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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045561
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021149183
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-281642(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145684(WO,A1)
【文献】特開2008-242659(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1902958(KR,B1)
【文献】特表2020-533726(JP,A)
【文献】特開2010-33518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災受信機に感知器ベースを介して火災感知器が接続された火災報知設備であって
前記感知器ベースと前記火災感知器の間に設けられ、設置環境を観測して環境観測値を前記火災受信機へ送信する環境監視手段と、
前記火災受信機に設けられ、前記火災感知器からの信号を受信して火災警報を出力させると共に、前記環境監視手段からの前記環境観測値を受信して報知する受信機制御部と、が設けられ、
前記火災感知器に固有のアドレスが設定されると共に前記火災感知器に配置された前記環境監視手段に同じ前記アドレスが設定され、
前記火災受信機の受信機制御部は、前記アドレスを指定した呼出信号を送信し、
前記火災感知器は、自己アドレスに一致するアドレスの前記呼出信号を判別した場合に、感知器検出値の応答信号を前記火災受信機へ送信し、
前記環境監視手段は、自己アドレスに一致するアドレスの前記呼出信号を判別した場合に、前記感知器検出値の送信に係る時間に基づく所定時間後に前記環境観測値の応答信号を前記火災受信機へ送信することを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
火災受信機に感知器ベースを介して火災感知器が接続された火災報知設備であって
前記感知器ベースと前記火災感知器の間に設けられ、設置環境を観測して環境観測値を前記火災受信機へ送信する環境監視手段と、
前記火災受信機に設けられ、前記火災感知器からの信号を受信して火災警報を出力させると共に、前記環境監視手段からの前記環境観測値を受信して報知する受信機制御部と、が設けられ、
前記受信機制御部は、前記火災感知器からの信号に基づき火災を検出した場合、前記環境監視手段の動作を停止させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項記載の火災報知設備に於いて、
前記受信機制御部は、火災を検出した後に所定の火災復旧操作を検出した場合前記環境監視手段の停止動作を解除させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れに記載の火災報知設備に於いて、
前記環境監視手段は、前記設置環境の温度、湿度、微小粒子性物質(PM)、照度、放射線、振動、騒音、害虫の少なくとも一つを観測することを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れに記載の火災報知設備に於いて、
前記環境監視手段は、前記感知器ベースとの装着面に前記感知器ベースと電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第1嵌合構造が設けられ、前記火災感知器との装着面に前記火災感知器と電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第2嵌合構造が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災受信機から引き出された信号線に接続した火災感知器からの火災信号を受信して警報する火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、P型(Proprietary-type)の火災報知設備にあっては、火災受信機からの信号線にオンオフ火災感知器を接続して信号線単位に監視領域の火災を監視しており、火災受信機はオンオフ火災感知器からの火災発報信号を受信して火災警報を出力するようにしている。
【0003】
また、従来のR型(Record-type)の火災報知設備にあっては、火災受信機からの信号線にアナログ火災感知器を接続し、アナログ火災感知器は固有アドレスが設定されると共に伝送機能を備え、感知器単位(アドレス単位)に監視領域の火災を監視しており、火災受信機はアナログ火災感知器で検出した煙濃度や温度等のアナログ値が所定の火災閾値を超えたときに火災と判定し、感知器アドレスに対応した火災発生場所を示す火災警報を出力するようにしている。
【0004】
一方、火災報知設備が設置されたオフィスビル等の建物にあっては、火災感知器が設置された監視領域となる部屋等に対しては、日常的に過ごしやすい室内環境を維持するために温度センサや湿度センサを設け、監視センター等で室内温度や室内湿度を監視することで、最適に室内環境を維持するための空調運転や換気といった管理及び制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-151478号公報
【文献】特開平2002-026744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、火災報知設備の監視領域となっている部屋等の環境状態を監視するためには、温度センサや湿度センサ等の環境監視用のセンサを設置すると共に、監視センターとの間に信号線を敷設して環境状態を監視する必要があり、専用の信号線を必要とすることから設備コストが嵩み、また、既設の建物に環境監視用のセンサを配置して監視センター等で環境状態を監視する設備を設けることは、追加改修の工事が大変であり、その実現は困難な状況にある。
【0007】
また、火災感知器の設置場所は、監視領域となる部屋の天井面の略中央となる位置にあり、防災以外の状態を監視する例えば環境監視用のセンサにとっても好適な位置といえるが、法的に基準に従って火災感知器が既に設置されていることから、火災感知器以外のセンサの設置に利用することはできず、環境監視用のセンサ等の設置場所が制約されるという問題もある。
【0008】
本発明は、監視領域に設置している火災感知器を利用して、防災以外の情報を含めた監視区域の総合的な監視を簡単且つ容易に実現可能とする火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(火災報知設備)
本発明は、火災受信機に、感知器ベースを介して火災感知器が接続された火災報知設備に於いて、
感知器ベースと火災感知器の間に設けられ、設置環境の状態を観測して環境観測値を火災受信機へ送信する環境監視手段と、
火災受信機に設けられ、火災感知器からの信号を受信して火災警報を出力させると共に、環境監視手段からの環境観測値を受信して報知する受信機制御部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0010】
(環境監視の内容)
環境監視手段は、設置環境の温度、湿度、微小粒子性物質(PM)、照度、放射線、振動、騒音、害虫の少なくとも一つを観測する。
【0011】
(環境監視手段の嵌合構造)
環境監視手段は、感知器ベースとの装着面に感知器ベースと電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第1嵌合構造が設けられ、火災感知器との装着面に火災感知器と電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第2嵌合構造が設けられる。
【0012】
(R型火災報知設備の感知器検出値と環境観測値の伝送)
火災感知器に固有のアドレスが設定されると共に火災感知器に配置された環境監視手段に同じアドレスが設定され、
火災受信機の受信機制御部は、アドレスを指定した呼出信号を送信し、
火災感知器は、自己アドレスに一致するアドレスの呼出信号を判別した場合に、感知器検出値の応答信号を火災受信機へ送信し、
環境監視手段は、自己アドレスに一致するアドレスの呼出信号を判別した場合に、感知器検出値の送信に係る時間に基づく所定時間後に環境観測値の応答信号を火災受信機へ送信する。
【0013】
(火災時の環境監視動作の停止)
受信機制御部は、火災感知器からの信号に基づき火災を検出した場合、環境監視手段の動作を停止させる。
【0014】
(火災復旧による環境監視動作の再開)
受信機制御部は、火災を検出した後に所定の火災復旧操作を検出した場合環境監視手段の停止動作を解除させる。
【発明の効果】
【0015】
(基本的な効果)
本発明は、火災受信機に、感知器ベースを介して火災感知器が接続された火災報知設備に於いて、感知器ベースと火災感知器の間に設けられ、設置環境の状態を観測して環境観測値を火災受信機へ送信する環境監視手段と、火災受信機に設けられ、火災感知器からの信号を受信して火災警報を出力させると共に、環境監視手段からの環境観測値を受信して報知する受信機制御部とが設けられたため、火災受信機により火災を含む防災情報以外に、火災感知器を設置している監視領域となる、例えば部屋の環境状態を適切に監視することが可能となる。さらに、環境監視手段にとって好適な位置にある火災感知器の設置場所に環境監視手段を設置できるため、環境監視手段による観測性能を十分に発揮することを可能とする。
【0016】
また、火災感知器は監視領域となる部屋の天井面に固定設置された感知器ベースに着脱自在に設けられ、これに対し環境監視手段は感知器べースと火災感知器の間に設けることで、火災感知器の設置場所をそのまま利用して設置環境の状態を適切に監視できる。
【0017】
更に、火災報知設備の信号線を使用して環境監視手段からの環境観測値を火災受信機に送信していることから、新たに環境監視用の信号線を敷設することなく火災感知器を設置している監視領域の環境状態を適切に監視することができ、既設の火災報知設備にも簡単且つ容易に適用することができる。
【0018】
(環境監視内容の効果)
また、環境監視手段は、設置環境の温度、湿度、微小粒子性物質(PM)、照度、放射線、振動、騒音、害虫の少なくとも一つを観測するようにしたため、火災感知器の設置環境における火災以外の様々な環境状態を必要に応じて監視し、監視区画の快適な利用に役立たせることができる。
【0019】
(環境監視手段の嵌合構造による効果)
また、環境監視手段は、感知器ベースとの装着面に感知器ベースと電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第1嵌合構造が設けられ、火災感知器との装着面に火災感知器と電気的且つ機械的に着脱自在に嵌合される第2嵌合構造が設けられたため、環境監視手段を監視領域に設置した感知器ベースと火災感知器の間に、簡単且つ容易に配置して環境を監視することができ、また、既設の火災報知設備であっても、同様に、感知器ベースから火災感知器を外して間に環境監視手段を配置し、また、火災受信機に環境監視手段との間で信号を送受信する機能を追加するだけで、簡単且つ容易に設置環境の状態を監視できる。
【0020】
(R型火災報知設備の感知器検出値と環境観測値の伝送による効果)
火災感知器に固有のアドレスが設定されると共に火災感知器に配置された環境監視手段に同じアドレスが設定されており、火災受信機の受信機制御部は、アドレスを指定した呼出信号を送信し、火災感知器は、自己アドレスに一致するアドレスの呼出信号を判別した場合に感知器検出値の応答信号を火災受信機へ送信し、環境監視手段は、自己アドレスに一致するアドレスの呼出信号を判別した場合に、感知器検出値の送信に係る時間に基づく所定時間後に環境観測値の応答信号を火災受信機へ送信するため、火災感知器と環境監視手段を対応させることが可能となり、火災感知器の動作に連動して環境監視手段を動作させることが可能となる。さらに環境監視手段が所定時間後に環境観測値の応答信号を火災受信機へ送信するため、火災感知器の動作を優先しながら感知器検出値の応答信号と環境観測値の応答信号が衝突することを防止することができる。
【0021】
(火災時の環境監視動作の停止による効果)
また、火災受信機は、火災感知器からの信号に基づき火災を検出した場合、環境監視手段の動作を停止させるようにしたため、感知器側に環境監視手段を設けていても、火災時に環境監視動作が停止することで、受信機制御部の環境監視制御に対する負担がなくなり、その分、火災監視制御に対する制御性能が向上し、火災感知器の設置環境を監視する機能を設けていても、本来の火災監視機能が損なわれることはない。
【0022】
(火災復旧による環境監視動作の再開による効果)
また、受信機制御部は、火災を検出した後に所定の火災復旧操作を検出した場合環境監視手段の停止動作を解除させるようにしたため、火災の鎮火確認後に火災受信機で行われる復旧操作に連動して、それまで停止していた環境監視手段による環境監視動作を自動的に再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】R型火災報知設備の概略をR型火災受信機の機能構成と共に示したブロック図である。
図2図1の感知器ベース、環境監視手段及び火災感知器の機能構成を示したブロック図である.
図3図1のR型火災報知設備におけるR型火災受信機とアナログ火災感知器及び環境監視手段との間の信号伝送を示したタイムチャートである。
図4図1の火災受信機による制御動作を示したフローチャートである。
図5図1の環境監視手段による制御動作を示したフローチャートである。
図6】P型火災報知設備の概略を火災受信機の機能構成と共に示したブロック図である。
図7図6の感知器ベース、環境監視手段及び火災感知器の機能構成を示したブロック図である。
図8図7の火災受信機による制御動作を示したフローチャートである。
図9図8の環境監視手段による制御動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る火災報知設備の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
【0025】
[実施の形態の基本的な概念]
実施の形態は、概略的に、火災報知設備に関するものである。
【0026】
「火災報知設備」とは、監視領域の火災を検出して報知する手段であり、例えば、火災受信機からの信号線に、感知器ベースを介して火災感知器が接続され、火災感知器により監視領域の火災を検出したときに火災受信機から火災警報を出力して報知するものであり、R型火災報知設備およびP型火災報知設備を含む概念である。また、火災受信機と感知器ベースとの間の通信経路の一部または全部は無線通信により構成されてもよい。
【0027】
ここで、「監視領域」とは、火災報知設備により火災監視の対象となる領域であり、一定の広がりをもった屋外、屋内の空間であり、例えば、建物の部屋、廊下、階段等の領域を含む概念である。また「火災受信機」とは、火災感知器からの信号を受信して火災と判定したときに音及び又は表示により警報を行って人に知らせるものであり、R型火災受信機とP型火災受信機に分類される。また「火災感知器」とは、火災に伴う煙濃度や温度を検出して検出値又は火災と判定した信号を火災受信機に送信するものであり、アナログ火災感知器とオンオフ火災感知器に分類され、煙感知器や熱感知器を含む概念である。
【0028】
また「R型火災報知設備」とは、R型火災受信機とアナログ火災感知器で構成され、感知器単位(感知器アドレス単位)に火災を監視する設備である。ここで、「R型火災受信機」とは、アナログ火災感知器で検出された煙濃度や温度等の感知器検出値(アナログ値)と感知器アドレスを受信し、火災と判定したときに、感知器アドレスに基づき火災発生場所を示す火災警報を出力するものである。また「アナログ火災感知器」とは、煙濃度や温度等を検出してAD変換したアナログデータ(アナログ値)としての感知器検出値を、自己のアドレスと共にR型火災受信機に送信するものである。
【0029】
また「P型火災報知設備」とは、P型火災受信機とオンオフ火災感知器で構成され、信号線単位に火災を監視する設備である。ここで、「P型火災受信機」とは、オンオフ火災感知器の火災検出に基づく火災発報信号を受信し、火災と判定したときに、信号線に対応した監視領域、例えば火災発生階を示す火災警報を出力するものである。また「オンオフ火災感知器」とは、煙濃度や温度等を検出して所定の火災閾値以上又は火災閾値を超えたときに火災発報信号をP型火災受信機に送信するものである。
【0030】
本実施形態の火災報知設備は、環境監視手段と受信制御部を備え、環境監視手段は火災感知器に設けられ、受信制御部は火災受信機に設けられる。
【0031】
「環境監視手段」とは、感知器ベースと火災感知器の間に設けられ、設置環境を観測して火災受信機に環境観測値を送信する手段である。ここで、「設置環境を観測する」とは、例えば、設置環境の温度、湿度、微小粒子性物質(PM)、照度、放射線、振動、騒音、害虫の少なくとも一つを観測して環境観測値を得ることであり、このため、一例として、温度センサ、湿度センサ、微小粒子性物質センサ、照度センサ、放射線センサ、振動センサ、騒音センサ、害虫センサ、超音波センサ、マイクロ波ドップラーセンサの少なくとも一つを備えるものである。
【0032】
また、「受信制御部」とは、火災受信機に設けられ、火災感知器からの信号を受信して火災警報を出力させると共に、環境監視手段からの環境観測値を受信して表示及び又は音により報知するものである。
【0033】
以下、具体的な実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態では、「監視領域」が「建物の部屋」であり、「火災報知設備」が「R型火災報知設備」または「P型火災報知設備」である場合について説明する。
【0034】
[実施の形態の具体的内容]
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.R型火災報知設備
b.アナログ火災感知器
c.R型火災報知設備における環境監視手段
d.R型火災報知設備における伝送信号
e.R型火災報知設備における火災監視制御
f.R型火災報知設備における環境監視制御
g.P型火災報知設備
h.オンオフ火災感知器
i.P型火災報知設備における環境監視手段
j.P型火災報知設備における火災監視制御
k.P型火災報知設備における環境監視制御
l.本発明の変形例
【0035】
[a.R型火災報知設備]
図1はR型火災報知設備の概略をR型火災受信機の機能構成と共に示した説明図である。図1に示すように、R型火災報知設備は、R型火災受信機10とアナログ火災感知器16で構成される。
【0036】
R型火災報知設備は、火災感知器の設置場所単位(アドレス単位)に火災を監視するものであり、建物の防災センターや管理人室等にR型火災受信機10が設置されており、R型火災受信機10から監視領域に引き出された信号線12に、天井面に設置された感知器ベース14を介してアナログ火災感知器16が接続され、更に、本実施形態にあっては、感知器ベース14とアナログ火災感知器16の間に環境監視手段18が配置され、感知器ベース14を介して信号線12に接続されている。
【0037】
感知器ベース14は、図1の右端の感知器ベース14、環境監視手段18及びアナログ火災感知器16の組立分解状態に示すように、感知器ベース14の下側の感知器取付面に、一対の嵌合端子を備えた嵌合構造14aが設けられており、この嵌合構造14aに対しアナログ火災感知器16の上側のベース取付面に設けられた一対の嵌合端子からなる嵌合構造16aにより、感知器ベース14に対しアナログ火災感知器16が電気的且つ機械的に着脱自在に接続されている。
【0038】
また、環境監視手段18を感知器ベース14とアナログ火災感知器16の間に配置するため、環境監視手段18の感知器ベース14側の装着面に一対の嵌合端子を備えた第1嵌合構造18aが設けられ、アナログ火災感知器16側の装着面に一対の嵌合端子を備えた第2嵌合構造18bが設けられ、感知器ベース14に対し環境監視手段18が電気的且つ機械的に着脱自在に設けられ、また、環境監視手段18に対しアナログ火災感知器16が電気的且つ機械的に着脱自在に接続されている。
【0039】
アナログ火災感知器16は固有のアドレスが設定されると共に伝送機能を備え、R型火災受信機10から所定周期、例えば1分周期で送信される一括A/D変換信号により煙濃度又は温度の検出信号をA/D変換によりサンプリングしてアナログ検出データとなる感知器検出値を記憶し、続いてR型火災受信機10から順次アドレスを指定して送信される自己アドレスに一致する呼出信号に対し感知器検出値がセットされた感知器応答信号を送信する。また、アナログ火災感知器16はアナログ検出値を、受信機側で火災を判断する所定の火災閾値より低い予備的に火災を判断する所定の予備火災閾値と比較して予備火災を判定する機能を備え、予備火災を判定すると所定の火災割込信号をR型火災受信機10に送信する。
【0040】
環境監視手段18は、設置環境の状態を観測して環境観測値をR型火災受信機10へ送信する。環境監視手段18は、例えば設置環境の温度、湿度、微小粒子性物質(PM)、照度、放射線、振動、騒音又は害虫の少なくとも一つを観測する。このため環境監視手段18には、例えば、環境監視対象に対応して、温度センサ、湿度センサ、微小粒子性物質センサ(PM2.5センサ)、照度センサ、放射線センサ、振動センサ、騒音センサ、害虫センサ、超音波センサ又はマイクロ波ドップラーセンサ等が設けられる。
【0041】
また、環境監視手段18には、一体に配置されたアナログ火災感知器16と同じ固有のアドレスが設定されており、アナログ火災感知器16と同様、R型火災受信機10から所定周期、例えば1分周期で送信される一括A/D変換信号によりセンサの検出信号をA/D変換によりサンプリングして環境観測データとなる環境観測値を記憶し、続いてR型火災受信機10から順次アドレスを指定して送信される自己アドレスに一致する呼出信号に対し、アナログ火災感知器16による感知器応答信号の送信が終了する所定の待ち時間の経過後に、環境観測値がセットされた環境応答信号を送信する。
【0042】
R型火災受信機10には、受信機制御部20,伝送部22、ディスプレイ装置24、表示部26、操作部28、警報部30及び移報部32が設けられている。
【0043】
受信機制御部20は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成されており、プログラムの実行により所定の火災監視制御機能に加え、監視領域に設置された環境監視手段18に対応して環境監視報知機能が実現される。
【0044】
伝送部22は監視領域に引き出された信号線12に接続されたアナログ火災感知器16及び環境監視手段18との間で信号を双方向伝送する機能を備えている。ここで、伝送部22から引き出された信号線12の1回線当りに設定可能な最大アドレスは、例えば256アドレスとしており、このため信号線12には最大256台のアナログ火災感知器16及び最大256台の環境監視手段18を接続することができる。
【0045】
R型火災受信機10の伝送部22からアナログ火災感知器16に対する下り信号は、回線電圧をデータビットに応じて変化させる電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、信号線12の電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0046】
これに対しアナログ火災感知器16からR型火災受信機10の伝送部22に対する上り信号は、信号線電流をデータビットに応じて変化させる電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、信号線12に伝送データのビット1のタイミングで信号線電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号がR型火災受信機10の伝送部22に伝送される。
【0047】
R型火災受信機10の伝送部22とアナログ火災感知器16の一体に設けられた環境監視手段18との間の信号伝送も、アナログ火災感知器16の場合と同様、伝送部22から環境監視手段18に対する下り信号は電圧モードで伝送され、環境監視手段18からR型火災受信機10の伝送部22に対する上り信号は電流モードで伝送される。
【0048】
受信機制御部20による火災監視制御は次のようになる。受信機制御部20は、通常の監視時にあっては、伝送部22に指示して全てのアナログ火災感知器16に対し所定の送信周期、例えば1分周期ごとに一括A/D変換信号を繰り返し送信している。アナログ火災感知器16はR型火災受信機10からの一括A/D変換コマンドを受信すると、検出している煙濃度や温度などの検出信号をA/D変換によりサンプリングしてアナログ検出データである感知器検出値として記憶し、また、予め定めた予備火災閾値と比較している。
【0049】
また、受信機制御部20は、伝送部22に指示して、一括A/D変換信号の送信周期の間に、感知器アドレスを順次指定した呼出信号を送信しており、アナログ火災感知器16は自己アドレスに一致するアドレスの呼出信号を受信すると、そのとき記憶している感知器検出値がセットされた感知器応答信号をR型火災受信機10に送信する。
【0050】
また、アナログ火災感知器16で一括A/D変換コマンドを受信時にサンプリングした感知器検出値が所定の予備火災閾値以上又は超えた場合に、R型火災受信機10に対し火災割込信号を送信する。この火災割込信号は、応答ビット列をオール1とするような通常は使用されない信号を送る。
【0051】
R型火災受信機10の受信機制御部20は、アナログ火災感知器16からの火災割込信号を受信すると、グループ検索信号を送信し、予備火災を検出したアナログ火災感知器16を含むグループからの予備火災の応答信号を受信してグループを判別する。
【0052】
続いて、判別したグループに含まれる個々のアナログ火災感知器16に対し、順次アドレスを指定した呼出信号の送信によるグループ内検索を行い、火災割込信号を送信したアナログ火災感知器16の感知器アドレスを認識し、一括AD変換コマンドとアドレス検索で認識した感知器アドレスを指定した呼出信号を繰り返し送信することで、感知器検出値を集中的に収集して所定の火災閾値と比較し、火災閾値以上又は火災閾値を超えた状態が所定蓄積時間続いたときに火災と断定し、感知器アドレスに対応した火災発生場所(部屋等の火災発生区画)を示す火災警報を出力する動作を行う。なお、R型火災受信機10は、火災割込信号を送信したアナログ火災感知器16のアドレスを認識すると、感知器アドレスに対応した部屋等の場所を示す予備火災警報(プリアラーム)を出力する動作を行い、関係者に注意を促す。
【0053】
一方、受信機制御部20は、感知器アドレスを順次指定した呼出信号の送信に対し、環境監視手段18から送信された環境観測値がセットされた環境応答信号が受信されることから、受信された環境観測値に基づき、環境監視手段18の設置場所の状態を示す所定の情報を生成し、ディスプレイ装置24に表示して報知させる制御を行う。この場合、環境観測値に異常があれば、所定の警報音を出して注意を促す。
【0054】
表示部26には火災代表灯、障害代表灯等の火災監視に必要な各種の表示灯が設けられている。操作部28には、火災断定スイッチ、音響停止スイッチ、地区音響一時停止スイッチ、復旧スイッチ等の火災監視に必要な各種のスイッチが設けられている。警報部30はスピーカを備え、各種の警報音や音声メッセージを出力する。移報部32は外部機器や装置に所定の移報信号を出力する。
【0055】
ここで、ディスプレイ装置24は、表示部26による機能の一部を含み、また、タッチパネル付きのディスプレイとすることで、操作部28の機能の一部を含むことができる。
【0056】
また、ディスプレイ装置24には環境監視手段18で検出している環境観測値に基づく表示が通常監視状態で行われているが、環境監視手段18に複数種類のセンサを設けて複数種類の環境観測値を受信している場合には、環境メニュー画面を表示し、必要とする環境観測値を選択的に表示可能としている。
【0057】
また、受信機制御部20は、アナログ火災感知器16から火災割込信号を受信した場合、伝送部22に指示して共通アドレスを指定した環境監視停止信号を信号線12に送信し、全ての環境監視手段18の動作を停止させる制御を行う。これにより火災発生時に受信機制御部20は火災監視の制御動作のみを行うこととなり、環境監視報知の制御動作が停止されることで、環境監視手段18を設けても火災監視制御に悪影響を及ぼすことがない。
【0058】
また、受信機制御部20は、環境監視停止信号を送信した後に、火災の鎮火に対応して行われる操作部28に設けられた復旧スイッチの操作による復旧を検出した場合、伝送部22に指示して共通アドレスを指定した環境監視停止解除信号を信号線12に送信し、全ての環境監視手段18の停止動作を解除して動作を再開させる制御を行う。
【0059】
[b.アナログ火災感知器]
図2図1の感知器ベース、環境監視手段及びアナログ火災感知器の機能構成を示した説明図である。
【0060】
図2に示すように、アナログ火災感知器16は、電源部38、伝送部40、感知器制御部42、火災センサ部44及び発報表示灯45(図示なし)により構成される。電源部38はSC線12aとC線12bからなる信号線12により受信機側から供給された電源電圧を入力し、所定の定電圧を感知器電源電圧として出力する。なお、信号線12には、伝送用のSC線12aとC線12bに加えて、専用の電源線を設けるようにしても良い。
【0061】
伝送部40はR型火災受信機10の伝送部22との間で、上り信号を電圧モードで受信し、下り信号を電流モードで送信する。
【0062】
火災センサ部44は、例えば検煙部であり、公知の散乱光式検煙構造をもち、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を出力する。また、火災センサ部44は、検煙部に代えて温度検出部を設ける場合もあり、温度検出部は、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧信号を温度検出信号として出力する。
【0063】
感知器制御部42は、CPU、メモリ、A/D変換ポートを含む各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により感知器制御部42の機能が実現される。
【0064】
感知器制御部42は、伝送部40を介して一括A/D変換信号を受信すると、火災センサ部44から出力されている煙濃度検出信号又は温度検出信号をA/D変換によりサンプリングしたアナログ検出データを感知器検出値として記憶し、続いて自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、感知器検出値がセットされた感知器応答信号を生成し、伝送部40に指示して送信する制御を行う。
【0065】
また、感知器制御部42は、感知器検出値を、受信機側の火災判断で使用する火災閾値より低い所定の予備火災閾値と比較し、予備火災閾値以上又は超えた場合に予備火災と判定し、伝送部40に指示して火災割込信号を送信させる制御を行う。
【0066】
[c.R型火災報知設備における環境監視手段]
(c1.環境監視手段の概要)
図2に示すように、環境監視手段18は、第1嵌合構造18aと第2嵌合構造18bにより、感知器ベース14とアナログ火災感知器16の間に機械的に着脱自在に配置され、且つSC線12aとC線12bからなる信号線12に電気的に着脱自在に接続されている。
【0067】
環境監視手段18は、電源部46、伝送部48、環境監視制御部50及び観測部52により構成される。電源部46はSC線12aとC線12bからなる信号線12により受信機側から供給された電源電圧を入力し、所定の定電圧を電源電圧として出力する。
【0068】
伝送部48はR型火災受信機10の伝送部22との間で、上り信号を電圧モードで受信し、下り信号を電流モードで送信する。
【0069】
観測部52は、環境監視手段18の設置場所の環境状態を観測する。環境監視手段18による環境状態の観測は次の説明するようになる。
【0070】
(c2.環境温度の観測)
観測部52には、設置場所の環境温度を観測する場合、温度センサが設けられる。環境監視制御部50は温度検出値をR型火災受信機10に送信する。温度センサとして例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧信号となる温度検出値を出力する。
【0071】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された温度検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に環境温度を数値と色分け等により表示し、施設内の環境温度の分布を一目見て把握できるようにし、空調管理や制御等に利用可能とする。
【0072】
(c3.環境湿度の観測)
観測部52には、設置場所の環境湿度を観測する場合、湿度センサが設けられ、環境監視制御部50は湿度検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0073】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された湿度検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に環境湿度を数値と色分け等により表示し、施設内の環境湿度の分布を一目見て把握できるようにし、空調管理や制御等に利用可能とする。また、低湿度閾値や高湿度閾値を設定し、低湿度を判定して音及び又は表示により乾燥注意報を出したり、高湿度を判定して不快注意報を出すようにしても良い。
【0074】
(c4.微小粒子性物質の観測)
観測部52には、設置場所の微小粒子性物質(PM)の濃度を観測する場合、微小粒子性物質センサとして例えばPM2.5センサが設けられ、環境監視制御部50はPM2.5濃度検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0075】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信されたPM2.5濃度検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画にPM2.5濃度を数値と色分け等により表示し、施設内のPM2.5濃度の分布を一目見て把握できるようにする。また、PM2.5濃度の異常レベルを設定して音及び又は表示により注意報を出すようにしても良い。
【0076】
(c5.照度の観測)
観測部52には、設置場所の照度を観測する場合、照度センサが設けられ、環境監視制御部50は照度検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0077】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された照度検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に照度を数値と色分け等により表示し、施設内の照明による明るさの状態を一目見て把握できるようにし、適正な照明が行われているか否かの運用管理に利用する。
【0078】
(c6.放射線の観測)
観測部52には、設置場所の人体に有害な放射線、例えば原発事故等に起因した放射線を観測する場合、放射線センサが設けられ、環境監視制御部50は放射線検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0079】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された放射線検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に放射線強度を数値と色分け等により表示し、施設内の放射線の強さを一目見て把握できるようにし、放射線強度が危険レベルを超えた場合に音及び又は表示により警報を出すようにする。
【0080】
(c7.振動の観測)
観測部52には、設置場所の振動を観測する場合、振動センサが設けられる。振動センサとしては、振動による加速度を検出する加速度センサや、振動による歪を検出する歪センサ等が設けられる。環境監視制御部50は振動センサで検出した振動検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0081】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された振動検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に振動強度を数値と色分け等により表示し、施設内の振動の状態を一目見て把握できるようにし、振動強度が異常レベルを超えた場合に音及び又は表示により警報を出すようにする。
【0082】
(c8.騒音の観測)
観測部52には、設置場所の騒音を観測する場合、騒音センサが設けられる。騒音センサとしてはマイクロホンが設けられる。環境監視制御部50は騒音センサで検出した騒音検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0083】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された騒音検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に騒音レベルを数値と色分け等により表示し、施設内内の騒音の状態を一目見て把握できるようにし、騒音レベルが異常レベルを超えた場合には音及び又は表示により注意報を出すようにする。
【0084】
(c9.害虫の観測)
観測部52には、設置場所に対する害虫の侵入を観測する場合には、害虫センサが設けられる。害虫センサとしては害虫に固有な振動や音を検出するセンサが用いられる。環境監視制御部50は騒音センサで検出した害虫検出値をR型火災受信機10に送信する。
【0085】
害虫の観測センサとしては、超音波センサやマイクロ波ドップラーセンサ等を設けることもできる。超音波センサは、移動する物体を検出することができるので、例えば、ゴキブリやヒアリといった害虫の侵入監視に利用できる。
【0086】
また、マイクロ波ドップラーセンサは、送信波の周波数と反射波の周波数を比較することにより、例えば数ミリオーダーの変位を高精度で検出することができ、例えば、ゴキブリやヒアリといった害虫の侵入監視に利用できる。
【0087】
図1に示したR型火災受信機10の受信機制御部20は、環境監視手段18から送信された害虫検出値に基づき、例えば、ディスプレイ装置24に感知器設置区画に分けられた施設平面図を表示すると共に各区画に害虫の侵入を色分け等により表示し、施設内での害虫の存在を一目見て把握できるようにし、消毒等の害虫駆除対策に役立たせることができる。
【0088】
(c10.その他の環境観測)
観測部52に設けるセンサとしては、前述したセンサ以外の適宜のセンサを必要に応じて設けることができる。また、観測部52には、2種以上の異なるセンサを設け、環境状態を複合的に観測するようにしても良い。
【0089】
[d.R型火災報知設備における伝送信号]
図3図1のR型火災報知設備におけるR型火災受信機とアナログ火災感知器及び環境監視手段との間の信号伝送を示したタイムチャートであり、図3(A)に下り信号(呼出信号)の伝送を示し、図3(B)に上り信号(応答信号)の伝送を示す。
【0090】
図3(A)に示すように、R型火災受信機10は、所定の送信周期Tごとに一括A/D変換信号60を下り信号として送信しており、その間に、感知器アドレスを順次指定した呼出信号62を下り信号として送信している。呼出信号62は、アドレス、コマンド、チェックサム(CK)で構成され、コマンドには呼出コマンド(ポーリングコマンド)がセットされる。
【0091】
一括A/D変換信号60も呼出信号62と同様にアドレス、コマンド、チェックサム(CK)で構成され、コマンドには一括A/D変換コマンドがセットされ、アドレスには共通アドレスがセットされる。
【0092】
R型火災受信機10から送信された一括A/D変換信号60を受信したアナログ火災感知器16及び環境監視手段18は、センサによる検出信号をA/D変換によりサンプリングして感知器検出値また環境検出値として記憶する。
【0093】
また、図3(B)に示すように、R型火災受信機10から送信された呼出信号62に対し、呼出信号62のアドレスと自己アドレスの一致を判別したアナログ火災感知器16は感知器検出値をセットした感知器応答信号64を上り信号として送信し、また、同じ呼出信号のアドレスと自己アドレスの一致を判別した環境監視手段18は、環境観測値をセットした環境応答信号66を、感知器応答信号64の送信時間で決まる所定の待ち時間が経過した後に上り信号として送信する。
【0094】
[e.R型火災報知設備における火災監視制御]
図4図1のR型火災受信機10による火災制御動作を示したフローチャートであり、受信機制御部20による制御となる。
【0095】
図4に示すように、受信機制御部20は、通常監視時に、ステップS1で所定の送信周期Tごとに一括A/D変換信号を送信すると共にその間にアドレスを順次指定した呼出信号の送信による呼出制御を行っており、ステップS2で感知器応答信号の受信を判別するとステップS3に進み、通常監視時は、感知器応答信号にセットされている感知器検出値が火災閾値に対し十分低いことから火災監視中を表示させる等の制御を行っている。
【0096】
続いて、受信機制御部20は、ステップS4で感知器応答信号に続いて受信した環境応答信号にセットされている環境観測値に基づき、観測された設置場所の環境状態をディスプレイ装置24に表示して報知させる等の制御を行う。
【0097】
続いて、受信機制御部20はステップS5で予備火災を判別したアナログ火災感知器16からの火災割込信号の受信を検出すると、ステップS6に進んで環境監視停止信号を送信して、全ての環境監視手段18の動作を停止させ、続いてステップS7に進み、グループ検索信号の送信により予備火災を判定したアナログ火災感知器16を含むグループを特定し、特定したグループ内の感知器アドレスを指定した呼出信号の送信により、予備火災を判定した所謂発報感知器のアドレスを検索する制御を行う。
【0098】
続いて、受信機制御部20は、ステップS8に進み、予備火災が判定された感知器アドレスから集中的に感知器検出値を収集し、火災閾値以上の状態が所定の蓄積時間続いたときに火災と断定し、火災発生区場所(火災発生区画)を特定した火災警報を出力させる。
【0099】
続いて、受信機制御部20はステップS9で火災復旧の有無を監視しており、火災の鎮火に伴い復旧スイッチの操作による火災復旧が行われるとステップS10に進み、環境監視停止解除信号を送信し、全ての環境監視手段18の動作停止を解除して環境監視動作を再開させ、ステップS1の処理に戻る。
【0100】
[f.R型火災報知設備における環境監視制御]
図5図1の環境監視手段18による制御動作を示したフローチャートであり、図2の環境監視手段18に設けられた環境監視制御部50による制御となる。
【0101】
図5に示すように、環境監視制御部50はステップS11で自己アドレスを指定した呼出信号の受信を判別するとステップS12に進み、同じアドレスのアナログ火災感知器16から送信される感知器応答信号の送信時間に対応した所定の待ち時間の経過を待ち、この待ち時間の経過を判別するとステップS13に進み、そのときA/D変換により記憶している環境観測値をセットした環境応答信号を生成し、上り信号としてR型火災受信機10へ送信する。
【0102】
続いて、環境監視制御部50は、ステップS14で環境監視停止信号の受信を判別するとステップS15に進んで環境監視動作を停止し、伝送部48の機能のみを残して他の動作は停止させた状態とする。
【0103】
続いて、環境監視制御部50は、環境監視停止中にステップS16で環境監視停止解除信号の受信を判別すると、ステップS17に進んで環境監視停止動作を解除して環境監視動作を再開させ、ステップS11に戻る。
【0104】
[g.P型火災報知設備]
図6はP型火災報知設備の概略を、P型火災受信機の機能構成と共に示した説明図である。図6に示すように、信号線単位に火災を監視するP型火災報知設備は、建物の防災センターや管理人室等に設置されたP型火災受信機100から監視領域に引き出された信号線112に、天井面に設置された感知器ベース14を介してオンオフ火災感知器116を接続しており、感知器ベース14とオンオフ火災感知器116の間に環境監視手段18を配置し、感知器ベース14を介して信号線112に接続している。
【0105】
オンオフ火災感知器116は煙濃度又は温度の検出し、検出値が所定の火災閾値以上又は超えると火災と判定し、信号線112に発報電流を流すことで感知器発報信号をP型火災受信機100に送信する。
【0106】
感知器ベース14とオンオフ火災感知器116の間に配置された環境監視手段18は、図1に示した環境監視手段18と基本的に同じになる。
【0107】
P型火災受信機100には、受信機制御部120,伝送部22、回線受信部122、ディスプレイ装置124、表示部126、操作部128、警報部130及び移報部132が設けられている。
【0108】
受信機制御部120は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の火災監視制御の機能に加え、監視領域に設置された環境監視手段18に対応して環境監視報知の機能が実現される。
【0109】
回線受信部122は、監視領域に引き出された信号線112に接続しているオンオフ火災感知器116の火災判定により流れる発報電流を検出して回線発報受信信号を受信機制御部120に出力する。
【0110】
伝送部22は、複数の回線受信部122から監視領域に引き出された複数の信号線112の各々にダイオード150を介して並列に接続することで、単一の伝送信号線としており、感知器ベース14とオンオフ火災感知器116との間に設けた全ての環境監視手段18との間で信号を双方向伝送する機能を備えている。ダイオード150はオンオフ火災感知器116の火災発報により自己の信号線112に発報電流が流れても他の信号線112に発報電流が流れないようにする。ここで、伝送部22を複数の回線受信部122からの信号線112に並列に接続して単一の伝送信号線としたときに設定可能な最大アドレスは例えば256アドレスであり、このため複数の信号線112には全体として最大256台の環境監視手段18を接続することができる。
【0111】
伝送部22から環境監視手段18に対する下り信号は電圧モードで伝送され、環境監視手段18からの伝送部22に対する上り信号は電流モードで伝送される。
【0112】
受信機制御部120による火災監視制御は次のようになる。受信機制御部120は、複数の回線受信部122の何れかによる感知器発報信号の受信を判別すると、例えば蓄積動作を開始し、所定の蓄積時間の間感知発報信号の受信が継続されると火災と断定し、感知器発報信号を受信している信号線112に対応した監視領域、例えば火災発生階を特定した火災警報を出力する制御を行う。
【0113】
一方、受信機制御部120は、伝送部22のアドレスを順次指定した呼出信号の送信に対し、環境監視手段18から環境観測値がセットされた環境応答信号が受信されることから、受信した環境観測値に基づき、環境監視手段18の設置場所の環境状態を示す所定の情報を生成し、ディスプレイ装置124に表示して報知させる制御を行う。なお、表示部126、操作部128、警報部130及び移報部132は、図1のR型火災受信機10と基本的に同じとなる。
【0114】
また、受信機制御部120は、回線受信部122による感知発報信号の受信を検出した場合、伝送部22に指示して共通アドレスを指定した環境監視停止信号を信号線112に送信し、全ての環境監視手段18の動作を停止させる制御を行う。これにより火災発生時に受信機制御部120は火災監視制御のみの制御動作を行うこととなり、環境監視報知の制御動作が停止されることで、環境監視手段18を設けても火災監視制御に悪影響を及ぼすことがない。
【0115】
また、受信機制御部120は、環境監視停止信号を送信した後に、火災の鎮火に対応して行われる操作部128に設けられた復旧スイッチの操作による復旧を検出した場合、伝送部22に指示して共通アドレスを指定した環境監視停止解除信号を信号線112に送信し、全ての環境監視手段18の停止動作を解除して動作を再開させる制御を行う。
【0116】
[h.オンオフ火災感知器]
図7図6の感知器ベース、環境監視手段及びオンオフ火災感知器の機能構成を示した説明図である。
【0117】
図7に示すように、オンオフ火災感知器116は、電源部138、発報回路部140、感知器制御部142、火災センサ部144及び発報表示灯145(図示なし)により構成される。電源部138はSC線112aとC線112bからなる信号線112により受信機側から供給された電源電圧を入力し、所定の定電圧を感知器電源電圧として出力する。
【0118】
発報回路部140は火災を判定した場合に、信号線112間を低インピーダンスに短絡するスイッチング動作を行い、信号線112に所定の発報電流を流して感知器発報信号をP型火災受信機100へ送信し、また、発報電流により発報表示灯145を点灯させる。
【0119】
火災センサ部144は、例えば検煙部であり、公知の散乱光式検煙構造をもち、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を出力する。また、火災センサ部144は、検煙部に代えて温度検出部を設ける場合もあり、温度検出部は、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧信号となる温度検出信号を出力する。
【0120】
感知器制御部142は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により感知器制御部142の機能が実現される。感知器制御部142は、火災センサ部144から出力される検出信号を所定の火災閾値と比較し、火災閾値以上又は火災閾値を超えた場合に火災と判定し、発報回路部140を動作して信号線112に所定の発報電流を流して感知器発報信号をP型火災受信機100へ送信する制御を行う。
【0121】
[i.P型火災報知設備における環境監視手段]
図7に示すように、環境監視手段18は、第1嵌合構造18aと第2嵌合構造18bにより、感知器ベース14とオンオフ火災感知器116の間に機械的に着脱自在に配置され、且つSC線12aとC線12bからなる信号線112に電気的に着脱自在に接続されている。
【0122】
環境監視手段18は、電源部46、伝送部48、環境監視制御部50及び観測部52により構成され、その機能は図2に示した環境監視手段18と基本的に同じになるが、環境監視制御部50は、自己アドレスを指定した呼出信号の受信を検出した場合、図2の環境監視手段とは異なり、所定の待ち時間の経過を待つことなく、環境観測値をセットした環境応答信号を上り信号として送信する制御を行う点で相違している。
【0123】
[j.P型火災報知設備における火災監視制御]
図8図6のP型火災受信機100による制御動作を示したフローチャートであり、受信機制御部120による制御となる。
【0124】
図8に示すように、受信機制御部120は、通常監視時には、ステップS21で伝送部22に指示して、周期Tごとに一括A/D変換信号を送信すると共にその間に環境監視手段18のアドレスを順次指定した呼出信号の送信による呼出制御を行っており、ステップS22で環境監視手段18からの環境応答信号の受信を判別するとステップS23に進み、環境応答信号にセットされている環境観測値に基づき、設置場所の環境状態をディスプレイ装置124に表示させて報知する等の制御を行う。
【0125】
続いて、受信機制御部120はステップS24で火災したオンオフ火災感知器116からの感知器発報信号の受信を検出し、更に所定の蓄積時間の経過を判別すると、ステップS25に進んで環境監視停止信号を送信して全ての環境監視手段18の動作を停止させ、続いてステップS26に進み、発報した信号線を特定した火災発生地域、例えば火災発生階の表示を伴う火災警報を出力させる。
【0126】
続いて、受信機制御部120はステップS27で火災復旧の有無を監視しており、火災の鎮火に伴い復旧スイッチの操作による火災復旧が行われるとステップS28に進み、環境監視停止解除信号を送信し、全ての環境監視手段18の動作停止を解除して環境監視動作を再開させ、ステップS21の処理に戻る。
【0127】
[k.P型火災報知設備における環境監視制御]
図9図6の環境監視手段18による制御動作を示したフローチャートであり、図7の環境監視手段18に設けられた環境監視制御部50による制御となる。
【0128】
図9に示すように、環境監視制御部50はステップS31で自己アドレスを指定した呼出信号の受信を判別するとステップS32に進み、そのときA/D変換により記憶している環境観測値をセットした環境応答信号を生成し、環境応答信号を上り信号としてP型火災受信機100へ送信する。
【0129】
続いて、環境監視制御部50は、ステップS33で環境監視停止信号の受信を判別するとステップS34に進んで環境監視動作を停止し、伝送部48の機能のみを残して他の動作は停止させた状態とする。
【0130】
続いて、環境監視制御部50は、環境監視停止中にステップS35で環境監視停止解除信号の受信を判別すると、ステップS36に進んで環境監視停止動作を解除して環境監視動作を再開させ、ステップS31に戻る。
【0131】
[l.本発明の変形例]
(環境観測値の外部出力)
火災受信機は環境監視手段から取得した環境観測値及び又は環境観測値に基づく値を他の機器に出力するようにしてもよい。当該機器又は当該機器と接続される機器で当該環境観測値及び又は環境観測値に基づく値に関する報知を行う場合、火災受信機は環境観測値及び又は環境観測値に基づく値に関する報知を行うための機能を持たないようにしてもよい。
【0132】
(環境監視手段の設置)
上記の実施形態は、全ての感知器ベースと火災感知器の間に環境監視手段を設けているが、環境監視手段の設置は必要とする任意の感知器設置場所としても良い。
【0133】
また、環境監視手段として異なる観測値を観測するセンサを備えた複数種類の環境監視手段を準備し、異なる火災感知器の設置場所に種別の異なる環境監視手段を設置するようにしても良い。
【0134】
(環境監視手段の動作表示灯)
また、環境監視手段に動作表示灯を設け、火災受信機で環境監視状態について障害等を検出した場合に、アドレスを指定した制御信号を送信して動作表示灯を点滅又は点灯させるようにしても良い。これより障害を起している環境監視手段を、動作表示灯の点滅又は点灯で容易に確認して対処することができる。
【0135】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0136】
10:R型火災受信機
12,112:信号線
14:感知器ベース
14a,16a,116a:嵌合構造
16:アナログ火災感知器
18:環境監視手段
18a:第1嵌合構造
18b:第2嵌合構造
20,120:受信機制御部
22,40,48:伝送部
24,124:ディスプレイ装置
26,126:表示部
28,128:操作部
30,130:警報部
32,132:移報部
38,46,138:電源部
42,142:感知器制御部
44,144:火災センサ部
45,145:発報表示灯
50:環境監視制御部
52:観測部
100:P型火災受信機
116:オンオフ火災感知
122:回線受信部
140:発報回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9