IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-測定装置および測定方法 図1
  • 特許-測定装置および測定方法 図2
  • 特許-測定装置および測定方法 図3
  • 特許-測定装置および測定方法 図4
  • 特許-測定装置および測定方法 図5
  • 特許-測定装置および測定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N33/49 K
G01N33/49 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020014053
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120648
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 誠
(72)【発明者】
【氏名】源田 弘長
(72)【発明者】
【氏名】濱田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】江崎 龍洋
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/202621(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0014040(KR,A)
【文献】国際公開第2007/128684(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044055(WO,A1)
【文献】特開2019-124548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 15/00 - 15/1492
G01N 35/00 - 35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体の赤血球の凝集を測定する測定装置であって、
前記血液検体が貯留される貯留部と、
前記貯留部から前記血液検体を吸引するポンプと、
前記貯留部に連通して、前記ポンプによって吸引された前記血液検体およびリンス液が流れる流路と、
前記流路に光を照射する照射部、および前記照射部から照射され、前記流路を透過または反射した前記光を受光する受光部を備える検出部と、
前記貯留部および前記検出部の間に配置され、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知するセンサと、
前記センサにより、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知した後に、前記ポンプの駆動停止を制御する制御部と、を有する測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記貯留部に貯留された前記リンス液が前記流路に移動した後に、前記流路に空気層が侵入してきたことを前記センサによって検知した後、前記ポンプを停止する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記ポンプによって前記リンス液を吸引し続けている際に、前記センサが前記リンス液を検知しないとき、
前記制御部は、前記流路が閉塞している、または前記リンス液が液切れであると判断する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記ポンプはチューブポンプであって、
前記流路において、前記血液検体の流速が生じている際に、前記流路が遮断または切り替えられることにより前記血液検体の送液を停止する弁をさらに有する請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記流路が遮断されるように前記弁を切り替えた後に、前記ポンプを停止する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記照射部および前記受光部は、複数設けられ、
前記制御部は、複数の前記受光部によって取得されるシレクトグラムの波形を比較する、請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記センサは、インピーダンスセンサ、オプティカルセンサの少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記ポンプはチューブポンプであって、
前記弁および前記チューブポンプの間から分岐して設けられる初期化用流路と、
前記初期化用流路に設けられ、前記初期化用流路の開放および遮断を切り替える開閉弁と、
前記チューブポンプのローラの位置が所定の位置にあるかを検出する検出センサと、を有する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項9】
前記検出センサは、エンコーダー、流量センサの少なくとも1つである、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記弁は三方弁であって、
前記三方弁は、前記検出部、前記チューブポンプ、および前記初期化用流路に接続される、請求項8または9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記流路内の前記血液検体を所定の温度に調整する調温部をさらに有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項12】
血液検体が貯留される貯留部と、
前記貯留部から前記血液検体を吸引するポンプと、
前記貯留部に連通して、前記ポンプによって吸引された前記血液検体またはリンス液が流れる流路と、
前記流路に光を照射する照射部、および前記照射部から照射され、前記流路を透過または反射した前記光を受光する受光部を備える検出部と、
前記貯留部および前記検出部の間に配置され、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知するセンサと、
前記ポンプの駆動停止を制御する制御部と、を有するとともに、前記血液検体の赤血球の凝集を測定する測定装置の測定方法であって、
前記貯留部に貯留された前記リンス液が前記流路に移動した後に、前記流路に空気層が侵入してきたことを前記センサによって検知した後、前記ポンプを停止する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球凝集の測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球凝集(集合)反応の測定方法として、血液に一定のずり応力を与えたのちに瞬時に流速を止め、その際に見られる光学密度変化(シレクトグラムと称する)を測定する方法が知られている。
【0003】
シレクトグラムを正確に測定するためには、所定のずり応力を与えた後で、血流を瞬時に止めることが必要である。一方、貯留部に貯留されている血液検体を測定部である検出部まで移動させるための手段として、例えば下記の特許文献1に記載されているようなチューブポンプを用いることができる。チューブポンプはローラが周方向に沿って回転する際に、チューブを押圧することによって、血液検体が吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-83233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チューブポンプや接続される樹脂製のチューブによる流路全体の粘弾性により、正確な血液の流れる位置や流速の制御、血流の停止等、血液の流動制御が困難である。具体的には、血液をチューブポンプで吸引する際に、血液からチューブポンプの間に圧縮性流体である空気が存在すると、空気の持つ大きな粘弾性に起因して、圧力伝達が減衰して、シレクトグラムの測定において要求される正確な血液の流動制御が困難となる。
【0006】
この問題は、チューブポンプに限らず、吸引用のポンプを用いる場合でも、同様である。
【0007】
ここで、圧力伝達の減衰を低減するためには、流路を非圧縮性流体であるリンス液で満たすことが考えられる。しかしながら、リンス液および血液が接触してしまうと、血液の濃度や成分が変化し、シレクトグラムを正確に測定することができない虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、正確に血液を流動制御できるとともに、リンス液および血液が接触することを防止することのできる測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る測定装置は、血液検体の赤血球の凝集を測定する測定装置である。測定装置は、前記血液検体が貯留される貯留部と、前記貯留部から前記血液検体を吸引するポンプと、前記貯留部に連通して、前記ポンプによって吸引された前記血液検体およびリンス液が流れる流路と、前記流路に光を照射する照射部、および前記照射部から照射され、前記流路を透過または反射した前記光を受光する受光部を備える検出部と、前記貯留部および前記検出部の間に配置され、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知するセンサと、前記センサにより、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知した後に、前記ポンプの駆動停止を制御する制御部と、を有する。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明に係る測定方法は、血液検体が貯留される貯留部と、前記貯留部から前記血液検体を吸引するポンプと、前記貯留部に連通して、前記ポンプによって吸引された前記血液検体またはリンス液が流れる流路と、前記流路に光を照射する照射部、および前記照射部から照射され、前記流路を透過または反射した前記光を受光する受光部を備える検出部と、前記貯留部および前記検出部の間に配置され、前記流路において液体から気体に切り替わることを検知するセンサと、前記ポンプの駆動停止を制御する制御部と、を有するとともに、前記血液検体の赤血球の凝集を測定する測定装置の測定方法であって、前記貯留部に貯留された前記リンス液が前記流路に移動した後に、前記流路に空気層が侵入してきたことを前記センサによって検知した後、前記ポンプを停止する。
【発明の効果】
【0011】
上述した測定装置および測定方法によれば、センサによって、リンス液の後に空気層が流路内に侵入してきたことを検知できる。したがって、少量の空気層の後に血液検体を吸引することによって、血液およびリンス液の間に血液の流動制御に支障が生じない量の空気層を配置することができる。以上から、正確に血液を移動できるとともに、リンス液および血液が接触することを防止することのできる測定装置および測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る測定装置のチューブポンプを示す概略図である。
図3】本実施形態に係る測定装置の検出部を示す概略図である。
図4】シレクトグラムの例を示す図である。
図5】変形例1に係る測定装置を示す概略図である。
図6】変形例2に係る測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る測定装置1を示す概略図である。図2は、本実施形態に係る測定装置1の検出部50を示す概略図である。図3は、本実施形態に係る測定装置1のチューブポンプ20を示す概略図である。図4は、シレクトグラムの例を示す図である。
【0015】
測定装置1は、血液検体のシレクトグラム(図4参照)を測定するための装置である。測定装置1は、図1に示すように、貯留部10と、チューブポンプ(ポンプに相当)20と、流路30と、検出部50と、センサ60と、制御部70と、を有する。
【0016】
貯留部10は、血液検体またはリンス液が貯留される。貯留部10は、具体的には、カップである。ノズル(不図示)によって、採血管(不図示)から取得された血液検体またはリンス液が、貯留部10に移動される。
【0017】
血液検体は、あらかじめ患者から採取され、採血管内に収容される。採血管には、抗凝固剤として、例えばEDTA(Ethylenediaminetetraacetic Acid)が血液検体に添加されうる。
【0018】
チューブポンプ20は、図1に示すように、流路30の下流に配置される。チューブポンプ20は、貯留部10に貯留されている血液検体またはリンス液を吸引する。リンス液は、流路30内の血液検体を洗浄するための液体である。チューブポンプ20は、図2に示すように、周方向に120度間隔で配置された3つのローラ21と、3つのローラ21を周方向に回転させる回転部22と、流路30と接続されるチューブ23と、を有する。
【0019】
チューブポンプ20の3つのローラ21が周方向に沿って回転する際に、チューブ23を押圧することによって、血液検体が吸引される。
【0020】
貯留部10内の血液検体は、チューブポンプ20によって吸引されることで一定のずり応力が印加される。チューブポンプ20を正回転することによって、血液検体が吸引され、チューブポンプ20を逆回転することによって、血液検体が戻される。シレクトグラムを測定する直前まで、温度調整するとともに、制御部70によってチューブポンプ20を正回転および逆回転して、血液検体を流路30の進行方向に対して前後運動させる。
【0021】
流路30は、図1に示すように、貯留部10の下方に連続して設けられる。流路30は、例えば透明のガラス管である。流路30は、チューブポンプ20によって吸引された血液検体が流れる。
【0022】
検出部50は、流路30内を流れる血液検体の流れが停止する前を始点に、透過光の強度を検知して、図4に示すシレクトグラムを測定する。なお、検出部50が検出する始点として、流路30内を流れる血液検体の流れが停止する前に限定されず、停止した直後等任意に設定できるものとする。
【0023】
検出部50は、図3に示すように、流路30に光を照射する照射部51と、照射部51から照射されて流路30を透過した光を受光する受光部52と、血液検体が流通する光学セル53と、光学セル53を保持する保持部54と、光学セル53の温度を調整する調温部(不図示)と、を有する。
【0024】
照射部51および受光部52は、2つずつ設けられる。照射部51は、例えば近赤外線発生器で構成される。受光部52は、血液検体を透過した透過光の強度を検知する。受光部52が、例えばフォトダイオードで構成される。調温部はヒーターである。調温部は、例えば保持部54の外周に配置される。調温部が設けられることによって、光学セル53内の血液検体の温度を一定に保つことができ、シレクトグラムを好適に測定することができる。
【0025】
照射部51および受光部52が2つずつ設けられることによって、2か所における血液検体のシレクトグラムを測定することができる。このため、測定される2つのシレクトグラムを比較することによって、例えば一方のシレクトグラムのグラフが所定のグラフとは異なっている場合、気泡やコンタミが含まれていることが原因で測定できていないと判断して、他方のシレクトグラムの結果を採用することができる。
【0026】
図4に示すように、シレクトグラムの横軸は時間を示し、縦軸は透過光強度を示している。図4に示すシレクトグラムの例においては、受光部52として用いられたフォトダイオードの出力電圧が、透過光強度として示されている。
【0027】
シレクトグラムにおいては、流路30内を流れる血液検体の流れが停止された時間をt=0とし、その少し後に(t=t)、透過光強度が最小値Vminとなる。最小値Vminにおいては、流路30内において個々に解離し分散した赤血球により、照射光が散乱および吸収されることで、透過光強度が最も小さくなるのに対して、流れが停止された瞬間(t=0)においては、流れによるせん断応力により赤血球が流れ方向に沿って変形、配向した状態であり、Vminよりもやや透過光量が大きい状態になっていることに起因する。
【0028】
透過光強度は、時間tにおいて最小値Vminとなった後、増加する。これは、流れが停止されることで赤血球の凝集が開始され、凝集により増大する赤血球の隙間を照射光が透過するためである。赤血球が凝集するのは、炎症に伴い増加する正に帯電したフィブリノゲン等の血中タンパクにより、負に帯電している赤血球間の反発が妨げられるからである。
【0029】
シレクトグラムに基づいて、赤血球の凝集に関するパラメータ(以下、「凝集パラメータ」と称する)を算出する。凝集パラメータには、赤血球の凝集と対応関係にあるパラメータが広く含まれ得る。
【0030】
凝集パラメータを算出するために、時間tから所定時間経過後の時間tが設定される。当該所定時間は、シレクトグラムにおいて透過光強度の増加速度がある程度低下して飽和する任意の時間に設定され得る。時間tのときの透過光強度が、凝集パラメータを算出する際の凝集パラメータの最大値Vmaxとして設定される。凝集パラメータには、シレクトグラムに基づいて次のように算出されるパラメータAIが含まれ得る。パラメータAIは、シレクトグラムにおいて、時間間隔t-tを一辺とし、透過光強度の最大値Vmaxと透過光強度の最小値Vminとの差AMPを他辺とする長方形の領域Sの面積に対する、領域Sのうちシレクトグラムの曲線より下の領域Bの面積の比として算出される。すなわち、パラメータAIは、シレクトグラムにおいて、領域Aの面積と領域Bの面積の和に対する領域Bの面積の比(すなわち、B/(A+B))として算出される。領域Aの面積は、領域Sのうちシレクトグラムの曲線より上の領域である。凝集パラメータには、AIの他、Bの面積、Aの面積、AMP、および時間t1/2の各値が含まれ得る。時間t1/2は、時間tのときの透過光強度の最小値Vminから透過光強度がAMP/2増加したときの時間である。
【0031】
センサ60は、図1に示すように、貯留部10および検出部50の間に配置される。センサ60は、貯留部10に連続する流路30に空気層あるいは、液体の有無を検知するセンサである。すなわち、センサ60は、流路30において液体から気体に切り替わることを検知する。センサ60としては、空気層あるいは液体の有無を検知することができる限りにおいて限定されないが、例えば、インピーダンスセンサまたはオプティカルセンサを用いることができる。
【0032】
センサ60としてインピーダンスセンサを用いる場合は、流路30の貯留部10側の端部、および流路30の検出部50に連結する箇所を互いに接続する。そして、流れる電流を検知しながら、空気層の流入に伴い電流が流れなくなったら、空気層が流入してきたと判断する。
【0033】
また、センサ60としてオプティカルセンサを用いる場合は、リンス液および血液検体の液体から空気層に変化したときの屈折率の変化を利用して、空気層が流入してきたことを検知する。
【0034】
制御部70は、各構成部品の駆動等を制御する。制御部70は、例えば、CPUであり、プログラムに従って上記各構成要素の制御や各種の演算処理等を実行する。
【0035】
次に、上述した測定装置1を用いた測定方法について説明する。
【0036】
まず、制御部70は、貯留部10にリンス液を供給する。
【0037】
そして、制御部70は、チューブポンプ20が正回転するように駆動させて、流路30をリンス液で満たす。そして、貯留部10に貯留されたリンス液がすべて流路30に流入した後に、空気層が流路30に流入した際に、センサ60によって空気層の流入を検知する。
【0038】
ここで、チューブポンプ20によってリンス液を吸引し続けている際に、センサ60がリンス液を検知しないまたは空気層を検知しないとき、制御部70は、流路30が閉塞している、またはリンス液が液切れであると判断する。
【0039】
そして、制御部70は、センサ60によって空気層の流入を検知した際に、チューブポンプ20を停止する。
【0040】
そして、制御部70は、ノズルによって採血管から血液検体を取得し、貯留部10に血液検体を供給する。
【0041】
次に、制御部70は、チューブポンプ20が正回転するように駆動させて、検出部50に血液検体を供給する。この結果、チューブポンプ20からセンサ60の間に満たされたリンス液および血液検体の間に空気層が設けられる。例えば、リンス液および血液検体の間に空気層が設けられず、リンス液および血液検体が直接接触する場合、血液検体がリンス液と混ざりあって希釈されて引き込まれるため、正確にシレクトグラムを測定することができなくなる可能性がある。また、貯留部10とチューブポンプ20の間に空気層が多く存在する場合にも、空気層が大きな粘弾性となって血液の吸引および攪拌する速度が減衰し、正確にシレクトグラムを測定することができなくなる。この観点から、空気層は例えば2~10マイクロリットル程度含まれることが好ましい。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る測定方法によれば、リンス液および血液検体の間に少量の空気層が設けられるため、血液検体がリンス液と混ざることがなく、かつ血液の攪拌速度が減衰することなく、正確にシレクトグラムを測定することができる。
【0043】
そして、制御部70は、血液検体の凝集が開始しないように、チューブポンプ20を正回転および逆回転することによって、血液検体を流路30に対して前後運動させる。
【0044】
そして、制御部70は、シレクトグラムを測定するタイミングで、チューブポンプ20の駆動を停止する。このため、チューブポンプ20を用いて血液検体の血流を速やかに停止することができる。
【0045】
そして、検出部50によって、血液検体のシレクトグラムを測定する。ここで、検出部50は、2つの照射部51および受光部52を有しており、2か所においてシレクトグラムを測定することができる。このため、測定される2つのシレクトグラムを比較することによって、例えば一方のシレクトグラムのグラフが所定のグラフとは異なっている場合、気泡やコンタミが含まれていることが原因で好適に測定できていないと判断し、他方のシレクトグラムの結果を用いることができる。また、一方のシレクトグラムのグラフが所定のグラフとは異なっている場合、例えば再計測の指示を使用者に報知してもよい。
【0046】
そして、シレクトグラムを測定した後、制御部70は再度貯留部10にリンス液を供給する。そして、供給されたリンス液をチューブポンプ20によって吸引することで、流路30を洗浄する。そして、リンス液を貯留部10に供給して流路30を洗浄する工程を繰り返す際に、センサ60が設けられるため、貯留部10内のリンス液をすべて吸引し終えて空気層が流入してきたことを検知することができる。よって、貯留部10内のリンス液が完全になくなってから次にリンス液を貯留部10に加えることができる。このため、貯留部10からリンス液がこぼれることを好適に防止することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る測定装置1は、血液検体の赤血球の凝集を測定する測定装置1である。血液検体が貯留される貯留部10と、貯留部10から血液検体を吸引するチューブポンプ20と、貯留部10に連通して、チューブポンプ20によって吸引された血液検体またはリンス液が流れる流路30と、流路30に光を照射する照射部51、および照射部51から照射され、流路30を透過した光を受光する受光部52を備える検出部50と、貯留部10および検出部50の間に配置され、流路30において液体から気体に切り替わることを検知するセンサ60と、チューブポンプ20の駆動停止を制御する制御部70と、を有する。このように構成された測定装置1によれば、センサ60によって、リンス液の後に空気層が流路内に侵入してきたことを検知できる。したがって、少量の空気層の後に血液を吸引することによって、血液およびリンス液の間に血液の流動制御に支障が生じない量の空気層を配置することができる。以上から、正確に血液を移動できるとともに、リンス液および血液が接触することを防止することができる。
【0048】
また、制御部70は、貯留部10に貯留されたリンス液が流路30に移動した後に、流路30に空気層が侵入してきたことをセンサ60によって検知した後、チューブポンプ20を停止する。このように構成された測定装置1によれば、確実に、血液およびリンス液の間に空気層を配置することができる。
【0049】
また、チューブポンプ20によってリンス液を吸引し続けている際に、センサ60がリンス液を検知しないまたは空気層を検知しないとき、制御部70は、流路30が閉塞している、またはリンス液が液切れであると判断する。このように構成された測定装置1によれば、流路30の閉塞、またはリンス液の液切れを確実に検知することができる。
【0050】
また、照射部51および受光部52は、2つ設けられ、制御部70は、2つの受光部52によって取得されるシレクトグラムの波形を比較する。このように構成された測定装置1によれば、測定される2つのシレクトグラムを比較することによって、例えば一方のシレクトグラムのグラフが所定のグラフとは異なっている場合、気泡やコンタミが含まれていることが原因で好適に測定できていないと判断し、再測定を促す情報提示を行うか、他方のシレクトグラムの結果を採用することができる。
【0051】
また、以上説明したように、本実施形態に係る測定方法は、血液検体が貯留される貯留部10と、貯留部10から血液検体を吸引するチューブポンプ20と、貯留部10に連通続して、チューブポンプ20によって吸引された血液検体が流れる流路30と、流路30に光を照射する照射部51、および照射部51から照射され、流路30を透過した光を受光する受光部52を備える検出部50と、貯留部10および検出部50の間に配置され、流路30において液体から気体に切り替わることを検知するセンサ60と、チューブポンプ20の駆動停止を制御する制御部70と、を有するとともに、シレクトグラムを測定する測定装置1の測定方法である。貯留部10に貯留されたリンス液が流路30に移動した後に、流路30に空気層が侵入してきたことをセンサ60によって検知した後、チューブポンプ20を停止する。この測定方法によれば、センサ60によって、リンス液の後に空気層が侵入してきたことを検知できる。したがって、空気層の後に血液を吸引することによって、血液およびリンス液の間に空気層を配置することができる。以上から、正確に血液を移動できるとともに、リンス液および血液が接触することを防止することができる。
【0052】
<変形例1>
次に、図5を参照して、変形例1に係る測定装置2の構成について説明する。図5は、変形例1に係る測定装置2を示す概略図である。変形例1に係る測定装置2は、上述した実施形態に係る測定装置1と比較して、弁40が設けられる点が異なる。なお、上記実施形態に係る測定装置1に係る測定装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
変形例1に係る測定装置2は、図5に示すように、貯留部10と、チューブポンプ20と、流路30と、弁40と、検出部50と、センサ60と、制御部70と、を有する。貯留部10、チューブポンプ20、流路30、検出部50、センサ60、および制御部70の構成は、上述した実施形態に係る測定装置1と同一の構成であるため、説明は省略する。
【0054】
弁40は、図5に示すように、検出部50およびチューブポンプ20の間に配置される。弁40を開くことによって、流路30を開放して、流路30内に血液検体や流路30内の血液検体を洗浄するリンス液を流すことができる。一方、弁40を閉じることによって、流路30を遮断して流路30内の血液検体やリンス液の流通を停止することができる。弁40の開閉は、制御部70によって行われる。
【0055】
次に、上述した変形例1に係る測定装置2を用いた測定方法について説明する。
【0056】
まず、制御部70は、貯留部10にリンス液を供給する。
【0057】
そして、制御部70は、弁40を開いた状態で、チューブポンプ20が正回転するように駆動させて、流路30をリンス液で満たす。そして、貯留部10に貯留されたリンス液がすべて流路30に流入した後に、空気層が流路30に流入した際に、センサ60によって空気層の流入を検知する。
【0058】
そして、制御部70は、センサ60によって空気層の流入を検知した際に、弁40を閉じる。そして、制御部70は、弁40を閉じた直後に、チューブポンプ20を停止する。
【0059】
そして、制御部70は、ノズルによって採血管から血液検体を取得し、貯留部10に血液検体を供給する。
【0060】
次に、制御部70は、弁40を開くとともに、チューブポンプ20が正回転するように駆動させて、検出部50に血液検体を供給する。この結果、チューブポンプ20からセンサ60の間に満たされたリンス液および血液検体の間に空気層が設けられる。
【0061】
そして、制御部70は、血液検体の凝集が開始しないように、チューブポンプ20を正回転および逆回転することによって、血液検体を流路30に対して前後運動させる。
【0062】
そして、制御部70は、シレクトグラムを測定するタイミングで、弁40を閉じるとともに、弁40を閉じた直後にチューブポンプ20の駆動を停止する。このとき、上述した実施形態に係る測定装置1と比較して、速やかに血液検体の血流を停止することができる。
【0063】
この後の工程は上述した実施形態に係る測定装置1と同様であるため、説明は省略する。
【0064】
<変形例2>
次に、図6を参照して、変形例2に係る測定装置3の構成について説明する。図6は、変形例2に係る測定装置3を示す概略図である。変形例2に係る測定装置3は、上述した変形例1に係る測定装置2と比較して、初期化用流路80等が設けられる点が異なる。なお、上記実施形態に係る測定装置1または変形例1に係る測定装置2と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
変形例2に係る測定装置3は、図6に示すように、貯留部10と、チューブポンプ20と、流路30と、弁40と、検出部50と、センサ60と、制御部70と、初期化用流路80と、開閉弁90と、検出センサ100と、を有する。貯留部10、チューブポンプ20、流路30、弁40、検出部50、センサ60、および制御部70の構成は、上述した変形例1に係る測定装置2と同一の構成であるため、説明は省略する。
【0066】
上述の実施形態で説明したように、チューブポンプ20の3つのローラ21が周方向に沿って回転する際に、チューブ23を押圧することによって、血液検体が検出部50に吸引される。このため、ローラ21の潰し部分によっては、流速が一時的に低下し、正確な位置に血液を吸引制御することができないことや、シレクトグラム測定において重要である赤血球を解離させるための所定のずり応力に制御することができない。よって、チューブポンプ20の正回転および逆回転によって血液検体を前後運動させて撹拌させる場合、流速が低下するローラ21の潰し位置を所定の初期位置にセットさせる(初期化)必要がある。また、血液を検出部50の所定の位置に吸引するとともに、チューブポンプ20の初期化を行うためには、血液の吸引と独立してチューブポンプ20を駆動させる必要があり、貯留部10とチューブポンプ20の間の流路を遮断し、異なる流路へ切り替えることが必要となる。
【0067】
以下、変形例2に係る測定装置3の構成について説明する。初期化用流路80は、弁40およびチューブポンプ20の間から分岐して設けられる。初期化用流路80は、大型のチャンバまたは大気に開放されている。
【0068】
初期化用流路80には、開閉弁90が配置されている。弁40を遮断し、開閉弁90を開くことによって、初期化用流路80を開放して、初期化用流路80内に血液検体やリンス液を流すことができる。一方、弁40を開放し、開閉弁90を閉じることによって、初期化用流路80を遮断して、初期化用流路80内の血液検体やリンス液の流通を停止することができる。開閉弁90の開閉は、制御部70によって行われる。
【0069】
検出センサ100は、チューブポンプ20のローラ21の位置が所定の位置にあるかを検出する。検出センサ100としては、ローラ21の位置が所定の位置にあるかを検出することのできるセンサであれば特に限定されないが、例えば、エンコーダーまたは流量センサ、磁気センサ、距離センサを用いることができる。
【0070】
検出センサ100として、エンコーダーを用いる場合、チューブポンプ20の回転に合わせて120度の回転角度ごとにパルス信号を出力して、このパルス信号は制御部70に出力される。これによって、ローラ21の位置を確認することができる。
【0071】
また、検出センサ100として流量センサを用いる場合、チューブポンプ20の近傍を流れるリンス液の流量に基づいて、ローラ21の位置を確認する。
【0072】
次に、変形例2に係る測定装置3の測定方法について説明する。変形例2に係る測定装置3の測定方法は、変形例1に係る測定装置2の測定方法と比較して、リンス液および血液検体の間に空気層を設けるまでの工程は同一である。
【0073】
リンス液および血液検体の間に空気層を設けた後、制御部70は、弁40を閉じて開閉弁90を開く。そして、制御部70は、チューブポンプ20を駆動させて、検出センサ100によって得られる情報に基づいて、ローラ21の位置を初期化する。このようにローラ21の位置を初期化することによって、チューブポンプ20の正回転および逆回転によって血液検体を好適に前後運動させることができる。
【0074】
そして制御部70は、弁40を開いて開閉弁90を閉じる。そして制御部70は、検出部70への血液吸引及び血液の前後運動を開始する。その後の工程は、変形例1に係る測定装置2の測定方法と同一である。
【0075】
なお、本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0076】
例えば、上述した変形例における弁40を三方弁として、当該三方弁が検出部50、チューブポンプ20、および初期化用流路80に連結される構成であってもよい。この構成によれば、測定装置を簡略化することができる。
【0077】
また、上述した実施形態では、照射部51および受光部52は2つ設けられたが、3つ以上設けられてもよい。また、照射部51および受光部52は1つずつ設けられてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、測定装置1はセンサ60を有していたが、測定装置はセンサ60を有していなくてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、受光部52は血液検体を透過した透過光の強度を検知した。しかしながら、受光部は血液検体を反射した反射光の強度を検知してもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、ポンプとしてチューブポンプを例に挙げて説明したが、他のポンプを用いてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、ノズルは貯留部10とは別に設けられていたが、ノズルは貯留部に一体的に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1、2 測定装置、
10 貯留部、
20 チューブポンプ、
21 ローラ、
30 流路、
40 弁、
50 検出部、
51 照射部、
52 受光部、
60 センサ、
70 制御部、
80 初期化用流路、
90 開閉弁、
100 検出センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6