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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】シート状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240827BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240827BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L5/00 B
A23L19/00 A
A23L19/00 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020086718
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021180618
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】野上 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267188(JP,A)
【文献】特開平03-191763(JP,A)
【文献】特開2019-010116(JP,A)
【文献】特開2002-045143(JP,A)
【文献】特開昭54-145250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRIGOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材として野菜及び/または果物ペーストを含み、かつ結着剤としてキノコペーストを含むペースト状原料を乾燥してなる野菜及び/または果物のシート状食品であって、ペースト状原料中の野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、キノコペーストを5~30質量%含む、上記野菜及び/または果物のシート状食品
【請求項2】
ペースト状原料中の野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、キノコペーストを2030質量%含む、請求項1記載の野菜及び/または果物のシート状食品。
【請求項3】
野菜ペーストが、根菜類、土物類、葉茎菜類、果菜類、マメ科野菜類、及びイネ科野菜類からなる群より選択される少なくとも一種の野菜のペーストである、請求項1または2記載の野菜及び/または果物のシート状食品。
【請求項4】
果物ペーストが、落葉性果樹、及び常緑性果樹からなる群より選択される少なくとも一種の果物のペーストである、請求項1~3のいずれか一項載の野菜及び/または果物のシート状食品。
【請求項5】
キノコペーストが、エノキダケ、椎茸、シメジ、ナメコ、エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、マッシュルーム、マツタケ、及び木耳からなる群より選択される少なくとも一種のキノコのペーストである、請求項1~4のいずれか一項に記載の野菜及び/または果物のシート状食品。
【請求項6】
野菜及び/または果物から野菜及び/または果物ペーストを製造し、これにキノコから製造したキノコペーストを添加してペースト状原料を製造し、その後乾燥することを含前記キノコペーストの添加量が、前記ペースト状原料中の野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、5~30質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の野菜及び/または果物のシート状食品の製造方法。
【請求項7】
キノコからキノコペーストを製造する工程を含み、前記工程において、ペースト化の前に加熱することを含む、請求項6記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜及び/または果物のシート状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野菜や果物(以下、野菜等ともいう)を原料としたシート状食品が市場に流通している。このようなシート状食品は、野菜等本来の栄養成分、風味及び色味等を有しているため、例えば海苔や生春巻きの皮の代わりに使用したり、細かく裁断して料理にトッピングしたりすること等によって、料理に彩りを簡単に付与することができ、喫食時には野菜等の風味を楽しむことができ、野菜等の栄養成分を摂取することもできる。
【0003】
しかしながら、野菜や果物には水分が多く含まれているため、単にミンチやペースト状にしたものを御簾あるいは簾に載せて乾かすのみでは、ひびわれなどが生じやすく、纏まりのあるしなやかなシート状食品を製造することは難しい。
従来このような野菜や果物のシート状食品の製造方法として、酵素共存下に野菜や果物をボイルする方法が報告されている(特許文献1)。この方法によると、酵素の作用により得られたシート状食品にしなやかさが付与されるものの、繊維組織の分解が進んでおり、全体がドロドロになりかえってシートがせんべいのように固くなってしまうという欠点がある。また、機能保持性ならびに食感に優れた野菜シートを提供するために、野菜の組織内水分の一定割合以上をトレハロース溶液で置換して乾燥する方法が知られているが、野菜の繊維質が残り、歯ざわり、舌触り、口どけなどのテクスチャーに問題がある(特許文献2)。結着剤(バインダー)として小麦粉、ヤマイモ、海藻等を利用したものが知られているが、小麦粉はアレルゲンであるため好ましくなく、また海藻はスペック(暗色の微小片あるいは異物)の原因となり、野菜シートの外観に影響を与えてしまう問題がある(特許文献3)。一方、結着剤を用いない乾燥した野菜シートは結合力が弱く、乾燥用トレーからの剥離がうまくできないという問題があるが、これを特定の剥離シートを用いて解決する方法も報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-56340号公報
【文献】特開2002-45143号公報
【文献】特開2013-188152号公報
【文献】特開2016-198091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、野菜や果物を原料としたシート状食品であって、適度な強度と可塑性を有し、かつ優れた食感を有するシート状食品及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の他の課題は、従来単体ではシート状に加工することが難しい野菜や果物の加工を可能として、様々な種類の野菜や果物のシート状食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ニンジンやカボチャ、タマネギ等の野菜及び/または果物のシート状食品の製造にあたり、結着剤としてエノキダケやナメコ等のキノコ類を原料としたキノコペーストを使用することにより、上記課題が解決されることを見いだした。キノコペーストを用いることによりキノコ類に含まれる不溶性食物繊維及び増粘多糖類が野菜にシート成型能を付与して、さらに食感の向上や強度と可塑性を与え、使用感の向上をも提供したものと考えられる。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 主材として野菜及び/または果物ペーストを含み、かつ結着剤としてキノコペーストを含むペースト状原料を乾燥してなるシート状食品。
[2] ペースト状原料中の野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、キノコペーストを5~50質量%含む、[1]記載のシート状食品。
[3] 野菜ペーストが、根菜類、土物類、葉茎菜類、果菜類、マメ科野菜類、及びイネ科野菜類からなる群より選択される少なくとも一種の野菜のペーストである、[1]または[2]記載のシート状食品。
[4] 果物ペーストが、落葉性果樹、及び常緑性果樹からなる群より選択される少なくとも一種の果物のペーストである、[1]~[3]のいずれか一に記載のシート状食品。
[5] キノコペーストが、エノキダケ、椎茸、シメジ、ナメコ、エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、マッシュルーム、マツタケ、及び木耳からなる群より選択される少なくとも一種のキノコのペーストである、[1]~[4]のいずれか一に記載のシート状食品。
[6] 野菜及び/または果物からペーストを製造し、これにキノコペーストを添加してペースト状原料を製造し、その後乾燥することを含む、[1]~[5]のいずれか一に記載のシート状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、適度な強度と可塑性を有し、かつ優れた食感と従来にない風味を有する野菜及び/または果物のシート状食品を提供することができる。
本発明により、野菜及び/または果物本来の色調を有するシート状食品を提供することができる。
また、本発明により、食物アレルギー症状を引き起こす特定原材料7品目に入る小麦や、外観に影響を与える海藻などを用いることなく、野菜及び/または果物のシート状食品を提供することができる。
本発明はまた、従来シート状食品とすることが難しかった糖度が多い野菜や果物あるいは繊維量が不十分な野菜や果物のシート状食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】野菜シートの柔軟性の評価方法の模式図である。
図2】ニンジンペーストのみから製造したシート状食品の外観写真である。
図3】エノキダケペーストのみから製造したシート状食品の外観写真である。
図4】ニンジンペーストとエノキダケペーストを80:20で混合したシート状食品の外観写真である。
図5】ニンジンペーストとエノキダケペーストを80:20で混合したシート状食品の可塑性を表す写真である。
図6】ニンジンペーストのみから製造したシート状食品の柔軟性の評価を行った際の外観写真である。
図7】ニンジンペーストとエノキダケペーストを80:20で混合したシート状食品の柔軟性の評価を行った際の外観写真である。
図8】カボチャペーストのみから製造したシート状食品の外観写真である。
図9】カボチャペーストとエノキダケペーストを80:20で混合したシート状食品の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシート状食品は、主材として野菜及び/または果物のペーストを含み、さらに結着剤としてキノコペーストを含む、ペースト状原料を乾燥してなるものである。
本明細書において野菜ペーストの「野菜」原料は特に限定されず、ニンジンやダイコン等の根菜類、タマネギやジャガイモ等の土物類、ケールやホウレンソウ等の葉茎菜類、カボチャやトマト等の果菜類、グリンピースやサヤエンドウ等のマメ科野菜類、トウモロコシやベビーコーン等のイネ科野菜類が挙げられる。好ましくは、ニンジン、カボチャ、ジャガイモ、タマネギ、コーンが挙げられる。より好ましくはニンジン、カボチャであり、最も好ましくはニンジンである。野菜原料は好ましくはペースト化の前に洗浄、皮をむく、不要な根や葉を除去するなどの前処理を行う。
【0010】
本明細書において果物ペーストの「果物」原料は特に限定されず、りんごやなし等の仁果類、モモやさくらんぼ等の核果類などの落葉性果樹、みかん等の柑橘類を含む常緑性果樹が挙げられる。好ましくは、りんご、なし、バナナが挙げられる。果物原料は好ましくはペースト化の前に洗浄、皮をむく、不要なへたや種子を除去するなどの前処理を行う。
上記野菜ペーストと果物ペーストは混合して用いてもよく、野菜と果物を破砕前後において混合しペーストを作製してもよい。
【0011】
本発明のシート状食品は、野菜及び/または果物のペーストを主材として製造される。「主材として」とは、結着剤であるキノコペーストを除いて主たる原材料であることを意味する。本発明において、「ペースト」は、加熱または非加熱の野菜及び/または果物を破砕または摩砕することにより得られるものである。
【0012】
「ペースト」の製造(ペースト化とも呼ぶ)は、「ペースト化装置」と呼ばれる装置を用いて行うことができる。「ペースト化装置」は、野菜等をペースト化できる公知の装置であれば制限無く使用可能である。磨石式(砥石式)、切刃式、胴搗式、媒体攪拌式、圧縮式、衝撃式、すり潰式等の装置及びそれらの組合せを例示することができる。好ましくは磨石式又は切刃式装置であり、最も好ましくは切刃式装置である。切刃式装置としては、市販されているカッターミキサーを使用することができる。
【0013】
ペースト化の条件は、目的のシート状食品の厚さ等のスペックに応じたペースト状原料の粒度や粘度、野菜等原料の種類や事前の処理方法、あるいは用いるペースト化装置の種類等によって適宜変更することが可能である。例えばニンジン等をカッターミキサーで処理する場合、1000~3000rpmで30秒~5分間処理する事によりペースト化することが出来る。
【0014】
ペースト中の固形分の大きさ(粒度ともいう)は、目的のシート状食品を製造するのに適切な程度に小さくなっていることが好ましい。粒度は、シートの見た目や乾燥が均一に行えることからより細かい方が好ましく、ペーストをバット上に薄く均一に広げた時、粒状物が目視できない程度が良い。
シート状食品の乾燥を均一に行うことができる観点からは、粒度は2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。上記粒度の下限値は特に限定されないが、例えば100μm以上であることが好ましい。上記粒度は、上記ペースト化の条件を調節することで調整することができる。上記粒度は、以下の要領に従って判断することができる。
まず、ペーストを任意の目開きをもつステンレス篩にかけ、篩上で濾す。濾したのちに篩上に残っているペーストをステンレス篩の目開きよりも大きい粒度のペースト、篩を通ったペーストを目開き以下の細かい粒度のペーストとして扱う。
【0015】
本発明において、ペースト化装置に供する野菜等は、事前に任意の大きさに切断し、熱水中又は蒸気中で加熱することが好ましい。例えばニンジンペーストであれば、ニンジンを洗浄後カットして熱水中で加熱してから、ペースト化装置(例えばミキサー)を用いて細かく砕くことによって製造できる。なお、加熱工程を省略し、生の野菜ペーストを用いることもできる。
【0016】
本明細書においてキノコペーストの原料となる「キノコ」は、一般に食用とされるキノコ類であればよい。例えばエノキダケや椎茸、シメジ、ナメコ、エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、マッシュルーム、マツタケ、木耳などが挙げられる。好ましくは、エノキダケ、ナメコであり、さらに好ましくはエノキダケである。また特にムチンを含むキノコ類が好ましい。
本発明は、野菜及び/または果物のシート状食品の製造にあたり、キノコペーストを結着剤として使用することにより、強度と可塑性を有し、かつ優れた食感と風味を有するシート状食品を製造することができたものである。
特にキノコペーストは、増粘性があるため、結着剤としてシート状食品に強度と可塑性を付与することができ、さらに、食感改良効果を与えて、歯切れを良くすることができる。キノコのペーストを併用することで、野菜のみを用いたシート状食品では従来実現不可能であった強度、食感の向上効果が得られる。
【0017】
さらに、本発明のシート状食品は、キノコペーストを用いることにより、乾燥後、フィルム状となり、従来報告されていた乾燥時のひび割れが生じないシート状食品を製造することができる。特にエノキダケあるいはナメコは、ペーストにした際ムチンによる粘性を有するため、他のキノコよりも更に柔軟性の高いシート状食品を製造することができるため好ましい。
【0018】
また、キノコ類を原料とするペーストは特定原材料7品目のアレルゲンを含まない食品にあたるため、アレルギー表示および添加物表示を不要とするシート状食品の製造を可能とする。
また、原料が全て天然物であるため、食品添加物表示が不要となるという利点を有する。
【0019】
さらに、キノコ類は野菜の色調を阻害しないため、色彩豊かなシート状食品とすることができる。使用するキノコはいずれのものでも良いが、例えば、エノキダケなど色の白いキノコを用いることにより、野菜や果物の本来の色調を阻害せず、より好ましい。
【0020】
キノコは未加熱で使用することもできるが、好ましくはペースト化の前に洗浄、柄の除去や茹でるなどの前処理を行う。
【0021】
本発明のキノコペーストは、上で述べた野菜及び/または果物のペーストの製造と同様にして製造してもよく、また異なる方法により製造してもよい。例えばエノキダケペーストであれば、エノキダケを洗浄後カットして熱水中で加熱し、ミキサーを用いて細かく砕くことによって製造できる。加熱工程を省略し、生のエノキダケペーストを用いることもできる。
キノコペーストの粒度は野菜・果物のペーストを作製する際の粒度より、より細かい方が野菜や果物のペーストに良く馴染み、シート状食品の見た目が良くなり、乾燥が均一に行えるため、好ましい。細かい粒度にするためのペースト化装置として、例えば、磨石式(砥石式)、さらには摩砕機が挙げられ、好ましくは2000~4000rpm、さらに好ましくは2000~3000rpmで用いることによりペースト化する。
キノコペーストの粒度は好ましくは300~1500μm、より好ましくは700μm以下程度まで破砕する。
【0022】
本発明のシート状食品の原料であるキノコペーストは、野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、5~50質量%であることが好ましく、20~30質量%であることがより好ましい。キノコペーストの比率が5質量%以上において、強度や食感の改良効果を得ることができる。キノコペーストの比率が20質量%以上で効果がほぼ一定になるため好ましい。野菜及び/または果物ペーストとキノコペーストの合計質量に対し、キノコペーストの比率が50質量%以下において、キノコ臭さがなく野菜及び/または果物の本来の風味とキノコの風味とのバランスが良い風味となり好ましい。また、50質量%以下において、キノコペーストの結着剤としての作用が適切で、シートの割れがないスムースなシート状食品を製造することができるため好ましい。
【0023】
本発明のシート状食品は、野菜及び/または果物ペーストにキノコペーストを添加したペースト状原料を薄く延ばし、乾燥させることによって製造することができる。例えば、ペースト状原料を型枠に流し込み乾燥することによって得ることができる。
ペースト状原料には、水、炭水化物(澱粉、糖アルコール、野菜粉末、穀粉、糖類)、脂質(粉末油脂)、植物性蛋白質(小麦蛋白、大豆蛋白)、動物性蛋白質(乳蛋白、卵蛋白)、調味料、香辛料等を、シート状食品の性状に影響を与えない程度において添加してもよい。
本発明のシート状食品の大きさ(サイズ)や厚さは、目的により適宜変えることができるものであるが、例えば、縦50mm×横50mm~縦1000mm×横1000mmで、厚さ0.2~5mm程度のものを製造することができる。
【実施例
【0024】
製造例1 野菜ペースト及び果物ペーストの作製(コーン、ニンジン、ホウレンソウ、タマネギ、ジャガイモ、カボチャ、リンゴ)
各野菜及び果物を洗浄した。ニンジン、ジャガイモ、カボチャ、リンゴについては皮をむき乱切りにした。ホウレンソウ、タマネギはざく切りにした。コーンは芯から粒を外した。各野菜についてそれぞれ沸騰水中で15分間加熱した後、カッターミキサーを用いて2000rpmで3分間処理し、各野菜及び果物ペーストを得た。
【0025】
製造例2 エノキダケペーストの製造方法
石づきから切り取ったエノキダケを洗浄し、3等分にカット後、98℃で3分間蒸煮した。加熱後のエノキダケを冷却し、摩砕機(増幸産業株式会社製、マスコロイダー)を用いて3000rpmで300~1500μm程度の粒度まで細かく砕いてペーストを得た。
【0026】
試験例1:エノキダケペーストの配合比率
製造例1で製造したニンジンペーストと、製造例2で製造したエノキダケペーストを表2の割合で混合した。混合したペースト状原料を、目開き200μmのメッシュ上に、厚さ2mm×縦100mm×横100mmの枠を置き、その上から混合済みのペーストを塗布した。型枠を外して100℃で20分間乾燥を行い、メッシュから剥離して、ニンジンのシート状食品を得た。
【0027】
評価方法
実施例及び比較例のシート状食品について、直径3cm×長さ5cmの筒状に成形したご飯に各シートを巻いて、表1の評価基準に従い、10名の熟練パネラーによって官能評価を行った。10人のパネラーの評価点とその人数及び平均評価点を表2に示した。評価の結果はすべての項目において3点以上の場合に、本発明による改良効果が見られたと判断した。
また、柔軟性評価は得られたニンジンシート(縦10cm×横10cm)を横方向の左側から3cm(右側7cm)の位置に合わせて棚の水平面の辺縁部に置き、右側をガイドに沿って下方に押し曲げた際に棚の水平面と平行なラインを基準として、ニンジンシートが割れた時点での角度を測定した。角度が大きいほど、柔軟性に優れた野菜シートの配合として評価を行った。90°折り曲げても割れない場合は「>90°」、また、シート状に成形できない場合は「-」と記した。図1に測定方法の模式図を記載する。
【0028】
表1 評価基準
【0029】
表2 エノキダケペーストの配合比率による食味への影響
【0030】
ニンジンペーストとエノキダケペーストの合計質量に対し、エノキダケペーストが4~50質量%の場合(実施例1~4)において、すべての項目でニンジンペーストのみで製造したシート状食品(比較例1)よりも評価がよくなった。また、エノキダケペーストが60質量%の場合(実施例5)では、エノキダケの風味が強くなるため風味バランスの評価は低くなったが、食感及び柔軟性ではニンジンペーストのみあるいはエノキダケペーストのみで製造したシート状食品(比較例1及び2)よりも評価がよくなった。エノキダケペーストの比率が60質量%を超えるとシート状食品の強度及び耐水性が向上する(試験結果は示さず)が、ニンジン本来の風味がエノキダケによってマスキングされ、キノコ臭さが出てくることが分かった。また可塑性も低下する傾向にあり巻いて使用するときの使用感が悪くなることが分かった。また、20質量%のエノキダケペーストを添加した場合に食味及び使用感の面で最適という結果となった(実施例4)。
【0031】
シートの表面、外観については、図に示した通りである(図2及び図6:比較例1(ニンジンペーストのみ)、図3:比較例2(エノキダケペーストのみ)、図4図5及び図7:実施例3(ニンジンペーストとエノキダケペーストを80:20の割合で混合したもの))。
ニンジンペーストのみの場合(比較例1)においては、シートの表面に割れが生じ、滑らかなシートとはならなかった(図2)。また、シートの可塑性もなかった。これに対して、エノキダケペーストを20質量%混合したニンジンシート(実施例3)については、表面が滑らかで、かつ強度と可塑性に優れたシート状食品に成型をすることができた(図4及び図5)。柔軟性評価においても、ニンジンシートのみ(比較例1、図6)では折曲強度が弱く、30°程度折り曲げた時点で割れが生じた。これに対し、ニンジンペーストとエノキダケペーストを80:20の割合で混合したもの(実施例3、図7)では、90°折り曲げた時点で割れは生じなかった。
【0032】
試験例2:野菜ペーストの種類
ニンジンペーストをニンジンペースト以外の各野菜ペーストまたは果物ペーストに変え、各野菜ペーストまたは果物ペーストとエノキダケペーストを表3-1及び表3-2の割合にした以外は、試験例1と同様にシート状食品を作製した。得られたシート状食品を「評価方法」に従い評価した。シートの表面、外観については、図に示した通りである(図8:比較例7(カボチャペーストのみ)、図9;実施例10(カボチャペーストとエノキダケペーストを80:20の割合で混合したもの))。
【0033】
表3-1
【0034】
表3-2
【0035】
カボチャペーストのみを用いた場合(比較例7)には、シート状に成型をした場合、表面がひび割れ、シート状に成型ができなかった(図8)。これに対し、エノキダケペーストを20質量%添加した場合(実施例10)には、表面が滑らかで(図9)、かつ強度と可塑性に優れたシート状食品への成型が可能となった。コーン、ジャガイモについてもカボチャと同様の結果となった。また、タマネギペーストのみの場合、シート状には加工できるものの強度が足りず、曲げると割れてしまう傾向がみられた(比較例5)。ホウレンソウペーストのみでは可塑性に乏しく、巻物などへの使用が難しかった(比較例4)。この結果に対し、エノキダケペーストを添加することにより、タマネギを使用したシート状食品には結着剤効果による強度の付与、ホウレンソウを使用したシート状食品にはフィルム形成能による可塑性の付与が効果として現れた(実施例8、実施例7)。
上記結果から、ニンジンペースト以外の野菜を用いたシート状食品にエノキダケペーストを使用した場合でも、食味や使用感に優れたシート状食品の製造に効果を示すことが分かった。
また、果物を活用した例としてリンゴをペースト状に加工したものについても同様の試験を行った。果物はかぼちゃ同様に糖度が高い原料であり、リンゴペーストのみでは乾燥時にひびが入ってしまうような現象が見られたが、エノキダケペーストを添加することで乾燥時のひび割れがなくなり、シート状への成型が可能となった。
【0036】
試験例3:キノコペーストの種類
エノキダケペーストをエノキダケペースト以外のキノコペーストに変え、ニンジンペーストと各キノコペーストを表4の割合にした以外は、試験例1に従いシート状食品を作製した。得られたシート状食品を「評価方法」に従い評価した
【0037】
表4
【0038】
ナメコペースト、椎茸ペースト、エリンギペースト及びシメジペーストを使用したシート状食品はいずれも食味、強度と可塑性に優れた野菜のシート状食品を作製できた(実施例12~15)。キノコの中でもムチンを多く含むナメコについては特に強度と可塑性に優れたシート状食品を得ることができた(実施例12)。また、椎茸については椎茸特有の香気成分がシート状食品の風味を良化させる結果となった(実施例13)。
以上の結果から、エノキダケ以外のキノコ類を使用した場合においてもシート状食品の成型、食味に効果があることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9