(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】耳鼻取付体温計
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20240827BHJP
G01J 5/04 20060101ALI20240827BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/04
G01J5/00 101G
(21)【出願番号】P 2024041724
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523458531
【氏名又は名称】WhiteLab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-176940(JP,U)
【文献】特開2021-184801(JP,A)
【文献】特開2004-249115(JP,A)
【文献】特開2013-202260(JP,A)
【文献】特開2021-048920(JP,A)
【文献】特開2004-300598(JP,A)
【文献】特開平06-081203(JP,A)
【文献】特開2017-038911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳孔または鼻孔に装着する耳鼻取付体温計であって、
略つぶ状または略ブロック状の外形状を有する筐体部と、
前記筐体部に取り付けられ装着者の皮膚と前記筐体部との隙間を塞ぐパッキンと、
前記筐体部において前記パッキンを取り付ける取付部内に設けられる温度センサーと、
前記筐体部の表面に設けられ、少なくとも前記温度センサーによる計測結果である体温を表示する表示部と、を有し、
前記パッキンは、前記取付部に接続する基端側から前記基端側とは反対側の先端側へ延びる筒状の内筒部と、前記内筒部の前記先端から前記内筒部側を覆うようにドーム状に広がる外フランジ部と、を有し、
前記表示部の表示面の法線方向は、前記パッキンの前記内筒部の中心軸が前記基端側から前記先端側へ向かう方向である内筒軸方向に平行な方向に対して、90度より大きく180より小さい角度をなし、
前記パッキンの前記外フランジ部は、前記内筒部との対向面にマイクロビーズを含む断熱部を有する耳鼻取付体温計。
【請求項2】
前記パッキンは、前記筐体部の前記取付部に対して着脱自在である請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項3】
前記パッキンの材質は、シリコンまたはウレタンを含む請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項4】
前記外フランジ部の剛性は、前記内筒部の剛性より低い請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項5】
前記筐体部の表面の一部を構成しており装着者の皮膚に接触する接触部を介して体温が伝わり発電する熱発電素子を有する請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項6】
前記温度センサーの計測結果を無線送信する送信部を有する請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項7】
前記筐体部は、前記表示部の表示面とは反対方向を向き外耳孔装着時に装着者の耳甲介に対向する耳甲介対向面を有し、
前記耳甲介対向面と前記表示面との距離が、15mm以下である請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項8】
前記筐体部は、半径15mmの仮想球体内に収まる外形状である請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【請求項9】
前記筐体部の内部に配置され前記表示部および前記温度センサーに供給する電気を蓄える蓄電部を有し、
前記蓄電部は、前記温度センサーより前記表示部の近くに配置される請求項
1に記載の耳鼻取付体温計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の外耳孔または鼻孔に装着する耳鼻取付体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
体温を計測する体温計としては、脇下に挟んで使用する脇下体温計などが広く普及している。しかしながら、脇下体温計では、測定時において体温計を脇下に挟んだ姿勢を維持する必要がある。そのため、そのような姿勢を維持することが難しい乳幼児や、特定の姿勢を維持しなくても計測が可能な体温計として、外耳孔などに装着する体温計が提案されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
【0003】
しかしながら、外耳孔などに装着する従来の体温計では、プローブの筐体等と皮膚の隙間から流入する外気により外耳孔内の温度が安定しない場合があり、測定精度の観点で課題がある。また、外耳孔などに装着する従来の体温計では、筐体が耳から取れやすいなど、装着性の観点でも課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-254744号公報
【文献】特開平2-52634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、センサーが配置される空間に気密性の高い密閉空間を形成するとともに、小型で装着位置から取れにくく良好な装着性を奏する耳鼻取付体温計に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る耳鼻取付体温計は、
外耳孔または鼻孔に装着する耳鼻取付体温計であって、
略つぶ状または略ブロック状の外形状を有する筐体部と、
前記筐体部に取り付けられ装着者の皮膚と前記筐体部との隙間を塞ぐパッキンと、
前記筐体部において前記パッキンを取り付ける取付部内に設けられる温度センサーと、
前記筐体部の表面に設けられ、少なくとも前記温度センサーによる計測結果である体温を表示する表示部と、を有し、
前記パッキンは、前記取付部に接続する基端側から前記基端側とは反対側の先端側へ延びる筒状の内筒部と、前記内筒部の前記先端から前記内筒部側を覆うようにドーム状に広がる外フランジ部と、を有し、
前記表示部の表示面の法線方向は、前記パッキンの前記内筒部の中心軸が前記基端側から前記先端側へ向かう方向である内筒軸方向に平行な方向に対して、90度より大きく180より小さい角度をなす。
【0007】
本発明に係る耳鼻取付体温計は、内筒部と外フランジ部とを有するパッキンが筐体部と皮膚との間の隙間を塞いで外耳道および鼻腔に気密度の高い密閉空間を形成するため、精度の良い体温計測を比較的短時間で行うことができる。また、パッキンの外フランジ部が弾性的に皮膚に密着するため装着性が良好であり、取れにくく長時間の連続測定が可能である。また、表示面の法線方向が、内筒軸方向に平行な方向に対して90度より大きく180より小さい(直線的でない)角度をなすことにより、外耳孔装着時における筐体部の皮膚に対する密着性が向上して装着性が高まるとともに、装着状態において表示部を外部から視認しやすくなる。
【0008】
また、たとえば、前記パッキンは、前記筐体部の前記取付部に対して着脱自在であってもよい。
【0009】
パッキンを着脱自在とすることにより、たとえば医療機関等で耳鼻取付体温計を使用する際にパッキンを使い捨てにすることで、便利かつ衛生的に使用することが可能である。また、外耳孔および鼻孔のサイズは人それぞれであるため、パッキンのサイズを装着者に合わせて使用することで、装着性と密閉性が向上する。
【0010】
また、たとえば、前記パッキンの材質は、シリコンまたはウレタンを含んでもよい。
【0011】
パッキンの材質は特に限定されないが、柔軟性や弾性および生体適合性の観点からシリコンやウレタンを含むことが好ましい。
【0012】
また、たとえば、前記パッキンは、マイクロビーズを含む断熱部を有してもよい。
【0013】
マイクロビーズを含む断熱部により、密閉空間の外気に対する断熱性を高めることができる。
【0014】
また、たとえば、前記外フランジ部の剛性は、前記内筒部より低くてもよい。
【0015】
外フランジ部の剛性を低くすることで、装着者の皮膚とパッキンとの密着性を高めることができる。また、内筒部の剛性を高くすることで、外耳道または鼻腔への挿入性を向上させることができる。
【0016】
また、たとえば、前記筐体部の表面の一部を構成しており装着者の皮膚に接触する接触部を介して体温が伝わり発電する熱発電素子を有してもよい。
【0017】
熱発電素子を有することにより、温度センサーや表示部で消費する電気の一部または全部を賄うことができ、より長時間の連続使用が可能となる。また、内蔵する蓄電部等のサイズを小さくすることが可能となり、小型化の観点でも有利である。
【0018】
また、たとえば、耳鼻取付体温計は、前記温度センサーの計測結果を無線送信する送信部を有してもよい。
【0019】
このような耳鼻取付体温計は、外部機器に対して体温の測定結果を送り、外部機器が測定結果を記憶等することができる。
【0020】
また、たとえば、前記筐体部は、前記表示部の表示面とは反対方向を向き外耳孔装着時に装着者の耳甲介に対向する耳甲介対向面を有してもよく、
前記耳甲介対向面と前記表示面との距離が、15mm以下であってもよい。
また、たとえば、前記筐体部は、半径15mmの仮想球体内に収まる外形状であってもよい。
【0021】
このような筐体部は、装着者の耳甲介腔に収まりやすく、外耳孔装着時に脱落しにくいため、良好な装着性を奏する。
【0022】
また、たとえば、前記筐体部の内部に配置され前記表示部および前記温度センサーに供給する電気を蓄える蓄電部を有し、
前記蓄電部は、前記温度センサーより前記表示部の近くに配置されてもよい。
【0023】
このような耳鼻取付体温計は、蓄電部を温度センサーから遠ざけることにより、蓄電部の発熱および吸熱の影響を温度センサーが受ける問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耳鼻取付体温計を表示面側から見た外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す耳鼻取付体温計を耳甲介対向面側から見た外観図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す耳鼻取付体温計の構造を示す概念図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る耳鼻取付体温計の使用状態を示す概念図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る耳鼻取付体温計の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耳鼻取付体温計10を表示部30側から見た外観図である。耳鼻取付体温計10は、
図4に示すように、体温を測定する測定対象者である装着者の外耳孔や鼻孔に装着して使用される。
図1に示すように、耳鼻取付体温計10は、筐体部20と、パッキン60と、表示部30とを有する。また、耳鼻取付体温計10は、筐体部20におけるパッキン60の取付部22内に設けられる温度センサー40や、筐体部20内に設けられており制御ICなどが実装される実装基板50などを有する(
図3参照)。
【0026】
図1は、耳鼻取付体温計10を表示部30の表示面32側から見た外観図であり、
図2は、耳鼻取付体温計10を表示面32とは略反対方向を向く耳甲介対向面21a側から見た外観図である。
図1に示すように、筐体部20は略つぶ状、特に本実施形態ではそら豆のまめ粒に近い外形状を有する。ただし、筐体部20としては、
図1に示すような略つぶ状の外形状を有するもののみには限定されず、
図5に示すような略直方体のブロック状の外形状を有するものであってもかまわない。
【0027】
筐体部20の大きさとしては、特に限定されないが、半径150mmの仮想球体内に収まる外形状であることが好ましい。このような形状とすることにより、耳鼻取付体温計10を外耳孔に対して装着した際に、筐体部20の重心がパッキン60と皮膚とのと密着位置から離れすぎることを防止し、装着性を向上させることができる。
【0028】
また、筐体部20は、耳甲介対向面21aと表示面32との距離W1(
図3参照)が、
15mm以下であることが好ましい。このように筐体部20の厚みを所定値以下とすることにより、
図4に示すように耳鼻取付体温計10を装着者の外耳孔に取り付けた際、筐体部20が装着者の耳甲介腔に収容されやすくなるため、耳鼻取付体温計10の装着中における脱落が防止され、装着性が向上する。なお、
図4に示すように、筐体部20の耳甲介対向面21aは、外耳孔装着時において装着者の耳甲介94に対向する。
【0029】
表示部30は筐体部20の表面21に設けられる。表示部30は、少なくとも温度センサー40(
図3参照)による計測結果である装着者の体温を表示する。表示部30は、たとえば液晶表示パネルなどで構成される。また、表示部30は、タッチセンサなどによるスイッチが、表示部30に重ねて設けられている。装着者は、表示部30の表示面32を指で触ることにより、耳鼻取付体温計10のON・OFFや、体温測定開始・終了などの操作を行うことができる。
【0030】
表示部30の表示面32の法線方向である表示面法線方向38と、パッキン60の内筒軸方向68との関係については、
図3を用いて後ほど述べる。
【0031】
図1および
図2に示すように、パッキン60は、筐体部20においてパッキン60を取り付ける取付部22に取り付けられる。実施形態に示す例では、取付部22は筐体部20の他の部分から突出する円筒形状を有しているが(
図3参照)、取付部22は筐体部20から突出する形状のみには限定されない。たとえば、取付部22は、パッキン60の内筒部62の基端62aが係合するリング状の開口縁で構成されていてもよい。
【0032】
図4に示すように、耳鼻取付体温計10は、少なくともパッキン60の一部を、装着者の外耳道92または鼻腔に挿入することで、装着される。耳鼻取付体温計10は、装着時において外耳道92または鼻腔を塞いで、外耳道92または鼻腔内に気密性の高い密閉空間を形成することにより、装着者の体温を精度よく測定することが可能である。
【0033】
このように、
図1および
図2に示すパッキン60は、装着者の皮膚と筐体部20との隙間を塞ぎ、外耳道92または鼻腔内に気密性の高い密閉空間を形成する。
図1および
図2に示すように、パッキン60は、取付部22に接続する基端62a側から基端62a側とは反対側の先端62b側へ延びる筒状の内筒部62と、内筒部62の先端62b側から内筒部62側を覆うようにドーム状に広がる外フランジ部64とを有する。
【0034】
図1および
図2に示すように、外フランジ部64の基端は内筒部62の先端62bに接続しており、外フランジ部64は内筒部62の先端62bから外径方向へ広がりながら、外フランジ部64の先端64aが筐体部20側へ折り返されている。パッキン60が、このような内筒部62と外フランジ部64による多重構造であることにより、外耳道92または鼻腔内に気密性の高い密閉空間を形成できる。
【0035】
なお、
図1に示すように、パッキン60における内筒部62と外フランジ部64との間には隙間が形成されていてもよいが、これとは異なり、たとえば外フランジ部64の材質が発泡質であるような場合においては、外フランジ部64と内筒部62とが接していてもよい。
【0036】
パッキン60の材質としては、特に限定されないが、たとえばシリコンを含むシリコンゴム、ウレタンを含むウレタン樹脂、その他のゴム素材、樹脂素材、エラストマ素材などが挙げられ、生体適合性のある医療用プラスチックであることも好ましい。また、パッキン60は、マイクロビーズを含む断熱部を有していてもよい。たとえば、パッキン60の外フランジ部64における内筒部62との対向面に、マイクロビーズを含む断熱部を層状に形成することにより、外耳道92または鼻腔内に形成する密閉空間の断熱性を高めることができる。マイクロビーズとしては、たとえばマイクロサイズおよびナノサイズの中空シリカなどが例示されるが、特に限定されない。
【0037】
パッキン60は、筐体部20の取付部22に対して着脱自在である。すなわち、パッキン60は、
図3に示す筐体部20の取付部22を、パッキン60の内筒部62の内部に、基端62a側から挿入することにより、取付部22に対して取り付けられる。また、パッキン60は、内筒部62から取付部22を抜くことで、取付部22から外すことができる。ただし、パッキン60と取付部22との着脱構造は実施形態にのみには限定されず、たとえば、パッキン60の基端62aと取付部22を係合・係合解除するものであってもかまわない。
【0038】
パッキン60を着脱自在とすることにより、たとえば医療機関等で耳鼻取付体温計10を使用する際にパッキン60を使い捨てにすることで、便利かつ衛生的に使用することが可能である。また、外耳孔、外耳道92、鼻孔および鼻腔のサイズは人それぞれであるため、パッキン60のサイズを装着者に合わせて使用することで、装着性と密閉性が向上する。
【0039】
また、パッキン60において、外フランジ部64の剛性は、内筒部62の剛性より低くてもよい。外フランジ部64の剛性を低くすることで、装着者の皮膚とパッキン60との密着性を高めることができる。また、内筒部62の剛性を高くすることで、外耳道92または鼻腔への挿入性を向上させることができる。
【0040】
図3は、耳鼻取付体温計10の構造を示す概念図である。
図3では、筐体部20の概略の外形状を二点鎖線で示すとともに、筐体部20内に収容される各部の構成を示している。また、
図3では、パッキン60は、内筒軸方向68に沿ってオフセットさせた状態で表示してある。
【0041】
図3に示すように、体温を計測するための温度センサー40は、筐体部20においてパッキン60を取り付ける取付部22内に設けられる。温度センサー40としては、サーミスタやサーモバイルを用いる赤外線センサーが例示される。
図3に示すように、温度センサー40は、フレキシブルプリント基板42に実装されるチップ部品で構成される。
【0042】
図3に示すように、筐体部20における取付部22には、凹球面状の集光面43aを有する集光素子43が設けられている。集光素子43は、装着者の鼓膜や鼻腔内の皮膚から生じる赤外線を、温度センサー40に集めることができる。取付部22内のフレキシブルプリント基板42には、補正用の温度センサーである補正センサー41が、温度センサー40とは位置をずらして配置されていてもよい。
【0043】
耳鼻取付体温計10を装着者の外耳孔や鼻孔に装着すると、パッキン60が外耳道92および鼻腔との隙間を塞ぎ、外耳道92や鼻腔に密閉空間を形成する。温度センサー40は、パッキン60内の取付部22とともに密閉空間に配置され、装着者の鼓膜や鼻腔内の所定箇所から生じる赤外線を検出する。温度センサー40の出力は、フレキシブルプリント基板42を介して、同様に筐体部20内に設けられており制御ICなどが実装してある実装基板50に伝えられる。
【0044】
実装基板50に実装してある制御ICは、温度センサー40の出力から装着者の体温を演算し、温度センサー40による計測結果として、装着者の体温を表示部30に表示させる。表示部30には、たとえば「36.7℃」などのように、装着者の体温が、小数点一桁までの摂氏温度で表示される。
【0045】
図3に示すように、筐体部20の表示部30における表示面32の表示面法線方向38は、パッキン60の内筒部62の中心軸が基端62a側から先端62b側へ向かう方向である内筒軸方向68に平行な方向に対して、90度より大きく180度より小さい角度をなす。
【0046】
内筒軸方向68に平行な方向に対する表示面法線方向38の角度をこのような範囲とすることにより、外耳孔装着時における筐体部20の皮膚に対する密着性が向上して装着性が高まるとともに、
図4に示すように、装着状態において表示部30を外部から視認しやすくなる。
【0047】
図3に示すように、耳鼻取付体温計10は、二次電池や一次電池などの蓄電部54や、充電器などを接続するためのコネクタ58や、温度センサー40の計測結果を、スマートフォン等の外部機器に無線送信する送信部56を有する。この際、送信部56は、人体による遮蔽を回避するチューニングが行われていることが好ましい。このような耳鼻取付体温計10は、装着者の動きを制限することなく、継続的な測定を行うことが可能である。なお、蓄電部54および実装基板50は、温度センサー40への熱影響を軽減するために、温度センサー40より表示部30の近くに配置されることが好ましい。
【0048】
図3に示すように、耳鼻取付体温計10は、筐体部20の表面21の一部を構成しており装着者の皮膚に接触する接触部としての耳甲介対向面21aを介して体温が伝わり発電する熱発電素子52を有する。熱発電素子52としては、半導体の熱励起電荷を用いるもの(「半導体増感型熱利用発電」とも言う。)や、導体や半導体のゼーベック効果を利用したものなどが挙げられるが、特に限定されない。また、熱発電素子52へ装着者の熱を伝える接触部としては、耳甲介対向面21aの他に、外耳孔に接触する取付部22の周辺部分なども考えられる。
【0049】
熱発電素子52で生じた電気は、実装基板50を介して蓄電部54に蓄えられ、温度センサー40および表示部30等を駆動するために用いられる。熱発電素子52を有する耳鼻取付体温計10は、温度センサー40や表示部30で消費する電気の一部または全部を熱発電素子52で生じた電気により賄うことができ、より長時間の連続使用が可能となる。また、内蔵する蓄電部54等のサイズを小さくすることが可能となり、小型化の観点でも有利である。
【0050】
図4は、耳鼻取付体温計10を装着者の外耳孔に装着した状態を示す概念図である。
図4に示すように、耳鼻取付体温計10は、内筒部62と外フランジ部64とを有するパッキン60が筐体部20と皮膚との間の隙間を塞いで外耳道92に気密度の高い密閉空間を形成するため、精度の良い体温計測を比較的短時間で行うことができる。また、表示面32の法線方向が、内筒軸方向68に平行な方向に対して90度より大きく180より小さい角度をなすことにより(
図3参照)、外耳孔装着時における筐体部20の皮膚に対する密着性が向上して装着性が高まるとともに、装着状態において表示部30を外部から視認しやすい。
【0051】
以上、実施形態を挙げて本発明に係る耳鼻取付体温計について説明してきたが、耳鼻取付体温計の技術的範囲は、上述した実施形態のみには限定されず、他の多くの実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、
図1~
図3に示す耳鼻取付体温計10は、右耳用と左耳用とで形状が異なり、
図1および
図2に示すものは右耳用であり、
図4に示すものは左耳用である。
【0052】
たとえば変形例に係る耳鼻取付体温計としては、右耳用と左耳用の耳鼻取付体温計10を有し、送信部56により少なくとも一方の測定結果を、他方が受信可能であってもよい。このような耳鼻取付体温計では、たとえば左右の耳鼻取付体温計で計測された体温の差が所定値より大きい場合などに、制御ICが表示部に計測エラー表示を行うことができる。
【0053】
また、
図5は、他の変形例に係る耳鼻取付体温計110の外観図である。
図5に示す耳鼻取付体温計110は、筐体部120が略直方体である略ブロック状である点や、表示部30とは別途スイッチ170を有する点や、左右の耳兼用である点で、
図1等に示す耳鼻取付体温計10とは異なるが、その他の点では耳鼻取付体温計10と同様である。耳鼻取付体温計110については、耳鼻取付体温計10との相違点を中心に説明し、耳鼻取付体温計10との共通点については説明を省略する。
【0054】
図5に示す耳鼻取付体温計110は、電源ON・OFF等の入力操作が可能なスイッチ170が、表示部30とは独立した押し下げボタン式のスイッチであるため、指で触れる感覚だけで、より確実な操作が可能である。また、取付部122の突出方向およびこれに平行である内筒軸方向68が、表示部30の表示面32に直交する面に平行であり、左右の耳兼用である。
【0055】
図5に示す耳鼻取付体温計110は、左右の耳のどちらに装着しても、精度の良い体温計測を比較的短時間で行うことができ、装着感も良好である。なお、
図1に示すように、内筒軸方向68が表示部30の表示面32に直交する面に対して非平行である
図1等に示す耳鼻取付体温計10は、正しい側の耳に装着すれば、
図5に示す耳鼻取付体温計110より良好な装着感を奏する。
【0056】
その他、
図5に示す耳鼻取付体温計110は、
図1等に示す耳鼻取付体温計10との共通点については、耳鼻取付体温計10と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0057】
10、110…耳鼻取付体温計
20、120…筐体部
21…表面
21a…耳甲介対向面(接触部)
22、122…取付部
30…表示部
32…表示面
38…表示面法線方向
40…温度センサー
41…補正センサー
42…フレキシブルプリント基板
43…集光素子
43a…集光面
50…実装基板
52…熱発電素子
54…蓄電部
56…送信部
58…コネクタ
60…パッキン
62…内筒部
62a…基端
62b…先端
64…外フランジ部
68…内筒軸方向
170…スイッチ
【要約】
【課題】温度センサーが配置される空間に気密性の高い密閉空間を形成するとともに、小型で装着位置から取れにくく良好な装着性を奏する耳鼻取付体温計
【解決手段】耳鼻取付体温計であって、略つぶ状または略ブロック状の外形状を有する筐体部と、前記筐体部に取り付けられ装着者の皮膚と前記筐体部との隙間を塞ぐパッキンと、前記筐体部において前記パッキンを取り付ける取付部内に設けられる温度センサーと、前記筐体部の表面に設けられ、少なくとも前記温度センサーによる計測結果である体温を表示する表示部と、を有し、前記パッキンは、前記取付部に接続する基端側から前記基端側とは反対側の先端側へ延びる筒状の内筒部と、前記内筒部の前記先端から前記内筒部側を覆うようにドーム状に広がる外フランジ部と、を有し、前記表示部の表示面の法線方向は、前記内筒部の内筒軸方向に平行な方向に対して、90度より大きく180より小さい角度をなす。
【選択図】
図1