(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】二価核酸リガンドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240827BHJP
C07K 5/02 20060101ALI20240827BHJP
C07K 7/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C07K5/02
C07K7/02
(21)【出願番号】P 2020534407
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 US2018067080
(87)【国際公開番号】W WO2019126638
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504337958
【氏名又は名称】カーネギー メロン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リー,ダニス・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】サドケ,シヴァジ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ,ジェイ・ディニティ・アール
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0197793(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0083434(US,A1)
【文献】国際公開第2018/058091(WO,A1)
【文献】TANEJA, KL,Localization of Trinucleotide Repeat Sequences in Myotonic Dystrophy Cells Using a Single Fluorochrome-Labeled PNA Probe,BioTechniques,1998年,Vol. 24, No. 3,pp. 472-476
【文献】BAHAL, R et al.,Targeting abnormal triplet repeat containing hairpin RNA by using mini-PEG PNA,Abstracts of Papers, 242nd ACS National Meeting & Exposition, Denver, CO, United States, August 28-September 1, 2011,2011年,[検索日2022.11.09], <URL: https://www.morressier.com/article/targeting-abnormal-triplet-repeatcontaining-hairpin-rna-using-minipeg-pna/5fc62c9d9e0a135cbec67caf?>
【文献】ROHILLA, KJ et al.,RNA biology of disease-associated microsatellite repeat expansions,Acta Neuropathologica Communications,2017年08月29日,Vol. 5, No. 63,pp. 1-22,DOI: 10.1186/s40478-017-0468-y
【文献】NAPIERALA, M et al.,CUG Repeats Present in Myotonin Kinase RNA Form Metastable "Slippery" Hairpins,The Journal of Biological Chemistry,1997年,Vol. 272, No. 49,pp. 31079-31085
【文献】HSIEH, Wei-Che et al.,Design of a "Mini" Nucleic Acid Probe for Cooperative Binding of an RNA-Repeated Transcript Associated with Myotonic Dystrophy Type 1,Biochemistry,2018年01月15日,Vol. 57, No. 6,pp. 907-911,DOI: 10.1021/acs.biochem.7b01239
【文献】THADKE, SA et al.,Shape selective bifacial recognition of double helical DNA,Communications Chemistry,2018年11月07日,Vol. 1, No. 79,pp. 1-10,DOI: 10.1038/s42004-018-0080-5
【文献】THADKE, SA et al.,Design of Bivalent Nucleic Acid Ligands for Recognition of RNA-Repeated Expansion Associated with Huntington's Disease,Biochemistry,2018年03月21日,Vol. 57,pp. 2094-2108,DOI: 10.1021/acs.biochem.8b00062
【文献】ZHOU, P et al.,Novel Binding and Efficient Cellular Uptake of Guanidine-Based Peptide Nucleic Acid (GPNA),Journal of the American Chemical Society,2003年,Vol. 125, No. 23,pp. 6878-6879
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)核酸アナログ骨格であって、前記核酸アナログ骨格が、
(i)3以上の核酸アナログ骨格残基と、
(ii)第一末端と第二末端と、
(iii)前記第一末端に結合した第一連結基、前記第二末端に結合した第二連結基、とを含み、
ここで、前記第一連結基が、-SH、-OH、または-S-S-Lg部分を含み、および、前記第二連結基が、-C(O)-S-Lg、または、-C(O)-O-Lg部分を含み、ここで、Lgは、ジスルフィド(S-S)、エステルまたはチオエステル結合により前記骨格に連結している脱離基である、核酸アナログ骨格と、(b)前記3以上の核酸アナログ骨格残基に結合した二価核酸塩基の配列と、を含む遺伝子認識試薬であって、
ここで、前記二価核酸塩基の配列が、二本の核酸鎖上の単位標的配列、または、二本の核酸鎖上の単位標的配列の1以上の逐次反復と結合し、ここで、前記単位標的配列の1以上の逐次反復はリピート伸長の伸長されたリピートであり、
前記二価核酸塩基の配列は、
3-6-4、
6-4-3、
4-3-6、
4-6-3、
6-3-4、または、
3-4-6である、単位認識試薬配列を含み、
ここで、各3は、独立して
【化1】
であり、
各4は、独立して、
【化2】
であり、
各6は、独立して、
【化3】
であり、
ここで、Rは、
核酸アナログ骨格の核酸アナログ骨格残基であり、
R
1は、保護基またはHである、遺伝子認識試薬。
【請求項2】
前記二本の核酸鎖を逆平行配向でアライン
メントさせている、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項3】
前記単位標
的配列の1以上の
逐次反復は、前記二本の核酸鎖の両方の上で
、(CAG)
n
、の逐次反復、または、前記のいずれかに対して相補性である配列により形成される、請求項
1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項4】
前記単位標的配列がC/G-A/A-G/Cである、請求項2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項5】
前記核酸塩基の配列を、
JB3核酸塩基、JB6核酸塩基、およびJB4核酸塩基
JB6核酸塩基、JB4核酸塩基、およびJB3核酸塩基、
JB4核酸塩基、JB3核酸塩基、およびJB6核酸塩基、
JB3またはJB3b;JB6またはJB6b;およびJB4、JB4b、JB4c、
JB4d、またはJB4e、
JB6若しくはJB6b;JB4、JB4b、JB4c、JB4d、若しくはJB4e
;およびJB3若しくはJB3b、
JB4、JB4b、JB4c、JB4d、若しくはJB4e;JB3若しくはJB3b
;およびJB6若しくはJB6b、
JB3、JB6、およびJB4、
JB6、JB4、およびJB3、または
JB4、JB3、およびJB6、または、前記の2以上の逐次反復、
の順序で有する請求項
1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項6】
前記二本の核酸鎖がどちらも同一の核酸分子のものである、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項7】
前記二本の核酸鎖がどちらもRNAである、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項8】
前記核酸アナログ骨格残基が立体構造的に予め組織化されている、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項9】
前記核酸アナログ骨格残基がペプチド核酸(PNA)残基である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項10】
前記核酸アナログ骨格残基がγPNA残基である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項11】
前記認識試薬が構造:
【化4】
を有し、
ここで、
Yの各々が、独立して、二価核酸塩基の配列の核酸塩基であり、
Xが、SまたはOであり、
nが、1、2、3、4、5、または6であり、
mが、1、2、3、または4であり、
各R
1およびR
2が、各々独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、非置換若しくは置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、若しくは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2-O)
q-SP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、rおよびsは各々独立して、1から50の整数であり、
R
3は、脱離基であり、前記脱離基は、直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、置換若しくは非置換(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
1~C
8)カルボキシ(これらは、アミノ酸側鎖で任意に置換されていてもよい)、または、グアニジン含有基、または、
【化5】
を含み、
ここで、oは1~20であり、R
6の各々は、独立して、アミノ酸側鎖であり、R
7は-OHまたは-NH
2であり、
R
4は、(C
1~C
10)二価炭化水素または1以上のN若しくはO部分で置換された(C
1~C
10)二価炭化水素であり、
R
5は、-OH、-SHまたは-S-S-Lgであり、ここで、Lgは、直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、置換若しくは非置換(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
1~C
8)カルボキシ(これらはアミノ酸側鎖で任意に置換されていてもよい、)、または、グアニジン含有基、または、
【化6】
ここで、oは1~20であり、R
6の各々は、独立して、アミノ酸側鎖であり、R
7は-OHまたは-NH
2である、若しくは、
その薬剤的に許容される塩である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項12】
1以上のR
1
およびR
2
が、-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2で置換された(C
1~C
6)アルキルであり、ここで、P
1が、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qが0~50の整数であり、rが1~50の整数であり、sが1~50の整数である、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項13】
前記グアニジン含有基は、
【化6】
であり、ここで、n=1、2、3、4、または5である、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と薬剤的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項15】
前記1以上のN若しくはO部分は、-O-、-OH、-C(O)-、-NH-、-NH
2
、または、-C(O)NH-を含む、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府補助金に関する申立
本発明は、国立衛生研究所から授与された認可番号R21NS098102、および全米科学財団から授与された認可番号CHE1039870のもとで政府支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、それぞれその全体が参照により本明細書中に組み込まれる同時係属中の、2017年12月21日に提出された米国仮特許出願第62/708,783号および2018年2月14日に提出された米国仮特許出願第62/710,262号の恩恵を請求する。
【0003】
本願に関連する配列表はEFS-Webにより電子フォーマットで提出され、その全体は参照により明細書中に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は6526_1807597_ST25.txtである。当該テキストファイルのサイズは444バイトであり、当該テキストファイルは2018年12月21日に作成された。
【0004】
1.発明の分野
本明細書には、核酸および核酸オリゴマー組成物を使用して核酸を結合するための組成物が記載される。また、リピート伸長疾患(expanded repeat disease)、例えば、ハンチントン病などのPolyQ疾患を治療する方法も提供される。
【背景技術】
【0005】
2.関連技術の記載
RNA-リピート伸長(RNA-repeated expansion)は神経筋障害(または疾患)でよく見られる。その一例は、筋肉協調運動に影響を及ぼし、行動変化、認知低下、および認知症に至る常染色体優性障害である、ハンチントン病(HD)である。HDは、典型的には中年期に発症し、結果として発病後10~20年で死に至る。これは、ハンチントン(htt)遺伝子の第一エクソンにおけるCAGリピートが、6~29の正常範囲から40~180の病原性範囲まで伸長することに起因する。CAGリピート伸長(CAGexp)の長さは、発病の年齢に反比例する。Httは、偏在的であるが主にCNSのニューロンにおいて発現し、胚発生および神経保護作用を含む多様な生理学的役割を有する348kDaのタンパク質をコードする。CAGリピートは、HttのN末端領域におけるポリグルタミン(polyQ)配列に翻訳される。分子機能障害および臨床症状の膨大な情報にもかかわらず、CAGexpがHDを引き起こす精密なメカニズムはまだ充分に理解されていない、しかしながら、新たに出現した証拠は、HDが多変量障害であることを示唆している。
【0006】
タンパク質機能の喪失は、HDの病因に寄与し得るが、CAGexpを有するヘテロ接合型およびホモ接合型患者は類似した臨床的特徴を有するので、主な原因である可能性は低い。さらに、htt対立遺伝子のうちの1の欠失に起因して正常なHttタンパク質レベルが50%減少しているにもかかわらず、異常な表現型を示さない個体が確認されている。同様に、httヌル変異についてヘテロ接合型のマウスは、HDの臨床的特徴を示さず、ホモ接合体は初期胚発生で死亡する。これらの知見は、Httの胚発生における重要性を強調するが、HDの発病機序においては重要でない。新たに出現した証拠は、疾患のより妥当な原因として有害な機能獲得を指摘している。この示唆は、無関係な遺伝子において類似した閾値(30~40単位)を超えるCAGリピートは、HDに加えて、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)、SCA3(脊髄小脳失調3型またはマチャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症7型)、およびSCA17(脊髄小脳失調症17型)をはじめとする、いくつかの神経筋障害の原因であるという観察結果によって立証される。polyQ疾患と称するこれらの障害は、皮質下および皮質委縮、並びに核凝集物をはじめとするHDと共通した多くの特質を有する。
【0007】
HDおよび他のpolyQ疾患について三つの主な細胞毒性メカニズムが提案されている。第一のものはpolyQ毒性である。polyQは、凝集し、他のpolyQ含有タンパク質と相互作用して、大きなアミロイド様構造を形成する傾向がある。これらの主要(key)タンパク質の結合および隔離はそれらの生理的機能の喪失に至り、その結果、分子および細胞事象のカスケードの異常調節をもたらす。第二のものは、RNA機能の毒性獲得(toxic-gain)である。転写時に、rCAGexpは、muscleblind-like protein 1(MBNLl)、選択的RNAスプライシングレギュレータ、および他の主要タンパク質を隔離する不完全なヘアピン構造をとる。正常なrCAGリピートはヘアピンモチーフも選択し得るが、前記伸長バージョンとは異なる配列構成で選択される。rCAGexpをMBNL1と会合させると、核内フォーカスとして核中にトラップされた複合体が得られ、Httタンパク質の産生のために細胞質へ輸送ができなくなる。MBNLlの喪失の結果としてミススプライシングされる遺伝子転写産物は多様である。第三の発症メカニズムはタンパク質毒性である。ある一定の長さを超える(>42単位)rCAGリピートを、ATG開始コドンの非存在下で、リピート関連非ATG(RAN)翻訳を介して翻訳され、ポリセリン(polyS)と共に、有毒なpolyQおよびポリアラニン(polyA)タンパク質の産生に至ることが示された。後者の二つのメカニズムは、長い未翻訳のrCAGリピートの発現が、動物モデルにおいて有害であり、異常な行動的表現型はHDと同様であるという知見によってさらに裏付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概して、これらの知見は、HDがRNAおよびタンパク質機能の毒性獲得に起因する多変量障害であることを示している。したがって、HDを治療するための一つの有望なストラテジーは、伸長された転写産物を選択的に標的とすることであり、その理由は、これが三つの疾患経路すべてを干渉するからである。本明細書中で記載するのは、rCAGリピートおよび他のRNA-リピート配列の認識のための二価核酸リガンドである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
一態様では、遺伝子認識試薬が提供される。前記試薬は、3以上のリボース、デオキシリボース、または、核酸アナログ骨格残基を含む核酸若しくは核酸アナログ骨格、前記骨格残基に結合した二価核酸塩基配列、を含み、ここで、前記二価核酸塩基配列は、二本の核酸鎖上のリピート伸長疾患(repeat expansion disease)の伸長されたリピートの単位標的配列、若しくは単位標的配列の1以上の逐次反復に結合する。別の態様では、遺伝子認識試薬と薬剤的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0010】
別の態様では、リピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含有する核酸を結合する方法も提供される。前記方法は、前記伸長されたリピートを含む核酸を、3以上のリボース、デオキシリボース、または、核酸アナログ骨格残基を含む核酸若しくは核酸アナログ骨格、前記骨格残基に結合した二価核酸塩基配列、を含み、ここで、前記二価核酸塩基配列は、二本の核酸鎖上のリピート伸長疾患の伸長されたリピートの単位標的配列、若しくは単位標的配列の1以上の逐次反復に結合する、遺伝子認識試薬と接触させることを含む。
【0011】
さらに別の態様では、患者から得たサンプルにおけるリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含む核酸の存在を特定する方法が提供される。前記方法は、前記患者から得た核酸サンプルを、3以上のリボース、デオキシリボース、または、核酸アナログ骨格残基を含む核酸若しくは核酸アナログ骨格、前記骨格残基に結合した二価核酸塩基配列、を含み、ここで、前記二価核酸塩基配列は、二本の核酸鎖上のリピート伸長疾患の伸長されたリピートの単位標的配列、若しくは単位標的配列の1以上の逐次反復に結合する、遺伝子認識試薬と接触させることと、前記サンプルがリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含む核酸を含むことを示すものとして、前記遺伝子認識試薬の結合および連結が起こるか否かを判定することと、任意に、前記リピート伸長疾患について前記患者を治療することとを含む。前記核酸若しくは核酸アナログ骨格が第一末端と第二末端とを含み、前記骨格の前記第一末端に結合した第一連結基と、前記第一連結基と非共有的に結合するかまたはセルフライゲーションする、前記第二末端に結合した第二連結基とをさらに含む。
【0012】
さらに別の実施形態では、細胞においてリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含有する遺伝子の発現をノックダウンする方法が提供される。前記方法は、前記伸長されたリピートを含むRNAなどの核酸を、3以上のリボース、デオキシリボース、または、核酸アナログ骨格残基を含む核酸若しくは核酸アナログ骨格、前記骨格残基に結合した二価核酸塩基配列、を含み、ここで、前記二価核酸塩基配列は、二本の核酸鎖上のリピート伸長疾患の伸長されたリピートの単位標的配列、若しくは単位標的配列の1以上の逐次反復に結合する、遺伝子認識試薬と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)(
図1、パネル(A))rCAG
exp-ヘアピン構造を標的とするためのJB-MPγPNAリガンドLG1、LG2、およびLG3のデザイン、K:L-リジン、矢印:N末端、(B)好ましい逆平行方向でのLG2の代表的な結合モード(N末端がワトソン鎖の3’末端に向き合っている)、(C)E、I、およびFと、RNAの各C-G、A-A、およびG-C塩基対とのH結合相互作用、(D)J塩基が共有結合したMPγPNA骨格の化学構造、(E)NMRおよびX線によって確認された、γPNA、およびγPNA-DNAデュプレックスとして、およびPNA[PNA-DNAデュプレックスとして]の仮定、である。
【
図2】
図2、パネルA~Fは、核酸アナログの例示的な構造を示す。
【
図5A】
図5A~5Cは、例示的な二価核酸塩基の構造を示し、Rはヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ骨格モノマー若しくは残基を指す。
【
図5B】
図5A~5Cは、例示的な二価核酸塩基の構造を示し、Rはヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ骨格モノマー若しくは残基を指す。
【
図5C】
図5A~5Cは、例示的な二価核酸塩基の構造を示し、Rはヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ骨格モノマー若しくは残基を指す。
【
図6】配列r(CAG)
4/r(CAG)
4を含むRNAデュプレックスに対するLG1結合のMDシミュレーションの結果。LG1:NH
2-EIF-H、γ側鎖はメチル基である。(A)シミュレーション前(t=0)および後(t=l00ns)の四つの別個のLG1リガンドと四つのCAGリピートを含むRNAデュプレックスとの結合複合体の表面図。(B)シミュレーション後のCEG、AJA、およびGFCトライアドのH結合相互作用。(C)LG1のRNA塩基およびJ塩基間のトライアドあたりのH結合の数、(D)LG I-RNA複合体の旋回半径、および(E)初期構造に関するLGl-RNA複合体の平均平方根偏差(RMSD)。
【
図7】
図7は、E、I、およびF JB-MPγPNAモノマーの構造を示す。
【
図8】
図8および9は、それぞれ、E(15)およびF(26)の合成スキームを示す。
【
図9】
図8および9は、それぞれ、E(15)およびF(26)の合成スキームを示す。
【
図10】
図10は、E(15)、F(26)、およびI(27)のMPγPNA骨格へのカップリングのためのスキームを示す。
【
図11】
図11は、実施例において記載した研究を結合するために選択されたモデルRNA標的を示す(配列番号1)。
【
図12】
図12は、R11AでのLG2のCD滴定である。R11Aの濃度は0.5μMであり、LG2の濃度は、X:0、1.5、2.5、3.5、4.5、5.5、6.5、8.5、および11.5μMであった。LG2のR11Aへの添加後、混合物を37℃で30分間インキュベートした後、25℃でデータを取得した。
【
図13】
図13は、LG2と、(A)ミスマッチR11U、(B)一本鎖WSおよびCS、並びに(C)単結合部位を含む二本鎖HPのCDスペクトル、並びに(D)LG2PとR11AのCDスペクトル。RNAのCDスペクトル(実線)および[RNA+リガンド]混合物のCDスペクトル(破線)、である。
【
図14】
図14は、リガンド配向(LG2P)、ミスマッチR11Uおよび一本鎖標的(WS+CS)の効果である。挿入図は、2.5μMのペンタミジンの添加後の対応するサンプルの蛍光スペクトルである。
【
図15】
図15は、R11AでのLG2のNMR滴定である。R11Aの濃度は0.1mMであった。表示されたモル比でのLG2のアリコートをR11Aに添加し、15分間37℃でインキュベートした後、データ収集した。溶媒交換可能なプロトンを破線で表示し、交換不可能なプロトンを垂直の実線で示す。
【
図16】
図16は、実施例で記載するような、ネイティブ・ケミカル・ライゲーションを概略的に示す。
【
図17】
図17は、37℃での4MPの前記添加後の前記親化合物Mの反応進行である。(A)前記反応配列の概略図である。M#およびM##中間体をまず形成し、次いで前記反応性LG2N
*中間体に変換し、最終的に環状生成物cLG2Nに変換した。(B)4MPの前記添加および37℃で0分、15分、および60分のインキュベーション後のMのMALDI-TOF MSスペクトルである。前記サンプルは0.1×PBS緩衝液中で調製した。
【
図18】
図18は、37℃で16時間2MEと共にインキュベーションした後の、(A)[LG2N+R11A]、(B)[LG2N+R11U]、および(C)LG2N単独のMALDI-TOFスペクトルである。MS分析の前に、前記サンプルを4mM 塩化グアニジニウムで復元し、95℃にて5分間熱変性させた。LG2N、R11A、R11U、および2MEの前記濃度は、それぞれ、22、1、1、および500μMであった。前記ポジティブモードで、RNA分子は前記MALDI-TOFスペクトルにおいて観察されなかった。(B)および(C)におけるY軸は、(A)のものと同じであり、スペースの節約のために省略した。
【
図19】
図19は、競合的結合アッセイである。R24A、R127A、およびR96Uの前記濃度は、それぞれ、100、18、および22nMであり、各々は1.1μMの結合部位を含み、レーン2~6、および8中のLG2Nの濃度は、それぞれの順で、11、22、44、88、88、および88μMであり、4MPおよびTCEPの濃度は、それぞれの順で、500および100μMであった。結合部位のリガンドに対する比は表示した通りであった。前記サンプルを0.1×PBS緩衝液中で調製し、37℃で24時間インキュベートした後、2%アガロースゲルによって分離し、SYBR-Goldで染色した。
【
図20】
図20は、生理的にシミュレーションされたイオン強度でのゲルシフトアッセイである。緩衝液がPS(10mM NaPi、150mM KCl、2mM MgCl
2 pH7.4)である以外は
図9中に示したのと同一の方法でサンプルを調製した。R24A、R127A、およびR96Uの前記濃度は、それぞれの順で、100、18、および22nMであり、各々は1.1μMの結合部位を含み、レーン2~6、および8中のLG2Nの濃度は、それぞれの順で、11、22、44、88、88、および88μMであり、4MPおよびTCEPの濃度は、それぞれの順で、500および100μMであった。結合部位のリガンドに対する前記比は表示された通りであった。前記サンプルを37℃で24時間インキュベートした後、2%アガロースゲルによって分離し、SYBR-Goldで染色した。
【
図21】
図21は、本明細書中で記載するリガンドを合成するための一般的方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本出願で特定される様々な範囲での数値の使用は、特に明示しない限り、規定された範囲内の最小値と最大値のどちらの前にも「約」が付けられるかのように近似として示される。このように、規定された範囲の上下のわずかな変動を使用しても、前記範囲内の値と実質的に同一の結果を達成することができる。また、別段の指示がない限り、範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値を含む連続的な範囲としても意図される。本明細書で使用される場合に、単数形("a" および "an")は一以上を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合に、「含む(comprising)」という用語はオープンエンドであり、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「~を特徴とする(characterized by)」と同義であり得る。「~から実質的になる(consisting essentially of)」という用語は、特許請求の範囲を、指定された材料または工程ならびに特許請求の範囲に記載された発明の一つ以上の基礎的で新規な特徴に実質的に影響しない材料または工程に限定する。「~からなる(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲で特定されていないあらゆる要素、工程または成分を除外する。本明細書で使用される場合に、一つ以上の要素または工程を「含む(comprising)」実施形態はまた、限定されるものではないが、これらの指定された要素または工程「から実質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」実施形態も含む。
【0016】
本明細書中で提供されるのは、核酸における標的配列を結合するため、例えば、核酸配列のリピート伸長に伴う疾患に関連したリピート伸長を結合するための組成物および方法である。
図1は、HDおよび他のPolyQ疾患でみられるようなRNAヘアピン構造におけるCAGリピートを標的とする、本明細書中で記載する認識試薬(遺伝子認識試薬、リガンド)の非限定例の結合を表す概略図である。モジュールの隣接モジュールに対する協同的結合は、末端セルフライゲーティング基またはπスタッキング芳香族基、例えば、以下の実施例で記載し、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0083433号でさらに広範に開示されている例示的セルフライゲーティング基によって促進される。要約すると、セルフライゲーティング基、πスタッキング基、および、核酸の鎖上、または、二価核酸塩基を含む認識試薬における二本の核酸鎖間の隣接認識試薬を共有結合若しくは非共有的に結合する同様の基は、本明細書では「連結基」と総称する。複数の認識試薬は、ワトソン・クリックまたはワトソン・クリック様協同的塩基対合によって鋳型核酸に対して結合(ハイブリダイズ)する。細胞において、鋳型核酸はRNAまたはDNA分子であるが、インビトロで、鋳型核酸は任意のRNAまたはDNAであり得、同様に修飾核酸または核酸アナログであり得る。充分近接した、例えば、鋳型核酸上の隣接配列と結合する認識試薬は、セルフライゲーションまたはπ-πスタッキングし、したがって、連結して、より長いオリゴマーまたはポリマーを本質的に形成する。さらなる詳細は以下に提示する。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「患者」は、霊長類(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、サル、およびチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマ、およびクジラ)をはじめとする哺乳動物、または鳥類(例えば、アヒル若しくはガチョウ)などの動物である。
【0018】
本明細書中で使用する場合、「治療する」、または「治療」という用語は、疾患の1以上の症状を改善するなど、有益または所望の結果を指す。「治療する」または「治療」という用語には、限定されるものではないが、PolyQリピート伸長疾患、例えば、ハンチントン病などのリピート伸長疾患の1以上の症状の軽減または改善も含まれる。「治療」は、治療の非存在下で予想される生存と比較して延長された生存も意味し得る。
【0019】
疾患マーカーまたは症状の関連における「より低い」とは、そのようなレベルでの臨床的に関連する減少および/または統計的に有意な減少を意味する。前記減少は、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%以上であり、そのような障害を有しない個体にとっての正常な範囲内として許容されるレベルまで、またはアッセイの検出レベルを下回るまでの減少であり得る。特定の態様では、前記減少は、レベルの正常化とも称することができ、そのような障害を有しない個体にとっての正常な範囲内として許容されるレベルまでの減少である。特定の態様では、前記減少は、疾患の徴候または症状のレベルの正常化、前記疾患の徴候の対象レベルと前記疾患についての徴候の正常なレベルとの間の差の減少である(例えば、正常値に到達するためには前記対象に関する前記レベルを減少させねばならない場合には正常の上限レベルまで、および正常レベルに到達するためには対象に関する値を増大させねばならない場合には正常の下限レベルまで)。ある態様で、方法は、例えば、本明細書中で記載するような認識試薬での対象の治療後の臨床的に意義のある結果によって示されるような、polyQリピート伸長疾患、例えば、ハンチントン病のmRNAの発現の臨床的に意義のある阻害を含む。
【0020】
本明細書で使用される「治療的有効量」は、疾患を有する対象体に投与される場合に(例えば、既存の疾患または疾患の一つ以上の症状の軽減、改善または維持により)、前記疾患の治療をもたらすのに十分である本明細書に記載される認識試薬の量を含むことが意図される。前記「治療的有効量」は、認識試薬(薬剤)、薬剤の投与方法、疾患および疾患の重症度ならびに病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構成、もしあれば先行治療または併用治療の種類、および治療されるべき対象体の他の個体特性に応じて変動し得る。本明細書中で記載する遺伝子認識試薬との関連で、用量当たりの例示的投薬量範囲は、0.1pg~1mgの範囲である。
【0021】
「治療的有効量」はまた、任意の治療に適用可能な合理的な便益/リスク比で、幾つかの所望の局所的効果または全身効果を生ずる薬剤の量も含む。本明細書に記載される方法で使用される認識試薬薬剤は、そのような治療に適用可能な妥当な便益/リスク比をもたらすのに十分な量で投与され得る。
【0022】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体」という文言は、対象化合物をある臓器または身体の一部分から別の臓器または身体の別の部分に運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)または溶媒封入材料等の、薬学的に許容可能な材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、治療されるべき対象体に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として作用し得る材料の幾つかの例には、(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース、(2)デンプン類、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン、(3)セルロースおよびセルロースの誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、(4)粉末状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム(magnesium state)、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク、(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ワックス、(9)油類、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油、(10)グリコール類、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール、(12)エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル類、ポリカーボネート類および/またはポリ無水物類、(22)増量剤、例えば、ポリペプチド類およびアミノ酸類、(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDL、ならびに(22)医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が含まれる。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「細胞(cellおよびcells)」という用語は、限定されるものではないが、ラット、マウス、サル、およびヒトなどの任意の動物からの任意のタイプの細胞を指す。例えば、限定されるものではないが、細胞は、幹細胞などの前駆細胞、または内皮細胞、平滑筋細胞などの分化細胞であり得る。
【0024】
「発現」または「遺伝子発現」とは、遺伝子産物(典型的には、タンパク質、任意に翻訳後修飾されたまたは機能的/構造的RNA)の産生のための遺伝子からの全体的な情報の流れを意味する(限定されるものではないが、細胞内でRNAもしくはタンパク質等の遺伝子産物を産生するための機能的遺伝単位、または核酸上にコードされ、転写プロモーターおよび他のシス作用エレメント、例えば応答エレメントおよび/またはエンハンサー、典型的にはタンパク質(オープンリーディングフレームまたはORF)または機能的/構造的RNAをコードする発現される配列ならびにポリアデニル化配列を含む他の発現系)。指定された配列の「転写制御下での遺伝子の発現」、あるいは指定された配列による「制御を受ける」とは、前記遺伝子に作動可能に連結された(典型的にはシスに機能的に結合された)前記指定された配列を含む遺伝子からの遺伝子発現を意味する。前記指定された配列は、転写要素(限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサーおよび応答エレメント)の全部または一部であってよく、遺伝子の転写を全体的または部分的に調節し、および/または遺伝子の転写に影響し得る。示された遺伝子産物の「発現のための遺伝子」は、適切な環境に置かれたとき、すなわち、例えば、細胞に形質転換、トランスフェクション、形質導入等がされて、発現に適した条件に供されたときに、前記示された遺伝子の産物を発現することができる遺伝子である。構成的プロモーターの場合に、「適切な条件」とは、遺伝子が典型的には宿主細胞に導入されることだけを必要とすることを意味する。誘導性プロモーターの場合に、「適切な条件」とは、遺伝子の発現を引き起こすのに有効な量のそれぞれのインデューサーが、発現系(例えば細胞)に投与される場合を意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ノックダウン」または「ノックダウンする」という用語は、生物体において1以上の遺伝子の発現が、治療上有効な程度までなど、機能性遺伝子に関して、典型的には有意に減少することを意味する。遺伝子ノックダウンはまた、完全な遺伝子サイレンシングも含む。本明細書中で使用される場合、「遺伝子サイレンシング」は、遺伝子の発現が本質的に完全に防止されることを意味する。ノックダウンおよび遺伝子サイレンシングは、転写段階または翻訳段階のいずれかで起こり得る。mRNAなどの細胞におけるRNAを標的とするための記載した認識試薬の使用は、転写後または翻訳段階で1若しくは複数の遺伝子をノックダウンまたはサイレンシングすることによって遺伝子発現を改変することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合に、「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を指す。核酸アナログには、例えば、限定されるものではないが、2’-O-メチル置換RNA、ロックド核酸、アンロックド核酸、トリアゾール結合DNA、ペプチド核酸、モルホリノオリゴマー、ジデオキシヌクレオチドオリゴマー、グリコール核酸、トレオース核酸および任意に一つ以上のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド残基を含むそれらの組合せが含まれる。本明細書では、核酸および核酸アナログに関して「核酸」およびヌクレオチドで構成される短い一本鎖構造である「オリゴヌクレオチド」は区別なく使用される。オリゴヌクレオチドは、命名法「~マー」によって、鎖の長さ(すなわち、ヌクレオチドの数)によって言及され得る。例えば、22個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドは、22マーと言及されることとなる。
【0027】
「核酸アナログ」は、ポリマー骨格等の基質上に配置された核酸塩基の配列を含む組成物であり、ワトソン-クリック水素結合塩基対合またはワトソン-クリック様水素結合塩基対合によるハイブリダイゼーションによってDNAおよび/またはRNAを結合することができる。一般的な核酸アナログの非限定的な例には、ペプチド核酸、例えば、γPNA、モルホリノ核酸、ホスホロチオエート、ロックド核酸(オキシ型、チオ型またはアミノ型を含む2’-O-4’-C-メチレン架橋)、アンロックド核酸(C2’-C3’結合が切断されている)、2’-O-メチル置換RNA、トレオース核酸、グリコール核酸等が含まれる。
【0028】
立体構造的に事前組織化された核酸アナログは、前記核酸骨格の構造に応じて、右巻きヘリックスまたは左巻きヘリックスのいずれかのみを形成する骨格(予備組織化された骨格)を有する核酸アナログである。本明細書に示されるように、立体構造的に事前組織化された核酸アナログの一例は、γ炭素にキラル中心を有し、γ炭素にある基のキラリティーに応じて、そして前記キラリティーのため、右巻きヘリックスまたは左巻きヘリックスのみを形成するγPNAである。同様に、リボースを3’-エンド(ノース)コンフォメーションへと「ロック」する2’酸素と4’炭素との間の架橋を有するリボースを含むロックド核酸である。
【0029】
本開示の文脈において、「ヌクレオチド」は、少なくとも一つの核酸塩基と、RNAまたはDNA等の核酸においてリボースまたはデオキシリボースである骨格要素(骨格部)とを含むモノマーを指す。「ヌクレオチド」はまた、典型的には、特定の条件下での重合を可能にする反応性基を含む。天然のDNAおよびRNAでは、これらの反応性基は5’リン酸基および3’ヒドロキシル基である。核酸および核酸アナログの化学合成のために、塩基および骨格モノマーは、当該技術分野で知られているように、ブロックされたアミン等の修飾基を含み得る。「ヌクレオチド残基」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに組み込まれている単一のヌクレオチドを指す。同様に、「核酸塩基残基」は、ヌクレオチドもしくは核酸または核酸アナログに組み込まれた核酸塩基を指す。「遺伝子認識試薬」は、包括的には、協同的塩基対合、例えばワトソン-クリック塩基対合またはワトソン-クリック様塩基対合によって核酸上の相補的核酸または核酸アナログ配列にハイブリダイズ(結合)することができる核酸塩基の配列を含む核酸または核酸アナログを指す。
【0030】
さらに詳細には、ヌクレオチドは、RNA、DNAまたは核酸アナログのいずれかについては、構造A-Bを有し、ここで、Aは骨格モノマー部であり、Bは本明細書に記載される核酸塩基である。骨格モノマーは、リボース三リン酸もしくはデオキシリボース三リン酸等の任意の適切な核酸骨格モノマー、またはペプチド核酸(PNA)、例えばガンマPNA(γPNA)等の核酸アナログのモノマーであり得る。一例では、骨格モノマーは、リボース一リン酸、二リン酸、若しくは、三リン酸またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、若しくは三リン酸、例えば、リボースまたはデオキシリボースの5’一リン酸、二リン酸、若しくは、三リン酸である。骨格モノマーは、RNA中のリボース等の構造的な「残基」成分と、モノマーを共に結合する際に改変される任意の活性基、例えばRNAへと重合する場合に改変されてホスホジエステル結合を残すリボヌクレオチドの5’三リン酸基および3’ヒドロキシル基の両方を含む。PNAの場合と同様に、N-(2-アミノエチル)グリシン骨格モノマーのC末端カルボキシル基およびN末端アミン活性基は、重合の間に縮合してペプチド(アミド)結合を残す。別の態様では、前記活性基は、当該技術分野で広く知られているように、ホスホロアミダイトオリゴマー合成に有用なホスホロアミダイト基である。前記ヌクレオチドはまた、任意に4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)等の当該技術分野で知られる本明細書に記載される一つ以上の保護基を含む。合成遺伝子認識試薬を調製する多くの追加の方法が知られており、前記方法は骨格構造および塩基付加過程の特定の化学的特性に依存する。ヌクレオチドモノマーの結合にどの活性基を利用するか、前記塩基においてどの基を保護するかの決定と、オリゴマーの調製において必要とされる工程は、十分に化学技術、並びに、核酸および核酸アナログオリゴマー合成の分野の当業者の能力の範囲内である。
【0031】
一般的な核酸アナログの非限定的な例には、ペプチド核酸、例えば、γPNA、ホスホロチオエート(例えば、
図2(A))、ロックド核酸(オキシ型、チオ型またはアミノ型を含む2’-O-4’-C-メチレン架橋、例えば
図2(B))、アンロックド核酸(C2’-C3’結合が切断されている、例えば
図2(C))、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸(例えば
図2(D))、トレオース核酸(例えば
図2(E))、グリコール核酸(例えば
図2(F)、R形およびS形を示す)等が含まれる。
図2(A~F)は、核酸アナログの様々な例についてのモノマー構造を示している。
図2(A~F)はそれぞれ、波線で示されているより長い鎖に組み込まれた二つのモノマー残基を示している。組み込まれたモノマーは、本明細書では「残基」と称され、前記核酸塩基を除く前記核酸または核酸アナログの部分は、前記核酸または核酸アナログの「骨格」と呼ばれる。一例としては、RNAの場合に、例示的な核酸塩基はアデニンであり、対応するモノマーはアデノシン三リン酸であり、組み込まれた残基はアデノシン一リン酸残基である。RNAの場合に、前記「骨格」はリン酸によって結合されたリボースサブユニットからなり、したがって、前記骨格モノマーは、組み込み前はリボース三リン酸であり、組み込み後はリボース一リン酸残基である。γPNAと同様に、ロックド核酸(
図2(B))は立体構造的に予備組織化されている。
【0032】
「部分」は分子の一部分であり、一つのクラスとして、より大きな分子に化合物またはモノマーを組み込んだ後にポリマー鎖等のより大きな分子中に残る化合物またはモノマーの部分である「残基」、例えば核酸中に組み込まれた状態のヌクレオチドまたはポリペプチドもしくはタンパク質中に組み込まれた状態のアミノ酸を含む。
【0033】
「ポリマー組成物」という用語は、一つ以上のポリマーを含む組成物である。一つのクラスとして、「ポリマー」には、限定されるものではないが、ホモポリマー、ヘテロポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、ブロックコポリマーが含まれ、天然および合成のどちらであってもよい。ホモポリマーは、一種類の構成要素またはモノマーを含む一方で、コポリマーは二種以上のモノマーを含む。「オリゴマー」は、例えば、3個~100個のモノマー残基等の少数のモノマーを含むポリマーである。したがって、「ポリマー」という用語にはオリゴマーが含まれる。「核酸」および「核酸アナログ」という用語には、核酸ならびに核酸ポリマーおよびオリゴマーが含まれる。
【0034】
ポリマーは、モノマーがポリマー中に組み込まれている場合に、指定されたモノマーを「含む」かまたは指定されたモノマー「から誘導される」。したがって、ポリマーに含まれる、組み込まれるモノマーは、ポリマーに組み込まれる前のモノマーとは、重合プロセスにおいて、少なくとも、特定の連結基がポリマー骨格中に組み込まれているか、または、特定の基が除去されている点で、同一ではない。ポリマーは、特定の種類の結合がポリマー中に存在するならば、当該結合を含むといわれる。組み込まれたモノマーは「残基」である。核酸または核酸アナログの典型的なモノマーはヌクレオチドと称される。
【0035】
「非反応性」により、化学部分、例えば、分子、化合物、組成物、基、部分、イオンなどの関連で、部分は、その使用目的において他の化学部分と実質的に反応しないことを意味する。非反応性部分は、認識試薬としての部分、部分、または基の使用目的を干渉しないか、またはほとんど干渉しないように選択される。本明細書中で記載するリンカー部分の関連で、それらは、認識試薬の標的鋳型に対する結合を干渉せず、かつ、標的鋳型上の認識試薬の連結を干渉しない点で、非反応性である。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」とは、例えば、1~約20個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状、または環状の炭化水素基、例えば限定されるものではないが、C1~3、C1~6、C1~10基、例えば限定されるものではないが、直鎖状、分枝鎖状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを指す。「置換アルキル」とは、1以上、例えば、1、2、3、4、5、またはさらには6の位置で置換されたアルキルを指し、当該置換基は、任意の利用可能な原子で結合して、本明細書中で記載するような置換を有する、安定な化合物が生成される。「任意に置換されていてもよいアルキル」とは、アルキルまたは置換アルキルを指す。「ハロゲン」、「ハロゲン化合物」、および「ハロ」は、-F、-Cl、-Br、および/または-Iを指す。「アルキレン」および「置換アルキレン」は、それぞれ、限定されるものではないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン(hepamethylene)、オクタメチレン、ノナメチレン、またはデカメチレンを含むそれぞれ二価アルキルおよび二価置換アルキルを指す。「任意に置換されていてもよいアルキレン」は、アルキレンまたは置換アルキレンを指す。
【0037】
「アルケンまたはアルケニル」とは、例えば、2~約20個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状、または環状のヒドロカルビル基、例えば、限定されるものではないが、1個以上、例えば、1、2、3、4、または5個の炭素・炭素二重結合を有するC1~3、C1~6、C1~10基を指す。「置換アルケン」は、1以上、例えば、1、2、3、4、または5の位置で置換されたアルケンを指し、当該置換基は、任意の利用可能な原子で結合して、本明細書中で記載するような置換を有する、安定な化合物が生成される。「任意に置換されていてもよいアルケン」とは、アルケンまたは置換アルケンを指す。同様に、「アルケニレン」とは、二価アルケンを指す。アルケニレンの例としては、限定されるものではないが、エテニレン(-CH=CH-)並びにそのすべての立体異性体および配座異性体(conformational isomeric)形態を指す。「置換アルケニレン」とは二価置換アルケンを指す。「任意に置換されていてもよいアルケニレン」とはアルケニレンまたは置換アルケニレンを指す。
【0038】
「アルキン」または「アルキニル」とは、示された数の炭素原子と少なくとも1の三重結合とを有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素を指す。(C2~C8)アルキニル基の例としては、限定されるものではないが、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-へプチン、2-へプチン、3-へプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチンおよび4-オクチンを含む。アルキニル基は、非置換であり得るか、または本明細書中で以下に記載するような1以上の置換基で任意に置換されていてもよい。「アルキニレン」という用語は、二価アルキンを指す。アルキニレンの例としては、限定されるものではないが、エチニレン、プロピニレンが挙げられる。「置換アルキニレン」とは、二価置換アルキンを指す。
【0039】
「アルコキシ」という用語は、示された数の炭素原子を有する-O-アルキル基を指す。例えば、(C1~C6)アルコキシ基は、-O-メチル(メトキシ)、-O-エチル(エトキシ)、-O-プロピル(プロポキシ)、-O-イソプロピル(イソプロポキシ)、-O-ブチル(ブトキシ)、-O-sec-ブチル(sec-ブトキシ)、-O-tert-ブチル(tert-ブトキシ)、-O-ペンチル(ペントキシ)、-O-イソペンチル(イソペントキシ)、-O-ネオペンチル(ネオペントキシ)、-O-ヘキシル(ヘキシルオキシ)、-O-イソヘキシル(イソヘキシルオキシ)、および-O-ネオヘキシル(ネオヘキシルオキシ)を含む。「ヒドロキシアルキル」とは、1以上のアルキル基の水素原子が-OH基で置換されている(C1~C10)アルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例としては、限定されるものではないが、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、およびその分枝型が含まれる。「エーテル」または「酸素エーテル」という用語は、1以上のアルキル基の炭素原子が-O-基で置換されているアルキル基を指す。エーテルという用語には、P1が、保護基、-H、または(C1-C10)アルキルである-CH2-(OCH2-CH2)qOP1化合物が含まれる。例示的エーテルには、ポリエチレングリコール、ジエチルエーテル、メチルヘキシルエーテルなどが含まれる。
【0040】
「ヘテロ原子」とは、N、O、PおよびSを指す。NまたはS原子を含む化合物は、任意に、対応するNオキシド、スルホキシド化合物またはスルホン化合物に酸化され得る。「ヘテロ置換」とは、1以上の炭素原子がN、O、PまたはSで置換されている、本明細書中で記載する任意の実施形態における有機化合物を指す。
【0041】
「アリール」とは、単独または組み合わせで、フェニルまたはナフチルなどの芳香環系を指す。「アリール」にはまた、任意にシクロアルキル環と縮合されていてもよい芳香環系も含まれる。「置換アリール」は、安定な化合物を生成するために任意の利用可能な原子で結合した1以上の置換基で独立して置換されたアリールであり、置換基は本明細書中で記載する通りである。「任意に置換されていてもよいアリール」とは、アリールまたは置換アリールを指す。「アリーレン」は二価アリールを意味し、「置換アリーレン」は二価置換アリールを指す。「任意に置換されていてもよいアリーレン」とは、アリーレンまたは置換アリーレンを指す。本明細書中で使用される場合、「多環式アリール基」という用語および「多環式芳香族基」などの関連する用語は、少なくとも2の縮合芳香環から構成される基を意味する。「ヘテロアリール」または「ヘテロ-置換アリール」とは、N、O、P、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で置換されたアリール基を指す。
【0042】
「シクロアルキル」は、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかである、単環式、二環式、三環式、または多環式、3~14員環系を指す。シクロアルキル基は、任意の原子を介して結合していてもよい。シクロアルキルはまた、シクロアルキルがアリールまたはヘテロアリール(hetroaryl)環と縮合している縮合環も想定する。シクロアルキルの代表例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれる。シクロアルキル基は、非置換であり得るか、または本明細書中で以下に記載するような1以上の置換基で任意に置換されていてもよい。「シクロアルキレン」とは、二価シクロアルキルを指す。「任意に置換されていてもよいシクロアルキレン」という用語は、安定な化合物を生成するために利用可能な任意の原子で結合した、1、2、または3個の置換基で置換されたシクロアルキレンを指し、置換基は本明細書中で記載されているとおりである。
【0043】
「カルボキシル」または「カルボキシルの(carboxylic)」とは、示された場合に、示された炭素原子数を有し、-C(O)OH基を末端とし、したがって構造-R-C(O)OHを有する基を指し、ここで、Rは直線状、分岐状または環状の炭化水素を含む二価の有機基である。これらの非限定的な例には、C1~8カルボキシル基、例えば、エタノイック、プロパノイック、2-メチルプロパノイック、ブタノイック、2,2-ジメチルプロパノイック、ペンタノイック等が含まれる。「アミン」または「アミノ」とは、示された場合に示された炭素原子数を有し、-NH2基を末端とし、したがって構造-R-NH2を有する基を指し、ここで、Rは、直線状、分岐状または環状の炭化水素を含み、任意に1以上のヘテロ原子を含む非置換または置換された二価の有機基である。
【0044】
上記を組み合わせた用語は、上記の好適な組み合わせ、例えば、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロ(herero)シクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)を指す。一例として、「アリールアルキレン」とは、アルキレン基中の1以上の水素原子がアリール基、例えば(C3~C8)アリール基で置換されている二価アルキレンを指す。(C3~C8)アリール-(C1~C6)アルキレン基の例としては、限定されるものではないが、1-フェニルブチレン、フェニル-2-ブチレン、l-フェニル-2-メチルプロピレン、フェニルメチレン、フェニルプロピレン、およびナフチルエチレンが含まれる。「(C3~C8)シクロアルキル-(C1~C6)アルキレン」という用語は、C1~C6アルキレン基中の1以上の水素原子が(C3~C8)シクロアルキル基で置換されている二価アルキレンを指す。(C3~C8)シクロアルキル-(C1~C6)アルキレン基の例としては、限定されるものではないが、1-シクロプロイル(proyl)ブチレン、シクロプロピル(cycloproyl)-2-ブチレン、シクロペンチル-1-フェニル-2-メチルプロピレン、シクロブチルメチレンおよびシクロヘキシルプロピレンが含まれる。
【0045】
「アミノ酸」は、構造H
2N-C(R)-C(O)OHを有し、ここで、Rは側鎖、例えばアミノ酸側鎖である。「アミノ酸残基」とは、アミノ酸の鎖中に組み込まれた場合、例えば本明細書中で開示する認識試薬中に組み込まれた場合、例えば、構造-NH-C(R)-C(O)-、H
2N-C(R)-C(O)-(ポリペプチドのN末端である場合)、または-NH-C(R)-C(O)OH(ポリペプチドのC末端である場合)を有するアミノ酸の残部を指す。「アミノ酸側鎖」は、タンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸を含むアミノ酸の側鎖である。アミノ酸は構造:
【化1】
を有し、
ここで、Rはアミノ酸側鎖である。アミノ酸側鎖の非限定例を
図3に示す。グリシン(H
2N-CH
2-C(O)OH)は側鎖を有さない。
【0046】
「ペプチド核酸」とは、DNAまたはRNAの糖ホスホジエステル骨格がN-(2-アミノエチル)グリシン単位で置換されている、核酸アナログ、またはDNA若しくはRNA模倣物を指す。ガンマPNA(γPNA)は、以下の構造:
【化2】
のγ-修飾N-(2-アミノエチル)グリシンモノマーのオリゴマーまたはポリマーであり、ここで、γ炭素に結合したR
1またはR
2の少なくとも一方は水素でないので、γ炭素はキラル中心である。R
1およびR
2が水素(N-(2-アミノエチル)-グリシン骨格)、または同一である場合、γ炭素についてそのようなキラリティーはない。組み込まれたPNAまたはγPNAモノマー、
【化3】
は、本明細書中ではオリゴマー中にインテグレーションされた後の残存する構造に関してPNAまたはγPNA「残基」と称され、各残基は、その塩基(核酸塩基)、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシル塩基、または他の塩基、例えば、本明細書中に記載する一価および二価塩基と同一であるかまたは異なるR基を有するので、DNAまたはRNAと同様に、PNA上の塩基の順序がその「配列」である。核酸または核酸アナログオリゴマー若しくはポリマー、例えばPNAまたはγPNAオリゴマー若しくはポリマー中の核酸塩基の配列は、核酸または核酸アナログ鎖中のアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよび/またはウラシル残基の相補的配列と、核酸塩基対合により、ワトソン・クリックまたはワトソン・クリック様方式で、本質的には二本鎖DNAまたはRNAと同様に結合する。
【0047】
「グアニジン」または「グアニジニウム」基を認識試薬に添加して、溶解度および/またはバイオアベイラビリティを増大させることができる。PNAは合成ペプチドと同様の方法で生成されるので、グアニジン基を付加するための簡単な方法は、1以上の末端アルギニン(Arg)残基をPNA、例えばγPNA認識試薬のN末端および/またはC末端に付加することである。同様に、アルギニン側基、
【化4】
、または、グアニジン含有部分、例えば、
【化5】
ここで、nは、例えば、限定されるものではないが、1~5の範囲である、
または、その塩を本明細書中で記載する認識試薬骨格に結合させることができる。グアニジン含有基は、グアニジン部分を含む基であり、100個未満の原子、50個未満の原子、例えば、30個未満の原子を有し得る。一態様において、グアニジン含有基は構造:
【化6】
を有し、
ここで、Lは、本明細書中で記載する任意の態様にかかるリンカー、例えば、非反応性脂肪族ヒドロカルビルリンカー、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、またはペンタメチレンリンカーである。いくつかの態様では、グアニジン含有基は、構造:
【化7】
を有し、
ここで、nは1~5であり、例えば、グアニジン基はアルギニンであってよい。
【0048】
「核酸塩基」には、主要な核酸塩基、すなわち、アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシルだけでなく、改変されたプリン塩基およびピリミジン塩基、例えば、限定されるものではないが、ヒポキサンチン、キサンテン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンが含まれる。
図4および5A~5Cはまた、一価核酸塩基(例えば、核酸または核酸アナログの1つの鎖と結合する、アデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシル)、および、核酸の2つの鎖上の相補的な核酸塩基と同時に結合する二価核酸塩基(例えば、本明細書中で記載するJB1~JB16)、および、相補的な核酸塩基と増大した強度で結合する「Gクランプ」などの「クランプ」核酸塩基を含む、核酸塩基の非限定例を表す。さらなるプリン、プリン様、ピリミジンおよびピリミジン様核酸塩基は、例えば、米国特許第8,053,212号、同第8,389,703号、および同第8,653,254号で開示されているように、当該技術分野で公知である。
図5Aで示される二価核酸塩基JB1~JB16について、表Aは種々の核酸塩基の特異性を示す。特に、JB1~JB4シリーズは、相補的塩基(C-G、G-C、A-TおよびT-A)を結合し、一方で、JB5~JB16はミスマッチを結合し、したがって、マッチおよび/またはミスマッチ塩基の2つの鎖を結合するために使用できる。二価核酸塩基は、米国特許公開第20160083434A1号および国際公開第WO/2018/058091号でさらに詳細に記載され、どちらも参照により本明細書中に組み込まれる。
【0049】
【0050】
本明細書中で使用する場合、「JB#核酸塩基」、例えば「JB4核酸塩基」とは、JB4、JB4b、JB4c、JB4d、およびJB4eをはじめとする、C/G(結合G/C)を表す、JB4名称を有するすべての核酸塩基を指す。本明細書で記載する方式でアリール基により末端修飾されていないが、本明細書中で記載するように、末端修飾される可能性のある例示的γPNA構造は、国際公開第2012/138955号で開示されており、これは参照により本明細書中に組み込まれる。本明細書中で示すように、miniPEG γPNAには、ポリ(エチレングリコール)(PEG、ポリオキシエチレン)部分を含む1以上の基が含まれる。
【0051】
相補的とは、ポリヌクレオチド(核酸)が互いにハイブリダイズ(結合)して、鎖間塩基対を形成する能力を指す。塩基対は、逆平行ポリヌクレオチド鎖中のヌクレオチド単位間の水素結合によって形成される。相補的ポリヌクレオチド鎖は、ワトソン・クリック方式で(例えば、A対T、A対U、C対G)、または、デュプレックスの形成を可能にする任意の他の方式で塩基対合(ハイブリダイズまたは結合)することができる。DNAではなく、RNAを使用する場合は、チミンではなくウラシルがアデノシンに対して相補的な塩基である。相補的配列を含む二つの配列は、それらが、水、食塩水((例えば、生理食塩水、若しくは0.9%w/v食塩水)またはリン酸塩緩衝食塩水)中などの特定の条件下、あるいは例えば、限定されるものではないが、0.1×SSC(食塩水クエン酸ナトリウム)~10× SSCなどの他のストリンジェンシー条件下でデュプレックスを形成する場合、ハイブリダイズすることができ、ここで、1×SSCは、水中0.15M NaClおよび0.015Mクエン酸ナトリウムである。相補的配列のハイブリダイゼーションは、例えば塩濃度および温度により影響を受け、ミスマッチの増加およびストリンジェンシーの増加に伴って溶融温度(Tm)は低下する。完全にマッチした配列は「完全に相補性」であるとされるが、リピート伸長を含むmRNAなどの、それらが連結するはるかに長い標的配列に関して本明細書中で記載する小さな認識試薬の場合のように、一方の配列(例えば、mRNA中の標的配列)が他方よりも長い可能性がある。核酸の二本の相補的鎖は、一方の鎖が5’から3’への配向、他方が3’から5’への配向の逆平行の方向で結合する。PNAにより平行および逆平行の両方向が可能になるが、γPNAについては逆平行結合が好ましい。
【0052】
発明の一態様によると、遺伝子認識試薬が提供される。いくつかの態様において、認識試薬は自己連結(self-concatenating)し、このことは、標的核酸上の隣接する配列にハイブリダイズする場合、共有結合するか、または非共有結合の場合は、例えばπスタッキングによるかのいずれかの連結基、すなわち末端基を含むことを意味する。認識試薬は、例えばセルフライゲーションするかまたはπスタッキングし、二本鎖RNAヘアピン配列を標的とするために、リピート伸長疾患に関連するリピート伸長配列にハイブリダイズ(結合)するための核酸塩基の配列を含む末端基を有する、3以上、例えば、3~10個または3~8個の近接した核酸または核酸アナログモノマー残基を含む。polyQ疾患の場合、rCAG
exp配列から形成されるヘアピンの二本鎖配列は標的配列であり、試薬は、以下のものから選択される二価核酸塩基の配列を有する、EIF若しくは(EIF)
n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えば、EIFEIF、IFE若しくは(IFE)
n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えば、IFEIFE、またはFEI、若しくは(FEI)
n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えば、FEIFEI、ここで、Eは二価核酸塩基、例えば、JB3またはJB3b、結合C/G(ワトソン鎖/クリック鎖)であり、Fは、二価核酸塩基、例えば、JB4、JB4b、JB4c、JB4d、またはJB4e、結合G/Cであり、Iは、二価核酸塩基、例えば、JB6またはJB6b、結合A/Aである、したがって、
図1に示すように、CAGリピートから形成されたヘアピンの両方のハイブリダイズされた鎖と結合することができる。
【0053】
本明細書中で記載する認識試薬は、小分子の特徴、例えば、低分子量、大規模生産の容易さ、低い生産コスト、細胞膜透過性、および所望の薬物速度論的と、ワトソン・クリック塩基対合によるオリゴヌクレオチドの配列特異的認識とを兼ね備える。オリゴマー認識試薬の連結は、セルフライゲーティング法およびπスタッキング連結法の両方について実証されており、すべての態様において限定ではなく例示的であることが意図される実施例にしたがって記載されている。したがって、本発明は、詳細な実施において、当業者が本明細書に含まれる記載から誘導することができる多くの変更が可能である。
【0054】
本明細書中で記載する認識試薬の応用例は、表Bに列挙するものなどの、小配列のリピート伸長を伴う遺伝的疾患の治療においてである。
【0055】
【0056】
表Bに基づいて、記載した遺伝子産物を標的とする認識試薬の二価核酸塩基の例示的配列は、センス鎖に対して5’から3’方向の配列を含み、表Cに提示する。なお、それらの配列に応じて、すべてのリピート配列が通常の条件下でヘアピン構造を形成するわけではないが、列挙した認識試薬によってトリプレックス「ヘアピン」構造に誘導することができる。また、表Cに列挙した配列は単に例示的であって、天然のヘアピン構造または認識試薬によって誘導されたヘアピン構造中の折り畳み配列のアラインメントに応じて、他の配列がトリプレックス構造を形成することが予想される。また、配列のリピート特性のために、三塩基リピートの場合、三つの異なるフレームシフトが各配列にとって有用であり(表C、(GAA)
nの第三列を参照)、四塩基リピートの場合、四つの異なるフレームシフトが有用である。したがって、三塩基配列の場合、デュプレックス結合アラインメントの並べ替え、および各アラインメント内の認識試薬のフレームをシフトさせる能力(例えば、
図1の図示したrCAG
exp配列内のアラインメントのEIF、IFE、およびFEI)は、単位認識試薬の9通りの並べ替えをもたらし、これは認識試薬において反復され得る。例えば、配列(GAA)
nの場合、通常の条件下でヘアピンデュプレックスを形成すると予想される折り畳みアラインメントはないが、三つの異なる配列はトリプレックス構造を形成できると予想される。表Cにおいて、すべての並べ替えを示す唯一のリピート配列は、(GAA)
nの配列であり、他のリピートについては、例示的配列のみを提示する。特に、リピート構造のために、表Cに提示する配列のいずれも、例えば、2~5×リピートしてもよく、例えば、G/A-A/A-A/Gであり、G/A-A/A-A/G-G/A-A/A-A/Gとも称し、そして13-6-14(JB13シリーズ-JB6シリーズ-JB14シリーズ)はまた13-6-14-13-6-14も含む。表C中、核酸塩基配列はまず、それらが結合している標的核酸塩基(例えば、JB4はG/Cと結合する)によって特定され、また、「JB」参照番号、例えば「4」によって特定され、これは「JB4」を指し、JB4、JB4b、JB4c、JB4d、およびJB4eが含まれる。
【0057】
【0058】
表C中、単位認識試薬標的配列(結合した塩基)は、「B1/B2」として認識試薬の単一の二価核酸塩基によって結合した二本の鎖の各塩基対を掲載し、認識試薬の二価核酸塩基によって結合した場合、B1は第一鎖からの塩基であり、B2は第二鎖からの塩基である。したがって、配列(CAG)nの場合、単位標的配列の配列はC/G-A/A-G/Cであり、配列5’-CAG-3’の逆平行配列を指し、配列、(CCG)nの場合、標的配列の第二アラインメントの配列はC/G-G/C-C/Cであり、5’-CCG-3’と逆平行の5’-CGC-3’のアラインメントを指し、その一方で、配列C/G-C/C-G/Cは配列5’-CCG-3’の逆平行配列を指す。
【0059】
認識試薬の結合の関連での「単位標的配列」は、標的ヌクレオチド配列中のリピート核酸塩基配列で見られる最短のリピート配列、または、リピート二本鎖核酸塩基配列、ミスマッチを含み、二本鎖配列中に、同一若しくは異なる核酸分子の二本鎖、例えば本明細書中で記載するように二価認識試薬によってトリプレックス構造中で結合させた場合にアラインメントされた、である。
【0060】
一態様において、第一末端と第二末端とを有し、3以上、例えば3~10、または3、4、5、6、7、8、9、若しくは10、または3~8個のPNA若しくはγPNA骨格残基から調製された、ペプチド核酸またはγペプチド核酸骨格、複数の核酸若しくは核酸アナログ骨格残基に連続して結合若しくは連結した核酸塩基の配列、骨格の第一末端における-SH、-OH、または-S-S-Lg部分、および骨格の第二末端における-C(O)-S-Lg若しくは-C(O)-O-Lg部分(脱離基Lgは、エステルまたはチオエステル結合により骨格に連結)であって、核酸塩基の配列は、単位標的配列、若しくは、核酸中の標的配列内の単位標的配列の2以上の逐次反復(ギャップのない、特定の配列の2以上の直接リピート)に対して相補的であるので、複数の認識モジュールが標的配列の隣接配列と結合する場合、互いにライゲーションするものを含む、認識試薬を提供する。一態様におけるLgは生体適合性および/または無毒である。Lgの非限定例としては、置換若しくは非置換(C
1~C
8)アルキル、置換若しくは非置換(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
1~C
8)カルボキシ、アミノ酸側鎖で任意に置換されていてもよい、または、グアニジン含有基、若しくは、
【化8】
が含まれ、
ここで、oは1~20であり、R
6の各々は、独立して、アミノ酸側鎖であり、R
7は-OHまたは-NH
2である。
【0061】
別の態様では、第一末端と第二末端とを有し、3以上、例えば3~10、または3、4、5、6、7、8、9、若しくは10、または3~8個の核酸若しくは核酸アナログ骨格残基から調製され、任意に立体構造的に予め組織化された、核酸または核酸アナログ骨格、複数の核酸または核酸アナログ骨格残基に連続して結合または連結した核酸塩基の配列、核酸または核酸骨格の第一末端に連結された第一アリール部分、および任意に第一アリール部分と同一であってもよく、核酸または核酸骨格の第二末端に結合した、第二アリール部分を含む、認識試薬を提供する。アリール部分は、独立して、2~5環縮合多環式芳香族部分、例えば、2~5縮合環を有する、置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、非置換若しくは置換ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレンであって、O、N、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で任意に置換されていてもよく、例えば、キサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチン、またはマンギフェリンであり、同一または異なっていてもよく、いくつかの態様では、同一である。ただし、認識試薬が標的核酸の隣接配列とハイブリダイズする場合、各々は隣接認識試薬のアリール部分とスタッキングできるものとする。認識試薬は、例えば、表Bに掲載したような、polyQ疾患などのリピート伸長疾患と関連する伸長されたリピートから形成されるヘアピンの両鎖と結合することができる。一態様において、前述のように、配列EIF若しくは(EIF)n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えばEIFEIF、IFE若しくは(IFE)n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えばIFEIFE、またはFEI、若しくは(FEI)n(ここで、nは2以上の整数、例えば、2、3、4、または5である)、例えばFEIFEIを有するCAGリピートを結合する際に使用するため、である。
【0062】
一態様において、認識試薬はセルフライゲーションし、構造:
【化9】
を有し、
ここで、XはSまたはOであり、nは1以上から6以下の整数であり、mは0以上から4以下の整数であり、R
1およびR
2は、各々独立して、H、グアニジン含有基、例えば、
【化10】
ここで、n=1、2、3、4、または5、アミノ酸側鎖、例えば、
【化11】
直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであって、1~50個のエチレングリコール部分を含むエチレングリコール単位で任意に置換されていてもよい、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、rおよびsはそれぞれ独立して、1から50の整数であり、
R
3は、Hまたは脱離基であり、一態様では、生体適合性および/または無毒であり、例えば、置換若しくは非置換(C
1~C
8)アルキル、置換若しくは非置換(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン(C
1~C
8)カルボキシ、アミノ酸側鎖で任意に置換されていてもよい、グアニジン含有基、または、
【化12】
であり、ここで、oは1~20であり、R
6の各々は独立して、アミノ酸側鎖であり、R
7は-OHまたは-NH
2であり、R
4は(C
1~C
10)二価炭化水素または1以上のN若しくはO部分、例えば-O-、-OH、-C(O)-、-NH-、-NH
2、-C(O)NH-で置換された(C
1~C
10)二価炭化水素であり、R
5は、-OH、-SHまたはジスルフィド保護基であり、そしてRの各々は独立して、核酸塩基であって、複数の認識モジュールの各々が鋳型核酸上の核酸塩基の標的配列と結合し、そして互いにライゲーションするように、標的核酸中の核酸塩基の標的配列と相補的な核酸塩基の配列を産生する。一態様において、R
5は、構造-SH、-OH、または-S-S-R
8を有し、ここで、R
8は、1以上のアミノ酸残基、アミノ酸側鎖、線状、分枝状若しくはヘテロ置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンである。一態様において、R
1またはR
2は、アミノ酸側鎖またはグアニジン含有基、例えば、
【化13】
であり、ここで、n=1、2、3、4、または5である。一態様において、R
1およびR
2は、異なり、R
1がHであり、R
2はHではないか、またはR
2がHであり、R
1はHではない。天然の核酸、例えばRNAまたはDNAに対する結合について、R
1はHであってもよく、R
2はHではなく、それにより、「右巻き」L-γPNAを形成する。例えば、R
2がHであり、R
1がHではない「左巻き」D-γPNAは、天然の核酸と結合しない。一態様において、認識試薬は、1以上のグアニジン含有基、例えば、
【化14】
で置換され、ここで、n=1、2、3、4、または5である。
【0063】
一態様において、R1またはR2は、-(OCH2-CH2)qOP1、-(OCH2-CH2)q-NHP1、-(SCH2-CH2)q-SP1、-(OCH2-CH2)r-OH、-(OCH2-CH2)r-NH2、-(OCH2-CH2)r-NHC(NH)NH2、または-(OCH2-CH2)r-S-S[CH2CH2]sNHC(NH)NH2で置換された(C1~C6)アルキルであり、ここで、P1は、H、(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレンまたは(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、そしてsは1~50の整数である。
【0064】
末端がアリール基である認識試薬は、すぐ隣のハイブリダイズする認識試薬のアリール基の非共有結合、例えば、πスタッキングの結果として連結する能力を有する。したがって、別の態様では、構造:
【化15】
を有する認識試薬(認識モジュール)が提供され、
ここで、Rは、独立して、核酸塩基であり、Rの各々は、同一であるか、または異なる核酸塩基であり得、
nは、1~6の範囲の整数、例えば、1、2、3、4、5、または6であり、
各Bは、独立して、リボース-5-ホスフェート残基、デオキシリボース-5-ホスフェート残基、または核酸アナログ骨格残基であり、一態様において、立体構造的に予め組織化された核酸アナログ、例えばγPNAまたはLNAの骨格残基であり、
Lは、独立して、リンカー、例えば、非反応性リンカーまたは非反応性、非巨大リンカーであり、Lの各々は、同一であるまたは異なり得、そして
Arの各々は、独立して、2~5環縮合多環式芳香族部分、例えば、2~5縮合環を有する置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、非置換若しくは置換ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレンであって、O、N、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で任意に置換されていてもよく、例えば、キサンテン、リボフラビン(ビタミンB
2)、マンゴスチン、またはマンギフェリンであり、同一であるかまたは異なっていてもよく、いくつかの態様では同一である。いくつかの態様では、認識試薬が標的核酸の隣接配列とハイブリダイズする場合、各Arは、隣接認識試薬のAr基とスタッキングする。
【0065】
化合物の部分、例えば、アリール部分または核酸塩基は認識試薬骨格と共有結合し、したがって、骨格に「連結」されるといわれる。化合物を調製するために使用される化学的性質に応じて、結合は直接的であってもよいし、または二つの他の部分または基と共有結合する部分である「リンカー」を介してであってよい。一態様において、末端芳香族(アリール)基はリンカーを介して認識試薬に結合される。リンカーは、芳香族基を認識試薬の骨格に連結させる非反応性部分であり、そして、いくつかの態様では、ヘテロ原子、例えば、N、S、若しくはOで任意に置換されていてもよい、1~10個の炭素原子(C
1~C
10)、または、非反応性結合、例えば、アミンをカルボキシル基と反応させることによって形成されるアミド結合(ペプチド結合)である。C
1~C
10アルキレンの例は、任意に環状部分を含んでもよい、線状若しくは分枝状アルキレン(二価)部分、例えば、任意にアミド結合を含んでもよい、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン(hepamethylene)、オクタメチレン、ノナメチレン、またはデカメチレン部分(すなわち、-CH
2-[CH
2]
n-であり、ここで、n=1~9)である。リンカーは、認識試薬の標的核酸に対する結合を、実質的に、立体的に遮蔽または他の方法で干渉せず、標的核酸上の認識試薬の連結を干渉しない点で、嵩高くない。リンカーは、認識試薬の芳香族基および骨格の連結に起因する残存部分、例えば、
【化16】
、または、非限定的な一例では、ピレン-1-酢酸等の酢酸置換アリール化合物(A)のDab(n=1)、Orn(n=2)、またはLys(n=3)残基に対する結合に起因する、
【化17】
である。
【0066】
さらなる態様において、リンカーまたは連結基は、化合物の二つの部分と接続する、例えば、化合物の二つの部分と共有結合する有機部分、例えば本発明の関連で限定されるものではないが、認識試薬の骨格に対する芳香族基の接続、核酸若しくは核酸アナログ骨格に対する核酸塩基の接続、および/または認識試薬に対するグアニジウム基の接続である。リンカーは、典型的には、直接結合または酸素もしくは硫黄等の原子、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHもしくは原子鎖等の単位、例えば、限定されるものではないが、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロ(herero)シクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロ(herero)アリールを含み、ここで、1以上の炭素、例えば、メチレンまたはメチリジン(-CH=)は、任意に、ヘテロ原子、例えば、O、S、若しくはN、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換ヘテロ環が中間または末端にあってもよい。一態様において、リンカーは、約5~25個の原子、例えば、5~20、5~10、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の原子、または合計1~10個、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個のCおよびヘテロ原子、例えばO、P、N、若しくはS原子を含む。
【0067】
PNA、例えばγPNAとの結合に関して、適切かつ利用可能なリンカーは、例えば、アミノ酸を認識試薬に付加するために周知のペプチド合成化学を使用して、アミンをカルボキシル基と反応させてアミド結合を形成するものであり、アミノ酸は、化学部分、例えば、下記の実施例で示すように、アリール修飾アミノ酸を添加してピレンアリール部分を認識試薬に連結し、アルギニンを使用してグアニジン基を提供して、アリール部分、またはグアニジン基などの化学的部分で前もって修飾してもよい。非ペプチド核酸アナログへの連結は、広く知られているような任意の好適な連結化学を使用して、例えば、カルボジイミド化学、例えば、EDC(EDAC、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)を使用して、アミン修飾芳香族部分を認識試薬に、例えば、末端ホスフェートを介して連結することによって達成することができる。
【0068】
芳香族基を認識試薬の骨格に連結する際に、リンカーは、本明細書中で記載するような標的核酸配列上の認識試薬の連結の間にπ-πスタッキングのための位置に芳香族基を配置するために適切なサイズまたは長さのものである。
【0069】
さらなる態様において、認識試薬は、構造:
【化18】
を有し、ここで、
Rの各々は独立して、核酸塩基であり、Rの各々は同一であるかまたは異なる核酸塩基であり得、
nは1~6の範囲の整数、例えば、1、2、3、4、5、または6であり、
R
1およびR
2は、各々独立して、H、グアニジン含有基、例えば、
【化19】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化20】
、非置換若しくは置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、または(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2-O)
q-SP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、sは1から50の整数であり、そして一態様では、R
1およびR
2は異なり、R
1はHであり、R
2はHではないか、またはR
2はHであり、R
1はHではない、
R
10またはR
11の一方、およびR
12、R
13、またはR
14のうちの一つは、-L-R
3であり、ここで、R
3の各々は、独立して、2~5環縮合多環式芳香族部分、例えば、2~5縮合環を有する、置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、非置換若しくは置換ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレンであって、O、N、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で任意に置換されていてもよく、例えば、キサンテン、リボフラビン(ビタミンB
2)、マンゴスチン、またはマンギフェリンであり、同一であるかまたは異なっていてもよく、いくつかの態様では同一であり、ある場合には、認識試薬が標的核酸の隣接配列とハイブリダイズする場合、隣接認識試薬のR
3基とスタッキングし、
ここで、Lはリンカー、例えば、非反応性リンカーまたは非反応性、非巨大リンカーであり、Lの各々は、同一であるかまたは異なり得、アミノ酸残基、または置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロ(herero)シクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロ(herero)アリールを含んでもよく、1以上の炭素、例えば、メチレンまたはメチリジン(-CH=)は、任意に、ヘテロ原子、例えば、O、S、若しくはN、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換ヘテロ環が中断若しくは末端にあってもよく、
そして、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14の残りは、各々独立して、H、1以上の近接アミノ酸残基、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであって、1~50個のエチレングリコール部分を含むエチレングリコール単位で任意に置換されていてもよい、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、sは1~50の整数である。
【0070】
一態様において、R4およびR7は-L-R3であり、別の態様では、R4およびR7は-L-R3であり、R11およびR14はArgである。一態様において、リンカーは、約5~25個の原子、例えば5~20、5~10、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の原子、または合計1~10個、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個のCおよびヘテロ原子、例えばO、P、N、若しくはS原子を含む。別の態様では、1以上のR1、R2、R10、R11、R12、R13、またはR14は、-(OCH2-CH2)qOP1、-(OCH2-CH2)q-NHP1、-(SCH2-CH2)q-SP1、-(OCH2-CH2)r-OH、-(OCH2-CH2)r-NH2、-(OCH2-CH2)r-NHC(NH)NH2、または-(OCH2-CH2)r-S-S[CH2CH2]sNHC(NH)NH2で置換された(C1~C6)アルキルであり、ここで、P1は、H、(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレンまたは(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、sは1~50の整数である。
【0071】
さらに別の態様では、認識試薬はPNA骨格を含み、したがって構造:
【化21】
を有し、ここで、
nは、1、2、3、4、5、6、7、または8を含む1~8の範囲の整数であり、
mは、1,2、3、4、または5を含む1~5、例えば1~3の範囲の整数であり、
R
2は、グアニジン含有基、例えば
【化22】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化23】
、非置換若しくは置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、または(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2-O)
q-SP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1はH、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、rおよびsは、それぞれ独立して、1から50の整数であり、
R
3は、非置換縮合環多環式芳香族部分、例えば、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレンであり、
R
11、R
13、およびR
14の各々は独立して、H、グアニジン含有基、例えば、
【化24】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、または1以上の近接アミノ酸残基、例えば1以上のArg残基である。一態様において、R
3はピレンである。
【0072】
別の態様では、R2は-CH2-(OCH2-CH2)r-OHであり、ここで、rは、1~50、例えば1~10の範囲の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、実施例2では1である。別の態様では、1以上のR2、R11、R13、またはR14は、-(OCH2-CH2)qOP1、-(OCH2-CH)q-NHP1、-(SCH2-CH2)q-SP1、-(OCH2-CH2)r-OH、-(OCH2-CH2)r-NH2、-(OCH2-CH2)r-NHC(NH)NH2、若しくは-(OCH2-CH2)r-S-S[CH2CH2]sNHC(NH)NH2で置換された(C1~C6)アルキルであり、ここで、P1は、H、(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレン若しくは(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、sは1~50の整数である。
【0073】
PNA系認識試薬のいくつかはキラリティーなしで示され、一例では、γ炭素(R1およびR2が結合しているもの)は、R2がHであり、R1がHではない(R)配向であるか、またはγ炭素は、例えば、R1がHであり、R2はHではない(S)配向である。さらに、一例では、存在する場合、R10、R11、R12、R13、および/またはR14位置において、キラルアミノ酸残基の1以上、またはすべては、L-アミノ酸であってよい。別の例では、存在する場合、R10、R11、R12、R13、および/またはR14位置において、キラルアミノ酸残基の1以上または全部はD-アミノ酸であり得る。
【0074】
前記のいずれかの薬剤的に許容される塩も提供する。
【0075】
本明細書中で記載する化合物のいずれかの薬剤的に許容される塩も、本明細書中で記載する方法において使用することができる。本明細書中で記載する化合物の薬剤的に許容される塩形態は、調剤分野で公知の従来法によって調製することができ、獣医学的に許容される塩として含んでもよい。例えば、制限されるわけではないが、化合物がカルボキシ基を含む場合、その好適な塩は、化合物を適切な塩基と反応させて、対応する塩基付加塩を提供することにより、形成することができる。非限定例としては、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウム、水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、エタノール酸カリウムおよびプロパノール酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルコキシド、並びにピペリジン、ジエタノールアミン、およびN-メチルグルタミンなどの様々な有機塩基が挙げられる。
【0076】
薬剤的に許容される塩基性塩の非限定例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、亜マンガン(manganous)、カリウム、ナトリウム、および亜鉛塩が挙げられる。薬剤的に許容される無毒な有機塩基から誘導される塩としては、限定されるものではないが、一級、二級、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N´-ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソ-プロピルアミン、リドカイン、リジン、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン(トロメタミン)の塩が挙げられる。
【0077】
薬剤的に許容される酸塩の非限定例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシレート(ベンゼンスルホン酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(galacterate)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩,塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、およびフタル酸塩が挙げられる。
【0078】
複合塩形態もまた、薬剤的に許容される塩であると考えられる。複合塩形態の一般的な非限定例としては、酒石酸水素塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウム、および三塩酸塩が挙げられる。
【0079】
したがって、本明細書中で用いられる「薬剤的に許容される塩」は、本明細書で記載する任意の化合物の塩形態を含む活性部分(薬物)を意味することが意図される。塩形態は、好ましくは、本明細書中で記載する化合物の改善されたおよび/または所望の薬物速度論的/薬力学的(pharmodynamic)特性を付与する。
【0080】
本明細書中で記載する組成物は任意の有効な経路によって投与することができる。送達経路の例としては、限定されるものではないが、局所、例えば皮膚上、吸入、浣腸、眼、耳および鼻腔内送達、経腸、例えば、経口的に、経胃チューブによる、および経直腸的、並びに非経口、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内、皮内、髄腔内、腹腔内、経皮、イオン注入、経粘膜、硬膜外および硝子体内が挙げられ、経口、静脈内、筋肉内および経皮アプローチが多くの場合好ましい。好適な投薬形態には、本明細書中で記載するように、リピート伸長疾患の治療に有用な活性部分を含む組成物を含む、単回投与、または複数回投与バイアル若しくは他の容器、例えば、医療用シリンジが含まれ得る。
【0081】
投薬計画は、所望の至適応答(例えば、治療または予防応答)を提供するために調節することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、長時間にわたって複数の分割量を投与してもよいし、または組成物を連続的若しくはパルス化方式で投与してもよく、用量もしくは部分用量を一定間隔で、例えば、10、15、20、30、45、60、90、若しくは120分ごと、毎日2~12時間ごと、または一日おきなどで、治療状況の要件によって示されるとおりに比例的に低減若しくは増加させる。場合によっては、組成物、例えば非経口若しくは吸入組成物を、投与の容易さおよび投薬量の一様性のために単位投与形態で処方するのが特に有利であり得る。単位投与形態についての明細は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成される特定の治療または予防効果、および(b)個体の過敏症の治療のためのそのような活性化合物の配合の技術に内在する限界によって決定され、直接的に依存する。
【0082】
有用な投薬形態としては、静脈内、筋肉内、または腹腔内溶液、経口錠剤または液体、局所軟膏またはクリームおよび経皮デバイス(例えば、パッチ)が挙げられる。一態様において、化合物は、活性部分(薬物、若しくは化合物)、および溶媒、例えば水、食塩水、乳酸加リンゲル液、またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)を含む滅菌溶液である。さらなる賦形剤、例えば、ポリエチレングリコール、乳化剤、塩および緩衝液を溶液に含めることができる。
【0083】
治療/医薬組成物を、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,ed.Paul Beringer et al.,Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD Easton,Pa.(2005)で記載されている許容される調剤手順にしたがって調製する(例えば、粉末、液体、非経口、静脈内および経口固体処方ならびにかかる処方を作製する方法の例については、第37章、第39章、第41章、第42章および第45章を参照のこと)。
【0084】
投薬計画を調節して、所望の至適応答(例えば、治療または予防応答)を提供することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、複数の分割量を投与してもよいし、または組成物を連続的もしくはパルス化方式で、用量若しくは部分用量を一定間隔で、例えば、10、15、20、30、45、60、90、もしくは120分毎、毎日2~12時間毎、または一日おき等で、治療状況の危急性によって望ましい場合は比例して減少若しくは増加させて投与してもよい。ある場合には、非経口または吸入組成物などの組成物を、投与の容易さおよび投薬量の一様性のために単位投与形態で処方するのが特に有利であり得る。単位投与形態の詳細は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成されるべき特定の治療または予防効果、並びに(b)個体における過敏症の治療用にそのような活性化合物を配合する技術に内在する制限により決定され、直接依存する。
【0085】
有用な投薬形態としては静脈内、筋肉内、または腹腔内溶液、経口錠剤または液体、局所軟膏またはクリームおよび経皮デバイス(例えば、パッチ)が挙げられる。一態様において、化合物は、活性部分(薬物、若しくは化合物)と、水、食塩水、乳酸加リンゲル液、またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)などの溶媒とを含む滅菌溶液である。ポリエチレングリコール、乳化剤、塩および緩衝液などの追加の賦形剤を溶液に含めてもよい。
【0086】
遺伝子認識試薬に加えて、リピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含む核酸を結合する方法であって、伸長されたリピートを含む核酸を、本明細書中で記載する遺伝子認識試薬の任意の態様と接触させることを含む方法も、発明の態様で提供される。一態様では、方法をインビトロまたはエクスビボで実施する。別の態様では、方法は、遺伝子認識試薬を含む好適な製剤処方を患者に対して、伸長されたリピートを有する遺伝子の発現をノックダウンするために、若しくは患者を治療するために有効な量で投与することにより、インビボで実施する。
【0087】
別の態様において、患者から得られたサンプル中の、(CAG)nなどの、リピート伸長疾患と関連する伸長されたリピートを含有する核酸の存在を特定する方法が提供される。方法は、患者から得られた核酸サンプルを本明細書中で記載するような任意の態様にかかる遺伝子認識試薬と接触させることを含む。次に、遺伝子認識試薬の結合および連結は、サンプル中の核酸における標的配列の存在下で起こるので、結合および連結は、サンプル中の核酸における標的配列の存在を示すものである。遺伝子認識試薬の結合および連結は、任意の有効な方法を用いて検出および/または定量化することができる。標的配列における伸長されたリピートを含む核酸の存在は、リピート伸長疾患と関連し、その点で、患者を、例えば、本明細書中で記載する遺伝子認識試薬を含む医薬投与形態の患者への投与により、リピート伸長疾患について治療することができる。
【0088】
このように、ヌクレオチド配列の伸長されたリピートと関連する疾患を有する患者を治療する方法が提供される。疾患の例は、表Bに掲載するものであるか、またはpolyQ疾患、例えば、ハンチントン病、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調1型)、SCA2(脊髄小脳失調2型)、SCA3(脊髄小脳失調3型またはマチャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調6型)、SCA7(脊髄小脳失調7型)、およびSCA17(脊髄小脳失調17型)である。疾患は、polyQ疾患、例えばハンチントン病について、(CAG)nなどの特定の疾患の特徴的反復配列を結合するように選択される、本明細書中で記載するような遺伝子認識試薬を含む組成物または医薬投与形態を患者に投与することによって治療する。医薬投与形態の組成物を患者に対して、疾患を治療するために有効な量および投与計画で投与する。したがって、本明細書中で記載するような遺伝子認識試薬を含む組成物の使用として、ヌクレオチド配列の伸長されたリピートに関連する疾患、例えば、PolyQ疾患、例えばハンチントン病、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調1型)、SCA2(脊髄小脳失調2型)、SCA3(脊髄小脳失調3型またはマチャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調6型)、SCA7(脊髄小脳失調7型)、およびSCA17(脊髄小脳失調17型)の治療のための使用も提供される。
【0089】
いくつかの実施形態において、開示は、a)一連のペプチド核酸(PNA)単位であって、i)第一の単位、ii)最終単位、およびiii)第一の単位と最終単位との間の少なくとも1の中間の単位を含み、一連の単位における各単位が、A)骨格部分であって、1)第一の単位の骨格部分は他の1の単位の骨格部分に共有結合し、2)最終単位の骨格部分は他の1の単位の骨格部分と共有結合し、そして3)各々の中間の単位の骨格部分は他の二つの単位の骨格部分と共有結合している、骨格部分、並びにB)骨格部分に共有結合した二価核酸塩基を含む、一連のペプチド核酸単位、b)第一の単位に共有結合した第一アリール部分、およびc)最終単位に共有結合した最終アリール部分を含む化合物を提供する。
【0090】
いくつかの実施形態において、開示は、a)一連のPNA単位であって、i)第一の単位、ii)最終単位、およびiii)第一の単位と最終単位との間の少なくとも1の中間の単位を含み、一連の単位中の各単位が、A)骨格部分であって、1)第一の単位の骨格部分は他の1の単位の骨格部分と共有結合し、2)最終単位の骨格部分は他の1の単位の骨格部分と共有結合し、そして3)各中間の単位の骨格部分は他の2の単位の骨格部分と共有結合している、骨格部分、並びにB)骨格部分と共有結合した二価核酸塩基を含む、一連の単位、b)二つのアリール部分であって、一方は第一の単位に共有結合し、もう一方は最終単位と共有結合している、アリール部分を含む化合物を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態において、開示は、第一アリール部分が第一の単位と第一リンカー部分によって共有結合し、最終アリール部分が最終単位と最終リンカー部分によって共有結合している化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、第一リンカー部分および最終リンカー部分が、各々独立して、グアニジン基を含む化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、第一リンカー部分および最終リンカー部分が、各々独立して、アミノ酸残基を含む化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、第一リンカー部分および最終リンカー部分が、各々独立して、三つのグアニジン含有アミノ酸残基を含む化合物を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態において、開示は、第一リンカー部分および最終リンカー部分が、各々独立して、三つの近接するアルギニン残基を含む化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、一連の単位が3~8単位である化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、一連の単位がγ-PNAである化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、第一アリール部分および最終アリール部分が各々独立して、2~5環縮合多環式芳香族部分、例えば、ポリ芳香族炭化水素、例えばピレンである化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、第一アリール部分および最終アリール部分が同一である化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、エチレングリコール単位、例えば、ジエチレングリコール単位をさらに含む化合物を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態において、開示は、標的核酸配列に対して相補的な順で二価核酸塩基を提示する化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、標的核酸配列がリピート伸長疾患に関連する化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、リピート伸長疾患が1型筋強直性ジストロフィー(DM1)または2型筋強直性ジストロフィー(DM2)である化合物を提供する。いくつかの実施形態において、開示は、化合物であって、二つの化合物が核酸とハイブリダイズする場合、一方の化合物の第一アリール部分と他方の化合物の最終アリール部分とがスタッキングする化合物を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態において、開示は、式:H-LArg-CAGCAG-LArg-NH2(P1)、H-LArg-LDab(Pyr)-CAGCAG-LOrn(Pyr)-LArg-NH2(P2)、H-LArg-LOrn(Pyr)-CAGCAG-LOrn(Pyr)-LArg-NH2(P3)、H-LArg-LLys(Pyr)-CAGCAG-LLys(Pyr)-LArg-NH2(P4)、H-LArg-LLys(Pyr)-CATCAG-LLys(Pyr)-LArg-NH2(P5)、またはH-LArg-LLys(Pyr)-CTGCTG-LLys(Pyr)-LArg-NH2(P6)の化合物を提供し、ここで、Ornはオルニチンであり、Dabはジアミノ酪酸であり、Pyrはカルボキシル官能化芳香族化合物、例えば、ピレン-1-カルボン酸、ピレン-2-カルボン酸、ピレン-4-カルボン酸、ピレン-1-酢酸、ピレン-2-酢酸、またはピレン-4-酢酸などのピレンである。
【0095】
いくつかの実施形態において、開示は、核酸を結合する方法を提供し、方法は、核酸を開示の化合物と接触させることを含み、化合物は、接触すると核酸に結合する。いくつかの実施形態において、開示は、細胞においてmRNAの発現をノックダウンする方法を提供し、方法は、細胞を開示の化合物と接触させることを含み、化合物は、mRNAに対応する細胞中のDNA配列を結合すると、細胞中のmRNAの発現をノックダウンする。
【0096】
いくつかの実施形態において、開示は、第一末端と第二末端とを有し、そして3~8個のリボース-5-ホスフェート、デオキシリボース-5-ホスフェート、または核酸アナログ骨格残基を有する、核酸若しくは核酸アナログ骨格、同一であるか若しくは異なっていてもよく、複数のリボース-5-ホスフェート、デオキシリボース-5-ホスフェート、または核酸アナログ骨格残基と連結された、二価核酸塩基、リンカーにより核酸若しくは核酸アナログ骨格の第一末端に連結された、第一アリール部分、任意に第一アリール部分と同一であってもよく、リンカーにより核酸若しくは核酸アナログ骨格の第二末端に連結された、第二アリール部分を含む遺伝子認識試薬を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示は、a)1以上の二価核酸塩基と、第一エミッター部分と接続した第一末端と、第二エミッター部分と接続した第二末端とを含む第一プローブ核酸を、標的核酸の第一リピート部分とハイブリダイズさせ、そしてb)1以上の二価核酸塩基と、第三エミッター部分に接続した第一末端と、第四エミッター部分と接続した第二末端とを含む第二プローブ核酸を、標的核酸の第二リピート部分とハイブリダイズさせることを含む検出方法であって、i)標的核酸の第一および第二リピート部分は、リピート伸長障害と関連し、ii)第一プローブ核酸および第二プローブ核酸を標的と結合させると、第三または第四エミッター部分とごく接近した第一または第二エミッター部分が得られ、iii)第三または第四エミッター部分とごく接近した第一または第二エミッター部分の存在は、ごく接近したエミッター部分の発光波長において変化を引き起こす、方法を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態において、検出方法は、ごく接近したエミッター部分の発光波長における変化を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、第一プローブ核酸を第一リピート部分にハイブリダイズすることで、第二プローブ核酸の第二リピート部分に対する親和性が増大する。いくつかの実施形態において、第三または第四エミッター部分に近接した第一または第二エミッター部分の存在は、第一または第二エミッター部分と第三または第四エミッター部分との間のπ-πスタッキング相互作用を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的核酸は生体サンプルから直接得られる。
【実施例】
【0099】
実施例1
NMR、X線、および生化学的研究によって、rCAG-ヘアピン構造がカノニカルRNAデュプレックスと比較して比較的動的であり、A-A内部隆起が大振幅運動を示すことが明らかになった。道路の「深い穴」と類似した、すべての二つのカノニカルG-C/C-G塩基対での内部A-Aミスマッチ(
図1(A))を含むそのような分子スカフォールドは、外因的リガンドの異なる生存可能な受容体様結合部位を提供する。rCAG-ヘアピン構造を標的とする比較的短い核酸リガンドが開発された(
図1(B))。ヤヌス塩基(J塩基、すなわちJB)、E、I、およびF(
図1(C))を使用し、これらは、立体構造的に予め組織化されたMPyPNA骨格を有する、RNA二重らせんの両鎖において核酸塩基と二価H結合相互作用を形成できる(
図1(DおよびE))。本明細書中で記載するJ塩基は、合計で16であり、16すべての可能なRNA塩基対組み合わせと結合するように設計された、両面核酸認識要素のより大きなセットの一部である(
図5A~5C)。それらは、形状、サイズ、および化学官能性が均一である点で「ヤヌス-ウェッジ」を含む他のJ塩基とは、異なり、したがって、モジュラーフォーマットと組み合わせて、RNA塩基対の任意の組み合わせを認識することができる。
【0100】
分子力学(MD)シミュレーション
二価認識デザイン概念の実行可能性を評価するために、四つのrCAGリピートを含むRNAデュプレックスと結合したリガンドLG1のMDシミュレーションを実施した。C末端リジン残基を除外し、MP側鎖をメチル基と置換して(MeγPNA)、コンピュータによるモデル化を単純化した。CEO、AIA、およびGFCトライアドを構築し、6-31基底系によって最適化し、各RNAおよびMeγPNA骨格上にグラフトした。結合したRNA-LGl-RNA複合体の構造を、AmbertoolのNABモジュールを使用して創出した。最終構造を水分子およびイオンで溶媒和させ、エネルギーを最小化し、100nsについてシミュレーションした。結果として得られた複合体はシミュレーション全体にわたってかなり安定なままであり、四つの別個のLG1リガンドが二つのRNA鎖間にぴったりと、はまっている(
図6(A))。H結合の数は、CEOおよびGFCトライアドの各々については5であり、AIAについては4であるが(
図6(B))、シミュレーションの間変わらないままであった(
図6(C))。しかしながら、4より少ないLG1リガンドとの結合をシミュレートする試みは失敗に終わった。複合体が解かれ、末端塩基対が不安定であるために一部はねじ曲がった構造を形成した(
図6(DおよびE))。
【0101】
化学的構成要素およびリガンドの合成
J塩基EおよびFを、対応するJB-MPγPNAモノマー1~3と共に合成した(
図7)。J塩基Iは市販されているので調製しなかった。EおよびFを、それぞれ、スキーム1(
図8)およびスキーム2(
図9)にしたがって合成した。化合物5~9におけるBoc保護/脱保護配列は、NBS反応の化学収率の向上およびその後の縮合および環化ステップにおける副反応の抑制に好ましいことが判明した。Stilleカップリングが円滑に進行するためには、12のさらなる保護が好ましいことが見いだされた。これは、Boc無水物を用い、高温で実施して達成された。みかけの嵩高さにもかかわらず、EのMPγPNA骨格へのカップリングまたはMBHA樹脂上の対応するモノマーのアセンブリにおいて何ら問題はなかった。F、4-アミノ-2-(メチルチオ)ピリジン-5-カルボニトリル(17)のコア構造を、公開されたプロトコルにしたがって調製した。その後にシアノ基からアミジンへ変換し、続いてBoc保護することで21を得た。様々な条件下で環外アミンを大過剰のBoc無水物で完全に保護することを試みたが失敗に終わった。これにより、カラムクロマトグラフィーによって分離するのが困難な異なる数のBoc基を有するTLC上の複数のスポットの形成に至ったからである。この課題に取り組むために、二ステップでBoc保護を実施した。22を酸化および加水分解に供し、続いてアルキル化および水素化分解を行ってFを得た。一旦調製されたら、E(15)、F(26)、およびI(27)をMPγPNA骨格にカップリングさせた(
図10,スキーム3)。Alloc保護基の除去により、所望のモノマー1~3を得た。リガンドLG1、LG2、およびLG3を、LG2と逆(平行)配向であるLG2Pと共に、PALリンカーおよびHBTUをカップリング試薬として使用してMBHA樹脂上で調製した。LG2Pは、親LG2リガンドがrCAGリピートを結合するのに最も高い見込みを示したので、負の対照として含めた。リジン残基をC末端で組み入れて、水溶解度を改善した。最後のモノマーカップリングが完了したら、リガンドを樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、RP-HPLCによって精製し、MALDI-TOF質量分析によって確認した(表D)。
【0102】
【0103】
標的選択およびサンプル調製
一連のモデルRNA標的を結合研究のために選択した(
図11)。R11Xシリーズは24のrCXGリピートを含み(
図11(A))、これは、二次ヘアピン構造をとると、リガンドに対して11個の結合部位を提供した(
図11(B))。R11Aは完全マッチ(A-A)を含み、その一方で、R11UおよびR11Cはリガンド結合のU-UおよびC-C各々のミスマッチを含んでいた。R11G(X=G)は確認されなかった。なぜなら、それはG-四本鎖並びにヘアピン構造を形成することが示されており、これは実験結果の解釈を混乱させ得るからである。LG2結合部位に下線を施した、一本鎖RNA標的であるWS(ワトソン鎖)およびCS(クリック鎖)(
図11(C))、並びに単一リガンド結合部位を含む二本鎖ヘアピンHP(
図11(D))も調べた。サンプルは、プレアニーリングされたRNAを0.1×PBS緩衝液(1mM NaPi、13.7mM NaCl、0.27mM KCl、pH7.4)中37℃で各リガンドと共にインキュベートすることによって調製した。この特定の緩衝液を我々の初期スクリーンに基づいて選択し、ここで、我々は、R11Aが安定なヘアピン構造をとることと、リガンドが結合できることを見出した。
【0104】
リガンド結合の分光学的同定
UV-Visおよび円偏光二色性(CD)の組み合わせを用いて、リガンドの結合特性を決定した。UV-Vis測定によって、三つのリガンドすべてがR11Aと結合できることが明らかになった。それらの相互作用の証拠は、252および330nmでの[R11A+リガンド]の吸収における淡色効果および深色移動から集めることができる。275~375nmレジームにおけるUV吸収は、E塩基のπ-π*遷移に相当する。この発見は、約270nmのシグナルにおける顕著な増加および赤方偏移を明らかにするCDデータによって裏付けられた。このシリーズのうち、LG2はCD振幅において最大の相違を示した。LG2のR11AでのCD滴定は、R11Aのリガンド結合部位の予測される数と一致する11:1比で飽和点に達した(
図12)。R11Aはリガンドの添加前に熱によりアニーリングされるので、均一なヘアピン構造をとるという仮説を立てた、しかしながら、分子内および分子間折り畳みの他の組み合わせも可能である。これに対して、LG2のミスマッチR11U(
図13(A))およびR11C(データは不掲載)、一本鎖WSおよびCS(
図13(B))、単結合部位を含む二本鎖HP(
図13(C))、またはミスマッチオリエンテーションLG2PとR11A(
図13(D))とのインキュベーション後にCDシグナルにおいて有意差は観察されなかった。R11UおよびR11Cミスマッチの結果は、あらゆる点でほぼ同一であったので、これ以降は塩基ミスマッチに関する考察のすべてはR11Uに集中する。まとめると、これらの結果から、リガンドとRNAとの間の相互作用は、配列特異的および配向特異的方式で起こり、一本鎖RNA標的よりも二本鎖が優先され、孤立したものよりも複数の連続した結合部位を有するものが有利であることがわかる。
【0105】
蛍光測定によるリガンド結合の確認
UV-VisおよびCDの知見をさらに実証するために、330nm(E塩基のλmax)での励起後にRNA標的の有無でリガンドの蛍光シグナルを測定した。LG1およびLG2と比較してLG3の著しい蛍光クエンチングが観察された。蛍光シグナルのそのような劇的な減少は、光誘起電子移動クエンチングのためであり得、これは、フルオロフォア(E)が二つの他のJ塩基間にスタッキングされるのでLG3にとって最も効率的であると予想される。この解釈は、LG3の蛍光シグナルが加熱することにより完全に回復されるという観察結果(データは不掲載)と一致する。三つのリガンドすべてで、発光シグナルは、R11Aの添加によりさらに減少したが、LG2で最も劇的であり、LG1およびLG3でそれぞれ35および33%であるのに対してLG2では60%の減少であった。LG2とR11U、[WS+CS]、HP、およびLG2PとR11Aのインキュベーションにより類似した蛍光クエンチングパターンが観察された(
図14)が、LG2とR11Aの蛍光クエンチングパターンほど劇的ではなかった。関連するクラスの二環式ピリミジンアナログで同様の観察を行い、これらの縮合環フルオロフォアの蛍光収率が局所環境に対して感受性が高いことが示された。リガンドのRNAに対する非特異的結合が蛍光クエンチングに至り得るという仮説を検証するために、各RNA標的をペンタミジンとインキュベートした後、LG2を添加し、また逆も行った。データから、LG2とR11Uおよび[WS+CS]の蛍光シグナル、並びにLG2PとR11Aの蛍光シグナルが、抑制されたままであったLG2とR11Aの場合(
図14、挿入画)を除いて、完全に回復されたことがわかった。この結果は、ペンタミジンとは異なるモードによる、おそらくは規定の二価H結合相互作用を介してR11Aと結合するLG2と一致する(
図1BおよびC)。
【0106】
NMR滴定
LG2の結合モードの洞察を得るために、LG2、R11A、および組み合わせで用いて一連の多核および多次元NMR実験を実施した。サンプルは、9:1体積比のH
2O:D
2Oを含有する以前と同一である0.1×PBS緩衝液中で調製した。NOESYデータを300、200、および100msの混合時間で集めて、プロトン間距離を得、一方、COSY実験を実施して、各残基のプロトンスピンシステムをマッピングした。LG2とR11Aとの間のH結合相互作用は、塩基対開放に起因するカノニカルG-C/C-G対のイミノプロトンシグナルの線幅拡大およびダウンフィールド化学シフト、並びにリガンドとRNAとの間のH結合の形成に起因してイミノプロトンシグナルの新規セットの出現をもたらすことが予想された。CDデータと一致して、
1H-NMR実験によって、R11Aは12.35ppmでのシャープなイミノプロトンシグナルにから明らかなように、0.1×PBS緩衝液中で安定なヘアピン構造をとることが明らかになった。可変温度測定によって、この化学シフト帰属がさらに裏付けられ、温度の上昇と共にピーク強度が徐々に減衰し、その一方で、交換不可能なプロトンのピーク強度はほぼ一定のままであったことが示された。核酸塩基プロトンの部分帰属をNOESY実験によって行った。予想されるように、LG2の添加により、R11Aのイミノプロトンシグナルが徐々に拡大され、ダウンフィールドシフトした(
図15)。さらに、C4-NHおよびG2-NHの化学シフトは著しく影響を受け、このことは、それらのリガンドとの相互作用を示すものである。努力したにもかかわらず、反復配列における縮重のために、R11Aに対してLG2を滴定する際にA6-NHの化学シフトの帰属、ひいてはモニタリングはできなかった。それにもかかわらず、結果は、G-C/C-G塩基対開放がリガンドによって媒介されることを示す。しかしながら、リガンドとRNAとの間のH結合形成について予想されるように、10~20ppmレジームにおいて任意の新規イミノプロトンシグナルは観察されなかった。
【0107】
鋳型介在性ネイティブ・ケミカル・ライゲーション(NCL)
LG2およびR11Aで観察されるような、リガンドのRNAとの弱く一時的な相互作用は重要な生物学的応答をもたらす可能性が低い。LG2の結合親和性をさらに改善するために、第二のLG2誘導体、LG2N(
図16(A))を合成し、これはC末端チオエステルおよびN末端シスチンを含んでいた。このリガンドは、第二世代N-アシル尿素リンカーを使用して調製した。二重機能プローブデザインは、二つの官能基がジスルフィド結合の還元に際して自発的に互いに反応するのを防止する際にMPγPNAの立体構造的にプレオーガナイゼーションを利用する。シスチン基を用いて、プローブ取り扱いをよりよく制御した。以前の研究で、全ての天然の核酸塩基を含む同じ長さのリガンドは、生理的温度(37℃)で約1時間の減少した(非環式)半減期を有することが明らかになった。LG2N*について同様の半減期が予想された。
図16(B)は、ジスルフィド結合の還元後のLG2Nの反応経路、還元性細胞内環境におけるLG2Nの予想された化学状態を示す。RNA標的の存在下で、リガンドは、分子間塩基スタッキング(ステップ2)の結果として、隣り合うRNA標的の核酸塩基と一時的二価H結合相互作用を形成することが予想された。ジスルフィド結合が切断されると、リガンドは鋳型介在性NCLを受けて、RNA鋳型をよりしっかりと結合する連結された生成物を形成する(ステップ3)。RNA標的の非存在下で、リガンドは分子内NCL反応を受けて環状生成物を形成することによって自己失活する(ステップ4)。
【0108】
LG2Nが環化反応を受ける前にジスルフィド結合の還元後に、一定の期間安定なままであるという予想を確かめるために、LG2N
*がインサイチュで誘導される親化合物Mの反応進行をモニタリングした(
図17(A))。反応生成物の定量化では、分子内NCLはタイムスケールが比較的短く、前者を用いて5分未満で達成できるので、HPLCや他の分析的技術よりもMALDI-TOFを選択した。HPLC分析の前に求電子試薬で反応をクエンチすることを試みた、しかしながら、そのような努力は、リガンドの迅速な分子内反応のために成功しなかった。4-メルカプトフェノール(4MP)および2-メルカプトエタノール(2ME)を可能な還元剤として調べた。どちらでも親化合物Mについて類似した動的プロファイルが得られた、しかしながら、前者は、加水分解親化合物と重複する質量対電荷比(m/z)を有する中間体をもたらし、互いに差別化するのが困難になった。このために、MALDI-TOFによる反応モニタリングおよびゲルシフトアッセイでは4MPを選択し、その一方で、その後の溶融実験では、核酸塩基吸収領域におけるその透明性のために、2MEを用いた。我々のデータから、4MPを親化合物Mに添加すると、エステル交換(M#)およびC末端チオエステル(M##)に対応する二つの反応種がまず形成されたことが明らかになった(
図17(A))。それらは<15分間持続した後、反応性LG2N
*中間体に変換され、最後に環状生成物(cLG2N)に変換された(
図17(B))。LG2N
*は生理的温度で安定であった。これは、1時間の還元時点で主生成物として存在し、混合物中の全生成物の約75%を構成し、残りの25%は主にcLG2Nであった。LG2N
*は約3時間の半減期を有し、天然のカウンターパートよりもほぼ3倍長い。LG2N
*の化学安定性はE塩基の拡大された芳香環サイズに起因し、このためにより良好な塩基スタッキング相互作用が得られ、したがってリガンドの立体構造的に柔軟性が低くなると考えた。
【0109】
次に、UV溶融実験を実施して、RNAの熱安定性に対する鋳型介在性NCLの効果を決定した。サンプルを0.1×PBS緩衝液中、LG2NのR11Aの結合部位数に対する比2:1で調製し、37℃で16時間インキュベートした後、UV溶融分析を実施した。予想通り、還元剤がないと、LG2NはR11Aの溶融遷移(Tm)に対する効果が最小であり、最大でも約+1℃のΔTmであった。同様のことが、C末端チオエステルもN末端システインも含まないLG2でも見られた。しかしながら、2MEの存在下で、[LG2N+R11A]のインキュベーションを周囲温度または37℃で行うかによらず、結果は類似していた。R11AのTmの有意な増加は、どちらの場合にも59~68℃の範囲で見られた。溶融曲線の導関数は、ブロードなS字状の分布を示し、このことは、形成され、RNA鋳型に結合された様々な連結生成物の存在を示唆する。この知見が、鋳型介在性合成について予想された。Tmの類似性にもかかわらず、二つの溶融曲線はパターンが異なり、高温でインキュベートしたものが25~50℃範囲で逆の光吸収を示す。この溶融挙動は、疎水性/芳香族相互作用に特徴的であり、好熱性フォルダマーおよび他の芳香族系、例えばペリレンおよびピレンで以前に観察された現象である。我々は、逆の強度分布が、おそらくは周囲温度よりも37℃でより多い量で形成された、連結された生成物のJ塩基の相互作用に起因すると考えた。加熱すると、疎水性相互作用は、ある点(約50℃)まではより顕著になり、それを超えると反発が起こった。R11Aの熱安定性の増強は、NCL生成物の形成およびRNA鋳型に対するそれらの結合と一致する。
【0110】
R11AのT
mにおける増強が鋳型介在性連結および結果として得られた生成物のRNA鋳型に対する結合に起因することを確認するために、UV溶融サンプルのMALDI-TOF分析を実施した後加熱した。連結された生成物の形成は、リガンドの質量にしたがって、約1319ダルトンのステップサイズでm/z値が徐々に大きくなる新しいピークの出現から明らかである(
図18(A))。しかしながら、これらの連結された生成物は、ミスマッチR11U(
図18(B))または標的なしでLG2N単独(
図18(C))では観察されなかった。同様に、連結された生成物が一本鎖[WS+CS]または二本鎖HPで形成される証拠はなかった(データは不掲載)。この結果は、R11Aヘアピン構造によって媒介される、鋳型介在性合成の発生と一致する。
【0111】
連結されたリガンドの選択的結合
LG2NがrCAG
expを正常なリピートから区別できるか否かを判定するために、競合的結合アッセイを実施した。正常(R24A、n=24、R11Aと同じ)および病原性(R127A、n=127)範囲内のr(CAG)
nリピートをミスマッチr(CUG)
96対照(R96U)と共に含む二つのRNA標的を用いた。各ヘアピンモチーフを採用すると、これらのRNA転写産物はLG2Nについて11、62、および47の結合部位を提供する。二セットのサンプルを、一方は0.1×PBS中で、もう一方は生理学的に関連する緩衝液(10mM NaPi、150mM KCl、2mM MgCl
2、pH7.4)中で調製した。両セットにおいて、R24A(100nM鎖濃度、1.1μM結合部位)およびR127A(18nM鎖濃度、1.1μM結合部位)の等モル混合物を様々な濃度のLG2Nと、4MPおよびTCEPと共に37℃で24時間インキュベートした。TCEPを含めて、ジスルフィド結合が完全に還元されることを確実にした。反応混合物をアガロースゲルにより分析し、可視化のためにSYBR-Goldで染色した。
図19の調査によって、レーン2~5において一番下のバンドと比べて、上の二つのバンドの消失速度が速いことによって明らかなように、LG2Nは、R24AよりもR127Aに対して優先的に結合することが明らかになった。そのような結合事象は、還元剤の存在下、および完全にマッチしたRNA標的でのみ起こった。なぜなら結合の証拠は4MPおよびTCEPの非存在下(レーン6とレーン1を比較)およびミスマッチR96U(レーン8とレーン7を比較)で観察されなかったからである。リガンドとRNAの複合体化について予想されるように、シフトしたバンドが形成されることは観察されなかった。このことは、SYBRGoldがRNA-リガンド複合体をインターカレートできなかったことを示唆する。リガンド結合はRNAの立体構造において劇的な変化を引き起こすことが知られていることを考慮すると、この観察は以外ではなかった(
図6)。これに対して、生理学的に関連するイオン強度で起こるリガンド結合の証拠は観察されず(
図20)、そのような条件下で、RNAヘアピンは鋳型介在性リガンドオリゴマー化を媒介できなかったことを意味する。
【0112】
HD、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)および2型(DM2)、脊髄小脳性運動失調(SCA)、脆弱性X症候群(FXS)、フリードライヒ失調症(FRDA)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS、またはルー・ゲーリック病)の亜集団、不安定なリピート伸長の結果としての兆候をはじめとする、20を超える多くの神経筋障害。遺伝子のコーディング領域の伸長は、タンパク質機能の変更に至る可能性がある一方で、非コーディング領域で起こる伸長は、RNA機能の毒性獲得によるタンパク質配列および/またはRAN翻訳による有害なポリペプチドの不測の産生を干渉しない疾患を引き起こす可能性がある。これらの遺伝性障害の多くは常染色体優性であり、疾患を引き起こすのに一つだけの対立遺伝子での伸長(または変異)を必要とする。したがって、そのような疾患経路を干渉するための1の方法は、冒された対立遺伝子または対応する遺伝子転写産物を標的とすることである。二者間で、後者は、不完全なヘアピン構造をとる傾向のために、外因的分子に対してより大きなアクセス可能性と、二価リガンド、例えばJB-MPyPNAに対してより大きな認識特異性とを提供する。
【0113】
HD、並びに、限定されるものではないが、MJD、SBMA、DRPLA、およびSCAをはじめとする他の神経変性障害におけるrCAGリピートの伸長性遺伝的浸透度のために、我々はrCAGリピートに全力を注いだ。変異体htt転写産物と選択的に結合し、疾患経路を干渉する分子を使用して、HDだけでなく、他の関連する遺伝性障害を治療することができる。本明細書中で記載する核酸リガンドは、通常のアンチセンス薬剤とはいくつかの点で異なる。第一に、それらはCAG-RNAヘアピンモチーフと二価H結合相互作用により結合する。第二に、それらはサイズが比較的小さく、単一トリプレット反復単位の長さである。したがって、それらは、固相化学ではなく溶液相化学により、化学的合成、構造的修飾、およびスケールアップがより容易である。第三に、小分子の外縁上の分子量について、そのような「ミラモレキュール」システムは、概して、典型的なアンチセンス薬剤よりも好ましい薬物速度論的特性を有する。第四に、J塩基認識は、より配列特異的かつ選択的である。通常、天然の核酸塩基の一面で起こる単一塩基ミスマッチは、J塩基の両面で起こるので、より特異的であり、より選択的であって、二つの結果として得られた生成物の結合自由エネルギーにおける大きな差異のために、一本鎖RNA標的よりも二本鎖が好ましい。しかしながら、小分子、またはリボスイッチとは異なり、J塩基の認識は、より多様な引力の組み合わせではなく、二価ワトソン・クリックH結合相互作用により、一連の所定の規則に従う。さらに、JB-リガンドデザインはモジュール式である。したがって、リガンドを、調製し、RNAリピートの任意の配列を結合するように修飾することができる。これにより、リガンドの結合親和性を調整することによって、また緩衝液のイオン強度を調節することによって、認識選択性のさらなる改善が可能になるので、低い塩濃度でのJB-リガンドと通常の長さのrCAGリピートとの弱くかつ一時的な相互作用は、初期デザイン段階で望ましい。
【0114】
材料および方法
UV溶融分析
すべてのUV溶融サンプルは、リガンドをRNA標的と0.1×PBS緩衝液中、表示された濃度にて混合することによって調製し、90℃で5分間インキュベーションすることによってアニーリングし、続いて室温まで徐々に冷却した。熱電気的に制御されたマルチセルホルダーを備えたAgilent Cary UV-Vis300分光計を用いてUV溶融曲線を集めた。260nmにて、加熱実験では25℃から95℃まで、そして冷却実験では95℃から25℃まで、どちらも1分あたり1℃の割合でUV吸収をモニタリングすることによって、UV溶融スペクトルを集めた。冷却および加熱曲線はほぼ同じであり、ハイブリダイゼーションプロセスは可逆性であることを意味する。記録されたスペクトルを、20点隣接平均化アルゴリズム(20-point adjacent averaging algorithm)を使用して平滑化した。溶融曲線の一次導関数を利用して、複合体の溶融温度を決定した。
【0115】
CD分析
サンプルを0.1×PBS緩衝液中で調製した。すべてのスペクトルは、1cmパス長のキュベット中、25℃で、200~375nmの間で100nm/minの割合で集めた、少なくとも15回のスキャンの平均を表す。緩衝溶液からのCDスペクトルを、サンプルスペクトルから差し引き、これを次に、5点隣接平均アルゴリズムによって平滑化した。定常状態蛍光測定。リガンドをRNAと0.1l×PBS緩衝液中、表示された濃度での混合によってすべての定常状態蛍光サンプルを調製し、90℃で5分間インキュベーションすることによってアニーリングし、続いて37℃まで徐々に冷却した。サンプルを37℃で1時間インキュベーションした後、測定をした。定常状態蛍光データを、Cary Eclipse Fluorescence分光計によって25℃で集めた。(εex=330nm、εem=340~600nm)。
【0116】
競合的結合アッセイ
R24AをIDTから購入した。R127A[r(CAG)127]およびR96U[r(CUG)96]を先に記載したようにして調製した。R24A、R126A、およびR96Uを0.1×PBS緩衝液中で調製し、90℃で5分間加熱することによってアニーリングし、続いて室温まで徐々に冷却した。リガンドおよびRNAを表示された濃度で混合し、37℃で24時間インキュベートした。サンプルを次いで1×トリス-ホウ酸塩緩衝液を用いて2%アガロースゲル上にロードし、100Vにて25分間、電気泳動法で分離した。ゲルをSYBR-Goldで染色し、UV-Transilluminatorで可視化した。
【0117】
MDシミュレーション、リガンド合成、およびモノマー合成
手順は、添付した、本明細書中に組み込まれる補足情報に提示されている。
【0118】
一般的技術
すべての出発物質および化学物質は、特に記載しない限り、商業的供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。すべての反応は、特に記載しない限り、無水条件下で乾燥溶媒を用い、窒素雰囲気下で実施した。真空中での溶媒の除去とは、高真空ポンプに取り付けたロータリーエバポレーターを用いた蒸留を指す。固体、シロップ、または液体として得られた生成物を高真空下で乾燥させた。分析的薄層クロマトグラフィーをあらかじめコーティングしたシリカプレート(60F-254、厚さ0.25mm)上で実施し、化合物を、UV光によるかまたはニンヒドリン若しくはヨウ素での染色、または現像手段としての熱によって可視化した。NMRスペクトルを、300または500MHzのいずれかで、溶媒としてのCDCl3、DMSO、およびD2O並びに内部標準としてのTMSを用いて記録した。多重度を説明するために以下の略号を使用した、s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項、ddt=三重項の二重項の二重項、dt=三重項の二重項、td=二重項の三重項、ABq=AB四重項、dd=二重項の二重項、tt=三重項の三重項、br=ブロードwtc。ESI-ESI-TOF質量分析器およびDART分析器を使用して高分解能質量分析法(HRMS)を実施した。ESI-Ion Trap-MS質量分析器を用いて低分解能質量分析(LRMS)を実施した。特に明記しない限り、RP-HPLCでのオリゴマー精製については1.0mL/minの流量にて、40分で95%H2O(0.01%TFA)から95%MeCN(0.01%TFA)への線形溶出勾配(方法A)でC18(15cm×2.1mm、5μm粒子)カラムを使用した。MALDIスペクトルは、TOF/TOF分光計を使用して測定した。吸収プロファイルをUV-Vis分光光度計で記録した。円偏光二色性(CD)スペクトルをSpectropolarimeterで記録した。蛍光(発光)を蛍光Spectrophotometerで記録した。
【0119】
MDシミュレーション
C末端リジン残基をγPNAから除外し、MP側鎖をメチル基と置換した(MeγPNA、公開されたX線結晶構造、PDB-ID3PA0)。CEG、AIA、およびGFCトライアドを、キメラ1を用いて構築し、ガウス分布で設定されたHF/6-31G
*基準により最適化した。結合したRNA-HD1-RNA複合体のらせん構造は、AmbertoolのNABモジュールを使用してトライアドから創出され、結晶構造からの修飾MeγPNA骨格をらせん構造上にグラフトした(
図2Aに示すとおり、初期構造)。RNAが四つのrCAGリピートを含むデュプレックスであり、RNAに結合したHD1リガンドの数が1から4まで変動する四つのそのようなRNA-HD1-RNA複合体が得られた。各RNA-(HDl)
n-RNA複合体をTIP3P4水分子で溶媒和させ、イオンを付加して、電荷を中和した。システムをエネルギー最小化し、次いでRNAおよびHD1リガンドの原子に関して25Kcal/mol/Åの高調波抑制下で300Kまで加熱した。抑制を一連の六回の短いシミュレーションにおいて徐々に解除し、最終的に抑制されていないNPTシミュレーションを、300Kおよび1バールの圧力で100ns、それぞれNose-HooverサーモスタットおよびParinello-Rahmanバロスタットを使用して実施した。静電相互作用は、粒子メッシュEwald法を使用して処理し、すべてのシミュレーションは、χOL3修正付GROMACS Amber99-parmbsc0力場をRNAに使用して実施し、一般的amber力場を使用して、HD1リガンドの力場パラメータを創出した。
【0120】
樹脂ローディング[(MP)(PAL)]
【0121】
(1)MPローディング。
1gのMBHA樹脂(1mmol/g、Peptide International、RMB-2100-PI)を反応容器中のDCMに1時間浸し、次いでDCM(3×)およびDCM中5%DIEA(3×)で洗浄した。
図21を参照。Kaiser試験によってアミン基が中和されたことを確認したら(青色)、15mLカノニカル管中に以下の溶液を順次添加した、3.5mLのNMP、450μLの溶液A、460μLの溶液B、および550μLの溶液C。混合物を10秒間ボルテックスし、3分間放置した後、反応容器中の樹脂に添加した。穏やかに振盪しながら、反応を1時間進行させた。反応混合物を陽空気圧(possitive air pressure)で廃棄し、樹脂をDMF(3×)、DCM(3×)、DCM中5%DIEA(1×)、およびDCM(3X)で洗浄した。キャッピング溶液を反応容器に添加することによって樹脂をキャッピングし、容器を45分間穏やかに撹拌した(2X)。最後のキャッピング溶液を廃棄した後、樹脂をDCM(3×)で洗浄し、キャッピングの完了をKaiser試験によって確認した(淡黄色)。
【0122】
溶液A:500μLのNMP中43mgのFmoc-MP(0.200M)
溶液B:913μLのピリジン中87μLのDIEA(0.500M)
溶液C:750μLのNMP中55mgのHATU(0.201M)
キャッピング溶液(Ac2O/NMP/ピリジン:112/2):2mL Ac2O、4mL NMP、および4mLピリジン
【0123】
(2)PALおよびLysのローディング(前項からの樹脂1g)。
樹脂をDMF中20%ピペリジン溶液(2×)でそれぞれ7分間処理し、続いてDMF(3×)およびDCM(3×)で洗浄することによって、Fmoc保護基を除去した。Kaiser試験によってFmocが首尾よく除去されたことを確認(青色)したら、以下の材料を混合することによってカップリング溶液を調製した、3mLの0.2Mモノマー溶液、1.5mLの0.52M DIEA溶液、および1.5mLの0.39M HBTU溶液。混合物を3分間活性化した後、樹脂に添加した。反応容器を穏やかに撹拌しながら、反応を30分間進行させた。反応の完了をKaiser試験によって確認した(淡黄色)。樹脂をDMF(3×)、5%DIEA溶液(1×)、およびDCM(1×)で洗浄し、キャッピング溶液を樹脂に添加することによって未反応アミンをキャッピングし、反応容器を30分間穏やかに撹拌した。キャッピング溶液を除去したら、樹脂を20%ピペリジン(2×)、DMF(2×)、およびDCM(2×)で洗浄した。
【0124】
モノマー溶液:3mLのNMP中303mgのFmoc-PAL(0.200M)3mLのNMP中281mgのFmoc-Lys(Boc)-OH(0.200M)
DIEA溶液:3.638mLのDMF中364μLのDIEA(0.52M)
HBTU溶液:5mLのDMF中740mgのHBTU(0.39M)
キャッピング溶液:(Ac2O/NMP/ピリジン:1/25/25vol)
【0125】
Fmoc脱保護
Fmoc保護基は、樹脂をDMF中20%ピペリジン(50mg樹脂に対して0.5mL)溶液(2×)で各々7分間処理し、続いてDMF(3×)およびDCM(3×)で洗浄することによって除去した。Fmoc脱保護はKaiser試験によって確認した(青色)。
【0126】
モノマーカップリング
FmocがKaiser試験によって首尾よく除去されたことを確認したら(青色)、樹脂をDMF(4×)およびDCM(5×)で洗浄した。カップリング溶液は、以下の材料を混合することによって調製した、150μLの0.2Mモノマー溶液、75μLの0.52M DIEA溶液、および75μLの0.39M HBTU溶液。混合物を10分間活性化した。樹脂をピリジン(1×)で洗浄した後、モノマー溶液を樹脂に添加した。反応容器を穏やかに撹拌しながら、反応を2~4時間進行させた。反応の完了は、Kaiser試験によって確認した(淡黄色)。樹脂をDMF(3×)およびDCM(3×)で洗浄した。
【0127】
キャッピング。
未反応アミンを新たに調製したキャッピング溶液でキャッピングした。キャッピング溶液(1:25:25、無水酢酸:NMP:Py)を樹脂に添加し、反応容器を4分間撹拌した。樹脂をDMF(4×)およびDCM(5×)で洗浄した。
【0128】
切断
最終Fmoc脱保護ステップ後、樹脂をDMF(5×)およびDCM(8×)で洗浄した。樹脂を真空下で15分間乾燥させた。乾燥樹脂に、新たに調製した95%TFA:5%m-クレゾール(50mg樹脂に対して0.6mL)を添加し、反応容器をスタンドバイモードで保持した。室温で1時間後、TFA溶液をカノニカル遠心分離管中に集めた。再度、切断溶液(50mg樹脂に対して0.5mL)を樹脂に添加し、反応容器を30分間放置した。TFA溶液を先に集めた溶液と組み合わせた。
【0129】
沈殿
集めたTFA溶液に、冷乾燥ジエチルエーテル(-60℃、14mL)を添加し、振盪した。30分以内に沈殿が生じた。沈殿したオリゴマーを遠心分離により集め、冷ジエチルエーテル(2×)で洗浄した。
【0130】
精製
粗オリゴマーを0.5mLの95%水、5%アセトニトリル、および0.1%のTFA中に溶解させた。結果として得られた溶液を逆相分析カラムによって精製した。
【0131】
実施例2-モノマー合成
【0132】
【0133】
モノマーE(1)
パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(28.22mg、24.42μmol)をフェニルシラン(0.12mL、0.98ミリモル)およびアリルモノマー29a(0.60g、0.49ミリモル)の無水ジクロロメタン(10mL)中混合物に室温で添加した。出発物質の対応する酸への完全な変換が15時間にわたるTLC(溶離液:EA:Hex(SO:SO)、29aのRf0.6、生成物のRf=0.0(ドラッギング))により観察された。反応混合物にシリカゲルを室温で添加し、そして溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。シリカゲル吸収粗生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た。収量:0.44g、7S%。1H NMR(S00.13 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 1.08/1.09(s/s,9H),1.25-1.28(m,18H),1.37-1.38(m,18H),1.41/1.6S(s/s,9H),3.12-3.64(m,13H),3.77-3.90(m,2H), 3.90-4.00(m,2H),3.99-4.4.34(m,4H),7.21-7.49(m,5H),7.54-7.79(m,2H),7.89(d,J=7.2 Hz,2H),8.55/8.64(s/s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 27.2-27.6(18C,tBu),35.8,46.7,54.9,59.7,60.6/60.6(2C),65.6/65.6,69.6/69.6,69.8/69.9,70.4/70.4,72.2/72.2,82.1(3C),82.2,83.2,83.4,86.2,108.1,120.1(2C),125.2,127.0(4C),127.6(4C),140.7(2C),143.8/143.8,147.9,149.2/149.3,149.3,149.5,149.7,155.0/155.9,156.3/156.5,162.3,166.6/166.6、HRMS:[C61H85N7O17+H]のm/zの計算値:1188.6080、実測値:1188.6071。
【0134】
【0135】
モノマーI(2)
化合物1についての上記の手順を用い、出発物質としての化合物29b(3.10g、4.39ミリモル)から出発して、この化合物を調製した。TLC(溶離液:MeOH:DCM(5.95)、29bのRr=0.2、2のRf=0.0)。収量:2.22g、76%。1H NMR(300.13 MHz,DMSO-d6):δ 1.09(bs,9H),3.11-3.52(m,15H),3.87-3.96(m,2H),4.24(dd,J=13.4,5.4 Hz,4H),7.19-7.44(m,SH),7.69(d,J=7.5 Hz,2H),7.89(d,J=7.4 Hz,2H),10.71-10.75(m,1H),11.06(bs,1H),12.46(bs,1H)、13C NMR(126 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 27.8(3C),47.2/47.2,61.1(3C),65.6/66.0,70.1(2C),70.3/70.4,70.9(3C),72.7,107.8,120.6-128.1(10C),139.7/140.1,141.2(2C),144.3,151.8,156.3,164.6,170.9、HRMS:[C34H42N4O10+H]のm/zの計算値:667.2979、実測値:667.2988。
【0136】
【0137】
モノマーF(3)
化合物1についての上記の手順を用い、出発物質としての化合物29c(2.50g、2.00ミリモル)から出発して、この化合物を調製した。TLC(溶離液:EA:Hex(50:50)、29cのRf=0.6、3のRf=0.0(ドラッギング))。収量:1.94g、80%。1H NMR(300.13 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 1.08(s,9H),1.35(s,9H),1.36(s,9H),1.41/1.42(s/s,18H),3.20-3.62(m,20H),3.77-4.15(m,4H),4.18-4.34(m,4H),4.82-5.35(m,2H),7.17-7.46(m,5H),7.70(d,J=7.0 Hz,2H),7.88(d,J=7.5 Hz,2H),8.93/8.95(s/s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 27.3-27.5(18C,tBu),46.7/46.7,60.6(2C),60.7(2C),69.6(2C),69.7,69.9,70.4(3C),72.2,82.1,82.1,82.9,82.9,83.3,83.4,108.0,110.8,118.4,120.1(2C),123.1,125.2/125.3,127.0(4C),127.6(4C),140.7(2C),143.8,146.9,149.5,156.6,157.1,162.4/162.4.HRMS:[C60H85N7O19+H]のm/zの計算値:1208.5980、実測値:1208.5959。
【0138】
【0139】
(4-クロロ-ピリジン-2-イル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(5)
氷浴中、2-アミノ-4-クロロピリジン(1)(50.00g、0.39mol)の556mLの無水THF中撹拌溶液に、Et3N(81.37mL、0.58mol)を10分にわたって不活性雰囲気中で滴下した。同じ温度でさらに10分間撹拌した後、THF(100mL)中Boc2O(84.88g、0.39mol)を30分にわたって滴下し、続いて触媒量のDMAP(4.75g、0.04mol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈した。組み合わせた有機層を焼結漏斗でろ過し、ろ液をNaHCO3の飽和溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、純粋な生成物を得た。収量:67.59g、76%。1H NMR(300.13 MHz,CDCl3):δ 1.54(s,9H),6.95(dd,J=5.5,1.8 Hz,1H),8.12(d,J=1.9 Hz,1H),8.24(d,J=5.5 Hz,1H),9.96(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 28.5(3C),81.5,112.9,118.7,146.2,148.3,152.6,153.8、ESI-MS:[C10H13ClN2O2+H]のm/zの計算値:229.1、実測値:229.2。
【0140】
【0141】
2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロニコチン酸エチル(6)
ドライアイス-アセトン浴(-78℃)中、(4-クロロ-ピリジン-2-イル)カルバミン酸tert-ブチルエステル(30.50g、0.13mol)の534mL
の無水THF中撹拌溶液に、n-BuLi(24.86mL、0.27mol、11M)を不活性雰囲気中、1時間にわたって滴下した。さらに30分間-78℃で撹拌した後、ClCO2Et(13.93mL、0.15mol)を10分間にわたって滴下した。反応進行をTLCでチェックし、出発物質が完全に消費された後、反応混合物を1%HCl(200mL)でゆっくりとクエンチした。結果として得られた反応混合物を、10%HCl(50mL)およびEA(200mL)を入れた分液漏斗に移した。粗生成物をEAで水層から抽出し、組み合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させた。結果として得られた溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、得られた粗物質をカラムクロマトグラフィーによって精製して、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロニコチン酸エチルを淡黄色固体として得た。収量:29.68g、74%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.40(t,J=7.2 Hz,3H),1.50(s,9H),4.41(q,J7.2 Hz,2H),7.08(d,J=5.2 Hz,1H),8.31(d,J=5.2 Hz,1H),8.62(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 14.1,28.3(3C),62.3,81.8,120.8,144.7,149.9,150.0,151.3,151.8,164.9、HRMS:[C13H17ClN2O4+Na]のm/zの計算値:323.0774、実測値:323.0777。
【0142】
【0143】
2-アミノ-4-クロロニコチン酸エチル(7)
2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロニコチン酸エチル(29.00g、0.10mol)を濃HCl(52.60mL、0.58mol)とジクロロメタン(64mL)との混合物に室温で添加した(ゆっくり添加)。室温で2時間後、出発物質の完了をTLCによってモニタリングし、次いで反応混合物を0℃に冷却し、2N NaOH溶液で中和した。反応混合物を、100mLのジクロロメタンを入れた分液漏斗に移し、化合物を水層から有機層中に抽出した。組み合わせたジクロロメタン層を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な2-アミノ-4-クロロニコチン酸エチルを白色固体として得た。収量:18.38g、95%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.41(t,J=7.1Hz,3H),4.42(q,J=7.1 Hz,2H),6.13(bs,2H),6.68(d,J=5.3 Hz,1H),7.97(d,J=5.4 Hz,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCCl3):δ 14.2,61.8,108.3,115.9,145.6,151.2,159.9,166.4、HRMS:[C8H9ClN2O2+H]のm/zの計算値:201.0431、実測値:201.0422。
【0144】
【0145】
2-アミノ-4-クロロ-5-ブロモニコチン酸エチル(8)
7(18.00g、0.09mol)の無水DMF中溶液に、NBS(18.36g、0.10mol)を室温で数回に分けて添加した。結果として得られた溶液のTLCによる分析から、8が4時間後に完全に消費されたことが分かった。結果として得られた混合物を水(100mL)でクエンチし、酢酸エチル(EA、2×100mL)で抽出した。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。結果として得られた残留物をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ)によって精製して、2-アミノ-4-クロロ-5-ブロモニコチン酸エチル(8)のみを淡黄色固体として得た。収量:22.07g、88%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.41(t,J=7.1 Hz,3H),4.43(q,J=7.1 Hz,2H),5.86(s,2H),8.24(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 14.2,62.3,109.7,110.4,144.4,152.8,158.0,165.9.HRMS:[C8H8BrClN2O2+H]のm/zの計算値:278.9536、実測値:278.9541。
【0146】
【0147】
2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロ-5-ブロモニコチン酸エチル(9)
8(20.00g、71.55ミリモル)の無水ジクロロメタン(CH2Cl2)中氷冷溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、27.42mL、157.41ミリモル)を添加し、続いてトリホスゲン(7.64g、25.76ミリモル)を添加した。0℃で1時間後、tert-ブタノール(33.96mL、357.76ミリモル)を5分間にわたって添加し、そして氷浴を取り外した。反応の進行をTLCによってモニタリングし、室温で24時間後、出発物質は完全に消費された。結果として得られた混合物を水でクエンチし、そしてジクロロメタンで抽出した(CH2Cl2、2×100mL)。集めた有機層を塩水、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の飽和溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ)により精製して、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロ-5-ブロモニコチン酸エチル(5)を白色固体として得た。収量:13.58g、50%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.41(t,J=7.2 Hz,3H),1.50(s,9H),4.42(q,J7.2 Hz,2H),8.37(s,1H),8.57(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 14.1,28.3(3C),62.6,82.2,113.9,116.3,119.9,144.0,149.5,151.7,164.2、HRMS:[C13H16BrClN2O4+H]のm/zの計算値:379.0060、実測値:379.0063。
【0148】
【0149】
5-ブロモ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロニコチン酸(10)
41.41mLの1M水酸化ナトリウム(118.53ミリモル)を9(10.00g、26.34ミリモル)のエタノール:THF(3:1、76mL)中混合物に0℃で15分にわたって添加した。TLCでモニタリングして出発物質が完全に消費された後、反応混合物を濃縮した。得られた粗物質を、水(200mL)を入れた分液漏斗に移し、EA(1×100mL)で抽出し、有機層を廃棄した。水層に、10%HCl(200mL)およびEA(100mL)を慎重に添加した(PH約3~5)。化合物をEA層中に抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、純粋な5-ブロモ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-クロロニコチン酸(10)を淡黄色固体として得た。収量:6.02g、65%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 1.43(s,9H),8.69(s,1H),9.88(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 27.9(3C),80.1,116.3,124.5,141.2,148.8,150.8,152.6,164.1、HRMS:[C11H12BrClN2O4+H]のm/zの計算値:350.9747、実測値:350.9712。
【0150】
【0151】
(11)この化合物にとってカラムクロマトグラフィーによる精製は困難であった。したがって我々は精製または分析をすることなく次のステップに進んだ。HRMS:m/z[C17H23BrClN5O5+H]についての計算値:492.0649、実測値:492.0655。
【0152】
【0153】
ジ-tert-ブチル(8-ブロモ-4-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン-2,5-ジイル)ジカーバメート(12)
10(5.00g、11.07ミリモル)の無水ジメチルホルムアミド(DMF、28mL)中氷冷溶液に、N-メチルモルホリン(NMM、1.64mL、14.94ミリモル)を添加し、続いてギ酸クロロエチル(chloroethylformate)(1.63mL、13.84ミリモル)を添加した。0℃で1時間後、Boc-グアニジン(2.38g、14.94ミリモル)を一度に添加し、そして氷浴を取り外した。反応の進行をTLCによってモニタリングし、室温で24時間後、出発物質は完全に消費された。結果として得られた混合物を濃縮乾固させて、Boc-グアニジン付加物を粗混合物として得、これに対して水を添加し、10分間室温で撹拌した。得られた固体をろ紙でろ過し、そして真空下で一晩乾燥させた。結果として得られた固体の無水DMF中前記氷冷溶液に、NaH(60%、1.77g、44.28ミリモル)を慎重に添加した。24時間後、DMFを真空下で除去し、そして水を慎重に添加した。結果として得られた固体をろ過によって集め、真空中で乾燥させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ)により精製して、12を黄色固体として得た。収量:3.64g、72%(二ステップにわたって)。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 1.48(s,9H),1.50(s,9H),8.54(s,1H),10.85(s,1H),11.58(s,1H),11.78(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 27.7(3C),27.8(3C),80.3,83.2,103.2,109.2,149.0,150.4,152.0,152.6,153.7,154.2,161.7、HRMS:[C17H22BrN5O5+H]のm/zの計算値:456.0883、実測値:456.0890。
【0154】
【0155】
(8-ブロモ-4-(tert-ブトキシ)ピリド[4,3-d]ピリミジン-2,5-ジイル)ビス((tert-ブトキシカルボニル)-カルバミン酸)ジ-tert-ブチル(13)
12(3.10g、6.79ミリモル)の無水THF中溶液に、DIEA(3.50mL、20.38ミリモル)およびDMAP(0.17g、1.36ミリモル)を添加し、続いてBoc2O(5.93g、27.18ミリモル)を室温で添加した。室温で4時間後、Boc2O(2.97g、13.59ミリモル)を添加し、反応混合物を50℃まで温めた。出発物質の消費をTLCによってモニタリングし、24時間後、反応混合物を次いでNaHCO3の飽和溶液およびEAで希釈した。有機層を水層から分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な13を白色固体として得た。収量:3.15g、65%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 1.27(s,18H),1.45(s,18H),1.65(s,9H),9.06(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 27.2(6C),27.4(6C),27.5(3C),82.7(2C),83.8(2C),87.6,109.7,118.2,148.7,148.8(2C),149.6(2C),150.8,155.0,156.4,166.5、HRMS:[C31H46BrN5O9+H]のm/zの計算値:712.2557、実測値:712.2540。
【0156】
【0157】
(8-アリル-4-(tert-ブトキシ)ピリドール-4,3-ジピリミジン-2,5-ジイル)ビス((tert-ブトキシカルボニル)カルバミン酸)ジ-tert-ブチル(14)
13(3.00g、4.21ミリモル)の無水トルエン(21mL)中撹拌・脱気溶液に、アリルトリブチルスズ(2.79g、8.42ミリモル)、続いてテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.49g、0.42ミリモル)を室温で添加した。結果として得られた溶液をアルゴンでフラッシュして、不活性雰囲気を創出し、溶液を15時間125℃で灌流させた。結果として得られた混合物を室温まで冷却し、シリカゲルを添加し、溶媒を真空下で除去し、スラリーをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにロードして、14を淡黄色固体として得た。収量:1.70g、60%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.32(s,18H),1.47(s,18H),1.71(s,9H),3.78(dq,J=6.6,1.3 Hz,2H),4.94-5.15(m,2H),6.09(ddt,J=16.7,10.1,6.4 Hz,1H),8.49(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 27.8(6C),27.9(6C),28.2(3C),32.4,82.4(2C),83.3(2C),86.3,108.8,116.5,131.4,136.0,148.1(2C),149.8(2C),150.3(2C),155.6,156.8,167.1、HRMS:[C34H51N5O9+H]のm/zの計算値:674.3765、実測値:674.3746。
【0158】
【0159】
2-(2,5-ビス(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-(tert-ブトキシ)ピリド[4,3-d]ピリミジン-8-イル)酢酸(15、E)
14(1.00g、1.48ミリモル)のCH3CN:CCl4:H2O(23:23:34mL)中氷冷撹拌溶液に、NalO4(2.54g、11.87ミリモル)を添加し、続いて塩化ルテニウム(III)水和物(0.07g、0.30ミリモル)を添加した。0℃で2時間後、反応混合物をセライト床でろ過し、真空下、35℃で3/4の体積まで濃縮した。この混合物に、水(20mL)およびEA(20mL)を25℃で添加した。有機層を水層から分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。結果として得られた溶媒を真空下で除去し、得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、15(E)を明褐色固体として得た。収量:0.51g 50%。1H NMR(300.13 MHz,CDCl3):δ 1.34(s,18H),1.56(s,18H),1.71(s,9H),4.03(s,2H),8.62(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 28.0(6C),28.1(6C),28.3(3C),37.1,83.2(2C),85.1(2C),87.7,109.0,124.5,149.6,149.9(2C),150.1,155.9(2C),156.5(2C),167.4,170.4、HRMS:[C33H49N5O11+H]のm/zの計算値:692.3507、実測値:692.3491。
【0160】
【0161】
4-アミノ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボニトリル(17)
2-(エトキシメチレン)マロノニトリル(100.00g、0.82mol)、S-メチルイソチオ尿素ヘミ硫酸塩(73.81g、0.82mol)、トリエチルアミン(370.92mL、2.66mol)の無水エタノール(819mL)中混合物を室温で撹拌した。二日後、溶媒を真空下で除去し、結果として得られた残留物を水で洗浄して、所望の化合物を白色固体として得た。収量:122.48g、90%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 2.45(s,3H),7.87(s,2H),8.43(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 13.4,85.3,115.6,160.5,161.4,174.6、ESI-MS:[C6H6N4S+H]のm/zの計算値:167.0、実測値:167.1。
【0162】
【0163】
4-アミノ-N´-ヒドロキシ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキシイミドアミド(18)
17(50.00g、0.30mol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(24.04g、0.35mol)、およびトリエチルアミン(83.92mL、0.60mol)のメタノール(602mL)中前記混合物を75℃で還流させた。二日後、反応混合物を室温まで冷却し、沈殿した固体をろ過により集め、メタノールおよびヘキサンで洗浄して、18を淡黄色固体として得た。収量:46.15g、77%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 2.43(s,3H),5.96(s,2H),7.59(s,1H),8.10(s,1H),8.35(s,1H),9.87(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 13.2,103.6,149.9,152.8,159.6,169.3、ESI-MS:[C6H9N5OS+H]のm/zの計算値200.1、実測値:200.0。
【0164】
【0165】
(E)-N´-アセトキシ-4-アミノ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキシイミドアミド(19)
18(31.00g、0.16mol)の氷酢酸中溶液に、無水酢酸(51.48mL、0.55mol)を室温で添加した。結果として得られた溶液のTLCによる分析から、18が15時間後に完全に消費されたことが分かった。酢酸を真空下で除去し、この粗物質に、飽和重炭酸ナトリウム溶液およびEA(それぞれ200mL)を添加した(PH-8~9)。水層をEAで二回抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。EAを真空下で除去して、純粋な19を白色固体として得た。収量:28.02g、90%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 2.15(s,3H),2.45(s,3H),6.89(s,2H),7.78(s,1H),7.96(s,1H),8.40(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 13.3,19.5,102.4,154.5,154.6,159.8,167.9,171.3、HRMS:[C8H11N5O2S+H]のm/zの計算値242.0712、実測値:242.0718。
【0166】
【0167】
4-アミノ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキシイミドアミド(20)
19(25.00g、0.10mol)、ギ酸(97.73mL、2.59mol)、および木炭上のパラジウム(10%、5.51g、5.18ミリモル)のメタノール(130mL)中混合物を80℃で還流させた。15時間後、反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を真空下で除去して、所望の生成物をギ酸塩として得た。生成物のギ酸塩としての収量:29.96g、80%。(NMR分析の場合:結果として得られた粗物質(1g)に、メタノール(10mL)およびTEA(5mL、pH-9~10)を添加し、15分間撹拌した。結果として得られた固体をろ過により集め、ヘキサンで洗浄した。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6):δ 2.43(s,3H),5.96(s,2H),7.59(s,1H),8.11(s,1H),8.36(s,1H),9.87(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 13.3,103.6,149.9,152.9,159.6,169.4、HRMS:[C6H9N5S+H]のm/zの計算値184.0657、実測値:184.0664。
【0168】
【0169】
((4-アミノ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-イル)(イミノ)メチル)カルバミン酸tert-ブチル(21)
ギ酸塩としての20(22.00g、68.47ミリモル)のTHF:水(100:125mL)中氷冷撹拌溶液に、重炭酸ナトリウムを数回に分けて添加した(34.51mL、0.41mol)。結果として得られた溶液のpHが8~9に達したら、25mlのTHF中Boc-無水物(17.19g、78.74ミリモル)をゆっくりと添加した。結果として得られた溶液のTLCによる分析から、20は24時間後に完全に消費されたことが分かった。反応混合物を、100mLの水と200mLのEAとを含む分液漏斗に移した。EA(2×)を使用して水層を抽出し、組み合わせたEA層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。EAを真空下で除去し、混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋な21を白色固体として得た。収量:15.71g、81%。1H NMR(300.13 MHz,CDCl3):δ 1.51(s,9H),2.50(s,3H),7.61(s,2H),8.42(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 13.9,28.1(3C),79.6,104.6,155.2(2C),161.1(2C),173.9、HRMS:[C11H17N5O2S+H]のm/zの計算値284.1181、実測値:284.1189。
【0170】
【0171】
(Z)-((4-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-イル)((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)メチル)(tert-ブトキシカルボニル)カルバミン酸tert-ブチル(22)
21(15.00g、52.94ミリモル)のTHF(106mL)中氷冷撹拌溶液に、DIPEAを一度に添加し(46.11mL、264.69ミリモル)、DMAP(1.29g、10.59ミリモル)、続いて25mlのTHF中Boc-無水物(57.77g、264.69ミリモル)を添加した(ゆっくりと添加)。反応の進行をTLCによってモニタリングし、21が24時間後に完全に消費されたことが分かった。反応混合物を、200mLの水と100mLのEAとを含む分液漏斗に移した。混合物をEAで抽出し(2×)、組み合わせたEA層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。EAを真空下で除去し、粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な22を白色固体として得た。収量:28.96g、80%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.44(s,l8H),1.45(s,18H),1.51(s,9H),2.61(s,3H),8.69(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 14.6,28.0(6C),28.1(6C),28.1(3C),83.2,83.7(2C),84.9(2C),119.2,148.3,150.1,157.3(2C),158.8,159.5(2C),160.4,176.1、HRMS:[C31H50N5O10S+H]のm/zの計算値684.3278、実測値:684.3275.
【0172】
【0173】
化合物(23)
22(15.00g、21.94ミリモル)のDCM(55mL)中氷冷撹拌溶液に、mCPBAを数回に分けて添加した(10.60g、61.42ミリモル)。反応の進行をTLCによって分析し、22が3時間後に完全に消費されたことが分かった。反応混合物を、200mLの重炭酸ナトリウムの飽和溶液と100mLのDCMとを含む分液漏斗に移した。混合物をDCM(2×)で抽出し、組み合わせたDCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。DCMを真空下で除去し、粗混合物をさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0174】
【0175】
(Z)-((4-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリミジン-5-イル)((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)メチル)(tert-ブトキシカルボニル)カルバミン酸tert-ブチル(24)
粗23(15.00g)のTHF(55mL)中氷冷撹拌溶液に、2N NaOH(54.84mL、109.68ミリモル)をゆっくりと添加した。出発物質の消費をTLCによってモニタリングした。30分後、反応混合物を、200mLの1%HClと100mLのEAとを含む分液漏斗に移した。水層をEA(2×)で抽出し、組み合わせたEA層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。EAを真空下で除去し、粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。収量:10.75g、二ステップにわたって75%。1H NMR(300.13 MHz,DMSO-d6):δ 1.37(s,18H),1.39(s,18H),1.41(s,9H),8.65(s,1H),12.80(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6):δ 27.4(15C),82.0,82.9(2C),83.5(2C),108.0,145.2,147.5(2C),149.1(2C),152.8,155.0,157.0,162.9、HRMS:[C30H47N5O11+H]のm/zの計算値654.3350、実測値:654.3359。
【0176】
【0177】
(Z)-2-(4-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-オキソ-5-(N,N,N´-トリス(tert-ブトキシカルボニル)カルバミミドイル)ピリミジン-1(2H)-イル)酢酸ベンジル(25)
化合物24(10.00g、15.30ミリモル)およびK2CO3(4.23g、30.59ミリモル)の無水DMF(75mL)中混合物に、2-ブロモ酢酸ベンジル(2.42mL、15.30ミリモル)を10分間にわたって滴下した。反応の進行をTLCによってモニタリングし、反応は4時間後に完了することが判明した。焼結漏斗を通して反応混合物をろ過し、DMFを真空下で蒸発させた。結果として得られた粗物質に、水を添加し、5分間撹拌した。得られた沈殿(precipitated)をろ過によって集め、水およびヘキサンで洗浄して、純粋な化合物25を白色固体として得た。(注:化合物が充分沈殿しないならば、抽出が化合物を得るための代替法となり、必要ならば、短床カラム(short bed column)を行って純粋な化合物を得る)。収量:10.92g、89%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.46(s,18H),1.48(s,18H),1.50(s,9H),4.75(s,2H),5.22(s,2H),7.27-7.47(m,5H),7.95(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 27.8(6C),27.9(6C),28.0(3C),51.0,68.2,83.0,83.7(2C),85.2(2C),110.6,128.6(3C),128.7(2C),128.8,134.5,148.2,149.5(2C),152.0(2C),154.4,157.1,163.9,166.1、HRMS:[C39H55N5O13+H]のm/zの計算値802.3875、実測値:802.3882。
【0178】
【0179】
(Z)-2-(4-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-オキソ-5-(N,N,N´-トリス(tert-ブトキシカルボニル)カルバミミドイル)ピリミジ-1(2H)-イル)酢酸(26、F)
木炭上のパラジウム(10%ローディング、0.66g、0.62ミリモル)を、25(5.00g、6.24ミリモル)のEA(50mL)中溶液に、アルゴンバルーン下で慎重に添加した。5分後、アルゴンバルーンを水素バルーンと置換し、反応混合物を同じ雰囲気下でさらに1時間撹拌した。出発物質の完全消耗をTLCによって判断した。結果として得られた反応混合物は、セライト床を通して慎重にろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターで蒸発させて、純粋な化合物26を白色固体として得た。収量:3.99g、90%。1H NMR(500.13MHz、DMSO-d6):δ1.36(s,18H)、1.41(s,18H)、1.42(s,9H)、4.85(s,2H)、9.10(s,1H)、13.45(s,1H)、13C NMR(125.77MHz,DMSO-d6):0 27.4(6C)、27.4(6C)、27.5(3C)、50.9、82.2、83.0(2C)、83.3(2C)、108.3、145.1、146.9(2C)、149.4(2C)、154.1、156.1、157.0、162.5、168.4、HRMS:[C32H49N5O13+H]のm/z計算値:712.3405、実測値:712.3386。
【0180】
【0181】
2-(2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)酢酸(27)
この化合物を商業的に利用可能な供給源から購入した。
【0182】
【0183】
(R)-(2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-(2-(tert-ブトキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)グリシン酸アリル(28)
N-Fmoc(O-MP(tブチル)-L-セリノール(5.00g、10.93ミリモル)の飽和DCM:水(28mL)中冷却溶液に、デス・マーチン・ペルヨージナン(9.96g、23.49ミリモル)を数回に分けて添加した。反応混合物を同じ温度でさらに30分間、室温で1時間撹拌して、アルコールをアルデヒドに完全に変換させた。反応混合物をエーテル、重炭酸ナトリウムの飽和溶液、10%チオ硫酸ナトリウムで希釈し、そして5分間撹拌した。全反応混合物を分液漏斗に移し、有機化合物をエーテル(2x)中に抽出した。エーテル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで除去して、粗アルデヒドを得た。アルデヒドをさらに精製することなく次のステップで使用した。無水DCM(44mL)中のアルデヒドに、グリシン酸アリルPTSA塩(6.28g、21.86ミリモル)およびDIEA(5.90mL、33.89ミリモル)を添加し、1時間反応させた。NaB(OAc)3H(5.79g、27.33ミリモル)を反応混合物に一度に添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物をDCM(100mL)および重炭酸ナトリウムの飽和溶液で希釈した。反応混合物を分液漏斗に移し、層を水層から分離した。組み合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで除去し、そして粗混合物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:4.85g、85%。1H NMR(500.13 MHz,CDCl3):δ 1.19(s,9H),2.77-2.92(m,2H),3.49-3.69(m,13H),3.88(bs,1H),4.23(t,J=6.9 Hz,1H),4.39(d,J=7.5 Hz,2H),4.64(dt,J=5.9,1.4 Hz,2H),5.23-5.36(m,2H),5.73(d,J=8.4 Hz,1H),5.92(ddt,J=17.3,10.4,5.8 Hz,1H),7.32(td,J=7.5,1.2 Hz,2H),7.36-7.43(m,2H),7.60-7.68(m,2H),7.74-7.79(m,2H)、13C NMR(125.77 MHz,CDCl3):δ 27.5(3C),47.3,50.3,50.5,50.6,50.7,61.2,65.5,66.7,70.5,70.8,71.2,71.4,73.1,118.7,119.9,120.0,120.0,125.2,127.0,127.6,127.7,131.8,141.3,144.0,144.0,156.4,171.8,174.3、ESI-MS:[C31H42N2O71+H]のm/zの計算値555.3、実測値:555.3。
【0184】
【0185】
アリルモノマー(29a)
15(E)(0.50g、0.72mmol)およびDIEA(163.67μL、0.94ミリモル)の無水DMF(6mL)中混合物に、HBTU(0.32g、0.83mmol)を一度に室温で添加した。室温で10分後、DMF(4mL)中の骨格28(0.60g、1.08ミリモル)を上記反応混合物に添加した。TLCによってモニタリングした反応の進行(溶離液:EA:Hex(50:50)、骨格のRf=0.2、生成物のRf=0.6、EのRf=0.1)。出発物質が完全に消費された後、DMFを真空下、45℃で除去した。結果として得られた粗物質に、1%HCl(20mL)およびEA(20mL)を添加し、有機層(2x)を、分液漏斗を用いて水層から分離した。組み合わせた有機層を乾燥し、除去し、獲得した粗物質をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:0.62g、70%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 1.08/1.09(s,9H),1.211.33(m,18H),1.36/1.38(s,18H),1.41/1.65(s,9H),3.36-3.70(m,10H),3.82-4.27(m,8H),4.32(bs,2H),4.41-4.71(m,2H),5.13-5.41(m,2H),5.81-6.01(m,1H),7.30-7.57(m,5H),7.71/7.73(d,J=9.7 Hz,2H),7.89/7.99(d,J=7.5 Hz,2H),8.56/8.60(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 27.2-27.6(18C),46.7,59.7,60.6/60.6,64.7,65.3,65.5,69.6,69.6,69.8,70.0,70.4,70.4,72.2,81.8-86.3(6C),108.1,117.7,118.2,120.l(2C),125.1,127.0(2C),127.3,127.6(2C),127.8/127.9,132.1,132.3,140.7,143.8,147.9,149.3,149.5,149.6,155.0/155.1,155.9,156.5,166.6,168.8,169.2,170.2、HRMS:[C64H89N7O17+H]のm/zの計算値:1228.6393、実測値:1228.6398。
【0186】
【0187】
アリルモノマー(29b)
この化合物は、化合物27(1.00g、5.88ミリモル)および骨格28(4.08g、7.35mmol)を出発物質として使用して化合物29aについての上記の手順を使用して調製した。TLC(溶離液:5%MeOH:DCM(5:95)、骨格のRf=0.6、生成物のRf=0.2、27のRf=0.0).収量:3.5g、84%。1H NMR(500.13 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 1.10/1.10(s,9H),3.30-3.59(m,14H),3.744.13(m,2H),4.174.42(m,4H),4.60(dd,J=33.4,4.8 Hz,2H),5.00-5.44(m,2H),5.82-6.01(m,1H),7.10-7.55(m,6H),7.69(d,J=7.4 Hz,2H),7.89(d,J=7.5 Hz,2H),10.75(bs,1H),11.08(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6,回転異性体)δ 27.2(3C),46.7,60.6(2C),64.7,65.2,65.5,69.6,69.8,69.9,70.4(2C),72.2,107.2,117.7,118.1,120.1(2C),125.2,127.0(2C),127.3,127.6(2C),132.2/132.3,139.2,139.7,140.7,143.8/143.8,151.2/151.3,155.8,164.1/164.1,168.9,169.4,170.6、HRMS:[C37H46N4O10+H]のm/zの計算値:707.3292、実測値:707.3290。
【0188】
【0189】
アリルモノマー(29c)
この化合物は、化合物26(3.50g、4.92mmol)および骨格28(3.41g、6.15ミリモル)を出発物質として使用して化合物29aについての上記の手順を使用して調製した。TLC(溶離液:EA:Hex(40:60)、骨格のRf=0.1、生成物のRf=0.7、26のRf=0.1)。収量:4.80g、78%。1H NMR(300 MHz,DMSO-d6):δ 1.09(bs,9H),1.34/13.6(s,18H),1.41/1.42(s,27H),3.35-3.59(m,14H),4.07-4.49(m,4H),4.61(dd,J=37.6,5.4 Hz,3H),4.97-5.42(m,3H),5.77-6.04(m,1H),7.32(t,J=7.5 Hz,2H),7.50-7.57(m,3H),7.89(d,J=7.5 Hz,2H),7.99(d,J=8.4 Hz,2H),8.94/8.96(s,1H)、13C NMR(125.77 MHz,DMSO-d6,回転異性体):δ 27.2-27.5(18C),46.7,60.2/60.7(2C),64.7,65.5,69.5,69.6,69.8,69.9,70.4/70.4(2C),72.2,82.2-83.4(6C),108.1,117.7,120.1(2C),124.4,125.1,127.0(2C),127.4,127.6(2C),127.8,132.2(2C),140.7(2C),143.8(2C),145.1,146.9(2C),149.5(2C),157.0,162.5,166.5,168.4、HRMS:[C63H89N7O19+H]の計算値dm/z1248.6291,実測値:1248.6256.
【0190】
以下の附番された条項で本発明の非限定的態様を記載した。
【0191】
条項1:核酸若しくは核酸アナログ骨格を含み、3以上のリボース、デオキシリボース、または核酸アナログ骨格残基、前記骨格残基に結合した二価核酸塩基の配列を含む遺伝子認識試薬であって、前記二価核酸塩基の配列が、二本の核酸鎖上のリピート伸長疾患の伸長されたリピートの、単位標的配列、または、単位標的配列の1以上の逐次反復と結合する、遺伝子認識試薬。
【0192】
条項2:前記核酸若しくは核酸アナログ骨格が第一末端と第二末端とを含み、前記骨格の前記第一末端に結合した第一連結基、前記第一連結基と非共有結合するかまたはセルフライゲーションする、前記第二末端に結合した第二連結基をさらに含む、条項1に記載の遺伝子認識試薬。
【0193】
条項3:前記二価核酸塩基の配列が、前記二本の鎖を逆平行配向でアライントさせた場合、前記二本の鎖の各々の上のリピート伸長疾患の伸長されたリピートの、単位標的配列または前記単位標的配列の2以上の逐次反復と結合する、条項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【0194】
条項4:前記単位標的配列が、前記二本の鎖の両方の上で、(GAA)n、(CGG)n、(CCG)n、(CAG)n、(CTG)n、(CCTG)n、(ATTCT)n、若しくは(GGGGCC)nの逐次反復、または、前記のいずれかに対して相補性である配列により形成される、条項1~3いずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0195】
条項5:前記単位標的配列がC/G-A/A-G/Cである、条項1~4いずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0196】
条項6:前記核酸塩基配列を、
JB3核酸塩基、JB6核酸塩基、およびJB4核酸塩基、
JB6核酸塩基、JB4核酸塩基、およびJB3核酸塩基、
または、JB4核酸塩基、JB3核酸塩基、およびJB6核酸塩基、
または、前記の2以上の逐次反復、
の順序で有する、条項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0197】
条項7:前記核酸塩基配列を、
JB3若しくはJB3b、JB6若しくはJB6b、およびJB4、JB4b、JB4c、JB4d、若しくはJB4e、
JB6若しくはJB6b、JB4、JB4b、JB4c、JB4d、若しくはJB4e、およびJB3若しくはJB3b、または
JB4、JB4b、JB4c、JB4d、若しくはJB4e、JB3若しくはJB3b、および、JB6またはJB6b、
または、前記の2以上の逐次反復、
の順序で有する、条項6に記載の遺伝子認識試薬。
【0198】
条項8:前記核酸塩基配列を、
JB3、JB6、およびJB4、
JB6、JB4、およびJB3、または
JB4、JB3、およびJB6、
または、前記の2以上の逐次反復、
の順序で有する、条項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0199】
条項9:表Cに列挙された単位認識試薬配列の核酸塩基配列を有する、条項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0200】
条項10:前記二本の鎖がどちらも同一の核酸分子のものである、条項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0201】
条項11:前記二本の鎖がどちらもRNAである、条項1~10のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0202】
条項12:3、4、5、6、7、または8個の核酸塩基などの3~8個の核酸塩基の配列からなる、条項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0203】
条項13:前記骨格残基が核酸アナログ骨格残基である、条項1~12のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0204】
条項14:前記骨格残基が立体構造的に予め組織化されている、条項13に記載の遺伝子認識試薬。
【0205】
条項15:前記骨格残基がロックド核酸残基である、条項14に記載の遺伝子認識試薬。
【0206】
条項16:前記骨格残基がペプチド核酸(PNA)残基である、条項14に記載の遺伝子認識試薬。
【0207】
条項17:前記骨格残基がγPNA残基である、条項14に記載の遺伝子認識試薬。
【0208】
【0209】
ここで、XはSまたはOであり、nは1から6の整数であり、mは0から4の整数であり、R
1およびR
2は、各々独立して、H、グアニジン含有基、例えば、
【化56】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化57】
直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、1~50個のエチレングリコール部分を含むエチレングリコール単位で任意に置換されていてもよい、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2、ここで、P
1はH、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン若しくは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、そして、rおよびsは、各々独立して、1~50の整数であり、
R
3は、H、または脱離基、例えば、直鎖若しくは分枝(C
1~C
8)アルキル、置換若しくは非置換(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、(C
1~C
8)カルボキシ、アミノ酸側鎖で任意に置換されていてもよい、または、グアニジン含有基、または、
【化58】
ここで、oは1~20であり、R
6は、各々独立して、アミノ酸側鎖であり、R
7は-OHまたは-NH
2であり、
R
4は、(C
1~C
10)二価炭化水素または1以上のN若しくはO部分、例えば-O-、-OH、-C(O)-、-NH-、-NH
2、-C(O)NH-で置換された(C
1~C
10)二価炭化水素であり、
R
5は、-OH、-SHまたはジスルフィド保護基であり、そして、
Rの各々は、独立して、1以上の標的核酸中の核酸塩基の単位標的配列に対して相補的な核酸塩基の配列を生成し、したがって、複数の認識モジュールの各々が、鋳型核酸上の核酸塩基の標的配列に結合し、互いにライゲーションする核酸塩基である、を有するか、またはその薬剤的に許容される塩である、条項1~14のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0210】
条項19:R1またはR2が、-(OCH2-CH2)qOP1、-(OCH2-CH2)q-NHP1、-(SCH2-CH2)q-SP1、-(OCH2-CH2)r-OH、-(OCH2-CH2)r-NH2、-(OCH2-CH2)r-NHC(NH)NH2、または-(OCH2-CH2)r-S-S[CH2CH2]sNHC(NH)NH2で置換された(C1~C6)アルキルであり、ここで、P1は、H、(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレンまたは(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、sは1~50の整数である、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0211】
条項20:R5が、-SH、OH、またはS-S-R8であり、ここで、R8は、1以上のアミノ酸残基、アミノ酸側鎖、グアニジン含有基、非置換若しくは置換(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C1~C8)ヒドロキシアルキル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレン、または(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンである、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0212】
条項21:R1がHでありR2はHではない、または、R2がHでありR1はHではない、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0213】
条項22:R1がHであり、R2がポリオキシエチレン部分を含む、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0214】
条項23:R5が-SHであり、XがSである、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0215】
条項24:R5が、リジン残基、アルギニン残基、またはグアニジン含有基を含む、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0216】
条項25:R4がメチレンであり、R5が-SHであり、XがSであり、そしてR5が、ヒドロキシル置換(C1~C8)アルキル、例えば-CH2-CH2-OHである、条項18に記載の遺伝子認識試薬。
【0217】
条項26:認識試薬が標的核酸の隣接配列とハイブリダイズする場合、前記第一連結基および前記第二連結基が、独立して、隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングする2~5環縮合多環式芳香族部分である、条項2~14のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0218】
条項27:前記2~5環縮合多環式芳香族部分が、非置換若しくは置換ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレンであって、O、N、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で任意に置換されていてもよく、例えば、キサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチン、またはマンギフェリンである、条項26に記載の遺伝子認識試薬。
【0219】
条項28:前記2~5環縮合多環式芳香族部分が同一である、条項26または27に記載の遺伝子認識試薬。
【0220】
条項29:前記認識試薬が、構造:
【化59】
を有し、
ここで、Rの各々が、独立して、核酸塩基であり、Rの各々が、同一であるか、または異なる核酸塩基であり得、
nが1~6の範囲の整数、例えば、1、2、3、4、5、または6であり、
R
1およびR
2が、各々独立して、H、グアニジン含有基、例えば、
【化60】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化61】
、非置換若しくは置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、若しくは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2-O)
q-SP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、rおよびsはそれぞれ独立して、1から50の整数であり、
R
10またはR
11の一方、およびR
12、R
13、若しくはR
14のうちの一つは-L-R
3であり、ここで、R
3の各々は、独立して、2~5環縮合多環式芳香族部分、例えば、非置換若しくは置換ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセン、またはペリレン、O、N、および/またはSなどの1以上のヘテロ原子で任意に置換されていてもよく、例えば、キサンテン、リボフラビン(ビタミンB
2)、マンゴスチン、またはマンギフェリンであり、各々は、認識試薬が標的核酸の隣接配列とハイブリダイズする場合、隣接認識試薬のR
3基とスタッキングすることができ、
Lはリンカーであり、そして
R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14の残りが、各々独立して、H、1以上の連続したアミノ酸残基、例えば1以上のArg残基、グアニジン含有基、例えば、
【化62】
ここで、n=1、2、3、4、または5であり、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化63】
、非置換若しくは置換(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
1~C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレン、若しくは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレン、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2-O)
q-SP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1はH、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
8)アリール、(C
3~C
8)シクロアルキル、(C
3~C
8)アリール(C
1~C
6)アルキレンまたは(C
3~C
8)シクロアルキル(C
1~C
6)アルキレンであり、qは0から50の整数であり、rおよびsは各々独立して、1~50の整数である、または、
その薬剤的に許容される塩である、条項2に記載の遺伝子認識試薬、
【0221】
条項30:1以上のR1、R2、R10、R11、R12、R13、またはR14が、-(OCH2-CH2)qOP1、-(OCH2-CH2)q-NHP1、-(SCH2-CH2)q-SP1、-(OCH2-CH2)r-OH、-(OCH2-CH2)r-NH2、-(OCH2-CH2)r-NHC(NH)NH2、または-(OCH2-CH2)r-S-S[CH2CH2]sNHC(NH)NH2で置換された(C1~C6)アルキルであり、ここで、P1が、H、(C1~C8)アルキル、(C2~C8)アルケニル、(C2~C8)アルキニル、(C3~C8)アリール、(C3~C8)シクロアルキル、(C3~C8)アリール(C1~C6)アルキレンまたは(C3~C8)シクロアルキル(C1~C6)アルキレンであり、qが0~50の整数であり、rが1~50の整数であり、sが1~50の整数である、条項29に記載の遺伝子認識試薬。
【0222】
条項31:R4およびR7がーL-R3である、条項29に記載の遺伝子認識試薬。
【0223】
条項32:前記リンカーが、約5~25個の原子、例えば、5~20個、5~10個、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の原子、または合計1~10個、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個のCおよびヘテロ原子、例えばO、P、N、若しくはS原子を含む、条項29に記載の遺伝子認識試薬。
【0224】
条項33:R3のいずれの場合も、同一の2~5環縮合多環式芳香族部分を含む、条項29に記載の遺伝子認識試薬。
【0225】
条項34:
グアニジン含有基、例えば、
【化64】
ここで、n=1、2、3、4、または5である、を含む、条項1~33のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0226】
条項35:リピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含有する核酸を結合する方法であって、前記伸長されたリピートを含む核酸を、条項1~32のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、方法。
【0227】
条項36:前記核酸が、前記二本の鎖の両方の上の(GAA)n、(CGG)n、(CCG)n、(CAG)n、(CTG)n、(CCTG)n、(ATTCT)n、もしくは(GGGGCC)nの逐次反復によって形成された単位標的配列、または前記のいずれかに対して相補的である配列を含む、条項35に記載の方法。
【0228】
条項37:前記核酸が、前記二本の鎖の両方の上の(CAG)nの逐次反復によって形成された単位標的配列、またはそれに対して相補的な配列を含む、条項35に記載の方法。
【0229】
条項38:前記核酸が、リピート伸長障害を有する患者から得られる、条項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【0230】
条項39:患者から得られるサンプルにおけるリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含む核酸の存在を特定する方法であって、前記患者から得た核酸サンプルを、条項2~34のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させ、前記サンプルがリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含む核酸を含むことを示すものとして前記遺伝子認識試薬の結合および連結が起こるか否かを判定し、そして任意に前記患者を前記リピート伸長疾患について治療することを含む、方法。
【0231】
条項40:条項1~34のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と薬剤的に許容される担体とを含む組成物。
【0232】
条項41:細胞においてリピート伸長疾患に関連する伸長されたリピートを含有する遺伝子の発現をノックダウンする方法であって、前記伸長されたリピートを含む、RNAなどの核酸を、条項1~34のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、方法。
【0233】
本発明を、ある特定の例示的実施形態、分散性の組成物およびその使用を参照して記載してきた。しかしながら、発明の主旨および範囲から逸脱することなく例示的実施形態のいずれかの様々な置換、変更または組み合わせをなし得ることができることは当業者には認められるであろう。したがって、発明は、例示的実施形態の記載によって限定されるのではなく、最初に提出された添付の特許請求の範囲によって限定されるものである。
【配列表】