(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】PONシステムのOLT、冗長通信機器、PONシステム、帯域制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240827BHJP
H04L 43/0876 20220101ALI20240827BHJP
H04L 43/16 20220101ALI20240827BHJP
H04L 47/122 20220101ALI20240827BHJP
【FI】
H04L12/44 D
H04L12/44 200
H04L43/0876
H04L43/16
H04L47/122
(21)【出願番号】P 2023200093
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】前島 裕亮
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109862331(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110337119(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04L 43/0876
H04L 43/16
H04L 47/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)であって、
収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該代替可能ONUに所定回線で接続される第一通信機器に、接続先を前記所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する通信機器認証部と、を備え、
前記複数のONUは、当該OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器である、PONシステムのOLT。
【請求項2】
請求項1記載のPONシステムのOLTであって、
前記端末回線切替制御部は、前記合計トラフィック量が前記第一閾値より大きい場合、さらに、前記代替可能ONUとの間の前記トラフィック量である特定トラフィック量を検出し、当該特定トラフィック量が予め定めた第二閾値よりも大きい場合のみ、前記アラーム通知を出力する、PONシステムのOLT。
【請求項3】
請求項1または2記載のPONシステムのOLTであって、
収容する前記ONUを管理するONU管理テーブルをさらに備え、
前記通信機器認証部は、
前記第一通信機器が前記代替可能ONUに接続された際、当該代替可能ONUを介して、当該第一通信機器からメッセージを受信し、
当該メッセージを受信した場合、前記代替可能ONUを特定する情報に紐づけて、接続機器情報を前記ONU管理テーブルに登録し、
当該接続機器情報は、当該代替可能ONUに接続された機器が、前記第一通信機器であることを示す情報である、PONシステムのOLT。
【請求項4】
請求項3記載のPONシステムのOLTであって、
前記通信機器認証部は、
前記代替可能ONUを介して前記第一通信機器から異常切断通知を受信した場合、前記代替可能ONUに紐づけて前記ONU管理テーブルの前記接続機器情報に当該代替可能ONUに接続された機器が、前記第一通信機器であることを示す情報を登録するとともに、
前記ONU管理テーブルの前記接続機器情報を予め定めたマスク期間、マスクし、
前記異常切断通知は、接続を前記モバイル回線に切り替え後の前記第一通信機器から送信される、当該モバイル回線が異常切断されたことを意味する通知であり、
前記ONU管理テーブルにおいて、前記接続機器情報がマスクされている場合、前記通信機器認証部は、前記アラーム通知が出力されても、当該第一通信機器に前記切替指示を出力しない、PONシステムのOLT。
【請求項5】
所定回線を介してONU(Optical Network Unit)に接続するWAN(Wide Area Network)ポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WANモジュール部と、
接続先を、前記所定回線と前記モバイル回線との間で切り替える接続制御部と、を備え、
前記接続制御部は、
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するPONシステムの局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信するとともに、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える、冗長通信機器。
【請求項6】
請求項5記載の冗長通信機器であって、
前記接続制御部は、
前記モバイル回線への接続が、当該モバイル回線の異常で切断された場合、接続先を前記所定回線に切り替え、前記ONUに接続し、当該ONUを介して、前記OLTに、当該モバイル回線が異常切断されたことを意味する通知を送信する、冗長通信機器。
【請求項7】
光ファイバ回線の一端に接続された局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、
前記光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された前記光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続された複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)と、を備え、
複数の前記ONUのうち少なくとも1つのONUである代替可能ONUは、当該代替可能ONUに所定回線で接続される通信機器が、前記所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器であり、
前記OLTは、
前記複数のONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記代替可能ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示を出力する通信機器認証部と、を備える、PON(Passive Optical Network)システム。
【請求項8】
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)による帯域制御方法であって、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出ステップと、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別ステップと、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該ONUに接続される第一通信機器に、接続先を所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示ステップと、を備え、
前記複数のONUは、前記OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器である、帯域制御方法。
【請求項9】
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)のコンピュータに、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)であって、前記OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続される前記ONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出手順と、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別手順と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUであって、接続される通信機器が、所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器である代替可能ONUに、当該ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示手順と、を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
PON(Passive Optical Network)システムのONU(Optical Network Unit)に所定回線で接続される冗長通信機器であって、
前記所定回線を介して前記ONUに接続するWAN(Wide Area Network)ポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WANモジュール部と、を備える冗長通信機器のコンピュータに、
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信する送信手順と、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える切替手順と、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PONシステムのOLT、冗長通信機器、PONシステム、帯域制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ回線の普及により、より高速で大容量の通信に対応するサービスが求められている。より高速かつ大容量の通信を実現するための技術として、光ファイバ回線の分岐により光信号を分岐し、分岐された光信号をそれぞれの加入者宅に引き込むPON(Passive Optical Network)システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明の発明者によって与えられたものである。
【0005】
PONシステムは、通信局舎とエンドユーザとを光ファイバケーブルで接続する光アクセス回線の1つの方式であり、P2MP(Point to Multi Point)通信を実現するシステムである。PONシステムでは、光ファイバケーブルによる伝送路を途中に設けられた光カプラで分岐し、時分割多重(TDM: Time Division Multiplexing)によって、通信局舎側の1台の装置に対し、エンドユーザ側の装置を複数収容することを可能にしている。
【0006】
具体的には、PONシステム900は、
図11に示すように、OLT(Optical Line Terminal)920と、複数のONU(Optical Network Unit)930と、光ファイバケーブル960と、光カプラ969と、によって構成される。なお、各ONU930には、有線ケーブル970で、通信機器940が接続される。
【0007】
PONシステム900内の通信(PON通信)は、上り、下りともに時分割多重通信方式(各タイムスロットに各ONUが割り当てられる通信方式)により行われる。このタイムスロットは、例えば、ONU930のバッファ情報を参照し、動的に割り当てられる。この機能を、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)機能と呼ぶ。DBA機能は、各ONU930に流れる上り通信のトラフィックの状況に応じて、割り当てる帯域を適切に切り替えることで、未使用帯域を発生させることなく、効率的な上り帯域を実現する機能である。
【0008】
この場合、OLT920と接続される各ONU930とで、限られた帯域を分け合う必要がある。本図では、一例としてONU930を4台接続する構成を示しているが、アクセス領域の光ファイバ網の経済的優位性を考慮すると4台以上のONU930が接続されることが想定される。
【0009】
OLT920に接続されるONU930の台数が増加するほど、ONU930、1台あたりに割り当てられる帯域が減少する。そのため、PONシステム900では、特定のONU930が帯域を占有すると、他のONU930の通信安定性を担保できなくなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、PONシステムのOLTとONUとの間の通信において、帯域の効率的な利用を維持しつつ、通信の安定に貢献する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第一の視点によれば、
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)であって、
収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該代替可能ONUに所定回線で接続される第一通信機器に、接続先を前記所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する通信機器認証部と、を備えるPONシステムのOLTが提供される。
前記複数のONUは、前記OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器であるOLTが提供される。
【0012】
本開示の第二の視点によれば、
所定回線を介してONU(Optical Network Unit)に接続するWANポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WAN(Wide Area Network)モジュール部と、
接続先を、前記所定回線と前記モバイル回線との間で切り替える接続制御部と、を備え、
前記接続制御部は、
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するPONシステムの局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信するとともに、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える、冗長通信機器が提供される。
【0013】
本開示の第三の視点によれば、
光ファイバ回線の一端に接続された局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、
前記光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された前記光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続された複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)と、を備える、PON(Passive Optical Network)システムが提供される。
複数の前記ONUのうち少なくとも1つのONUである代替可能ONUは、当該代替可能ONUに所定回線で接続される通信機器が、前記所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器であり、
前記OLTは、
前記複数のONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記代替可能ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示を出力する通信機器認証部と、を備えるシステムが提供される。
【0014】
本発明の第四の視点によれば、
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)による帯域制御方法であって、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出ステップと、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別ステップと、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該ONUに接続される第一通信機器に、接続先を所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示ステップと、を備える帯域制御方法が提供される。
前記複数のONUは、自装置が一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器である、帯域制御方法が提供される。
【0015】
本発明の第五の視点によれば、
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)のコンピュータに、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)であって、自装置が一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続される前記ONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出手順と、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別手順と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUであって、接続される通信機器が、所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器である代替可能ONUに、当該ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示手順と、を実行させるためのプログラムが提供される。
【0016】
本発明の第六の視点によれば、
PON(Passive Optical Network)システムのONU(Optical Network Unit)に所定回線で接続される冗長通信機器であって、
前記所定回線を介して前記ONUに接続するWANポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WANモジュール部と、を備える冗長通信機器のコンピュータに
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信する送信手順と、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える切替手順と、を実行させるためのプログラムが提供される。
【0017】
なお、これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジトリ(non-transitory)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PONシステムにおいて、帯域の効率的な利用を維持しつつ、通信の安定に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本開示に係るPONシステムの全体構成の一例を示す全体構成図であり、(b)は、本開示に係るOLTの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】本開示に係るPONシステムの全体構成の一例を示す全体構成図である。
【
図3】(a)~(c)は、それぞれ、本開示に係るOLT、ONU、WAN冗長通信機器の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】本開示に係るONU管理テーブルの一例を説明するための説明図である。
【
図5】本開示に係る機器把握処理の一例のフローチャートである。
【
図6】本開示に係る機器把握処理の一例のフローチャートである。
【
図7】本開示に係るトラフィック監視処理の一例のフローチャートである
【
図8】本開示に係るOLTの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】本開示に係る異常切断時処理の一例のフローチャートである。
【
図10】本開示のOLT、ONU、WAN冗長通信機器のハードウェア構成の一例を示すハードウェア構成図である。
【
図11】従来のPONシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と呼ぶ。)の概要について図面を参照して説明する。なお、図面の参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向および単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。
【0021】
また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポートやインタフェースがあるが図示を省略する。また、以下の説明において、「Aおよび/またはB」は、AまたはB、もしくは、AおよびBという意味で用いる。
【0022】
<<第一実施形態>>
本実施形態の概要を説明する。
【0023】
本実施形態は、ONU(Optical Network Unit)にWAN(Wide Area Network)冗長通信機器(所定回線(例えば、有線回線)とモバイル回線のどちらにも接続することができる通信機器)が接続されているPON(Passive Optical Network)システムにおいて、特定のONUが帯域を占有する状態が発生した場合、WAN冗長通信機器が接続されていないONUの通信安定性を担保するために、WAN冗長通信機器をOLT(Optical Line Terminal)との所定回線を用いた有線通信からモバイル回線を用いた無線通信に切り替えさせる。
【0024】
以下、これを実現する本実施形態の構成を説明する。
【0025】
図1(a)は、本実施形態のPONシステム100の全体構成図である。PONシステム100は、本図に示すように、光加入者系アクセスネットワークを構成する。
【0026】
本実施形態のPONシステム100は、事業者側の通信装置(局舎側装置)であるOLT装置(以下、OLT)200と、加入者側の通信装置(光加入者装置)である複数のONU装置(以下、ONU)301、302、303、304と、を備える。
【0027】
なお、ここでは、一例として、PONシステム100がONUを4台備える場合を示す。しかし、ONUの台数は、これに限定されない。また、特に区別する必要がない場合、ONU300で代表する。
【0028】
OLT200は、光通信回線である光ファイバ回線(以下、光ファイバ)600の一端に接続される。光ファイバ600の他端は、ONU300に接続される。なお、光ファイバ600の途中には、光ファイバ600を分岐/集合するための光カプラ690が接続される。光カプラ690は1本の光伝送路(光ファイバ600)を複数に分岐させる。分岐された各光ファイバ601、602、603、604の他端には、それぞれ、ONU301、302、303、304が接続される。OLT200とONU300との間に光信号を合分波する光カプラ690が設置されることによって、1つのOLT200に対して複数のONU300が接続される。
【0029】
各ONU301、302、303には、例えば、有線ケーブル701、702、703を介して通信機器401、402、403が接続される。また、ONU(代替可能ONU)304には、例えば、有線ケーブル704を介してWAN冗長通信機器(第一通信機器)500が接続され、さらに、有線ケーブル800を介して通信機器404が接続される。
【0030】
なお、特に区別する必要がない場合は、有線ケーブル701~704は、有線ケーブル700で代表する。また、通信機器401~404は、通信機器400で代表する。
【0031】
本図の例では、ONU304に、WAN冗長通信機器500が接続されているが、WAN冗長通信機器500は、PONシステム100内の複数のONU300の少なくとも1つのONUに接続されていればよい。なお、WAN冗長通信機器500は、上述のように、有線回線とモバイル回線とに接続可能な通信機器である。すなわち、WAN冗長通信機器500は、WAN回線への接続を、例えば、有線ケーブル700と、モバイル回線との間で切り替えることが可能な機器である。
【0032】
本実施形態では、上述のように、特定のONU300が帯域を占有する状態が発生した場合、WAN冗長通信機器500の接続を有線回線からモバイル回線に切り替える。
【0033】
これを実現する、本実施形態のOLT200の機能ブロックを、
図1(b)に示す。本図に示すように、本実施形態のOLT200は、端末回線切替制御部210と、通信機器認証部220と、PON終端部230と、を備える。
【0034】
端末回線切替制御部210は、OLT200が収容する複数のONU300それぞれとの間のトラフィック量をそれぞれ検出する。そして、その合計である合計トラフィック量が予め定めた閾値(第一閾値)より大きいか否かを判別する。大きいと判別した場合、通信機器認証部220にアラーム通知を出力する。
【0035】
通信機器認証部220は、アラーム通知を受信すると、代替可能ONU304を介して、WAN回線切替指示を出力する。出力先は、当該代替可能ONU304に有線ケーブル700で接続されるWAN冗長通信機器500である。WAN回線切替指示は、接続を前記有線回線からモバイル回線に切り替える指示である。
【0036】
PON終端部230は、OLT200より上位のネットワークとのデータ通信、OLT200に収容されるONU300とのリンクの確立、リンクアップ/リンクダウンしたONU300の識別、ONU300とのデータ通信、OLT200全体の制御等を行う。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のPONシステム100では、トラフィック量が予め定めた閾値を超過した場合に、WAN冗長通信機器500をPONシステム100から切り離すため、WAN冗長通信機器500が接続されていない他のONUの通信安定性を担保することが可能になる。
【0038】
<<第二実施形態>>
次に、本発明を適用する第二実施形態を説明する。
【0039】
本実施形態のPONシステム100aの全体構成を、
図2に示す。PONシステム100aの全体構成は、基本的に、
図1(a)に示す第一実施形態のPONシステム100と同様である。ただし、OLT200の代わりに、OLT200aを備える。
【0040】
本実施形態のPONシステム100aでは、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)で動的に帯域を割り当てる。このため、第一実施形態と同様に、特定のONU300が帯域を占有すると、他のONU300の通信安定性を担保できなくなる。
【0041】
本実施形態においても、OLT200aにより、ONU300との間のトラフィック量を監視し、特定のONU300が帯域を占有する状態が発生した場合、WAN冗長通信機器500の接続を切り替える。ここでは、OLT200aとの有線回線を用いた有線通信からWANとのモバイル回線を用いた無線通信に切り替えさせる。これは、WAN冗長通信機器500が接続されていないONU300の通信安定性を担保するためである。
【0042】
これを実現する本実施形態のPONシステム100aを具体的に説明する。以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0043】
OLT200aは、複数のONU300を収容する局舎側装置である。OLT200aは、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術を用い、複数のONU300を収容する。本実施形態のOLT200aは、ONU300からOLT200aへの上り通信の帯域を、トラフィック量に応じて動的に割り当てるDBA機能を備える。OLT200aは、ONU300から送信された光信号を受信して、上位装置あるいは上位ネットワーク(例えば、インターネット等)へ転送する。また、OLT200aは、上位装置あるいは上位ネットワークからの信号を受信して、各ONU300へ転送する。OLT200aは、PONシステム100a全体およびONU300を制御監視する役割を担う。OLT200aは、光ファイバ600と光カプラ690と光ファイバ601~604とを介して、ONU301~304に接続する。
【0044】
ONU300は、光加入者装置である。インターネット等のネットワークにアクセスするための回線を光加入者に提供する。ONU300は、OLT200aから送信された光信号を受信して電気信号に変換する。そして、ONU300は、変換された電気信号を、接続される機器(例えば、通信機器、PC等)へ転送する。また、ONU300は、接続される機器から送信された電気信号を受信して光信号に変換する。そして、ONU300は、変換された光信号をOLT200aへ転送する。
【0045】
通信機器400は、ルータやスイッチングハブやパソコンなどである。また、WAN冗長通信機器500は、WAN接続を、PONシステムを介した有線接続とLTE(Long Term Evolution)等のモバイル回線を介した無線接続とを選択的に可能とする機器である。なお、WAN冗長通信機器500は、有線ケーブル800を介して通信機器404に接続される。
【0046】
図3(a)は、OLT200aの機能ブロック図である。本図に示すように、OLT200aは、端末回線切替制御部210と、通信機器認証部220と、PON終端部230と、を備える。また、接続するONU300を管理するONU管理テーブル250を保持する。さらに、閾値260を保持してもよい。閾値260は、後述するように、PON通信のトラフィックがひっ迫しているか否かを判別するために用いられる。
【0047】
図3(b)は、ONU300の機能ブロック図である。本図に示すように、ONU300は、PON終端部310と、UNI(User-Network Interface)終端部320と、を備える。
【0048】
図3(c)は、WAN冗長通信機器500の機能ブロック図である。本図に示すように、WAN冗長通信機器500は、WANポート510と、WAN接続制御部520と、LAN接続ポート部530と、を備える。WANポート510は、有線WANポート部511と、モバイル回線WANモジュール部512と、を備える。
【0049】
以下、各装置の各機能について説明する。
【0050】
[OLT]
PON終端部230は、基本的に第一実施形態の同名の構成と同様の機能を有する。すなわち、PON終端部230は、OLT200aより上位のネットワークとのデータ通信、OLT200aに収容されるONU300とのリンクの確立、収容するONU300の個体情報の識別、収容するONU300とのデータ通信、OLT200a全体の制御等を行う。
【0051】
通信機器認証部220は、基本的に第一実施形態の同名の構成と同様の機能を有する。すなわち、通信機器認証部220は、OLT200aに接続されている(OLT200aが収容する)ONU300の個体情報を管理する。ONU300が、新たにOLT200aに接続されると、PON終端部230を介して、そのONU300の個体情報を取得する。そして、取得した個体情報を、ONU管理テーブル250に登録する。また、ONU300が、OLT200aとの接続を解除した場合、PON終端部230を介して当該ONU300の個体情報を取得し、ONU管理テーブル250内の該当するデータ(レコード)を削除(消去)してもよい。なお、後述するように、切替指示に従ってOLT200aとの接続を解除した場合は、レコード自体は残しておいてもよい。
【0052】
また、通信機器認証部220は、ONU300の、UNI終端部320のリンク状態(リンクステータス)を管理する。通信機器認証部220は、ONU300から送信されるUNI終端部320のリンクステータスを示す情報(以下、単にリンクステータスと呼ぶ。)を受信する。受信したリンクステータスは、ONU管理テーブル250に、送信元のONU300に対応づけて登録する。なお、リンクステータスは、UNI終端部320に、何等かの機器が接続されているか否かを示す情報である。以下、接続されている状態を「リンクアップ」、接続されていない状態を「リンクダウン」と、呼ぶ。
【0053】
また、通信機器認証部220は、UNI終端部320に接続される機器がWAN冗長通信機器500である場合、PON終端部230を介して、WAN冗長通信機器であることを示すメッセージ(WAN冗長通信機器通知メッセージ)を受信する。なお、WAN冗長通信機器通知メッセージは、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520から送信される。
【0054】
これにより、ONU300のUNI終端部320に接続された機器が通信機器400であるか、WAN冗長通信機器500であるかを把握する。この情報についても、ONU300に対応づけてONU管理テーブル250に登録する。なお、通信機器認証部220は、管理のためONU管理テーブル250への登録を完了したことを、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520に通知する機能を備えてもよい。
【0055】
また、通信機器認証部220は、端末回線切替制御部210から、後述する超過アラームを受信した場合、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520に対して、WAN回線の接続先を切り替える、WAN回線切替指示を行う。
【0056】
端末回線切替制御部210は、PON終端部230に接続される各ONU300との間のトラフィック量を監視する。具体的には、端末回線切替制御部210は、PON終端部230に接続される各ONU300の、例えば、単位時間等の所定期間の、上り、下りトラフィック量を取得する。トラフィック量は、各ONU300について、それぞれ、独立に取得する。これらのトラフィック量は、例えば、OLT200が通常備える、トラフィックカウンタ(送受信フレーム数、送受信byte数等のカウンタ)を用いて検出し、取得される。
【0057】
端末回線切替制御部210は、また、閾値260を設定する。閾値260は、PON終端部230に接続されている各ONU300との間の、PON区間の帯域逼迫度合いを判定するために用いられる。閾値260は、第一閾値と、第二閾値とを備える。第一閾値は、OLT200aとONU300との間の、所定期間の、PON区間の合計トラフィック量の超過判定に用いられる。第二閾値は、UNI終端部320にWAN冗長通信機器500が接続されているONU300(304)との間の、所定期間の、PON区間のトラフィック量(特定トラフィック量)の超過判定に用いられる。UNI終端部320にWAN冗長通信機器500が接続されているONU300(304)の情報は、通信機器認証部220から取得する。
【0058】
なお、閾値260は、予め設定されてもよいし、処理の途中で設定してもよい。例えば、第一閾値は、OLT200とONU300との間のPON区間の通信レートに依存して決定されてもよい。例えば、1GE(Gigabit Ethernet)-PONの場合、PON区間の通信レートは、1.25Gbpsである。例えば、その8割(1.25Gbps×0.8=1Gbps)に所定期間を乗算した値を第一閾値とする、等である。また、第二閾値は、例えば、PONシステム100aに収容されるONU300の総数との関係から決定してもよい。具体的には、例えば、第一閾値/収容するONU300の総数等により算出する。これは、第一閾値を、PONシステム100aに収容されているONU300に均等に割り振った値である。
【0059】
端末回線切替制御部210は、第一閾値および第二閾値を用いて、それぞれ、合計トラフィック量および特定トラフィック量の超過の有無を判定する超過判定を行う。超過判定において超過と判定した場合は、アラーム(超過アラーム)を出力する。超過アラームの出力先は、通信機器認証部220である。
【0060】
[ONU]
PON終端部310は、PON回線の終端部であり、OLT200aからの制御指示を受け付けたり、OLT200aとの通信を確立したりする。また、PON終端部310は、UNI終端部320のリンクステータスを取得し、OLT200aの通信機器認証部220へ通知する。例えば、所定の時間間隔で、UNI終端部320のリンクステータスを監視し、何等かの機器が新たに接続されたこと(リンクアップ)、あるいは、接続されている機器との接続が切断されたこと(リンクダウン)を検出する。
【0061】
UNI終端部320は、有線ケーブル700を介して通信機器400および/またはWAN冗長通信機器500と接続する。これらの機器がONU300に接続されたこと(リンクアップ)、または、これらの機器とONU300との接続が解除されたこと(リンクダウン)を表すリンクステータスを把握する。
【0062】
[WAN冗長通信機器]
有線WANポート部511は、有線ケーブル700を介して、ONU303のUNI終端部320に接続する。モバイル回線WANモジュール部512は、LTE(Long Term Evolution)等のモバイル回線に接続する。
【0063】
WAN接続制御部520は、WAN冗長通信機器500全体の制御を行う。例えば、OLT200aの通信機器認証部220に、自身がWAN冗長通信機器500であることを通知する。具体的には、WAN冗長機器通知メッセージを生成し、OLT200aに送信する。また、OLT200aの通信機器認証部220からのWAN回線切替指示を受信すると、WAN回線の接続先を、有線回線とモバイル回線との間で切り替える。また、有線WANポート部511およびモバイル回線WANモジュール部512の機能を、有効化/無効化する制御を行う。
【0064】
LAN接続ポート部530は、有線ケーブル800を介して通信機器400とのリンクを確立し、通信を行う。
【0065】
[ONU管理テーブル]
ここで、ONU管理テーブル250に格納される情報項目を説明する。
図4は、本実施形態のONU管理テーブル250の一例を示す図である。本図に示すように、ONU管理テーブル250には、OLT200aに接続されているONU300について、それぞれ、ONU個体情報251と、リンクステータス252と、接続機器情報253と、が登録される。
【0066】
ONU個体情報251は、OLT200aに接続されるONU300毎に、当該ONU300を一意に識別する情報である。上述のように通信機器認証部220が、PON終端部230を介して、接続されたONU300から取得し、登録する。なお、各ONU300には、予め自装置を一意に識別するONU個体情報が設定される。
【0067】
リンクステータス252は、ONU310のUNI終端部320に、通信機器400またはWAN冗長通信機器500が接続されているか否かを示す情報である。いずれかの機器が接続されている場合、「リンクアップ」が登録され、いずれも接続されていない場合は、登録されない。なお、いずれも接続されていない場合は、「リンクダウン」が登録されてもよい。リンクステータス252は、通信機器認証部220が、PON終端部230を介して、接続されたONU300から取得する。
【0068】
接続機器情報253は、ONU300のUNI終端部320に接続されている機器の情報である。本実施形態の例では、例えば、ONU301~303のレコードについては、通信機器401~403がそれぞれ登録され、ONU304のレコードには、WAN冗長通信機器500が登録される。なお、接続機器が、WAN冗長通信機器500以外の場合、何も登録されなくてもよい。
【0069】
[機器把握処理]
次に、OLT200aが、ONU300のUNI終端部320に接続された機器を把握する処理の流れを説明する。まず、接続される機器が、WAN冗長通信機器500である場合の、機器把握処理の流れを説明する。
【0070】
図5は、本実施形態の、WAN冗長通信機器500が接続される場合の、機器把握処理の処理フローである。本処理は、OLT200aにONU300が接続されたことを契機に開始される。
【0071】
PONシステム100aでは、OLT200aにONU300が接続されると、OLT200aのPON終端部230とONU300のPON終端部310との間でリンクを確立するONUディスカバリプロセスが実行される(ステップS1101)。
【0072】
ONUディスカバリプロセスが正常に終了すると、接続されたONU300の個体情報は、OLT200aのPON終端部230を介して、通信機器認証部220に通知される。すなわち、ONU300のPON終端部310は、OLT200aのPON終端部230に、自装置の個体情報(ONU個体情報)を送信する(ステップS1102)。
【0073】
OLT200aの通信機器認証部220は、PON終端部230から、ONUディスカバリプロセスを完了したONU300の個体情報を取得し、ONU管理テーブル250のONU個体情報251に登録する(ステップS1103)。ここでは、ONU管理テーブル250に新たなレコードを生成し、登録する。
【0074】
また、ONU300では、OLT200aとのONUディスカバリプロセスが完了すると、UNI終端部320を有効にする(ステップS1104)。これにより、UNI終端部320に接続された通信機器400および/またはWAN冗長通信機器500とリンクを確立できる状態となる。
【0075】
リンクを確立できる状態になると、UNI終端部320と接続先機器(ここでは、WAN冗長通信機器500)との間でリンクを確立する、ONU UNIディスカバリプロセスが実行される(ステップS1105)。
【0076】
当該ONU300のPON終端部310は、UNI終端部320のリンクステータスを監視する。そして、リンクアップを検出すると(ステップS1106)、リンクアップ通知を、OLT200aの通信機器認証部220へ送信する(ステップS1107)。なお、リンクアップは、通信機器400またはWAN冗長通信機器500とリンクが確立したことである。また、リンクアップ通知は、リンクアップしたことを意味する通知である。
【0077】
通知を受けた、OLT200aの通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250の、送信元のONU300のONU個体情報251に紐づけて、リンクステータス252に、UNI終端部320がリンクアップしたことを登録する(ステップS1108)。すなわち、送信元のONU300のレコードの、リンクステータス252に、「リンクアップ」を登録する。
【0078】
一方、上述のONU UNIディスカバリプロセスにより、ONU300との間でリンクが確立すると、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520は、WAN冗長通信機器通知メッセージを生成する(ステップS1109)。なお、WAN冗長通信機器通知メッセージは、WAN冗長通信機器500であることを通知するメッセージである。そして、WAN冗長通信機器通知メッセージを、有線WANポート部511に接続されたONU300を介して、OLT200aの通信機器認証部220に対して当該メッセージを送信する(ステップS1110)。
【0079】
メッセージを受信したOLT200aの通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250にWAN冗長通信機器500を登録する(ステップS1111)。ここでは、ONU管理テーブル250の、当該ONU300のONU個体情報251に紐づけて、接続機器情報253に、WAN冗長通信機器500であることを意味する情報を登録する。そして、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520に対して、登録が完了したことを意味する通知(登録完了通知)を送信する(ステップS1112)。
【0080】
次に、接続される機器が、通信機器400である場合の、機器把握処理の流れを説明する。
【0081】
図6は、通信機器400が接続される場合の、機器把握処理の処理フローである。本処理は、OLT200aにONU300が接続されたことを契機に開始される。
【0082】
OLT200aとONU300との間のリンク確立処理(ステップS1101~S1103)、および、ONU300と通信機器400との間のリンク確立処理(S1104~S1108)については、上記WAN冗長通信機器500の場合と同様である。
【0083】
接続される機器が通信機器400の場合、通信機器400は、ONU300と接続を確立した場合であっても、OLT200aに対し、何もメッセージを送信しない。
【0084】
従って、OLT200aの通信機器認証部220は、ステップS1108の後、所定期間、何もメッセージを受信しない場合、接続された機器が通信機器400と把握する。そして、ONU管理テーブル250の、当該ONU300のONU個体情報251に紐づけて、接続機器情報253に、通信機器400であることを意味する情報を登録する。なお、ステップS1108は、上述のように、UNI終端部320がリンクアップしたとの通知を受け取り、ONU管理テーブル250に登録する処理である。
【0085】
ここでは、通信機器認証部220は、所定期間経過したかどうかを判別する(ステップS1121)。そして、何もメッセージを受信せずに所定期間経過した場合、OLT200aの通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250に通信機器400と登録する(ステップS1122)。ここでは、ステップS1108でリンクステータス252に、「リンクアップ」を登録したレコードの、接続機器情報253に、通信機器400であることを意味する情報を登録する。
【0086】
なお、通信機器認証部220が判別に用いる「所定期間」は、予め設定しておく。
【0087】
なお、所定期間、何も情報を受け取らない場合、通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250の接続機器情報253に、何も情報を登録しなくてもよい。この場合、OLT200aは、リンクステータス252に、リンクアップが登録され、かつ、接続機器情報253に何も登録されていないレコードについては、接続機器は、通信機器400(WAN冗長通信機器500ではない)と解釈する。
【0088】
OLT200aは、1台のONU300が接続される毎に、この機器把握処理を実行する。これにより、OLT200aは、接続されたONU300のUNI終端部320に接続された機器が、通信機器400であるか、WAN冗長通信機器500であるかを把握することができる。
【0089】
[トラフィック監視処理]
次に、PON回線のトラフィックを監視するトラフィック監視処理の流れを説明する。本実施形態のOLT200aは、PONシステム100a内のPON回線のトラフィックを監視する。PON回線の通信量がひっ迫した場合(特定のONU300が帯域を専用する状態が発生した場合)、通信を安定させるために、WAN冗長通信機器500を、OLT200aの有線通信からモバイル回線を用いた通信に切り替える。
【0090】
図7は、トラフィック監視処理の処理フローである。本処理は、例えば、OLT200aに複数のONU300が接続され、かつ、そのうちの少なくとも1台が、WAN冗長通信機器500が接続されたONU300(以下、代替可能ONU300と呼ぶ。)である状態となったことを契機に開始される。具体的には、ONU管理テーブル250に、複数のレコードが登録され、そのうち、少なくとも1つのレコードの、リンクステータス252が「リンクアップ」、かつ、接続機器情報253が「WAN冗長通信機器」である状態となったことを契機に開始される。
【0091】
なお、ここでは、第一閾値は、予め設定されているものとする。
【0092】
OLT200aの端末回線切替制御部210は、トラフィックの監視対象のONU300(監視対象ONU)を特定するとともに、第二閾値を算出する(ステップS1201)。ここでは、端末回線切替制御部210は、ONU管理テーブル250から、リンクステータス252がリンクアップであるレコードの、ONU個体情報251を取得する。ONU個体情報251を取得したONU300が、監視対象ONUである。さらに、ONU個体情報251を取得したONU300の台数を用いて、例えば、上記手法で、第二閾値を算出する。
【0093】
端末回線切替制御部210は、さらに、接続機器情報253が、WAN冗長通信機器500であるONU(代替可能ONU)300のONU個体情報251も特定する(ステップS1202)。代替可能ONU300は、アラーム通知を出力するか否かの判別対象である。本実施形態の例では、ONU304である。なお、代替可能ONU300は、監視対象ONUに含まれる。
【0094】
端末回線切替制御部210は、各監視対象ONUとの間のトラフィックの監視を開始する(ステップS1203)。そして、超過判定を行う。ここでは、端末回線切替制御部210は、所定の時間間隔で、各監視対象ONU300との間のトラフィック量を検出し、それらを合計することにより、合計トラフィック量を算出する(ステップS1204)。そして、算出した合計トラフィック量が、第一閾値を超えたか(合計トラフィック量>第一閾値)を判別する(ステップS1205)。超えていない場合は、ステップS1204へもどり、処理を継続する。
【0095】
一方、合計トラフィック量が第一閾値を超えた場合、端末回線切替制御部210は、特定トラフィック量が第二閾値を超えたか(特定トラフィック量>第二閾値)を判別する(ステップS1206)。なお、特定トラフィック量は、上述のように、ステップS1202で特定した代替可能ONU300(ONU304)との間のトラフィック量である。超えていない場合は、ステップS1204へもどり、処理を継続する。
【0096】
一方、特定トラフィック量が第二閾値を超えた場合、端末回線切替制御部210は、超過判定で超過と判定し、通信機器認証部220に超過を意味するアラーム(超過アラーム)を通知する(ステップS1207)。
【0097】
超過アラームの通知を受けた通信機器認証部220は、代替可能ONU300(ONU304)に接続されているWAN冗長通信機器500に対し、WANの接続を切り替える指示であるWAN回線切替指示を生成し、送信する(ステップS1208)。ここでは、通信機器認証部220は、WAN冗長通信機器500の、WAN接続制御部520に対し、ONU304を介して、当該WAN回線切替指示を送信する。
【0098】
WAN回線切替指示を受信したWAN接続制御部520は、まず、WAN回線切替指示を受信したことを、OLT200aの通信機器認証部220に応答(返信)する(ステップS1209)。その後、WAN回線の接続を、有線WANポート部511から、モバイル回線WANモジュール部512は切り替える(ステップS1210)。このとき、WAN接続制御部520は、有線WANポート部511の機能を無効化し、ONU304のUNI終端部320とのリンクを切断する(ステップS1211)。
【0099】
PON終端部310は、リンクダウンを検出すると(ステップS1212)、OLT200aの通信機器認証部220に通知するリンクダウン通知を送信する(ステップS1213)。なお、PON終端部310は、ONU304の、UNI終端部320のリンクステータスを監視する。また、リンクダウンは、UNI終端部320において、リンクが切断されたことである。
【0100】
リンクダウン通知を受信した通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250を更新する(ステップS1214)。ここでは、通知元のONU300(ここでは、ONU304)のレコードの、リンクステータス252の登録を「リンクダウン」に変更し、接続機器情報253のデータを消去する。なお、ONU個体情報251は、そのまま維持、すなわち、レコード自体は残してもよい。
【0101】
以上のように、WAN冗長通信機器500において、WAN回線の接続を、有線WANポート部511から、モバイル回線WANモジュール部512は切り替える。これにより、このWAN冗長通信機器500を接続する代替可能ONU300(本実施形態では、ONU304)は、PON通信の回線を用いなくなり、PONシステム100aから外れる。
【0102】
以上説明したように、本実施形態によれば、OLT200aの制御によりPON区間の回線混雑を把握する。そして、OLT200aに収容されているONU300との間のPON通信の回線が混雑している場合、代替可能なONU300を、PONシステム100aから外す。これにより、PONシステム100a内の通信混雑を緩和する。すなわち、トラフィック量が閾値を超過したWAN冗長通信機器500をPONシステム100aから切り離すため、WAN冗長通信機器500が接続されていない他のONU300の通信安定性を担保することが可能になる。
【0103】
代替可能ONU300に接続されるWAN冗長通信機器500であれば、モバイル回線を通じて通信を継続することができるため、PONシステム100a全体を考慮すると、モバイル回線とPON回線との両方の通信帯域を効率的に使用できる。すなわち、PONシステム100a全体で通信帯域を効率的に利用することが可能となる。
【0104】
さらに、本実施形態によれば、合計トラフィック量と特定トラフィック量との2段階判定を行う。すなわち、OLT200aと代替可能ONU300(ONU304)との間のトラフィック量の超過判定も行い、超過している場合、当該代替可能ONU300を、PONシステム100aから外す。一般に、PONシステム100aから外されたONU300に接続するWAN冗長通信機器500のユーザは、LTE等の通信料金を支払う必要がある。そして、その料金は、従量制である場合もある。しかしながら、本実施形態のような制御を行うことにより、不必要に切り替える制御が防止され、WAN冗長通信機器500のユーザに、料金面での不要な負担を強いることを低減できる。
【0105】
従って、本実施形態によれば、PONシステム100a全体の通信を安定させ、なおかつ、効率的に通信帯域を利用できる。
【0106】
<<第三実施形態>>
次に、本発明を適用する第三実施形態を説明する。
【0107】
WAN冗長通信機器500は、通信の安定性や堅牢性を高めるためにWAN冗長構成を具備している。ここで、
図7のトラフィック監視処理の後、WAN冗長通信機器500が接続しているモバイル回線に問題があり、モバイル回線による接続が切断された場合を想定する。
【0108】
モバイル回線が異常切断された場合、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520は、有線WANポート部511を有効にする。それに伴い、代替可能ONU300(ONU304)のPON終端部310は、UNI終端部320のリンクステータスが、リンクアップに変更されたことを検出し、OLT200aに通知する。
【0109】
しかしながら、PON回線がひっ迫している場合、すなわち、合計トラフィック量が第一閾値を超え、特定トラフィック量が第二閾値を超える場合、短期間で、再度、OLT200aから、WAN回線切替指示を受信することも考えられる。WAN回線切替指示は、上述のように、WAN冗長通信機器500のWAN接続先をモバイル回線へ切り替える指示(通知)である。
【0110】
この時点でモバイル回線が復旧していない場合、WAN冗長通信機器500は、モバイル回線に接続できないため、WAN接続制御部520がWAN回線の切り替えループに陥る可能性がある。
【0111】
本実施形態では、このような状況にも対応可能な実施形態である。すなわち、WAN冗長通信機器500が切り替えループに陥ることを回避する実施形態である。
【0112】
本実施形態のPONシステムの全体構成は、第二実施形態のPONシステム100aと基本的に同様である。ただし、本実施形態では、OLT200aの代わりに、OLT200bを備える。また、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520の機能が異なる。以下、本実施形態について、第二実施形態と、異なる点に主眼をおいて説明する。
【0113】
本実施形態のWAN接続制御部520は、第二実施形態の機能に加え、モバイル回線WANモジュール部512とのリンクが異常切断されたことを検知する機能と、後述するOLT200bの通信機器認証部220へモバイル回線WANモジュール部512の接続が異常切断されたことを意味する通知(異常切断通知)を送信する機能と、を備える。
【0114】
また、本実施形態のOLT200bは、第二実施形態のOLT200aの構成に加え、時間をカウントするタイマ270を備える。
図8に、本実施形態のOLT200bの機能ブロック図を示す。なお、OLT200aと同名の構成は、少なくとも同名の構成と同じ機能を備える。
【0115】
通信機器認証部220は、さらに、WAN冗長通信機器500から送信される異常切断通知を受信すると、ONU管理テーブル250の、当該異常切断通知の送信元のONU300に対応するレコードの接続機器情報253をマスクする。マスクする期間(マスク期間)は、予め定めておく。なお、マスク期間経過後、通信機器認証部220は、当該接続機器情報253に対するマスクを解除する。
【0116】
マスク期間は、タイマ270にて計測する。すなわち、通信機器認証部220は、異常切断通知を受信すると、タイマ270に、時間の計測を開始させる。
【0117】
[異常切断時処理]
図9に、WAN冗長通信機器500のモバイル回線WANモジュール部512が異常切断された場合の、異常切断時処理の処理フローを示す。
【0118】
WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520は、モバイル回線WANモジュール部512のリンクが異常切断されたことを検出する(ステップS2101)。
【0119】
WAN接続制御部520は、有線WANポート部511の機能を有効にする(ステップS2102)。これにより、WAN冗長通信機器500は、有線WANポート部511を介して、ONU300に接続される。すなわち、PON回線で、OLT200bに接続される。
【0120】
WAN冗長通信機器500の有線WANポート部511の機能が有効になると、有線ケーブル700で接続されたONU300のUNI終端部320は、WAN冗長通信機器500との間で、リンクを確立する(ステップS2103)。ここでは、第二実施形態同様、PON終端部310は、ONU UNIディスカバリプロセスを実行し、UNI終端部320と、WAN冗長通信機器500との間のリンクを確立する。
【0121】
PON終端部310は、UNI終端部320のリンクステータスを監視する。そして、ONU300が、WAN冗長通信機器500とリンクアップしたことを検出すると(ステップS2104)、リンクアップしたことを、OLT200bの通信機器認証部220へリンクアップ通知を送信する(ステップS2105)。
【0122】
リンクアップ通知を受信したOLT200bの通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250に登録する(ステップS2106)。ここでは、ONU300のUNI終端部320がリンクアップしたことを、送信元のONU300の個体情報(ここでは、ONU304)に紐づけて登録する。
【0123】
なお、このとき、ONU300は、リンクアップ通知に自装置の個体情報を含めて送信する。通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250に、当該個体情報をONU個体情報251として有するレコードがある場合、当該レコードのリンクステータス252に登録する。一方、当該レコードがない場合、新たなレコードを追加して登録する。
【0124】
WAN冗長通信機器500がONU300にリンクアップすると、WAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520は、WAN冗長機器通知メッセージを生成する(ステップS2107)。リンクアップは、WAN冗長通信機器500の有線WANポート部511と有線ケーブル700で接続されたONU300のUNI終端部320との間でなされる。WAN冗長機器通知メッセージは、OLT200bの通信機器認証部220に、WAN冗長通信機器500であることを通知するためのメッセージである。このとき、WAN冗長機器通知メッセージには、モバイル回線WANモジュール部512が異常切断したことを意味する通知(異常切断通知)を含める。そして、WAN接続制御部520は、有線WANポート部511に接続されたONU300を介して、OLT200bの通信機器認証部220に対して当該メッセージを送信する(ステップS2108)。
【0125】
異常切断通知を含むWAN冗長機器通知メッセージを受信したOLT200bの通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250に登録する(ステップS2109)。ここでは、当該ONU300のONU個体情報251に紐づけて、接続機器情報253に、WAN冗長通信機器500であることを意味する情報を登録する。
【0126】
OLT200bの通信機器認証部220は、WAN冗長通信機器500からモバイル回線が異常切断された通知を受信したか否かの判定を行う(ステップS2110)。すなわち、WAN冗長機器通知メッセージに異常切断通知が含まれているか否かを判別する。
【0127】
WAN冗長通信機器500から異常切断通知を受信している場合、通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250の、該当するONU300の、接続機器情報253をマスクする(ステップS2111)。ここでは、該当するONU300の、UNI終端部320に接続された通信機器が、WAN冗長通信機器500であることをマスクする。
【0128】
そして、通信機器認証部220は、タイマ270によるマスク期間のカウントをスタートする(ステップS2112)。マスク期間は、事前に設定しておく。
【0129】
マスク期間が経過すると(ステップS2113)、通信機器認証部220は、ONU管理テーブル250のマスクを解除する(ステップS2114)。マスクの解除を終えた通信機器認証部220は、登録完了通知をWAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520に送信する(ステップS2115)。
【0130】
なお、ステップS2110において、WAN冗長通信機器500から異常切断通知を受信していない場合、そのまま、ステップS2115へ移行する。そして、OLT200bの通信機器認証部220は、登録完了通知をWAN冗長通信機器500のWAN接続制御部520に送信する。
【0131】
なお、本処理の間、OLT200bは、トラフィック量の監視を続ける。そして、通信機器認証部220は、端末回線切替制御部210から超過アラーム通知を受信した場合であっても、接続機器情報253がマスクされている場合、当該WAN冗長通信機器500へWAN回線切替指示を送信しない。なお、超過アラーム通知は、合計トラフィック量が第一閾値を超過した場合、端末回線切替制御部210から送信される。
【0132】
以上のように、本実施形態によれば、上記各実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、WAN冗長通信機器500のモバイル回線WANモジュール部512が異常切断した場合において、OLT200bの制御によりWAN接続制御部520がWAN回線の切り替えループに陥ることを防ぐことができる。
【0133】
<変形例1>
なお、上記各実施形態では、PONシステム100(100a、以下100で代表する。他も同様。)において、合計トラフィック量が第一閾値を超え、かつ、特定トラフィック量が第二閾値を超えている場合、WAN冗長通信機器500を接続しているONU300を、PONシステム100から切り離している。しかし、この手法に限定されない。
【0134】
例えば、合計トラフィック量が第一閾値を超えた場合、特定トラフィック量に依らず、WAN冗長通信機器500を接続しているONU300を、PONシステム100から切り離してもよい。
【0135】
本変形例によれば、上記実施形態に比べ、判定回数が少ないため、より簡易な処理で、所望の効果を達成できる。
【0136】
<変形例2>
また、上記各実施形態および変形例では、WAN冗長通信機器500を接続しているONU300(以下、代替可能ONU300)が1台である場合を例にあげて説明した。しかし、OLT200(200a、200b)には、代替可能ONU300が複数接続されていてもよい。
【0137】
この場合、例えば、上記ステップS1206において、特定トラフィック量が第二閾値を超えている全ての代替可能ONU300をPONシステム100から切り離すよう構成してもよい。
【0138】
また、ステップS1206において、特定トラフィック量が第二閾値を超えている代替可能ONU300のうち、最もトラフィック量の大きい代替可能ONU300のみ、PONシステム100から切り離すよう構成してもよい。そして、この場合、1の代替可能ONU300を切り離す毎に(例えば、トラフィック監視処理のステップS1206でYesと判別された後に)、第二閾値を再算出し、更新する。すなわち、PONシステム100内の、最新のONU300(代替可能ONU300を含む)の台数を用いて、算出する。そして、以降の処理は、更新後の第二閾値を用いて行う。
【0139】
さらに、第二閾値は用いず、ステップS1205において、合計トラフィック量が第一閾値を超えた場合、代替可能ONU300の中で、最もトラフィック量の大きい代替可能ONU300を、PONシステム100から切り離すよう構成してもよい。
【0140】
さらに、上記トラフィック監視処理において、ステップS1205でYesと判別された後に、端末回線切替制御部210は、ONU管理テーブル250を参照し、切り離し可能な代替可能ONU300が存在するか否かを判別してもよい。ない場合は、S1206以降の処理を行わない。
【0141】
<変形例3>
上記各実施形態および変形例では、第一閾値、第二閾値、第三閾値は、予め設定されているものとして説明しているが、これに限定されない。例えば、トラフィック監視処理の最初に、端末回線切替制御部210が、接続されているONU300の台数に応じて算出するよう構成してもよい。
【0142】
<変形例4>
また、上記各実施形態および変形例では、トラフィック監視処理は、複数のONU300が登録され、そのうち少なくとも1台が、代替可能ONU300である状態となったことを契機に開始しているが、これに限定されない。例えば、ユーザからの指示に応じて開始し、ユーザからの指示に従って、終了してもよい。
【0143】
<変形例5>
また、上記各実施形態および変形例では、OLT200は、リンクアップ通知受信後、WAN冗長機器通知メッセージを受信したり、所定期間待機したりすることにより、ONU300のステータスを収集している。しかし、ONU300のステータスの収集手法は、これに限定されない。例えば、OLT200側から、所定の時間間隔で、ONU個体情報を受信したONU300に対し、問い合わせ、リンクステータスを収集してもよい。
【0144】
また、トラフィック量について、ONU300側で検出し、OLT200は、所定の時間間隔で、各ONU300からトラフィック量を収集してもよい。
【0145】
[ハードウェア構成]
なお、上述のOLT200、ONU300、WAN冗長通信機器500は、例えば、汎用の情報処理装置で実現されてもよい。
【0146】
汎用の情報処理装置は、例えば、
図10に示すように、内部バスにより相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)191と、主記憶装置(メモリ)192と、補助記憶装置193と、通信I/F194と、拡張I/F195と、を備える。
【0147】
CPU191は、例えば、補助記憶装置193に記憶されたプログラムを主記憶装置192にロードして実行することにより、上記各機能を実現するとともに、装置全体を統括的に制御する。なお、CPU191の代わりにMPU(Micro Processing Unit)等の1以上のプロセッサを用いてもよい。
【0148】
主記憶装置192は、RAM(Random Access Memory)等のメモリである。主記憶装置192は、装置が実行するプログラム等を、CPU191が処理する際のワーク領域である。
【0149】
補助記憶装置193は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。補助記憶装置193は、装置が実行する各種プログラムを記憶する。なお、補助記憶装置193は、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、DVD等の記憶媒体を備えてもよい。
【0150】
なお、補助記憶装置193に記憶されたプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されたプログラム製品として提供することができる。補助記憶装置193は、非一時的なコンピュータ可読記録媒体に記録された各種プログラムを中長期的に記憶することに利用することが可能である。
【0151】
通信I/F194は、有線または無線による信号、データの入出力のインタフェースである。本実施形態では、光ファイバ600、有線ケーブル700、モバイル回線等が接続される。各装置は、通信I/F194を介して他装置との間で、処理に必要な情報(データ)を送受信する。
【0152】
拡張I/F195は、表示装置、入力装置等を接続するインタフェースである。表示装置は、例えば、液晶モニタ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受け付ける装置である。
【0153】
各装置の上記各機能は、それぞれ、補助記憶装置193に記憶されたプログラムを、CPU191が、主記憶装置192にロードして実行することにより実現される。
【0154】
なお、ONU管理テーブル250は、例えば、補助記憶装置193に構築される。また、閾値260も補助記憶装置193に記憶される。
【0155】
なお、各装置のハードウェア構成は、これに限定されない。また、各装置の各機能(サーバ)は、例えば、各処理専用の集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SOC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などで実装されてもよい。
【0156】
また、各装置の上記各機能を実現するプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【0157】
なお、上述の説明で用いた処理の流れでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。例えば、各処理を並行して実行する等、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0158】
以上、本発明の各実施形態および変形例を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、当業者が理解し得る様々な変更を行うことができる。そして、各実施形態および変形例は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。また、例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0159】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)であって、
収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該代替可能ONUに所定回線で接続される第一通信機器に、接続先を前記所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する通信機器認証部と、を備え、
前記複数のONUは、前記OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器である、PONシステムのOLT。
(付記2)
付記1記載のPONシステムのOLTにおいて、
前記端末回線切替制御部は、前記合計トラフィック量が前記第一閾値より大きい場合、さらに、前記代替可能ONUとの間の前記トラフィック量である特定トラフィック量を検出し、当該特定トラフィック量が予め定めた第二閾値よりも大きい場合のみ、前記アラーム通知を出力する、ことが望ましい。
(付記3)
付記1または2記載のPONシステムのOLTにおいて、
収容する前記ONUを管理するONU管理テーブルをさらに備え、
前記通信機器認証部は、
前記第一通信機器が前記代替可能ONUに接続された際、当該代替可能ONUを介して、当該第一通信機器からメッセージを受信し、
当該メッセージを受信した場合、前記代替可能ONUを特定する情報に紐づけて、接続機器情報を前記ONU管理テーブルに登録し、
当該接続機器情報は、当該代替可能ONUに接続された機器が、前記第一通信機器であることを示す情報であることが望ましい。
(付記4)
付記3記載のPONシステムのOLTにおいて、
前記通信機器認証部は、
前記代替可能ONUを介して前記第一通信機器から異常切断通知を受信した場合、前記代替可能ONUに紐づけて前記ONU管理テーブルの前記接続機器情報に当該代替可能ONUに接続された機器が、前記第一通信機器であることを示す情報を登録するとともに、
前記ONU管理テーブルの前記接続機器情報を予め定めたマスク期間、マスクし、
前記異常切断通知は、接続を前記モバイル回線に切り替え後の前記第一通信機器から送信される、当該モバイル回線が異常切断されたことを意味する通知であり、
前記ONU管理テーブルにおいて、前記接続機器情報がマスクされている場合、前記通信機器認証部は、前記アラーム通知が出力されても、当該第一通信機器に前記切替指示を出力しないことが望ましい。
(付記5)
所定回線を介してONU(Optical Network Unit)に接続するWAN(Wide Area Network)ポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WANモジュール部と、
接続先を、前記所定回線と前記モバイル回線との間で切り替える接続制御部と、を備え、
前記接続制御部は、
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するPONシステムの局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信するとともに、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える、冗長通信機器。
(付記6)
付記5記載の冗長通信機器において、
前記接続制御部は、
前記モバイル回線への接続が、当該モバイル回線の異常で切断された場合、接続先を前記所定回線に切り替え、前記ONUに接続し、当該ONUを介して、前記OLTに、当該モバイル回線が異常切断されたことを意味する通知を送信することが望ましい。
(付記7)
光ファイバ回線の一端に接続された局舎側装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、
前記光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された前記光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続された複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)と、を備え、
複数の前記ONUのうち少なくとも1つのONUである代替可能ONUは、当該代替可能ONUに所定回線で接続される通信機器が、前記所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器であり、
前記OLTは、
前記複数のONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出し、前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、
前記アラーム通知が出力されると、前記代替可能ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示を出力する通信機器認証部と、を備える、PON(Passive Optical Network)システム。
(付記8)
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)による帯域制御方法であって、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)それぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出ステップと、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別ステップと、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、当該ONUに接続される第一通信機器に、接続先を所定回線からモバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示ステップと、を備え、
前記複数のONUは、自装置が一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、
前記代替可能ONUは、接続される通信機器が、前記第一通信機器である前記ONUであり、
前記第一通信機器は、前記所定回線と前記モバイル回線とに接続可能な通信機器である、帯域制御方法。
(付記9)
PON(Passive Optical Network)システムのOLT(Optical Line Terminal)のコンピュータに、
当該OLTが収容する、複数の光加入者装置であるONU(Optical Network Unit)であって、自装置が一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続される前記ONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出するトラフィック検出手順と、
検出した前記トラフィック量の合計である合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する判別手順と、
前記アラーム通知が出力されると、前記複数のONUの少なくとも1つのONUであって、接続される通信機器が、所定回線とモバイル回線とに接続可能な第一通信機器である代替可能ONUに、当該ONUを介して、前記第一通信機器に、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を出力する切替指示手順と、を実行させるためのプログラム。
(付記10)
PON(Passive Optical Network)システムのONU(Optical Network Unit)に所定回線で接続される冗長通信機器であって、
前記所定回線を介して前記ONUに接続するWAN(Wide Area Network)ポート部と、
モバイル回線に接続するモバイル回線WANモジュール部と、を備える冗長通信機器のコンピュータに、
前記ONUに接続すると、当該ONUを収容するOLT(Optical Line Terminal)に対し、当該ONUを介してメッセージを送信する送信手順と、
接続する前記ONUを介して前記OLTから接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える指示である切替指示を受信すると、接続先を前記所定回線から前記モバイル回線に切り替える切替手順と、を実行させるためのプログラム。
なお、付記7の形態は、付記1および/または付記5と同様に、付記2-4および/または付記6の形態に展開することが可能である。付記8および付記9の形態は、付記1と同様に、付記2-4の形態に展開することが可能である。付記10の形態は、付記5と同様に、付記6の形態に展開することが可能である。
【0160】
なお、特許文献1の開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし変形例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし変形例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0161】
100:PONシステム、100a:PONシステム、191:CPU、192:主記憶装置、193:補助記憶装置、194:通信I/F、195:拡張I/F、
200:OLT、200a:OLT、200b:OLT、210:端末回線切替制御部、220:通信機器認証部、230:PON終端部、250:ONU管理テーブル、251:ONU個体情報、252:リンクステータス、253:接続機器情報、260:閾値、270:タイマ、
300:ONU、301:ONU、302:ONU、303:ONU、304:ONU、310:PON終端部、320:UNI終端部、
400:通信機器、401:通信機器、402:通信機器、403:通信機器、404:通信機器、
500:WAN冗長通信機器、510:WANポート、511:有線WANポート部、512:モバイル回線WANモジュール部、520:WAN接続制御部、530:LAN接続ポート部、
600:光ファイバ、601:光ファイバ、602:光ファイバ、603:光ファイバ、604:光ファイバ、690:光カプラ、
700:有線ケーブル、701:有線ケーブル、702:有線ケーブル、703:有線ケーブル、704:有線ケーブル、
800:有線ケーブル、
900:PONシステム、920:OLT、930:ONU、940:通信機器、960:光ファイバケーブル、969:光カプラ、970:有線ケーブル
【要約】
【課題】PONシステムにおいて、帯域の効率的な利用を維持しつつ、通信の安定に貢献する。
【解決手段】収容する、複数のONUそれぞれとの間のトラフィック量を検出し、合計トラフィック量が予め定めた第一閾値より大きい場合、アラーム通知を出力する端末回線切替制御部と、アラーム通知が出力されると、複数のONUの少なくとも1つのONUである代替可能ONUを介して、代替可能ONUに所定回線で接続される第一通信機器に、接続先を所定回線からモバイル回線に切り替える切替指示を出力する通信機器認証部と、を備え、複数のONUは、OLTが一端に接続される光ファイバ回線の途中に挿入された光カプラによって分岐された当該光ファイバ回線の他端にそれぞれ接続され、代替可能ONUは、接続される通信機器が、第一通信機器であり、第一通信機器は、所定回線とモバイル回線とに接続可能な通信機器である、PONシステムのOLT。
【選択図】
図1