(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】建物用換気部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20240827BHJP
E04B 9/02 20060101ALI20240827BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
E04B1/70 A
E04B9/02 300
E04B1/64 C
(21)【出願番号】P 2020102598
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太郎
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100052(JP,A)
【文献】特開2018-053704(JP,A)
【文献】特開2013-044088(JP,A)
【文献】特開2010-203166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材であって、
前記建物の内部を外気に連通する換気穴を備え、前記天井に設けられる通気部材と、
前記外壁と前記換気穴との間において前記換気穴よりも下方に突出する第1の突出片を備え、前記通気部材に設けられる水切り部材と、
を有し、
前記水切り部材は、
前記通気部材に対して間隔を設けて取り付けられると共に、前記通気部材と分離可能である、
ことを特徴とする建物用換気部材。
【請求項2】
建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材であって、
前記建物の内部を外気に連通する換気穴を備え、前記天井に設けられる通気部材と、
前記外壁と前記換気穴との間において前記換気穴よりも下方に突出する第1の突出片を備え、前記通気部材に設けられる水切り部材と、
を有し、
前記水切り部材は、
前記天井と前記通気部材との間で前記通気部材に固定される固定片を備え、前記通気部材と分離可能であ
り、
前記固定片は、
前記天井との間の隙間を封止する水密材を有する、
ことを特徴とする建物用換気部材。
【請求項3】
建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材であって、
前記建物の内部を外気に連通する換気穴を備え、前記天井に設けられる通気部材と、
前記外壁と前記換気穴との間において前記換気穴よりも下方に突出する第1の突出片を備え、前記通気部材に設けられる水切り部材と、
を有し、
前記水切り部材は、
前記通気部材と分離可能である
と共に、下方に向けて前記換気穴から離れる方向に傾斜する、
ことを特徴とする建物用換気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁から外方に張り出した軒、キャンティバルコニー又は玄関ポーチ等の外壁からオーバーハングした天井に設置される建物用換気部材が知られている。このような建物用換気部材には、外気と軒天井裏との換気を行うための換気口が設けられている。
【0003】
また、強風時において、雨水は風に乗って外壁に当たって軒先方向に跳ね返る傾向がある。このような状況において、外壁からオーバーハングした天井に設置される建物用換気部材では、軒先方向に跳ね返った雨水が換気口を介して建物内に侵入する恐れがある。
【0004】
これに対して、特許文献1は、換気孔形成部材の他方の長辺から立ち下げた内方水切り板材を設けた換気部材を開示している。特許文献1の換気部材によれば、内方水切り板材を設けることにより、暴風雨時において外壁から跳ね返った雨水を内方水切り板材によって遮ることができ、防水上有利である。
【0005】
ここで、建物の立地条件又は納まりによっては、さほど防水への配慮を要しない場合がある。前者は、住宅が密集していて風を受けにくい場合、又は高台等の風を受けやすい場合である。後者は、軒の出が長いため、鼻隠し側に設けた通気部材に雨水が吹き込み難く、また雨水が吹き込んだとしても、漏水事故に繋がる可能性が低い場合である。
【0006】
一方、片流れ屋根の頂部では、一般に軒の出が十分に確保できない場合が多く、また通気部材より吹き込んだ雨水が、屋根の勾配によって下方に伝わって、部屋内への漏水に繋がるおそれがあり、より防水性に配慮を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1においては、高い防水性を求められる場合に対応させて、換気部材に内方水切り板材を一体に設けるため、コスト面で不利になるという課題を有する。即ち、軒裏の通気部材は、建築基準法の防火制限を受ける場合があり、その対処として、一般に、溶融温度が高いスチール又はステンレス製とし、折り曲げ加工により成形される。従って、特許文献1のように内方水切り板材を一体的に成形する場合には、折り曲げ工数が増えて、コスト高となり、また加工設備を準備する場合にあっては、この成形分だけ設備費が嵩むことになる。
【0009】
本発明の目的は、必要に応じて水切り部材を設けることにより、高い防水性を具えることができると共に、求められる防水性の度合いに応じて安価にすることができる建物用換気部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る建物用換気部材は、建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材であって、前記建物の内部を外気に連通する換気穴を備え、前記天井に設けられる通気部材と、前記外壁と前記換気穴との間において前記換気穴よりも下方に突出する第1の突出片を備え、前記通気部材に設けられる水切り部材と、を有し、前記水切り部材は、前記通気部材に対して間隔を設けて取り付けられると共に、前記通気部材と分離可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要に応じて水切り部材を設けることにより、高い防水性を具えることができると共に、求められる防水性の度合いに応じて安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材を用いた換気構造の断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材に端部部材を取り付ける前後の状態の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材を用いた換気構造の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材に取り付けられるコーナーカバーの斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材にコーナーカバーを取り付けた状態の斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る建物用換気部材を用いた換気構造の断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態4に係る建物用換気部材を用いた換気構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態に係る建物用換気部材につき、詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
<建物用換気部材の構成>
本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材Aの構成につき、
図1及び
図2を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0015】
なお、
図1において、建物用換気部材Aが地面に対して軒天井板101の傾斜角度と略同一角度で傾いた状態で天井に設けられているが、建物用換気部材Aの構成の説明における上下及び左右の方向については、軒天井板101と平行な方向を左右方向とし、軒天井板101と平行な方向と直交する方向を上下方向とする。
【0016】
建物用換気部材Aは、
図1に示すように、建物の外壁102から外方(
図1において右方)に持ち出される天井の野縁105に設けられて天井に設置されている。野縁105の外方端部には、鼻隠し下地材104が設けられる。鼻隠し下地材104には、鼻隠し材103が固定されている。野縁105の下面には、軒天井板101が固定されている。
【0017】
建物用換気部材Aは、野縁105の下面にネジ4により固定されている。建物用換気部材Aは、外気と軒天井裏(
図1に示す軒天井板101の上部空間)との換気を行う。なお、建物用換気部材Aは、ネジ4以外の釘等の他の固定手段によって野縁105に固定されていてもよい。
【0018】
具体的には、建物用換気部材Aは、第1のケース部材5と、第2のケース部材6と、水切り部材7と、水密材10と、水密材11と、三次元網目状フィルター材13と、を有している。第1のケース部材5と第2のケース部材6とは、通気部材を構成している。
【0019】
第1のケース部材5は、固定片5aと、垂下片5bと、延設片5cと、垂上片5dと、水返し片5eと、を備えている。
【0020】
固定片5aは、平坦になっている。固定片5aには、後述の第2のケース部材6の固定片6aと重なる部位にネジ4を挿通する長穴からなる取付穴9が設けられている。
【0021】
垂下片5bは、固定片5aの幅方向(左右方向)の一端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。
【0022】
延設片5cは、垂下片5bの下端から外方に直角に折り曲げられて固定片5aの幅方向と平行な方向に延設されている。
【0023】
垂上片5dは、延設片5cの延設方向の端部から上方に直角に折り曲げられて延設されている。
【0024】
水返し片5eは、固定片5aの幅方向の他端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。水返し片5eは、三次元網目状フィルター材13を取り除いた状態において、換気片6cの換気穴6c1に対向している。水返し片5eは、ケース部材6の換気片6cと対向片6hとの間に配置されている。
【0025】
第2のケース部材6は、第1の固定片6aと、垂下片6bと、換気片6cと、凸部6dと、底片6eと、収容片6fと、凸部6gと、対向片6hと、第2の固定片6iと、水返し片6jと、を備えている。
【0026】
第1の固定片6aは、平坦になっている。第1の固定片6aには、第1のケース部材5の固定片5aと重なる部位にネジ4を挿通する長穴からなる取付穴9が設けられている。第1の固定片6aの幅方向(左右方向)の長さは、第1のケース部材5の固定片5aの幅方向の長さよりも、換気片6cと水返し片5eとの離間間隔分だけ短くなるように設定されている。
【0027】
垂下片6bは、第1の固定片6aの幅方向の垂下片5bが垂下されている側の一端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。
【0028】
換気片6cは、第1の固定片6aの幅方向の他端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。換気片6cには、複数の換気穴6c1が長手方向に複数並設されている。複数の換気穴6c1は、建物の内部である軒天井裏と外気とを連通する。複数の換気穴6c1は、防虫上及びコストの面からもスリット状とすることが好ましい。
【0029】
凸部6dは、換気片6cの鉛直方向下端から垂下片6b側に突出している。
【0030】
底片6eは、凸部6dを介して換気片6cに接続されており、凸部6dから外方に折り曲げられて第1の固定片6aの幅方向と平行な方向に延設されている。
【0031】
収容片6fは、底片6eの延設方向の端部から所定の傾斜角度を有して上方に折り曲げられて延設されている。
【0032】
凸部6gは、収容片6fの上方端部から外方に突出している。
【0033】
対向片6hは、凸部6gを介して収容片6fに接続されており、凸部6gから上方に折り曲げられて換気片6cと平行になるように延設されている。対向片6hは、水返し片5eに対して換気穴6c1の反対側に対向して配置されている。
【0034】
第2の固定片6iは、対向片6hの上端から外方に直角に折り曲げられて第1の固定片6aの幅方向と平行になるように延設されている。第2の固定片6iには、取付穴6i1が設けられている。第2の固定片6iは、固定片5a及び第1の固定片6aを下地材に固定できないような換気構造の場合に、固定手段となる図示しない釘又はネジを取付穴6i1に挿通して下地材に固定される。
【0035】
水返し片6jは、垂下片6bの下端から外方に直角に折り曲げられて第1の固定片6aの幅方向と平行な方向に延設された後に、延設方向の端部から所定の傾斜角度を有して上方に折り曲げられて延設されると共に、先端が内方にU字状に折り曲げられている。水返し片6jは、鼻隠し材3の裏面に当接する。
【0036】
水切り部材7は、第1の固定片7aと、第2の固定片7bと、対向片7cと、突出片7dと、を備えており、第2のケース部材6と分離可能に第2のケース部材6に設けられている。
【0037】
第1の固定片7aは、平坦であり、第2のケース部材6の第2の固定片6iと重なり合っている。
【0038】
第2の固定片7bは、第1の固定片7aの幅方向(
図1において左右方向)の一端から下方に直角に折り曲げられて垂下されており、第2のケース部材6の対向片6hと重なり合って対向片6hに固定されている。
【0039】
対向片7cは、第2の固定片7bの下端から外方に直角に折り曲げられて第1の固定片7aの幅方向と平行な方向に延設されており、第1の固定片7aに対向している。対向片7cは、凸部6gに対して間隔を有して対向している。
【0040】
突出片7dは、対向片7cの延設方向の先端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されていると共に、先端が内方にU字状に折り曲げられている。突出片7dは、外壁102と換気穴6c1との間において換気穴6c1よりも下方に突出している。突出片7dは、凸部6gに対して間隔を有して対向している。なお、突出片7dの先端は、端部形状の安定化及びハンドリングに配慮してU字状に折り曲げているが、これに限らず、直線状でも良い。
【0041】
水密材10は、長尺状であり、第1のケース部材5の垂上片5dの外面に、建物用換気部材Aの長手方向(
図1において紙面の奥行方向)に沿って両面テープ等により貼着されている。水密材10は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の樹脂発泡体である。水密材10は、垂上片5dと鼻隠し材103との間で圧縮されることにより、垂上片5dと鼻隠し材103との間の隙間を封止する。
【0042】
水密材11は、長尺状であり、水切り部材7の第2の固定片7bの外面に、建物用換気部材Aの長手方向に沿って両面テープ等により貼着されている。水密材11は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の樹脂発泡体である。水密材11は、軒天井板101と第2の固定片7bとの間で圧縮されることにより、軒天井板101と第2の固定片7bとの隙間を封止する。
【0043】
三次元網目状フィルター材13は、通気性を有すると共に、第1のケース部材5の水返し片5eと、第2のケース部材6の対向片6hと、の間に形成される換気通路12cを通気する風圧力を損失させる機能を有する。三次元網目状フィルター材13は、網目状の多孔質材を採用することができる。例えば、三次元網目状フィルター材13としては、通常のウレタンフォームを特殊処理して発泡膜を除去し、通気性及び水切れ性に優れたウレタンフォームからなる株式会社ブリヂストン製の「エバーライトSF(商品名)」等のフィルター材が適用可能である。
【0044】
上記の構成を有する建物用換気部材Aには、第1のケース部材5の水返し片5eと第2のケース部材6の換気片6cとの間に、換気穴6c1と連通する換気通路12aが形成されていると共に、水返し片5eと対向片6hとの間に、換気穴6c1と連通する換気通路12cが形成されている。また、建物用換気部材Aには、底片6eの上方に換気通路12aと換気通路12cとを連通する換気通路12bが形成されている。
【0045】
換気通路12cには、換気通路12cの幅及び長さに対応する幅と長さを有する三次元網目状フィルター材13が嵌入されて係止されている。
【0046】
<建物用換気部材の製造方法>
本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材Aの製造方法につき、以下に詳細に説明する。
【0047】
第1のケース部材5、第2のケース部材6及び水切り部材7の各々は、互いに分離可能であり、1枚のスチール、ステンレス若しくはアルミニウム等の鋼板をロールフォーミング若しくは折曲加工により成形、又は、押出成形等により全体が一体的に形成されている。
【0048】
まず、第1のケース部材5の垂上片5dの外面に対して、建物用換気部材Aの長手方向に沿って長尺状の水密材10を図示しない両面テープ等により貼着する。
【0049】
次に、固定片5aと固定片6aとを接着又はスポット溶接等により一体的に固定することにより、第1のケース部材5と第2のケース部材6とを一体的に固定する。また、対向片6hと第2の固定片7bとを接着又はスポット溶接等により一体的に固定することにより、第2のケース部材6と水切り部材7とを一体的に固定する。これにより、第1のケース部材5、第2のケース部材6及び水切り部材7が一体的に固定される。この状態において、固定片5aと固定片6a、垂下片5bと垂下片6bの上方側、対向片6hと第2の固定片7b、及び第2の固定片6iと第1の固定片7aの各々が互いに当接して重なり合っている。
【0050】
次に、水切り部材7の第2の固定片7bの外面に対して、建物用換気部材Aの長手方向に沿って長尺状の水密材11を図示しない両面テープ等により貼着する。また、第1のケース部材5の水返し片5eと第2のケース部材6の対向片6hとの間に形成される換気通路12cに対して、三次元網目状フィルター材13を嵌入して係止する。
【0051】
ここで、一つの建物の中には、片流れ頂部等の比較的防水性を厳重にしたい部分と、一般の軒先等のそれほど高い防水性を必要としない部分と、がある。この場合において、防水性を厳重にしたい部分に取り付ける建物用換気部材として、水切り部材7を設けた建物用換気部材Aを製造し、それほど高い防水性を必要としない部分に取り付ける建物用換気部材として、建物用換気部材Aから水切り部材7を取り除いて第1のケース部材5及び第2のケース部材6のみからなる建物用換気部材を製造する。
【0052】
これにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6を共用しつつ、必要に応じて水切り部材7を設けることができるので、コスト面で優位性を得ることができる。また、第1のケース部材5及び第2のケース部材6を共用することにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6によって構成される通気部材を天井に設置する下地組等の施工の共通化を図ることができる。
【0053】
<建物用換気部材の天井への取付方法>
本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材Aの天井への取付方法につき、
図3も参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0054】
図3において、
図3(a)は建物用換気部材Aに対して端部部材50を取り付ける前の状態を示し、
図3(b)は建物用換気部材Aに対して端部部材50を取り付けた後の状態を示している。また、
図3は、第1のケース部材5及び第2のケース部材6を水切り部材7から切り離した状態を示している。
【0055】
建物用換気部材Aは、互いに重なり合っている第2の固定片6iと第1の固定片7aとが軒天井板101と野縁105との隙間に挿入されると共に、水返し片6jが鼻隠し材3の裏面に当接した状態で、鼻隠し下地材104の下面に固定手段となるネジ4により固定される。また、建物用換気部材Aを鼻隠し下地材104の下面に固定した状態において、水密材10が鼻隠し材103の裏面に当接すると共に、水密材11が軒天井板101の側面に当接する。
【0056】
ここで、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材を継いで、通気部材を建物全周に設置する場合がある。この場合には、建物の形状に合わせて施工を簡便にするために、一般に、通気部材のジョイント部、出入隅コーナー部及び端部に設ける専用の役物を設定する。
【0057】
具体的には、
図3に示すように、天井に取り付ける建物用換気部材Aの端部に端部部材50を取り付ける場合には、端部部材50の係合片51を突出片7dと凸部6gとの隙間に挿入して建物用換気部材Aに係合すると共に、建物用換気部材Aの端部に取り付けた端部部材50を建物用換気部材Aと共締め施工する。これにより、端部部材50は、一対の係合片51が凸部6g及び水返し片6jに係合し、天面部52が固定片5a、三次元網目状フィルター材13及び第2の固定片6iの上面を覆うと共に、側面部53が建物用換気部材Aの長手方向の両端部を覆う。
【0058】
また、複数の建物用換気部材Aを連続して天井に設ける場合には、図示を省略するが、複数の建物用換気部材Aの継ぎ目をジョイント材で連結する。この場合には、複数の建物用換気部材Aの継ぎ目を突き付けとし、ジョイント材の係合片を突出片7dと凸部6gとの隙間に挿入して建物用換気部材Aに係合すると共に、継ぎ目に取り付けたジョイント材を取付ネジで建物用換気部材Aと共締めする。
【0059】
なお、役物を建物用換気部材Aと共締めしたが、これに限らず、役物を建物用換気部材Aに嵌合、両面接着テープで取付、又は外壁や天井の下地へのビス留めによって取り付けてもよい。
【0060】
因みに、通気部材は、建物の設置寸法に合わせて、現場において切断されることがある。現場で切断された通気部材の端部に設けられる役物は、体裁よくするために、通気部材の端部をカバーできるような形状にすることが好ましい。また、役物は、通気部材の長手寸法を役物で調整できるようにするために、通気部材を重ねてカバーできることが好ましい。従って、役物の断面形状は、一般に、通気部材の外形に沿って設計される。この際に、通気部材と一体に内方水切り材を設ける場合には、内方水切り材を含む通気部材の外形に沿って役物を設計する必要があり、役物についても加工が複雑になると共に曲げ工数が増えることにより、コスト高になる。
【0061】
このように、第2のケース部材6の凸部6gに対して、必要に応じて設けられる水切り部材7の突出片7dを間隔を有して配置することにより、水切り部材7を切り離して、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材との取り合いのみを考慮して役物を設計及び設定することができる。これにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6により構成される通気部材を、求められる防水性の度合いに応じ、一方のみ水切り部材7付き、両方共水切り部材7付き、又は両方共水切り部材7無しとする場合であっても、これらに応じて各々の役物を準備することを要さず、役物を共通にすることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0062】
また、本実施の形態における建物用換気部材Aによれば、軒天材端部と取り合う部分に水切り部材7を接合することにより、軒天材と、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材と、で水切り部材7を挟み込み保持できるので、水切り部材7の装着は両面接着テープ等の仮止め程度の接合強度で足り、安価にすることができる。
【0063】
<建物用換気部材の動作>
本発明の実施の形態1に係る建物用換気部材Aの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0064】
建物用換気部材Aにおいて、
図1に矢線Sによって示すように、外気は換気片6cの換気穴6c1を介して換気片6cと水返し片5eとの間に形成される換気通路12aを通気し、水返し片5eの下端部と底片6eとの間に形成される換気通路12bを通気し、水返し片5eと対向片6hとの間の換気通路12cの全体に亘って設けられた三次元網目状フィルター材13を通気して外気と軒天井裏の空間との換気を行う。
【0065】
暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向(
図1において右方)に跳ね返った雨水は、水切り部材7の突出片7dに当たって落下又は突出片7dに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを防ぐことができる。
【0066】
また、暴風雨時は、水返し片5eにより空気の流れを阻害し、また三次元網目状フィルター材13によって、外気圧と建物用換気部材Aの内部(換気穴6c1と三次元網目状フィルター材13との間の換気通路12a~12c)の圧力とを、略同一圧力にすることができ、気圧差による雨水の浸入を等圧効果により押さえることで優れた防水性を確保することができる。また、三次元網目状フィルター材13にかかる雨水を減ずることができる。また、建物用換気部材A内に防水構造を構成できるので、建物用換気部材Aの小型化を図ることができ、建物への納まり対応性を良好にすることができると共に、取り付け作業を容易にすることができる。
【0067】
三次元網目状フィルター材13にかかる雨水を減ずることができるため、使用できる三次元網目状フィルター材13の制限を緩和することができ、設計の自由度を向上することができる。従って、水を含み易い性質ではあるものの、空隙率が高く、換気面積のロスが少なく、安価で設置も容易な網目状の多孔質材料等を三次元網目状フィルター材13として採用することができる。
【0068】
また、換気穴6c1が設けられた換気片6cの下端部に連続して凸部6dを設けたことで、軒天井板101を下から見上げた際に、凸部6dにより換気穴6c1を見え難くして意匠性を良くすることができる。
【0069】
垂上片5dと鼻隠し材103との間の隙間を水密材10によって封止することにより、鼻隠し材103と鼻隠し下地材104との隙間からの雨水の侵入を防ぐ。また、水切り部材7と軒天井板101との間の隙間を水密材11によって封止することにより、軒天井板101と鼻隠し下地材104との隙間からの雨水の侵入を防ぐ。これにより、防水性能をより向上させることができる。
【0070】
このように、本実施形態によれば、水切り部材7を第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材と分離可能にすることにより、必要に応じて水切り部材7を設けることにより、高い防水性を具えることができると共に、求められる防水性の度合いに応じて安価にすることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、水切り部材7が天井と第2のケース部材6との間で第2のケース部材6に固定される第2の固定片7bを備え、第2の固定片7bが天井との隙間を封止する水密材11を有することにより、防水性能をより向上させることができる。
【0072】
なお、本実施の形態において、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材に水切り部材7を設けたが、これに限らず、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材以外の建物に取り付けられる雨水に晒される部材に水切り部材7を設けることができる。
【0073】
(実施の形態2)
<建物用換気部材の構成>
本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材Bの構成につき、
図4を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0074】
なお、
図4において、
図1及び
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
建物用換気部材Bは、建物の外壁102から外方に持ち出される天井の野縁105に設けられて天井に設置されている。建物用換気部材Bは、野縁105の下面にネジ4により固定されている。建物用換気部材Bは、外気と軒天井裏との換気を行う。なお、建物用換気部材Bは、ネジ4以外の釘等の他の固定手段によって野縁105に固定されていてもよい。
【0076】
具体的には、建物用換気部材Bは、第1のケース部材5と、第2のケース部材6と、水密材10と、水密材11と、三次元網目状フィルター材13と、スペーサー部材15と、水切り部材17と、を有している。
【0077】
水切り部材17は、固定片17aと、対向片17bと、突出片17cと、を備えており、第2のケース部材6と分離可能に第2のケース部材6に設けられている。
【0078】
固定片17aは、平坦であり、第2のケース部材6の底片6eに対して、リベット14によって固定されている。固定片17aは、底片6eとの間で樹脂又は金属等のスペーサー部材15を挟持することにより、底片6eに対して間隔を有して対向している。
【0079】
対向片17bは、固定片17aの幅方向(
図6において左右方向)の一端から所定の傾斜角度を有して上方に折り曲げられて収容片6fと平行な方向に延設されている。対向片17bは、収容片6fに対して間隔を有して対向している。
【0080】
突出片17cは、対向片17bの延設方向の先端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されている。突出片17cは、外壁102と換気穴6c1との間において換気穴6c1よりも下方に突出している。
【0081】
上記の構成を有する建物用換気部材Bの第1のケース部材5、第2のケース部材6及び水切り部材17の各々は、互いに分離可能であり、1枚のスチール、ステンレス若しくはアルミニウム等の鋼板をロールフォーミング若しくは折曲加工により成形、又は、押出成形等により全体が一体的に形成されている。
【0082】
<建物用換気部材の天井への取付方法>
本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材Bの天井への取付方法につき、以下に詳細に説明する。
【0083】
建物用換気部材Bは、第2の固定片6iが軒天井板101と野縁105との隙間に挿入されると共に、鼻隠し下地材104の下面に固定手段となるネジ4(
図6において図示を省略)により固定される。また、建物用換気部材Bを鼻隠し下地材104の下面に固定した状態において、水密材10が鼻隠し材103の裏面に当接すると共に、水密材11が軒天井板101の側面に当接する。
【0084】
ここで、建物用換気部材Bを天井に設置する場合には、一般にジョイント材、端部部材及び出入隅コーナー部材等の役物を用いる。
【0085】
具体的には、
図5及び
図6に示すように、天井に取り付ける建物用換気部材Bの出入隅コーナー部に出入隅コーナー部材としてのコーナーカバー60を取り付ける場合には、コーナーカバー60を第1のケース部材5及び第2のケース部材6により構成される通気部材と、水切り部材17と、の間に挿入して建物用換気部材Bに係合させると共に、建物用換気部材Bの出入隅コーナー部に取り付けたコーナーカバー60を建物用換気部材Bと共締め施工する。これにより、コーナーカバー60の第1の固定片60aが第2のケース部材6の第1の固定片6aを覆い、垂下片60bが垂下片6bを覆い、換気片60cが換気片6cを覆い、凸部60dが凸部6dを覆い、底片60eが底片6eを覆い、収容片60fが収容片6fを覆い、凸部60gが凸部6gを覆い、水返し片60jが水返し片6jを覆う。
【0086】
また、天井に取り付ける建物用換気部材Bの端部に端部部材を取り付ける場合には、端部部材の係合片を凸部6gに係合すると共に、建物用換気部材Bの端部に取り付けた端部部材を建物用換気部材Bと共締め施工する。
【0087】
また、複数の建物用換気部材Bを連続して天井に設ける場合には、複数の建物用換気部材Bの継ぎ目をジョイント材で連結する。この場合には、複数の建物用換気部材Bの継ぎ目を突き付けとし、底片6e及び収容片6fと、固定片17a及び対向片17bと、の隙間にジョイント材を挿入して建物用換気部材Bに係合すると共に、継ぎ目に取り付けたジョイント材を取付ネジで建物用換気部材Bと共締めする。
【0088】
なお、役物を建物用換気部材Bと共締めしたが、これに限らず、役物を建物用換気部材Bに嵌合、両面接着テープで取付、又は外壁や天井の下地へのビス留めによって取り付けてもよい。また、リベット14及びスペーサー部材15は、建物用換気部材Bに取り付けられる役物と干渉しない位置に設けられている。
【0089】
このように、第2のケース部材6の底片6e及び収容片6fに対して、必要に応じて設けられる水切り部材17の固定片17a及び対向片17bを間隔を有して配置することにより、水切り部材17を切り離して、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材との取り合いのみを考慮して役物を設計及び設定することができる。これにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6により構成される通気部材を、求められる防水性の度合いに応じ、一方のみ水切り部材17付き、両方共水切り部材17付き、又は両方共水切り部材17無しとする場合であっても、これらに応じて各々の役物を準備することを要さず、役物を共通にすることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0090】
<建物用換気部材の動作>
本発明の実施の形態2に係る建物用換気部材Bの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0091】
暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水は、水切り部材17の突出片17cに当たって落下又は突出片17cに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを防ぐことができる。
【0092】
突出片17cは、
図6に示すように、地面に対して略水平に天井に取り付けられる場合には鉛直方向に対して45度等の鈍角の傾斜角度になるように内方に折り曲げられていることが好ましい。これにより、
図6において右方から左方に向けて低くなるように傾斜する天井に建物用換気部材Bを設ける場合であっても、鼻隠し材103を超えて吹き込んでくる雨水が突出片17cに当たって換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを確実に防ぐことができる。
【0093】
なお、建物用換気部材Bの上記以外の動作は建物用換気部材Aの動作と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0094】
また、本実施の形態において、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材に水切り部材17を設けたが、これに限らず、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材以外の建物に取り付けられる雨水に晒される部材に水切り部材17を設けることができる。
【0095】
また、本実施の形態において、スペーサー部材15によって水切り部材17を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けたが、スペーサー部材15の代わりに、プレスによるパンチ加工によって形成される凸形状部、又は両面接着テープによって、水切り部材17を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けてもよい。
【0096】
(実施の形態3)
<建物用換気部材の構成>
本発明の実施の形態3に係る建物用換気部材Cの構成につき、
図7を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0097】
なお、
図7において、
図1及び
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
建物用換気部材Cは、建物の外壁102から外方に持ち出される天井の野縁105に設けられて天井に設置されている。建物用換気部材Cは、野縁105の下面にネジ4により固定されている。建物用換気部材Cは、外気と軒天井裏との換気を行う。
【0099】
具体的には、建物用換気部材Cは、第1のケース部材5と、第2のケース部材6と、水密材10と、水密材11と、三次元網目状フィルター材13と、スペーサー部材15と、水切り部材27と、を有している。
【0100】
水切り部材27は、固定片27aと、対向片27bと、突出片27cと、突出片27dと、を備えており、第2のケース部材6と分離可能に第2のケース部材6に設けられている。
【0101】
固定片27aは、平坦であり、第2のケース部材6の底片6eに対して、リベット14によって固定されている。固定片27aは、底片6eとの間でスペーサー部材15を挟持することにより、底片6eに対して間隔を有して対向している。
【0102】
対向片27bは、固定片27aの幅方向(
図7において左右方向)の一端から所定の傾斜角度を有して上方に折り曲げられて収容片6fと平行な方向に延設されている。対向片27bは、収容片6fに対して間隔を有して対向している。
【0103】
突出片27cは、対向片27bの延設方向の先端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されている。突出片27cは、外壁102と換気穴6c1との間において換気穴6c1よりも下方に突出している。
【0104】
突出片27dは、固定片27aの幅方向の他端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されている。突出片27dは、突出片27cよりも換気穴6c1側に設けられて換気穴6c1よりも下方に突出している。突出片27dの下端は、突出片27cの下端よりも上方に位置している。なお、突出片27dの下端は、突出片27cの下端よりも下方に位置するようにしてもよい。
【0105】
上記の構成を有する建物用換気部材Cの第1のケース部材5、第2のケース部材6及び水切り部材27の各々は、互いに分離可能であり、1枚のスチール、ステンレス若しくはアルミニウム等の鋼板をロールフォーミング若しくは折曲加工により成形、又は、押出成形等により全体が一体的に形成されている。
【0106】
<建物用換気部材の天井への取付方法>
本発明の実施の形態3に係る建物用換気部材Cの天井への取付方法につき、以下に詳細に説明する。
【0107】
建物用換気部材Cは、第2の固定片6iが軒天井板101と野縁105との隙間に挿入されると共に、鼻隠し下地材104の下面に固定手段となるネジ4(
図7において図示を省略)により固定される。また、建物用換気部材Cを鼻隠し下地材104の下面に固定した状態において、水密材10が鼻隠し材103の裏面に当接すると共に、水密材11が軒天井板101の側面に当接する。
【0108】
ここで、建物用換気部材Cを天井に設置する場合には、一般にジョイント材、端部部材及び出入隅コーナー部材等の役物を用いる。なお、建物用換気部材Cに対する各役物の取付方法は建物用換気部材Bに対する各役物の取付方法と同一方法であるので、その説明を省略する。
【0109】
このように、第2のケース部材6の底片6e及び収容片6fに対して、必要に応じて設けられる水切り部材27の固定片27a及び対向片27bを間隔を有して配置することにより、水切り部材27を切り離して、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材との取り合いのみを考慮して役物を設計及び設定することができる。これにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6により構成される通気部材を、求められる防水性の度合いに応じ、一方のみ水切り部材27付き、両方共水切り部材27付き、又は両方共水切り部材27無しとする場合であっても、これらに応じて各々の役物を準備することを要さず、役物を共通にすることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0110】
<建物用換気部材の動作>
本発明の実施の形態3に係る建物用換気部材Cの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0111】
暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水は、水切り部材27の突出片27cに当たって落下又は突出片27cに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを防ぐことができる。
【0112】
また、暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返って突出片27cを超えてきた雨水、又は突出片27cに当たって跳ね返ってきた雨水は、水切り部材27の突出片27dに当たって落下又は突出片27dに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを確実に防ぐことができる。
【0113】
なお、建物用換気部材Cの上記以外の動作は建物用換気部材Aの動作と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0114】
また、本実施の形態において、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材に水切り部材27を設けたが、これに限らず、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材以外の建物に取り付けられる雨水に晒される部材に水切り部材27を設けることができる。
【0115】
また、本実施の形態において、スペーサー部材15によって水切り部材27を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けたが、スペーサー部材15の代わりに、プレスによるパンチ加工によって形成される凸形状部、又はこの間隔に対応する厚さを有する両面接着テープによって、水切り部材27を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けてもよい。
【0116】
(実施の形態4)
<建物用換気部材の構成>
本発明の実施の形態4に係る建物用換気部材Dの構成につき、
図8を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0117】
なお、
図8において、
図1及び
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0118】
建物用換気部材Dは、建物の外壁102から外方に持ち出される天井の野縁105に設けられて天井に設置されている。建物用換気部材Dは、野縁105の下面にネジ4により固定されている。建物用換気部材Dは、外気と軒天井裏との換気を行う。
【0119】
具体的には、建物用換気部材Dは、第1のケース部材5と、第2のケース部材6と、水密材10と、水密材11と、三次元網目状フィルター材13と、水切り部材37と、を有している。
【0120】
水切り部材37は、固定片37aと、対向片37bと、突出片37cと、対向片37dと、第2の固定片37eと、第1の固定片37fと、突出片37gと、を備えており、第2のケース部材6と分離可能に第2のケース部材6に設けられている。
【0121】
固定片37aは、平坦であり、第2のケース部材6の底片6eに対して、リベット14によって固定されている。固定片37aは、第2のケース部材6のボス6kに当接することにより、底片6eに対して間隔を有して対向している。
【0122】
対向片37bは、固定片37aの幅方向(
図8において左右方向)の一端から所定の傾斜角度を有して上方に折り曲げられて収容片6fと平行な方向に延設されている。対向片37bは、第2のケース部材6のボス6kに当接することにより、収容片6fに対して間隔を有して対向している。
【0123】
突出片37cは、対向片37bの延設方向の先端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されていると共に下端がU字状に折り曲げられて上方に延設されている。突出片37cは、外壁102と換気穴6c1との間において換気穴6c1よりも下方に突出している。
【0124】
対向片37dは、突出片37cの延設方向の先端から内方に直角に折り曲げられて第1の固定片37fの幅方向と平行な方向に延設されており、第1の固定片37fに対向している。対向片37dは、凸部6gに対して間隔を有して対向している。
【0125】
第2の固定片37eは、対向片37dの延設方向の先端から上方に直角に折り曲げられて延設されており、第2のケース部材6の対向片6hと重なり合って対向片6hに固定されている。
【0126】
第1の固定片37fは、平坦であり、第2の固定片37eの上端から外方に直角に折り曲げられて対向片37dの延設方向と平行な方向に延設されている。第1の固定片37fは、第2のケース部材6の第2の固定片6iと重なり合っている。
【0127】
突出片37gは、固定片37aの幅方向の他端から所定の傾斜角度を有して下方に折り曲げられて延設されている。突出片37gは、突出片37cよりも換気穴6c1側に設けられて換気穴6c1よりも下方に突出している。突出片37gの下端は、突出片37cの下端よりも上方に位置している。なお、突出片37gの下端は、突出片37cの下端よりも下方に位置するようにしてもよい。
【0128】
上記の構成を有する建物用換気部材Dの第1のケース部材5、第2のケース部材6及び水切り部材37の各々は、互いに分離可能であり、1枚のスチール、ステンレス若しくはアルミニウム等の鋼板をロールフォーミング若しくは折曲加工により成形、又は、押出成形等により全体が一体的に形成されている。
【0129】
<建物用換気部材の天井への取付方法>
本発明の実施の形態4に係る建物用換気部材Dの天井への取付方法につき、以下に詳細に説明する。
【0130】
建物用換気部材Dは、第2の固定片6iが軒天井板101と野縁105との隙間に挿入されると共に、鼻隠し下地材104の下面に固定手段となるネジ4(
図8において図示を省略)により固定される。また、建物用換気部材Dを鼻隠し下地材104の下面に固定した状態において、水密材10が鼻隠し材103の裏面に当接すると共に、水密材11が軒天井板101の側面に当接する。
【0131】
ここで、建物用換気部材Dを天井に設置する場合には、一般にジョイント材、端部部材及び出入隅コーナー部材等の役物を用いる。なお、建物用換気部材Dに対する各役物の取付方法は建物用換気部材Bに対する各役物の取付方法と同一方法であるので、その説明を省略する。
【0132】
このように、第2のケース部材6の底片6e及び収容片6fに対して、必要に応じて設けられる水切り部材37の固定片37a及び対向片37bを間隔を有して配置することにより、水切り部材37を切り離して、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材との取り合いのみを考慮して役物を設計及び設定することができる。これにより、第1のケース部材5及び第2のケース部材6により構成される通気部材を、求められる防水性の度合いに応じ、一方のみ水切り部材37付き、両方共水切り部材37付き、又は両方共水切り部材37無しとする場合であっても、これらに応じて各々の役物を準備することを要さず、役物を共通にすることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0133】
<建物用換気部材の動作>
本発明の実施の形態4に係る建物用換気部材Dの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0134】
暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水は、水切り部材37の突出片37cに当たって落下又は突出片37cに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを防ぐことができる。
【0135】
また、暴風雨時において、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返って突出片37cを超えてきた雨水、又は突出片37cに当たって跳ね返ってきた雨水は、水切り部材37の突出片37gに当たって落下又は突出片37gに付着することにより、換気穴6c1まで到達しない。これにより、外壁102に当たって軒先方向に跳ね返った雨水が換気穴6c1を介して軒天井裏に侵入することを確実に防ぐことができる。
【0136】
なお、建物用換気部材Dの上記以外の動作は建物用換気部材Aの動作と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0137】
また、本実施の形態において、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材に水切り部材37を設けたが、これに限らず、第1のケース部材5及び第2のケース部材6から構成される通気部材以外の建物に取り付けられる雨水に晒される部材に水切り部材37を設けることができる。
【0138】
また、本実施の形態において、ボス6kによって水切り部材37を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けたが、ボス6kの代わりに、樹脂又は金属等のスペーサー部材、ボス6k以外のプレスによるパンチ加工によって形成される凸形状部、又は両面接着テープによって、水切り部材37を第2のケース部材6に対して間隔を有して設けてもよい。
【0139】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0140】
具体的には、上記実施の形態1から実施の形態4において、熱により膨張して換気通路12a~12cを塞ぐ不燃性体積膨張材を設けてもよい。この場合には、防火性能を向上させることができる。
【0141】
また、上記実施の形態1から実施の形態4において、換気片6cに換気穴6c1を設けたが、これに限らず、第1の固定片6a、垂下片6b、換気片6c及び凸部6dを無くすると共に、底片6eと水返し片6jの下端とを繋げて、この繋げた部分に換気穴を設けてもよい。
【0142】
また、上記実施の形態1から実施の形態4において、防水性を高めるために三次元網目状フィルター材13、水密材10及び水密材11を設けたが、コスト及び防水性の重要度を考量して三次元網目状フィルター材13、水密材10及び水密材11を省略することも可能である。
【0143】
また、上記実施の形態1から実施の形態4において、第1のケース部材5の延設片5c及び垂上片5dを省略してもよい。
【0144】
また、上記実施の形態1から実施の形態4において、水密材10及び水密材11の設置個所は、各実施の形態において例示した個所に限らず、建物用換気部材と取り合う軒天材と鼻隠し材との隙間に対向する個所において軒天井と鼻隠し材との隙間を防ぐことができればどこでもよい。
【0145】
また、上記実施の形態1から実施の形態4において、第1のケース部材5の垂上片5dに水密材10を設けたが、これに限らず、第1のケース部材5の延設片5c及び垂上片5dを省略した場合には垂下片5bに設けてもよいし、水返し片6jに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、建物の外壁から外方に持ち出される天井に設置される建物用換気部材に好適である。
【符号の説明】
【0147】
A 建物用換気部材
B 建物用換気部材
C 建物用換気部材
D 建物用換気部材
4 ネジ
5 第1のケース部材
5a 固定片
5b 垂下片
5c 延設片
5d 垂上片
5e 水返し片
6 第2のケース部材
6a 第1の固定片
6b 垂下片
6c 換気片
6c1 換気穴
6d 凸部
6e 底片
6f 収容片
6g 凸部
6h 対向片
6i 第2の固定片
6i1 取付穴
6j 水返し片
6k ボス
7 水切り部材
7a 第1の固定片
7b 第2の固定片
7c 対向片
7d 突出片
9 取付穴
10 水密材
11 水密材
12a 換気通路
12b 換気通路
12c 換気通路
13 三次元網目状フィルター材
14 リベット
15 スペーサー部材
17 水切り部材
17a 固定片
17b 対向片
17c 突出片
27 水切り部材
27a 固定片
27b 対向片
27c 突出片
27d 突出片
37a 固定片
37b 対向片
37c 突出片
37d 対向片
37e 第2の固定片
37f 第1の固定片
37g 突出片
50 端部部材
51 係合片
52 天面部
53 側面部
60 コーナーカバー
60a 第1の固定片
60b 垂下片
60c 換気片
60d 凸部
60e 底片
60f 収容片
60g 凸部
60j 水返し片
101 軒天井板
102 外壁
103 鼻隠し材
104 鼻隠し下地材
105 野縁