(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】塗工白板紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/38 20060101AFI20240827BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
D21H19/38
D21H19/82
(21)【出願番号】P 2021552373
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038419
(87)【国際公開番号】W WO2021075392
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019189006
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】稲田 周平
(72)【発明者】
【氏名】吉松 丈博
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191164(JP,A)
【文献】特開2019-056193(JP,A)
【文献】特開2002-363887(JP,A)
【文献】特開2015-074858(JP,A)
【文献】特開2012-062580(JP,A)
【文献】特開2003-166199(JP,A)
【文献】特開平06-158591(JP,A)
【文献】特開2015-193949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/38
D21H 19/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙
(ただし、古紙パルプのみからなる基紙を除く。)の表面に2層以上の顔料塗工層を備えた塗工白板紙であって、
前記顔料塗工層のいずれもが、顔料として粒度分布曲線の75累積重量%の粒子径(D75)と25累積重量%の粒子径(D25)との比(D75/D25)が3.3以上4.0以下の重質炭酸カルシウムを含有し、
最外となる上塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%を超え、30重量%以下であ
り、
前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の60重量%以上であることを特徴とする塗工白板紙。
【請求項2】
前記上塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の18重量%以上、23重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗工白板紙。
【請求項3】
前記上塗り顔料塗工層は前記重質炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウムを含有し、前記上塗り顔料塗工層における炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の15重量%以上50重量%以下の範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗工白板紙。
【請求項4】
前記上塗り顔料塗工層における前記炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の19重量%以上40重量%未満の範囲であることを特徴とする、請求項3に記載の塗工白板紙。
【請求項5】
前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層は、顔料としてカオリンを、前記下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%以上25重量%以下含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項6】
前記下塗り顔料塗工層は、カオリンとして平均アスペクト比が30以上60以下のデラミネーテッドカオリンを含有することを特徴とする、請求項5に記載の塗工白板紙。
【請求項7】
前記上塗り顔料塗工層は、顔料としてカオリンを、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%以上80重量%以下含有することを特徴とする、請求項1~
6のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項8】
前記上塗り顔料塗工層は、接着剤として0℃以上30℃以下の単一のガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有することを特徴とする、請求項1~
7のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項9】
前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層は、接着剤として-50℃以上0℃未満の単一のガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有することを特徴とする、請求項1~
8のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項10】
前記顔料塗工層のいずれもが、顔料と接着剤を、顔料100重量部に対し、接着剤5重量部以上30重量部以下の範囲で含有することを特徴とする、請求項1~
9のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項11】
前記上塗り顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり、合計で3~15g/m
2であることを特徴とする、請求項1~
10のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項12】
前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり、合計で5~30g/m
2であることを特徴とする、請求項1~
11のいずれかに記載の塗工白板紙。
【請求項13】
前記基紙は、少なくとも3層のパルプ層を有することを特徴とする、請求項1~
12のいずれかに記載の塗工白板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工白板紙に関する。特に、本発明は、塗工層割れに強いオフセット・グラビア共用塗工白板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
白板紙は、通常2~9層の多層基紙構造からなる厚紙で、環境に対する取組みやコストダウンに対する要求が高まっていることから、古紙パルプが多く使用されている。例えば、表層には、晒パルプまたは脱墨パルプあるいは漂白された白色度の高い古紙パルプが、また中層、裏層にはより白色度が低く、安価な脱墨パルプおよび脱墨しない古紙パルプが使用されている。年々古紙パルプの配合比率は上昇し、グレードの低い白板紙では古紙パルプはほぼ100%配合されるほどになっている。こうした状況の中、古紙配合率増加に伴う基紙の問題として、チリ、黒点等の欠陥、および白色ムラの発現の増加がある。チリ等の異物を除去するために、脱墨工程や除塵工程を強化する対策がなされ、脱墨技術や除塵装置の進歩によりチリの問題は大幅に改善されてきているが、まだ完全に除去できるまでには至っていない。脱墨処理や除塵処理を強化するほど、歩留が悪化し、経済的に不利になることから、現状では、一定のレベル以上には脱墨、除塵処理は施されない。
【0003】
塗工白板紙は、多層抄きされた基紙に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工した顔料塗工層を有する白板紙であり、主として、化粧品、医薬品、石鹸、ギフト品等の包装箱に使用されている。内包した商品をアピールするため各種印刷方式により塗工白板紙表面に印刷が施された後に、各種の後加工を施されて紙器に加工される。この塗工白板紙は、基紙構成および塗工層形成状態の違いから、高級白板紙、特殊白板紙、塗工白ボールに分類される。高級白板紙は全層に化学パルプが使用され、両面に塗工層が設けられた白板紙であり、特殊白板紙は、表層および裏層には化学パルプが、それらより内側の層には古紙が利用され、両面あるいは片面に塗工層が設けられた白板紙であり、これら高級白板紙と特殊白板紙とをマニラボールと称している。また、塗工白ボールは、表層には化学パルプが、裏層およびそれらより内側の層には古紙が用いられ、片面に塗工層が設けられた白板紙である。
塗工白板紙は、印刷作業、打ち抜きなどの工程を経て、多くは箱などに加工される。箱に組立てる時は折り曲げる必要があるが、折り曲げる際に塗工白板紙の表側は伸びの力を受けるため、この力に塗工白板紙の表層部の強度が負けると破壊が起こり裂けてしまう。この破断を「罫割れ」や「塗工層割れ」といい、軽度のものは表層がひび割れ状となるが、ひどいものは基紙部分も含め大きく割れが生じる。塗工層割れを生じたものは、外観上見苦しいだけではなく、組立てた箱の強度が低下し、包装構造体として致命的な欠陥となる。
このような塗工層割れの対策として、基紙の表層にパルプとして、針葉樹晒クラフトパルプを5重量%以上含有させる塗工ライナーに関する技術や、塗工板紙の密度、プリントサーフラフネス、透気度を特定の範囲のものとする技術が開示されている(例えば、特許文献1、2を参照。)。しかしながら、これらの従来技術は、未だ十分な効果が得られるものではなく、塗工層割れを防止する新たな技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-249762号公報
【文献】特開2002-105895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、折り曲げの負荷に耐え得る、顔料塗工層割れに強い塗工白板紙の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、顔料塗工層のいずれもが、顔料として粒度分布曲線の75累積重量%の粒子径(D75)と25累積重量%の粒子径(D25)との比(D75/D25)が3.3以上4.0以下の重質炭酸カルシウムを含有し、最外となる上塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合を、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%を超え、30重量%以下とすることにより、折り曲げの負荷に耐え得る強度を有する塗工白板紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.基紙の表面に2層以上の顔料塗工層を備えた塗工白板紙であって、
前記顔料塗工層のいずれもが、顔料として粒度分布曲線の75累積重量%の粒子径(D75)と25累積重量%の粒子径(D25)との比(D75/D25)が3.3以上4.0以下の重質炭酸カルシウムを含有し、
最外となる上塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%を超え、30重量%以下であることを特徴とする塗工白板紙。
2.前記上塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の18重量%以上、23重量%以下であることを特徴とする1.に記載の塗工白板紙。
3.前記上塗り顔料塗工層は前記重質炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウムを含有し、前記上塗り顔料塗工層における炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の15重量%以上50重量%以下の範囲であることを特徴とする、1.または2.に記載の塗工白板紙。
4.前記上塗り顔料塗工層における前記炭酸カルシウムの含有割合は、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の19重量%以上40重量%未満の範囲であることを特徴とする、3.に記載の塗工白板紙。
5.前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層は、顔料としてカオリンを、前記下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%以上25重量%以下含有することを特徴とする、1.~4.のいずれかに記載の塗工白板紙。
6.前記下塗り顔料塗工層は、カオリンとして平均アスペクト比が30以上60以下のデラミネーテッドカオリンを含有することを特徴とする、5.に記載の塗工白板紙。
7.前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層における前記重質炭酸カルシウムの含有割合は、前記下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の60重量%以上であることを特徴とする、1.~6.のいずれかに記載の塗工白板紙。
8.前記上塗り顔料塗工層は、顔料としてカオリンを、前記上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%以上80重量%以下含有することを特徴とする、1.~7.のいずれかに記載の塗工白板紙。
9.前記上塗り顔料塗工層は、接着剤として0℃以上30℃以下の単一のガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有することを特徴とする、1.~8.のいずれかに記載の塗工白板紙。
10.前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層は、接着剤として-50℃以上0℃未満の単一のガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有することを特徴とする、1.~9.のいずれかに記載の塗工白板紙。
11.前記顔料塗工層のいずれもが、顔料と接着剤を、顔料100重量部に対し、接着剤5重量部以上30重量部以下の範囲で含有することを特徴とする、1.~10.のいずれかに記載の塗工白板紙。
12.前記上塗り顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり、合計で3~15g/m2であることを特徴とする、1.~11.のいずれかに記載の塗工白板紙。
13.前記上塗り顔料塗工層より基紙に近い下塗り顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり、合計で5~30g/m2であることを特徴とする、1.~12.のいずれかに記載の塗工白板紙。
14.前記基紙は、少なくとも3層のパルプ層を有することを特徴とする、1.~13.のいずれかに記載の塗工白板紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2層以上の顔料塗工層のいずれもが、粒度分布がある程度広い重質炭酸カルシウムを含有しているため、顔料塗工層中の空隙が減少し、密度の高い強固な顔料塗工層となるため、ギフト品などの包装箱の使用に好適な、顔料塗工層割れに強い塗工白板紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の塗工白板紙について詳細に説明する。
<顔料塗工層について>
本発明の塗工白板紙は、基紙の表面に、重質炭酸カルシウムを含む顔料および接着剤を含有する顔料塗工層を2層以上備えるものである。本発明の顔料塗工層においては、最外塗工層を上塗り顔料塗工層、当該上塗り顔料塗工層を形成する塗工液を上塗り顔料塗工液ともいう。また、上記最外塗工層より基紙に近い層を下塗り顔料塗工層、当該下塗り顔料塗工層を形成する塗工液を下塗り顔料塗工液ともいう。
【0010】
(重質炭酸カルシウムについて)
本発明の顔料塗工層のいずれもが、顔料として、X線透過式沈降法粒度分布測定法(X線透過式重力沈降法)により測定した75累積重量%の粒子径(D75(μm))と25累積重量%の粒子径(D25(μm))との比(D75/D25)が3.3以上であり4.0以下の範囲の重質炭酸カルシウムを含有するものである。本発明において、D75/D25の下限値は、3.3より大きいことが好ましく、3.4以上であることがより好ましく、3.5以上であることが特に好ましい。
このD75/D25の値は、小さいほど粒度分布が狭い、すなわち粒度分布のピークがシャープな重質炭酸カルシウムであることを意味する。したがって、本発明の顔料塗工層中に使用する重質炭酸カルシウムは、粒度分布がある程度広いものである。本発明では、重質炭酸カルシウムの粒度分布をある程度広いものとし、均一な粒子径のものとしないことにより、顔料塗工層中の空隙を減少することができ、密度の高い強固な顔料塗工層とすることができる。また、顔料塗工層の空隙が減ることで、少ないバインダー量で顔料間を結着することができ、接着効率が良好な顔料塗工層とすることができる。
X線透過式沈降法粒度分布測定法による粒度分布の測定は、液相沈降法を採用し、ストークスの法則に基づいて粒子径を測定する。また、沈降中の懸濁液にX線を照射し、そのX線透過量からランベルト・ベールの法則に従い粒度分布を測定する。本発明においては、X線透過式沈降法粒度分布測定装置(マイクロメリティックス社製セディグラフ5100)によって測定した値を使用する。
【0011】
本発明の顔料塗工層における最外となる上塗り顔料塗工層は、上記重質炭酸カルシウムを、上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%を超え、30重量%以下の範囲で含有する。含有量がこの範囲であれば、塗工層割れ抑制効果を顕著なものとすることができる。5重量%以下であると、配合量が少ないため、十分な塗工層割れ抑制効果を得ることができず、30重量%より多いと、白色顔料粒子間の空隙が減ることで、顔料塗工層の光散乱性が低下するため、不透明度が劣る可能性がある。
上記重質炭酸カルシウムを、上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の10重量%以上含有することが好ましく、15重量%以上含有することがより好ましく、18重量%以上含有することが特に好ましい。また、28重量%以下含有することが好ましく、25重量%以下含有することがより好ましく、23重量%以下含有することが特に好ましい。
また、本発明の顔料塗工層における基紙に近い下塗り顔料塗工層は、上記重質炭酸カルシウムを、下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の60重量%以上含有することが塗工層割れ抑制効果を得るうえで好ましく、70重量%以上含有することがより好ましく、80重量%以上含有することが特に好ましい。
【0012】
本発明の下塗り顔料塗工層は、さらに顔料としてカオリンを含有してもよい。下塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の0重量%以上30重量%以下の範囲で含有するとよく、5重量%以上25重量%以下の範囲がより好ましい。下塗り顔料塗工層がカオリンを含有する場合は、デラミネーテッドカオリンが好ましい。デラミネーテッドカオリンは、六角板状結晶が積層した通常のカオリンを単層に剥がすことにより得られ、比較的粒子径が大きく、アスペクト比が高いために、塗工層に配合すると、基紙の被覆性が良好になり、平滑性が向上する。中でも、平均アスペクト比が30以上60以下のデラミネーテッドカオリンが好適である。平均アスペクト比が30以上60以下のデラミネーテッドカオリンは、白色ムラを改善し、保水性をさらに向上させる。これは、顔料の隙間を扁平な顔料が埋めることにより脱水が抑制され保水性が良好になることによると推測される。しかし一方で、アスペクト比の高いデラミネーテッドカオリンなどの扁平顔料は、酸性基の主面を持つため、ラテックス等の酸性基を多く含む接着剤との親和性が悪く、接着効率が低い。そのため、顔料塗工層中のデラミネーテッドカオリンの含有量は30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましい。
また、本発明の上塗り顔料塗工層は、高い隠蔽性、平滑性、箱加工時の高い滑り性を得るために、さらに顔料としてカオリンを含有していることが好ましい。その含有量は、上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料の5重量%以上80重量%以下の範囲が好ましく、30重量%以上80重量%以下の範囲がより好ましい。
【0013】
本発明の顔料塗工層は、上記以外に従来の公知の顔料をさらに含有することができる。具体的には、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、亜硫酸カルシウム、石膏、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子等の無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、プラスチック微小中空粒子などの有機填料等が挙げられる。
中でも、高い白色度を維持しつつ隠蔽性を得るためには顔料塗工層のいずれか一層に軽質炭酸カルシウムを含有することが好ましく、特に、隠蔽性、高い白色度が求められる上塗り顔料塗工層に含有することがより好ましい。上塗り顔料塗工層が軽質炭酸カルシウムを含有する場合は、軽質炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムの炭酸カルシウムの割合は、上塗り顔料塗工層に含まれる全顔料に対し、その下限値は15重量%以上が好ましく、18重量%以上がさらに好ましく、19重量%以上が特に好ましく、その上限値は50重量%以下が好ましく、45重量%以下がさらに好ましく、40重量%未満が特に好ましく、35重量%以下が最も好ましい。
【0014】
本発明における顔料塗工液に含有する接着剤(バインダー)は特に制限されず、塗工紙に従来から用いられている接着剤を使用できる。具体的には、例えば、スチレン-ブタジエン系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、ブタジエン-メチルメタクリレート系、アクリル酸-メチルメタクリレート系、酢酸ビニル-ブチルアクリレート系、スチレン-無水マレイン酸系、エチレン-無水マレイン酸系等の各種共重合またはラテックス、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ナノセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられ、これらの接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。
中でも、本発明の顔料塗工液に使用する接着剤は、ラテックスおよび澱粉を含有することが好ましい。使用するラテックスとしては単一のガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある。)を有するスチレン-ブタジエン系ラテックス(以下、「SBR」ということがある。)を使用することが好ましい。本発明では、下塗り顔料塗工層にはTgが低いSBRを含有することが好ましく、上塗り顔料塗工層にはTgが高いSBRを含有することが好ましい。具体的には、下塗り顔料塗工層に使用するSBRのTgは-50℃以上0℃未満が好ましく、上塗り顔料塗工層に使用するSBRのTgは0℃以上30℃以下が好ましい。SBRは、一般的にTgが低い方が柔らかいため、各顔料塗工層に上述のTgを有するSBRを使用することで、下塗り顔料塗工層にはクッション性を付与し、上塗り顔料塗工層には強度を付与することができる。
また、顔料塗工液に澱粉を使用することで、顔料塗工液の保水性を高めることができる。保水性の高い顔料塗工液を使用すると、塗工時の接着剤成分の紙への浸透が抑制され、顔料塗工層中に接着剤を多く保持することができるため、顔料塗工層中の接着剤成分の効果が高く発現され、顔料塗工層強度、表面強度、クッション性に優れた顔料塗工層を得ることができる。
【0015】
本発明の各顔料塗工層を形成する顔料塗工液の顔料と接着剤の配合比率は、所望の顔料塗工液が得られる範囲で適宜調整される。通常は、固形分比率で、顔料100重量部に対し、接着剤5重量部以上30重量部以下の範囲で含有することが好ましく、さらに好ましくは8重量部以上20重量部以下の範囲である。5重量部より少ないと、顔料塗工層強度が弱くなってしまい、紙粉が発生する、印刷強度が劣るなどの問題が発生しやすい。また、30重量部より多いと、塗工層中の白色顔料粒子間の空隙が減ることで、接着効率は上がるものの、顔料塗工層の光散乱性が低下するため、不透明度が劣る、コストが高くなるなどの問題が発生しやすい。
【0016】
本発明の顔料塗工層を形成する顔料塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、蛍光染料、着色染料、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常の塗工紙用顔料塗工液に配合される各種助剤を適宜使用できる。
顔料塗工液の固形分濃度は、58重量%以上が好ましく、62重量%以上がより好ましい。固形分が58重量%より低いと、保水性が低下するため、顔料塗工液の基紙への過剰な浸透により塗工白板紙の品質が低下することがある。一方、固形分濃度の上限は特に制限されないが、送液性等を考慮すると、75重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
【0017】
<基紙について>
本発明の塗工白板紙における基紙は、2層以上のパルプ層(紙層)を多層抄きしたものであることが好ましい。基紙の層数は、好ましくは3層以上であり、より好ましくは5層以上である。基紙の最も外側の紙層を表層および裏層といい、表層および裏層に挟まれる内側の層を中層という。また、表層に接し中層側に向って2層目を表下層という。中層は1層でもよく2層以上の多層でもよい。また本発明の基紙の各層は、顔料塗工層を設けた側から数えて、1層目、2層目、3層目と呼ぶこともある。
本発明の基紙は、一般に塗工白板紙の基紙に使用されるものを例外なく使用できるが、多層抄きの基紙の少なくとも一層の紙層に古紙パルプが配合されていることが好ましい。古紙パルプを多く含む基紙を用いることはコスト面でも有利であり、また、環境負荷も低くなる。古紙パルプとしては脱墨パルプ(DIP)でも、脱墨していないパルプでもよく、古紙パルプの原料としては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を使用できる。また、古紙パルプ以外のパルプは特に制限されず、広葉樹や針葉樹を原料とするクラフトパルプ、亜硫酸パルプなどの化学パルプ;サーモメカニカルパルプ、加圧砕木パルプなどの機械パルプ;ケミカルサーモメカニカルパルプなどの半化学パルプが使用できる。使用するパルプは、これら各種パルプを混合したものでもよいし、同一のパルプを用いたものでもよい。また、異なるパルプを含有する紙層を1層以上重ねてもよい。
本発明の基紙は、例えば、中層に白色度の低いパルプを用いて、表層、裏層にそれより白色度の高いパルプを用いることもできるし、すべての層のパルプを同じにして重ねることもできる。本発明において、基紙の層数を3層以上とした場合、表層および裏層には白色度が高く夾雑物の少ない、広葉樹晒クラフトパルプ(以下、「LBKP」ということがある。)を、表層若しくは裏層のパルプ100重量%に対し30重量%以上含有することが好ましく、50重量%以上含有することがより好ましい。また、中層には、白色度が低く比較的夾雑物の多い古紙パルプを、中層のパルプ100重量%に対し10重量%以上含有することが好ましく、30重量%以上含有することがより好ましい。
【0018】
本発明における基紙は、通常填料が内添される。填料としては特に限定されないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、亜硫酸カルシウム、石膏、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子等の無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、プラスチック微小中空粒子などの有機填料、さらには古紙やブローク等に含まれている填料を、単独もしくは適宜2種類以上を組み合わせて使用できる。基紙への填料配合は、中層に存在するチリ、色むらを覆い隠すため、裏層には上記填料を、裏層のパルプ100重量%に対し2重量%以上配合することが好ましい。表層、中層への填料配合は特に制限はないが、填料の配合割合が多くなると、基紙の層間強度が低くなるので、目的とする品質に合わせて適宜調整することが必要である。
【0019】
本発明における基紙の抄紙方法は特に限定されず、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマー、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン、これらを組み合わせたハイブリッド型抄紙機等を用いて行なうことができる。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。また、多層抄きの基紙の場合、各層の抄紙時のpHは、同一でもよいし、各層で異なってもよい。抄紙速度は、特に限定されない。なお、本発明の塗工白板紙における基紙の坪量は、通常150~650g/m2程度である。
また本発明により塗工白板紙を製造する場合は、顔料塗工層の形成前に、基紙をオンラインソフトカレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより、予め平滑化しておいてもよい。
【0020】
本発明において、基紙を乾燥させる方法は制限されない。例えば蒸気加熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いられる。
【0021】
また、本発明においては、平滑性の低い基紙を用いてもよいが、顔料塗工層の形成時のパドリングと呼ばれる塗工液溜まりが発生しない範囲で、平滑性の高い基紙を使用できる。基紙の平滑性を高めるために、前述のとおり、顔料塗工層の形成前にプレカレンダ等の処理を行なってもよい。
さらに、基紙の平滑性を改善する手段として、顔料塗工層の形成前に、澱粉を主成分としたクリア塗工液または顔料を含んだ顔料塗工液を基紙にプレ塗工することができる。このプレ塗工された基紙は、乾燥工程を経ないまま、すなわち基紙上の塗工液が濡れた状態で、顔料塗工層の形成に供してもよい。このように、顔料塗工層の形成に供される前のプレ塗工後の基紙の状態は制限されない。
【0022】
本発明の顔料塗工層は、重質炭酸カルシウムを含む顔料や接着剤などの必要な成分と水
とを、ミキサー等の通常の混合手段を用いて混合して調製した顔料塗工液を、基紙の表面に塗工することにより形成する。
<塗工方法について>
本発明の顔料塗工層を形成する塗工方法について特に制限はなく、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーターなどの通常の各種塗工装置が用いられる。
中でも、ブレードコーターやロッドコーターを使用する塗工方法は、顔料塗工層の密度を高め、顔料塗工層割れが発現し難い顔料塗工層を得ることが出来るため、本発明の塗工方法として好適である。ロッドコーターは、バーコーターまたはバーブレードコーターと呼ばれることもある。
【0023】
本発明において顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり、各層の合計で8~50g/m2が好ましく、45g/m2以下とすることがより好ましい。10~40g/m2がさらに好ましく、11~35g/m2が特に好ましい。塗工量が各層の合計で8g/m2未満では、顔料塗工層が薄くなり塗工白板紙の白色度、白色ムラの改善効果が十分に得られない場合がある。一方、塗工量が各層の合計で50g/m2を超えると、乾燥工程での乾燥性が低下するなど操業性が低下したり、バインダーマイグレーションによる印刷ムラの原因になったりすることがある。
本発明において、下塗り顔料塗工層の塗工量と上塗り顔料塗工層の塗工量は、特に制限されないが、隠蔽性と白色度を両立させるということから、乾燥重量で片面あたり、下塗り顔料塗工層が合計で5~30g/m2、上塗り顔料塗工層が3~15g/m2の範囲であることが好ましい。下塗り顔料塗工層および上塗り顔料塗工層の塗工量がそれぞれ5g/m2、3g/m2未満では、塗工白板紙の白色度、白色ムラの改善効果が十分に得られない場合がある。一方、塗工量が多すぎると、乾燥工程での乾燥性が低下するなど操業性が低下する他、顔料塗工層割れが発生しやすくなる傾向が見られる。
【0024】
本発明の塗工白板紙は、基紙上に顔料塗工層を設けた後、通常の乾燥工程を経て製造されるが、必要に応じて表面処理工程等で平滑化処理してもよい。好ましい態様において、製造後の塗工白板紙の水分量が3~10重量%、より好ましくは4~8重量%程度となるように調整して仕上げられる。平滑化処理には、通常のスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。
本発明の好ましい態様において、製造後の塗工白板紙のクランプ圧2000kPaの条件におけるPPSラフネスが、0.5μm以上1.6μm以下となるように平滑性を調整して仕上げられる。PPSラフネスは0.8μm以上であることが好ましい。PPSラフネスが0.5μm未満であると、平滑化処理に伴う顔料塗工層の高密度化が著しく、顔料塗工層の不透明度が低下し、基紙のチリ、色むらの隠蔽効果が低下する傾向が見られる。一方、PPSラフネスが1.6μmを超えると、平滑性が低く、白紙面感や印刷面感が低下する傾向が見られる。
【0025】
本発明においては、剛度付与およびカール抑制のために裏層表面にクリア塗工層を設けてもよい。裏層表面にクリア塗工層を形成するクリア塗工液には、必要に応じて、従来から公知公用のバインダーおよび、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常の塗工液に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0027】
[実施例1]
<基紙>
LBKP100重量%のパルプを使用して坪量33g/m2の表層(1層目)、脱墨古紙パルプ100%のパルプを使用して坪量36g/m2の表下層(2層目)、脱墨しない雑誌古紙パルプ100重量%のパルプを使用して45g/m2の中層及び裏層(3~7層目)をそれぞれ抄紙して抄き合わせ、プレス、乾燥処理を行い、7層の紙層を有する坪量294g/m2の基紙を得た。各層のパルプスラリーには、パルプ100重量%に対し紙力剤0.6重量%、硫酸バンド1.5重量%を添加した。
【0028】
<上塗り顔料塗工液1>
微粒カオリン(Thiele社製、カオファイン)60重量部、重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル97、D75/D25=3.87)20重量部、紡錘状軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製、TP-221F、D75/D25=2.5)15重量部、二酸化チタン5重量部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100重量部に対して、接着剤としてスチレン・ブタジエン共重合ラテックスA(旭化成社製、ALB1443:Tg=17℃)14.5重量部、尿素燐酸エステル化澱粉2重量部を添加し、さらに水を添加して、固形分濃度60%の上塗り顔料塗工液を得た。
<下塗り顔料塗工液1>
重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル90、D75/D25=3.82)80重量部、デラミネーテッドカオリン(イメリス社製、Contour1500、平均アスペクト比60)20重量部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100重量部に対して、接着剤としてスチレン・ブタジエン共重合ラテックスB(旭化成社製、ALB1735:Tg=-8℃)12重量部、尿素燐酸エステル化澱粉3重量部を添加し、さらに水を添加して、固形分濃度60%の下塗り顔料塗工液を得た。
【0029】
<塗工>
基紙の表層の表面に、下塗り顔料塗工液1をロッドコーターにより、乾燥重量で片面あたり塗工量が8g/m2となるように塗工した後に、乾燥工程を経ることなく、上塗り顔料塗工層1をブレードコーターにより、乾燥重量で片面あたり塗工量が12g/m2となるように塗工、乾燥した。その後、カレンダで平滑化処理を行い、坪量が314g/m2の塗工白板紙1を製造した。得られた塗工白板紙1の紙厚は375μmであった。
【0030】
[実施例2]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウムを25重量部とし、軽質炭酸カルシウムを20重量部とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙2を製造した。得られた塗工白板紙2の坪量は314g/m2、紙厚は387μmであった。
【0031】
[実施例3]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウムを15重量部とし、軽質炭酸カルシウムを30重量部とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙3を製造した。得られた塗工白板紙3の坪量は314g/m2、紙厚は375μmであった。
【0032】
[実施例4]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウムを30重量部とし、軽質炭酸カルシウムを15重量部とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙4を製造した。得られた塗工白板紙4の坪量は314g/m2、紙厚は375μmであった。
【0033】
[実施例5]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の微粒カオリンを86重量部とし、重質炭酸カルシウムを9重量部とし、軽質炭酸カルシウムを5重量部とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙5を製造した。得られた塗工白板紙5の坪量は314g/m2、紙厚は375μmであった。
【0034】
[実施例6]
上記「下塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウムを70重量部とし、カオリンを30重量部とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙6を製造した。得られた塗工白板紙6の坪量は314g/m2、紙厚は375μmであった。
【0035】
[比較例1]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル97、D75/D25=3.87)を、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT-OP、D75/D25=3.0)に変更した以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙aを製造した。得られた塗工白板紙aの坪量は314g/m2、紙厚は386μmであった。
【0036】
[比較例2]
上記「上塗り顔料塗工液1」中の重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル97、D75/D25=3.87)を4重量部とし、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT-OP、D75/D25=3.0)を16重量部配合した以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙bを製造した。得られた塗工白板紙bの坪量は314g/m2、紙厚は375μmであった。
【0037】
<顔料塗工層割れ評価方法>
上記実施例1~6と比較例1、2において製造した塗工白板紙1~6およびa、bの顔料塗工層上に、枚葉印刷機で藍100%のベタ印刷をした後、印刷面にラボ用クリーサーで罫線処理を施した。その後、罫線部を折り曲げて、折り曲げ箇所の顔料塗工層割れを以下の評価基準により、目視で評価した。なお、評価結果の「◎」と「〇」のみを実用性がある塗工白板紙と判断した。評価結果を下記表1に示す。
[評価基準]
◎:顔料塗工層割れが見られない
○:顔料塗工層割れがほとんど見られない
△:顔料塗工層割れがやや見られる
×:顕著な顔料塗工層割れが認められる
【0038】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の塗工白板紙は、2層以上の顔料塗工層のいずれもが、粒度分布がある程度広い重質炭酸カルシウムを含有しているため、顔料塗工層中の空隙を抑制し、密度の高い強固な顔料塗工層となるため、ギフト品などの包装箱の使用に好適で、顔料塗工層割れに強く有用である。