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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20240827BHJP
   H01G 9/035 20060101ALI20240827BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240827BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240827BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/035
H01G9/00 290H
H01G9/145
H01G9/15 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020145527
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040698
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 陽介
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225523(WO,A1)
【文献】特開2020-119916(JP,A)
【文献】特開2020-072206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00-9/18
H01G 9/21-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータとを有し導電性高分子化合物によって形成された固体電解質と、前記固体電解質を取り囲むように導入された液状組成物とを備え、前記液状組成物は酸成分を含有し前記液状組成物は塩基成分を含有していない構成であって、
前記酸成分は次亜燐酸を含有していること
を特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記導電性高分子化合物は、平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下であること
を特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記液状組成物は溶媒として液体状のポリオール化合物を含有していること
を特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータとを有し導電性高分子化合物によって形成された固体電解質と、前記固体電解質を取り囲むように導入された液状組成物とを備え、前記液状組成物は酸成分を含有し前記液状組成物は塩基成分を含有していない構成の固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記液状組成物は前記酸成分として次亜燐酸を含有させるこ
を特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記導電性高分子化合物は、平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下であること
を特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子化合物を用いた固体電解コンデンサは、温度安定性に優れており、等価直列抵抗(略称はESR)が小さい等の特長がある。
【0003】
従来、電解液として、γ-ブチロラクトンと、フタル酸モノ(エチルジメチルアミン)を用いた構成の固体電解コンデンサが提案されている(特許文献1:国際公開第2016/088300号公報)。また、電解液として、γ-ブチロラクトンと、ピロリット酸、マレイン酸、次亜燐酸、および、1-エチル-3メチルイミダゾリウムを用いた構成の固体電解コンデンサが提案されている(特許文献2:特開2012-109635号公報、特許文献3:特開2006-114540号公報)。そして、電解液として、カルボン酸のアミン塩を用いた構成の固体電解コンデンサが提案されている(特許文献4:国際公開第2011/099261号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/088300号公報
【文献】特開2012-109635号公報
【文献】特開2006-114540号公報
【文献】国際公開第2011/099261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体電解コンデンサは、実装段階でリフローなどの熱処理をして使用されることが一般的である。最近になって、リフローなどの熱処理後に漏れ電流が増大する不安定な個体が見つかっており、市場からの要求が厳しくなっている。しかし、特許文献1~4記載の従来技術では、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流を小さくした製品のみを製造することは極めて困難である。上記の要求に応えようとして、やむを得ず選別したとしても上記の不安定な個体を確実に除去できる訳ではなく、低漏れ電流品の収率が大きく低下することで製造コストが高騰し供給が不安定になる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流を小さくすることが可能な構成の固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明の固体電解コンデンサは、酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータとを有し導電性高分子化合物によって形成された固体電解質と、前記固体電解質を取り囲むように導入された液状組成物とを備え前記液状組成物は酸成分を含有し前記液状組成物は塩基成分を含有していない構成であって、前記酸成分は次亜燐酸を含有していることを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータとを有し導電性高分子化合物によって形成された固体電解質と、前記固体電解質を取り囲むように導入された液状組成物とを備え、前記液状組成物は酸成分を含有し前記液状組成物は塩基成分を含有していない構成の固体電解コンデンサの製造方法であって、前記液状組成物は前記酸成分として次亜燐酸を含有させるこを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流を小さくすることができる。尚且つ、リフローなどの熱処理によるESRの変化を特に小さくすることができる。
【0010】
前記液状組成物は、溶媒として液体状のポリオール化合物を含有していることが好ましい。これにより、流動性に富み水酸基を多く含んだ液状組成物になり、陽極酸化皮膜の欠損を修復する能力がより向上し、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流の増大を防止する効果をより高められる。前記液状組成物は、主溶媒として液体状のポリオール化合物を含有していることが好ましい。一例として、前記液状組成物が水を含有している構成は、陽極酸化皮膜の欠損を修復する能力がより向上する。前記液状組成物は、水の割合が10[wt%]以下であることが好ましく、5[wt%]以下であることがより好ましく、2[wt%]以下であることがさらにより好ましい。これにより、高温下での固体電解コンデンサの内圧上昇が抑制されるので、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流がより小さくてケースの膨れ等がない製品にできる。前記液状組成物は、次亜燐酸の割合が0.95[wt%]以下であることが好ましい。これにより、導電性高分子化合物の劣化が抑制されて、リフローなどの熱処理をした場合に静電容量が著しく減少することやESRが著しく増大することが防止できる。前記液状組成物に含有される前記酸成分のうちの無機酸を、次亜燐酸のみにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固体電解コンデンサによれば、リフローなどの熱処理をした場合においても漏れ電流を小さくすることができる。そして、本発明の固体電解コンデンサの製造方法によれば、リフローなどの熱処理後に漏れ電流が増大する不安定な個体をなくすことが可能になり、低漏れ電流品を安定供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施形態におけるコンデンサ素子の要部を模式的に示す図である。
図2図2A図1に示す要部を有する固体電解コンデンサの構造を示す概略の部分断面図であり、図2B図1に示す要部を有する固体電解コンデンサをケース開口側から見た概略の図である。
図3図3は本実施形態において、リード端子が接合された陽極箔とリード端子が接合された陰極箔とセパレータとをそれぞれ重ね合わせて巻回している状態の図である。
図4図4は本実施形態の固体電解コンデンサの製造手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明の実施形態に係るコンデンサ素子2の構造等について、以下に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
図1は本実施形態の固体電解コンデンサ1におけるコンデンサ素子2の要部を模式的に示す図である。陽極箔2aと陰極箔2cとはアルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属から形成されている。陽極箔2aの表面は、エッチング処理により粗面化された後、化成処理によって酸化皮膜2bが形成されている。また、陰極箔2cの表面は、陽極箔2aと同様にエッチング処理により粗面化された後、自然酸化皮膜2hが形成されている。一例として、陽極箔2aおよび陰極箔2cは、アルミニウムからなる。陽極箔2aと陰極箔2cとの間にはセパレータ2dが配設されている。セパレータ2dは、一例として、導電性の高分子や水溶性の高分子と化学的に馴染み易いセルロース繊維、または、耐熱性に優れたナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂で形成されたものが適用される。一例として、耐熱性セルロース紙がセパレータ2dに適用される。そして、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、固体電解質20と液状組成物30とが、液状組成物30が固体電解質20を取り囲むように導入されている。陽極側では、陽極箔2aの酸化皮膜2bに接触するように固体電解質20が形成されている。固体電解質20は、一例として柱状、網目状、層状などに形成される。固体電解質20はサイズがナノメートルオーダーの微粒子状の導電性高分子化合物2eを含んでおり、そして、固体電解質20を取り囲むように液状組成物30が導入されている。
【0015】
導電性高分子化合物2eは、一例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、ポリチオフェン(PT)、又はその他既知の導電性高分子化合物を含む。これによれば、高耐電圧化が可能になり、一例として、耐電圧を100[V]まで高めることができる。また、導電性高分子化合物2eは、ポリスチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のいずれか1種以上をドーパントにした導電性高分子化合物を含むことが好ましい。これにより、導電性が安定する。導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、一例として、1[nm]以上かつ300[nm]以下である。導電性高分子化合物2eの平均粒子径が1[nm]未満である場合には、微粒子状の導電性高分子化合物を作製するのが困難になる場合がある。一方、導電性高分子化合物2eの平均粒子径が300[nm]よりも大きい場合には、陽極箔2a表面のエッチングピット(凹部)に導電性高分子化合物2eを導入するのが困難になる場合がある。このような観点から言えば、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、2[nm]以上であることが特に好ましく、3[nm]以上であることがより好ましい。また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、200[nm]以下であることが特に好ましく、100[nm]以下であることがより好ましい。
【0016】
図2Aは、本実施形態の固体電解コンデンサ1の構造を示す概略の部分断面図の例である。固体電解コンデンサ1は、微粒子状の導電性高分子化合物2eを含んだ固体電解質20が形成されたコンデンサ素子2と、リード端子5及びリード端子6と、貫通穴が二箇所に形成された封口体3と、コンデンサ素子2を収納する有底形状で金属製のケース4と、固体電解質20を取り囲むように導入された液状組成物30とを備えており、ケース4の開口側が封口体3によって封止されている。図2A図2Bの例では、ケース4の開口側の側面に横絞り部が形成され、且つ、開口端部が曲げられている。ケース4の開口側は、コンデンサ素子2が配設されておらず、封口体3の第1面の一部や、リード端子5(6)の引出端子が露出している。封口体3は、ケース4の横絞り部と開口端部とによって支持固定されている。リード端子5とリード端子6は、それぞれの丸棒部が封口体3の貫通穴に嵌合しており、封口体3によって支持固定されている。ここで、固体電解コンデンサ1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。固体電解コンデンサ1を実際に使用する際には、これらの向きに限定されず、どのような向きで使用しても支障ない。
【0017】
ケース4は有底筒状であり、アルミニウム等の金属からなる。封口体3は、水分の浸入や酸化皮膜修復物質の飛散を防止するために高気密性を有し、ケース4の内側形状に合わせた略円柱形状となっている。封口体3は、一例として、絶縁性ゴム組成物からなる。一例として、封口体3に、イソブチレン・イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、又はその他既知のエラストマーが適用される。リード端子5とリード端子6における引出端子は、それぞれ、一例として、錫めっきされた銅被覆鋼線(CP線)からなる。これにより、外部の基板等への半田付けが容易になる。なお、引出端子は、丸ピンとする場合や角ピンとする場合がある。リード端子5は陽極箔2aに接合されており、リード端子6は陰極箔2cに接合されている。リード端子5の引出端子5fの長さは、リード端子6の引出端子6fの長さよりも長くなっており、極性の視認性を高めている。一例として、引出端子の長さの違いを除いて、リード端子5とリード端子6とは、同一形状かつ同一構造にできる。リード端子5並びにリード端子6における扁平部と第1段差部と丸棒部とは、一例として、アルミニウムからなり、プレス加工によって成形される。
【0018】
続いて、本実施形態に係る固体電解コンデンサ1の製造方法について、以下に説明する。
【0019】
図4は、固体電解コンデンサ1の製造手順を示すフローチャート図である。固体電解コンデンサ1は、一例として、接合ステップS1、素子形成ステップS2、第1導入ステップS3、第2導入ステップS4、嵌合ステップS5、封口ステップS6、エージングステップS7の順に製造される。なお、上記の製造手順以外に、第2導入ステップS4と嵌合ステップS5との順序を入れ替えることが可能であり、また、エージングステップS7の後に、封口ステップS6を設けることが可能であり、そして、エージングステップS7の後に、嵌合ステップS5および封口ステップS6を設けることが可能である。
【0020】
接合ステップS1は、一例として、リード端子5の扁平部と陽極箔2aとを重ね合わせて、針等で所定箇所を突き通して複数の接合箇所を所定間隔で形成し、出来たバリ部分をプレス加工して陽極箔2aと接合して電気接続可能とする。陰極箔2cについても同様である。接合箇所は複数個所形成されていれば電気接続状態が安定するので、接続箇所が二箇所の場合、三箇所の場合、四箇所以上の場合がある。
【0021】
素子形成ステップS2は、一例として、図3に示すように、陽極箔2aと陰極箔2cとの間にセパレータ2dを挟んで両電極箔を隔離した状態とし、陽極箔2aと陰極箔2cとをセパレータ2dを介して巻回して円筒形状とする。そして、テープまたはフィルム等を円筒形状の外周部に貼り付けて巻回状態を保持する(不図示)。次に、素子形成ステップS2における化成処理は、一例として、化成液を入れた化成液槽を準備し、次に、化成液槽内の化成液に素子を浸漬するとともに、引出端子5fと化成液との間に所定電圧を所定時間印加する。一例として、100[V]の電圧を5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び表面に存在することがある酸化皮膜欠損部を修復する(不図示)。そして、化成液槽から素子を引き上げて、乾燥し、化成処理された状態にする。化成液は、一例として、アジピン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ピメリン酸アンモニウム、スベリン酸アンモニウム等の水溶液が挙げられる。
【0022】
第1導入ステップS3は、微粒子状の導電性高分子化合物2eを含んだ分散液を、化成処理された状態の素子に導入し、乾燥して、固体電解質20を形成する。分散液の媒質は、水または水溶性液体のいずれかないしは両方が適用される。第1導入ステップS3は、一例として、分散液を入れた分散液槽を準備する。次に、化成処理された状態の素子を分散液に浸漬する。そして、分散液槽から引き上げて、乾燥し、第1導入処理された状態にする。乾燥回数は1回または2回以上であり、第1導入ステップS3を複数回繰り返す場合もある。分散液における導電性高分子化合物2eの濃度は、一例として、0.1[vol%]以上かつ10[vol%]以下である。導電性高分子化合物2eの濃度を0.1[vol%]以上にすることで、所望のコンデンサ特性を発揮できる。導電性高分子化合物2eの濃度を10[vol%]以下にすることで、導電性高分子化合物2eが分散液に均質に分散する。導電性高分子化合物2eの濃度は、7[vol%]以下であることが好ましく、また、導電性高分子化合物2eの濃度は、3[vol%]以下であることがより好ましい。第2導入ステップS4は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な液状組成物30を導入する。一例として、液状組成物30を入れた溶液槽を準備する。次に、固体電解質20が形成された状態の素子を液状組成物30に浸漬する。そして、溶液槽から素子を引き上げて、液状組成物30が導入処理された状態のコンデンサ素子2にする。
【0023】
嵌合ステップS5は、一例として、ケース4と封口体3とを準備し、次に、液状組成物30が導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納するとともに、リード端子5の丸棒部並びにリード端子6の丸棒部を封口体3の2箇所の貫通穴にそれぞれ嵌合する。封口ステップS6は、一例として、ケース4の開口側にカシメ加工を施して、ケース4の開口側の側面に横絞り部を形成し、尚且つ、開口端部を曲げる。このカシメ加工によって、図2に示すように、ケース4の横絞り部と開口端部とによって封口体3が支持固定された状態になる。つまり、封口体3とコンデンサ素子2とは、有底形状のケース4に収納されており、封口体3は、ケース4の開口側の成形加工によって支持固定されている状態になる。
【0024】
エージングステップS7は、ケース4の開口側が封口体3とリード端子5とリード端子6とによって封口された後に、外装スリーブをケース4に取り付けて、当該外装スリーブを熱加工するとともに、エージング処理を行う。エージング処理は、高温条件下で所定時間、電圧印加を行い、液状組成物30の酸化皮膜修復作用を用いて、陽極箔2aの接合箇所や断面等の金属地金部分と酸化皮膜2bの弱い部分を再化成する。これにより、漏れ電流を抑制した状態で安定させる。また、エージング処理には、予期しない初期不良の除去といったデバッギング効果もある。
【0025】
続いて、各実施例と各比較例について、以下に説明する。
【0026】
製造方法は上述のとおりであり、リード端子5が接合された陽極箔2aと、リード端子6が接合された陰極箔2cとの間にセパレータ2dを介在させて巻回することにより、巻回形のコンデンサ素子2を形成した。次に、コンデンサ素子2をアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬するとともに、陽極箔2a側のリード端子5と化成液の間に100[V]の電圧を5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び陽極箔2a表面の酸化皮膜欠損部を修復し、その後、105[℃]の温度で5[分]乾燥した。次に、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)を微粒子状の導電性高分子化合物2eとして水に分散させた分散液を用いて、コンデンサ素子2における陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、微粒子状の導電性高分子化合物2eを含んだ固体電解質20を形成した。そして、各実施例は液状組成物30を、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に固体電解質20を取り囲むように導入した。一方、各比較例は所定の液を、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に固体電解質20を取り囲むように導入した。ここで、固体電解質20は、導電性高分子化合物2eを2[wt%]以上含有している構成である。また、液状組成物30は、水を0.5[wt%]以上2[wt%]以下で含有している構成である。そして、イソブチレン・イソプレンゴムからなる封口体3を用いて、コンデンサ素子2のリード端子5とリード端子6とにおける丸棒部を、封口体3の貫通穴に各々嵌合するとともに、コンデンサ素子2をケース4に挿入し、その後、ケース4の開口端近傍にカシメ加工を施し、封口体3を支持固定した。そして、約85[℃]の温度で、所定電圧を60[分]印加することでエージング処理を行って、定格電圧は25[WV]の固体電解コンデンサ1を作製した。試料数は各20個である。
【0027】
続いて、実施例1~23に使用した液状組成物の各調製例と、比較例1~3に使用した所定の液の各調製例について、以下に説明する。
【0028】
[調製例A1]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.05[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分は配合していない。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0029】
[調製例A2]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.15[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例A1と同様である。
【0030】
[調製例A3]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例A1と同様である。
【0031】
[調製例A4]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.8[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例A1と同様である。
【0032】
[調製例A5]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.95[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例A1と同様である。
【0033】
[調製例B1]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.05[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分は配合していない。主溶媒は平均分子量が200のポリエチレングリコール(PEG200)である。
【0034】
[調製例B2]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.15[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例B1と同様である。
【0035】
[調製例B3]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例B1と同様である。
【0036】
[調製例B4]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.8[wt%]になるように液状組成物を調製した。それ以外は、調製例B1と同様である。
【0037】
[調製例C1]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分は配合していない。主溶媒はジエチレングリコールとPEG200を重量比2:1で混合したものである。
【0038】
[調製例C2]
主溶媒はジエチレングリコールとPEG200を重量比1:1で混合したものである。それ以外は、調製例C1と同様である。
【0039】
[調製例C3]
主溶媒はジエチレングリコールとPEG200を重量比1:2で混合したものである。それ以外は、調製例C1と同様である。
【0040】
[調製例C4]
主溶媒はジエチレングリコールとグリセリンを重量比1:1で混合したものである。それ以外は、調製例C1と同様である。
【0041】
[調製例D]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.05[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてアンモニアを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.008[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0042】
[調製例E]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.15[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてアンモニアを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.02[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0043】
[調製例F]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてアンモニアを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.06[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0044】
[調製例G1]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.8[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてアンモニアを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.1[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0045】
[調製例G2]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.8[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてアンモニアを酸成分2に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.06[mol/kg]である。それ以外は、調製例G1と同様である。
【0046】
[調製例H]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.15[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.02[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0047】
[調製例K1]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.06[mol/kg]である。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0048】
[調製例K2]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分2に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.03[mol/kg]である。それ以外は、調製例K1と同様である。
【0049】
[調製例K3]
溶媒に次亜燐酸を添加し、かつ、溶媒にフタル酸を添加しており、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるようにし、かつ、フタル酸の割合が10[wt%]になるように液状組成物を調製した。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分1に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.7[mol/kg]である。それ以外は、調製例K1と同様である。
【0050】
[調製例L]
溶媒に次亜燐酸を添加し、次亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように液状組成物を調製した。次亜燐酸以外の酸成分は配合していない。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分2に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。液状組成物における単位質量あたりの塩基成分の量は0.03[mol/kg]である。主溶媒はPEG200である。
【0051】
[調製例p]
溶媒に燐酸を添加し、燐酸の割合が0.4[wt%]になるように所定の液を調製した。次亜燐酸は配合していない。また、塩基成分は配合していない。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0052】
[調製例q]
溶媒に亜燐酸を添加し、亜燐酸の割合が0.4[wt%]になるように所定の液を調製した。次亜燐酸は配合していない。また、塩基成分は配合していない。主溶媒はジエチレングリコールである。
【0053】
[調製例r]
溶媒にフタル酸を添加し、フタル酸の割合が0.4[wt%]になるように所定の液を調製した。次亜燐酸は配合していない。また、塩基成分としてトリエチルアミンを酸成分2に対し塩基成分1のモル比になるように配合した。所定の液における単位質量あたりの塩基成分の量は0.04[mol/kg]である。主溶媒はPEG200である。
【0054】
次に、上述の実施例1~23および比較例1~3の各固体電解コンデンサについて、初期特性を測定し、ピーク温度が260[℃]で10[秒]のリフローを計2回実施し、その後、定格電圧印加60[秒]における漏れ電流を測定した。ここで、リフロー後の漏れ電流が13[μA]以下のものをリフロー後低漏れ電流品と規定し、該当品の個数をカウントした。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、試料数が各20個にて、実施例1~23は、リフロー後の低漏れ電流品の収率が100[%]になった。それに対して、試料数が各20個にて、比較例1~3は、リフロー後の低漏れ電流品の収率が30[%]~85[%]にとどまった。上述の結果から、液状組成物に次亜燐酸を添加した実施例の構成は、リフローなどの熱処理をした場合に低漏れ電流であるリフロー後低漏れ電流品が、高い収率で得られることが判明した。
【0057】
次に、酸成分が次亜燐酸のみの実施例3、16および20の各固体電解コンデンサにおける、リフロー実施前に初期の漏れ電流を測定した。ここで、リフロー実施前の初期の時点から漏れ電流が13[μA]以下のものをリフロー前低漏れ電流品と規定し、該当品の個数をカウントした。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、試料数が各20個にて、酸成分が次亜燐酸のみの実施例3、16および20は、リフロー実施前の初期の時点でリフロー前低漏れ電流品の収率が100[%]になった。上述の結果から、液状組成物に次亜燐酸のみからなる酸成分を添加した実施例の構成は、リフローなどの熱処理の有無によらずリフロー前低漏れ電流品が、高い収率で得られることが判明した。
【0060】
次に、塩基成分を配合しなかった実施例1~4および8と、塩基成分を酸成分のモル数以下の量で配合した実施例14~23について、次亜燐酸を添加しないものを基準品として周波数120[Hz]における初期静電容量に対する静電容量増加率を比較した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、液状組成物に次亜燐酸を添加することにより初期静電容量が増加することが確認された。それに加えて、液状組成物に塩基成分を酸成分のモル数以下の量で配合したことで、初期静電容量の増加率が1[%]超になった。上述の結果から、液状組成物に次亜燐酸を添加するとともに塩基成分を酸成分のモル数以下の量で配合した実施例の構成は、リフローなどの熱処理をした場合に低漏れ電流であるリフロー後低漏れ電流品が、高い収率で得られ、かつ、初期静電容量を特に大きくできることが判明した。
【0063】
次に、塩基成分を配合しなかった実施例1~4および8と、塩基成分を0.06[mol/kg]未満の量で配合した実施例14、15、19、21、23の各固体電解コンデンサについて、リフローによるESR倍率を確認した。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示すように、塩基成分を配合しなかった実施例1~4および8と、塩基成分を0.06[mol/kg]未満の量で配合した実施例14、15、19、21、23は、リフローによるESR倍率が1.3以下である。上述の結果から、液状組成物に次亜燐酸を添加するとともに塩基成分を配合しない実施例の構成や、液状組成物に次亜燐酸を添加するとともに塩基成分を0.06[mol/kg]未満の量で配合した実施例の構成は、リフローなどの熱処理をした場合に低漏れ電流であるリフロー後低漏れ電流品が、高い収率で得られ、かつ、リフローなどの熱処理によるESR倍率を特に小さく抑えられることが判明した。
【0066】
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 固体電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
2a 陽極箔
2b 酸化皮膜
2c 陰極箔
2d セパレータ
2e 導電性高分子化合物
3 封口体
4 ケース
5 リード端子
6 リード端子
20 固体電解質
30 液状組成物
図1
図2
図3
図4