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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】通気弁
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240827BHJP
   F16K 24/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
E03C1/122 A
F16K24/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063409
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162075
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】横澤 直角
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082182(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/122
F16K 21/00-24/06
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体の二次側が負圧となった場合に前記弁体が開状態となり一次側から二次側への空気の取り込みが可能となる低位設置用の通気弁であって、前記弁体の一次側に通気絞り部材を設けると共に、弁座部と離れた位置で前記弁体を覆うように支持された蓋体を有しており、前記通気絞り部材の側面上部側には前記蓋体側に寄せて通気部を配置し、この通気部の通気面積を、前記通気絞り部材を設けない場合と比べて排水性能が低下しない範囲で、通気弁自体の通気面積よりも小さくなるように設定したことを特徴とする通気弁。
【請求項2】
円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であって、前記蓋体は、前記弁座部の周囲から立ち上がった支柱により前記弁座部と離れた位置で支持され、前記通気絞り部材は、前記蓋体と一体又は別体に設けられ、少なくとも前記蓋体と前記弁座部とに挟まれた空間を内側から取り囲む筒状の部材であり、この筒状前記通気絞り部材の側面部分に前記通気部として複数の開口部を有している請求項1に記載の通気弁。
【請求項3】
前記蓋体が前記通気絞り部材よりも外周方向に張り出している請求項2に記載の通気弁。
【請求項4】
円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であって、前記蓋体は、前記弁座部の周囲から立ち上がった支柱により前記弁座部と離れた位置で支持され、前記通気絞り部材は、少なくとも前記蓋体と前記弁座部とに挟まれた空間を外側から取り囲む筒状の部材であり、この筒状前記通気絞り部材の側面部分に前記通気部として複数の開口部を有している請求項1に記載の通気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管に接続されて排水管内に発生した負圧を緩和させる低位設置用の通気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
個別住宅、集合住宅等の建物内の排水管には、トラップ部を設けた便器、シンクなどの排水設備が接続され、このトラップ部に排水を残留させることにより、排水管下流から漂う悪臭が室内へ漏れ出ないようにしている。
【0003】
このような排水管では、排水設備からの排水が急激に流れると、部分的に排水管内が満管状態となって上流側が負圧状態となり、排水が流れにくくなったり、排水設備のトラップ部の残留排水が吸引されて下流へと流されてしまう封水破壊が生じたりする。このため、排水設備のトラップ部より下流側に通気弁を設けることにより、排水管内が負圧になった際に通気弁から外気を吸気し、排水管内の負圧状態を解消する通気方式が採用されている。
【0004】
一般に、住宅等の建物の設けられる排水管は、見栄えの観点から壁と壁との隙間、すなわち壁裏空間に配置されているため、通気弁は壁裏空間で排水管との接続が可能となるように小型であることが求められる。
【0005】
このような事情から、本出願人は、壁裏空間に設置可能であるコンパクトな通気弁を提案している(特許文献1)。この通気弁は、壁裏空間に配置した伸頂通気管の上部に取付ける所謂伸頂型の通気弁であり、回転弁機構を備え、通気抵抗を抑えて通気量を大きく確保し、高い応答性により弁開状態までスムーズに動作することができ、排水管内が負圧状態となった場合には、外部から十分に外気を吸気して負圧状態を確実に解消することができる。
【0006】
ところで、従来は、建物内に設置される通気弁は、特許文献1の通気弁のように壁裏空間に配した伸頂通気管の上部に取付ける伸頂型の通気弁が一般的であったが、最近では、排水設備のトラップ部より下流側となる床下の横枝排水管に設ける低位設置用の通気弁が要望されている。
【0007】
壁裏空間や床下空間には、これらの空間に配設されている断熱材等に起因する塵埃や、壁裏空間や小屋裏空間を換気する空気が外部から持ち込んだ塵埃が非常に多く、これらの塵埃は床下空間に落下して溜まり易い。従来の通気弁は伸頂型で床下空間よりも高い位置に取付けるため、床下空間に溜まった塵埃を外気と共に吸い込むおそれは少なかったが、伸頂型の通気弁を床下空間の低位に設置すると、床下に落下する塵埃が通気弁内部に侵入したり、通気弁が床下に溜まった塵埃を外気と共に吸い込んだりして、通気弁の作動不良が発生する等、通気弁の耐久性を低下させる問題が生じるおそれがある。
【0008】
壁裏空間の塵埃などを吸入することを抑えつつ、排水管内の負圧を解消することができる通気弁として、特許文献2には、弁体及び通気口を有する通気弁本体と、開口及び接続口を有するボックスと、通気孔を有するカバー部材とを備え、このボックスは、壁裏空間に配設されている排水管に気密状態で接続されると共に、ボックスの開口と壁材に形成された貫通孔とが連通するように壁材に対して固定され、壁材の貫通孔を介して、カバー部材を取付けた通気弁本体を壁表空間からボックスの開口に密着状態で直結させた通気弁構造が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、床下配管に接続設置ができ、通気口に防虫網を設けて外気導入時にゴミや虫等の侵入を防ぐことができる排水用低位通気弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-27584号公報
【文献】特許第5662195号公報
【文献】特開2014-119111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2の通気弁構造は、塵埃が多量に存在する壁裏空間や床下空間から外気を吸入することなく、壁表空間のみから外気を吸入することを可能にしているが、壁表空間の空気に塵埃が含まれていないわけではなく、壁表空間で日常生活が活発に行われている場合には、人間の日常生活に起因する細かい塵や綿埃が多数発生するし、あまり人間が立ち入らない場所に外気を吸入する貫通孔を設けたとしても、やはり壁裏空間と同様に自然に落下した塵埃が存在する。
【0012】
また、壁に貫通孔を設けたり、通気弁の通気口と排水管との間をフレキシブル管で接続したりと通気弁構造が複雑となり、さらにはコストが嵩む問題もある。
【0013】
特許文献3の通気弁は、通気口に防虫網を設けてゴミや虫等の侵入を防ごうとしているが、細かい塵埃の侵入を防ぐために防虫網の目を細かくすると網目に塵芥が引っ掛かって通気を妨げるため、定期的な点検と防虫網の清掃が不可欠となり、信頼性と耐久性についてなお問題が存在する。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、排水性能を損なうことなく弁内部への塵埃の侵入を抑制し、信頼性と耐久性に優れる低位設用の通気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁体の二次側が負圧となった場合に弁体が開状態となり一次側から二次側への空気の取り込みが可能となる低位設置用の通気弁であって、弁体の一次側に通気絞り部材を設けると共に、弁座部と離れた位置で弁体を覆うように支持された蓋体を有しており、通気絞り部材の側面上部側には蓋体側に寄せて通気部を配置し、この通気部の通気面積を、通気絞り部材を設けない場合と比べて排水性能が低下しない範囲で、通気弁自体の通気面積よりも小さくなるように設定した通気弁である。
【0016】
請求項2に係る発明は、円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であって、蓋体は、弁座部の周囲から立ち上がった支柱により弁座部と離れた位置で支持され、通気絞り部材は、蓋体と一体又は別体に設けられ、少なくとも蓋体と弁座部とに挟まれた空間を内側から取り囲む筒状の部材であり、この筒状通気絞り部材の側面部分に通気部として複数の開口部を有している通気弁である。
【0017】
請求項3に係る発明は、蓋体が通気絞り部材よりも外周方向に張り出している通気弁である。
【0019】
請求項4に係る発明は、円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であって、蓋体は、弁座部の周囲から立ち上がった支柱により弁座部と離れた位置で支持され、通気絞り部材は、少なくとも蓋体と弁座部とに挟まれた空間を外側から取り囲む筒状の部材であり、この筒状通気絞り部材の側面部分に通気部として複数の開口部を有している通気弁である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、通気絞り部材を設けることにより、塵埃が通気弁内に侵入することを抑制することができると共に、排水管内の負圧状態を解消するために通気弁が外気を取り込む場合には、外気の取り込み量を削減して外気と一緒に通気弁内に吸い込まれる塵埃を抑制することができる。
【0021】
このため、通気弁を床下等の低位設置した場合でも、通気弁内に侵入したり吸い込まれたりした塵埃が弁座部に付着して封止性が低下することを少なくし、信頼性と耐久性に優れた低位設置用の通気弁を得ることができる。
しかも、弁座部と離れた位置で弁体を覆うように支持された蓋体を有し、通気絞り部材の側面上部側には蓋体に寄せて通気部を配置しているので、上方から落下してくる塵埃が通気部に近づき難くなり、塵埃の通気弁内への進入をより一層抑制することができる。
【0022】
また、通気絞り部材に設けた通気部の通気面積は、通気絞り部材を設けない場合と比べて排水管の排水性能が低下しない範囲で、通気弁自体の通気面積よりも小さくなるように設定されているため、塵埃の侵入や吸い込みを抑制しつつ排水管の排水性能を通気絞り部材を設けない場合と同程度に維持することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であるため、弁体の二次側が負圧となった場合には弁体が圧力変動に応じて高い応答性を発揮して開動作して流量を大きく確保することができるので、通気絞り部材を設けて通気弁内に取り込む外気の量を削減しても、排水管の排水性能を損なうことがない量の外気を排水管内に取り込み、排水管内部の負圧状態を解消することができる。
【0024】
また、弁座部の周囲から立ち上がった支柱により弁座部と離れた位置で弁体を覆うように支持された蓋体を有しているため、この蓋体により上方から落下してくる塵埃を遮り、落下してくる塵埃が仕切弁内に侵入することを防ぐことができる。
【0025】
さらに、通気絞り部材は、蓋体と一体又は別体に設けられ、少なくとも前記蓋体と前記弁座部とに挟まれた空間を内側から取り囲む筒形状の部材であり、この筒形状の側面部分に通気部として複数の開口部を有しているため、通気路の内周側に配した通気絞り部材により、通気弁が外気を吸入しない場合には、塵埃が弁機構部へ侵入するのを抑制することができると共に、通気弁が外気を吸入する場合には、吸入する外気の量を削減して外気と一緒に弁機構部に吸い込まれる塵埃の量を抑制し、弁座部に塵埃が付着して封止性が低下することを少なくすることができる。
【0026】
請求項3に係る発明によると、通気絞り部材よりも外周方向に張り出した蓋体によって落下してくる塵埃を遮ることによって塵埃が通気絞り部材に近寄ることをさらに防ぎ、より塵埃の通気弁内への進入を抑制することができる。
【0028】
請求項に係る発明によると、円板状の弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であるため、弁体の二次側が負圧となった場合には弁体が圧力変動に応じて高い応答性を発揮して開動作して流量を大きく確保することができるので、通気絞り部材を設けて通気弁内に取り込む外気の量を削減しても、排水管の排水性能を損なうことがない量の外気を排水管内に取り込み、排水管内部の負圧状態を解消することができる。


【0029】
また、通気絞り部材は、少なくとも蓋体と弁座部とに挟まれた空間である通気路を外周側から取り囲む筒形状の部材であって側面部分に通気部として複数の開口部を有しているので、通気弁が外気を吸入しない場合には、塵埃が弁機構部へ侵入するのを抑制することができると共に、通気弁が外気を吸入する場合には、吸入する外気の量を削減して外気と一緒に弁機構部に吸い込まれる塵埃の量を抑制し、弁座部に塵埃が付着して封止性が低下することを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の通気弁の一実施形態を示す中央縦断面図である。
図2図1の通気弁の蓋体を取り外した状態を示す概略模式図である。
図3図1の通気弁の蓋体を取り外した状態を示す要部断面図である。
図4】通気絞り部材の斜視図である。
図5図1の通気弁の弁開状態を示す中央縦断面図である。
図6】実験装置の模式図である。
図7】実験結果を示しグラフである。
図8図1の通気弁を使用した排水管システムの一例を示す模式図である。
図9】本発明における通気弁の他の実施形態の通気絞り部材の斜視図である。
図10】本発明における通気弁のさらに他の実施形態の通気絞り部材の斜視図である。
図11】本発明における通気弁のさらに他の実施形態を示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明における低位設置用の通気弁を実施形態に基づいて詳細に説明する。図1~5において、本発明の低位設置用の通気弁の一実施形態を示し、図6において、本発明の低位設置用の通気弁1を用いた排水システムの一例を示している。
【0032】
図1において、通気弁1は、弁機構部10と、この弁機構部10が取付けられるボデー11と、キャップ12と、蓋体14と、キャップ12と蓋体14との間に取付けられる通気絞り部材15を有し、弁機構部10に設けられた回転弁体からなる弁体16の開閉により通気して、ボデー11内部とこのボデー11に接続される排水管システム2内部の負圧を緩和することが可能になっている。通気弁1は、例えば、サイズ40A、50Aの被接続側の管に共用可能に設けられる。
【0033】
図1図5において、弁機構部10は、筒本体17、シート18、円板状弁体である回転弁体19、偏心軸(ヒンジ)20、錘部21を備え、これらが一体に組込まれて回転弁体19が回転可能に設けられる。後述するように、回転弁体19には、弁開方向に回転する回転モーメントMoと、弁閉方向に回転する回転モーメントMcとが働き、この回転弁体19の作動により通気弁1が通気弁機能を発揮する。
【0034】
弁機構部10における筒本体17は、例えばABS樹脂などの樹脂材料によって形成され、ボデー11の被装着部位に内挿可能なストレート状のカートリッジ体からなる。筒本体17の外筒部位には、偏心軸(ヒンジ)20取付用の2つの取付穴23が貫通形成され、これら取付穴23の周囲には所定の大きさで内径側に突出する突起片24が突出形成され、この突起片24に弁開規制部25が設けられる。一方、筒本体17の外周には、キャップ12を係合固定するための凸部26がその周方向において断続的に形成される。
【0035】
弁開規制部25は、テーパ平面状に形成され、弁開時の回転弁体19が当接されることにより、その回転量を規制可能になっている。この弁開規制部25は、流路の内周壁面位置に設けられ、全開状態の回転弁体19の両側の外周縁部近傍が当接され、これらを支持可能に設けられる。
【0036】
シート18は、例えばEPDMなどのゴム材料により内周開口部18aを有する略円盤状に形成され、外径は筒本体17の外径と略同径に設けられてこの筒本体17上面に載置され、筒本体17とキャップ12との間に挟着可能な厚さに設けられる。シート18には、回転弁体19とのシール面である円錐テーパ面27が所定のテーパ角度により形成され、弁座部28を構成している。
【0037】
回転弁体19は、例えばABS樹脂などの樹脂材料により設けられ、薄い円板状に設けられたジスク本体29を有し、このジスク本体29に、弁体支持部30と軸着部31とが一体に形成される。回転弁体19は、偏心軸(ヒンジ)20を介して筒本体17内に取付けられ、この回転弁体19の回動により弁機構部10が弁開閉自在に設けられる。
【0038】
図5に示すように、ジスク本体29には、通気弁1の口径の中心P軸線上に中心を有する球面の一部をなす弁体球面33が形成され、この弁体球面33が、同じくP軸線上に円錐軸線を有するシート18の円錐テーパ面27に対するシール面として当接可能に設けられる。図1に示す通気弁1の弁閉時には、弁体球面33が、円錐テーパ面27に対して接線接触状態でシール可能になっている。
【0039】
ジスク本体29の弁体支持部30は、細径状の円柱形状に設けられ、弁体球面33の球芯、すなわちP軸線から半径方向に偏心した位置に垂下形成される。このように、弁体支持部30が筒本体17の口径(通気弁1の口径)の中心Pから偏心していることで、回転弁体19の受圧面が、弁体支持部30を境界に大受圧面34と小受圧面35とに区分される。大受圧面34と小受圧面35との面積比は、通気弁1に要求される通気性能に応じて適宜設定される。
【0040】
前記弁体支持部30に続き、略俵形状の軸着部31が、偏心軸(ヒンジ)20を回転軸芯として設けられる。軸着部31は、ジスク本体29の口径の中心Pに対して偏心し、かつ、P軸線と直交するジスク本体29の弁体球面33とシート18との接線接触平面に対して流路方向に偏心した二重偏心位置に設けられる。軸着部31には、偏心軸(ヒンジ)20が嵌挿可能な貫通孔36が形成される。
【0041】
図1に示すように、軸着部31には、その中心から水平方向に対して所定の傾きを有する取付部37が延設されるように形成され、この取付部37に錘部21挿着用の挿着孔38が設けられている。
【0042】
偏心軸(ヒンジ)20は、例えば、ステンレス等の金属材料により細径状に形成され、その外周に軸着部31の長さと略同じ間隔で2つの図示しない止め輪装着用の係止溝が形成されている。偏心軸(ヒンジ)20は、回転弁体19の回転時の回転軸芯となり、この偏心軸(ヒンジ)20を介して、回転弁体19には筒本体17内で弁開閉方向の回転モーメントMo、Mcが与えられるようになっている。
【0043】
偏心軸(ヒンジ)20を金属材料で形成した場合、強度を保ちつつ細径に形成可能になり、弁開時の通気抵抗を減らして通気量を増すことが可能となる。この偏心軸(ヒンジ)20に樹脂材料からなる回転弁体19を装着することで、この回転弁体19の回転動作時における摺動抵抗が低減する。
【0044】
錘部21は、略円柱形状により所定の重さに設けられ、挿着孔38に挿着される。錘部21を設けることで、ジスク本体29の小受圧面35側の弁体質量が大受圧面34側の弁体質量よりも重くなる。このため、回転弁体19が、偏心軸(ヒンジ)20を中心に全閉位置から略90度弁開位置の範囲で弁閉する方向に回転し、その弁閉状態が保持される。このように、小受圧面35側の弁体質量を大受圧面34側よりも重くすることで、弁閉方向に回転するトルクを助勢し、閉方向への動作を促進可能にしている。錘部21は、例えば球体形状などの円柱状以外の形状に設けることも可能ではあるが、本実施例のように、円柱状に形成した場合には、加工が容易になりコストを抑制することができる。
【0045】
ボデー11は、ABS樹脂などの樹脂材料、より詳しくは、透明或は半透明の樹脂材料により略筒状に形成され、その内周側に筒本体17が装着されてこれらが一体化される。ボデー11上部には環状段部41が形成され、この環状段部41の位置までキャップ12の接続部47が挿入される。環状段部41の上方には、キャップ12を固定するためのバヨネット式の接続用凹部が形成される。
【0046】
ボデー11の高さ方向の所定位置の内周には、環状縁部42が形成される。ボデー1の上方から弁機構部10が挿入されたときには、この弁機構部10下端が環状縁部42に当接することで、弁機構部10がボデー11の高さ方向に位置決めされる。
【0047】
ボデー11の下部には、被接続側の管である外部排水管43接続用の排水管差込口44が設けられ、この排水管差込口44は、環状縁部42によりボデー11上部の弁機構部10と分けられている。外部排水管43は、ボデー11下部から差し込まれ、これら管の先端が環状縁部42に当接することで、外部排水管43に対してボデー11が位置決め固定された状態で通気弁1が取付けられる。また、排水管差込口44を縮径状のテーパ形状に形成し、この排水管差込口44に対して同じ傾斜のテーパ縮径状に形成した外部排水管43を停止するまで差込むことにより、これらを接続するようにしても良い。
【0048】
図2図3に示すように、キャップ12は、ABS樹脂などの樹脂材料によって形成され、その下部にボデー11に接続される環状の接続部47を有し、この接続部47よりも上部には複数の柱状部48が設けられる。柱状部48は、弁機構部10よりも上部に、通気弁1の口径の中心Pの方向に沿うように4箇所に等間隔に形成され、これら柱状部48の間に弁機構部10への通気路49が形成される。このように少ない本数で幅狭の柱状部48を設けることで、通気路49の通気面積が大きく確保される。本実施例では、通気路49の通気面積は、通気弁1の口径面積(通気面積)、具体的には後述する内周鍔部56の開口面積と略同じ面積に設定されている。柱状部48は4箇所に形成されているが、複数箇所であれば、3箇所以下或は5箇所以上に設けられていてもよい。
【0049】
図5に示すように、通気路49は、例えば、図示しない樹脂型の成型加工によって上面視十字状に設けられる。このため、成形加工時の抜き型を十字状に配置することで通気路49を4箇所に簡単に形成でき、しかも、この抜き型により各柱状部48が断面略三角形状に形成されて強度が確保される。
【0050】
図2図3において、柱状部48の上部には断面略矩形状のリング部50が一体に設けられ、このリング部50により、4箇所の柱状部48の上部が一体に接続される。柱状部48の上部外周面のリング部50との境界付近には、所定深さ及び所定高さにより切欠き溝52が形成され、この切欠き溝52を含んだ環状の係合部53がリング部50の底部外周に渡って形成される。
【0051】
図1のキャップ12下部の接続部47は、ボデー11に上部方向から内挿可能な外径に形成され、接続部47の外周には、ボデー11に形成された図示しない接続用凹部とバヨネット接続可能な外周凸片55が形成される。接続部47の内径は、弁機構部10の筒本体17が嵌入可能であり、ボデー11の被筒挿入部位と略同径に設けられる。
【0052】
接続部47の内径側には、シート18の上面保持用の内周鍔部56が内径側に突出形成され、この内周鍔部56の内径側が、弁機構部10への直接の外気取り入れ部である通気口57となる。
【0053】
図2図3において、蓋体14は、例えばABS樹脂などの樹脂材料によって形成され、略円板状の天板60を有し、この天板60の底部側に環状の外周縁61が形成される。外周縁61よりも内方の離間位置には、係止片62が3箇所に等間隔に形成され、この係止片62の内周側がリング部50の外周側に対向するように配置される。係止片62の先端内周側には、係合部53に係合可能な内周鍔部63が突出形成される。なお、係止片62は3箇所にこだわらず、任意にその数を設定可能であるが、蓋体14の取り外し時に力を分散しやすい数とすることが好ましい。このため、180°の間隔に設けることを避け、奇数箇所に係止片62を設けるようにするとよい。
【0054】
上記の構成により、蓋体14は、内周鍔部63が係合部53に係合された状態で係止片62を介してリング部50に係合可能となり、このリング部50と一体の柱状部48に対して着脱且つ回転自在に配置される。そのため、蓋体14はキャップ12に対して360°の範囲で回転可能になっている。
【0055】
蓋体14の天板60の底部におけるリング部50の上面50aとの対向位置には、やや突出した段部64が複数箇所に断続的に形成される。本実施例では、段部64は係止片62と同じ位置の3箇所に等間隔に設けられ、この場合、係止片62と同時に段部64を成形可能となる。
【0056】
蓋体14のキャップ12への装着時には、3箇所の段部64がリング部上面50aに当接することにより、これら段部64とリング部上面50aとの当接箇所以外のリング部50と蓋体14との間に、断続的な隙間Sが設けられる。このように、蓋体14の段部64とリング部上面50aとの当接箇所以外の箇所に断続的な隙間Sを設けているため、蓋体14の着脱時には、この隙間Sが樹脂製の蓋体14の天板60のしなりを許容するため、係止片62の弾性力とも相まって、メンテナンス等を実施する際には蓋体14の着脱を円滑に行うことができる。
【0057】
通気絞り部材15は、図1図5に示すように、蓋体14をリング部50に装着したキャップ12の柱状部48の内周側に収納されて、回転弁体19が開動した際に通気路49から弁機構部10に吸入される外気の通気量を絞る(規制する)ための部材である。
【0058】
図4の斜視図に示すように、通気絞り部材15は、ABS樹脂などの樹脂材料により弁座部28を取り囲む薄肉の筒形状に形成され、この筒形状の本体65の側面部分に上端側に寄せて複数の開口部66を通気部67として設けている。このように開口部66を本体65の上端側に寄せて設けたことにより、通気弁1の上方から落下してくる塵埃が蓋体14により開口部66に近づくことを阻む効果が大きくなり、塵埃がボデー11内のバルブ機構10へ進入することを抑制することができる。
【0059】
図1図5に示すように、通気絞り部材15は、高さ及び外径が蓋体14を装着したキャップ12の柱状部48の内周側空間に略隙間なく収納可能に形成されており、接続部47の内径側に設けた内周鍔部56の上面56aに装着され、蓋体14と弁座部28とに挟まれた空間である通気弁1の通気路49を内側から取り囲むように収納されている。
なお、通気絞り部材15は、高さ方向において蓋体14又は弁座部28との間に若干の隙間を有していても良い。この隙間があると蓋体14を取付ける際に通気絞り部材15に当たることを避けることができ、蓋体14の取付が容易となる。この隙間があっても、蓋体14や、キャップ12の内周鍔部56周囲の壁面によって隙間からの塵埃の侵入が防止されるが、より塵埃を侵入しにくくするためには、この隙間は通気絞り部材15の高さの1%以下程度とすることが好ましい。
【0060】
このため、通気弁1の通気面積は通気絞り部材15により通気路49の内周側から規制され、通気絞り部材15に設けた複数の開口部66の面積を合計した総開口面積が通気弁1の通気面積となる。本実施例では、高さ9.0mm、幅3.8mmの開口部66を16個設けて総開口面積を547mmとし、通気絞り部材15を設けない場合の通気路49の通気面積1967mmの略1/4とした。
なお、このように通気絞り部材15を設けることにより通気路49の通気面積を規制した理由については後述する。
【0061】
また、通気絞り部材15をキャップ部材12の柱状部48の内周側に配置したことにより、図1及び図5に示すように、蓋体14が通気絞り部材15よりも外周方向に張り出しているので、蓋体14より通気弁1の上方から落下してくる塵埃を遮って、塵埃が通気絞り部材15に近寄ることを防止することができるため、塵埃がボデー11内のバルブ機構10へ進入することを抑制することができる。
【0062】
通気絞り部材15は、キャップ部材12のリング部50から蓋体14を取外すだけで簡単に着脱することができるので、通気弁1の組立や通気絞り部材15の点検、清掃を簡単に行うことができる。
【0063】
以下に、通気絞り部材15を設けることにより通気弁1の通気路49の通気面積を規制した理由について詳述する。
当初、本願の発明者等は、排水設備のトラップ部の封水破壊を防止するためには、排水管内に負圧が生じると同時に速やかに大量の外気を排水管内に導入する必要があると考え、大量の外気が取り込めるように通気路の通気面積及び通気弁1の口径面積(通気面積)となるシート18の内周開口面積を大きくすると共に、排水管内に生じた負圧により直ちに大きく開弁して外気を取り込むことができる二重偏心位置に回転弁体を備えた通気弁を開発した。この通気弁は、伸頂空気管に装着して使用すると開発目標通りの優れた排水性能を発揮すると共に高い信頼性と耐久性を備えている。
【0064】
一方、近年は住宅用に低位設置用の通気弁が要望されるようになっているが、本願の発明者等が開発した通気弁(以下、従来の伸頂型通気弁という。)は、バルブ本体をコンパクト化し、かつ通気量を多く確保するために弁機構部のシートや回転弁体を外気の取入れ部である通気路近くに配置しているので、そのままの状態で低位設置すると塵埃が弁座部に浸入したり、吸気時に外気と一緒に塵埃を吸入したりし、弁座部に塵埃が付着して封止性が低下するおそれがあった。
【0065】
通気弁を低位設置する場合には、上方から落下する塵埃や床下の底部から舞い上がる塵埃が通気弁の内部に侵入することを防ぐと共に、通気弁が外気を吸気する際に周囲に存在する塵埃の吸い込みを抑制することが求められる。
【0066】
従来型の通気弁では、排水管内の負圧を速やかに解消するため、開弁時の吸気量を増やすことに努力してきたが、本願の発明者等は、外気吸入時における通気弁内への塵埃の吸入を抑制するため、従来の考え方とは反対に、外気の吸気量の削減を検討すべく、外気吸気量の違いが排水管の排水性能に与える影響を実験により確認した。
【0067】
実験にあたっては、図7に模式的に示すように、一般的な住宅の排水システムを模擬した実験装置を作成した。実験装置71は、排水設備(便器)72から排水する横枝排水管73を設け、横枝排水管73に供試品(通気弁)74、管内圧力を計測する圧力計75、管内を流れる排水流量を計測する流量計76を取付け、排水設備72から排水した際の排水流量(L/s)、排水管内の最大圧力(Pa)と最少圧力(Pa)を計測した。なお、横枝排水管75には、通常、一般住宅で使用される呼び径75Aの排水管を使用した。
【0068】
供試品72には、従来の伸頂型通気弁(サイズ40A)を使用し、通気弁の通気路をカバーで覆うことより通気面積を調整することとし、通気路の通気面積が全開口の場合、1/2開口の場合、1/4開口の場合の3ケースについて計測を行った。
【0069】
また、試験結果は、給排水衛生設備規格(SHASE)-S218-2014「集合住宅の排水立て管システム排水能力試験法」に基づいて評価し、管内圧力が±400(Pa)以内であれば合格とした。
【0070】
計測結果は図8に示すとおりであり、供試品の通気路の通気面積を変化させたにも関わらず、管内流量に対する管内圧力の最大値と最小値は概ね同じであり、排水負荷流量が1.75(L/s)程度以下では、管内圧力が±400(Pa)の範囲に収まっている。
【0071】
一般的な家庭では、手洗い時やシャワー時の平均的な排水流量は0.2(L/s)程度であり、他の排水設備でも排水量が1.0(L/s)程度を超えることは殆どない。従って、今回の実験結果のように、排水流量が1.75(L/s)付近に達するまで管内圧力が±400(Pa)の範囲に収まっていれば、少なくとも今回の実験を行った範囲で通気弁の通気路の通気面積を制限しても、排水管の排水性能は低下しないと判断することができる。
【0072】
このように、通気弁の通気路の通気面積を変化させても管内流量に対する管内圧力の最大値と最小値が概ね同じとなる正確な理由は、従来の伸頂型通気弁は円板状の回転弁体がアンバランストルクにより二重偏心動作する通気弁であるため、弁回転弁体の二次側が負圧となった場合には回転弁体が圧力変動に応じて高い応答性を発揮して開弁動作し、多量の外気を吸引することができるためであると考えられる。
【0073】
以上の試験結果に基づき、通気絞り部材15に設ける複数の開口部66の面積を合計した総開口面積を、通気絞り部材15を設けない場合の通気路49の通気面積の1/4となるように開口部66の大きさ及び個数を決定したものである。
【0074】
この通気絞り部材15をキャップ部材12の柱状部48の内周側に配置することにより、排水管内に排水が流れずに外気を吸入しない場合には、開口部66の総面積を削減した通気絞り部材15が存在することにより、上方から落下する塵埃や床下の底部から舞い上がる塵埃が通気弁の弁機構部10への侵入を抑制することができると共に、排水管内に排水が流れて負圧が発生し、排水管内の負圧を解消するために通気弁が外気を吸入する場合には、吸入する外気の量が削減されるため、外気と一緒に弁機構部10に吸い込まれる塵埃の量を抑制することができる。また、実験結果が示すように、通気絞り部材15を配置することにより通気弁が吸入する外気の量が削減されても、排水管の排水性能が低下することがない。
【0075】
なお、通気絞り部材15に設ける開口部の総開口面積(開口部の大きさ及び個数)は、排水設備の排水量、通気弁のサイズ、排水管の呼び径により当然に異なるので、個別に設定する必要がある。
【0076】
上述した通気弁1が用いられる図6に示した排水管システム2は、例えば、個別住宅や集合住宅の外壁80と内壁81との間や床下82に設けられ、通気弁1、排水管83を有し、排水管83には縦排水管84、横枝排水管85を介して排水器具86が接続されている。通気弁1は、排水機器86の図示しないあふれ縁の下部となる横枝排水管85に取付けられ、排水管83内に発生した負圧を緩和可能になっている。
【0077】
このように、通気弁1が排水システム2の横枝排水管85に装着されていることにより、排水器具86に接続された横枝排水管85や縦排水管84の内部に負圧が発生したときには、通気弁1が開状態となり、外気を排水管内に取り込んで負圧を解消することができる。
【0078】
排水管システム2内に負圧が生じ、通気弁1内が負圧になったときには、回転弁体19には、偏心軸(ヒンジ)20を中心に弁開方向に回転する第1のアンバランストルクが発生し、回転モーメントMoにより弁開状態となり、この状態で外部から外気が吸気されて負圧が緩和される。この場合、回転弁体19が二重偏心構造に取付けられていることで、通気弁1の管径寸法を横枝排水管85と同等或はそれ以下に抑えつつ、排水管システム2内の負圧を確実に解消する。また、通気流路がストレートであるため、弁開状態の回転弁体19による通気抵抗を最小限に抑えて速やかに吸入した外気を通気することができる。
【0079】
具体的には、図5に示すように、回転弁体19が図1の弁閉状態から弁開方向(反時計回り)に作動して自動的に弁開状態となり、キャップ12の通気路49と通気絞り部材15の開口部66とを介して大気を筒本体17の通気口57から横枝排水管85内に取り込むことで負圧を緩和する。図5において、点線矢印は、外気の流れを示すものである。
【0080】
この時、通気絞り部材15により排水性能が低下しない範囲で外気の吸気量を規制しているため、排水管83内の負圧は速やかに解消されると共に、吸入した外気に伴ってバルブ本体内部へ侵入する塵埃が抑制されるので、回転弁体や弁座部に塵埃が付着して封止性が低下することを少なくし、通気弁1の信頼性と耐久性を向上させることができる。
【0081】
負圧が緩和され、排水管83内が大気圧に戻ったとき、或は、筒本体17内が大気圧時又は大気圧以上の正圧時であるときには、回転弁体19には、偏心軸(ヒンジ)20を介して弁閉方向に回転する第2のアンバランストルクが発生し、回転弁体19が弁閉方向に回転作動する。この場合、錘部21で回転弁体19の偏心軸(ヒンジ)20まわりの閉方向モーメント値が開方向モーメント値よりも増加しているため、弁閉方向の回転モーメントMcが作用して全閉位置まで自動的に復帰する。
【0082】
図1の通気弁1の弁閉時には、弁体球面33が円錐テーパ面27に対して接線接触状態でシールして高いシール性を発揮し、さらに、この接線接触部は、弁体球面33及び円錐テーパ面27が排水管内部の流路側に向けて傾斜した形状であることにより、弁閉時の結露水がシール部に滞留する現象が防止される。
【0083】
ここで、大気圧時とは、排水管82内に予め設定した値(例えば30Pa)以上の負圧が生じておらず、回転弁体19の一次側と二次側との間の差圧がほとんど無いか、或は通気する必要がほとんど無い圧力差の状態をいう。一方、正圧時、負圧時とは、それぞれ排水管82内に大気圧以上の正圧が加わった状態、予め設定した値以上の負圧が加わった状態をいう。
【0084】
上記のように、通気弁1は、スプリングなどを用いることなく、弁開・弁閉方向の回転モーメントMo、Mcを利用したバランス構造によりアンバランストルクを発生させ、このアンバランストルクにより弁開・弁閉動作させている。
【0085】
次に、本発明の通気弁の他の実施形態について説明する。本実施形態を前述の図1の実施形態と比較すると、図1の実施形態では蓋体14と通気絞り部材15が別体に形成されているのに対し、本実施形態では、図9に示すように、蓋部86と、複数の開口部87を設けた通気絞り部材部88とが一体に形成されて蓋体89を構成している点が相違している。その他の部分は図1の実施形態と同じであるので、以下の説明では図1と同じ符号を使用する。
【0086】
本実施形態では、蓋体89をキャップ12のリング部50に装着すると、通気絞り部材部88が接続部47の内径側に設けた内周凸部58の上面58aに装着され、通気絞り部材部88でバルブ機構11の弁座部28を取り囲むように覆うことができる。また、通気絞り部材部88が弁座部28を取り囲むことによる作用及び効果は、図1の仕切弁1と同じであるので説明を省略する。
【0087】
続いて、本発明の通気弁のさらに他の実施形態を図10図11により説明する。なお、図10図11において図1と同一部分は同一の符号で示し説明を省略する。本実施形態の通気弁101を前述の図1の通気弁1と比較すると、図1の通気弁1では通気絞り部材15がキャップ12の柱状部48の内周側に装着しているのに対し、通気弁101では、図10図11に示すように、通気絞り部材102を円形上面103と筒形状側面104とを有する逆カップ状に形成し、この通気絞り部材102を蓋体14に被せることにより、筒形状側面104がキャップ12の外側から蓋体14と弁座部28とに挟まれた空間である通気弁101の通気路49を取り囲む構造になっている点が相違している。
【0088】
通気絞り部材102は、蓋体14に被せた際に、キャップ部材12の外周に形成した鍔部12aの下端までを略隙間なく覆うように形成され、筒形状側面104には通気部105として複数の開口部106が形成されているため、通気弁101の通気路49の通気面積を減少させることができる。
【0089】
通気弁101では、通気絞り部材102の開口部105の位置が蓋体14の外周側となるため、蓋体14により落下する塵埃が開口部105に接近するのを防ぐことができず、また、舞い上がる塵埃が開口部105に接近するのを防ぐ必要があるので、筒状側面104に設けた開口部105の上部及び下部には環状突起部107、108を設け、落下する塵埃及び巻き上がる塵埃が開口部106に接近するのを防いでいる。
【0090】
なお、図10図11において、通気絞り部材102の円形上面103の中央に円形開口部109が形成されているが、この円形開口部109の有無は任意であり、円形開口部109の有無は通気絞り部材102の機能に影響しない。
【0091】
また、通気絞り部材102により通気弁101の通気路49の通気面積を減少させることによる作用及び効果は、図1の仕切弁1と同じであるので説明を省略する。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明の通気弁は、低位設置用としてだけではなく、従来の伸頂型として当然に使用することができるので、住宅用の通気弁として幅広く適用が可能である。また、伸頂用としては通気絞り部材を設けない通気弁を用いることで多量の通気量を確保し、一方で低位設置用には通気絞り部材を設けた通気弁を用いることで排水性能を維持しながら塵埃の侵入を防止するなど、通気絞り部材の有無だけが異なり他は同じ設計の通気弁を用途に応じて使い分けることが可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1 仕切弁
10 弁機構
11 ボデー
12 キャップ部材
14 蓋体
15 通気絞り部材
16 弁体
19 回転弁体
48 柱状部
49 通気路
50 リング部
66 開口部
67 通気部
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11