小さな)スペーサー分子を介して連結された複数の光反応性末端基とから構成されており、それによりアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーが得られる。別のプロジェクトの枠組みの中で、アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーは既に以前に開発されている(特許文献2)。しかしながら、これらのポリマーは、より少ない数のアクリレート末端基を含むという点で本発明とは異なっており、それにより本発明の化合物とは対照的に、2PP用途で使用するには適していない。具体的には、本発明の文脈内で最低3つのアクリレート末端基が必要とされることが判明した。具体的には、任意に可撓性のスペーサーと組み合わせて複数の光反応性基が存在することにより、優れたCAD-CAM模写性及び形状忠実度を維持しながら、高速の架橋と高速の描画速度(20000 μm s-1超)での加工とが可能となる。
【0012】
構造物の物理的特性は、樹脂の構成単位を変化させることによって微調整され得る。これらの生分解性、生体適合性、良好な動力学、及び形状忠実度を考慮すると、本発明の化合物により、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレー等の多種の技術で使用する可能性が開かれる。
【0013】
第一の態様では、本発明は、式(I):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (I)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表す)によるアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーを提供する。
【0014】
本発明の特定の実施の形態において、本発明は、式(I):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (I)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ、
以下:
X1及びX2中のアクリレート基の合計が3又は4であること、及び/又は、
ウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの分子量が少なくとも4000 Daであること、
の少なくとも1つが当てはまる)によるアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーを提供する。
【0015】
したがって、本発明のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの特定の実施の形態において、X1及びX2中のアクリレート基の合計は3又は4である。
【0016】
或いは、別の特定の実施の形態において、本発明のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーは少なくとも4000 Daの分子量を有する。
【0017】
本発明の特定の実施の形態において、主鎖は、ポリエーテル、ポリアミド、多糖類、ポリオキサゾリン、及びポリエステルを含むリストから選択される。より特には、主鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリn-ビニルピロリドン(PVP)、ポリn-ビニルカプロラクタム(PNVCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリグリコール酸(PGA)を含むリストから選択されてもよい。
【0018】
別の特定の実施の形態において、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分は、エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(EPPETA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(DPEPA)、プロポキシル化されたグリセロールジ(メタ)アクリレート(PGDA)、グリセロールジアクリレート(GDA)、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択される。
【0019】
本発明の更なる実施の形態において、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分は、例えばジイソシアネート部分及びポリイソシアネートの三量体を含むリストから選択される、ポリイソシアネート部分である。より特には、ジイソシアネート部分は、環状脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネート、好ましくは5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、1,1'-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、L-2,6-ジイソシアナトヘキサン酸エチルエステル(LDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン(TMDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(TDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、1,3-メタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、及び1,1'-メチレンビス(4-イソシアナトベンゼン)(MDI)、並びに1,6-ジイソシアナトヘキサンビウレット及びイソシアヌレート等のそれらの誘導体を含むリストから選択される。或いは、ポリイソシアネートの三量体は、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンの三量体(イソホロンジイソシアネート(IPDI)の三量体)である。
【0020】
本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、本明細書で規定するアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用も提供する。
【0021】
更なる態様では、本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、式(II):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (II)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、直接結合であるか、又は含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表す)によるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用を提供する。
【0022】
別の特定の実施の形態では、本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、式(II):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (II)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分であり、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ、
式(II)のポリマーは、1つ以上のウレタン部分を含む)によるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用を提供する。
【0023】
これより図面を具体的に参照するが、示される項目は例示であり、本発明の種々の実施形態の説明的な論考のみを目的とすることが強調される。これらの図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単な説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点で、本発明の基礎的理解に必要とされるよりも詳細な本発明の構造細部を示そうとはしていない。この説明は、図面と共に本発明の幾つかの形態を実際に具体化し得る方法を当業者に明らかとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンの合成を示す図である。
図2】EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンのFTIRスペクトルを示す図である。
図3】EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンの1H-NMRスペクトルを示す図である。
図4】上段:(a)微小足場のCADモデル、(b)各アームがモノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖された4アーム星型のPCLからプリントされた微小足場のSEM画像、並びに(c)PGDAで末端封鎖されたPCL系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像、及び(d)EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像を示す図である。下段:(e)モノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖されたPEG系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像、(f)PETAで末端封鎖されたPEG系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像、(g)EPPETAで末端封鎖されたPEG系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像、及び(h)DPEPAで末端封鎖されたPEG系ウレタンからプリントされた微小足場のSEM画像を示す図である(スケールバー:50 μm)。
図5】PETAで末端封鎖されたPEG系ウレタンから10 mm/s~90 mm/sの範囲の描画速度でプリントされた微小足場のSEM画像(上列)、各アームがモノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖された4アーム星型のPCL系ウレタンから10 mm/s~90 mm/sの範囲の描画速度でプリントされた微小足場のSEM画像(中列)、及びモノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖されたPEG系ウレタンから10 mm/s~90 mm/sの範囲の描画速度でプリントされた微小足場のSEM画像(下列)を示す図である(スケールバー:50 μm)。
図6】レーザースキャン速度に対する、SLA加工された多数のアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン及びジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率を示す図である。
図7】テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの反応スキームを示す図である。
図8】アザマイケル付加反応及びアクリレート化を介して合成されたテトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの1H-NMRスペクトルを示す図である。
図9】時間に対する、架橋された前駆体の重量減少を示す図である。
図10】UV照射の間の時間に対する、PEG-ウレタン-PETA、PEG-ウレタン-EPPETA、PCL-ウレタン-EPPETA、及びPCL-ウレタン-PGDAの貯蔵弾性率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これより、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の種々の態様を更に詳細に規定する。そこで規定された各々の態様は、そうではないことが明確に示されていない限り、他の任意の態様(単数又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好適又は有利であると示される任意の特徴を、好適又は有利であると示される他の任意の特徴(単数又は複数)と組み合わせてもよい。
【0026】
本明細書及び添付した特許請求の範囲で使用される場合に、単数形("a"、"an"、及び"the")は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。例として、「a compound」は、1つの化合物又は2つ以上の化合物を意味する。本明細書に記載される用語及び本明細書で使用される他の用語は当業者に十分に理解されている。
【0027】
本明細書に既に記載したように、第一の態様では、本発明は、式(I):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (I)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表す)によるアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーを提供する。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、本発明は、式(I):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (I)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、かつ、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ、
以下:
X1及びX2中のアクリレート基の合計が3又は4であること、及び/又は、
ウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの分子量が少なくとも4000 Daであること、
の少なくとも1つが当てはまる)によるアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーを提供する。
【0029】
したがって、本発明のウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの特定の実施形態において、X1及びX2中のアクリレート基の合計は3又は4である。
【0030】
或いは、本発明の別の特定の実施形態において、ウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーは少なくとも4000 Daの分子量を有する。
【0031】
本発明の文脈において、「アクリレート」という用語は、アクリル酸の塩、エステル及び共役塩基並びにその誘導体であると解釈される。アクリレートは、カルボニル炭素に直接結合されたビニル基、すなわち、互いに二重結合された2つの炭素原子を含む。アクリレート部分は、典型的には、以下:
【化1】
(式中、Rは、アクリレートの場合には-H、又はメタクリレートの場合にはアルキル基、例えばメチル(-CH3)部分を表す)のように表される。本発明による(メタ)アクリレート基は、二重結合された炭素原子が分子の外側に面するように、-O-リンカーを介してポリマーの残部に結合されている。
【0032】
それ自体での又は別の置換基の一部としての「アルキル」という用語は、式CxH2x+1の完全飽和の炭化水素を指し、ここで、xは、1以上の数である。一般に、本発明のアルキル基は、1個~20個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖状又は分岐状であり得て、本明細書に示されるように置換され得る。本明細書で炭素原子に続いて下付き文字が使用される場合に、下付き文字は、指定された基が含み得る炭素原子の数を指す。したがって、例えば、C1~4アルキルは、1個~4個の炭素原子のアルキルを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、ヘプチル及びその異性体、オクチル及びその異性体、ノニル及びその異性体、デシル及びその異性体である。C1~C6アルキルには、1個から6個の間の炭素原子を有するあらゆる直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が含まれ、したがって、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル又は4-メチルシクロペンチル、シクロペンチルメチレン、並びにシクロヘキシルが含まれる。
【0033】
本明細書で使用される「末端封鎖」という用語は、本発明の分子の(メタ)アクリレート基がポリマー分子の外側部分に位置する、すなわち、それらが分子の外側に面していることを意味する。
【0034】
特に、本発明は、特許請求の範囲に記載される分子が少なくとも3つの(メタ)アクリレート末端基を含むことを特徴とする。これらの末端基は、式(I)及び(II)中の注記事項X1及びX2によって表され、これらのそれぞれが少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むように解釈されるべきである。したがって、X1及びX2の少なくとも1つは、少なくとも2つの(メタ)アクリレート末端基を含む。例えば、X1が単一の(メタ)アクリレート末端基を含む場合に、X2は少なくとも2つの(メタ)アクリレート末端基を含み、或いはX2が単一の(メタ)アクリレート末端基を含む場合に、X1は少なくとも2つの(メタ)アクリレート末端基を含む。それにもかかわらず、上記のX1基及びX2基のそれぞれは、X1基及びX2基の両方の(メタ)アクリレート末端基をまとめた合計が少なくとも3に等しい限りは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの(メタ)アクリレート末端基を含み得る。本明細書で上記に説明されるように、本発明の特定の実施形態では、X1及びX2中のアクリレート基の合計は、3又は4に等しい。
【0035】
本発明の文脈において、「ウレタン系ポリマー」という用語は、1つ以上のカルバメート結合、すなわちウレタン結合を含む高分子ポリマーであると解釈される。カルバメートは、カルバミン酸(NH2COOH)から誘導される有機化合物であり、したがって、カルバメート結合は、一般に以下:
【化2】
(式中、「…」のそれぞれは、ポリマー分子の残部への結合点を表す)のように表され得る。本発明の文脈において、特許請求の範囲に記載されるポリマーは、少なくとも1つのカルバメートリンカーを含むが、これらは1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのカルバメート等の幾つかのカルバメートリンカーも含み得る。
【0036】
本発明の文脈において、「尿素系ポリマー」という用語は、-NR-(C=O)-NR-によって表されるような1つ以上の尿素結合を含む高分子ポリマーであると解釈される。
【0037】
本発明の文脈において、「スペーサー」という用語は、これを含む分子の2つの異なる要素間に(可撓性の)ヒンジ部を与え、それにより上記要素を空間的に分離する部分であると解釈される。本発明の文脈において、必要に応じて、X成分とZ成分との間にスペーサーが存在し得る。上記スペーサーは、例えば、分子の一方の側にのみ存在し得るが、該スペーサーは、他方の側には存在し得ない。その点に関して、Y1は、例えばスペーサーであり得るが、Y2は直接結合を表し得て、その逆もあり得る。本発明の文脈において、任意の種類の適切な部分がスペーサーとして使用され得るが、これは、好ましくは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択される。
【0038】
本発明の文脈において、エチレンオキシド(又は代替的にポリエチレングリコール)及びプロピレンオキシド(又は代替的にポリプロピレングリコール)は、より一般的な用語であるアルキレンオキシドの2つの例を表す。本発明の文脈において、オリゴエステルという用語は、少数の繰り返しエステル単位R-C(=O)-OR'を含むオリゴマー鎖であると解釈される。
【0039】
本明細書で使用される「ポリイソシアネート」という用語は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む有機基であると解釈される。イソシアネートは、式R-N=C=Oによって表される官能基である。したがって、ジイソシアネート基は、2つのイソシアネート部分を含む有機基である。
【0040】
本明細書で使用される「含ウレタン部分及び/又は含尿素部分」という用語は、カルバメート(ウレタン)結合、すなわち-NH-(C=O)-O-及び/又は尿素結合、すなわち-NH-(C=O)-NH-、又はより一般には-NR-(C=O)-O-及び-NR-(C=O)-NR-によって接続された有機単位から構成される部分であると解釈される。したがって、この部分はウレタンリンカーのみを含み得る。或いは、この部分は尿素リンカーのみを含み得る。さらに、この部分はウレタンリンカーと尿素リンカーとの組み合わせも含み得る。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、本発明の文脈内で適切である主鎖は、ポリエーテル、ポリアミド、多糖類、ポリオキサゾリン、及びポリエステルを含むリストから選択され得る。ポリエーテル、ポリアミド、多糖類、ポリオキサゾリン、及びポリエステルという用語は、それぞれ、複数のエーテル(R-O-R')基、アミド(R-C(=O)-NIR'S'')基、糖類(糖、デンプン、セルロース、アルギン酸塩、カラギーナン、デキストラン)基、オキサゾリン(1個のO原子及び1個のN原子を含む5員複素環式化合物)基、及びエステル(R-C(=O)-OR')基を含むポリマー部分を表すと解釈される。
【0042】
より具体的には、本発明の文脈内で適切な主鎖は、以下:
ポリエチレングリコール(PEG)、
【化3】

ポリプロピレングリコール(PPG)、
【化4】

ポリn-ビニルピロリドン(PVP)、
【化5】

ポリn-ビニルカプロラクタム(PNVCL)、
【化6】

ポリカプロラクトン(PCL)、
【化7】

ポリ乳酸(PLA)、
【化8】

ポリグリコール酸(PGA)
【化9】

のいずれか(及びそれらの組み合わせ)から選択され得る。
【0043】
特に関心が持たれるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーは、本発明の文脈内では、約2000 Da、約3000 Da、約4000 Da、約5000 Da、約6000 Da、約7000 Da、約8000 Da、約9000 Da、約10000 Da等の高い分子量を有する主鎖を有するポリマーである。
【0044】
特に関心が持たれるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーは、本発明の文脈内では、約4000 Da、約5000 Da、約6000 Da、約7000 Da、約8000 Da、約9000 Da、約10000 Da等の高い分子量を有するポリマーである。ポリマーのより高い分子量はその可撓性を高め、したがって、電界紡糸及び2PP等の加工技術における加工性を高める。
【0045】
別の特定の実施形態において、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分は、エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(EPPETA)、
【化10】
R:H又はCH3

ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA)、
【化11】
R:H又はCH3

エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(DPEPA)、
【化12】
R:H又はCH3

エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセロールジ(メタ)アクリレート(EGDA、PGDA、EPGDA)、
【化13】
R:H又はCH

グリセロールジアクリレート(GDA)、
【化14】
R:H又はCH3
及びそれらの組み合わせを含むリストから選択される。
【0046】
上記の構造のそれぞれは、本発明の文脈内のアクリレート化されたポリオール構造の単なる例にすぎない。その点に関して、例えば、EPPETAは、同じ分岐上の4つのオキシエチル化(OE)単位と1つのプロポキシル化(OP)単位との組み合わせ等の種々の化合物の混合物である。或いは、4つのOE単位が或る分岐上に存在し得るが、OP単位は別の分岐上に存在する。複数の追加の例をそのように設計することができ、これらは本発明の文脈内で使用するのに同等に適している。さらに、トリ(アクリレート)部分が概して本発明の文脈内で最もたくさんあるが、少数の対応する部分は、完全に(メタ)アクリレート化されていてもよく、トリ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート若しくはモノ(メタ)アクリレートであってもよく、又はそれどころかメタ(アクリレート)を含まなくてもよい。当然ながら、この解釈はEPPETAに適用されるだけでなく、本出願に記載される他のアクリレート化されたポリオール構造にも適用される。
【0047】
本発明の更なる実施形態において、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分は、例えばジイソシアネート部分及びポリイソシアネートの三量体を含むリストから選択される、ポリイソシアネート部分である。より特には、ジイソシアネート部分は、環状脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネート、好ましくは5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、1,1'-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、L-2,6-ジイソシアナトヘキサン酸エチルエステル(LDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン(TMDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(TDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、及び1,1'-メチレンビス(4-イソシアナトベンゼン)(MDI)、並びに1,6-ジイソシアナトヘキサンビウレット及びイソシアヌレート等のそれらの誘導体を含むリストから選択される。或いは、ポリイソシアネートの三量体は、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)の三量体である。
【0048】
本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、本明細書で規定するアクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用も提供する。
【0049】
更なる態様では、本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、式(II):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (II)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、直接結合であるか、又は含ウレタン部分及び/又は含尿素部分を表し、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ、
式(II)のポリマーは、1つ以上のウレタン部分を含む)によるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用を提供する。
【0050】
別の特定の実施形態では、本発明は、2光子重合、ステレオリソグラフィー(SLAプリンティング)、電界紡糸、フィルムキャスティング、ポロゲン浸出、押出に基づく3Dプリンティング、噴霧乾燥、極低温処理、コーティング、架橋性ミセル、スピンコーティング、及びエレクトロスプレーを含むリストから選択される方法における、式(II):
X1-Y1-Z1-主鎖-Z2-Y2-X2 (II)
(式中、
X1及びX2は、独立して、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含む部分を表し、X1及びX2中のアクリレート基の合計が少なくとも3であることを特徴とし、
Y1及びY2は、独立して、直接結合又はスペーサーを含むリストから選択され、ここで、スペーサーは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、オリゴエステル、及びそれらの組み合わせを含むリストから選択され、
Z1及びZ2は、独立して、含ウレタン部分及び/又は含尿素部分であり、
主鎖は、ポリマーを表し、かつ、
式(II)のポリマーは、1つ以上のウレタン部分を含む)によるウレタン系ポリマー又は尿素系ポリマーの使用を提供する。
【0051】
本発明の化合物は、以下の実施例に示される反応スキームに従って調製され得るが、当業者は、これらが本発明にとっての例示にすぎず、本発明の化合物が、有機化学分野における当業者によって通常使用される幾つかの標準的な合成法のいずれかによって調製され得ることを理解するであろう。
【0052】
2光子重合(2PP)は、感光性材料による2つの光子の同時吸収時にマイクロメートル以下の解像度で3D構造物を作製する方法である。これは、感光性材料へと超短レーザーパルスを集束させることによって、焦点領域内で化学反応を開始することよって達成される。
【0053】
ステレオリソグラフィー(SLA)は、コンピューター支援設計(CAD)ファイルを使用して構造物を作製することができる固体自由形状作製技術(SFF)である。SLA技術による構造物の作製は、コンピューター制御されたレーザー光線又はデジタル光プロジェクターを使用した液体感光性樹脂の空間的に制御された固化を基礎としている。樹脂の表面をレーザーによりスキャンして2Dパターンを生成するか(レーザーシステム)、又は2次元ピクセルパターンを投影することによってレイヤー全体を一度に硬化させ(投影システム)、ここで、各レイヤーの硬化後に作製プラットフォームがZ方向に動いて3D構造物が構築される。この過程が完了した後に、未硬化の樹脂は適切な溶剤中に浸漬して洗い流される。
【0054】
電界紡糸は、電界を使用してポリマー溶液からナノスケール又はマイクロスケールの繊維を作製する技術である。プレポリマーを適切な溶剤中に溶解させ、キャピラリーノズルに入れて、高電界に曝す。プレポリマー溶液の液滴が帯電すると、静電反発力が液体の表面張力に打ち勝ち、それによりテイラーコーンが形成され、プレポリマー溶液の帯電した噴流がキャピラリーノズルから吐出される。この噴流はキャピラリーノズル間を飛行中に伸長及び乾燥を経て、最終的に接地されたコレクター上にナノファイバー又はマイクロファイバーとして堆積される。プレポリマー繊維はUV照射時に架橋される。
【0055】
フィルムキャスティングは、或る特定の厚さを有するスペーサーで隔離された2枚のガラス板の間にポリマー溶融物又はポリマー溶液を注入することによって成膜する方法である。引き続き、ガラス板に紫外光を照射することで、架橋されたシートが得られる。
【0056】
ポロゲン浸出は、粒子をプレポリマー溶液又はプレポリマー溶融物と混合し、架橋されたポリマーから適切な溶剤を使用して粒子を除去することによって多孔質構造物を作製する方法である。
【0057】
押出に基づく3Dプリンティングは、連続ストランドのレイヤー・バイ・レイヤーの堆積によって無細胞マトリックス又は細胞負荷マトリックスのいずれかの設計をもたらす固体自由形状作製技術である。溶融物からのプリント及び溶液からのプリントといった、この技術の2つの変形形態が利用可能である。3Dプリンティングの間又はその後に足場にUVを照射して、架橋させることが可能である。
【0058】
極低温処理は、凍結乾燥法を介して多孔質構造物を作製する方法である。ポリマー前駆体を水中に溶解した後に、その溶液を凍結させて氷の結晶を生成する。氷の結晶を凍結乾燥によって除去することで、多孔質ポリマー構造物が得られる。
【0059】
コーティングは、プレポリマー溶液又はプレポリマー溶融物を使用して様々な基材上に形成される最上層である。プレポリマー層をディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、押出コーティング等の種々の技術を使用して基材上に塗布し、引き続きUV照射によって架橋させることができる。
【0060】
エレクトロスプレーは、プレポリマー溶液に高電界を印加することにより、ポリマーのナノ粒子又はマイクロ粒子を作製する方法である。キャピラリーノズルから流出するプレポリマー溶液を高電界に曝して噴流を形成する。帯電した噴流はポリマー溶液の濃度が低いため不安定となり、微粒子に分裂して、コレクター上に堆積される。電界により形成された微粒子を、UV照射を使用して架橋させる。溶液濃度、流速、及び印加電圧等のパラメーターを変化させることによって、液滴のサイズを調整することができる。
【0061】
上記技術の一部では、上記説明のように光開始剤が使用される。特定の実施形態では、上記光開始剤は、2-ヒドロキシ-2-プロピル-4-(ヒドロキシエトキシフェニルケトン)(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Additol CPK、Allnex社から入手可能)、1,4-ビス(4-(N,N-ビス(6-(N,N,N-トリメチルアンモニウム)ヘキシル)アミノ)スチリル)-2,5-ジメトキシベンゼンテトラヨージド)(WSPI)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)のリチウム塩、P2CK、G2CK、E2CK、M2CMK、巨大分子光開始剤、又はそれらの混合物のリストから選択される。これらの光開始剤の選択は、低減された細胞毒性を示すことが分かっているため特に関心が持たれる(Li et al., RSC Advances, 26 June 2013)。これは生物医学的用途に有利である。
【化15】
【化16】
【化17】
【実施例
【0062】
実施例1:アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマーの合成
2000 g/molから10000 g/molの間の範囲のMWを有するポリカプロラクトンジオール(PCLジオール)又はポリ(エチレングリコール)(PEG)はMerck社から入手した。ブチルヒドロキシトルエンはInnochem GMBH社から入手した。イソホロンジイソシアネート(IPDI)はSigma Aldrich社から入手した。PETA、EPPETA、及びPGDA(末端封鎖剤)はAllnex社から入手した。ネオデカン酸ビスマスはUmicore社から入手した。
【0063】
図1に示されるように、ポリエーテルジオール又はポリエステルジオールを2当量のイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び300 ppmのネオデカン酸ビスマスと反応させることによって、多数のアクリレート末端基を有するウレタン系ポリエステル及びポリエーテルを調製した。反応温度を75℃に保持した。2時間後に、温度を70℃に設定し、2当量の末端封鎖剤及び300 ppmのネオデカン酸ビスマスを空気流下で反応器に加えた。フーリエ変換赤外分光法(FTIR、Perkin Elmer社)により2270 cm-1に吸収バンドが観察されなくなるまで(これはIPDIのNCO基が完全に反応したことを示している)、反応を80℃に維持した。
【0064】
赤外分光法によるEPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンの特性評価
ATR FT-IR分光法は化学的化合物の構造解析で一般的に使用される技術である。フーリエ変換赤外分光法は全反射減衰(ATR)モードで動作するFT-IR分光計(Perkin Elmer社)で実施した。EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンのスペクトルを、8回のスキャンで600 cm-1~4000 cm-1の範囲について記録した。1000 cm-1で2.4の屈折率を有するZnSeレンズを備えたダイヤモンド結晶を使用した。得られるスペクトルは図2に示されている。
【0065】
反応の完了後に、NCO基の吸収バンドが観察されなかったことから、これによりIPDIのイソシアネート基がEPPETA末端封鎖剤のヒドロキシル基と完全に反応したことが確認される。ウレタン基の特徴的な吸収バンドは、N-H伸縮(3330 cm-1)、N-H変角振動(1520 cm-1)、アミドIIIバンド(1242 cm-1)である。1635 cm-1及び812 cm-1での吸収バンドは、EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンのアクリレート二重結合に対応する。
【0066】
1H-NMR分光法によるEPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタンの特性評価
前駆体の1H-NMRスペクトルは、Bruker Avance 300 MHz分光計を介して記録した。前駆体を分析前に重水素化クロロホルム(CDCl3、Euriso-Top社)中に溶解した。MestReNovaソフトウェア(バージョン6.0.2)を使用してスペクトルを分析した。
【0067】
1H-NMRスペクトルは図3に示されている。1.5 ppm、2.3 ppm、及び4 ppm付近のシグナルは、カプロラクトン単位のCH2のプロトンに対応する。エチレンオキシドスペーサー中に存在するメチレンのプロトンに起因するシグナルは、3.3 ppm~3.8 ppmで観察され得る。0.7 ppmから1.3 ppmの間のシグナルはIPDIの環状メチレン単位のプロトンに対応し、5.8、6.1、及び6.3でのシグナルはアクリレートのプロトンに属する。
【0068】
実施例2:アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマーの薄膜への加工
前駆体をこれらが完全に溶融するまで60℃のオーブン内で加熱する。次いで、溶融物を1 mmのシリコンスペーサーによって隔離された2枚のガラス板の間に配置する。ガラス板を室温で10分間放置して前駆体を冷ます。30分間のUV-A照射で試料を架橋させる。UV照射は、10 mW/cm2の強度及び250 nm~450 nmの波長範囲を有するLWUVランプモデルVL-400L(Vilber Lourmat社、マルヌ=ラ=バレ、フランス)によって適用される。
【0069】
ゲル化率を決定することによる薄膜の特性評価
架橋後に、薄膜を10 cmの直径を有する円盤として打ち抜き、分析天びんを使用して秤量する(W1)。試料をクロロホルム又は再蒸留水中に浸した。インキュベートが終わったら、試料を乾燥させ、秤量した(W2)。ゲル化率(GF)は、式GF(%)=W2/W1×100%を使用して計算した。架橋された前駆体のゲル化率は表1に示されている。
【0070】
表1:PEG-ウレタン-EPPETA、PCL-ウレタン-EPPETA、及びPCL-ウレタン-PGDAのゲル化率及びヤング率
【表1】

*ゲル化率の決定のため、#再蒸留水中での濃度
【0071】
引張試験による薄膜の特性評価
架橋された試料のヤング率を、500 Nのロードセルを備えた引張試験機(Tinius Olsen社)を使用して評価した。30 mmの長さを有するドッグボーン型の試料を、架橋された膜(厚さ1 mm)から作製した。全ての測定は室温で行った。1 Nのプリロード力を加え、試験片を10 mm/分のクロスヘッド速度で変形させた。ヤング率は、応力/歪み曲線の線形部分の傾きから計算した(表1)。引張試験の前にPEG系試料を平衡状態まで膨潤させた。
【0072】
加速分解条件下での前駆体の分解速度の決定
架橋された試料を、5 MのNaOH(37℃)中で35日間インキュベートした。試料を或る特定の時点で取り出し、洗浄し、真空乾燥させた。試料の分解を重量分析により評価し、重量減少を式
重量減少(%)=Wt/Wi×100%
によって計算した。
【0073】
ここで、Wi及びWtは、それぞれ試料の初期の重量及び分解後の重量である。試料の分解速度を市販のポリカプロラクトン(M.W.=10000 g/mol、Sigma-Aldrich社)の分解速度と比較した。試料の重量減少を時間に対してプロットする。これは図9に示されている。
【0074】
PCL-ウレタン-EPPETA及び市販のPCLは、加速分解媒体中で同等の速度で分解した。PCL-PGDAは、プロポキシル化された末端基の疎水的性質のため、より遅い分解を示した。最終的に、100%の重量減少によって示されるように全てのポリマーは完全に分解した。
【0075】
実施例3:2光子重合による多数のアクリレートで末端封鎖された前駆体の加工
2光子重合は、感光性材料による2つの光子の同時吸収時にマイクロメートル以下の解像度で構造物を作製する方法である。システムには、フェムト秒パルスを発生することができる光源が含まれており、これは典型的には、近赤外領域で放射するTi:サファイアレーザー(チタン-サファイアレーザー)発振器である。1光子吸収過程と比較して、2光子吸収では、光開始剤は2つの光子を同時に吸収して、より低いエネルギー準位からより高いエネルギー準位に遷移する。2つの光子のエネルギーは、2つのエネルギー準位の減算に等しい。光硬化性樹脂のボリューム内にレーザー光線の焦点を絞ると、焦点ボリューム内の高い光子密度により、開始剤分子による2つの光子の同時吸収が誘発され、こうして極めて局在化された焦点ボリュームでの重合反応の開始が引き起こされる。レーザー焦点を、感光性樹脂を通して3次元で動かすことにより、コンピューターで設計されたあらゆる3D構造物を、幾何学形状全体にわたり正確に制御して作製することができる。微細構造物の作製後に、試料を適切な溶剤中に浸漬させて未固化樹脂を除去することで、基材上にプリントされた微細構造物が残る。100 nm程の小ささの加工寸法を有する3D構造物を、2PP技術を介して描画することができ、レーザー出力及びスキャン速度を調整することにより解像度を制御することができる。2PP加工を適用する例には、マイクロ流体デバイス、フォトニック結晶、患者固有のインプラント、組織足場、医療デバイス、濾過材、マイクロオプティクス、及びエレクトロニクスが含まれる。
【0076】
光開始剤M2CMKをテトラヒドロフラン(THF)(ストック溶液濃度:7 mM)中に溶解する。多数のアクリレート及び単一のアクリレートで末端封鎖された線形及び星型のPEG及び/又はPCL系前駆体を或る特定の容量のM2CMKストック溶液中に溶解した。溶液中のM2CMKとアクリレート基との間のモル比を0.02に保持する。前駆体分子中のアクリレート基の濃度は事前に1H-NMR分光法を使用して決定されている。
【0077】
PEG及びPCL系前駆体をTHF中に完全に溶解した後に、20 μLの調製された溶液をガラス基材上に載せる。試料の接着性を高めるために、ガラス基材を使用前に3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの希釈溶液中に浸漬させた。ポリマー溶液の液滴を基材上に載せた後に、2PP加工の前に溶剤を室温で30分間蒸発させた。THFの蒸発後に、ガラス基材上に残留するポリマーを、780 nmの波長、100 fsのパルス持続時間、及び80 MHzの繰り返し率を有する近赤外レーザーライトを備えた市販のシステム(Photonic Professional、Nanoscribe GmbH社)によって加工した。前駆体を63倍の顕微鏡対物レンズ(開口数:1.4)を使用して10 mm/s~90 mm/sの範囲のスキャン速度で加工したが、この過程での平均レーザー出力は30 mW~50 mWの範囲内であった。
【0078】
プリント過程の完了後に、試料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に室温で30分間浸漬して現像して、未架橋の前駆体を除去した。足場の形態を走査型電子顕微鏡法(SEM)によって観察した。
【0079】
走査型電子顕微鏡法を使用したプリントされた微小足場の特性評価
走査型電子顕微鏡を用いて、集束した電子線により試料を様々な深さでスキャンすることにより、試料の形態を観察することができる。電子線と試験片との間の相互作用によって、二次電子(SE)、後方散乱電子(BSE)、及び特性X線を含む様々な種類のシグナルが生成される。この方法によって、試料を10倍から最大500000倍の間の範囲の倍率で画像化することができる。試料の走査型電子顕微鏡評価は、SEM(HIROX 4500M)を使用して実施した。SEM分析の前に、試料を12 nmの厚さを有するAuの層でスパッタ被覆(Jeol社のJFC-2300)した。
【0080】
2光子重合法によってプリントされた微小足場のSEM画像が図4に示されている。図4の(c)、(d)、(f)、(g)、(h)は、それぞれ、プロピレングリコールジアクリレート(PGDA)で末端封鎖されたPCL系ウレタン、エトキシル化及びプロポキシル化されたペンタエリスリトール(EPPETA)で末端封鎖されたPCL系ウレタン、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)トリアクリレート(PETA)で末端封鎖されたPEG系ウレタン、エトキシル化及びプロポキシル化されたペンタエリスリトールトリアクリレート(EPPETA)で末端封鎖されたPEG系ウレタン、並びにジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPEPA)で末端封鎖されたPEG系ウレタンからプリントされた微小足場である。上述の前駆体で描画された微小足場は、単一のアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン(図4e)及び各末端が単一のアクリレートで末端封鎖された4アーム星型のPCL系ウレタン(図4b)からプリントされた微細構造物と比較して、より良好なCAD-CAM模写性及び形状忠実度を有する3D微細構造で得られた。末端基として単一のアクリレートを有する前駆体から架橋された微小足場は、溶剤中で足場を現像した後に歪むか、又は完全に崩壊した。
【0081】
驚くべきことに、1分子当たりのアクリレートの数及び樹脂1グラム当たりのアクリレート濃度が等しいにもかかわらず、PGDAで末端封鎖されたPCL系ウレタンでは、優れた安定性及び形状忠実度を有する構造物が得られたのに対して、各アームがモノアクリレート化されたオリゴエチレンオキシドで末端封鎖された4アーム星型のPCL系ウレタンでは、現像過程の後に構造物の崩壊がもたらされた。これにより、分子の少なくとも1つの末端基に近接して多数のアクリレートを有する前駆体が、各末端基に単一のアクリレートを有する前駆体と比較して2PP加工において改善された結果をもたらすことが実証される。
【0082】
興味深いことに、多数のアクリレートで末端封鎖された前駆体からプリントされた足場の形態は非常に広い加工窓を示し、90 mm/sまで速度を増加させても変形を示さなかった。他方で、各末端が1つのアクリレートで末端封鎖された前駆体では、10 mm/s~90 mm/sの範囲のあらゆる描画速度で大きな変形が示された。図5は、PETAで末端封鎖されたPEG系ウレタンでプリントされた微小足場(上列)、各アームがモノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖された星型のPCL系ウレタンでプリントされた微小足場(中列)、及びモノアクリレート化されたオリゴエチレングリコールで末端封鎖されたPEG系ウレタンでプリントされた微小足場(下列)を示している。
【0083】
実施例4:ステレオリソグラフィー(SLA)による多数のアクリレートで末端封鎖された前駆体の加工
多数のアクリレート及びジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを個々にMilliQ中に溶解した。これらの溶液にIrgacure 2959光開始剤を添加した。溶液中のIrgacure 2959とアクリレート基との間のモル比を0.02に保持する。前駆体分子中のアクリレート基の濃度は事前に1H-NMR分光法を使用して決定されている。
【0084】
多数のアクリレート及びジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを完全に溶解した後に、これらの前駆体を500 mWのレーザー出力を有するSLAプロセッサーを使用して加工した。これらの前駆体を2000 mm/s及び4000 mm/sのレーザースキャン速度を使用して加工し、薄層を得た。スキャンの数を1に保持した。加工後に、硬化したポリマーのゲル化率を決定した。
【0085】
ゲル化率の研究によるSLA加工された前駆体の特性評価
SLA加工後に、架橋されたポリマーを液体前駆体から取り出し、円盤(D=8 mm)に打ち抜いた。これらの円盤を凍結乾燥して初期の含水量を除去し、秤量し、MilliQ中で室温にて3日間インキュベートした。その後に、膨潤した試料を凍結乾燥し、再度秤量した。材料のゲル化率を実施例2に記載される式により決定した。
【0086】
図6は、スキャン速度2000 mm/s及び4000 mm/sで加工された多数のアクリレート及びジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率を示している。スキャン速度2000 mm/s及び4000 mm/sで加工された多数のアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率は、それぞれ96.06±1.12%及び96.37±0.14%であったのに対して、スキャン速度2000 mm/s及び4000 mm/sで加工されたジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率は、それぞれ67.04±1.11%及び53.27±1.93%であった。
【0087】
多数のアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率は高くて100%に近く、1回のスキャンで速度を2000 mm/sから4000 mm/sまで高めることによっても大きな影響は及ぼされなかった。ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのゲル化率はスキャン速度を4000 mm/sから2000 mm/sに下げることにより高まったにもかかわらず、ゲル化率は十分に高くはなかった。ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンについては、前駆体を2000 mm/sのスキャン速度で3回スキャンした後にのみ、98.29±0.71%のゲル化率が達成された。これらの結果は、多数のアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンのより高い架橋効率によって説明することができる。
【0088】
実施例5:ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの変性によるテトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの合成
ポリ(エチレングリコール)(PEG、2000 g/mol)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジエタノールアミン(DEA)、カンジダ・アンタルクティカ(Candida antarctica)のリパーゼB(CaLB)、1-チオグリセロール、及びヘキシルアミン(HA)はMerck社から入手した。ネオデカン酸ビスマスはUmicore社から入手した。ブチルヒドロキシトルエンはInnochem GMBH社から入手した。Bisomer PEA6の供給元はGEO Specialty Chemicals社であった。
【0089】
テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを、図7に示される反応スキームに従って、そして本明細書の以下で更に規定されるように調製した。
【0090】
最初の工程で、500 gのPEG(2000 g/mol)、0.39 gのブチルヒドロキシトルエン(BHT)、及び0.09 gのリン酸(H3PO4、85%)を、撹拌機を備え油浴に接続された二重ジャケット式反応器に加えることによって、ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを調製した。この混合物をN2ブランケット下で加熱してPEGを乾燥させた後に、111 gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.23 gのネオデカン酸ビスマス触媒を添加した。温度を75℃で保持した。2時間後に、168 gのBisomer PEA6及び0.23 gのネオデカン酸ビスマスを空気流下で反応器に加えた。イソシアネート含有量が0.02 meq g-1より低くなるまで温度を80℃で維持した後に、反応を停止させた。
【0091】
次の工程で、得られた生成物を2つの異なる方法を使用して変性させて、以下に記載されるようにテトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得た。
【0092】
a)ジエタノールアミンのアザマイケル付加及びアクリレート化によるジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの変性
この方法では、ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの合成に続いて、カンジダ・アンタルクティカのリパーゼB(CaLB)によって触媒されたジエタノールアミン(DEA)とアクリレート間のマイケル付加反応を行って、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得た。第2工程で、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを塩化アクリロイルと反応させて、テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得た。
【0093】
20 gのジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン及び1.59 mLのDEAをエタノール中に溶解した後に、0.226 gのCaLBを添加した。反応混合物を磁気撹拌機によって50℃で8時間撹拌して、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得て、この生成物を24時間の透析により精製した。第2工程で、15 gのテトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを、3つ口フラスコ内で60 mLの乾燥ジクロロメタン(DCM)中に溶解した。フラスコを氷浴中で冷却し、この溶液に4.32 mLの塩化アクリロイルを連続的なAr流下で滴加した。2時間後に、氷浴を取り除き、反応混合物を室温で5時間撹拌した。その溶液を冷ジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過し、真空オーブンで一晩乾燥させることによって、テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン生成物が得られた。
【0094】
b)チオマイケル付加クリック反応及びアクリレート化によるジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの変性
この方法では、ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの合成に続いて、ヘキシルアミン(HA)によって触媒された1-チオグリセロールとアクリレート間のチオマイケル付加反応を行って、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得た。第2工程で、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを塩化アクリロイルと反応させて、テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得た。
【0095】
20 gのジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン及び2.38 mLの1-チオグリセロールをエタノール中に溶解した後に、3.61 mLのHAを添加した。反応混合物を磁気撹拌機によって40℃で4時間撹拌して、テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを得て、この生成物を24時間の透析により精製し、真空オーブンで乾燥させた。第2工程で、15 gのテトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタンを、3つ口フラスコ内で60 mLの乾燥DCM中に溶解した。フラスコを氷浴中で冷却し、この溶液に7.19 mLの塩化アクリロイルを連続的なAr流下で滴加した。2時間後に、氷浴を取り除き、反応混合物を室温で5時間撹拌した。その溶液を冷ジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過し、真空オーブンで一晩乾燥させることによって、テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン生成物が得られた。
【0096】
1H-NMR分光法によるテトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの特性評価
前駆体の1H-NMRスペクトルは実施例1に記載されるようにして得た。(DEAのアザマイケル付加及びアクリレート化法を介して合成された)テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタンの1H-NMRスペクトルは図8に示されている。5.8、6.1、及び6.3でのシグナルはアクリレートのプロトンに属する。PEG主鎖中に存在するメチレンのプロトンに起因するシグナルは3.3 ppm~3.8 ppmで観察され得る。0.7 ppmから1.3 ppmの間のシグナルはIPDIの環状メチレン単位のプロトンに対応する。アミノエステル官能基に対してα位のメチレン基のプロトンのシグナルは2.81 ppmに現れ、2.36でのシグナルはβ位のメチレン基のプロトンに対応する。
【0097】
実施例6:フォトレオロジーによる網状構造形成の評価
前駆体の貯蔵弾性率(G')は、同時のUV照射の間のレオロジー研究によって決定された。石英プレートを通して下方から試料を照射するためにEXFO社のNovacure 2000 UVAライトを備えたAnton Paar社のPhysica MCR 300レオメーターを使用した。試料のローディングのために前駆体を最初に60℃で溶融した後に、実験の前に20℃に冷却した。実験は上部の直径が15 mmのパラレルプレート機構を使用して20℃の一定温度で実施した。
【0098】
最初に、前駆体の弾性率をUV照射の前に10分間記録した。次に、試料を30分間照射した後に、UV曝露なしで5分間の間隔を置いて最終的な弾性率を決定した。UV照射の間のPEG-ウレタン-PETA、PEG-ウレタン-EPPETA、PCL-ウレタン-EPPETA、及びPCL-ウレタン-PGDAの貯蔵弾性率は図10に示されている。これらの前駆体は、20℃で溶剤の不存在下でUV照射時に素早い架橋反応を示した。
【0099】
実施例7:アクリレートで末端封鎖されたウレタン系ポリマーの電界紡糸
PEG-ウレタン-PGDA(主鎖分子量:10000 g/mol)を電界紡糸するために、前駆体を10%の濃度で水/エタノール(90/10)中に溶解した。繊維形成を促進するために、1%のポリエチレン(グリコール)(1000000 g/mol、Sigma-Aldrich社)を電界紡糸溶液中に添加した。その溶液を15 kVの電圧、0.5 mL/hのシリンジポンプ流速で電界紡糸することで、滑らかなビードレスの繊維が得られた(データは示していない)。

参考文献
Claeyssens et al., Three-Dimensional Biodegradable Structures Fabricated by Two-Photon Polymerization, Langmuir 25 (2009), 3219-3223.
Weiss et al., Two-Photon Polymerization of Biocompatible Photopolymers for Microstructured 3D Biointerfaces, Advanced Engineering Materials 13 (2011), B264-B273.
Berg et al., Synthesis of Photopolymerizable Hydrophilic Macromers and Evaluation of Their Applicability as Reactive Resin Components for the Fabrication of Three-Dimensionally Structured Hydrogel Matrices by 2-Photon-Polymerization, Advanced Engineering Materials 13 (2011) B274-B284.
Melissinaki et al., Direct laser writing of 3D scaffolds for neural tissue engineering applications, Biofabrication 3 (2011) 045005 (12pp).
Felfel et al., In vitro degradation and mechanical properties of PLA-PCL copolymer unit cell scaffolds generated by two-photon polymerization 2016 Biomed. Mater. 11 015011.
【符号の説明】
【0100】
図面訳
図1
In one specific example, x is 2 1つの特定の例では、xは2である
PCL diol PCLジオール
EPPETA end-capped PCL-based urethane EPPETAで末端封鎖されたPCL系ウレタン

図2
Transmittance 透過率
Wavenumbers 波数

図5
Writing Speed 描画速度
CAD model CADモデル

図6
diacrylate end-capped PEG ジアクリレートで末端封鎖されたPEG
multiacrylate end-capped PEG 多数のアクリレートで末端封鎖されたPEG
Gel Fraction ゲル化率
Laser scanning speed レーザースキャン速度

図7
a) Aza-Michael addition reaction a)アザマイケル付加反応
Diacrylate end-capped PEG-based urethane ジアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン
b) Thiol-Michael addition click reaction b)チオールマイケル付加クリック反応
1-Thioglycerol 1-チオグリセロール
Tetrol end-capped PEG-based urethane テトラオールで末端封鎖されたPEG系ウレタン
Acryloyl Chloride 塩化アクリロイル
RT 室温
Tetraacrylate end-capped PEG-based urethane テトラアクリレートで末端封鎖されたPEG系ウレタン

図9
PCL-urethane-PGDA PCL-ウレタン-PGDA
PCL-urethane-EPPETA PCL-ウレタン-EPPETA
Commercial PCL 市販のPCL
Weight loss 重量減少
Time (h) 時間(時)

図10
PEG-urethane-PETA PEG-ウレタン-PETA
PEG-urethane-EPPETA PEG-ウレタン-EPPETA
PCL-urethane-EPPETA PCL-ウレタン-EPPETA
PCL-urethane-PGDA PCL-ウレタン-PGDA
UV on UVオン
UV off UVオフ
Time (s) 時間(秒)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10