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特許7544483滑り軸受構成体の軸受体の製造方法および軸受体
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  • 特許-滑り軸受構成体の軸受体の製造方法および軸受体 図1
  • 特許-滑り軸受構成体の軸受体の製造方法および軸受体 図2
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  • 特許-滑り軸受構成体の軸受体の製造方法および軸受体 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】滑り軸受構成体の軸受体の製造方法および軸受体
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/14 20060101AFI20240827BHJP
   F16C 17/00 20060101ALI20240827BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240827BHJP
   B23P 15/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F16C33/14 Z
F16C17/00 Z
F16C33/20 Z
B23P15/00 Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020008287
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2020118298
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10 2019 101 969.9
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598113922
【氏名又は名称】レンク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘンチュケ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ウンガー
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208736(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00881175(GB,A)
【文献】特表2017-537281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/00-33/28
F16C 17/00-17/26
B23P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置式のハウジング内でロータの回転軸を支承するための滑り軸受構成体のハウジング側軸受体、またはロータ側軸受体を製造するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
前記軸受体の基体(10)を設けるステップと、
前記基体(10)の表面(11)を加工する、すなわち互いに交差する複数の溝(12,13)を形成することによって加工し、互いに交差する溝(12,13)の間に、複数の棒状の突起(15) が形成されるステップと、
アンダーカット状の凹所または幾何形状部(16)からなる確定されたパターンを形成するように、前記突起(15)を矯正させるステップと、
滑り軸受材料が、前記アンダーカット状の凹所または幾何形状部(16)に浸透するように、または前記アンダーカット状の凹所または幾何形状部を充填するように、前記矯正された突起(15)を備える表面(11)上に滑り軸受材料を適用するステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記互いに交差する溝(12,13)は、互いに垂直に延在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記突起(15)の矯正は、曲げ加工によって行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
互いに隣接した列および/または行内の前記棒状の突起(15)は、異なる方向に曲げられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
互いに隣接した列および/または行内の前記棒状の突起(15)は、反対の方向に曲げられることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基体(10)は金属材料製であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記滑り軸受材料は熱可塑性プラスチックであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
定置式のハウジング内で、前記定置式のハウジングに対してロータの回転軸を支承するための滑り軸受構成体の軸受体であって、
基体(10)と、
前記基体(10)の表面(11)に形成された、互いに交差する溝(12,13)であって、当該溝は複数の棒状の突起(15)を画定し、当該棒状の突起(15)は、アンダーカット状の凹所または幾何形状部(16)からなる確定されたパターンを形成しながら矯正されている、互いに交差する溝と、
前記矯正された突起(15)を備える前記表面(11)上に、前記アンダーカット状の凹所または幾何形状部(16)に浸透させながら、あるいは前記アンダーカット状の凹所または幾何形状部を充填しながら設けられる滑り軸受材料と、を備える軸受体。
【請求項9】
前記互いに交差する溝(12、13)は、互いに対して直交している、請求項8に記載の軸受体。
【請求項10】
互いに隣接した列および/または行内の前記棒状の突起(15)は、異なる方向に曲げられている、請求項8または9に記載の軸受体。
【請求項11】
互いに隣接した列および/または行内の前記棒状の突起(15)は、反対の方向に曲げられている、請求項8から10のいずれか一項に記載の軸受体。
【請求項12】
前記基体は金属材料製である、および/または前記滑り軸受材料は熱可塑性プラスチックである、請求項8から11のいずれか一項に記載の軸受体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滑り軸受構成体の軸受体を製造するための方法に関する。本発明はまた、滑り軸受構成体の軸受体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジング内でロータを支承するため、すなわちロータの回転軸を支承するための滑り軸受構成体は実践から基本的に知られている。すなわち滑り軸受構成体は、ロータに対向する滑り面を有するハウジング側軸受体および/またはステータに対向する滑り面を有するロータ側軸受体を有している。
【0003】
滑り軸受構成体の軸受体において、それぞれの軸受体の滑り面は滑り軸受材料によって提供され、当該滑り軸受材料は、それぞれの軸受体の基体の表面上に設けられている。このとき、滑り面を形成する滑り軸受材料を、基体上に持続的に設けることは困難である。
【0004】
滑り軸受材料を基体の表面上に持続的に設けるために、特許文献1から、本来の基体と滑り軸受材料との間に中間層を設けることが知られており、当該中間層は多孔層として形成されている。特許文献2から、基体と滑り軸受材料との間に、ガルバニックコーティングされたワイヤからなる中間層を設けることが知られており、当該ワイヤはアンダーカット部を形成する。
【0005】
滑り軸受構成体の軸受体をわずかなコストで製造すること、およびわずかなコストで製造することができる軸受体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102011087821号
【文献】独国特許発明第102016110858号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は滑り軸受構成体の軸受体を製造するための新式の方法と、滑り軸受構成体の軸受体を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は請求項1に記載の軸受体を製造するための方法によって解決される。
【0009】
当該方法は少なくとも以下のステップ、すなわち軸受体の基体を準備するステップと、基体の表面を加工する、すなわち互いに交差する複数の溝を形成することによって加工し、互いに交差する溝の間に複数の棒状の突起が形成されるステップと、アンダーカット状の凹所または幾何形状部からなる確定されたパターンを形成しながら、突起を矯正させるステップと、矯正された突起を備える表面上に、アンダーカット状の凹所または幾何形状部に浸透させながら、またはアンダーカット状の凹所または幾何形状部を充填しながら、滑り軸受材料を設けるステップと、を含む。
【0010】
本発明により、軸受体の基体、すなわち滑り軸受材料を設けるべき当該基体の表面に、所定の加工を施すことが提案され、第一のステップにおいて、互いに交差する溝が、棒状の突起を形成しながら表面に作り込まれ、第二のステップにおいて、当該突起は矯正され、それによりアンダーカット状の凹所または幾何形状部からなる確定されたパターンを形成する。矯正された突起を備える当該表面上に、アンダーカット状の凹所もしくは幾何形状部に浸透させながら、もしくはアンダーカット状の凹所もしくは幾何形状部を充填しながら、滑り軸受材料が設けられる。
【0011】
これによりわずかなコストで、滑り軸受材料が持続的かつ確実に基体に付着する滑り軸受構成体の軸受体を提供することができ、特殊な中間層を基体上に設ける必要がない。それどころか基体には、滑り軸受材料を担持すべき表面において上記のやり方で加工が施され、それによりアンダーカット状の凹所または幾何形状部を提供し、当該アンダーカット状の凹所または幾何形状部を経て最終的に、滑り軸受材料を安全かつ確実に基体上に設けることができ、それにより滑り軸受材料を持続的に基体上に保持もしくは固定する。
【0012】
一の有利な発展的構成によれば、アンダーカット状の凹所または幾何形状部からなる確定されたパターンを形成しながら突起を矯正することは、曲げ加工によって行われる。曲げ加工による突起の矯正は、特に好ましい。このとき切削加工による突起の形成と、曲げ加工による突起の矯正とは、工作機械上で行われる基体の同一の締結において行うことができる。これにより方法を、特に簡単に保つことができる。
【0013】
一の有利な発展的構成によれば、棒状の突起は列および行を形成し、棒状の突起は、当該棒状の突起からなる列および/または行が交互に異なる方向に、好ましくは反対の方向に曲げられる。棒状の突起を所定の方向に曲げることにより、曲げパターンを提供することができ、当該曲げパターンは、特に有利なアンダーカット状の凹所または幾何形状部を提供し、それにより滑り軸受材料を持続的かつ安全に基体上に保持する。
【0014】
本発明に係る軸受体は、請求項8に定義されている。
【0015】
本発明の好適な発展的構成は従属請求項および以下の詳細な説明に記載されている。本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳しく説明するが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。図面に示すのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】軸受体の基体を、当該基体の中間加工ステップにおいて示す図である。
図2】さらなる加工ステップの後の図1の基体を示す図である。
図3図2を断面で示す図である。
図4図2に類似した状態における軸受体のさらなる基体を示す図である。
図5図4を断面で示す図である。
図6図2に類似した状態における軸受体のさらなる基体を示す図である。
図7図2に類似した状態における軸受体のさらなる基体を示す図である。
図8図6を部分的な断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は滑り軸受構成体の軸受体を製造するための方法と、滑り軸受構成体の軸受体に関する。
【0018】
このとき軸受体は、アキシャル滑り軸受構成体であれ、ラジアル滑り軸受構成体であれ、ハウジング側軸受体およびロータ側軸受体のいずれであってもよい。ハウジング側軸受体は、ハウジングに固定されており、ロータに対向する滑り面を提供する。ロータ側軸受体は、ロータ側に固定されており、ステータに対向する滑り面を提供する。
【0019】
本発明に係る軸受体を製造するために、まず、軸受体の基体10が準備され、当該基体10は好ましくは、例えば鋼のような金属材料から成る。
【0020】
続いて基体10は、軸受体の滑り軸受材料が設けられるべき少なくとも一つの表面11において加工され、すなわち、互いに交差する複数の溝12,13を形成することにより加工される。こうして図1は、アキシャル滑り軸受構成体の軸受体の基体10を斜視的に見たものを示しており、当該基体の表面11に、互いに平行に延在する複数の溝12および互いに平行に延在する複数の溝13が形成されており、当該溝は互いに交差し、当該溝12,13は図1において互いに垂直に延在し、多数の棒状の突起15からなるアレイ14を形成し、当該アレイは行および列を形成する。
【0021】
続く加工ステップにおいて、棒状の突起15は矯正(図2参照)、特に棒状の突起15を曲げ加工することによる矯正を施され、それにより表面11にアンダーカット状の凹所または幾何形状部16が形成される。
【0022】
矯正された突起15を備え、このように加工された表面11上に、滑り軸受材料、特に例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような熱可塑性プラスチックが設けられるが、それはアンダーカット状の凹所または幾何形状部16に浸透させながら、あるいはアンダーカット状の凹所または幾何形状部を充填しながら行われる。これにより軸受体の基体10の表面11上に、滑り軸受材料が特に確実に付着することが保証され得る。
【0023】
図2において突起15は曲げ加工によって矯正されており、それにより突起15は、図2に示される棒状の突起15からなる行が、交互に異なる方向に、すなわち反対の方向に曲げられている。
【0024】
したがって行をなす突起15は、交互に、全体として左に向かう第一の方向に曲げられているか、または全体として右に向かう反対の第二の方向に曲げられている。その場合、異なる方向に曲げられた棒状の突起15からなる個々の行の間には、依然として連続的な溝12が形成されているが、これに対して溝13は、上記の曲げ加工のために、連続的に自由ではなくなっている。
【0025】
付加的に、棒状の突起15を列ごとに曲げ加工することも行われていてよく、それにより特に、右に向かって曲げられた突起15が付加的に、当該突起に対して垂直に前に向かって、および/または左に向かって曲げられた突起15が付加的に、当該突起に対して反対方向の後ろに向かって曲げられる。
【0026】
棒状の突起15に対して、多数の曲げパターンが想定可能であり、それにより相応のアンダーカット状の凹所もしくは幾何形状部16を提供し、当該アンダーカット状の凹所もしくは幾何形状部は、最終的に、滑り軸受材料を基体10上に確実に付着させることを可能にする。
【0027】
図4および図5は、ラジアル滑り軸受構成体の軸受体の基体10の細部を示しており、軸受体はラジアル軸受けセグメントであり、当該ラジアル軸受けセグメントは、支承すべき軸の円周全体にわたって延在するのではなく、円周の部分領域の周囲にのみ延在する。この基体10は、当該基体の径方向内側の表面11が、図1から図3に示されるアキシャル滑り軸受構成体の基体10と類似したやり方で加工されている。したがって不必要な重複を回避するために、同一の構成グループに対しては同一の参照番号が用いられる。図1から図3の実施の形態についての上記の記載を参照することができる。
【0028】
図6はラジアル滑り軸受構成体のための基体10を示しており、当該基体は周方向において、支承すべき軸の周囲に閉鎖された状態で延在する。この基体10は、当該基体の径方向内側の表面11が、図1から図3、もしくは図4および図5の実施の形態の基体10と類似したやり方で加工されており、したがって図6についても、上記の記載を参照することができる。
【0029】
図1から図3図4および図5および図6に示される実施の形態は、特にステータ側軸受体、もしくはステータ側軸受体のための基体10であり、当該ステータ側軸受体もしくはステータ側軸受体のための基体はしたがって、ステータに接着されており、ロータに対向する表面が上記のやり方で加工され、滑り軸受材料を備えている。
【0030】
これに対して図7および図8は、ロータ側軸受体のための基体10を示しており、当該基体は表面11において、しかも径方向外側の表面11であって、後にステータに対向する表面において、矯正された棒状の突起15を形成しながら加工されており、それによりアンダーカット状の凹所または幾何形状部16を形成する。曲げ加工された突起15を備える当該表面11上に滑り軸受材料が設けられるが、ここでも曲げ加工された突起15を形成するアンダーカット状の凹所または幾何形状部16を充填しながら、またはアンダーカット状の凹所または幾何形状部16に浸透させながら設けられ、それにより、基体10上に滑り軸受材料が確実に保持されることを保証する。
【0031】
したがって本発明は、滑り軸受構成体の軸受体を製造するための方法と、滑り軸受構成体の軸受体と、を提案し、軸受体はそれぞれの基体10を有し、当該基体は、滑り軸受材料が設けられるべき表面11において、まず互いに交差する溝12,13と、棒状の突起15とを形成しながら、特に切削プロセスを経て加工されている。
【0032】
続いて突起15を矯正させることにより、アンダーカット状の凹所または幾何形状部16が形成され、当該アンダーカット状の凹所または幾何形状部は最終的に、軸受体のそれぞれの基体10のそれぞれの表面11上に、滑り軸受材料が確実に付着することを可能にする。
【0033】
このとき、すでに述べたように軸受体は、アキシャル滑り軸受構成体のための軸受体、あるいはラジアル滑り軸受構成体のための軸受体であってよく、好ましくはアキシャル滑り軸受構成体のための軸受セグメント、あるいはラジアル滑り軸受構成体のための軸受セグメントである。
【符号の説明】
【0034】
10 基体
11 表面
12 溝
13 溝
14 アレイ
15 棒状の突起
16 アンダーカット状の凹所/幾何形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8