(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】通信経路制御装置、および、通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/28 20090101AFI20240827BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20240827BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20240827BHJP
H04W 40/14 20090101ALI20240827BHJP
H04W 40/30 20090101ALI20240827BHJP
H04W 40/12 20090101ALI20240827BHJP
【FI】
H04W40/28
H04W84/18
H04W40/02 110
H04W40/14
H04W40/30
H04W40/12 110
(21)【出願番号】P 2020149176
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 元気
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-168526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置を含むメッシュネットワークに配置され、前記通信装置と通信する通信経路制御装置であって、
前記通信装置
と、前記通信装置と隣接する他の前記通信装置とが通信可能な状態であるリンクを示す通信経路情報と、前記
リンクの通信経路特性を示すためのパラメータを数値化したパラメータ値を演算するためのパラメータ値関連情報とが対応付けられて受信される受信部と、
前記パラメータ値関連情報から前記
リンクの前記パラメータ値を演算するパラメータ演算部と、
同一パラメータに関して、
前記リンクがつながる経路を探し出し、前記リンクを接続した通信経路を生成する経路生成部と、
前記受信部が通信経路情報要求フレームを受信すると、前記通信経路情報要求フレームによって示される
経路であって、送信元アドレスで示される前記通信装置から最終的な宛先の前記通信経路までの経路に対して、前記通信経路情報要求フレームによって示される所定の条件に対応する
前記通信経路を最適な通信経路として選択する経路選択部と、を含
み、
前記所定の条件は、前記通信経路情報要求フレームに通信経路特性を示すためのパラメータに対する優先度を示す優先度情報が含まれる場合には、前記受信部が前記通信経路情報要求フレームを受信すると、前記経路選択部は、前記優先度が最も高いパラメータに関する前記通信経路のなかで、当該通信経路の前記パラメータ値が最良の前記通信経路を、前記最適な通信経路として選択する通信経路制御装置。
【請求項2】
前記通信経路情報、および、前記パラメータ値関連情報は、前記通信経路情報によって特定される通信経路に含まれない、前記メッシュネットワークの
前記通信装置から送信される情報である請求項1に記載の通信経路制御装置。
【請求項3】
前記受信部が、前記最適な通信経路に存在する
前記通信装置から、前記経路選択部によって選択された前記最適な通信経路が含まれる前記通信経路情報要求フレームを受信した場合には、前記経路選択部は、前記最適な通信経路において前記通信装置の次の転送先となっている
前記通信装置に代えて、前記通信装置と通信可能な他の通信装置を選択して、前記他の通信装置から前記最適な通信経路の
最終的な宛先の
前記通信装置までの
前記最適な通信経路を選択する請求項1
または請求項
2に記載の通信経路制御装置。
【請求項4】
前記メッシュネットワークに配置される前記通信経路制御装置は、無線によって前記複数の通信装置と通信を実行する請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の通信経路制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の通信経路制御装置と、
前記メッシュネットワークに配置される前記複数の通信装置と、を含み、
前記通信装置は、前記通信装置の間の通信経路特性を示すパラメータを定量化するための情報を測定し、前記
リンクを示す
前記通信経路情報と、前記情報から生成された前記
リンクの
前記パラメータ値を演算するための
前記パラメータ値関連情報とを対応付けて前記通信経路制御装置に送信する通信システム。
【請求項6】
前記通信経路制御装置は、1つの
前記メッシュネットワークに複数台が配置され、前記通信経路制御装置はお互いに情報を共有し、前記通信装置はいずれかの前記通信経路制御装置と通信する請求項
5に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信経路制御装置、および、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の通信装置を含むメッシュネットワークの経路探索手法には、従来からDSR(Dynamic Source Routing)等の経路探索手法が提案されている。また、経路探索手法には他にもAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)、RPL(Routing protocol for Low power and Lossynetworks)等の方法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の無線通信装置を有する無線メッシュネットワークについて、そのうちの2個の無線通信装置をエンドツゥエンドとするセッションが指定されたときに、そのセッションの経路を設定するネットワーク経路設定方法が開示されている。当該ネットワーク経路設定方法は、ホップ数に基づいて、セッションに対する経路候補を取得する。複数の経路候補があった場合には、各経路候補について、無線資源消費量を計算し、計算された無線資源消費量を全て又は一部の評価パラメータとして、セッションの経路を選択設定する構成が開示されている。また、特許文献1において、ネットワーク経路の設定は各無線通信装置において実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の経路設定方法では、各無線通信装置が、ダイナミックルーティングのように定期的に経路情報を送受信し、各経路についてのパラメータ演算を実行するので、ルーティングのためにそれぞれの無線通信装置に大きな負荷が発生する場合がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する通信経路制御装置を配置することで、各通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能な通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る、複数の通信装置を含むメッシュネットワークに配置され、前記通信装置と通信する通信経路制御装置は、前記通信装置の通信経路を示す通信経路情報と、前記通信経路の通信経路特性を示すためのパラメータを数値化したパラメータ値を演算するためのパラメータ値関連情報とが対応付けられて受信される受信部と、前記パラメータ値関連情報から前記通信経路の前記パラメータ値を演算するパラメータ演算部と、前記通信経路情報によって特定される通信経路から、同一パラメータに関して、通信経路の終端と他の通信経路の始端とが同一の通信装置を示す通信経路を接続した通信経路を生成する経路生成部と、前記受信部が通信経路情報要求フレームを受信すると、前記通信経路情報要求フレームによって示される通信経路に対して、前記通信経路情報要求フレームによって示される所定の条件に対応する通信経路を最適な通信経路として選択する経路選択部と、を含むことが好ましい。
【0008】
前記所定の条件は、前記通信経路情報要求フレームに通信経路特性を示すためのパラメータに対する優先度を示す優先度情報が含まれる場合には、前記受信部が前記通信経路情報要求フレームを受信すると、前記経路選択部は、優先度が最も高いパラメータに関する通信経路のなかで、当該通信経路の前記パラメータ値が最良の通信経路を選択することが好ましい。
【0009】
前記所定の条件は、前記通信経路情報要求フレームに通信経路特性を示すためのパラメータに対する優先度を示す優先度情報が含まれない場合には、前記受信部が前記通信経路情報要求フレームを受信すると、前記経路選択部は、前記通信経路情報要求フレームによって示される通信経路のホップ数が最小となる通信経路を最適な通信経路として選択することが好ましい。
【0010】
前記通信経路情報、および、前記パラメータ値関連情報は、前記通信経路情報によって特定される通信経路に含まれない、前記メッシュネットワークの通信装置から送信される情報であることが好ましい。
【0011】
前記受信部が、前記最適な通信経路に存在する通信装置から、前記経路選択部によって選択された前記最適な通信経路が含まれる前記通信経路情報要求フレームを受信した場合には、前記経路選択部は、前記最適な通信経路において前記通信装置の次の転送先となっている通信装置に代えて、前記通信装置と通信可能な他の通信装置を選択して、前記他の通信装置から前記最適な通信経路の終端の通信装置までの最適な通信経路を選択することが好ましい。
【0012】
前記メッシュネットワークに配置される前記通信経路制御装置は前記複数の通信装置と無線によって通信を実行することが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係る通信システムは、通信経路制御装置と、メッシュネットワークに配置される複数の通信装置と、を含み、前記通信装置は、前記通信装置の間の通信経路特性を示すパラメータを定量化するための情報を測定し、前記通信経路を示す通信経路情報と、前記情報から生成された前記通信経路のパラメータ値を演算するためのパラメータ値関連情報とを対応付けて前記通信経路制御装置に送信することが好ましい。
【0014】
前記の通信経路制御装置は、1つのメッシュネットワークに複数台が配置され、前記通信経路制御装置はお互いに情報を共有し、前記通信装置はいずれかの前記通信経路制御装置と通信することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する無線通信経路制御装置を配置することで、各無線通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能な無線通信システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るメッシュネットワークを構成する無線通信システムの一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る無線通信経路制御装置が保持する通信経路の一例を示す模式図である。
【
図3】(a)本実施形態に係る通信フレームの一例を示す模式図である。(b)本実施形態に係る通信フレームの他の一例を示す模式図である。(c)本実施形態に係る通信フレームのタイプ領域に書き込まれる情報の一例を示す模式図である。
【
図4】本実施形態に係る無線通信システムに含まれる無線通信経路制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る無線通信システムに含まれる無線通信経路制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る通信フレームのさらなる他の一例を示す模式図である。
【
図7】比較例に係る通信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】比較例に係る通信装置の通信経路演算処理の一例を示す図である。
【
図9】比較例に係る通信装置のネットワークの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(通信システムの概要)
本実施形態の通信システムは少なくとも1つの通信経路制御装置および複数の通信装置を含むことができるメッシュネットワークを構成する。なお、メッシュネットワークは有線または無線のいずれによっても構成することが可能である。本実施形態では、メッシュネットワークが無線によって構成され、無線通信経路制御装置および複数の無線通信装置を含む無線通信システムについて具体的に説明する。無線通信システムに配置される無線通信経路制御装置は、当該無線通信システムに含まれる複数の無線通信装置と通信経路探索に関するさまざまな情報を送受信することが可能である。また、当該無線通信経路制御装置は仮想的に複数の通信経路をあらかじめ用意し、通信データを送信する時の無線通信装置に最適な通信経路を送信することで、無線通信装置のルーティング処理の負荷を軽減する。そのために、当該無線通信経路制御装置は、定期的に各無線通信装置から通信経路に関する情報を受信し、最新かつ最適な通信経路を演算および準備するように構成される。なお、上述したように、本実施形態においては、メッシュネットワークは無線通信装置および無線通信経路制御装置を含んで構成されるが、メッシュネットワークは有線通信装置および有線通信経路制御装置を含んで構成されることが可能である。また、以下の説明における無線通信装置および無線通信経路制御装置における動作は、有線通信装置および有線通信経路制御装置において実行可能な動作である。
【0018】
一例として、
図1に示すように、複数の無線通信装置200a、200b、200c、200d、200e、200f、200g、200sおよび1つの無線通信経路制御装置100によってメッシュネットワークとしての無線通信システムが構成される。本明細書では、無線通信装置200a、200b、200c、200d、200e、200f、200g、200sを総称して、無線通信装置200と称する場合がある。
【0019】
無線通信経路制御装置100は、すべての無線通信装置200を見通し可能な位置、すなわち、すべての無線通信装置200と通信可能な位置に配置される。それぞれの無線通信装置200は、無線通信装置200の間で各種パラメータを相互に送受信し、受信した各種パラメータから生成された各種パラメータ値関連情報を定期的に無線通信経路制御装置100に送信している。各種パラメータ値関連情報を受信した無線通信経路制御装置100は当該各種パラメータ値関連情報からパラメータ値を演算する。無線通信経路制御装置100は、演算されたパラメータ値からさまざまな通信経路を仮想的に生成し、無線通信装置から通信経路の要求があった場合に、最適な通信経路を当該無線通信装置に送信する。
【0020】
無線通信装置200間のリンク状態を示すパラメータには、一例として、パケットエラーレート、遅延時間、スループット、無線通信装置200間の物理的距離、ホップ数等のパラメータが挙げられる。リンク状態は、これらのパラメータ値の絶対値、または、パラメータ値の比較によって表現されることが可能である。なお、リンク状態に関するパラメータは、これらの態様に限定されない。例えば、当該パラメータに、受信信号強度:RSSI(Received Signal Strength Indicator)、SN比(Signal to Noise Ratio)等の既知のいずれかのパラメータを使用することも可能である。
【0021】
なお、本実施形態に係わる無線通信システムには、各無線通信装置および無線通信経路制御装置の送受信タイミングを制御するコントローラが存在する場合と存在しない場合がある。例えば、コントローラが存在しない場合には、無線通信システムはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)等のプロトコルを採用する。
【0022】
図1において、無線通信装置200間のリンク状態をパケットエラーレートで表現する場合の一例について説明する。例えば、無線通信装置200sと無線通信装置200aとの間の経路におけるパケットエラーレートを無線通信経路制御装置100において演算する場合について説明する。
【0023】
無線通信装置200sは、無線通信システムであらかじめ定められた数のテストパケットを無線通信装置200aに送信する。無線通信装置200aは、受信が成功したテストパケットの数、または、受信したテストパケットの総数と受信が成功したテストパケットの数をパラメータ値関連情報として、無線通信経路制御装置100に送信する。当該パラメータ値関連情報を受信した無線通信経路制御装置100は、無線通信システムであらかじめ定められたテストパケットの数と受信が成功したテストパケットの数からパラメータ値としてのパケットエラーレートを演算する。または、無線通信経路制御装置100は、受信したテストパケットの総数と受信が成功したテストパケットの数からパラメータ値としてのパケットエラーレートを演算する。無線通信経路制御装置100は、演算したパケットエラーレートを、無線通信装置200sから無線通信装置200aへの通信経路情報と対応付けて、無線通信経路制御装置100の記憶部に記憶する。なお、無線通信経路制御装置100は、パケットエラーレートからパケットの送受信が成功する確率としてのパケット伝送成功率を演算し、無線通信装置200sから無線通信装置200aへの通信経路情報と対応付けて、記憶部に記憶することも可能である。本明細書では、パケット伝送成功率を成功率と省略して記載する場合がある。また、以下の説明におけるパケットエラーレートを成功率と読み替えて、本実施形態を表現することも可能である。
【0024】
無線通信経路制御装置100は、記憶部に複数の異なる通信経路情報がある場合には、接続可能な通信経路があるか否かを検索する。接続可能な通信経路があれば、無線通信経路制御装置100は、当該通信経路を接続したあらたな通信経路を生成し、あらたな通信経路に対するパケットエラーレートを演算する。無線通信経路制御装置100は、あらたな通信経路を示す通信経路情報とあらたな通信経路に対するパケットエラーレートとを対応付けて記憶部に記憶する。なお、無線通信装置200sから無線通信装置200a、および、無線通信装置200aから無線通信装置200sへの通信経路におけるパケットエラーレートは、各無線通信装置200が送信アンテナと受信アンテナを共有している場合には同一であると想定する。ただし、無線通信装置200が送信アンテナと受信アンテナとを別個に、物理的に離れた位置に配置させる場合には、同一通信経路であっても伝送方向によって、パケットエラーレートが異なる場合がある。
【0025】
次に、
図1において、無線通信装置200間のリンク状態を遅延時間で表現する場合の一例について説明する。例えば、無線通信装置200sと無線通信装置200aとの間の通信経路における遅延時間を無線通信経路制御装置100において演算する場合について説明する。
【0026】
無線通信装置200sは、時刻同期している無線通信システム1000において、送信時の時刻情報を含むパケットを無線通信装置200aに送信する。無線通信装置200aは、無線通信装置200sの当該パケット送信時の時刻情報と、無線通信装置200aの当該パケット受信時の時刻情報を含むパラメータ値関連情報を、無線通信経路制御装置100に送信する。
【0027】
無線通信経路制御装置100は、受信したパラメータ値関連情報に含まれるパケット送信時の時刻情報とパケット受信時の時刻情報の時刻差をパラメータ値としての遅延時間として演算する。無線通信経路制御装置100は、演算した遅延時間を、無線通信装置200sから無線通信装置200aへの通信経路情報と対応付けて、無線通信経路制御装置100の記憶部に記憶する。なお、無線通信装置200の間では時刻同期が取られていることを想定しているが、無線通信装置200の間における時刻同期の取得方法は既知の技術であるために、本明細書では詳述しない。
【0028】
無線通信経路制御装置100は、記憶部に複数の異なる通信経路情報がある場合には、接続可能な通信経路があるか否かを検索し、接続可能な経路があれば、当該通信経路を接続したあらたな通信経路を生成し、あらたな通信経路に対する遅延時間を演算する。無線通信経路制御装置100は、あらたな通信経路を示す通信経路情報とあらたな通信経路に対する遅延時間とを対応付けて記憶部に記憶する。なお、無線通信装置200sから無線通信装置200a、および、無線通信装置200aから無線通信装置200sへの通信経路における遅延時間は、各無線通信装置200が送信アンテナと受信アンテナを共有している場合には同一であると想定する。ただし、無線通信装置200が送信アンテナと受信アンテナとを別個に、物理的に離れた位置に配置させる場合には、同一通信経路であっても伝送方向によって、遅延時間が異なる場合がある。
【0029】
さらに、
図1において、無線通信装置200間のリンク状態をスループットで表現する場合の一例について説明する。例えば、無線通信装置200sと無線通信装置200aとの間の通信経路におけるスループットを無線通信経路制御装置100において演算する場合について説明する。
【0030】
無線通信装置200sは、時刻同期している無線通信システム1000において、あらかじめ定められた情報量のデータを送信する時の時刻情報を含むパケットを無線通信装置200aに送信する。無線通信装置200aは、当該データの情報量、無線通信装置200sの当該データ送信時の時刻情報、および、無線通信装置200aの当該データ受信時の時刻情報を含むパラメータ値関連情報を、無線通信経路制御装置100に送信する。無線通信経路制御装置100は、受信したパラメータ値関連情報に含まれる、送受信されたデータの情報量、データ送信時の時刻情報、および、データ受信時の時刻情報の時刻差からパラメータ値としてスループット値を演算する。無線通信経路制御装置100は、演算したスループット値を、無線通信装置200sから無線通信装置200aへの通信経路情報と対応付けて、無線通信経路制御装置100の記憶部に記憶する。なお、無線通信装置200の間では時刻同期が取られていることを想定しているが、無線通信装置200の間における時刻同期の取得方法は既知の技術であるために、本明細書では詳述しない。
【0031】
無線通信経路制御装置100は、記憶部に複数の異なる通信経路情報がある場合には、接続可能な通信経路があるか否かを検索する。接続可能な通信経路があれば、無線通信経路制御装置100は、当該経路を接続したあらたな通信経路を生成し、あらたな通信経路に対するスループット値を演算する。無線通信経路制御装置100は、あらたな通信経路を示す通信経路情報とあらたな経路に対するスループット値とを対応付けて記憶部に記憶する。なお、スループット値の演算手法は既知の技術であるため、本明細書では説明を省略する。
【0032】
上述したように、無線通信経路制御装置100が無線通信装置200から無線通信装置200間のさまざまなパラメータを受信することによって、パラメータ毎にさまざまな通信経路を生成することが可能になる。すなわち、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する無線通信経路制御装置100を配置することで、各無線通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能な無線通信システムを提供することが可能となる。
【0033】
なお、上述した実施形態において、各無線通信装置200がパラメータ値関連情報を生成し、当該パラメータ値関連情報を受信した無線通信経路制御装置100が、当該パラメータ値関連情報からパラメータ値を演算する形態について説明した。しかし、各無線通信装置200が、パラメータ値を演算し、当該パラメータ値と通信経路情報を無線通信経路制御装置100に送信し、無線通信経路制御装置100があらたな通信経路、および、あらたな通信経路のパラメータ値を演算することも可能である。例えば、無線通信経路制御装置100における演算処理の増大により、各無線通信装置200からパラメータ値関連情報を受信できない状態になった場合に、無線通信装置200にパラメータ値の演算処理を要求することも可能である。
【0034】
以上の構成によれば、通信経路を生成するための演算処理を無線通信経路制御装置100と無線通信装置200とに適切に分散して実行可能となるために、無線通信システム全体における通信経路を生成するための演算処理負荷を効率的に分散することも可能になる。
【0035】
(通信経路の作成方法の一例)
図2に、無線通信経路制御装置100が生成する、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路の例を図示する。
【0036】
図2において、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200eまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200eから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200eから無線通信装置200fまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200fから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。さらに、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200fから無線通信装置200dまでの通信経路のパラメータ値関連情報を受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。この場合に、特定のパラメータに対して、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路として、無線通信装置200eおよび無線通信装置200fを経由する
図2に示す通信経路Sd1を無線通信経路制御装置100は生成することが可能になる。なお、この場合に、無線通信経路制御装置100が受信する通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報の受信順番は、通信経路Sd1の形成に影響を及ぼさないものとする。また、通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報は、他の無線通信装置200から受信されてもよい。例えば、無線通信装置200sから無線通信装置200eまでの通信経路のパラメータ値関連情報は、無線通信装置200sまたは無線通信装置200e以外の無線通信装置200が中継して、無線通信経路制御装置100に送信することが可能である。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200eまでの通信経路のパラメータ値関連情報として、無線通信装置200eから無線通信装置200sまでの通信経路のパラメータ値関連情報を使用可能な場合もある。すなわち、無線通信経路制御装置100は、通信経路が同一であれば伝送方向とは無関係に、特定のパラメータに対して1つのパラメータ値を設定することが可能な場合がある。
【0037】
同様に、
図2において、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200aから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200aから無線通信装置200cまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200cから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。さらに、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200cから無線通信装置200dまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200dから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。この場合に、特定のパラメータに対して、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路として、無線通信装置200aおよび無線通信装置200cを経由する
図2に示す通信経路Sd2を無線通信経路制御装置100は生成することが可能になる。なお、この場合に、無線通信経路制御装置100が受信する通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報の受信順番は、通信経路Sd2の形成に影響を及ぼさないものとする。この場合に、通信経路Sd1と通信経路Sd2が同一の特定のパラメータに関する通信経路の場合には、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路に2つの候補となる通信経路が生成されることになる。また、通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報は、他の無線通信装置200から受信されてもよい。例えば、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値関連情報は、無線通信装置200sまたは無線通信装置200a以外の無線通信装置200が中継して、無線通信経路制御装置100に送信することが可能である。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値関連情報として、無線通信装置200aから無線通信装置200sまでの通信経路のパラメータ値関連情報を使用可能な場合もある。すなわち、無線通信経路制御装置100は、通信経路が同一であれば伝送方向とは無関係に、特定のパラメータに対して1つのパラメータ値を設定することが可能な場合がある。
【0038】
さらに、
図2において、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200aから無線通信装置200fまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200fから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200fから無線通信装置200cまでの通信経路のパラメータ値関連情報を無線通信装置200cから受信し、パラメータ値関連情報に基づいて、パラメータ値を演算する。この場合に、上述したように、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値を演算し、無線通信装置200cから無線通信装置200dまでの通信経路のパラメータ値を演算している。したがって、無線通信経路制御装置100は、特定のパラメータに対して、無線通信装置200sから200dまでの通信経路として、無線通信装置200a、無線通信装置200fおよび無線通信装置200cを経由する通信経路Sd3を生成可能になる。なお、この場合に、無線通信経路制御装置100が受信する通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報の受信順番は、通信経路Sd3の形成に影響を及ぼさないものとする。また、この場合に、通信経路Sd1、通信経路Sd2および通信経路Sd3が同一の特定のパラメータに関する通信経路の場合には、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路に3つの候補となる通信経路が生成されることになる。なお、通信経路、および、通信経路に対するパラメータ値関連情報は、他の無線通信装置200から受信されてもよい。例えば、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値関連情報は、無線通信装置200sまたは無線通信装置200a以外の無線通信装置200が中継して、無線通信経路制御装置100に送信することが可能である。また、無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200sから無線通信装置200aまでの通信経路のパラメータ値関連情報として、無線通信装置200aから無線通信装置200sまでの通信経路のパラメータ値関連情報を使用可能な場合もある。すなわち、無線通信経路制御装置100は、通信経路が同一であれば伝送方向とは無関係に、特定のパラメータに対して1つのパラメータ値を設定することが可能な場合がある。
【0039】
さらに、
図2に図示しない無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路として通信経路Sdxまでのx個の通信経路が無線通信経路制御装置100によって生成されると、当該通信経路にx個の候補となる通信経路が生成されることになる。
【0040】
以上の場合に、無線通信装置200sから無線通信装置200dまでの通信経路情報要求フレームを無線通信経路制御装置100が無線通信装置200sから受信すると、無線通信経路制御装置100は最適な通信経路を選択し、無線通信装置200sに送信する。なお、通信経路情報要求フレームにはパラメータの優先度に関する情報が含まれるので、当該パラメータに関して最適な通信経路情報が選択され、当該パラメータに関して最適な通信経路情報が無線通信経路制御装置100から無線通信装置200sに送信される。
【0041】
(無線通信システムにおいて送受信される情報フレームの構成例)
図3(a)は、無線通信システムにおいて送受信されるパラメータを測定、および、測定結果を伝送するフレームであるパラメータ測定フレームを示す模式図である。例えば、無線通信装置200の間でパラメータを測定する場合に、
図3(a)に示すフレームが使用される。また、無線通信装置200がパラメータを測定した結果であるパラメータ値関連情報を無線通信経路制御装置100に送信する場合にも、
図3(a)に示すフレームが使用される。なお、パラメータ測定フレームはデータの通信がない任意のタイミングで送受信されるフレームであってもよい。ただし、パラメータ測定フレームは、無線通信システム1000に含まれるすべての無線通信装置200が所定の時間内で送受信するフレームであってもよい。例えば、無線通信システム1000内のすべての無線通信装置200にタイムスロットが割り当てられ、割り当てられたタイムスロットで無線通信装置200がパラメータ測定フレームを送信することが可能になる場合がある。この場合には、所定の時間を周期として、パラメータ測定フレームが送受信されることが可能になる。所定の時間およびタイムスロットは無線通信システム1000において任意の値を設定することが可能である。
【0042】
図3(b)は、通信データを伝送するフレームである通信データ伝送フレーム、および、通信経路情報要求フレームの一例を示す模式図である。通信データ伝送フレームは、無線通信装置200間において、無線通信経路制御装置100が選択した最適な通信経路に基づいて通信データが伝送されるフレームである。当該最適な通信経路は経路情報DD1に書き込まれる。また、
図3(b)のフレームが通信経路情報要求フレームとして機能する場合には、無線通信装置200に送信要求が発生した場合に、無線通信装置200が無線通信経路制御装置100に最適な通信経路を要求するフレームとなる場合がある。なお、無線通信経路制御装置100が無線通信装置200に最適な通信経路を送信する場合にも、
図3(b)のフレームが使用される場合がある。
【0043】
次に、
図3(a)および
図3(b)の各フレームについて具体的に説明する。
【0044】
図3(a)のフレームは、上述したようにパラメータ測定フレームと称される場合があり、その一例を示す模式図である。フレームには、測定フレームプリアンブルPP、測定フレームヘッダPH、測定フレームパラメータPD、および、測定フレームチェックシーケンスPEが含まれる。測定フレームチェックシーケンスは
図3に示されるようにFCS(Frame Check Sequence)と略称される場合がある。なお、上記情報が含まれていれば、パラメータ測定フレームは
図3(a)の構成に限定されるわけではなく、無線通信システム1000において任意の構成をパラメータ測定フレームとしてあらかじめ設定することが可能である。
【0045】
測定フレームプリアンブルPPはビット同期をとるために使用され、通常は1と0の交番ビット列信号であるが、無線通信システムにおいて任意のビットパターンが選択されてもよい。なお、測定フレームプリアンブルPPの最期の1バイトには、無線通信システム1000においてあらかじめ定められたビットパターンであるフレーム開始識別情報が付加されていてもよい。
【0046】
測定フレームヘッダPHには、フレームの送信先となる無線通信装置200または無線通信経路制御装置100の宛先アドレスPH1、フレームの送信元である無線通信装置200の送信元アドレスPH2が含まれることが可能である。また、測定フレームヘッダPHには、タイプ情報PH3、優先度情報PH4が含まれることが可能である。なお、測定フレームヘッダPHは
図3(a)の構成に限定されるわけではなく、無線通信システム1000において任意の構成をヘッダとしてあらかじめ設定することが可能である。
【0047】
タイプ情報PH3には
図3(c)に示されるいずれかの情報が記載されている。
図3(a)は、パラメータ測定フレームの一例を示す模式図であるので、タイプ情報PH3には送受信されるフレームがパラメータ測定フレームであることを示すための識別情報が記載される。例えば、
図3(c)に示すように、当該識別情報はパラメータと称される場合がある。パラメータと称されるパラメータ測定フレーム識別情報は任意の情報長であってもよい。しかし、
図3(c)における送受信フレームがデータであることを示すための識別情報、および、送受信フレームが経路情報要求であることを示すための識別情報とは異なる識別情報がパラメータ測定フレーム識別情報として無線通信システムにおいて設定される。
【0048】
なお、
図3(a)のフレームが、無線通信装置200の経路間のパラメータの測定結果を無線通信経路制御装置100に伝送するフレームである場合には。優先度情報PH4に測定対象のパラメータを識別するための情報が書き込まれる。また、測定フレームパラメータPDには、測定したパラメータのパラメータ値関連情報が書き込まれる。
【0049】
図3(a)のフレームが、無線通信装置200の経路間のパラメータを測定するパラメータ測定フレームである場合について引き続き説明する。
【0050】
測定フレームパラメータPDには、測定対象のパラメータの情報が書き込まれる。例えば、測定されるべきパラメータが遅延時間である場合には、送信元の無線通信装置200がフレームを送信した時刻情報およびあらかじめ定められたデータパターンが書き込まれる。また、例えば、測定されるべきパラメータがパケットエラーレートである場合には、無線通信システムにおいて、あらかじめ定められたパターンおよび長さを有するデータが測定フレームパラメータPDに書き込まれてもよい。この場合の任意のパターンおよび長さを有するデータは、送信元の無線通信装置200が決定することも可能である。また、同様に、例えば、測定されるべきパラメータがスループットである場合には、無線通信システムにおいて、あらかじめ定められたパターンおよび長さを有するデータが測定フレームパラメータPDに書き込まれてもよい。この場合の任意のパターンおよび長さを有するデータは、送信元の無線通信装置200が決定することも可能である。また、例えば、測定されるべきパラメータが位置情報である場合には、送信元の無線通信装置200の位置情報が測定フレームパラメータPDに書き込まれてもよい。なお、測定フレームパラメータPDには、複数のパラメータに関する情報が含まれてもよい。この場合には、無線通信装置200は複数のパラメータに関する情報を同時に取得することも可能になる。
【0051】
測定フレームチェックシーケンスPEは、通信途上で通信データに誤りが生じていないか調べるために、送信時にデータに付加される誤り検出符号である。無線通信システムは、誤り検出符号として任意の符号を設定することが可能である。また、宛先の無線通信装置200において、演算した値と受信した測定フレームチェックシーケンスPEの値が異なる場合には、宛先の無線通信装置200は当該フレームで受信された通信データに誤りがあると判定することが可能である。通信データに誤りがあると判定された場合には、パケットエラーレートの値は大きくなり、成功率は低減する。
【0052】
図3(b)は、無線通信装置200の間で通信データを伝送するフレーム、または、無線通信装置200と無線通信経路制御装置100とで送受信される経路情報要求フレームの一例を示す模式図である。
図3(b)のフレームには、データフレームプリアンブルDP、データフレームヘッダDH、データDD、および、データフレームチェックシーケンスDEが含まれる。上述したように、フレームチェックシーケンスは
図3に示されるようにFCSと略称される場合がある。なお、上記情報が含まれていれば、通信データを伝送するフレームは
図3(b)の構成に限定されるわけではなく、無線通信システム1000において任意の構成をフレームとしてあらかじめ設定することが可能である。
【0053】
データフレームプリアンブルDPは
図3(a)の測定フレームプリアンブルPP、データフレームヘッダDHは
図3(a)の測定フレームヘッダPHと同等の機能を有するので、説明の重複を避けるために、本明細書では詳述しない。さらに、データフレームチェックシーケンスDEは
図3(a)の測定フレームチェックシーケンスPEと同等の機能を有するので、説明の重複を避けるために、本明細書では詳述しない。
【0054】
図3(b)のフレームが、通信データを伝送するフレームとして機能する場合には、タイプDH3には送受信されるフレームが通信データを伝送するフレームであることを示すための識別情報が記載される。例えば、
図3(c)に示すように、当該識別情報はデータと略称されるデータ識別情報である場合がある。データ識別情報は任意の情報長であってもよい。しかし、
図3(c)の送受信フレームが、経路情報要求を伝送するフレームであることを示す識別情報、および、パラメータを測定するフレームであることを示す識別情報とは異なる識別情報がデータ識別情報として無線通信システムにおいて設定される。
【0055】
また、
図3(b)のフレームが、経路情報要求フレームとして機能する場合には、タイプDH3には送受信されるフレームが経路情報要求フレームであることを示すための識別情報が記載される。例えば、
図3(c)に示すように、当該識別情報は経路情報要求と略称される経路情報要求識別情報である場合がある。経路情報要求識別情報は任意の情報長であってもよい。しかし、
図3(c)の送受信フレームが、データを伝送するフレームであることを示す識別情報、および、パラメータを測定するフレームであることを示す識別情報とは異なる識別情報がデータ識別情報として無線通信システムにおいて設定される。
【0056】
図3(b)のフレームが、経路情報要求フレームとして機能する場合には、優先度情報DH4には、無線通信経路制御装置100において選択される経路情報がどのパラメータに基づいて選択されるべきかを示す情報が書き込まれる。例えば、優先されるべきパラメータがパケットエラーレートである場合には、優先度情報DH4には、パケットエラーレートを識別するための情報が書き込まれる。また、優先度情報DH4には、優先されるべきパラメータがスループット値である場合には、優先度情報DH4には、スループット値を識別するための情報が書き込まれる。また、優先度情報DH4には、無線通信装置200間の物理的距離、受信信号強度:RSSI、SN比等のいずれかのパラメータを識別するための情報が書き込まれる場合もある。なお、優先度情報DH4に、複数のパラメータが優先レベルと対応付けられて書き込まれていてもよい。この場合には、無線通信経路制御装置100は、優先度情報DH4に書き込まれた複数のパラメータについて、優先レベルが高いパラメータから、通信経路を選択することが可能になる場合がある。例えば、無線通信経路制御装置100は、最も優先度が高いパラメータに対応する通信経路候補が存在しない場合には、次の優先度に係わるパラメータに対応する通信経路を選択する。また、無線通信経路制御装置100は、最も優先度が高いパラメータに対応する通信経路のパラメータ値が同じ場合には、その中で次の優先度に係わるパラメータのパラメータ値を比較して、良好なパラメータ値を有する通信経路を選択することが可能である。
【0057】
経路情報DD1および任意の通信データDD2が含まれることが可能である。データDDには、
図3(b)のフレームが、経路情報要求フレームの応答フレームとして機能する場合には、無線通信経路制御装置100から無線通信装置200に提供される最適な通信経路情報が書き込まれる。すなわち。経路情報DD1は、任意の通信データDD2を最初に送信した送信元の無線通信装置200が指定した最も優先度が高いパラメータに対して、無線通信経路制御装置100が選択し、当該送信元の無線通信装置200に送信した情報である。すなわち、経路情報DD1は、無線通信経路制御装置100が作成した通信経路の中で、指定されたパラメータのパラメータ値が最も大きい、または、最も小さい最適な通信経路を示す情報である。例えば、指定されたパラメータが遅延時間であれば、経路情報DD1は、無線通信経路制御装置100が作成し、無線通信装置200が指定した通信経路の中で最も遅延時間が小さい経路である。また、例えば、指定されたパラメータが経路長であれば、経路情報DD1は、無線通信経路制御装置100が作成し、無線通信装置200が指定した通信経路の中で最もホップ数が小さい、または、通信距離が最も近い経路である。
【0058】
経路情報DD1には、任意の通信データDD2が送受信されるべき通信経路のすべての無線通信装置200のアドレス等の識別情報が、通信されるべき順番に書き込まれている。すなわち、経路情報DD1は、任意の通信データDD2を最初に送信した送信元の無線通信装置200の識別情報、通信経路上のすべての無線通信装置200の識別情報、任意の通信データDD2を最後に受信するべき宛先の無線通信装置200の識別情報を含む。したがって、通信経路上の無線通信装置200は経路情報DD1を抽出することによって、通信データを伝送するフレームを転送するべき次の無線通信装置200の識別情報を取得することが可能になる。
【0059】
上記の場合に、経路情報DD1によって示される通信経路上のいずれかの無線通信装置200が次に通信データを送信すべき無線通信装置200と通信できない場合には、無線通信装置200は、無線通信経路制御装置100に次善の通信経路を問い合わせる。この場合に使用されるフレームは
図3(b)のフレーム構成であって、タイプDH3には経路情報要求を示す経路情報要求識別情報が書き込まれる。また、DH4には、通信が失敗する前の経路情報要求に対応する優先度を示す優先度識別情報が挿入されてもよいし、異なる優先度識別情報が書き込まれてもよい。例えば、優先度識別情報は遅延時間から遅延時間に維持されてもよいし、遅延時間からパケットエラーレートに変更されてもよい。
【0060】
無線通信経路制御装置100は、データDDに経路情報DD1が含まれ、データフレームヘッダDHのタイプDH3が経路情報要求であるフレームを受信する場合がある。この場合に、無線通信経路制御装置100は、受信したフレームが、通信が失敗した無線通信装置200からの通信経路情報の再選択要求フレームであると認識することが可能である。すると、無線通信経路制御装置100は、通信が失敗した無線通信装置200の次の無線通信装置200から最終的な宛先の無線通信装置200までの通信経路情報を選択し、通信が失敗した無線通信装置200に送信する。優先度情報DH4の識別情報が変化していない場合には、無線通信経路制御装置100は変化していない優先度情報DH4に対応する次善の通信経路情報を選択する。また、優先度情報DH4の識別情報が変化している場合には、無線通信経路制御装置100は変化した優先度情報DH4に対応する最適な通信経路情報を選択する。
【0061】
(無線通信経路制御装置の構成例)
図4は無線通信経路制御装置100の構成の一例を示すブロック図である。無線通信経路制御装置100は、
図4に示すように、送受信切り替え部110、無線受信部120.無線送信部130、制御部140、および、記憶部150を含んで構成される。なお、送受信切り替え部110は無線通信経路制御装置100に含まれない場合があるオプションである。
【0062】
オプションとしての送受信切り替え部110は、アンテナANTと無線受信部120との接続、および、アンテナANTと無線送信部130との接続を切り替える機能を有する。すなわち、送受信切り替え部110は通信データを受信する場合にはアンテナANTと無線受信部120とを接続し、通信データを送信する場合にはアンテナANTと無線送信部130とを接続する機能を有する。なお、送受信切り替え部110は、通信経路情報、ACK(ACKnowledgement)、または、NACK(Negative ACKnowledgement)を送信する時に無線通信経路制御装置100を送信モードに切り替える。それ以外の時には、送受信切り替え部110は、無線通信経路制御装置100を受信モードに切り替える。
【0063】
また、オプションとしての送受信切り替え部110を備えない場合には、無線受信部120にアンテナANT1(図示せず)を固定的に接続し、無線送信部130にアンテナANT2(図示せず)を固定的に接続する構成とすることもできる。また、アンテナANT、ANT1、ANT2は無線通信経路制御装置100の内部または外部に配置することが可能である。なお、以下の説明において、無線通信システムに含まれる無線通信経路制御装置100および無線通信装置200をノードと称する場合がある。
【0064】
無線受信部120は、他のノードから送信された経路情報要求フレーム、パラメータ測定結果を含むパラメータ測定フレーム、ACK、または、NACKを受信する機能を有する。また、無線受信部120で受信した通信データの宛先情報を参照して、自ノード宛ての通信データと他のノード宛ての通信データとを区別する機能を有する。一例として宛先情報はノードの識別情報であって、ヘッダに含まれる情報として参照可能な情報である。当該通信データは自ノードが最終宛先となる通信データである場合と、自ノードが最終宛先とならない通信データである場合がある。自ノードが最終宛先となる通信データである場合には、当該通信データを受信データ判別部141に出力する。また、自ノードが最終宛先とならない通信データである場合であって、通信データに通信経路情報が含まれない場合には、無線受信部120は、当該通信データを破棄する場合がある。また、自ノードが最終宛先とならない通信データである場合であって、通信経路情報に自ノードが含まれることがある場合には、無線通信経路制御装置100が中継端末として機能することも可能である。
【0065】
無線送信部130は、他ノードから要求された通信経路情報とデータを送信する機能を有する。また、無線送信部130は、他ノードから受信された通信データに対する肯定応答であるACKまたは否定応答であるNACKを送信する機能も有する。
【0066】
制御部140は、受信データ判別部141、パラメータ演算部142、経路生成部143、経路選択部144、および、通信制御部145を含むことが可能である。
【0067】
受信データ判別部141は、無線受信部120が受信した通信データのタイプ情報を参照し、受信した通信データがパラメータ値関連情報を含むフレームであるか、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームであるかを判別する機能を有する。パラメータ値関連情報を含むフレームを受信した場合には、受信データ判別部141は、当該フレームをパラメータ演算部142に出力する。また、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームを受信した場合には、受信データ判別部141は、当該フレームを経路選択部144に出力する。
【0068】
パラメータ演算部142は、受信したノード間のパラメータ値関連情報から当該ノード間のパラメータ値によって示されるリンク状態を演算する。例えば、無線通信装置200sは、無線通信装置200aがパケットを送信した時刻情報に、無線通信装置200sが無線通信装置200aからパケットを受信した時刻情報を追加して無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。この場合、パラメータ演算部142は無線通信装置200aのパケット送信時刻情報と、無線通信装置200sの無線通信装置200aからのパケット受信時刻情報とから、無線通信装置200aから無線通信装置200sへの通信経路の遅延時間を演算可能である。したがって、パラメータには、当該ノード間におけるデータ伝送の遅延時間が含まれる場合がある。
【0069】
また、リンク状態を示すパラメータをパケットエラーレートで示す場合には、無線通信システムにおいて、ノード間でリンク状態を測定するためのテストパケット数をあらかじめ設定することが可能である。また、無線通信システムにおいて、テストパケットのデータ長、データ通信に使用されるペイロードタイプ、パケット情報のタイプ、パケット間のインターバル長があらかじめ設定されることが可能である。例えば、無線通信装置200sは無線通信装置200aから受信したテストパケット数、および、エラーが発生しているパケット数の情報を無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。この場合には、パラメータ演算部142は、無線通信装置200sから受信したテストパケット数、および、エラーが発生しているパケット数の情報からパケットエラーレートを算出することも可能である。なお、テストパケット数が無線通信システムおいて定められている場合には、以下の処理が実行される。すなわち、無線通信装置200sはテストパケット数を含まない、通信経路情報、および、エラーが発生しているパケット数の情報をパラメータ値関連情報として無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。
【0070】
さらに、ノード間のリンク状態を示すパラメータをノード間のスループットで示すことも可能である。例えば、無線通信装置200sは無線通信装置200aから受信したパケットのデータ量、受信開始時刻、および、受信終了時刻を無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。この場合には、パラメータ演算部142は、無線通信装置200sから受信した情報に基づいて、スループットを演算することが可能である。なお、テストパケット数が無線通信システムおいて定められている場合には、無線通信装置200sはテストパケット数を含まない情報を無線通信経路制御装置100に送信しても、無線通信経路制御装置100がスループットを演算することも可能である。
【0071】
さらに、パラメータ演算部142は、ノード間の距離を各ノードの位置情報から演算することが可能である。例えば、無線通信装置200sは、無線通信装置200sが通信可能な無線通信装置200aの位置情報と無線通信装置200sの位置情報を無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。この場合には、パラメータ演算部142は、無線通信装置200sから受信した情報に基づいて、無線通信装置200sと無線通信装置200aとの距離情報を演算することが可能である。
【0072】
また、パラメータ演算部142は、演算されたパラメータ値を、パラメータ値が演算されたリンクを形成するノード情報に対応付けて、記憶部150に記憶し、必要に応じて経路生成部143に出力する。例えば、パラメータ演算部142は、無線通信装置200sから無線通信装置200aへの通信経路情報に対応付けて、遅延時間情報、パケットエラーレート情報、スループット情報、物理的距離情報等のパラメータ値情報を記憶部150に記憶する。なお、パラメータ演算部142で演算されるパラメータ値はメッシュネットワークを構成する各ノード間のリンク状態を定量的に示す情報である。
【0073】
経路生成部143は、パラメータ演算部142において演算されたパラメータ値に基づいて、通信経路を生成する。すなわち、経路生成部143は、同一のパラメータに関して、リンクがつながる通信経路を探し出し、当該通信経路のパラメータ値を演算する。例えば、経路生成部143が、同一のパラメータに関して、無線通信装置200sから200aへの通信経路に関するパラメータ値、および、無線通信装置200aから200fへの通信経路に関するパラメータ値を記憶部150から抽出する。さらに、経路生成部143が同一のパラメータに関して、無線通信装置200cから200dへの通信経路に関するパラメータ値を記憶部150から抽出した場合に、以下の処理を実行する。すなわち、経路生成部143は、当該パラメータに関して、無線通信装置200sから、無線通信装置200aおよび200cを経由して、無線通信装置200dに至る通信経路Sd2(
図2)を生成し、通信経路Sd2に対するパラメータ値を演算する。さらに、経路生成部143は、演算されたパラメータ値を通信経路Sd2の通信経路情報に対応付けて、記憶部150に記憶する。
【0074】
さらに、例えば、経路生成部143が当該同一のパラメータに関して、無線通信装置200aから200fへの通信経路、および、無線通信装置200fから200cへの通信経路、に関するパラメータ値を記憶部150から抽出すると以下の経路を生成する。すなわち、経路生成部143は、当該パラメータに関して、無線通信装置200sから、無線通信装置200a、200gおよび200cを経由して、無線通信装置200dに至る通信経路Sd3(
図2)を生成し、通信経路Sd3に対するパラメータ値を演算する。さらに、経路生成部143は、演算されたパラメータ値を通信経路Sd3の通信経路情報に対応付けて、記憶部150に記憶する。
【0075】
なお、経路生成部143は通信経路、および、当該通信経路に関するパラメータ値を一時的に図示しないキャッシュに記憶し、パラメータ演算部142から受信したパラメータ値および当該パラメータ値に対応する通信経路から新たな通信経路を生成可能である。この場合に、経路生成部143は新たな通信経路のパラメータ値を演算し、新たな通信経路を示し通信経路情報と演算されたパラメータ値とを対応付けて、記憶部150に記憶する。
【0076】
経路選択部144は、無線通信装置200から受信した経路情報要求フレームに含まれる優先度を示す領域に書き込まれたパラメータ種別、および、データDDに書き込まれたデータを最終的に送信すべき宛先の無線通信装置200の識別情報を抽出する。そして、送信元アドレスに示される無線通信装置200から最終的な宛先の無線通信装置200までの通信経路について、優先度によって指定されたパラメータが最良となる最適な通信経路を、経路選択部144は記憶部150から選択する。選択された最適な通信経路はデータDDに書き込まれ、無線送信部130が経路情報要求フレームの送信元アドレスに示される無線通信装置200に送信する。
【0077】
通信制御部145は、あらかじめ定められた通信プロトコルに基づいて、送受信信号を変復調処理する機能を有する。なお、変復調処理するために必要なパラメータ等の情報は、記憶部150に記憶されていてもよい。
【0078】
記憶部150には、通信経路情報と対応付けられた、リンク状態を示すパラメータ値が記憶される。1つの経路情報に複数のパラメータ種別が対応付けられ、1つのパラメータ種別に対して最新の1つのパラメータ値が対応付けられて記憶されることが好ましい。なお、最新のパラメータ値が、すでに記憶されている同一の通信経路情報に対応するパラメータ値よりも悪化したパラメータ値である場合もある。また、パラメータ値にはパラメータの計測が困難である、すなわち、リンクされていないという情報が含まれていてもよい。また、記憶部150に記憶されるデータの構成は任意の構成を採用することが可能であり、インデックス、階層構造、ポインタ、および、ポインタテーブル等を使用した高速検索手法を採用することも可能である。
【0079】
以上の説明による本実施形態に係わる無線通信システムは車両等の移動体に搭載されることができる。無線通信ネットワークが自動車内に構築される場合には、無線通信経路制御装置100は車両内全体を見通しやすい位置に設置される。一例として、無線通信経路制御装置100は、天井部分、ルームミラー部分、床面等で車両内全体を見通しやすい位置に設置されることが可能である。
【0080】
なお、本実施形態に係わる無線通信システムには、各無線通信経路制御装置の送受信タイミングを制御するコントローラは存在する場合と存在しない場合がある。例えば、コントローラが存在しない場合には、無線通信システムはCSMA/CA等のプロトコルを採用する。
【0081】
なお、無線通信装置200の構成については、図示しない、無線受信部、無線送信部、受信データ判別部、通信制御部、記憶部、オプションとしての送受信切り替え部、および、オプションとしての外部I/F部を含むことが可能である。無線受信部、無線送信部、受信データ判別部、通信制御部、記憶部、および、オプションとしての送受信切り替え部は無線通信経路制御装置100と重複、または、既知の技術であるために詳述しない。
【0082】
外部I/F部は、無線通信装置200と接続されるセンサー等のデバイス、または、電子装置とのインターフェース機能を有する。また、外部I/F部に接続されるデバイス、または、電子装置によって、ECU(Electronic Control Unit)が構成されてもよい。電子装置には、車載機器としての車両制御機器、車両センシング機器、車両周辺情報取得機器、および、エンタテイメント機器等の電子機器が含まれてもよい。なお、車両制御機器にはナビゲーション機器や自動運転制御機器が含まれてもよい。また、他の無線通信装置200の外部I/F部と接続し、情報を送受信することも可能である。
【0083】
(無線通信経路制御装置100の動作例)
図5を参照して本実施形態に係る無線通信経路制御装置100の動作例について説明する。
【0084】
ステップS501において、無線通信経路制御装置100は無線通信装置200から通信データのタイプ情報がパラメータであるか否かを判定する。通信データのタイプ情報がパラメータである場合(ステップS501:YES)には、無線通信経路制御装置100はステップS502に進む。通信データのタイプ情報がパラメータではない場合(ステップS501:NO)には、無線通信経路制御装置100はステップS503に進む。
【0085】
ステップS502において、無線通信経路制御装置100のパラメータ演算部142は、受信したノード間のパラメータ値関連情報から当該ノード間のパラメータ値によって示されるリンク状態を演算する。例えば、パラメータ演算部142は無線通信装置200aのパケット送信時刻情報と、無線通信装置200sの無線通信装置200aからのパケット受信時刻情報とから、無線通信装置200aから無線通信装置200sへの通信経路の遅延時間を演算可能である。また、例えば、パラメータ演算部142は、無線通信装置200sから受信したテストパケット数、および、エラーが発生しているパケット数の情報からパケットエラーレートを算出することも可能である。なお、テストパケット数が無線通信システムおいて定められている場合には、無線通信装置200sはテストパケット数を含まない、通信経路情報、および、エラーが発生しているパケット数の情報を無線通信経路制御装置100に送信することも可能である。
【0086】
パラメータ演算部142は、演算されたパラメータ値を、パラメータ値が演算されたリンクを形成するノード情報に対応付けて、記憶部150に記憶し、必要に応じて経路生成部143に出力する。例えば、パラメータ演算部142は、通信経路情報に対応付けて、遅延時間情報、パケットエラーレート情報、スループット情報、物理的距離情報等のパラメータ値を記憶部150に記憶する。
【0087】
さらに、ステップS502において、経路生成部143は、パラメータ演算部142において演算されたパラメータ値に基づいて、通信経路を生成する。すなわち、経路生成部143は、同一のパラメータに関して、リンクがつながる通信経路を探し出し、当該通信経路のパラメータ値を演算する。この場合のパラメータ値の演算は、パラメータ演算部142が実行してもよい。このようにして、経路生成部143は、メッシュネットワークにおいて、ホップ転送される通信経路の生成を続ける。経路生成部143は、生成された通信経路の通信経路情報と、演算されたパラメータ値を対応付けて記憶部150に記憶する。無線通信経路制御装置100は次の通信データの受信を待機するために処理を終了する。
【0088】
ステップS503において、無線通信経路制御装置100は無線通信装置200から通信データのタイプ情報が経路情報要求であるか否かを判定する。通信データのタイプ情報が経路情報要求である場合(ステップS503:YES)には、無線通信経路制御装置100はステップS504に進む。通信データのタイプ情報が経路情報要求ではない場合(ステップS503:NO)には、無線通信経路制御装置100はステップS512に進む。
【0089】
ステップS504において、無線通信経路制御装置100は、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームのヘッダ部分を参照し、通信経路情報要求フレームのヘッダ部分を抽出する。次に、無線通信経路制御装置100はステップS505に進む。
【0090】
ステップS505において、無線通信経路制御装置100は、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームのヘッダ部分の優先度に遅延時間情報が書き込まれているか否かを判定する。優先度に遅延時間情報が書き込まれていれば、通信経路は遅延時間に基づいて選択される。優先度に遅延時間情報が書き込まれている場合(ステップS505:YES)には、無線通信経路制御装置100は、ステップS506に進む。優先度に遅延時間情報が書き込まれていない場合(ステップS505:NO)には、無線通信経路制御装置100は、ステップS507に進む。
【0091】
ステップS506において、無線通信経路制御装置100は、通信経路情報要求フレームの送信元アドレスに示される無線通信装置200、および、データDDに書き込まれたデータを最終的に送信すべき宛先の無線通信装置200の識別情報を抽出する。そして、送信元アドレスに示される無線通信装置200から最終的な宛先の無線通信装置200までの通信経路について、遅延時間が最短となる最適な通信経路を、無線通信経路制御装置100は、記憶部150から選択する。次に、無線通信経路制御装置100は、ステップS511に進む。
【0092】
ステップS507において、無線通信経路制御装置100は、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームのヘッダ部分の優先度に成功率情報が書き込まれているか否かを判定する。優先度に成功率情報が書き込まれていれば、通信経路は成功率情報に基づいて選択される。なお、成功率情報はパケットエラーレートに対応する情報とすることが可能である。優先度に成功率情報が書き込まれている場合(ステップS507:YES)には、無線通信経路制御装置100は、ステップS508に進む。優先度に成功率情報が書き込まれていない場合(ステップS507:NO)には、無線通信経路制御装置100は、ステップS509に進む。
【0093】
ステップS508において、無線通信経路制御装置100は、通信経路情報要求フレームの送信元アドレスに示される無線通信装置200、および、データDDに書き込まれたデータを最終的に送信すべき宛先の無線通信装置200の識別情報を抽出する。そして、送信元アドレスに示される無線通信装置200から最終的な宛先の無線通信装置200までの通信経路について、成功率が最大となる最適な通信経路を、無線通信経路制御装置100は、記憶部150から選択する。なお、成功率が最大となる最適な通信経路とは、当該通信経路においてパケットエラーレートが最小となる通信経路であってもよい。次に、無線通信経路制御装置100は、ステップS511に進む。
【0094】
ステップS509において、無線通信経路制御装置100は、通信経路を要求する通信経路情報要求フレームのヘッダ部分に優先度に係わる情報が書き込まれていないことを確認する。優先度に係わる情報が書き込まれていない場合に、無線通信経路制御装置100は、ステップS510に進む。
【0095】
ステップS510において、無線通信経路制御装置100は、通信経路情報要求フレームの送信元アドレスに示される無線通信装置200、および、データDDに書き込まれたデータを最終的に送信すべき宛先の無線通信装置200の識別情報を抽出する。そして、送信元アドレスに示される無線通信装置200から最終的な宛先の無線通信装置200までの通信経路について、最短経路となる最適な通信経路を、無線通信経路制御装置100は、記憶部150から選択する。なお、最短経路となる最適な通信経路とは、当該通信経路においてホップ数が最小となる通信経路である。また、ホップ数が最小となる通信経路が複数存在する場合には、無線通信経路制御装置100は、複数の当該通信経路のなかで、通信成功率が最も高い、または、遅延時間が最も小さい経路を最適な通信経路として選択する。次に、無線通信経路制御装置100は、ステップS511に進む。
【0096】
ステップS511において、無線通信経路制御装置100は、選択された最適な通信経路をデータDDに書き込み、無線送信部130が経路情報要求フレームの送信元アドレスに示される無線通信装置200に最適な通信経路を含む通信データを送信する。無線通信経路制御装置100は、処理を終了し、次の通信データの受信を待機する。
【0097】
ステップS512において、無線通信経路制御装置100は、通信データを受信したか否かを判定する。無線通信経路制御装置100が通信データを受信した場合(ステップS512:YES)には、無線通信経路制御装置100はステップS513に進む。無線通信経路制御装置100が通信データを受信していない場合(ステップS512:NO)には、無線通信経路制御装置100は処理を終了し、次の通信データ等の情報の受信を待機する。
【0098】
ステップS513において、無線通信経路制御装置100は、通信データの中継送信を実行する。自ノードが最終宛先とならない通信データである場合であって、通信経路情報の途中に自ノードが含まれることがある場合には、自ノードが中継端末として機能するので、通信経路情報に従って、次のノードに無線通信経路制御装置100は通信データを送信する。そして、無線通信経路制御装置100は処理を終了し、次の通信データ等の情報の受信を待機する。
【0099】
(変形例1)
以上の実施形態の説明では、無線通信経路制御装置100が無線通信装置200と常時接続できる場合について説明したが、通信環境が悪い場合、または、悪化した場合に、無線通信装置200は無線通信経路制御装置100と直接通信できない場合があり得る。このような場合には、無線通信装置200は他の無線通信装置200を中継装置として、無線通信経路制御装置100と中継通信することが可能な場合がある。
【0100】
図6に、中継通信する場合の中継通信フレームの構成の一例を示す。中継通信フレームには、中継プリアンブルTP、中継ヘッダTH、中継データTD、および、中継フレームチェックシーケンスTEが含まれる。上述したように、フレームチェックシーケンスは
図6に示されるようにFCSと略称される場合がある。なお、上記情報が含まれていれば、中継通信フレームは
図6の構成に限定されるわけではなく、無線通信システムにおいて任意の構成をフレームとしてあらかじめ設定することが可能である。
【0101】
なお、中継プリアンブルTPは
図3(a)の測定フレームプリアンブルPP、中継フレームチェックシーケンスTEは
図3(a)の測定フレームチェックシーケンスPEと同等の機能を有するので、説明の重複を避けるために詳述しない。
【0102】
中継ヘッダTHには、送信元アドレスAs1、送信先アドレスAr1、送信元アドレスAs2、送信先アドレスAr2、および、通信種別Sが含まれる。
【0103】
送信元アドレスAs2には、データ送信要求が発生したノードのアドレスが格納され、送信先アドレスAr2には、テータ送信の最終的な目的ノードのアドレスが格納される。送信元アドレスAs1および送信先アドレスAr1は、実際の通信の送信元、送信先ノードのアドレスが格納される。
【0104】
即ち、中継通信データにおいては、送信元アドレスAs1には中継通信データの送信ノードのアドレスが格納され、送信先アドレスAr1には中継通信の目的ノードのアドレスが格納される。中継通信フレームを受信したノードは、送信先アドレスAr1に自ノードのアドレスが格納されていれば、自ノードが中継ノードとして指定されたことを認識することが可能となる。
図6の通信種別Sには、
図3(a)および
図3(b)に示される。タイプと優先度が含まれて格納されていてもよい。この場合には、中継ノードは、タイプから受信したフレームが「通信データ」、「経路情報要求」、「パラメータ」、および、あらたな情報である「中継」のいずれかのフレームであるかを判定することが可能になる。また、中継ノードは、優先度から「パラメータ」の種類を判定することが可能になる。中継ノードとして指定されたノードは、送信元アドレスAs1に自ノードアドレスを格納し、送信先アドレスAr1に無線通信経路制御装置100のアドレスを格納し、中継通信フレームを送信する。中継ノードが無線通信経路制御装置100からACKを受信しない場合には、送信先アドレスAr1に他のノードのアドレスを格納し、中継通信フレームを送信する。
【0105】
以上説明したように、無線通信装置200は他の無線通信装置200を中継装置として、無線通信経路制御装置100と中継通信することも可能になる場合がある。
【0106】
(変形例2)
上記実施形態における説明では、自動車内の設置された無線通信システム1000によって構築されるネットワークを一例として説明している。しかし、実施形態は自動車内に限定されるものではなく、列車、飛行機、船舶等の移動体の内部、家屋、工場等の構造物の内部などに構築されたメッシュネットワーク全般に適用することが可能である。
【0107】
(変形例3)
以上の実施形態の説明では、通信データとして特定のデータについて説明していないが、アプリケーションについては限定されるわけではない。例えば、通信データは移動体の状況を検知するセンサーの情報、移動体を制御する情報、移動体に搭載された電子機器の情報等の情報である場合がある。センサーには、ドアの開閉検知センサー、シートベルトのセンサー、エンジンの回転センサー、車両の速度センサー、ブレーキやアクセルのセンサー等の各種のセンサーが一例として挙げられる。また、電子機器には、ナビゲーション機器、ラジオやテレビ等のエンタテイメント機器が一例として挙げられる。
【0108】
(比較例)
DSR、AODV、RPL等において使用される、従来の一般的なダイナミックルーティングを用いた経路選択の典型的な手順を比較例として
図7~
図9を参照して以下に説明する。
【0109】
比較例として、
図9に示すように、ノードIDとしてBS01~BS09が付与された各ノード(無線局)が配置され、
図9に示すリンクによってノード間の通信が可能な無線メッシュネットワークを想定する。各ノードBS01~BS09の信号衝突率(信号衝突レート)、ノードを通過するパケットの処理に要する時間の平均値及び最大値、無線資源消費量、収容トラフィックの余裕度が測定され、その情報が各ノードBS01~BS09で共有される。
【0110】
図7は各ノードにおける経路選択の動作のフローチャートの一例を示す図である。
【0111】
定期的にノード間で通信経路情報を相互に交換し、各ノードは通信経路を生成・更新する。
図7においては、このようにして各ノードで生成された通信経路が複数存在する場合に、各ノードが候補となる通信経路から1つの通信経路を選択する動作フロー例を示す。
【0112】
ステップS701において、各ノードは指定された送信ノードと最終的な受信ノードとを接続するための複数の候補となる通信経路を選択する。候補となる通信経路を候補通信経路と称する。次に、ノードはステップS702に進む。
【0113】
ステップS702において、ノードは各候補通信経路について、各リンクの転送速度、各ノードにおける待ち行列の負荷に基づいて予測遅延を演算する。次に、ノードはステップS703に進む。
【0114】
ステップS703において、ノードは候補通信経路の予測遅延が、指定された通信品質である遅延条件を満たさない場合に、該当する候補通信経路を除去する。次に、ノードはステップS704に進む。
【0115】
ステップS704において、ノードはステップS703において除去されなかった候補通信経路の無線資源消費量について演算を実行する。次に、ノードはステップS705に進む。
【0116】
ステップS705において、ノードはステップS703において除去されなかった候補通信経路のトラフィック余裕度について演算を実行する。次に、ノードはステップS706に進む。
【0117】
ステップS706において、ノードはステップS703において除去されなかった候補通信経路のなかで、通信経路上の待ち行列の余裕度が大きく、無線資源消費量が小さい候補通信経路を最適な通信経路として選択する。ノードは通信経路選択処理を終了する。
【0118】
上述したように、ノードがノード間のさまざまなパラメータを受信し、パラメータ毎にさまざまな通信経路を生成する。すなわち、メッシュネットワークにおいて、各ノードが通信経路を決定するまでの各種処理を実行するので、各ノードのルーティング処理のための負荷が大きくなる。特に、ノードが通信データを送信する時に、演算負荷が大きくなってしまうという課題を有している。
【0119】
図8はノードBS01~ノードBS09に至るL1~L15の15個の候補通信経路について、予測遅延、無線資源消費量、および、収容トラフィック余裕度をノードが演算する動作を一覧で示した図である。
【0120】
(予測遅延の演算)
途中の中継ノードのノードを通過するパケットの処理に要する時間の平均値及び最大値を加算して、予測遅延時間の平均/最大値を算出する。
図7の第2列が、各経路候補L1~L15について算出した予測遅延時間の平均値及び最大値をこの順序で示している。
【0121】
例えば、経路候補L1の場合には、中継ノードはノードBS02だけであるので、ノードBS02のノード通過時間の平均値(26ミリ秒)及び最大値(40ミリ秒)が経路候補L1の予測遅延時間の平均値(26ミリ秒)及び最大値(40ミリ秒)となる。また、経路候補L5の場合には、中継ノードはノードBS02及びBS06である。したがって、ノードBS02のノード通過時間の平均値(26ミリ秒)及び最大値(40ミリ秒)と、ノードBS06のノード通過時間の平均値(10ミリ秒)及び最大値(16ミリ秒)の加算値が、経路候補L5の予測遅延時間の平均値及び最大値となる。すなわち、経路候補L5の予測遅延時間の平均値は36ミリ秒となり、最大値は56ミリ秒となる。
【0122】
(遅延条件を満たさない経路の除去)
セッション要求における要求遅延値(要求遅延時間)は50ミリ秒以下である。これを最大値に対する要求遅延値とした場合には、経路候補L2、L5~L7、L9~L12が除去される。50ミリ秒以下という要求遅延値(要求遅延時間)が平均値に対する要求遅延値とした場合には、経路候補L10、L12が除去される。
【0123】
(無線資源消費量の計算)
除去されていない各経路候補における各リンクの無線資源消費量を計算し、総和を取ってその経路候補の無線資源消費量を計算する。なお、転送オーバヘッドを0.1ミリ秒/パケットとしている。以下の式は、概略説明での式と同一のものであるが、変形して示している。パケット長(=データサイズ+ヘッダサイズ)はリンクに関係なく200ビットであり、パケット送信間隔もリンクに関係なく0.02秒である。
【0124】
Σ((転送オーバヘッド+パケット長/転送速度)/パケット送信間隔×Σ(1+信号衝突率))
例えば、経路候補L1については、ノードBS01及びBS02間のリンクと、ノードBS02及びBS09間のリンクとがある。
【0125】
前者のノードBS01及びBS02間のリンクについての転送速度は50Mbpsである。したがって、そのパケット長/転送速度は200ビット/50Mbps=0.004ミリ秒/パケットであり、そのため、(転送オーバヘッド+パケット長/転送速度)/パケット送信間隔は(0.1+0.004)/0.02=5.2ミリ秒である。前者のリンクの両端のノードBS01及びBS02の信号衝突率はそれぞれ、0.2及び0.3であるので、Σ(1+信号衝突率)は(1+0.2)+(1+0.3)=2.5である。従って、前者のリンクにつての無線資源消費量は、5.2×2.5となる。
【0126】
後者のノードBS02及びBS09間のリンクについての転送速度は2Mbpsであるので、そのパケット長/転送速度は200ビット/2Mbps=0.1ミリ秒/パケットである。そのため、(転送オーバヘッド+パケット長/転送速度)/パケット送信間隔は(0.1+0.1)/0.02=10ミリ秒である。後者のリンクの両端のノードBS02及びBS09の信号衝突率はそれぞれ、0.3及び0.1であるので、Σ(1+信号衝突率)は(1+0.3)+(1+0.1)=2.4である。従って、後者のリンクにつての無線資源消費量は、10×2.4となる。
【0127】
その結果、経路候補L1についての無線資源消費量は、5.2×2.5+10×2.4=37である。
【0128】
(トラフィック余裕度の計算)
除去されていない各経路候補についてそれぞれ、中継ノードの収容トラフィック余裕度を計算する。そして、全ての中継ノードの収容トラフィック余裕度を掛け合わせて経路候補のトラフィック余裕度を計算する。又は、各中継ノードの収容トラフィック余裕度の最小値を取り出して、経路候補のトラフィック余裕度とする。
【0129】
例えば、経路候補L1の中継ノードはノードBS02だけであるので、その経路候補L1のトラフィック余裕度は、いずれの算出方法を適用した場合でも、ノードBS02のトラフィック余裕度0.5となる。
【0130】
また例えば、経路候補L8の中継ノードはノードBS03及びBS05であるので、その経路候補L8のトラフィック余裕度は、ノードBS03のトラフィック余裕度0.8とノードBS05のトラフィック余裕度0.7の小さい方(最小値)である0.7となる。なお、経路候補のトラフィック余裕度として掛け合わせを適用した場合には、0.7×0.8=0.56となる。
【0131】
図8の第4列には、各中継ノードのトラフィック余裕度の最小値を経路候補のトラフィック余裕度にするという方式を適用した場合の値を示している。なお、既に、経路候補の除去が行われているので、除去された経路候補についてのトラフィック余裕度は計算されないが、
図7では参考のために全ての経路候補のトラフィック余裕度を示している。
【0132】
(経路選択)
最終的な経路選択は、2段階の処理によって行う。
【0133】
まず、トラフィック余裕度が相対的に小さい経路候補を除外する。例えば、
図8の場合において、トラフィック余裕度が0.5及び0.6であるものを相対的に小さいとすると、トラフィック余裕度が0.5及び0.6である経路候補を除外する。
【0134】
図8の例の場合、予測遅延値と要求遅延値との関係に基づく経路候補の除外、トラフィック余裕度に基づく経路候補の除外を行った後では、経路候補は、L3、L4、L8、L13~L15に絞られる。
【0135】
以上のようにして経路候補を絞った後では、それぞれの経路候補について、評価値を算出し、その評価値が良い順に順位付けを行い、順位(スコア)が第1位の経路候補を、今回の要求セッションの経路とする。
【0136】
以上説明したように、メッシュネットワークにおいて、各ノードが通信経路を決定するまでの各種処理を実行するので、各ノードのルーティング処理のための負荷が大きくなる。特に、ノードが通信データを送信する時に、演算負荷が大きくなってしまうという課題を有していることが分かる。
【0137】
しかし、本実施形態等の形態は、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する通信経路制御装置を配置することで、各通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能な通信システムを提供することが可能になる。
【0138】
以下に、本実施形態の無線通信経路制御装置100および無線通信システム1000の特徴について記載する。
【0139】
本発明の第1の態様に係る通信経路制御装置としての無線通信経路制御装置100は、複数の通信装置としての無線通信装置200を含むメッシュネットワークに配置され、無線通信装置200と通信することが好ましい。無線通信経路制御装置100は、無線通信装置200の通信経路を示す通信経路情報と、通信経路の通信経路特性を示すためのパラメータを数値化したパラメータ値を演算するためのパラメータ値関連情報とが対応付けられて受信することが好ましい。通信経路情報とパラメータ値関連情報とは無線通信経路制御装置100に含まれる受信部としての無線受信部120において受信されることが好ましい。また、無線通信経路制御装置100は、パラメータ値関連情報から通信経路のパラメータ値を演算するパラメータ演算部142を含むことが好ましい。さらに、無線通信経路制御装置100は、通信経路情報によって特定される通信経路から、同一パラメータに関して、通信経路の終端と他の通信経路の始端とが同一の通信装置を示す通信経路を接続した通信経路を生成する経路生成部143を含むことが好ましい。さらに、無線通信経路制御装置100は、通信経路情報要求フレームを受信すると、通信経路情報要求フレームが示す通信経路に対して、当該フレームの所定の条件に対応する通信経路を最適な通信経路として選択する経路選択部144を含むことが好ましい。
【0140】
上記構成によれば、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する通信経路制御装置を配置することで、各通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能となる。
【0141】
本発明の第2の態様に係る無線通信経路制御装置100における、所定の条件は、通信経路情報要求フレームに通信経路特性を示すためのパラメータに対する優先度を示す優先度情報が含まれる場合の条件であることが好ましい。この場合には、無線受信部120が通信経路情報要求フレームを受信すると、経路選択部144は、優先度が最も高いパラメータに関する通信経路のなかで、通信経路のパラメータ値が最良の通信経路を最適な通信経路として選択することが好ましい。
【0142】
上記構成によれば、ルーティング処理のための各種処理を実行するメッシュネットワークに配置される無線通信経路制御装置において、通信経路特性を示すためのパラメータに優先度を付けて通信経路を決定することが可能になる。その結果、無線通信装置は、各種パラメータに基づいて、通信経路を取得することが可能になる。
【0143】
本発明の第3の態様に係る無線通信経路制御装置100の所定の条件とは、通信経路情報要求フレームに通信経路特性を示すためのパラメータに対する優先度を示す優先度情報が含まれない場合であることが好ましい。この場合には、無線受信部120が通信経路情報要求フレームを受信すると、経路選択部144は、通信経路情報要求フレームによって示される通信経路のホップ数が最小となる通信経路を最適な通信経路として選択することが好ましい。
【0144】
上記構成によれば、ルーティング処理のための各種処理を実行するメッシュネットワークに配置される無線通信経路制御装置において、通信経路特性を示すためのパラメータに優先度を付けていなくとも通信経路を決定することが可能になる。この場合には、無線通信装置は、ホップ数が最小となる通信経路を取得することが可能になる。
【0145】
本発明の第4の態様に係る無線通信経路制御装置100の経路選択部144は、ホップ数が最短となる通信経路が複数ある場合には、複数の通信経路のなかで、通信成功率が最も高い経路を最適な通信経路として選択することが好ましい。または、経路選択部144は、ホップ数が最短となる通信経路が複数ある場合には、複数の通信経路のなかで、遅延時間が最も小さい経路を最適な通信経路として選択することが好ましい。
【0146】
上記構成によれば、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する通信経路制御装置において、ホップ数が最小となる通信経路が複数存在する場合にも最適な通信経路を選択することが可能になる。すなわち、通信経路制御装置は、ホップ数が最小となる通信経路において、通信成功率が最も高い経路、または、遅延時間が最も小さい経路を最適な通信経路として選択することが可能になる。また、通信成功率が最も高い経路が、遅延時間が最も小さい経路となる場合もある。
【0147】
本発明の第5の態様に係る無線通信経路制御装置100において、通信経路情報、および、パラメータ値関連情報は、通信経路情報によって特定される通信経路に含まれない、メッシュネットワークの通信装置から送信される情報であることが好ましい。
【0148】
上記構成によれば、通信経路に含まれない他の無線通信装置200が、情報を中継して、無線通信経路制御装置100に転送させることが可能となる。すなわち、通信経路に含まれる無線通信装置200は、無線通信経路制御装置100との通信環境が悪くなった場合にも、通信経路に含まれない他の無線通信装置200を介して、無線通信経路制御装置100と通信を実行することが可能になる。
【0149】
本発明の第6の態様に係る無線通信経路制御装置100は、無線受信部120が最適な通信経路に存在する通信装置から、経路選択部144が選択した最適な通信経路が含まれる通信経路情報要求フレームを受信した場合には、以下の処理を実行することが好ましい。すなわち、経路選択部144は、最適な通信経路において通信装置の次の転送先となっている通信装置に代えて、通信装置と通信可能な他の通信装置を選択して、他の通信装置から最適な通信経路の終端の通信装置までの最適な通信経路を選択することが好ましい。
【0150】
上記構成によれば、選択された最適な通信経路において通信環境が悪化した場合においても、最適な通信経路に存在するいずれの無線通信装置も、無線通信経路制御装置100から、あらたな最適な通信経路を送信するように要求することが可能となる。このようにして、必要に応じて、無線通信経路制御装置100は最適な通信経路をダイナミックに変更することも可能になる。
【0151】
本発明の第7の態様に係る無線通信経路制御装置100において、最適な通信経路に存在する通信装置から受信された、最適な通信経路が含まれる通信経路情報要求フレームのパラメータに対する優先度を示す優先度情報は以下の情報であることが好ましい。すなわち、最適な通信経路が含まれる通信経路情報要求フレームのパラメータに対する優先度を示す優先度情報は、最適な通信経路が選択された時の優先度情報と同一または異なる優先度情報であることが好ましい。
【0152】
上記構成によれば、無線通信経路制御装置100に、あらたな最適な通信経路を要求する場合に、任意のパラメータの優先度を上げて、あらたな最適な通信経路を選択・送信するように要求することが可能になる。このようにして、必要に応じて、無線通信経路制御装置100は任意のパラメータに関して最適な通信経路をダイナミックに変更することも可能になる。
【0153】
本発明の第8の態様に係るメッシュネットワークに配置される通信経路制御装置である無線通信経路制御装置100は、複数の通信装置である無線通信装置200と無線によって通信を実行することが好ましい。
【0154】
上記構成によれば、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行する無線通信経路制御装置を配置することで、各無線通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能となる。
【0155】
本発明の第9の態様に係る通信システムである無線通信システム1000は、第1の態様から第8の態様のいずれかの無線通信経路制御装置100と、メッシュネットワークに配置される複数の無線通信装置200とを含むことが好ましい。無線通信装置200は、無線通信装置の間の通信経路特性を示すパラメータを定量化するための情報を測定することが好ましい。そして、無線通信装置200は、通信経路を示す通信経路情報と、当該情報から生成された通信経路のパラメータ値を演算するためのパラメータ値関連情報とを対応付けて無線通信経路制御装置100に送信することが好ましい。
【0156】
上記構成によれば、メッシュネットワークにおいて、通信経路を決定するまでの各種処理を実行するための専用の通信経路制御装置を配置することで、各通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減し、通信データの送受信を実行することが可能となる。
【0157】
本発明の第10の態様に係る通信システムである無線通信システム1000において、無線通信経路制御装置100は、1つのメッシュネットワークに複数台が配置されることが好ましい。無線通信経路制御装置100はお互いに情報を共有し、無線通信装置(200)はいずれかの無線通信経路制御装置100と通信することが好ましい。
【0158】
上記構成によれば、メッシュネットワークにおいて、無線通信経路制御装置100との通信環境が悪化した場合においても、代理の無線通信経路制御装置100と通信することで、各無線通信装置のルーティング処理のための負荷を軽減することが可能となる。
【0159】
上述した実施形態の説明に用いた
図4のブロック構成図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、1つの装置または複数の装置に、ソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0160】
無線通信経路制御装置100および無線通信装置200が、複数のハードウェア要素で構成される場合、各機能ブロックは、何れかのハードウェア要素、又は当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置、バスなどが挙げられる。
【0161】
また、この場合、無線通信経路制御装置100および無線通信装置200の各機能は、プロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェアまたはプログラムを読み込ませることによって実現される。具体的には、各機能は、ハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサが演算を行い、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みを制御することによって実現される。
【0162】
実施形態につき、図面を参照して詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0163】
100 無線通信経路制御装置
110 送受信切り替え部
120 無線受信部
130 無線送信部
140 制御部
141 受信データ判別部
142 パラメータ演算部
143 経路生成部
144 経路選択部
145 通信制御部
150 記憶部
200 無線通信装置
1000 無線通信システム