(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ニトリルゴム組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 9/02 20060101AFI20240827BHJP
C08K 5/3447 20060101ALI20240827BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240827BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240827BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240827BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240827BHJP
F16J 15/3284 20160101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K5/3447
C08K5/17
C08K5/14
C09K3/10 Z
F16J15/10 Y
F16J15/3284
(21)【出願番号】P 2020137537
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日隈 貴博
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 拓人
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079886(JP,A)
【文献】特開平09-025940(JP,A)
【文献】特開2011-079885(JP,A)
【文献】特開2019-206663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09K 3/10- 3/12
F16J 15/00- 15/14
F16J 15/16- 15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴム100質量部に対して、
ベンズイミダゾール系老化防止剤3~9質量部および
アミン系老化防止剤1~5質量部
を配合してな
り、
前記ニトリルゴム100質量部に対して1~6質量部の有機過酸化物により架橋されるニトリルゴム組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載のニトリルゴム組成物を過酸化物架橋させてなる成形品。
【請求項3】
シール部材である請求項
2に記載の成形品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリルゴム(NBR)は、アクリロニトリル(AN)とブタジエンの共重合体であり、耐油性に優れたゴムである。そのため、ニトリルゴムは、耐油性が必要とされるOリング、ガスケットなどのシール部材用途において、従来から広く使用されている。しかし、ニトリルゴムは、ポリマー主鎖中に二重結合を有するため、耐熱性が不十分となることがある。このニトリルゴムの欠点である二重結合を水素化して、耐熱性を改善した材料として、水素化ニトリルゴム(HNBR)がある。しかし、水素化ニトリルゴムは、コストが高い材料であるため、広く利用するには限界を有している。
【0003】
ニトリルゴムの中でもアクリロニトリル含有量が多いグレードは、耐熱性が良好であるが、耐寒性が低下する傾向にある。逆に、ニトリルゴムの中でもアクリロニトリル含有量が少ないグレードは、耐寒性が良好であるが、耐熱性が低下する傾向にある。
【0004】
耐寒性および熱老化後の耐寒性は、Oリングやガスケットなどのシール部材の低温におけるシール性に係る重要な特性である。ここで、熱老化後の耐寒性とは、熱老化試験後の耐寒性に係るものであり、耐熱性の指標となるものである。しかし、これまでのところ、ニトリルゴムの耐寒性および熱老化後の耐寒性を改善することについて、あまり検討がなされていない。
【0005】
ニトリルゴムをベースとしたゴム組成物において、耐熱性等をさらに改善しようとする技術がいくつか開示されている。特許文献1には、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴムの組成物であって、分子量300以上のヒンダードフェノール系老化防止剤を含有する架橋性ニトリルゴム組成物が開示されている。また、特許文献2には、ベンゾイミダゾール系老化防止剤とアミン系老化防止剤を含有するジエン系ゴム組成物が開示されており、ジエン系ゴムとしてニトリルゴムも挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-138048
【文献】特開2002-194140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の架橋性ニトリルゴム組成物は、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を共重合させ、ヨウ素価を低減させるために水素添加も行う特殊なニトリルゴムを用いるものであり、熱老化性には優れているものの、耐寒性については検討されていない。また、特許文献2のジエン系ゴム組成物は、主として天然ゴムを対象として検討されており、耐熱劣化防止性には優れているものの、耐寒性については検討されていない。
【0008】
さらに、耐熱性に対するより厳しい品質要求に対応して、熱老化後の耐寒性において、より厳しい高温条件での熱老化に耐えて、耐寒性を発揮し得るニトリルゴム組成物に対する要望も存在していた。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。本発明の課題は、初期および熱老化後の耐寒性に優れたニトリルゴム組成物およびその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ニトリルゴムの耐熱性と耐寒性を共に向上させるため、各種老化防止剤の組み合わせとその配合量について検討を進めた。その結果、特定の老化防止剤を組み合わせて、特定量の配合量とすることにより、ニトリルゴムの初期の耐寒性と熱老化後の耐寒性の両者を共に改善し得る処方を見出した。
【0011】
ニトリルゴムは、一般に、耐熱限界温度が120~130℃程度とされている。ところが、本発明者らは、ニトリルゴムに対する特定の老化防止剤の配合量をある特定の範囲としたときに、前記耐熱限界温度を超えた温度による熱老化後であっても、耐寒性を発揮し得ることを見出した。本発明は、このような特異な現象の発見に基づいて完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明のニトリルゴム組成物は、ニトリルゴム100質量部に対して、ベンズイミダゾール系老化防止剤3~9質量部およびアミン系老化防止剤1~5質量部を配合してなり、前記ニトリルゴム100質量部に対して1~6質量部の有機過酸化物により架橋される組成物である。また、本発明の成形品は、前記ニトリルゴム組成物を過酸化物架橋させてなるものである。前記成形品としては、シール部材がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のニトリルゴム組成物およびその成形品は、初期および熱老化後の耐寒性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例としての実施形態に限定されるわけではない。
【0015】
本実施形態のニトリルゴム組成物は、ニトリルゴムに対して、ベンズイミダゾール系老化防止剤およびアミン系老化防止剤が配合されている。以下、ニトリルゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0016】
(ニトリルゴム)
ニトリルゴム(NBR)は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性等に優れているため、シール部材の材料として広く用いられている。特に耐油性に優れているため、自動車や産業機械分野におけるOリング、ガスケット、オイルシール、パッキン、ダイヤフラムなどのシール部材として多用されている。
【0017】
ニトリルゴムは、結合アクリロニトリルの含有量に応じて、極高ニトリルNBR(結合アクリロニトリル含有量44質量%以上)、高ニトリルNBR(結合アクリロニトリル含有量36~43質量%)、中高ニトリルNBR(結合アクリロニトリル含有量31~35質量%)、中ニトリルNBR(結合アクリロニトリル含有量25~30質量%)および低ニトリルNBR(結合アクリロニトリル含有量24質量%以下)の各種ニトリルゴムに区分される。
【0018】
本実施形態において、ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量は、特に限定されないが、20~45質量%が好ましく、24~36質量%がより好ましい。また、ニトリルゴムのムーニー粘度ML(1+4)100℃は、特に限定されないが、25~90が好ましく、30~80がより好ましい。
【0019】
ニトリルゴムは、一般に、結合アクリロニトリル量が多いと、耐熱性、耐油性、機械的強度等が向上する傾向にある。一方、結合アクリロニトリル量が少ないと、耐寒性、圧縮永久歪等が向上する傾向にある。そのため、耐熱性と耐寒性とは相反する特性であって、両方の特性を同時に改善することは困難とされてきた。
【0020】
(老化防止剤)
本発明者らは、ニトリルゴムの初期および熱老化後の耐寒性を改善するために、各種の老化防止剤の組み合わせや配合量について検討を進めてきた。その結果、ベンズイミダゾール系老化防止剤とアミン系老化防止剤とを併用することに着目した。
【0021】
(ベンズイミダゾール系老化防止剤)
ベンズイミダゾール系老化防止剤は、特に限定されるものではないが、例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩、芳香環に少なくとも1個のアルキル置換基を有する2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩が好ましい。
【0022】
ベンズイミダゾール系老化防止剤は、耐寒性の向上を図るために、ニトリルゴム100質量部に対して、3~9質量部配合される。ベンズイミダゾール系老化防止剤は、4~8質量部配合することが好ましい。ベンズイミダゾール系老化防止剤の配合量が9質量部を超えると、初期の耐寒性が低下する傾向にある。一方、ベンズイミダゾール系老化防止剤の配合量が3質量部未満であると、熱老化後の耐寒性が低下する傾向にある。
【0023】
(アミン系老化防止剤)
アミン系老化防止剤は、特に限定されるものではないが、ジフェニルアミン系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、ジヒドロキノリン系老化防止剤、ナフチルアミン系老化防止剤などの種類がある。
【0024】
ジフェニルアミン系老化防止剤としては、具体的に、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミン等が挙げられる。フェニレンジアミン系老化防止剤としては、具体的に、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。ジヒドロキノリン系老化防止剤としては、具体的に、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン等が挙げられる。ナフチルアミン系老化防止剤としては、具体的に、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ジフェニルアミン系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。
【0025】
アミン系老化防止剤は、耐寒性の向上を図るために、ニトリルゴム100質量部に対して、1~5質量部配合される。アミン系老化防止剤は、1~4質量部配合することが好ましい。アミン系老化防止剤の配合量が5質量部を超えると、初期の耐寒性が低下する傾向にある。一方、アミン系老化防止剤の配合量が1質量部未満であると、熱老化後の耐寒性が低下する傾向にある。
【0026】
ニトリルゴム組成物は、一般に、耐熱限界温度は120~130℃程度とされている。ところが、本発明者らは、上記のように、ニトリルゴム100質量部に対して、ベンズイミダゾール系老化防止剤3~9質量部およびアミン系老化防止剤1~5質量部を併用して配合したときに、耐熱限界温度を超える150℃の熱老化後であっても、熱老化後の耐寒性が保持されることを見出した。
【0027】
ゴム100質量部に対するベンズイミダゾール系老化防止剤の配合量は、通常は、2質量部程度である。しかし、従来の通常の配合量を大きく超える3~9質量部を配合したときに、上記のように、耐熱限界温度を超える温度の熱老化後であっても耐寒性が保持されることが判明した。
【0028】
一方、ベンズイミダゾール系老化防止剤の配合量が少ない場合は、熱劣化の影響によって、熱老化後の耐寒性が低下する。また、アミン系老化防止剤の配合量が少ない場合にも、熱老化後の耐寒性が低下する。これは、熱劣化の影響に加えて、未反応の架橋剤残渣から発生するラジカルによってポリマーが劣化を受けるためと考えている。
【0029】
(ニトリルゴム組成物)
本実施形態のニトリルゴム組成物には、さらに、ゴム組成物で一般的に使用されている各種配合剤を、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて適宜添加することができる。配合剤としては、シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ、グラファイト等の充填剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、スコーチ防止剤、気泡防止剤、帯電防止剤、滑剤、粘着付与剤、素練促進剤、難燃剤、顔料等を挙げることができる。
【0030】
シリカとカーボンブラックは、いずれも補強剤としてニトリルゴム組成物に配合される。配合量は、ニトリルゴム100質量部に対して、シリカであれば30~60質量部、カーボンブラックであれば40~70質量部程度である。シリカとカーボンブラックは併用してもよい。補強剤としては、シリカとカーボンブラック以外にも、炭酸マグネシウム、クレー等があるが、シリカとカーボンブラックが好ましい。
【0031】
ニトリルゴム組成物の加工性を向上させるために、ニトリルゴム組成物には可塑剤を配合することができる。可塑剤は、ニトリルゴムで通常使用されている可塑剤であれば特に制限なく使用することができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系(DOP等)、アジピン酸エステル系(DOA等)、セバシン酸エステル系(DOS等)、トリメリット酸エステル系(TOTM等)、アジピン酸エーテルエステル系(RS-107等)、ポリエーテルエステル系(RS-700等)等を挙げることができる。可塑剤は、加工性および耐寒性が許容できる範囲内で適正量を使用する。可塑剤の配合量は、ニトリルゴム組成物100質量部に対して、1~33質量部程度が好ましい。
【0032】
ニトリルゴム組成物は、硫黄または有機過酸化物によって架橋することが可能である。ニトリルゴムの硫黄による架橋には、架橋促進剤として亜鉛華(ZnO)等の金属酸化物が必須である。そのため、ニトリルゴムの架橋は、有機過酸化物による架橋が好ましい。有機過酸化物は、ゴムの架橋のために一般に使用可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物の配合量は、ニトリルゴム組成物100質量部に対して1~6質量部が好ましく、1~4質量部がより好ましい。
【0033】
ニトリルゴム組成物の有機過酸化物による架橋には、架橋助剤(共架橋剤)を併用することが好ましい。共架橋剤としては、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0034】
ニトリルゴム組成物の調製は、オープンロール、ニーダー等を用いる任意の混練手段によって行われる。調製されたニトリルゴム組成物は、150℃~200℃、3~30分間等の条件下でヒートプレス等の任意の架橋手段によって成形・架橋される。必要に応じて、さらに二次架橋を行う。
【0035】
本実施形態のニトリルゴム組成物は、成形および過酸化物架橋させることによって、架橋された成形品となる。ニトリルゴム組成物を架橋してなる成形品は、シール部材として有用なものである。シール部材としては、Oリング、ガスケット、オイルシール、パッキン、ダイヤフラムなどがある。シール部材の中でも、ガソリンやバイオディーゼル燃料等の燃料シール用のシール部材として特に適性を有しており、自動車分野や産業機械分野において特に有用である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0037】
実施例、比較例に用いたゴム組成物の原料は、以下のとおりである。
ニトリルゴム-1:JSR社製、N230S、結合アクリロニトリル含有量35質量%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃ 56
ニトリルゴム-2:JSR社製、N240S、結合アクリロニトリル含有量26質量%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃ 56
充填剤:シリカ、東ソー・シリカ社製、Nipsil E75
老化防止剤-1:ベンズイミダゾール系老化防止剤、大内新興化学工業社製、ノクラックMBZ、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩
老化防止剤-2:アミン系老化防止剤、大内新興化学工業社製、ノクラックCD、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
老化防止剤-3:フェノール系老化防止剤、大内新興化学工業社製、ノクラック200、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
可塑剤:ポリエーテルエステル系可塑剤、アデカ社製、RS-700
架橋剤:ジクミルパーオキサイド
【0038】
[実施例1]
ニトリルゴム-1(JSR社製、N230S) 50質量部
ニトリルゴム-2(JSR社製、N240S) 50質量部
充填剤:シリカ 35質量部
老化防止剤-1:ベンズイミダゾール系老化防止剤 4質量部
老化防止剤-2:アミン系老化防止剤 3質量部
可塑剤:ポリエーテルエステル系可塑剤 15質量部
架橋剤:ジクミルパーオキサイド 3.5質量部
以上の各成分の内、架橋剤以外の各成分をニーダーで混錬した後、オープンロールに移し、そこに架橋剤を加えて混錬した後、170℃×20分間のプレス架橋および150℃×1時間のオーブン架橋(二次架橋)を行い、シート状の架橋物を得た。
【0039】
[実施例2]
老化防止剤-1の配合量を8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0040】
[実施例3]
老化防止剤-1の配合量を6質量部に変更し、老化防止剤-2の配合量を1.5質量部に変更し、架橋剤の配合量を3質量部にした以外は、実施例1と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0041】
[実施例4]
老化防止剤-2の配合量を4.5質量部に変更し、架橋剤の配合量を4質量部にした以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0042】
[実施例5]
老化防止剤-1の配合量を3質量部に変更し、老化防止剤-2の配合量を1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0043】
[実施例6]
老化防止剤-2の配合量を9質量部に変更し、老化防止剤-2の配合量を5質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0044】
[比較例1]
老化防止剤-1の配合量を2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0045】
[比較例2]
老化防止剤-1の配合量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0046】
[比較例3]
老化防止剤-2の配合量を0.5質量部に変更し、架橋剤の配合量を2.5質量部にした以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0047】
[比較例4]
老化防止剤-2の配合量を6質量部に変更し、架橋剤の配合量を4.5質量部にした以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0048】
[比較例5]
老化防止剤-2を使用せず、老化防止剤-3の配合量を3質量部とし、架橋剤の配合量を3.5質量部とした以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を得た。
【0049】
[評価方法]
(1)耐寒性試験(初期)
耐寒性試験(初期)として、TR試験(JIS K 6261準拠)を実施した。測定結果から、耐寒性の指標として、TR-10を求めた。
【0050】
(2)耐寒性試験(熱老化後)
耐寒性試験(熱老化後)として、150℃×72hの熱老化試験(JIS K 6257準拠)を実施したテストピースについて、TR試験(低温弾性回復試験、JIS K 6261準拠)を実施した。測定結果から、耐寒性の指標として、TR-10を求めた。
【0051】
<判定基準>
TR-10(初期)の閾値を-30℃、TR-10(熱老化後)の閾値を-25℃とした。
[1]TR-10(初期)
◎:TR-10(初期) -31℃以下
○:TR-10(初期) -31℃より高く、-29℃より低い
×:TR-10(初期) -29℃以上
[2]TR-10(熱老化後)
◎:TR-10(熱老化後) -26℃以下
○:TR-10(熱老化後) -26℃より高く、-24℃より低い
×:TR-10(熱老化後) -24℃以上
【0052】
実施例1~6および比較例1~5で得られたシート状の架橋物の評価結果を表1に示した。
【0053】
【0054】
上記の実施例・比較例より、老化防止剤-1(ベンズイミダゾール系老化防止剤)、老化防止剤-2(アミン系老化防止剤)のいずれであっても、過剰に配合すると、初期の耐寒性が低下した。これは、過剰に配合された老化防止剤により、ポリマーの分子運動が阻害されるためと考えられる。
一方、老化防止剤-1の配合量が少ない場合には、熱劣化の影響によって、熱老化後の耐寒性が低下した。一般に、老化防止剤-1の配合量は、2質量部程度とされているが、本発明での耐寒性の要求に対しては過少であることが分かる。
また、老化防止剤-2の配合量が少ない場合には、老化防止剤-1と同様の熱劣化の影響に加えて、未反応の架橋剤残渣から発生するラジカルによってポリマーが劣化を受ける影響も加わって、熱老化後の耐寒性が低下した。