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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】パワーモジュール、作製金型、及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240827BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240827BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/30 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023505819
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2020105291
(87)【国際公開番号】W WO2022021094
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ファンクゥン
(72)【発明者】
【氏名】チアオ,ユンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジュンホ
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109727947(CN,A)
【文献】特開2009-059812(JP,A)
【文献】特開2010-182879(JP,A)
【文献】特開2004-207290(JP,A)
【文献】特開2008-053509(JP,A)
【文献】特開2018-067655(JP,A)
【文献】特開2014-146774(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108321134(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュールであって、当該パワーモジュールは、
基板であって、部品が前記基板上に配置され、前記部品は前記基板に電気的に接続される、基板と、
該基板から間隔を置いて配置されるシール層であって、前記基板及び前記シール層は充填空間によって分離される、シール層と、
プラスチック封止層であって、前記基板と前記シール層との間の前記充填空間は前記プラスチック封止層で満たされ、前記部品は前記プラスチック封止層によって封止され、前記プラスチック封止層は熱硬化性材料によって作製されたプラスチック封止層である、プラスチック封止層と、
ピンであって、該ピンは、前記シール層及び前記プラスチック封止層を貫通し、前記基板に電気的に接続され、前記ピンは、前記シール層に関するものであり且つ前記プラスチック封止層とは反対側に向く面で部分的に露出される、ピンと、
カバープレートであって、該カバープレートは、前記シール層を覆い、前記シール層と圧接し、それによって、前記ピンは、前記カバープレートを貫通し、前記カバープレートに関するものであり且つ前記プラスチック封止層とは反対側に向く面に露出し、前記カバープレートの硬さが前記シール層の硬さよりも大きい、カバープレートと、を含む、
パワーモジュール。
【請求項2】
各ピンと1対1に対応するボス構造が、前記シール層に関するものであり且つ前記プラスチック封止層とは反対側に向く面に設けられ、各ピンが対応するボス構造を貫通する、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
各ピンは制限構造を有しており、前記シール層に関するものであり且つ前記プラスチック封止層に向く面が、前記制限構造に押し付けられる、請求項1又は2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記制限構造は、階段状の構造である、請求項3に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記プラスチック封止層は前記シール層の外側に部分的に延びており、前記プラスチック封止層の延長部分が前記シール層の少なくとも側壁を包み込む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記プラスチック封止層の前記延長部分は、前記基板及び前記シール層の側壁を包み込む、請求項5に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記シール層がボス構造を有する場合に、前記ボス構造と嵌合する収容溝が前記カバープレートに設けられる、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記ボス構造は、前記収容溝と締り嵌めされる、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記プラスチック封止層は、エポキシ成形コンパウンド(EMCプラスチック封止材料によって作製されたプラスチック封止層である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパワーモジュール。
【請求項10】
電源モジュールと、該電源モジュールに接続される請求項1乃至9のいずれか一項に記載のパワーモジュールとを含む装置。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のパワーモジュールを作製するための作製金型であって、当該作製金型は、上型と、該上型に覆われる下型とを含み、前記上型は、ホルダと、該ホルダに着脱可能な方法で接続された上型コアとを含み、
ピンを回避するための回避孔が前記上型コアに設けられており、前記上型が前記下型を覆うと、前記上型コアが前記下型に圧接し、囲い込むことによって熱硬化性材料を充填する空間が形成される、
作製金型。
【請求項12】
置決めコラムが前記上型コアに設けられ、前記位置決めコラム前記パワーモジュールのカバープレートに設けられる位置決めスロットによって受容され、該位置決めスロットに嵌合されるように構成される、請求項11に記載の作製金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電子技術の分野に関し、特に、パワーモジュール、作製金型(preparation mold)、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、パワーデバイスを特定の機能に基づいて組み合わせた後に、ポッティング(potting)により形成されるモジュールである。パワーモジュールは、サーボモータ、周波数コンバータ、又はインバータ等の分野に広く応用される。上部ピン(pin)は、パワーモジュールの一般的な構造であり、システムエンドの迅速な圧着又は溶接を容易にし得る。上部ピン付きハイパワーモジュールの既存の封止(packaging:パッケージング)形態は、ハウジングを最初に接合し、次に射出成形を行う封止形態が主流であった。銅張セラミック基板、チップ、ピンを組み立てて溶接した後に、シリコーンゲルを注入して、部品(component:コンポーネント)を保護する。図1に示されるように、従来技術では、ハウジングを最初に接合し、次に射出成形を行うパッケージングを用いたパワーモジュールが使用されている。パワーモジュールは、基板1と、基板1に配置されたチップ2及びピン3とを含む。チップ2は、ボンディングワイヤを使用して基板1に電気的に接続される。ピン3は、パッドを使用して基板1に電気的に接続される。パワーモジュールは封止層5をさらに含み、封止層5はチップ2とピン3の一部とを包み込む。パワーモジュールはハウジング4をさらに含み、ハウジング4は封止層5を覆う。ピン3の端部がハウジング4を貫通した後に露出している。ハウジングを最初に接合し、次に射出成形を行うパッケージを使用すると、シリコーンゲルの材料特性によって制限を受け、信頼性性能、特に防湿性能が比較的低くなる。
【発明の概要】
【0003】
本願は、パワーモジュールの性能を高めるためのパワーモジュール、作製金型、及び装置を提供する。
【0004】
第1の態様によれば、パワーモジュールを提供する。パワーモジュールは、サーボモータ、周波数コンバータ、又はインバータ等の分野に適用される。パワーモジュールは基板を含み、この基板は、パワーモジュールの部品及びピンを担持するための支持構造として使用される。確かに、基板は、パワーモジュールの要件に基づいて、別の部品をさらに担持することができる。回路層が基板に配置され、担持される部品同士の間の電気的接続を完成する。配置するときに、部品及びピンが基板の同一面に配置され、部品及びピンが基板を使用して電気的に接続される。パワーモジュールは、基板から間隔をあけて配置されたシール(sealing)層をさらに含み、基板及びシール層は充填空間によって分離される。パワーモジュールはプラスチック封止層をさらに含み、基板とシール層との間の充填空間はプラスチック封止層で充填され、部品及びピンはプラスチック封止層によって封止される。ピンは、シール層及びプラスチック封止層を貫通し、基板に電気的に接続され、ピンは、シール層に関するものであり且つプラスチック封止層とは反対側に向く面に部分的に露出している。プラスチック封止層を使用して部品を封止する場合に、プラスチック封止層は、熱硬化性材料によって作製されたプラスチック封止層である。熱硬化性材料は、射出成形方式で封止され得る。また、熱硬化性材料は優れた防水及び防湿性能を有しており、これは、パワーモジュールの防水及び防湿効果を高め、パワーモジュールの保護効果を高める。
【0005】
特定の実施可能な解決策では、各ピンと1対1に対応するボス構造が、シール層に関するものであり且つプラスチック封止層とは反対側に向く面に設けられ、各ピンが対応するボス構造を貫通する。ボス構造により、ピンとの接触面積が増大し、プラスチック封止層の射出成形時に接着剤のオーバーフロー(はみ出し)を減少させる。
【0006】
特定の実施可能な解決策では、各ピンは制限構造を有しており、シール層に関するものであり且つプラスチック封止層に向く面が、制限構造に対して押し付けられる。シール層の位置が都合よく制限され、シール層とピンとの間の接触面積が増大する。
【0007】
特定の実施可能な解決策では、制限構造は階段状の構造又はベンチ形状の構造である。異なる構造を使用して、制限構造を形成することができる。
【0008】
特定の実施可能な解決策では、プラスチック封止層はシール層の外側に部分的に延びており、プラスチック封止層の延長部分がシール層の少なくとも側壁を包み込む。プラスチック封止層がシール層の側壁を包み込み、それによりパワーモジュールの防水及び防湿効果を高める。
【0009】
特定の実施可能な解決策では、プラスチック封止層の延長部分は、基板及びシール層の側壁を包み込み、それによりパワーモジュールの防水及び防湿効果を高める。
【0010】
特定の実施可能な解決策では、プラスチック封止層はH型の断面を有しており、プラスチック封止層は基板の外側に露出した2つの垂直部分を有しており、それによりパワーモジュールの安全性を高める。
【0011】
特定の実施可能な解決策では、パワーモジュールはカバープレートをさらに含む。カバープレートは、シール層を覆い、シール層と圧接している。ピンは、カバープレートを貫通した後に、カバープレートに関するものであり且つプラスチック封止層とは反対側に向く面に露出し、それによりパワーモジュールの安全性を高める。
【0012】
特定の実施可能な解決策では、シール層がボス構造を有する場合に、ボス構造と嵌合する収容溝がカバープレートに設けられ、それによりカバープレートがシール層と嵌合し易くなる。
【0013】
特定の実施可能な解決策では、ボス構造は、収容溝と締り嵌めされる。カバープレートを使用してシール層を圧迫することにより、ピンとシール層との間のシール効果が高まる。
【0014】
特定の実施可能な解決策では、ボス構造は円形のボスであり、対応する収容溝は円形の溝であり、それによりシール層がカバープレートと嵌合するのを容易にする。
【0015】
特定の実施可能な解決策では、プラスチック封止層がカバープレートの側壁を包み込み、それによりパワーモジュールの安全性をさらに高める。
【0016】
特定の実施可能な解決策では、プラスチック封止層は、EMCプラスチック封止材料によって作製されたプラスチック封止層であり、それにより良好な防水及び防湿効果を有する。
【0017】
特定の実施可能な解決策では、EMCプラスチック封止材料は、ビスフェノールAエポキシ樹脂又はポリオールエポキシ樹脂等の異なる材料であってもよい。プラスチック封止層は、様々な材料によって作製してもよい。
【0018】
第2の態様によれば、作製金型を提供する。作製金型は、前述のいずれか1つによるパワーモジュールを作製するように構成される。作製金型は、上型(upper mold)と、覆われる下型(lower mold)とを含む。上型は、ホルダと、ホルダに着脱可能な方法で接続される上型コアとを含む。
【0019】
ピンを回避するための回避孔が上型コアに設けられる。上型が下型を覆うと、上型コアが下型に圧接し、囲い込むことによって熱硬化性材料を充填する空間が形成される。上型コアとホルダとの間の着脱可能な嵌合を使用することにより、上型コアは、射出成形を行う必要があるパワーモジュールに基づいて異なる上型コアと交換することができ、それによりパワーモジュールの作製が容易になる。
【0020】
特定の実施可能な解決策では、パワーモジュールがカバープレートを含む場合に、位置決めコラムが上型コアに設けられ、位置決めコラムと嵌合する位置決めスロットがカバープレートに設けられ、それにより作製中の位置合せに向上させる。
【0021】
特定の実施可能な解決策では、上型コアは、ねじ付きコネクタを使用してホルダに着脱可能な方法で接続することができる。ねじ付きコネクタは、ねじ、ボルト、又はボルトアセンブリを含むが、これらに限定されない。
【0022】
第3の態様によれば、装置を提供する。この装置は、電源モジュールと、電源モジュールに接続された上記のいずれか1つによるパワーモジュールとを含む。プラスチック封止層を使用してピンを包み込むことにより、パワーモジュールの防水及び防湿効果が高まり、パワーモジュールの保護効果及びパワーモジュールの性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来技術におけるパワーモジュールの構造の概略図である。
図2】本願の一実施形態によるパワーモジュールの構造の図である。
図3図2のA-Aにおける切断図である。
図4】本願の一実施形態によるシール層の構造の概略図である。
図5】本願の一実施形態によるシール層とピンとの間の嵌合の概略図である。
図6】本願の一実施形態による別のパワーモジュールの構造の概略図である。
図7】本願の一実施形態によるカバープレートの構造の概略図である。
図8】本願の一実施形態による別のパワーモジュールの構造の概略図である。
図9a】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9b】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9c】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9d】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9e】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9f】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図9g】本願の一実施形態によるパワーモジュールの作製方法である。
図10】本願の一実施形態による作製金型である。
図11】本願の一実施形態による上型の概略分解図である。
図12】本願の一実施形態による上型コアの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、パワーモジュールについて説明する。パワーモジュールとは、パワーデバイスを特定の機能に基づいて組み合わせた後に、ポッティングにより形成されるモジュールである。パワーモジュールは、サーボモータ、周波数コンバータ、又はインバータ等の分野に広く応用される。パワーモジュールは、様々な能動又は受動部品、チップ、絶縁部品、又は部品パッケージ(封止したチップ)等の異なる部品を含むことができ、前述の部品は、特定の機能を有するモジュールを形成するために必要な機能に基づいて組み合わされる。パワーモジュールをサーボモータ、周波数コンバータ、インバータ等の製品に適用する場合に、作業環境は比較的悪く、パワーモジュールは、高湿度、高い温度差、高塵埃等の悪条件に直面する。パワーモジュールが確実に動作できるようにするには、パワーモジュール内の部品を封止して、パワーモジュールが確実に動作するようにする必要がある。しかしながら、従来技術におけるパワーモジュールは、通常、ハウジングパッケージを使用するが、シリコーンゲルの材料によって制限を受け、パワーモジュールは、防水及び防湿性能が比較的低い。従って、本願の実施形態は、防湿性能に向上させたパワーモジュールを提供する。以下では、特定の添付図面及び実施形態を参照して、パワーモジュールについて詳細に説明する。
【0025】
図2は、本願の一実施形態によるパワーモジュールの構造の概略図を示す。本願のこの実施形態で提供するパワーモジュールは、基板10、プラスチック封止層80、シール層60、及びピン50を含む。基板10は、部品30及びピン50を担持するための支持(bearing)構造として使用される。また、基板10は、部品30をさらに電気的に接続して、パワーモジュールによって必要とされる回路を形成することができる。プラスチック封止層80は、部品30及びピン50を封止して、パワーモジュールの防水及び防湿性能を高めるように構成される。シール層60は、ピン50をシールして、プラスチック封止材料の射出成形を容易にするように構成される。以下では、添付図面を参照して、パワーモジュールの各部品の構造及び機能について詳細に説明する。
【0026】
図3は、図2のA-Aにおける切断図を示す。まず、基板10について説明する。基板10の表面は、部品30を担持するための支持面として使用され得る。基板10の一方の表面が支持面として使用され得るか、又は基板10の対向する2つの表面が支持面として使用され得る。例えば、図2は、基板10の一方の表面が支持面として使用され、部品30及びピン50が基板10の同じ支持面上に配置されることを示す。
【0027】
基板10は、回路層(図3には図示せず)を有する。回路層は、基板10の表面上又は基板10内に配置された金属線層と、金属線層に電気的に接続される複数のパッド20とを含む。複数のパッド20は、基板10の支持面に配置され、基板10によって担持される部品30及びピン50に接続するように構成される。複数のパッド20は、機能に基づいて第1のパッド及び第2のパッドに分割され得る。ピン50に接続されるパッド20が第1のパッドであり、部品30に接続されるパッド20が第2のパッドである。部品30及びピン50が支持面に配置される場合に、一方では、ピン50及び部品30は、対応するパッド20をそれぞれ使用して支持面に固定され、他方では、ピン50及び部品30は、対応するパッド20をそれぞれ使用して基板10の回路層に電気的に接続される。
【0028】
オプションの解決策では、部品30は、代替的に、ボンディングワイヤ40を使用して基板10の回路層に接続してもよい。図3に示されるように、ボンディングワイヤ40の一端が、部品30に関するものであり且つ基板10とは反対側に向く面に電気的に接続され、ボンディングワイヤ40の他端が、基板10上のパッド20に接続される。部品30は、ボンディングワイヤ40及び第2のパッドを使用して回路層に電気的に接続され得る。図3は、部品30が1本のボンディングワイヤ40を使用して基板10の回路層に接続される例を示すだけであることを理解すべきである。しかしながら、本願のこの実施形態では、ボンディングワイヤ40の数量は特に制限されない。部品30の機能に基づいて、異なる数量のボンディングワイヤ40を選択して、部品30を基板10の回路層に接続してもよい。
【0029】
プリント回路基板及び回路を実装した回路基板等、様々なタイプの基板を基板10として使用してもよい。
【0030】
本願のこの実施形態では、基板10の形状は限定されない。本願のこの実施形態で提供するパワーモジュールでは、基板10は、要件に基づいて、長方形、楕円形、正方形、円形、又は変則形状等の形状に設計してもよい。
【0031】
パワーモジュールの機能に基づいて、様々な部品を、本願のこの実施形態で提供する部品30として選択してもよい。例えば、部品30は、様々な能動部品、受動部品、チップ、絶縁部品、又は部品パッケージ(封止したチップ)等の様々な部品であってもよい。2つの部品30が図3に示されるが、本願のこの実施形態で提供する部品30が、図3に示される部品の数量に限定されないことを理解されたい。図3は、部品30と基板10との間の接続方法を示すために使用されているに過ぎず、部品30の実際の数量を表しているわけではない。パワーモジュールの機能に基づいて、1つ、2つ、3つ、又は4つの部品30等の様々な数量の部品30を、本願のこの実施形態で提供する電力モジュールに選択してもよい。
【0032】
本願のこの実施形態で提供するピン50は、第1のパッドを使用して基板10の回路層に接続され、基板10の回路層を使用して部品30に電気的に接続される。ピン50は、パワーモジュールの外部ポートとして使用され、電源モジュールに嵌合する別のモジュールに接続するように構成される。図3に示されるように、ピン50の高さ方向が、基板10の支持面に直交しており、ピン50はパワーモジュールの外側に延びることができる。3つのピン50が図3に示されているが、本願のこの実施形態で提供するピン50は、図3に示されるピンの数量に限定されないことを理解されたい。図3は、ピン50と基板10との間の接続方法を示すためにのみ使用され、ピン50の実際の数量を表すものではない。パワーモジュールの機能に基づいて、1つ、2つ、3つ、又は4つのピン50等の様々な数量のピン50を、本願のこの実施形態で提供する電力モジュールに選択してもよい。
【0033】
オプションの解決策では、ピン50は、銅、アルミニウム、又は合金等の導電性金属材料によって作製されたピンであってもよい。ピン50が前述の材料で作製される場合に、一方ではピン50は良好な導電性を有し、他方ではピン50はさらに良好な弾性及び剛性を有しており、パワーモジュールを嵌合モジュールに確実に接続するようにする。
【0034】
ピン50の高さ方向において、ピン50は、封止領域と接続領域とに分割され得る。封止領域は、ピン50がプラスチック封止層80及びシール層60によって封止される領域である。接続領域は、ピン50が、シール層60に関するものであり且つプラスチック封止層80とは反対側に向く外部に露出する領域である。接続領域は、パワーモジュールを嵌合モジュールに接続するために使用される。封止領域及び接続領域は、ピン50の機能に基づいて分割される領域であることを理解されたい。これは、ピン50が2つの部分を含むことを意味しない。本願のこの実施形態では、ピン50は、金属材料によって一体的に作製される。前述の領域の分割は、単に説明を容易にするためのものである。
【0035】
本願のこの実施形態で提供するプラスチック封止層80は、基板10上に配置された部品30及びピン50を包み込むように構成され、パワーモジュールの防湿、防水、及び防塵性能等の性能を高める。本願のこの実施形態で提供するプラスチック封止層80は、熱硬化性材料によって作製されるプラスチック封止層である。熱硬化性材料は、液体の状態の材料を加熱することにより固化する材料である。シリコーンゲルと比較して、熱硬化性材料はより優れた防水及び防湿効果を有している。例えば、熱硬化性材料は、EMC(エポキシ成形コンパウンド、エポキシ樹脂)材料、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂又はポリオールエポキシ樹脂等の様々な材料であってもよい。
【0036】
本願のこの実施形態で提供するパワーモジュールは、シール層60をさらに含む。シール層60は、基板10から間隔を空けて配置され、基板10及びシール層60は、充填空間によって分離される。充填空間は、プラスチック封止層80を充填するために使用される。プラスチック封止層80は、作製されると、基板10とシール層60との間の充填空間を満たし、ピン50及び部品30をシールすることができる。
【0037】
シール層60と基板10との間の間隔を使用してプラスチック封止層80の厚さを制限し、プラスチック封止層80がピン50の接続領域を封止するのを防ぐことができる。プラスチック封止層80を熱硬化性材料によって作製するときに、部品30及びピン50を含む基板10を金型に配置し、上型及び下型で囲い込むことによってプラスチック封止層80の射出成形のためのキャビティを形成する。ピン50の接続領域がプラスチック封止層80の外部に確実に露出するようにするために、ピン50を回避するための回避孔が上型に配置され、シール層60が上型と圧接して上型の回避孔を塞いで、熱硬化性材料を注入できるシールされたキャビティを形成する。射出成形が完了した後に、プラスチック封止層80が基板10とシール層60との間に充填され、シール層60のシール効果により、熱硬化性材料がピン50の接続領域にオーバーフローするのが防止される。
【0038】
図3をさらに参照すると、プラスチック封止層80を作製するときに、プラスチック封止層80は、シール層60の外側に部分的に延びており、プラスチック封止層80の延長部分は、シール層60の側壁を包み込む。プラスチック封止層80は凹状断面を有しており、シール層60はプラスチック封止層80の中央の窪み領域に位置しており、プラスチック封止層80はシール層60の側壁を包み込む。前述の構造を使用する場合に、シール層60はプラスチック封止層80によって包み込まれ、それによりプラスチック封止層80とシール層60との間の接触面積が増大する。また、プラスチック封止層80が固化するときに、シール層60は、プラスチック封止層80内に埋め込まれ、プラスチック封止層80にシール方式で接続される。シール層60は、パワーモジュール全体のシール部品としても使用され、パワーモジュールの防水、防湿、及び防塵効果を高めることができる。
【0039】
図4は、本願の一実施形態によるシール層60の構造の概略図を示す。シール層60は、主構造体61を含む。主構造体61には、各ピンと嵌合する貫通孔62が設けられるように構成される。シール層60がピンに対してスリーブ化されると、ピンは、対応して1つずつ貫通孔62に挿入され、貫通孔62の側壁とシール接触する。
【0040】
オプションの解決策では、各ピンと1対1で対応するボス構造63が、シール層60に関するものであり且つプラスチック封止層80とは反対側に向く面に設けられる。ボス構造63は、主構造体61に関するものであり且つ基板とは反対側に向く面に設けられる。各貫通孔62は、メイン構造体61及びボス構造63を貫通する。ピンが貫通孔62に挿入されると、ボス構造63は、貫通孔62の深さを増大させる、すなわち、ピン50とシール層60との間の接触面積を増大させ、それによってピン50とシール層60との間のシール効果が高まり、プラスチック封止層80の射出成形中にプラスチック封止材料のオーバーフローが防止され得る。
【0041】
オプションの解決策では、シール層60は、シリカゲル又はゴム等の良好なシール性能を有する材料によって作製され得る。
【0042】
オプションの解決策では、シール層60がピンにシール方式で接続される場合に、シール層60とピンとの間のシールは、シール層60の弾性性能及びピンと貫通孔62との間の締り嵌めを使用して実現してもよく、又はシール層60とピンとの間のシールは、シーラントを使用してシール層60をピンに接合することによって実現してもよい。
【0043】
図5は、ピンとシール層との間の嵌合の概略図を示す。各ピン50は、シール層60の挿入深さを制限する制限構造51を有しており、制限構造51は、ピン50の接続領域に設けられる。シール層60がピン50に対してスリーブ化されるときに、シール層60に関するものであり且つプラスチック封止層に向く面が、制限構造51に押し付けられ、それによりシール層60がピン50に沿って挿入される深さを制限し、シール層60がピン50に対してスリーブ化された後に基板10に対して実質的に平行であり、プラスチック封止層80の規則的な充填空間がシール層60及び基板10による囲い込みによって形成されることをさらに確実にする。また、制限構造51とシール層60との間の圧接は、シール層60とピン50との間の接触面積をさらに増大させ、それによりシール層60のシール効果をさらに高めることができる。
【0044】
例えば、ピン50の制限構造51は、ベンチ形状の構造又は階段状の構造等、様々な構造であってもよい。制限構造51が階段状の構造である場合に、階段状の構造はシール層60の外側に位置してもよく、階段状の構造の段差面が、シール層60に関するものであり且つ基板10に向く面に押し付けられ、シール層60の貫通孔は、径が一定の貫通孔である。あるいはまた、制限構造51は、シールクッションと共にシール層60に挿入してもよい。具体的には、シールクッション付きシール層60の貫通孔62は階段状の孔(段付き孔)であり、階段状の孔の第1の孔の開口方向が基板に向いており、階段状の孔の第2の孔の開口方向が基板とは反対側に向いている。第1の孔の直径は、第2の孔の直径よりも大きい。組立中に、階段状の構造の段差面が、階段状の孔の段差面に押し付けられる。制限構造51がベンチ形状の構造である場合に、ベンチ形状の構造のサイズは、基板から離れる方向に徐々に小さくなる。シールクッション付きシール層60の貫通孔は、嵌合されるベンチ形状の孔である。ベンチ形状の構造が挿入されると、ベンチ形状の構造の側壁がベンチ形状の孔の側壁と接触し、シール層60の挿入深さが増すにつれて、ピン50とシール層60との間の接触圧力が徐々に増大し、それによりシール層60とピン50との間のシール効果が高まる。
【0045】
オプションの解決策では、制限構造51がベンチ形状の構造である場合に、制限構造51は、円形のベンチ形状の構造、又は正方形のベンチ形状の構造等の様々なベンチ形状の構造であってもよい。
【0046】
図6は、本願の一実施形態による別のパワーモジュールの概略切断図を示す。図6のいくつかの参照符号については、図3の同じ参照符号を参照されたい。図6のパワーモジュールは、基板10、部品30、ピン50、プラスチック封止層80、及びシール層60に加えて、カバープレート70を含む。カバープレート70は、ピン50に対してスリーブ化され、シール層60に関するものであり且つ基板10とは反対側に向く面に配置される。組立中に、カバープレート70は、シール層60と圧接する。カバープレート70の硬度が、シール層60の硬度よりも大きく、それによってカバープレート70は、シール層60を保護し、シール層60が損傷を受けるのを防ぐことができる。また、プラスチック封止層を作製するときに、上型は、カバープレート70を使用してシール層60に力を伝達することができ、カバープレート70は、シール層60の支持構造として使用することができる。
【0047】
オプションの解決策では、カバープレート70は、プラスチック又は樹脂等の比較的高い硬度を有する材料によって作製してもよい。前述の材料は全て、比較的高い硬度を有する。
【0048】
オプションの解決策では、カバープレート70がシール層60と積層(laminated:ラミネート)されるときに、カバープレート70は、接着剤を使用してシール層60に接合して接続され、それによりカバープレート70とシール層60との間の接続の安定性を向上させることができる。
【0049】
オプションの解決策では、プラスチック封止層80に関するものであり且つシール層60まで延びる部分が、カバープレート70をさらに包み込み、カバープレート70に接続及び固定され得、それによってパワーモジュールの防水及び防湿効果をさらに高めることができる。
【0050】
図7は、カバープレートの構造の概略図を示す。複数の貫通孔71が、カバープレート70に配置される。貫通孔71の配置位置及び数量はピンの配置位置及び数量に対応し、カバープレート70がピンに対して確実にスリーブ化されるようにする。
【0051】
オプションの解決策では、シール層がボス構造を有する場合に、ボス構造と嵌合する収容溝72がカバープレート70に設けられる。組立中に、カバープレート70はシール層に取り付けられ、シール層のボス構造は、カバープレート70の収容溝72に挿入される。ボス構造が異なる形状である場合に、収容溝72の形状がボス構造の形状と一致するので、ボス構造を収容溝72内に配置することができる。例えば、ボス構造が円形のボスである場合に、対応する収容溝72は円形の溝である、又はボス構造がテーパー付きボスである場合に、対応する収容溝72はテーパー溝である。
【0052】
オプションの解決策では、ボス構造は、対応する収容溝72と締り嵌め状態にある。カバープレート70が組み立てられると、カバープレート70はボス構造を圧迫して弾性変形を生じさせ、それによりピンとボス構造との間の接触圧力を増大させ、ピンに対するシール層のシール効果を高めることができる。
【0053】
収容溝72は貫通孔71と1対1で対応し、収容溝72は貫通孔71に接続され、カバープレート70をボス構造及びピンに確実に組み付けることができることを理解されたい。
【0054】
図8は、本願の一実施形態による別のパワーモジュールの概略断面図を示す。図8のいくつかの参照符号については、図6の同じ参照符号を参照されたい。図8に示されるパワーモジュールは、図6に示したパワーモジュールとは、プラスチック封止層80が異なっている点で異なる。図8に示されるパワーモジュールでは、プラスチック封止層80の延長部分が、基板10及びシール層60の側壁を包み込む。
【0055】
プラスチック封止層80は、水平部分と2つの垂直部分とを含むH形状の断面を有する。水平部分はシール層60と基板10との間に位置しており、2つの垂直部分は基板10の外側に位置する。図2に示されるパワーモジュールの3次元図から、図8に示されるプラスチック封止層80は、パワーモジュールの周囲に位置することが理解されよう。垂直部分による囲い込みによりフレーム構造体が形成され、基板10、部品30、ピン50、シール層60、及びカバープレート70がフレーム構造体に内包される。従って、パワーモジュールの防水及び防湿効果を高めることができる。
【0056】
また、プラスチック封止層80が図8に示される構造体を使用する場合に、垂直部分は、基板10をさらに保護し、絶縁耐電圧を高めることができる。
【0057】
オプションの解決策では、プラスチック封止層80の垂直部分の幅は1mm以上である。例えば、プラスチック封止層80の垂直部分の幅は2mmであり得る。
【0058】
本願の実施形態で提供するパワーモジュールの構造の理解を容易にするために、以下では、添付の図面を参照してパワーモジュールの作製方法について説明する。
【0059】
ステップ001:基板にはんだを取り付ける。
【0060】
図9aに示されるように、基板10は、プリント回路基板又は別のタイプの基板であってもよい。しかしながら、使用する基板のタイプに関係なく、基板10は少なくとも1つの金属線層を含む。少なくとも1つの金属線層は、部品に電気的に接続するように構成された回路層と、接地層とを含む。また、複数のパッド20がさらに基板10上に配置され、これには限定されないが、部品に電気的に接続するように構成されたパッド20及びピンに電気的に接続するように構成されたパッド20が含まれる。はんだが基板10に取り付けられると、はんだは、部品30及びピン50に対応するパッド20に接続される。特定のはんだ取付けは、具体的には、はんだペースト印刷、はんだラグ取付け、はんだワイヤ取付け等を含むことができる。
【0061】
ステップ002:部品をはんだ付けする。
【0062】
図9bに示されるように、部品30は、LF(Leadframe、リードフレーム)はんだ付けによって基板10に固定される。部品30は、様々な能動又は受動部品、チップ、絶縁部品、封止したチップ、又はコンデンサ等の抵抗器-コンデンサ部品を含む。
【0063】
ステップ003:部品を相互接続する。
【0064】
図9cに示されるように、部品30は、ボンディングワイヤ40を使用して基板10の回路層に接続される。ボンディングワイヤ40の一端が、部品30に関するものであり且つ基板10とは反対側に向く面に電気的に接続され、ボンディングワイヤ40の他端が、基板10上のパッド20に接続される。このようにして、部品30は回路に接続され、部品30は、ボンディングワイヤ40を使用して回路層に電気的に接続される。
【0065】
ステップ004:ピンを組み立てる。
【0066】
図9dに示されるように、半田ペーストをピン50に対応するパッド20に塗布し、ピン50は、対応するパッド20に半田付け方式で固定される。ピン50は、パッド20を使用して基板10上の回路層に電気的に接続される。
【0067】
ステップ005:シール層を組み立てる。
【0068】
図9eに示されるように、シール層60はピン50に対してスリーブ化され、シール層60はピン50でシールされる。シール層60とピン50との間のシール方法については、図4の関連する説明を参照されたい。詳細はここでは説明しない。シール層60がピン50に対してスリーブ化されるときに、シール層60の挿入深さは、ピン50の制限構造によって制限され得る。このようにして、プラスチック封止層80の厚さは、シール層60によって制限され、これにより、ピン50の接続領域へのプラスチック封止化を避けることができる。詳細については、図5の関連する説明を参照されたい。詳細はここでは説明しない。
【0069】
ステップ006:カバープレートを組み立てる。
【0070】
図9fに示されるように、カバープレート70はピン50に対してスリーブ化され、カバープレート70はシール層60と積層される。配置中に、シール層60のボス構造がカバープレート70の収容溝に挿入され、ピン50とシール層60との間のシール効果を高める。詳細については、図7の関連する説明を参照されたい。詳細はここでは説明しない。
【0071】
ステップ007:モジュールにプラスチック封止を行う。
【0072】
図9gに示されるように、図9fで作製した半完成品を射出成形のための金型に入れ、プラスチック封止材料を加熱によりプラスチック封止層80に固化させる。
【0073】
本願の一実施形態は、作製金型をさらに提供する。以下では、作製金型を参照してパワーモジュールのプラスチック封止工程について詳細に説明する。
【0074】
図10は、本願の一実施形態による作製金型の構造の概略図を示す。本願のこの実施形態で提供する金型100は、前述のパワーモジュールを製造するように構成される。作製金型100は、上型110と、上型110に覆われる下型120とを含む。使用中に、下型120は、装置又は金型ベースに固定して配置され、上型110は、装置又は金型ベースに配置され得、下型120に対して移動することができる。上型110を移動させる装置は、射出成形装置における一般的な装置であり、詳細についてここでは説明しない。上型110が下型120に対して特定の高さまで上昇すると、上型110が下型120から分離され、射出成形が行われる半完成品200が下型120に配置されて固定される。次に、上型110を特定の高さだけ下降させて下型120を覆い、囲い込みによって射出成形のための空間を形成する。
【0075】
図11は、本願の一実施形態による上型の構造の概略図を示す。本願のこの実施形態で提供する上型110は、ホルダ111と、ホルダ111に着脱可能な方法で接続された上型コア112とを含む。ホルダ111は、上型110を駆動する装置に接続するように構成され、上型コア112は、射出成形が行われる半完成品200に押し付けられるように構成される。上型110が下型を覆うと、上型コア112が下型に圧接し、囲い込みにより熱硬化性材料が充填される空間が形成される。
【0076】
上型コア112が、射出成形が行われる半完成品20に押し付けられるときに、上型コア112はカバープレートに押し付けられ得、カバーの位置を制限するように構成され、プラスチック封止材料が射出成形中にシール層と基板との間に確実に充填されるようにする。パワーモジュールがカバープレートを有していない場合に、上型コア112をシール層に押し付けてシール層を制限することができ、それにより同じ効果を達成することができる。
【0077】
オプションの解決策では、キャビティ1111がホルダ111内に配置され、キャビティ1111は上型コア112を収容するように構成される。例えば、キャビティ1111は台形のキャビティであってもよく、台形キャビティの側壁と垂直方向との間に特定の角度が含まれる(図11に示される上型の配置方向を基準方向として使用する)。上型コア112もまた、一致する台形形状を有する。組立中に、キャビティ1111の側壁は、上型コア112の外側壁にクランプされ、それにより上型コア112をホルダ111に固定する。あるいはまた、上型コア112は、ネジ付きコネクタ(ネジ、ボルト、又はボルトアセンブリ)を使用してホルダ111に着脱可能な方法で接続して固定され得る。
【0078】
ピンを回避するための回避孔1121が、上型コア112に設けられる。上型コア112がカバープレート又はシール層に押し付けられると、ピンは回避孔1121を貫通し、それにより上型コア112がピンを圧迫しないようにする。図11に示されるように、上型コア112は、垂直方向に特定の高さを有しており、回避孔1121の深さがピンの接続領域の長さ以上であることを保証し、それによりピンの安全性を高める。
【0079】
オプションの解決策では、上型コア112がカバープレートに押し付けられると、位置決め構造が上型コア112とカバープレートとの間に設けられ、上型コア112をカバープレートと確実に位置合わせすることができ、それにより射出成形中の精度が向上する。オプションの解決策では、位置決め構造は、上型コア112に設けられた位置決めコラム1122と、カバープレート上に設けられ且つ位置決めコラム1122と嵌合する位置決めスロットとを含むことができる。あるいはまた、位置決め構造は、上型コア112に設けられた位置決めスロットと、カバープレートに設けられ且つ位置決めスロットと嵌合する位置決めコラムとを含む。
【0080】
図12は、上型コアの底面図を示す。上型コア112に関するものであり且つ下型に向く面(第1の面1123)は、カバープレート又はシール層との十分に大きな接触面積を有するべきであり、全てのピンが回避孔1121を貫通し得る。一例では、回避孔1121は、第1の面1123の角部に設けられず、第1の面1123がカバープレート又はシール層に確実に押し付けられ、それによりカバープレート又はシール層の端部の反りを回避し、パワーモジュールの射出成形効果を確保することができる。
【0081】
オプションの解決策では、回避孔1121はピンと1対1で対応することができ、又は回避孔1121は少なくとも2つのピンに対応することができる。回避孔1121が少なくとも2つのピンに対応する場合に、パワーモジュールに対して互いに相対的に近接する2つ以上のピンは、1つのグループのピンに分割され得る。第1の面1123に設けられた回避孔1121は、1つのピン又は1つのグループのピンを収容することができ、それにより、設けられる回避孔1121の数量を減らし、金型の精度に対する要求を減らす。
【0082】
パワーモジュールが異なる機能を使用する場合に、対応するピンの数量及び配置方法も異なる。従って、本願のこの実施形態で提供する作製金型は、異なるタイプのパワーモジュールに対応する上型コアを有する。各上型コアには、上型コアに対応するパワーモジュールのピンと一致する回避孔がある。製造中に、製造したパワーモジュールを交換する必要がある場合に、交換のために上型コアのみをホルダから取り外す必要があり、下型と上型内のホルダを交換する必要がないため、一組の装置を使用して、異なるタイプの多数のパワーモジュールを製造することができ、交換が便利である。
【0083】
上記の説明から、本願のこの実施形態で提供する作製金型は、高い信頼性でプラスチック封止型パワーモジュールの製造を実現することができ、異なる位置にピンを有するパワーモジュールのプロセス開発が、プラスチック封止型パワーモジュールに対応するプラスチック封止金型の交換可能な上型コアを交換するだけで容易に実現することができることが分かるだろう。このようにして、開発コストが削減され、金型製作期間が短縮され、製品開発効率が向上する。また、異常生産によって生じる接着剤のオーバーフローにより金型が使用できない場合に、交換可能な上型コアを交換して問題を迅速に解決し、製造への影響を回避することができる。
【0084】
本願の一実施形態は、装置をさらに提供する。この装置は、電源モジュールと、電源モジュールに接続された上記のいずれか1つに記載のパワーモジュールとを含む。装置は、サーボモータ、周波数コンバータ、又はインバータ等の様々な装置であってもよい。しかしながら、装置の特定の機能に関係なく、使用するパワーモジュールは、ピンを包み込むためにプラスチック封止層を使用することができ、それによってパワーモジュールの防水及び防湿効果が高まり、パワーモジュールの保護効果及びパワーモジュールの性能が向上する。このようにして、装置の防水及び防湿効果を高めることができ、装置の安全性を高めることができる。
【0085】
当業者が、本願の範囲から逸脱することなく、本願に対して様々な修正及び変形を行うことができることは明らかである。本願は、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等の技術によって規定される保護の範囲内にあるという条件で、本願のこれらの修正及び変形をカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g
図10
図11
図12