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  • 特許-辛味感の消失促進用の組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】辛味感の消失促進用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/12 20160101AFI20240827BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20240827BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A23L27/12
A23G4/06
A23G3/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020019858
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021122256
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 研究集会名:名古屋文理大学平成30年度フードビジネス学科卒業研究発表会 開催日 :平成31年2月8日 開催場所:名古屋文理大学ソフィアホール
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520047439
【氏名又は名称】杉山 立志
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 立志
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健吾
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140974(WO,A1)
【文献】ベリーベリー☆ラッシー♪,クックパッド,[online],2015年03月15日,[2023年9月11日検索],Retrieved from the Internet:<URL:https://web/archive.org/web/20160131154102/https:/cookpad.com/recipe/2426518>
【文献】まちがえて辛いもの食べたら?,[online],2017年07月05日,[2023年9月13日検索],Retrieved from the Internet:<URL: https://web.archive.org/web/20170705135758/https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penspo/contents07/>
【文献】夏☆ブルーベリーラッシー,クックパッド,[online],2008年07月24日,[2023年9月13日検索],Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/617959>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベリー類果実又はその加工物を辛味感の消失促進のために含み、前記ベリー類果実又はその加工物がアントシアニンを含む、辛味感の消失促進用の組成物(但し、牛乳又はヨーグルトを含む飲料、及びラッシーを除く)
【請求項2】
ベリー類果実の加工物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジンフレーバーを含まない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ベリー類がスノキ属に属する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ベリー類がナツハゼ、ビルベリー、及びブルーベリーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
辛味感がカプサイシノイドを含む辛味成分によって引き起こされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記加工物が、破砕物、凍結物、圧搾物、果汁、抽出物、濃縮物、ペースト、スムージー、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
有効量のアントシアニンを辛味感の消失促進の有効成分として含む、辛味感の消失促進用の組成物(但し、牛乳又はヨーグルトを含む飲料、及びラッシーを除く)
【請求項9】
ジンフレーバーを含まない、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
食品組成物又は医薬組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
サプリメント、ガム、又はキャンディである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
辛味成分の摂取後に口腔内に適用することにより辛味感の消失を促進するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、辛味感の消失促進用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トウガラシ由来のカプサインをはじめとする辛味成分を多く含む様々な辛味食品が人気を集めている。辛味成分は、独特の刺激やうま味を食品に付与するだけでなく、食欲増進効果や代謝促進効果を有することが知られており、その機能性でも注目を集めている。
【0003】
しかしながら、多量の辛味成分を含む食品は刺激が強く、辛味成分に起因する痛みや違和感などの辛味感が口腔内に比較的長く残存する。そのため、辛味食品を口にしたときに、許容範囲を超える辛味感による苦痛を味わったり、その後に食べる食品の味が分かりにくくなったりすることがある。辛味に対する耐性が比較的低く、辛味食品を苦手とする人も多い。
【0004】
食品に添加して辛味を低減するための各種の辛味抑制剤が知られている。特許文献1は、ジグリセリドを有効成分とする辛味抑制剤を開示している。特許文献2は酸性リン脂質又はそのリゾ体を有効成分とする辛味抑制剤を開示している。特許文献3は酵母を有効成分として含む辛味抑制剤を開示している。特許文献4は、グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品と、還元糖を加熱して得られる還元糖加工品を有効成分とする辛味抑制剤を開示している。
【0005】
しかしこれらの辛味抑制剤は、食品の辛味自体を低減するため、辛味食品の本来の味が変わってしまうという問題がある。麻婆豆腐や担々麺など、辛味が重要な要素を占める辛味食品において、辛味自体が低減することは望ましくない。辛味食品の味を変えることなく、辛味食品の飲食によって生じる辛味感をより早く消失させることができる手段が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-299448号公報
【文献】特開平8-173083号公報
【文献】特開2014-14279号公報
【文献】特開2019-170295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、辛味感の消失を促進することができる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、アントシアニンを多く含むベリー類果実が、辛味成分によって引き起こされる口腔内の辛味感のより早い消失をもたらすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]ベリー類果実又はその加工物を含む、辛味感の消失促進用の組成物。
[2]ベリー類果実の加工物を含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]ベリー類がスノキ属に属する、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]ベリー類がナツハゼ、ビルベリー、及びブルーベリーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]辛味感がカプサイシノイドを含む辛味成分によって引き起こされる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記加工物が、破砕物、凍結物、圧搾物、果汁、抽出物、濃縮物、ペースト、スムージー、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記加工物がアントシアニンを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]有効量のアントシアニンを含む、辛味感の消失促進用の組成物。
[9]食品組成物又は医薬組成物である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]サプリメント、ガム、又はキャンディである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]辛味成分の摂取後に口腔内に適用することにより辛味感の消失を促進するための、上記[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、辛味食品の飲食後の辛味感をより早く消失させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は辛味標準食に続いて被験試料を摂取した後の痛み継続時間及び違和感継続時間を示すグラフである。*はt検定(両側検定、非等分散)により水に対して有意差があったことを示す(p<0.01)。
図2図2は辛味標準食に続いて被験試料を摂取した後の痛み継続時間及び違和感継続時間を示すグラフである。
図3図3は辛味標準食に続いて被験試料を摂取した後の痛み継続時間及び違和感継続時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はベリー類果実又はその加工物を含む、辛味感の消失促進用の組成物に関する。
【0013】
本発明においてベリー類とは、園芸学上の用語であるベリー類を指し、可食性で比較的小型の液果を形成する植物又はその果実である。ベリー類果実の多くは、アントシアニンを多く含む青、藍、紫、黒、又は赤系統の色素を含むことが知られている。
【0014】
ベリー類は、以下に限定されないが、ツツジ科(Ericaceae)、例えばスノキ属(Vaccinium)若しくはガンコウラン属(Empetrum);スグリ科(Grossulariaceae)、例えばスグリ属(Ribes);又はバラ科(Rosaceae)、例えばキイチゴ属若しくはアロニア属(Aronia);クワ科(Moraceae)、例えばクワ属(Morus)等であってよい。ツツジ科スノキ属のベリー類としては、以下に限定されないが、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)、ブルーベリー(Vaccinium corymbosum、Vaccinium australe、Vaccinium ashei、Vaccinium angustifolium、Vaccinium membranaceum、Vaccinium ovatum、Vaccinium pallidum等)、ブラックベリー(Vaccinium oxycoccus)、ナツハゼ(Vaccinium oldhamii)、コケモモ(Vaccinium vitis-idaea)、ツルコケモモ(Vaccinium oxycoccus)、クロマメノキ(Vaccinium uliginosum)、シャシャンボ(Vaccinium bracteatum)、クロウスゴ(Vaccinium ovalifolium)等が挙げられる。ツツジ科ガンコウラン属のベリー類としては、以下に限定されないが、クローベリー(Empetrum nigrum)が挙げられる。スグリ科スグリ属のベリー類としては、以下に限定されないが、ブラックカラント(別名:カシス)(Ribes nigrum)、レッドカラント(Ribes rubrum)等が挙げられる。バラ科キイチゴ属のベリー類としては、以下に限定されないが、ラズベリー(Rubus idaeus)、サーモンベリー(Rubus spectabilis)、スィムブルベリー(Rubus occidentaliss)等が挙げられる。バラ科アロニア属のベリー類としては、以下に限定されないが、チョークベリー(Aronia arbutifolia、Aronia melanocarpa、Aronia prunifolia等)が挙げられる。クワ科クワ属のベリー類としては、以下に限定されないが、マルベリー(Morus nigra)が挙げられる。
【0015】
本発明の組成物はベリー類果実を生の果実又は加工物の形態で含むことができる。ベリー類果実は、好ましくは成熟果実である。
【0016】
ベリー類果実の加工物は、アントシアニン等の含有成分の大幅な分解又は除去がされるものでない限りは特に限定されない。ベリー類果実の加工物は、以下に限定されないが、例えば、破砕物、凍結物、圧搾物、果汁、抽出物(例えば、水抽出物、エタノールなどによるアルコール抽出物)、濃縮物、ペースト、スムージー、乾燥物(凍結乾燥物など)、塩蔵物、糖蔵物、シロップ漬、アルコール漬、オイル漬、発酵物(果実酢、果実酒等)等、及びそれらの2つ以上の組み合わせであってよい。一実施形態では、ベリー類果実の加工物は、破砕物、凍結物、圧搾物、果汁、抽出物、濃縮物、ペースト、スムージー等、及びそれらの2つ以上の組み合わせであってよい。「それらの2つ以上の組み合わせ」とは、2種以上の加工物を含むもの又は2種以上の加工処理により得られるものを意味し、例えば、破砕物と果汁の混合物、抽出物と果汁の混合物、濃縮物を添加したペースト、破砕物であって凍結物である凍結破砕物、圧搾物に該当する果汁である圧搾果汁、果汁の濃縮物である濃縮果汁、抽出物の濃縮物である濃縮抽出物等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いるベリー類果実及びベリー類果実の加工物は、アントシアニンを含むことが好ましい。アントシアニンとしては、原料とするベリー類に含まれるものであれば特に限定されず、複数種のアントシアニンを含み得る。ベリー類果実の加工物は、果皮を含むものであってもよいし、アントシアニンを含む限り果皮を含まなくてもよい。
【0018】
ベリー類果実又はその加工物を含む本発明の組成物は、組成物100g(固形物の場合)又は100mL(液体又は半液体の場合)当たり、アントシアニンを好ましくは40mg以上、より好ましくは50mg以上、さらに好ましくは70mg以上又は100mg以上、例えば40mg~20g、40mg~10g、50mg~10g、40mg~2000mg又は40mg~1000mg含み得るが、本発明の組成物中のアントシアニン含量はこれらの範囲に限定されない。
【0019】
本発明はまた、有効量のアントシアニンを含む、辛味感の消失促進用の組成物も提供する。有効量のアントシアニンは、組成物100g当たり、好ましくは40mg以上、より好ましくは50mg以上、さらに好ましくは70mg以上又は100mg以上、例えば40mg~20g、40mg~10g、40mg~2000mg又は40mg~1000mgのアントシアニン量であり得るが、これらの範囲に限定されない。有効量のアントシアニンはまた、一回の適用/投与当たり、10~1000mg、15~500mg、又は17~200mgのアントシアニン量であり得るが、これらの範囲に限定されない。この組成物は、食品添加剤又は医薬品添加剤(製薬上許容される添加剤)などの添加剤、例えば、安定化剤、懸濁化剤、緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤、甘味料、香料、保存剤、着色剤、賦形剤、担体、溶媒、コーティング剤などをさらに含んでもよい。
【0020】
アントシアニンの定量は常法により行うことができるが、例えば後述の実施例に記載されているようにして、抽出物(被験試料に応じて、粉砕後抽出物、又は1%塩酸-メタノール抽出物など)について分光光度計を用いて530 nmでの吸光度を測定することにより行うことができる。
【0021】
なお本発明の組成物は、ベリー類果実、その加工物、及びアントシアニン以外の成分を有効成分とする辛味抑制剤を含まなくてよい。本発明の組成物は、グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品(グルカナーゼ処理及び加熱した焼酎粕)と還元糖を加熱して得られる還元糖加工品(加熱した還元糖)との組み合わせ(特許文献4を参照)を含まない。本発明の組成物はまた、目的とする辛味成分を含まない。
【0022】
ベリー類果実若しくはその加工物、及び/又はアントシアニンを含む本発明の組成物は、辛味感の消失促進作用を有するため、辛味感の消失促進のために用いることができる。本発明において、「辛味感」とは、辛味成分又は辛味成分を含む食品(辛味食品)を飲食等により口に入れる(摂取する)ことで口腔内に引き起こされる痛みや違和感(典型的には舌の違和感)を含む刺激感覚をいう。本発明における辛味感は、任意の辛味原料によって引き起こされるものであってよく、例えば、トウガラシ、マスタード(和からし、洋からし)、ワサビ、ショウガ、サンショウ、コショウ等により引き起こされるものであり得る。本発明における辛味感は、任意の辛味成分によって引き起こされるものであってよく、例えば、カプサイシノイド、アリルイソチオシアネート、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン、サンショオール、ピペリン等からなる群から選択される少なくとも1つの辛味成分によって引き起こされるものであってよい。カプサイシノイドとしては、以下に限定されないが、例えば、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物は、口腔内で辛味成分により引き起こされる辛味感が消失するまでの時間を短縮することができる。本発明の組成物の辛味感の消失促進効果は、例えば後述の実施例に記載されたようにして、辛味成分により引き起こされる口腔内の痛み継続時間及び違和感継続時間を指標として評価することができる。具体的には、辛味感の消失促進効果は、50~60℃の辛味成分又はそれを含む食品(特に、実施例に記載した辛味標準食)を、5秒間口に含んだ後に飲み込み、その直後に被験試料を口に含んで15秒間咀嚼するか又は口内に保持してから飲み込み、被験試料を飲み込んだ時点(0秒)から、辛味成分に起因する口腔内の痛み及び舌の違和感がそれぞれ消失するまでの時間(痛み継続時間及び違和感継続時間)を測定する。被験試料として水を用いた場合の痛み継続時間及び違和感継続時間と比較して、被験試料を用いた場合の痛み軽減時間及び違和感継続時間の両方が、全パネル平均で80%以下に減少する場合、被験試料は辛味感の消失促進効果をもたらすと評価することができる。
【0024】
本発明の組成物は、固体状、半固体状、ゲル状、又は液体状であってよい。本発明の組成物は、固形物、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、水溶液、懸濁液、乳液、シロップ、ゼリー、ジェル、ペースト、シート、スプレー剤等の任意の形態であってもよい。
【0025】
本発明の組成物は、食品組成物であってもよい。本発明の組成物は、食品添加剤などの添加剤、例えば、安定化剤、懸濁化剤、緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤、甘味料、香料、保存剤、着色剤、賦形剤、担体、溶媒、コーティング剤などをさらに含んでもよい。
【0026】
本発明の食品組成物は、飲料であってもよいし、飲料以外の食品であってもよい。本発明の食品組成物は、機能性食品を包含する。本発明の食品組成物は、ベリー類果実、その加工物、及びアントシアニン以外の、任意の食品成分をさらに含んでもよい。本発明の食品組成物としては、以下に限定されないが、例えば、飲料、惣菜、乳製品、菓子、冷菓、サプリメント、調味料等が挙げられる。好ましい食品組成物としては、ガム、キャンディ、グミ、ラムネ、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、顆粒剤、粉剤、及び液剤などの各種剤形のもの)、ふりかけ、ドレッシング、スープ、飲料、スムージー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の組成物は、医薬組成物であってもよい。本発明の組成物は、医薬品添加剤(製薬上許容される添加剤)などの添加剤、例えば、安定化剤、懸濁化剤、緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤、甘味料、香料、保存剤、着色剤、賦形剤、担体、溶媒、コーティング剤などをさらに含んでもよい。本発明の医薬組成物は、基本的には口腔内に適用する製剤であり、以下に限定するものではないが、例えば、被覆錠、糖衣錠、顆粒剤、粉剤、液剤、ガム剤、含嗽剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、付着剤、バッカル錠、トローチ錠等であってよい。本発明の医薬組成物は、他の任意の生理活性成分を含んでもよい。
【0028】
本発明の食品組成物又は医薬組成物などの組成物は、辛味成分の摂取後、例えば、辛味食品の飲食後に、口腔内に適用することにより辛味感の消失を促進するためのものであることが好ましい。本発明の組成物は、辛味に対する耐性が低い対象、又は辛味成分若しくは辛味食品を飲食する機会が多い対象に適用/投与するのに特に適している。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、辛味に対する感受性が著しく高い対象に対して処方され得る。本発明における対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0029】
本発明はまた、辛味成分の摂取後、例えば、辛味食品の飲食後の対象に対し、本発明の食品組成物又は医薬組成物などの組成物を口腔内に適用/投与することにより、辛味感の消失を促進する方法も提供する。
【0030】
本発明の食品組成物又は医薬組成物などの組成物は、以下に限定するものではないが、例えば、一回の適用/投与当たり、10~1000mg、15~500mg、17~200mg、又は50mg~150mgのアントシアニンを含む量で、口腔内に適用/投与することができる。本発明の食品組成物又は医薬組成物などの組成物は、適用/投与単位当たり、10~1000mg、15~500mg、17~200mg、又は50mg~150mgのアントシアニンを含むものであり得る。
【実施例
【0031】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
1)辛味標準食の調製
トウガラシ粉末を用いて、表1の組成に従って辛味標準食(2.5%トウガラシ粉末含有スープ)を作製した。トウガラシの辛味はカプサイシノイドによってもたらされ、代表的な辛味成分であるカプサイシンはその主たる成分である。
【0033】
【表1】
【0034】
辛味標準食は、放射形温度計を用いてその温度が50~60℃であることを確認してから、以下の官能試験に用いた。
【0035】
2)官能試験
被験試料毎に5~10名のパネル(評価者)で官能実験を行った。パネルは、50~60℃の辛味標準食15 mlを、5秒間口に含んだ後に飲み込み、その直後に被験試料として水(15 ml)、牛乳(15 ml)、コーヒー(15 ml)、ブルーベリーペースト(15 ml)、ブルーベリー果実(生)(20g又は15g)、ナツハゼペースト(15 ml)、及びアントシアニンサプリメント(0.93 g[3粒];ブルーベリーエキス(DHC);2粒当たりアントシアニン含量61.2mg)のいずれかを口に含んで15秒間咀嚼するか又は口内に保持してから飲み込んだ。
【0036】
被験試料を飲み込んだ時点(0秒)から、辛味に起因する口腔内の痛み及び舌の違和感がそれぞれ消失するまでの時間(痛み及び違和感継続時間)を測定した。被験試料として水を用いた場合の痛み継続時間、違和感継続時間をそれぞれ100とした場合の、各被験試料を用いた場合の痛み軽減時間、違和感継続時間の相対値を算出した。結果を図1に示す。
【0037】
図1に示すとおり、辛味標準食の後に、ブルーベリーペースト、ブルーベリー果実(生)、ナツハゼペースト、又はアントシアニンサプリメントを口に含んだ場合には、辛味成分に起因する痛み及び違和感、すなわち辛味感が、水と比較してかなり早く消失したことが示された。
【0038】
対照的に、辛味感の消失を早めると言われている牛乳やコーヒーは、辛味感に対する十分な消失促進効果を示さなかった。コーヒーはむしろ辛味感の消失を遅らせる結果となった。
【0039】
この結果から、ベリー類果実及びその加工物、並びにアントシアニンが、辛味成分に起因する痛み及び違和感のような辛味感の消失を促進する効果をもたらすことが示された。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様にして調製した辛味標準食を使用し、別のパネルにおいてさらに官能試験を行った。被験試料毎に5~10名のパネル(評価者)で官能実験を行った。パネルは、50~60℃の辛味標準食15 mlを、5秒間口に含んだ後に飲み込み、その直後に被験試料として水(15 ml)、ココア(15 ml)、緑茶(15 ml)、コーヒー(15 ml)、赤ワイン(15 ml)、ブルーベリー果実(15 g)、及びナツハゼペースト(15 ml)のいずれかを口に含んで15秒間咀嚼するか又は口内に保持してから飲み込んだ。
【0041】
被験試料を飲み込んだ時点(0秒)から、辛味に起因する口腔内の痛み及び舌の違和感がそれぞれ消失するまでの時間(痛み及び違和感継続時間)を測定した。被験試料として水を用いた場合の痛み継続時間、違和感継続時間をそれぞれ100とした場合の、各被験試料を用いた場合の痛み軽減時間、違和感継続時間の相対値を算出した。結果を図2に示す。
【0042】
図2に示すとおり、辛味標準食の後に、ブルーベリー果実(生)又はナツハゼペーストを口に含んだ場合には、辛味成分に起因する痛み及び違和感、すなわち辛味感が、水と比較してかなり早く消失したことが示された。
【0043】
対照的に、緑茶とコーヒーは、辛味感に対する消失促進効果を示さなかった。ココアを用いた場合には、違和感の消失はやや早くなったものの、痛みの消失は水と比較して遅くなった。赤ワインを用いた場合には、違和感の消失はやや早くなったものの、痛みの消失の促進は認められなかった。
【0044】
以上の結果から、特にベリー類果実が、辛味感の消失促進について特に高い効果をもたらすことが示された。
【0045】
[実施例3]
実施例1と同様にして調製した辛味標準食を使用し、実施例1及び2とは別のパネルにおいてさらに官能試験を行った。被験試料毎に5名のパネル(評価者)で官能実験を行った。パネルは、50~60℃の辛味標準食15 mlを、5秒間口に含んだ後に飲み込み、その直後に被験試料として水(15 ml)又はビルベリーペースト(15 ml)を口に含んで15秒間口内に保持してから飲み込んだ。なおビルベリーペーストは解凍したビルベリー果実をミキサーで粉砕してペースト状にすることにより調製した。
【0046】
被験試料を飲み込んだ時点(0秒)から、辛味に起因する口腔内の痛み及び舌の違和感がそれぞれ消失するまでの時間(痛み及び違和感継続時間)を測定した。被験試料として水を用いた場合の痛み継続時間、違和感継続時間をそれぞれ100とした場合の、各被験試料を用いた場合の痛み軽減時間、違和感継続時間の相対値を算出した。結果を図3に示す。
【0047】
図3に示すとおり、辛味標準食の後に、ビルベリーペーストを口に含んだ場合には、辛味成分に起因する痛み及び違和感、すなわち辛味感が、水と比較して非常に早く消失したことが示された。
【0048】
以上の結果から、様々なベリー類果実が、辛味感の消失促進効果をもたらすことができ、特にビルベリー果実は高い効果をもたらすことが示された。
【0049】
[実施例4]
実施例1~3で用いた一部の被験試料について、アントシアニンの定量を行った。アントシアニンの定量は、液体については被験試料1gに30mLの1%塩酸-メタノールを加えて希釈した後、ペーストについては被験試料1gを粉砕して一晩(約18時間)かけて抽出を行った後、抽出液の上清を採取して希釈し、分光光度計を用いて530 nmでの吸光度を測定することにより実施した。実施例1で使用したアントシアニンサプリメントはアントシアニンを91.8 mg(被験試料当たり)含んでいる。アントシアニンサプリメントを用いて作成した検量線を用いて、被験試料中のアントシアニン含量を算出した。その結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
以上の結果から、辛味感の消失促進効果が高い被験試料は、100mL又は100g当たり、概ね50 mg以上、特に好ましくは100mg以上の濃度でアントシアニンを含むことが示された。
図1
図2
図3