(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】IBS感受性試験の組成物、デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240827BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N33/53 Q
G01N33/543 545A
(21)【出願番号】P 2023015453
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2020218294の分割
【原出願日】2015-11-13
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2014-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517167236
【氏名又は名称】バイオメリカ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】17571 VON KARMAN AVENUE, IRVINE, CALIFORNIA 92614, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】レーダーマン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】イラニ‐コーヘン,ザッカリー
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/099785(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0013773(US,A1)
【文献】Sameer Zar,Food-specific serum IgG4 and IgE titers to commonfood antigens in irritable bowel syndrome,The American Journal of Gastroenterology,2005年,Vol100,No7,p1550-1557
【文献】ATKINSON, W. et al.,Food elimination based on IgG antibodies in irritable bowel syndrome: a randomised controlled trial,Gut,2004年,Vol.53,No.10,p1459-1464
【文献】X. L. Zuo,Alterations of food antigen-specifi c serum immunoglobulins G and E antibodies in patients with irritable bowel syndrome and functional dyspepsia,Clinical & Experimental Allergy,2007年,Vol37,No6,p823-830
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過敏性腸症候群(IBS)を有すると診断される患者または過敏性腸症候群(IBS)を有すると疑われる患者において食物過敏性を試験するための方法であって、
前記方法は、
複数の異なる食物調製物を、IBSを有すると診断される患者またはIBSを有すると疑われる患者の体液と接触させる工程であって、ここで、前記接触させる工程が、前記体液からの抗体が前記複数の異なる食物調製物における各異なる食物調製物に結合することを可能にする条件下で行われる、工程と、
前記複数の異なる食物調製物における各異なる食物調製物に結合した前記抗体を検出して、前記複数の異なる食物調製物における各異なる食物調製物についての免疫アッセイシグナルを取得する工程と、
前記複数の異なる食物調製物における各異なる食物調製物についての免疫アッセイシグナルを、各異なる食物調製物についてのそれぞれの対照シグナルと比較する工程と、
前記食物調製物
に関連する対照シグナルと前記免疫アッセイシグナルとの比較に基づいて、前記患者が感受性を有する異なる食物調製物を同定する工程と、を含
み、
ここで、前記体液と接触させる複数の異なる食物調製物は、ココア、茶、オート麦、キャベツ、牛乳、黄タマネギ、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリー、エビ、カニ、大麦、および、イチゴからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記患者の前記体液は、全血、血漿、血清、唾液または便懸濁液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記各対照シグナルが、前記異なる食物調製物についての所定のパーセンタイル順位のカットオフ値を割り当てることによって決定され、前記所定のパーセンタイル順位のカットオフ値は、IBSと診断された患者から導出された対照群からの対照シグナルの少なくとも90パーセンタイル順位である、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫アッセイシグナルは、ELISA免疫アッセイを使用して得る請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記各異なる食物調製物についての対照シグナルが、前記異なる食物調製物についての
参照値に対して各複数の異なる食物調製物についての免疫シグナルを比較することによって決定される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
4種以上の
前記異なる食物調製物が
前記体液に接触される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記各異なる食物調製物は、アドレス指定可能な様式で固相担体に独立して固定化されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固相担体は、マルチウェルプレート、ビーズ、吸着性フィルム、または、電気センサである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
1種以上の
前記異なる食物調製物は、粗製の濾過された水性抽出物および/または処理された水性抽出物を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させる工程が、前記体液からのIgG抗体が各複数の異なる食物調製物に結合することを可能にする条件下で行われる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過敏性腸症候群(IBS)を有すると診断される患者または過敏性腸症候群(IBS)を有すると疑われる患者において食物不耐性を試験するための検査パネルであって、
複数の異なる食物調製物を含み、ここで、前記食物調製物のそれぞれが、個別にアドレス指定可能な固相担体に独立して結合され、
前記複数の異なる食物調製物は、ココア、茶、オート麦、キャベツ、牛乳、黄タマネギ、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリー、エビ、カニ、大麦、および、イチゴからなる群から選択される、検査パネル。
【請求項12】
前記異なる食物調製物は、粗製の濾過された水性抽出物および/または処理された水性抽出物である、請求項11に記載の検査パネル。
【請求項13】
記固相担体は、マルチウェルプレートのウェル、ビーズ、電気センサー、化学センサー、マイクロチップ、または吸着性フィルムである、請求項11または12に記載の検査パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第62/079783号(2014年11月14日出願、これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は食物不耐性についての感受性試験であり、とりわけ、本発明の分野は、選択された食品品目を、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群の疑いがある患者のために誘因食物として試験すること、および、可能であれば除外することに関する。
【背景技術】
【0003】
背景の説明には、本発明を理解することにおいて有用であり得る情報が含まれる。この情報は、本明細書中に提供される情報のいずれかが先行技術であること、または、現時点で特許請求されている発明に関連していることを、あるいは、具体的または暗黙的に参照されるどのような刊行物も先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
食物過敏性は、とりわけ食物過敏性が過敏性腸症候群(IBS)に関連するので、慢性的な腹痛、不快感、腹部膨満、および/または排便習慣における変化を伴って現れることが多く、医療界では十分に理解されていない。最も典型的には、IBSは、類似する症状または重複する症状を有する場合がある他の病理学的状態(例えば、細菌感染症または原生動物感染症、乳糖不耐症など)を除外することによって診断される。しかしながら、IBSは多くの場合、症状を誘発する食料品に関して極めて多様であり、誘因食品品目を妥当な程度の確実性で特定することを助けるための標準化された検査は何ら知られておらず、そのため、そのような患者は多くの場合、試行錯誤にゆだねられている。
【0005】
誘因食物を特定することを助けるための検査および研究室がいくつか商業的に利用可能であるが、これらの研究室から得られる検査結果の品質が、消費者擁護団体によって報告されるように一般に不良である(例えば、非特許文献1(http://www.which.co.uk/news/2008/08/food-allergy-tests-could-risk-your-health-154711/))。最も注目すべきことに、これらの検査および研究室に伴う問題として、高い偽陽性率、高い偽陰性率、大きい患者間変動性、および研究室間変動性が挙げられ、そのため、そのような検査はほとんど役に立っていなかった。同様に、確定的でなく、かつ、ばらつきが大きいさらなる検査結果もまたどこか他のところで報告され(非特許文献2(Alternative Medicine Review、Vol.9、No.2、2004:pp.198-207))、著者らは、このことが、食物反応および食物過敏性が多数の異なる機構を介して生じることに起因するのではないかと結論した。例えば、すべてのIBS患者が陽性の応答を食物Aに対して示すとは限らず、また、すべてのIBS患者が陰性の応答を食物Bに対して示すとは限らない。したがって、IBS患者がたとえ、陽性の応答を食物Aに対して示すとしても、食物Aを当該患者の食事から除いても、当該患者のIBS症状が緩和されない場合がある。言い換えれば、現在利用可能な検査において使用される食物サンプルが、そのような食物サンプルに対する過敏症をIBSと相関させるための大きい確率に基づいて適切に選択されているかどうかが、十分に明らかにされていない。
【0006】
免疫アッセイ試験のための検査パネルに含むように食品品目またはアレルゲンを選択するために様々な努力が払われている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2007/0122840号(Cousins))には、ELISAアッセイのための検査パネルに含まれる29種の食物アレルゲンの選択が開示される。これら29種の食物アレルゲンは、食物アレルゲンのより大きいパネルを用いた予備的実験におけるIgG陽性の頻度に基づいて選択されている。しかしながら、Cousinsは、定量的および/または統計学的な分析をこれらの選択された抗原について何ら教示しておらず、また、そのようなものとして、この選択のための理論的根拠を何ら提供していない。実際、29種の食物アレルゲンを検査パネルのために選択するためのCousinsの方法は、その選択がかなり恣意的であると批判されている。例えば、Croftは、“IgG food antibodies and irritating the bowel”と題する、非特許文献3(Gastroenterology、Vol.128、Issue 4、p.1135-1136)に発表した論文において、Cousinsの方法は、コントロール(健康な、またはIBSでないコントロール被験者)を欠くので、その都度測定される食物抗体の量および範囲が非IBS患者または非食物不耐性患者に類似しているか、または完全に異なっているかが明らかでないと批判した。したがって、Cousinsは偽陽性結果および偽陰性結果に関して何らかの改善を達成しているかどうかが、最良の場合でも不明である。
【0007】
別の一例について、特許文献2(米国特許出願公開第2011/0306898号(Stierstorfer))には、皮膚パッチでの検査材料としての41種の食物物質の選択が開示される。これら41種の食物物質は、これらの食物物質に含まれる化学化合物(例えば、バニリン、桂皮アルデヒド、ソルビン酸など)に基づいて選択されている。これらの食物物質が、アレルギー性接触皮膚炎について、IBS患者またはIBSが疑われる患者で試験される。しかしながら、Stierstorferもまた、偽陽性または偽陰性の食物アレルゲンがどの程度除外されるか、また、これらの食物アレルゲンが、IgG陽性結果の中での性別階層化に基づいて選択されているかどうかを開示していない。
【0008】
本明細書において特定されるすべての刊行物が、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されていたかのような場合と同じ程度に参照によって組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義または使用が、本明細書中に提供されるその用語の定義と矛盾する場合または反する場合、本明細書中に提供されるその用語の定義が適用され、当該参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2007/0122840号(Cousins)
【文献】米国特許出願公開第2011/0306898号(Stierstorfer)
【非特許文献】
【0010】
【文献】http://www.which.co.uk/news/2008/08/food-allergy-tests-could-risk-your-health-154711/
【文献】Alternative Medicine Review、Vol.9、No.2、2004:pp.198-207
【文献】Gastroenterology、Vol.128、Issue 4、p.1135-1136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、食物過敏性についての様々な検査がたとえ当該技術分野において知られているとしても、それらのすべてまたはほとんどすべてが1つまたは複数の短所を持っている。したがって、食物過敏性試験の改善された組成物、デバイスおよび方法、とりわけ、誘因食物を、IBSと特定される患者またはIBSが疑われる患者のために特定すること、および、可能であれば除外することのための改善された組成物、デバイスおよび方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明の主題は、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者において食物不耐性を試験するためのシステムおよび方法を提供する。本発明の一局面が、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者において食物不耐性を試験するための検査キットである。当該検査キットは、個別にアドレス指定可能なそれぞれの固相担体に結合させられた異なる複数の食物調製物を含む。異なる複数の食物調製物は0.07以下の平均判別p値を未処理p値によって判定される場合には有し、または、0.10以下の平均判別p値をFDR多重度調整p値によって判定される場合には有する。
【0013】
本発明の別の一局面には、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者において食物不耐性を試験する方法が含まれる。当該方法は、食物調製物を、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者の体液と接触させる工程を含む。当該体液には性別特定が伴う。前記接触させる工程は、前記体液からのIgGが前記食物調製物の少なくとも1つの成分に結合することを可能にする条件のもとで行われることが、とりわけ好ましい。本方法は、前記食物調製物の前記少なくとも1つの成分に結合したIgGを測定して、シグナルを得て、その後、前記シグナルを、前記性別特定を使用して前記食物調製物についての性別階層化参照値と比較して、結果を得る工程を続ける。その後、本方法はまた、前記結果を使用して報告書を更新する、または作成する工程を含む。
【0014】
本発明の別の一局面には、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者における食物不耐性についての検査を作成する方法が含まれる。当該方法は、複数の別個の食物調製物についての検査結果を得る工程を含む。検査結果は、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者の体液と、過敏性腸症候群と診断されないコントロール群または過敏性腸症候群が疑われないコントロール群の体液とに基づいている。本方法はまた、前記検査結果を前記異なる食物調製物のそれぞれについて性別によって階層化する工程を含む。その後、本方法は、所定のパーセンタイル順位について、前記異なる食物調製物のそれぞれについての男性患者および女性患者のための異なるカットオフ値を割り当てる工程を続ける。
【0015】
本発明のさらに別の一局面には、過敏性腸症候群の診断における、個々にアドレス指定可能なそれぞれの固相担体に結合させられた異なる複数の食物調製物の使用が含まれる。異なる複数の食物調製物は、未処理p値によって判定される場合には0.07以下のそれらの平均判別p値に基づいて、または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.10以下の平均判別p値に基づいて選択される。
【0016】
本発明の主題の様々な目的、特徴、局面および利点が、同じ数字が同じ構成要素を表す添付された図面と一緒に、好ましい実施形態の下記の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0017】
表1は、食物調製物を調製することができる食品品目のリストを示す。
表2は、両側FDR多重度調整p値に従って順位づけられる食物の統計学的データを示す。
表3は、食物および性別によるELISAスコアの統計学的データを示す。
表4は、所定のパーセンタイル順位のための食物のカットオフ値を示す。
図1Aは、白小麦に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
図1Bは、白小麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図1Cは、女性におけるシグナル分布を、白小麦に関して試験した女性コントロール集
団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
図1Dは、白小麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図2Aは、ココアに関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
図2Bは、ココアに関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図2Cは、女性におけるシグナル分布を、ココアに関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
図2Dは、ココアに関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図3Aは、ライ麦に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
図3Bは、ライ麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図3Cは、女性におけるシグナル分布を、ライ麦に関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
図3Dは、ライ麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図4Aは、紅茶に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
図4Bは、紅茶に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図4Cは、女性におけるシグナル分布を、紅茶に関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
図4Dは、紅茶に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
図5の、
図5Aおよび
図5Bは、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルで誘因食物として特定された食物の数によるIBS被験者の分布を例示する。
表5は、IBS患者およびコントロールの未処理データを90パーセンタイルに基づく陽性結果の数とともに示す。
表6は、表5に示されるIBS患者集団の未処理データを要約する統計学的データを示す。
表7は、表5に示されるコントロール集団の未処理データを要約する統計学的データを示す。
表8は、対数変換によって変換される表5に示されるIBS患者集団の未処理データを要約する統計学的データを示す。
表9は、対数変換によって変換される表5に示されるコントロール集団の未処理データを要約する統計学的データを示す。
表10は、陽性食物の幾何平均数をIBSサンプルと非IBSサンプルとの間で比較するための独立T検定の統計学的データを示す。
表11は、陽性食物の幾何平均数をIBSサンプルと非IBSサンプルとの間で比較するためのマン・ホイットニー検定の統計学的データを示す。
図6Aは、表5に示されるデータの箱ひげ図を例示する。
図6Bは、表5に示されるデータの切り込み箱ひげ図を例示する。
図7は、表12に示される統計学的データに対応するROC曲線を例示する。
表12は、表5~表11に示されるデータの受信者動作特性(ROC)曲線分析の統計学的データを示す。
表13は、女性患者の中のIBS状態を陽性食物の数から予測することにおける成績測定基準の統計学的データを示す。
表14は、男性患者の中のIBS状態を陽性食物の数から予測することにおける成績測定基準の統計学的データを示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】白小麦に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
【
図1B】白小麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図1C】女性におけるシグナル分布を、白小麦に関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
【
図1D】白小麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図2A】ココアに関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
【
図2B】ココアに関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図2C】女性におけるシグナル分布を、ココアに関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
【
図2D】ココアに関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図3A】ライ麦に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
【
図3B】ライ麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図3C】女性におけるシグナル分布を、ライ麦に関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
【
図3D】ライ麦に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図4A】紅茶に関して試験した男性IBS患者およびコントロールのELISAシグナルスコアを例示する。
【
図4B】紅茶に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図4C】女性におけるシグナル分布を、紅茶に関して試験した女性コントロール集団から決定される場合の95パーセンタイルカットオフと一緒に例示する。
【
図4D】紅茶に関して試験した場合の、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を例示する。
【
図5A】90パーセンタイルおよび95パーセンタイルで誘因食物として特定された食物の数によるIBS被験者の分布を例示する。
【
図5B】90パーセンタイルおよび95パーセンタイルで誘因食物として特定された食物の数によるIBS被験者の分布を例示する。
【
図6A】表5に示されるデータの箱ひげ図を例示する。
【
図6B】表5に示されるデータの切り込み箱ひげ図を例示する。
【
図7】表12に示される統計学的データに対応するROC曲線を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明者らは、IBSと診断される患者またはIBSが疑われる患者において誘因食物を特定するために食物検査において使用される様々な食物調製物が、IBS/IBS症状に関して等しく十分に予測するものおよび/または関連するものでないことを発見した。実際、様々な実験では、広範囲の様々な食品品目の中で、特定の食品品目がIBSに関し
て非常に予測的であり/関連しており、これに対して、他の食品品目はIBSとの統計学的に有意な関連を何ら有しないことが明らかにされている。
【0020】
一層より意外なことに、本発明者らは、食品品目の大きい変動性に加えて、検査における応答に関する男女別変動性が、食品品目のIBSとの関連の決定において実質的な役割を果たすことを発見した。その結果として、本発明者らの発見およびさらなる見込みに基づいて、今回、検査キットおよび検査方法には、IBSの兆候および症状を軽減させるために除外することができると考えられる食品品目を選定することにおける実質的により大きい予測力が与えられる。
【0021】
以下の議論では、本発明の主題の例となる多くの実施形態が提供される。それぞれの実施形態が、発明に係る要素のただ1つの組合せを表しているが、本発明の主題は、開示された要素のすべての可能な組合せを含むと見なされる。したがって、1つの実施形態が、要素A、要素Bおよび要素Cを含み、第2の実施形態が要素Bおよび要素Dを含むならば、本発明の主題はまた、A、B、CまたはDの他の残る組合せを、明示的に開示されていない場合でさえ含むと見なされる。
【0022】
いくつかの実施形態において、量または範囲を表す数字は、本発明のある特定の実施形態を記載するために、また主張するために使用される場合、場合により用語「約」によって修飾されることが理解されなければならない。したがって、いくつかの実施形態では、記載された説明および添付された請求項において示される数値パラメーターは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の性質に依存して変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されなければならない。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲および数値パラメーターは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値は、実施可能な限り正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態において示される数値は、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含む場合がある。文脈が反対のことを示す場合を除き、本明細書中に示されるすべての範囲が、その端点を含むとして解釈されなければならず、変更可能な範囲は、商業的に実用的な値のみを含むように解釈されなければならない。同様に、値の列挙はすべて、文脈が反対のことを示す場合を除き、中間の値を含むと見なされなければならない。
【0023】
本明細書中の記載において、また、下記の請求項を通して使用される場合、“a”、“an”および“the”の意味には、文脈が明らかに別途示す場合を除き、複数の参照物が含まれる。また、本明細書中の記載において使用される場合、“in”の意味には、文脈が明らかに別途示す場合を除き、“in”および“on”が含まれる。
【0024】
本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書中に別途示される場合または文脈によって別途明確に矛盾する場合を除き、どのような順であれ、好適な順で行うことができる。本明細書中のある特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、または例示的な術語(例えば、“such as”(例えば、・・・など))の使用は、単に発明をより良く明らかにするために意図されるだけであり、別途主張される発明の範囲に対する限定とはならない。本明細書における術語は、どのような構成要素であれ、本発明の実施に不可欠である主張されていない構成要素を示すとして解釈してはならない。
【0025】
本明細書中に開示される本発明の様々な代替的な構成要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈してはならない。それぞれの群要素が、個々に、あるいは、当該群の他の要素または本明細書中に見出される他の要素とのどのような組合せであっても示され、また主張され得る。群の1つまたは複数の要素を便宜上および/または特許性の理由
から群に含めることができ、または群から削除することができる。どのような包含または削除でも、そのような包含または削除が行われるとき、明細書はこの場合、当該群を修正されるように、したがって、添付された請求項において使用されるすべてのマーカッシュ群の記載された説明を満たすように含有すると見なされる。
【0026】
したがって、1つのとりわけ好ましい局面において、本発明者らは、食物不耐性を患者において試験するために好適である検査キットまたは検査パネルであって、患者が過敏性腸症候群と診断される場合または過敏性腸症候群に罹患していることが疑われる場合における検査キットまたは検査パネルを意図する。最も好ましくは、そのような検査キットまたは検査パネルは、(例えば、アレイまたはマイクロウエルプレートの形態での)個別にアドレス指定可能なそれぞれの固相担体に結合される異なる複数の食物調製物(例えば、処理前または処理後の抽出物(好ましくは、必要に応じた共溶媒を用いた水性抽出物)、ただし、抽出物はろ過されてもよく、またはろ過されなくてもよい)を含むであろうし、ただし、この場合、異なる食物調製物は0.07以下の平均判別p値を未処理p値によって判定される場合には有し、または、0.10以下の平均判別p値をFDR多重度調整p値によって判定される場合には有する。本明細書中で使用される場合、処理後の抽出物には、機械的または化学的に改変される(例えば、切り刻み、加熱、ボイル、発酵、燻製などに供される)食品品目から作製される食物抽出物が含まれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、成分の量、性質(例えば、濃度など)および反応条件などを表す数字は、本発明のある特定の実施形態を記載するために、また主張するために使用される場合、場合により用語「約」によって修飾されることが理解されなければならない。したがって、いくつかの実施形態では、記載された説明および添付された請求項において示される数値パラメーターは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の性質に依存して変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されなければならない。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲および数値パラメーターは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値は、実施可能な限り正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態において示される数値は、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含む場合がある。そのうえ、また、文脈が反対のことを示す場合を除き、本明細書中に示されるすべての範囲は、その端点を含むとして解釈されなければならず、変更可能な範囲は、商業的に実用的な値のみを含むように解釈されなければならない。同様に、値の列挙はすべて、文脈が反対のことを示す場合を除き、中間の値を含むと見なされなければならない。
【0028】
発明の主題に限定するものではないが、食物調製物は典型的には、IBSの様々な徴候もしくは症状を誘引することが一般的に知られている食物または疑われる食物から得られるであろう。特に好適な食物調製物が、下記で概略される実験手順によって特定される場合がある。したがって、食品品目は、本明細書中に記載される品目に限定される必要はなく、しかし、本明細書中に示される方法によって特定することができるすべての品目が意図されることを理解しなければならない。したがって、例示的な食物調製物には、ココア、茶(例えば、緑茶、紅茶など)、オートムギ、キャベツ、牛乳、タマネギ(例えば、黄タマネギ、白タマネギ、マウイオニオンなど)、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦(例えば、赤小麦、白小麦など)、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリーまたはエビ(例えば、アメリカ湾岸白エビ、タイエビ、ブラックタイガーなど)から調製される少なくとも2種の食物調製物、少なくとも4種の食物調製物、少なくとも8種の食物調製物、または少なくとも12種の食物調製物が含まれる。さらに意図される食物調製物が、カニ(例えば、アメリカイチョウガニ、ブルークラブ、タラバガニなど)、大麦、イチゴ、豚肉、米(例えば、玄米、白米など)、牛肉、カシュー、タラ、ジャガイモ、白ゴマ、ブロッコリー、アーモンド、シチメンチョウ、ホタテガイおよび/またはサケから調製される。なおさらに、食物調製物を調製することができる、とりわけ意図される食品品目および食品添加剤が表1に列挙される。
【0029】
過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者および健康なコントロール群個体(すなわち、過敏性腸症候群と診断されない個体または過敏性腸症候群が疑われない個体)から得られる体液を使用して、数多くのさらなる食品品目が特定される場合がある。好ましくは、そのような特定された食品品目は、大きい識別力を有するであろうし、そのようなものとして、未処理p値によって判定される場合には0.15以下のp値、より好ましくは0.10以下のp値、最も好ましくは0.05以下のp値、および/または、偽発見率(False Discovery Rate;FDR)多重度調整p値によって判定される場合には0.10以下のp値、より好ましくは0.08以下のp値、最も好ましくは0.07以下のp値を有する。
【0030】
したがって、パネルが多数の食物調製物を有する場合、異なる複数の食物調製物は、未処理p値によって判定される場合には0.05以下の平均判別p値、または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.08以下の平均判別p値、あるいは、一層より好ましくは、未処理p値によって判定される場合には0.025以下の平均判別p値、または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.07以下の平均判別p値を有することが意図される。さらに好ましい局面では、FDR多重度調整p値が年齢および性別のうちの少なくとも1つについて調整される場合があること、最も好ましくは、年齢および性別の両方について調整される場合があることが理解されなければならない。他方で、検査キットまたは検査パネルが単一の性別との使用のために階層化されている場合、検査キットまたは検査パネルにおいて、異なる複数の食物調製物のうちの少なくとも50%(より典型的には70%またはすべて)が、一方だけの性別について調整されたときには、未処理p値によって判定される場合には0.07以下の平均判別p値、または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.10以下の平均判別p値を有することもまた意図される。さらには、他の階層化(例えば、食事の好み、民族性、居住地、遺伝的素因または家族歴など)もまた意図されることが理解されなければならず、PHOSITAが階層化の適切な選定のために容易に評価されるであろう。
【0031】
本明細書中における値の様々な範囲の列挙は、当該範囲の範囲内にあるそれぞれの別個の値を個々に示す簡略的方法として役立つことが単に意図されるだけである。本明細書中に別途示される場合を除き、それぞれの個々の値が、その値が本明細書中に個々に列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書中に別途示される場合または文脈によって別途明確に矛盾する場合を除き、どのような順であれ、好適な順で行うことができる。本明細書中のある特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、または例示的な術語(例えば、“such as”(例えば、・・・など))の使用は、単に発明をより良く明らかにするために意図されるだけであり、別途主張される発明の範囲に対する限定とはならない。本明細書における術語は、本発明の実施に不可欠である主張されていない構成要素を示すとして解釈してはならない。
【0032】
当然のことながら、検査キットまたは検査パネルの具体的な形式はかなり変化する場合があり、意図される形式には、マイクロウエルプレート、マイクロ流体デバイス、ディップスティック、メンブラン結合アレイなどが含まれることに留意しなければならない。その結果として、食物調製物が結合される固相担体には、マルチウエルプレートのウエル、マイクロ流体デバイス、(例えば、色分けされた、または磁気)ビーズ、または吸着性フィルム(例えば、ニトロセルロースフィルムまたは微孔性/ナノ細孔ポリマーフィルム)、化学センサー、または電気センサー(例えば、プリント銅センサーまたはマイクロチップ)が含まれる場合がある。いくつかの実施形態において、光検出器(例えば、表面プラズモン共鳴など)による分子吸収およびシグナル検出のための好適な固相担体が使用され得ることもまた意図される。
【0033】
したがって、本発明者らはまた、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者において食物不耐性を試験する方法を意図する。最も典型的には、そのような方法は、食物調製物を、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者の体液(例えば、全血、血漿、血清、唾液または便懸濁液)と接触させる工程(ただし、前記体液には、性別特定が伴う)を含むであろう。上記のように、接触させる工程は好ましくは、体液からのIgG(またはIgEまたはIgAまたはIgM)が食物調製物の少なくとも1つの成分に結合することを可能にする条件のもとで行われ、その後、食物調製物の前記成分に結合するIgGが定量化/測定されて、シグナルを得る。最も好ましくは、前記シグナルはその後、結果を得るために、性別特定を使用して食物調製物についての性別階層化参照値(例えば、少なくとも90パーセンタイル値)に対して比較され、その後、この結果が、報告書を更新するために、または作成するために使用される。好ましくは、報告書は、個々のアッセイ結果の集計結果として作成することができる。
【0034】
最も一般的には、そのような方法は、ただ1つの食物調製物に限定されるのではなく、多数の異なる食物調製物を用いることになるであろう。上記のように、好適な食物調製物を、下記のような様々な方法を使用して特定することができ、しかしながら、とりわけ好ましい食物調製物には、ココア、茶(例えば、緑茶、紅茶など)、オートムギ、キャベツ、牛乳、タマネギ(例えば、黄タマネギ、白タマネギ、マウイオニオンなど)、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦(例えば、赤小麦、白小麦など)、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリーまたはエビ(例えば、アメリカ湾岸白エビ、タイエビ、ブラックタイガーなど)が含まれる。さらに意図される食物調製物が、カニ(例えば、アメリカイチョウガニ、ブルークラブ、タラバガニなど)、大麦、イチゴ、豚肉、米(例えば、玄米、白米など)、牛肉、カシュー、タラ、ジャガイモ、白ゴマ、ブロッコリー、アーモンド、シチメンチョウ、ホタテガイおよび/またはサケ、ならびに/あるいは、表1の品目から調製される。同様に上記のように、これらの異なる食物調製物の少なくともいくつかまたはすべてが、未処理p値によって判定される場合には0.07以下(または0.05以下または0.025以下)の平均判別p値、および/または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.10以下(または0.08以下または0.07以下)の平均判別p値を有することが一般に好ましい。
【0035】
食物調製物が粗抽出物または粗製のろ過された抽出物としてただ1つの食品品目から調製されることが好ましいが、食物調製物が、複数の食品品目の混合物(例えば、レモン、オレンジおよびライムを含む柑橘類の混合物、カニ、タラバガニおよびアメリカイチョウガニを含むカニの混合物、白小麦および赤小麦を含む小麦の混合物、アメリカ湾岸白エビ、タイエビ、ブラックタイガーを含むエビの混合物など)から調製され得ることが意図される。いくつかの実施形態において、食物調製物が、精製された食物抗原または組換え食物抗原から調製され得ることもまた意図される。
【0036】
食物調製物は(典型的にはアドレス指定可能な様式で)固相表面に固定化されることが一般に好ましいので、食物調製物の成分に結合したIgGまたは他のタイプの抗体を測定する工程が、免疫アッセイ試験(例えば、ELISA試験、抗体捕捉酵素免疫アッセイ、他のタイプの抗体捕捉アッセイなど)によって行われることが意図される。
【0037】
異なる観点から見ると、本発明者らはまた、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者における食物不耐性についての検査を作成する方法を意図する。当該検査は、過敏性腸症候群と既に診断された患者または過敏性腸症候群が疑われる患者に適用されるので、著者らは、当該方法がIBSについての一次診断の目的を有することを意図していない。代わりに、当該方法は、既に診断されたIBS患者または疑いのあるIBS患者の中で誘因食品品目を特定するためのものである。そのような検査は典型的には、様々な異なる食物調製物についての1つまたは複数の検査結果(例えば、ELISA、抗体捕捉酵素免疫アッセイ)を得る工程を含むであろう。ただし、この場合、前記検査結果は、過敏性腸症候群と診断される患者または過敏性腸症候群が疑われる患者の体液(例えば、血液、唾液、便懸濁液)、および、過敏性腸症候群と診断されないコントロール群または過敏性腸症候群が疑われないコントロール群の体液に基づいている。最も好ましくは、検査結果がその後、異なる食物調製物のそれぞれについて性別によって階層化され、異なる食物調製物のそれぞれについての男性患者および女性患者のための異なるカットオフ値(例えば、男性患者および女性患者のためのカットオフ値は少なくとも10%(絶対値)の違いを有する)が、所定のパーセンタイル順位(例えば、90パーセンタイルまたは95パーセンタイル)について割り当てられる。
【0038】
上記のように、また、発明の主題に限定することはないが、異なる食物調製物には、ココア、茶(例えば、緑茶、紅茶など)、オートムギ、キャベツ、牛乳、タマネギ(例えば、黄タマネギ、白タマネギ、マウイオニオンなど)、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦(例えば、赤小麦、白小麦など)、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリーまたはエビ(例えば、アメリカ湾岸白エビ、タイエビ、ブラックタイガーなど)からなる群から選択される食品品目から調製される少なくとも2種(または6種または10種または15種)の食物調製物が含まれることが意図される。さらに意図される食物調製物が、カニ(例えば、アメリカイチョウガニ、ブルークラブ、タラバガニなど)、大麦、イチゴ、豚肉、米(例えば、玄米、白米など)、牛肉、カシュー、タラ、ジャガイモ、白ゴマ、ブロッコリー、アーモンド、シチメンチョウ、ホタテガイおよび/またはサケ、ならびに/あるいは、表1の品目から調製される。他方で、新しい食品品目を試験する場合、異なる食物調製物は、ココア、茶(例えば、緑茶、紅茶など)、オートムギ、キャベツ、牛乳、タマネギ(例えば、黄タマネギ、白タマネギ、マウイオニオンなど)、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、小麦(例えば、赤小麦、白小麦など)、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、ブルーベリーまたはエビ(例えば、アメリカ湾岸白エビ、タイエビ、ブラックタイガーなど)とは異なる食品品目から調製される食物調製物を含むことが理解されなければならない。しかしながら、食品品目の特定の選定にもかかわらず、異なる食物調製物は、未処理p値によって判定される場合には0.07以下(または0.05以下または0.025以下)の平均判別p値、または、FDR多重度調整p値によって判定される場合には0.10以下(または0.08以下または0.07以下)の平均判別p値を有することが一般に好ましい。例示的な様々な局面およびプロトコル、ならびに考察が、下記の実験説明において提供される。
【0039】
したがって、本明細書中に記載されるような高信頼性の検査システムを有することによって、偽陽性および偽陰性の割合を有意に低下させることができること(とりわけ、検査システムおよび検査方法が、下記のように性別によって階層化され、または性差について調整される場合)が理解されなければならない。そのような利点はこれまで実現されておらず、本明細書中に示されるシステムおよび方法によって、IBSと診断される患者またはIBSが疑われる患者のための食物過敏性検査の予測力が実質的に増大するであろうことが予想される。
【実施例】
【0040】
食物調製物作製のための一般的プロトコル
それぞれの未加工食物の可食部分から調製される市販の食物抽出物(Biomerica Inc.(17571 Von Karman Ave、Irvine、CA 92614)から入手可能)を使用して、ELISAプレートを製造者の説明書に従って調製した。
【0041】
いくつかの食物抽出物については、本発明者らは、食物抽出物を作製するための具体的な手順を用いて調製された食物抽出物が、市販の食物抽出物と比較した場合、IBS患者における上昇したIgG反応性を検出することにおいて、より優れた結果をもたらすことを見出した。例えば、穀物およびナッツについては、食物抽出物を作製する3工程手順が好ましい。第一工程が脱脂工程である。当該工程において、穀物およびナッツからの脂質が、穀物およびナッツの粉末を非極性溶媒と接触させ残渣を集めることによって抽出される。その後、脱脂された穀物粉末またはナッツ粉末は、当該粉末を高いpHと接触させて混合物を得ること、および、固形分を当該混合物から除いて液体抽出物を得ることによって抽出される。液体抽出物が得られると、当該液体抽出物は、水性製剤(aqueous formulation)を加えることによって安定化される。好ましい実施形態において、水性製剤は、糖アルコール、金属キレート化剤、プロテアーゼ阻害剤、無機塩および緩衝液成分(4~9のpHの、20~50mMの緩衝液)を含む。この配合物は、活性の喪失を伴わない-70℃での長期貯蔵および多数回の凍結/融解を可能にした。
【0042】
別の一例として、肉および魚については、食物抽出物を作製する2工程手順が好ましい。第一工程が抽出工程である。当該工程において、加工されていない未調理の肉または魚からの抽出物が、加工されていない未調理の肉または魚を高衝撃圧力プロセッサーにより水性緩衝製剤中で乳化することによって作製される。その後、固形物を除いて液体抽出物を得る。液体抽出物が得られると、液体抽出物は、水性製剤を加えることによって安定化される。好ましい実施形態において、水性製剤は、糖アルコール、金属キレート化剤、プロテアーゼ阻害剤、無機塩および緩衝液成分(4~9のpHの、20~50mMの緩衝液)を含む。この配合物は、活性の喪失を伴わない-70℃での長期貯蔵および多数回の凍結/融解を可能にした。
【0043】
さらに別の一例として、果実および野菜については、食物抽出物を作製する2工程手順が好ましい。第一工程が抽出工程である。当該工程において、果実または野菜からの液体抽出物が、食物を粉砕しジュースを抽出するための抽出器(例えば、粉砕ジューサーなど)を使用して作製される。その後、固形物を除いて液体抽出物を得る。液体抽出物が得られると、液体抽出物は、水性製剤を加えることによって安定化される。好ましい実施形態において、水性製剤は、糖アルコール、金属キレート化剤、プロテアーゼ阻害剤、無機塩および緩衝液成分(4~9のpHの、20~50mMの緩衝液)を含む。この配合物は、活性の喪失を伴わない-70℃での長期貯蔵および多数回の凍結/融解を可能にした。
【0044】
ELISAプレートのブロッキング処理
シグナル対ノイズ比を最適化するために、プレートを独自のブロッキング緩衝液によりブロッキング処理した。好ましい実施形態において、ブロッキング緩衝液は、4~9のpHの20~50mMの緩衝液、動物起源のタンパク質、および短鎖アルコールを含む。いくつかの市販の調製物を含めて、他のブロッキング緩衝液を試みたが、これらは、要求される十分なシグナル対ノイズおよび低いアッセイ変動性を提供することができなかった。
【0045】
ELISA調製およびサンプルの試験
食物抗原調製物を、製造者の説明書に従ってそれぞれのマイクロタイターウェルに固定化した。アッセイのために、食物抗原を患者の血清中に存在する抗体と反応させ、過剰の
血清タンパク質を洗浄工程によって除いた。IgG抗体結合を検出するために、酵素標識された抗IgG抗体コンジュゲートを抗原-抗体複合体と反応させた。色を、カップリングされた酵素と反応する基質の添加によって発色させた。色の強度を測定した。色の強度が、特定の食物抗原に対して特異的なIgG抗体の濃度に正比例している。
【0046】
IBSをコントロール被験者から識別するためのELISAシグナルの能力の順で順位づけされた食物リストを決定するための方法論
最初の選択(例えば、100種の食品品目または150種の食品品目またはそれ以上)から、様々なサンプルを、意図された集団における少ない消費を理由に分析前に除外することができる。加えて、(両方の性別においてであることが最も好ましいが、単一の性別についての相間関係のためにも好適である)包括的な群に含まれる様々な種の中における相間関係が確立されている場合にはとりわけ、特定の食品品目を、より大きいより包括的な食物群を代表しているとして使用することができる。例えば、タイエビが除かれ、アメリカ湾岸白エビが「エビ」食物群を表すものとして加えられるであろうし、または、タラバガニが除かれ、アメリカイチョウガニが「カニ」食物群を表すものとして加えられるであろう。さらに好ましい局面において、最終的なリスト食物は50種未満の食品品目であり、より好ましくは40種以下の食品品目である。
【0047】
食物不耐性パネルのために最終的に選択される食物は特定の性について特異的ではないであろうから、性的中立な食物リストが必要であった。認められたサンプルは性別によって不均衡であったので(例えば、コントロール:22%が女性、IBS:64%が女性)、厳密に性別に起因するELISAシグナルの大きさにおける違いを、二標本t検定を使用し、かつ、残りをさらなる分析のために保存して、シグナルスコアを性別に対してモデル化することによって除いた。試験した食物のそれぞれについて、残りのシグナルスコアを、50,000回の再サンプリングによる二標本t検定での並べ替え検定を使用してIBSとコントロールとの間で比較した。サッタースウェイト近似を、分散の等質性の欠如を説明するための分母自由度のために使用し、両側並び替えp値が、それぞれの食物についての未処理p値であった。比較間の偽発見率(FDR)を、どのような統計学的手法であれ、許容される統計学的手法(例えば、Benjamini-Hochberg、ファミリーワイズ過誤率(Family-wise Error Rate;FWER)、比較あたり過誤率(Per Comparison Error Rate;PCER)など)によって調整した。
【0048】
その後、食物をそれらの両側FDR多重度調整p値に従って順位づけした。調整p値が所望のFDR閾値と同等以下である食物を、コントロール被験者よりも有意に大きいシグナルスコアをIBS被験者の中で有すると見なし、したがって、食物不耐性のパネルに含める候補物であると見なした。この統計学的手法の成果を代表する代表的な結果を表2に示す。この場合、食物の順位づけは、FDR調整を伴う両側並び替えT検定p値に従っている。
【0049】
注目すべきことに、本発明者らは、試験した同じ食物調製物についてさえ、少なくともいくつかの食品品目についてはそれらのELISAスコアが劇的に変動したことを発見した。例示的な未処理データを表3に示す。したがって、容易に理解されるであろうように、性別によって階層化されていないデータは、同じカットオフ値が男性データおよび女性データについての未処理データに適用される場合には意味のある説明力を失うことになる。そのような短所を克服するために、本発明者らは、データを下記のように性別によって階層化した。
【0050】
それぞれの食物についてのカットポイント選択のための統計学的方法
どのELISAシグナルスコアが「陽性」応答を構成するであろうかの判定を、コント
ロール被検者間におけるシグナルスコアの分布をまとめることによって行った。それぞれの食物について、コントロール被験者分布の選択された分位数よりも大きいスコアまたはそのような分位数と等しいスコアが認められたIBS被験者を「陽性」であると見なした。カットポイント決定に対するいずれか1名の被験者の影響を弱めるために、それぞれの食物特異的かつ性別特異的なデータセットを1000回のブートストラップ・リサンプリングに供した。それぞれのブートストラップ・レプリケートの中で、コントロールシグナルスコアの90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを決定した。このブートストラップサンプルにおけるそれぞれのIBS患者を90パーセンタイルおよび95%パーセンタイルと比較して、この被験者が「陽性」応答を有したかどうかを判定した。それぞれの食物および性別についての、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルに基づく最終的カットポイントを、1000個のサンプルにわたる平均90パーセンタイルおよび平均95パーセンタイルとして算出した。それぞれのIBS被験者が「陽性」として評価された食物の数を、データを食物全体にわたってプールすることによって算出した。そのような方法を使用して、本発明者らは次に、表4から理解され得るようにほとんどの場合において実質的に異なる所定のパーセンタイル順位のためのカットオフ値を特定することができた。
【0051】
小麦に関する血中のIgG応答における性差についての典型例が
図1A~
図1Dに示され、
図1Aは、男性におけるシグナル分布を、男性コントロール集団から決定されるような95パーセンタイルカットオフとともに示す。
図1Bは、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える男性IBS被験者の割合の分布を示し、一方、
図1Cは、女性におけるシグナル分布を、女性コントロール集団から決定されるような95パーセンタイルカットオフとともに示す。
図1Dは、90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを超える女性IBS被験者の割合の分布を示す。同じ様式で、
図2A~
図2Dは、ココアに対する示差的な応答を例示的に示し、
図3A~
図3Dは、ライ麦に対する示差的な応答を例示的に示し、
図4A~
図4Dは、紅茶に対する示差的な応答を例示的に示す。
図5A~
図5Bは、90パーセンタイル(5A)および95パーセンタイル(5B)で誘因食物として特定された食物の数別のIBS被験者の分布を示す。本発明者らは、特定の食品品目にもかかわらず、男性および女性の応答が著しく明瞭であったことを意図する。
【0052】
当該技術分野では、IBSに関連づけられる予測可能な食物群で、性別によって階層化される予測可能な食物群がいかなるものあっても提供されていないことに留意しなければならない。したがって、男女別の異なる応答を示す食品品目の発見は、驚くべき結果であり、この結果は、すべてのこれまでに利用可能な技術を考慮して明白に予想され得ないものである。言い換えれば、性別階層化に基づく食品品目の選択は、男性または女性IBS患者の間における誘因性食物としての特定の食品品目についての統計学的有意性が有意に改善されているような予想外の技術的効果をもたらしている。
【0053】
IgG応答データの正規化
患者のIgG応答結果の未処理データは、応答の強さを所与の食物の間で比較するために使用することができるが、患者のIgG応答結果を正規化し、所与の食物に対する応答の相対的強さを比較するための無名数を得るために指標化することもまた意図される。例えば、患者の食物特異的なIgG結果のうちの1つまたは複数(例えば、アメリカイチョウガニに対して特異的なIgGおよび卵に対して特異的なIgG)を患者の全IgGに対して正規化することができる。アメリカイチョウガニに対して特異的な患者IgGの正規化された値を0.1とすることができ、卵に対して特異的な患者IgGの正規化された値を0.3とすることができる。この状況において、卵に対する患者の応答の相対的強さは、アメリカイチョウガニと比較して、3倍大きい。その後、卵およびアメリカイチョウガニに対する患者の感受性をそのようなものとして指標化することができる。
【0054】
他の例では、患者の食物特異的なIgG結果のうちの1つまたは複数(例えば、エビに対して特異的なIgGおよび豚肉に対して特異的なIgG)をその患者の食物特異的なIgG結果の全体的平均に対して正規化することができる。患者の食物特異的なIgGの全体的平均を患者の食物特異的なIgGの総量によって見積もることができる。この状況において、エビに対する患者の特異的IgGを、患者の総食物特異的IgGの平均(例えば、エビ、豚肉、アメリカイチョウガニ、鶏肉、エンドウ豆に対するIgGレベルの平均)に対して正規化することができる。しかしながら、患者の食物特異的IgGの全体的平均が、複数の検査による具体的タイプの食物に対する患者のIgGレベルによって見積もられ得ることもまた意図される。患者が、エビに対する感受性について5回、豚肉に対する感受性について7回以前に試験されていたならば、エビまたは豚肉に対する患者の新しいIgG値が、エビに対する5回の検査結果の平均に対して、または、豚肉に対する7回の検査結果の平均に対して正規化される。エビに特異的な患者IgGの正規化された値を6.0とすることができ、豚肉に特異的な患者IgGの正規化された値を1.0とすることができる。この状況において、患者は、エビに対するその平均感受性と比較して今回は、エビに対する6倍大きい感受性を有し、しかし、豚肉に対しては実質的に類似した感受性を有する。その後、エビおよび豚肉に対する患者の感受性をそのような比較に基づいて指標化することができる。
【0055】
IBSの根底にある食物過敏性を有するIBS患者のサブセットを決定するための方法論
食物過敏性がIBSの様々な徴候および症状において実質的役割を果たすことが疑われるが、一部のIBS患者は、IBSの根底にある食物過敏性を有しない場合がある。それらの患者は、IBSの徴候および症状を処置するための食事介入から恩恵を受けないであろう。そのような患者のサブセットを決定するために、IBS患者および非IBS患者の体液サンプルを、検査デバイスを24種の食物サンプルとともに使用するELISA検査により試験することができる。
【0056】
表5には、例示的な未処理データが提供される。容易に理解されるはずであるように、データは、90パーセンタイル値に基づく24種のサンプル食物からの陽性結果の数を示している。表5に示される未処理データから、陽性食物の数の平均および標準偏差をIBS患者および非IBS患者について算出した。加えて、陽性食物が認められない患者の数および割合をIBSおよび非IBSの両方について計算した。陽性食物が認められない患者の数および割合が、IBS集団では非IBS集団の約5分の1である(それぞれ、6%対38%)。したがって、感受性が陽性食物に対して認められないIBS患者は、IBSの徴候および症状の根底にある食物過敏性を有する可能性が低いことを容易に理解することができる。
【0057】
表6および表7は、表5に示される2つの患者集団の未処理データをまとめる例示的な統計学的データを示す。統計学的データには、正規性、算術平均、中央値、百分位数、ならびに、IBS集団および非IBS集団における陽性食物の数を表す平均および中央値についての95%信頼区間(CI)が含まれる。
【0058】
表8および表9は、表5に示される2つの患者集団の未処理データをまとめる別の例示的な統計学的データを示す。表8および表9では、未処理データが、データ解釈を改善するために対数変換によって変換された。
【0059】
表10および表11は、陽性食物の幾何平均数をIBSサンプルと非IBSサンプルとの間で比較するための独立T検定(表10、対数変換データ)およびマン・ホイットニー検定(表11)の例示的な統計学的データを示す。表10および表11に示されるデータにより、IBS集団と非IBS集団との間での食物の陽性数の幾何平均における統計学的有意差が示される。両方の統計学的検定において、24種の食物サンプルを用いた陽性応答の数がIBS集団では非IBS集団の場合よりも有意に大きく、平均判別p値が0.001以下であることが示される。これらの統計学的データはまた、
図6Aでは箱ひげ図として例示され、
図6Bでは切り込み箱ひげ図として例示される。
【0060】
表12は、IBS被験者を非IBS被験者から識別するために表5で使用される検査の診断力を明らかにするために表5~表11に示されるデータの受信者動作特性(ROC)曲線分析の例示的な統計学的データを示す。陽性食物が2を超えるカットオフ判断基準が使用されるとき、検査はデータを72.4%の感度および72.2%の特異度でもたらし、曲線下面積(AUROC)が0.771である。ROCについてのp値は、0.0001未満のp値で有意である。
図7は、表12に示される統計学的データに対応するROC曲線を例示する。IBS集団と非IBS集団との間における統計的差異が、検定結果が2の陽性数で打ち切られるときには有意であるので、患者を試験して陽性である食物の数が、IBSの一次臨床診断の確認として、また、食物過敏性が患者のIBSの徴候および症状の根底である可能性があるかどうかの確認として使用され得るかもしれない。したがって、上記検査は、IBSについて診断するための現在利用可能な臨床判断基準に加えるための別の「受入れ」検査として使用することができる。
【0061】
「陽性」と宣言される食物の1人あたりの数の分布を決定するための方法
1人あたりの「陽性」食物の数の分布を決定し、また、診断成績を見積もるために、分析を表1からの24種の食品品目(これらはIBS患者に対する最も陽性の応答を示す)に関して行った。これら24種の食品品目には、ココア、紅茶、オートムギ、キャベツ、牛乳、黄タマネギ、ハチミツ、ライ麦、トウモロコシ、酵母、白小麦、大豆、卵、マグロ、レモン、パイナップル、キュウリ、オレンジ、オヒョウ、クルミ、グレープフルーツ、甘蔗糖、鶏肉、アメリカ湾岸白エビが含まれる。この分析に対するいずれか1名の被験者の影響を弱めるために、それぞれの食物特異的かつ性別特異的なデータセットを1000回のブートストラップ・リサンプリングに供した。その後、ブートストラップサンプルにおけるそれぞれの食品品目について、性別特異的なカットポイントを、コントロール集団の90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを使用して決定した。性別特異的カットポイントが決定されると、この性別特異的カットポイントを、コントロール被験者およびIBS被験者の両方についての認められたELISAシグナルスコアと比較した。この比較では、認められたシグナルがカットポイント値と同等以上であるならば、そのシグナルは「陽性」食物であると判定され、認められたシグナルがカットポイント値未満であるならば、そのシグナルは「陰性」食物であると判定される。
【0062】
すべての食品品目が陽性または陰性のいずれかであると判定されると、それぞれの被験者についての48回(24種の食物×2つのカットポイント)の呼び出しの結果がそれぞれのブートストラップ・レプリケートの内部に保存された。その後、それぞれの被験者について、24回の呼び出しを、90パーセンタイルをカットポイントとして使用して「陽性食物の数(90位)」を得るために総計し、残る24回の呼び出しを、95パーセンタイルを使用して「陽性食物の数(95位)」を得るために総計した。その後、それぞれのレプリケートの中で、「陽性食物の数(90位)」および「陽性食物の数(95位)」を被験者全体にわたってまとめて、それぞれのレプリケートについての記述統計学を下記のように得た:1)平均の平均に等しい全体の平均、2)標準偏差の平均に等しい全体の標準偏差、3)中央値の平均に等しい全体の中央値、4)最小値の最小値に等しい全体の最小値、および、5)最大値の最大値に等しい全体の最大値。この分析では、頻度分布およびヒストグラムを算出するときの非整数の「陽性食物の数」を避けるために、著者らは、同じ元データセットの1000回の繰り返しが実際には、元サンプルに加えられる同じサイズの新しい被験者の999組であったようにした。データがまとめられると、頻度分布およびヒストグラムを、プログラム“a_pos_foods.sas,a_pos_foods_by_dx.sas”を使用して、両方の性別について、また、IBS被験者およびコントロール被験者の両方について、「陽性食物の数(90位)」および「陽性食物の数(95位)」の両方について得た。
【0063】
診断成績を見積もるための方法
それぞれの食品品目についての診断成績をそれぞれの被験者について見積もるために、本発明者らは、上記のそれぞれのブートストラップ・レプリケートの中のそれぞれの被験者についての「陽性食物の数(90位)」および「陽性食物の数(95位)」のデータを使用した。この分析では、カットポイントが1に設定された。従って、被験者が1つまたは複数の「陽性食物の数(90位)」を有するならば、この被験者は、「IBSに罹患している」と呼ばれる。被験者が1未満の「陽性食物の数(90位)」を有するならば、この被験者は、「IBSに罹患していない」と呼ばれる。すべての呼び出しが行われたとき、これらの呼び出しを実際の診断と比較して、呼び出しが、真の陽性(TP)、真の陰性(TN)、偽陽性(FP)または偽陰性(FN)であったかどうかを判定した。比較を被験者全体にわたってまとめて、カットポイントがそれぞれの方法について1に設定されるときの「陽性食物の数(90位)」および「陽性食物の数(95位)」の両方についての感度、特異度、陽性予測値および陰性予測値の成績測定基準を得た。それぞれ(感度、1-特異度)の対がこのレプリケートについてのROC曲線上の点となる。
【0064】
精度を高めるために、上記の分析を、カットポイントを2から24にまで漸増することによって繰り返し、かつ、1000個のブートストラップ・レプリケートのそれぞれについて繰り返した。その後、1000個のブートストラップ・レプリケートの全体にわたる成績測定基準を、プログラム“t_pos_foods_by_dx.sas”を使用して平均を計算することによってまとめた。女性および男性についての診断成績の結果を表13(女性)および表14(男性)に示す。
【0065】
当然のことながら、食物調製物におけるある特定の変形が、本明細書中に示される発明の主題を変更することなく行われ得ることが理解されなければならない。例えば、食品品目が黄タマネギであったとき、その品目は、同等の活性を検査において有することが実証された他のタマネギ品種もまた含むことが理解されなければならない。実際、本発明者らは、それぞれの試験した食物調製物について、ある種の他の関連した食物調製物もまた、同じ様式または同等な様式で試験したことに注目している(データは示されず)。したがって、試験されかつ主張されたそれぞれの食物調製物が、検査における実証された等しい反応または同等の反応を伴う同等の関連した調製物を有するであろうことが理解されなければならない。
【0066】
既に記載された改変のほかに、さらに多くの改変が、本明細書中における発明の概念から逸脱することなく可能であることが、当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付された請求項の精神における場合を除いて限定されることはない。そのうえ、明細書および請求項の両方を解釈する際には、すべての用語は、文脈と一致するできる限り広い様式で解釈されなければならない。具体的には、用語“comprises”(含む)および用語“comprising”(含む)は、要素、成分または工程を非排他的様式で示すとして解釈されなければならず、このことは、示された要素、成分または工程が、明示的に示されない他の要素、成分または工程と一緒に存在してもよいこと、あるいは、明示的に示されない他の要素、成分または工程とともに利用されてもよいこと、あるいは、明示的に示されない他の要素、成分または工程と組み合わされてもよいことを示している。明細書、請求項が、A、B、C、・・・およびNからなる群から選択される何かの少なくとも1つを示す場合、この文言は、A+N、または、B+Nなどではなく、この群からの1つのみを必要とするとして解釈されなければならない。
【0067】
【0068】
【0069】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】